以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明における方向の概念は、電動車両の一例として示す電動二輪車に搭乗した運転者の見る方向を基準とする。車長方向は前後方向に対応し、車幅方向は左右方向に対応する。
図1は、実施形態に係る電動二輪車1の右側面図である。図2は、図1に示す電動二輪車1の分解斜視図である。図1及び図2に示すように、電動二輪車1は、車体2とバッテリユニット3とを備え、バッテリユニット3は車体2に着脱可能に組み付けられる。バッテリユニット3は車体2よりも小型である。具体的には、バッテリユニット2の前後寸法、上下寸法及び左右寸法は、車体2の前後寸法、上下寸法及び左右寸法それぞれよりも小さい。
図1に示すように、車体2は、車体フレーム11、車輪、及び車輪に伝達される走行駆動力を発生する電気モータ12を含む。本実施形態では、この車輪に、従動輪且つ操舵輪である1つの前輪13と、駆動輪である1つの後輪14とが含まれ、電気モータ12により発生された走行駆動力は、動力伝達機構15を介して後輪14に伝達される。動力伝達機構15には、電気モータ12の回転を変速する変速機15aや、変速機15aから出力された回転動力を後輪3の車軸に伝達する機構15b(例えば、チェーン伝動機構やベルト伝動機構など)が含まれる。電気モータ12は変速機15aと共にモータユニットケース16に収容されている。
車体フレーム11には、ヘッドパイプ17、メインフレーム18、シートフレーム19、及びサブフレーム20が含まれる。ヘッドパイプ17は、ステアリングシャフト21を回転可能に支持する。本実施形態ではメインフレーム18が、ヘッドパイプ17から下方に延びてから屈曲して後方に延びる。シートフレーム19は、運転者及び同乗者を着座させるシート22を支持している。本実施形態では一例として、モータユニットケース16が車体フレーム11の一部を構成し、メインフレーム18が後端部でモータユニットケース16の下前部に連結され、スイングアーム23がモータユニットケース16に揺動可能に支持され、シートフレーム19がモータユニットケース16の上部から後方へ延びる。
車体2は、電気モータ12よりも低電圧で駆動される電装品(例えば、計器パネルや制御器やヘッドランプやブレーキランプ等の灯火器)と、かかる電装品の電源としての低圧バッテリ24とを含む。低圧バッテリ24はバッテリユニット3から分離している。車体2は、バッテリユニット3から放電された直流電力を交流電力に変換するインバータ25と、インバータ25のスイッチング動作を制御する車両制御装置26とを含む。電気モータ12はインバータ25からの交流電力を給電されて動作し、走行駆動力を発生する。車両制御装置26は、例えば運転者により操作されるアクセル部材の操作量、電気モータ12の回転数、バッテリ61の状態といった運転者要求及び車両状態に応じてインバータ25を制御し、当該制御を通じて電気モータ12の動作を制御し、運転者要求及び車両状態に応じた走行制御を実行する。車体2は、このような走行制御の実現のため、運転者要求や車両状態を検出する複数のセンサを含む。
なお、本実施形態ではモータユニットケース16が車体フレーム11の一部を構成するが、モータユニットケース16は車体フレーム11と別体でもよい。例えば、メインフレーム16、シートフレーム19及びスイングアーム23がピボットブラケットに連結され、モータユニットケース16がピボットブラケットに支持されてもよい。本実施形態では、低圧バッテリ24がモータユニットケース16の前部に支持され、インバータ25がシートフレーム19に支持され、車両制御装置26がヘッドパイプ17に支持されるが、これらの支持構造及び配置は変更可能である。これらデバイス24〜26は、バッテリユニット3から分離して車体2を構成することができればどのように支持及び配置されてもよい。
車体2は、前輪13及び後輪14の間にバッテリユニット3を収容する収容空間2aを形成している。より詳細には、収容空間2aは、ヘッドパイプ17の後方であってモータユニットケース16の前方に形成される。本実施形態では、一例として、バッテリユニット3(バッテリユニットケース62)がメインフレーム18のうち車長方向に延在する部分上で支持される。
サブフレーム20は、左右アッパフレーム27を有し、各アッパフレーム27はメインフレーム18上で支持されたバッテリユニット3の車幅外側で車長方向に延在し、収容空間4aの車幅外縁を規定する。これによりサブフレーム20でバッテリユニット3を車幅方向において保護することができる。なお、サイドカウル(不図示)が、バッテリユニット3の側面のうちサブフレーム20よりも下側の部位を車幅外方から覆い、上カバー29(図1参照)がバッテリユニット3を上方から覆っており、バッテリユニット3は、これらサイドカウル及び上カバー29によっても外界から保護される。
図2に示すように、サブフレーム20は、例えばボルトなどの締結具(図示せず)を用いて車体フレーム11の残余部に対して取外し可能に連結される。具体的には、左右アッパフレーム27が、前端部にてメインフレーム18に取外し可能に連結されて後端部にてモータユニットケース16の上部に取外し可能に連結される。なお、前端部はヘッドパイプ17に連結されてもよい。このため、バッテリユニット3の車体への搭載時にサブフレーム20を残余部から取り外しておけば、収容空間2aを車幅方向にも上方にも大きく開放することができるため、搭載作業が簡便になる。
なお、本実施形態では、左右アッパフレーム27がクロスフレーム28を介して車幅方向に結合されて残余部に対して一体になって着脱されるが、一方のアッパフレーム27がヘッドパイプ17に一体化されてもよい。この場合でも、バッテリユニット3を車体2に搭載するときに車幅方向片側を大きく開放することができ、搭載作業を簡便化することができる。本実施形態では、メインフレーム18が車長方向に延在する部分を比較的低位で有し、バッテリユニット3の底部が当該部分上に支持されるが、バッテリユニット3は左右アッパフレーム27に支持されてもよい。この場合、メインフレーム18から少なくとも当該部分を省略してもよい。更にこの場合、バッテリユニット3は、左右アッパフレーム27それぞれとの固定位置同士を車幅方向に結ぶクロスメンバを内蔵してもよく、それによりバッテリユニット3で車体フレーム11を補強することができる。
バッテリユニット3は、電気モータ12の電源としてのバッテリ61と、バッテリ61を収容するバッテリユニットケース62とを有する。バッテリ61は直流電力を蓄えることができる。バッテリユニットケース62は、バッテリ61を収容するバッテリ収容部63と、バッテリ61とは異なる電装品を収容する電装品収容部64とを有する。電装品収容部64は、バッテリ収容部63の上部に配置される。バッテリユニット3は、バッテリ61の充電のために用いられる充電コネクタ65を有している。本実施形態では、一例として、充電コネクタ65がバッテリ収容部63の上部に配置され、電装品収容部64の後方に配置される。このように充電コネクタ65がバッテリユニットケース62の外に設置されるので、バッテリユニット3が車体2から独立して単体で存在する場合には特に、充電コネクタ65にアクセスしやすく、充電作業が簡便化される。
図3は、図1に示す電動二輪車1の電気的構成を示すブロック図である。図3に示すように、車体2は、前述した電気モータ12、後輪14、動力伝達機構15、インバータ25及び車両制御装置26を有する。インバータ25は、直流が流れる配線31を介し、車体側給電コネクタ32と機械的且つ電気的に接続される。一方のバッテリ61は、例えば複数のバッテリセル61aを直列に接続した部分を含み、これによりバッテリ61全体としての電圧が電気モータ12の駆動に適した高圧となる。バッテリセル61aは、繰返し充放電可能な二次電池であり、例えばリチウムイオン電池である。バッテリ61は、低圧バッテリ24と比べると、保管環境の影響によって劣化しやすい。バッテリ61は、配線71を介してバッテリ側給電コネクタ72に接続される。両コネクタ32,72を互いに機械的に電気的に接続することで、バッテリ61がインバータ25と電気的に接続される。
バッテリ61は、配線71及びこれに接続された配線73を介し、充電コネクタ65に接続される。充電コネクタ65は、外部電源91に接続された外部充電コネクタ92と接続可能である。充電コネクタ65が外部充電コネクタ92に接続されると、外部電源91からの電力でバッテリ61を充電することができる。後述のとおり、充電コネクタ65は、車体2から取り外されているバッテリユニット3を保管している期間にも、バッテリの品質劣化を防止するための充電作業に利用される。
バッテリユニット3は、複数のバッテリセル61aそれぞれに対応するセル監視ユニット74を有し、全セル監視ユニット74がバッテリユニットケース62に収容される。各セル監視ユニット74は、対応するバッテリセル61aの温度及び残存容量を監視する。バッテリユニット3は、これらセル監視ユニット74と通信可能に接続され、バッテリ61の状態(例えば、バッテリ61のSOC(state of charge:充電状態)や温度)を監視するバッテリ監視装置75を有しており、バッテリ監視装置75もバッテリユニットケース62に収容されている。
車体2には、低圧バッテリ24に電気的に接続された入力コネクタ34が設けられている。一方、バッテリユニット3は、バッテリ61に配線71及びこれに接続される配線76を介して接続された出力コネクタ77と、当該配線76上に介在してバッテリ61の電圧を降圧する降圧回路78とを有している。両コネクタ34,77を互いに機械的に電気的に接続することで、バッテリ61に蓄えられている電力を降圧回路78で降圧し、降圧された電力で低圧バッテリ24を充電することができる。
降圧回路78は、配線76及びこれに接続された配線79を介してバッテリ監視装置75に接続されている。これにより、バッテリ監視装置75が電気モータ12よりも低圧で駆動される電装品であっても、バッテリ61を電源として動作することができる。すなわち、バッテリユニット3が車体2に搭載されておらずバッテリ監視装置75が低圧バッテリ24と電気的に遮断されている状態であっても、バッテリ監視装置75が動作することができる。
バッテリ監視装置75は、バッテリユニット3に設けられた制御器であり、セル監視ユニット74からの入力情報に基づきバッテリ61のSOCを推定したり、バッテリセル61a一つ一つに不具合が生じているか否かを判断したりすることができる。バッテリ監視装置75は、メモリ及びCPU(central processing unit:中央処理装置)を有し、それによりかかる処理を実行し、また、かかる処理の実行のためのプログラムを記憶することができる。
バッテリ監視装置75は、車両制御装置26と通信可能に接続される。そこでバッテリ監視装置75はバッテリ側通信コネクタ80と通信可能に接続されており、車両制御装置26は車体側通信コネクタ35と通信可能に接続されている。両コネクタ35,80が互いに機械的に電気的に接続されることで、バッテリ監視装置75と車両制御装置26との間で情報を双方向に伝送可能になる。
バッテリ監視装置75は、バッテリ61の状態監視以外の制御、例えばバッテリユニット3の電装品の動作を制御することもできる。バッテリ監視装置75は、バッテリユニット3に設けられたリレーの開閉を制御してもよい。このようなリレーには、例えば、配線71上を開閉するリレー81a,81b、配線73上を開閉するリレー82a,82b、配線76のうち降圧回路78よりもバッテリ61側を開閉するリレー83a,83b、配線76のうち配線79の接続点よりもコネクタ77側を開閉するリレー84a,84b、配線79を開閉するリレー85a,85bが含まれる。例えば、バッテリ監視装置75は、バッテリユニット3が車体2に搭載されている状態での充電中に、リレー81a,81bを開いてリレー82a,82b,83a,83bを閉じる制御を実行してもよい。
車両制御装置26は、運転者要求や車両状態を検出する各種センサと通信可能に接続される。車両状態にはバッテリ61の状態も含まれ、ここでの各種センサには、バッテリ監視装置75及びこれに接続されたセル監視ユニット74も含まれる。車両制御装置26は、CAN(controller area network)等の通信手段を用いてインバータ25に通信可能に接続される。車両制御装置26は、各種センサからの入力に基づいてインバータ25のスイッチング動作を制御し、このインバータ25の制御を通じて電気モータ12の動作を制御する。
以上のように構成される車体2及びバッテリユニット3からなる電動二輪車1においては、まず、車体2及びバッテリユニット3を別々に生産し、車体2の収容空間2aにバッテリユニット3を収容し、バッテリユニット3に設けられたコネクタ72,77,80を車体2に設けられている対応するコネクタ32,34,35に機械的に電気的に接続する。その後、サイドカウル(図示せず)や上カバー29などを車体2に装着する。これにより、電動二輪車1が完成する。
電動二輪車1は、車輪13,14及び車輪13,14を回転駆動する電気モータ12を有する車体2と、車体2に取り付けられるバッテリパック(前述のバッテリユニット3に相当)と、を備える。車体2は、電気モータ12に電力供給するための車体側給電コネクタ32と、電気モータ12を制御する車両制御ユニット26とを有し、車体側給電コネクタ32から電気モータ12に電力を供給すると走行可能となる。バッテリパックは、車体2に着脱可能に取り付けられるケーシング(前述のバッテリユニットケース62に相当)と、ケーシングに収容されて電気モータ12の電源となるバッテリ61と、を有する。バッテリパックは、更に、走行時給電コネクタ(前述のバッテリ側給電コネクタ72に相当)と、保管時充電コネクタ(前述の充電コネクタ65に相当)と、バッテリ監視ユニット75と、を有する。走行時給電コネクタは、ケーシングに設けられ、バッテリ61と電気的に接続され、ケーシングが車体2に取り付けられている状態で車体側給電コネクタ32と電気的に接続可能である。保管時充電コネクタは、ケーシングに設けられて走行時給電コネクタとは異なる位置に配置され、バッテリ61と電気的に接続され、外部電源91と電気的に接続可能である。バッテリ監視ユニット75は、ケーシングに収容され、バッテリ61の状態を監視する。
前記構成によれば、バッテリパックが車体2から取り外されていても、車体側給電コネクタ32に外部電源(一例として、後述する電源装置101)を接続して電気モータ12に電力供給することにより、車体2は走行可能となる。よって、バッテリパックを車体2から取り外している状態でも、車両制御ユニット26を動作させた状態で台上走行試験を実施することができる。また、ケーシングに保管時充電コネクタが設けられ、ケーシングにバッテリ監視ユニット75が収容されている。よって、このコネクタ及びユニットを用いることで、バッテリパックを車体2から取り外している状態でも、バッテリパックに収容されたままのバッテリ61の充放電試験を実施することができる。
在庫期間中、バッテリパック及び車体2を互いに独立して保管することができる。保管時充電コネクタに外部電源91を接続することにより、バッテリパックを車体2から取り外している状態でも、バッテリ61を充電することができる。充電作業を、車体2とは関係なくバッテリパック単体に対して行うことができるので、バッテリパックの在庫管理を容易に行うことができる。
保管時充電コネクタは、在庫期間におけるバッテリ61の充電に使用される一方、走行時給電コネクタは、バッテリパックを車体2に取り付けた状態でバッテリ61から電気モータ12への電力供給に使用される。保管時充電コネクタ及び走行時給電コネクタが個別に用意されて異なる位置に配置されるので、バッテリパックの車体2への取付状態や、バッテリパックの保管状態それぞれに適するようにコネクタを配置することが可能になる。例えば、保管時充電コネクタを、バッテリパックの保管時にアクセスしやすい位置に配置することができ、走行時給電コネクタを、バッテリパックを車体に取り付けた状態で車体側給電コネクタと接続されやすい位置に配置することができる。これにより、在庫管理の容易化と、バッテリパックの車体2への取付け作業性の向上とを同時に実現することができる。
保管時充電コネクタは、ケーシングが車体2に取り付けられている状態で、外部電源91と電気的に接続可能に配置されてもよい。前記構成によれば、バッテリパックを車体2に取り付けた状態(車両の組立て完了状態)において、保管時充電コネクタを、バッテリ61の充電のためのコネクタに利用することができる。
車体2は、電気モータ12の駆動電圧よりも低電圧で動作する車体側電装品を有し、バッテリパックが、ケーシングに設けられて当該駆動電圧よりも低電圧で動作するパック側電装品を有している。車体2が、この車体側電装品に電力供給するための車体側入力コネクタ34を有してもよい。前記構成によれば、車体側入力コネクタに(低電圧の)外部電源を接続すれば、バッテリパックを車体2から取り外している状態であっても、車体側電装品に電力を供給した状態で台上走行試験を実施することができる。よって、バッテリパックを車体2から取り外している状態で台上走行試験を実施する場合に、車体側電装品の動作確認を行うことができる。更にバッテリパックは、このパック側電装品に電力供給するためのパック側入力コネクタ(詳細図示を省略)を有してもよい。前記構成によれば、パック側入力コネクタに同様にして(低電圧の)外部電源を接続すれば、バッテリパックを車体2から取り外している状態でも、パック側電装品の動作確認、バッテリ61の充放電試験およびメンテナンス充電を行うことができる。
バッテリパックが、バッテリ61に接続されてバッテリ61の電圧を降圧する降圧回路78と、ケーシングが車体2に取り付けられている状態で車体側入力コネクタと電気的に接続されて車体側入力コネクタに降圧回路78で降圧された電力を供給可能な出力側コネクタ77と、を有してもよい。前記構成によれば、バッテリパックが車体2から取り外されていても、出力側コネクタ77に外部検出器を接続することにより、降圧回路78の動作確認作業を行うことができる。
出力側コネクタ77は、ケーシングが車体2に取り付けられている状態で車体側入力コネクタ34と近接し、出力側コネクタ77及び車体側入力コネクタ34の少なくとも一方が、可撓性を有するケーブルを介し、その本体側に接続されてもよい。前記構成によれば、出力側コネクタ77及び車体側入力コネクタ34の少なくとも一方が、ケーブルを介し、その本体側(出力側コネクタ77にとってはバッテリパックの構成要素、車体側入力コネクタ34にとっては車体2の構成要素)に接続される。このため、バッテリパックの車体2への組付け精度を殊更高くすることなく、これらコネクタを容易に着脱することができる。また、出力側コネクタ77が車体側入力コネクタ34と近接するので、これらコネクタの少なくとも一方に繋がっているケーブルを短くすることができる。
走行時給電コネクタは、ケーシングが車体2に取り付けられている状態で車体側給電コネクタ32と近接し、走行時給電コネクタ及び車体側給電コネクタ32の少なくとも一方が、可撓性を有するケーブルを介し、その本体側に接続されてもよい。前記構成によれば、走行時給電コネクタ及び車体側給電コネクタ32の少なくとも一方が、ケーブルを介し、その本体側(走行時給電コネクタにとってはバッテリパックの構成要素、車体側給電コネクタ32にとっては車体2の構成要素)に接続される。このため、バッテリパックの車体2への組付け精度を殊更高くすることなく、これらコネクタを容易に着脱することができる。また、走行時給電コネクタが車体側給電コネクタ32と近接するので、これらコネクタの少なくとも一方に繋がっているケーブルを短くすることができる。
車体2には、バッテリパックを収容するパック収容空間(前述の収容空間2aに対応)が形成され、パック収容空間及びその上方空間を合わせた領域は、上方に進むにつれて前後方向寸法が大きくなるように形成されていてもよい。前記構成によれば、バッテリパックを車体2に対し上下方向に相対移動させることで、バッテリパックを車体2と干渉することなくパック収容空間内に挿入したりパック収容空間から抜き取ったりすることができる。
上記実施形態では、操舵系がフロントフォーク型で構成されるが、車体2には異なるタイプの操舵系が適用されてもよい。一例として、車体2が、車体フレーム11と、前輪13と、車体フレーム11から前方に延出して前輪側ピボット軸周りに角変位可能に前輪13を支持する前輪支持アームと、ステアリング回転軸(前述のステアリングシャフト21に相当)周りに回動するハンドルと、を有し、ステアリング回転軸が、キャスター軸との交点から上方に進むにつれてキャスター軸に対して前方へ離反してもよい。前記構成によれば、ハンドルが極力前方に配置され、ハンドルの下方のスペースのうち、平面視においてハンドルで隠れてしまう部分を小さくすることができる。このため、バッテリパックを前後方向に大きくすることと、バッテリパックを容易に着脱することとを両立することができる。
このように、車体2は、電気モータ12に電力供給するための車体側給電コネクタ32と、インバータ25ひいては電気モータ12を制御する車両制御装置26とを有する。このため、車体側給電コネクタ32にバッテリ61と同等の電源を接続すると、バッテリユニット3が車体2から取り外されていても電気モータ12を駆動することができる。車体2は、バッテリユニット3が搭載されていなくても、電気モータ12を駆動することで前後の車輪13,14のみが接地した自立姿勢で走行可能になる。このため、本実施形態によれば、バッテリユニット3を車体2から取り外している状態で、車体2の台上走行試験を実施することができる。一方、バッテリユニット3が充電コネクタ65を有するので、車体2から取り外されている状態でも、充電コネクタ65を用いてバッテリ61を充電することができる。このため、車体2及びバッテリユニット3をそれぞれ生産した後、バッテリユニット3を車体2に搭載して顧客(利用者)に完成車両を引き渡す直前まで、車体2及びバッテリユニット3を物理的に分離して保管及び搬送することが許容される。したがって、電動二輪車1(特に、バッテリユニット3)の在庫管理を容易化することができる。以下、この点に着眼をおいた電動二輪車1の組立方法及び組立管理方法の一例について説明する。
図4は、図1に示す電動二輪車1(特に新車)の組立方法及び組立管理方法を示すフローチャートである。図4に示すように、完成車両としての電動二輪車1を組み立て上げるには、まず、車体2が車体組立場所111で組み立てられる(車体組立段階)。組み立てられた車体2は、その車体2にバッテリユニット3が搭載されないまま移動し、車体検査を車体検査場所112で実施する(車体検査段階)。車体検査では、車体検査場所112に設置されている電源装置101が電気モータ12に接続される。具体的には、電源装置101に接続された検査時給電コネクタ(図示せず)が、車体側給電コネクタ32(図3参照)に機械的に電気的に接続され、それにより電源装置101によって電気モータ12を駆動可能にする。なお、低圧バッテリ24(図3参照)が車体検査前に車体2に搭載されているので、車両制御装置26(図3参照)を駆動することも可能であり、そのためインバータ25(図3参照)にスイッチング動作を行わせることも可能になるし、灯火器系の動作を行わせることも可能になる。
車体検査は、運転者の操作系、駆動系及び灯火器系など、走行に関係する構成の全件検査である。このような車体検査には、例えば、電気モータ12からの車輪13,14への動力伝達状態を確認することが含まれる。典型的には、車輪13,14を試験台102に乗せて駆動輪14を回転させ、車体2を対地移動させることなく試験台102上で疑似的に走行させることにより動力伝達状態を確認する。車体検査が終了すると、電源装置101が車体2から取り外される。
車体検査を合格した車体2には車体製造番号が付与される。そしてこの車体2は、出荷物としてバッテリユニット3との組付けのために準備され、車体検査場所112から搭載場所110へと手押し又は機械搬送されていく(車体準備段階、車体搬送段階)。本実施形態では、作業者1人でも操舵用ハンドルを把持して手押しで車体2を移動させることができ、しかも車体2の走行方向を変えることができる。このように、本実施形態に係る組立方法及び組立管理方法は、操舵用ハンドルを把持した状態で手押し可能な車体2を備える車両に適用されると有益である。
この車体2の生産及び検査とは別の流れで、バッテリユニット3がバッテリ組立場所161で組み立てられる(バッテリ組立段階)。組み立てられたバッテリユニット3は、車体2に搭載されないまま移動し、バッテリ検査場所162で品質検査される(バッテリ検査段階)。バッテリ検査場所162はバッテリ組立場所161と同じ場所でもよい。
品質検査では、バッテリユニット3の主として電気的構成について検査される。品質検査には、例えば、セル監視ユニット74及びバッテリ監視装置75が正常に動作するか否かの検査、リレーが正常に動作するか否かの検査、充電コネクタ65に外部電源151を接続したときにバッテリ61が正常に充電されるか否かの検査、バッテリ側給電コネクタ72に電気モータ又はそれと同等の電気的負荷152を接続したときにバッテリ61が正常に放電するか否かの検査、などが含まれる。
品質検査を合格したバッテリユニット3は、バッテリ製造番号が付与され、出荷物として車体2との組付けのために準備され、バッテリ検査場所162から搭載場所へ110と搬送される(バッテリ準備段階、バッテリ搬送段階)。
準備され搬送された車体2は、車体2とは別個に準備され且つ搬送されたバッテリユニット3と搭載場所110で会する。電動二輪車1の顧客(購入者)に電動二輪車1を提供するに先立ち、搭載場所110でバッテリユニット3が車体2に搭載される(バッテリ搭載段階)。
車体組立場所111及び車体検査場所112は、典型的には車体2の生産工場であり、バッテリ組立場所161及びバッテリ検査場所162は、典型的にはバッテリユニット3の生産工場である。別の言い方をすれば、車体組立場所111及び車体検査場所112である車体側サイト111,112は、典型的には車体2の製造業者に管轄され又は帰属している。バッテリ組立場所161及びバッテリ検査場所162であるバッテリ側サイト161,162は、典型的にはバッテリユニット3の製造業者に管轄され又は帰属している。車体2の製造業者とバッテリユニット3の製造業者は、同一業者でもよいし異なっていてもよい。
搭載場所110は、組立場所111,161及び検査場所112,162とは地理的に異なり、例えば完成車両としての電動二輪車1の小売店舗である。別の言い方をすれば、搭載場所110は、電動二輪車1の小売業者に管轄され又は帰属している。なお、車両の小売業者は、点検整備のサービスを提供している実績を有しており、搭載場所110には車体2にバッテリユニット3を搭載する作業を行うための整備機器が整っているし、搭載作業の技術を簡単に習得し得る素地が備わっている。そして、前述のように、本実施形態に係る電動二輪車1によれば、改めて検査を行うことなくバッテリユニット3を検査完了した車体2に簡便に搭載することができるので、搭載場所110での作業負担を軽減することができる。特に、本実施形態では、完成車両が鞍乗型車両の一例としての電動二輪車1である。鞍乗型車両では車体2が比較的小型軽量であるため、車体2を搭載作業員が手押しで移動させることができる。この点でも、搭載場所110での作業負担を軽減することができ、上記の組立方法が現実的に許容される。
車体2はライン生産され、バッテリユニット3はセル生産される。車体2のライン生産では、車体本体(車体フレーム11など)が移動するなかで付属部品が順次組み付けられていく。このため、車体組立段階を実施するには車体組立場所111が比較的広大である必要がある。組付け作業では、トルクレンチやねじ回し等の工具を用いて機械的に比較的大きな力で、付属部品が組み付けられる。一方、バッテリユニット3のセル生産では、バッテリ本体(バッテリユニットケース62など)が定位置に留まった状態で付属部品が順次組み付けられていく。このため、バッテリ組立場所161が比較的狭小であってもバッテリ組立段階を実施することができる。ただし、バッテリ61の性質に照らして、バッテリ組立場所161は温度管理及び絶縁管理がなされている必要がある。組付け作業では、溶接やドライバなどの工具を用いて機械的に比較的小さな力で、付属部品が組み付けられる。
本実施形態では、バッテリユニット3及び車体2を別々の組立場所111,161で組み立てるので、バッテリユニット3及び車体2を各々の組立てに適した工場で組み立てることができる。別々の組立場所111,161で組み立てられたバッテリユニット3及び車体2は、これら組立場所111,161とは異なる搭載場所110で集合する。バッテリユニット3を車体組立場所111に移動させる必要がないので、車体組立場所111及び車体検査場所112での管理作業負担が軽減する。バッテリユニット3は車体2に搭載されないまま車体提供位置に近い場所まで搬送できるので、車体2移動時の重量を軽くすることができ、車体2の移動コストが低減する。
また、バッテリユニット3を搭載していない状態で車体検査が行われる。車体検査は、前述のとおり走行に関係する構成、換言すれば運転に直接的に影響を及ぼす内容に対する検査であるので、十分な検査を必要とする。バッテリユニット3を搭載している状態での検査を行うと、検査項目をクリアできなかった場合に、バッテリユニット3に異常があるのか車体2に異常があるのか解明しづらく、その原因調査が煩雑になる。本実施形態では、車体2がバッテリユニット3と分離した状態で車体検査を行うので、検査不合格時の対応が容易になる。
車体2及びこれに搭載されるバッテリユニット3を比較すると、車体2の組立て開始時期よりも後に組立てを開始したバッテリユニット3を搭載することができる。このため、バッテリ61の劣化を抑えることができる。
電動二輪車1の製造業者が複数車種の車両を提供するにあたって、複数種類の車体2を準備し、この複数種類の車体2に対して共通のバッテリユニット3を準備してもよい。これにより、バッテリユニット3を組み立ててから車体2に搭載するまでの期間を短くすることができ、バッテリ61の劣化を抑えることができる。
バッテリ組立場所161は、車体組立場所111及び車体検査場所112から離れている。このバッテリ組立場所161が、搭載場所110に、車体組立場所111及び車体検査場所112と比べてより近くてもよい。これにより、バッテリユニット3の移動距離を短くすることができバッテリ61の劣化を防ぎやすくなる。
車体2をトラック、船又は飛行機等の輸送機で搬送する場合、車体2は、バッテリユニット3を搭載しない状態で、バッテリユニット3を搬送するための輸送機とは別の輸送機で搬送されることが好ましい。バッテリ用輸送機は、その収納空間を温度調整可能に及び/又は振動抑制可能に構成されてもよく、また、その移動期間が短いことが好ましい。また、車体2及びバッテリユニット3は、同一の輸送機(船のような大型輸送機)で搬送されてもよいが、その場合にも、車体2及びバッテリユニット3を区画された別々の収納空間に配置し、バッテリユニット3用の収納空間が、車体2用の収納空間よりも厳しい温度、振動又は湿度等環境条件で管理されることが好ましい。
上記説明では搭載場所110が小売店舗であるとしたが、これに限定されない。電動二輪車1は、短期間レンタルされる場合や長期間リースされる場合など賃貸対象とされてもよく、搭載場所110が電動二輪車1の賃貸店舗であってもよい。この場合でも、バッテリユニット3の車体2への搭載をなるべく遅らせることができ、小売店舗と同様の効果を得ることができる。また、顧客から電動二輪車1が賃貸業者に返却されたとき、電動二輪車1からバッテリユニット3を取り外し、賃貸業者がストックしており充分に充電されているバッテリユニット3を空いた車体2に搭載して完成品としての電動二輪車1を組み立て上げ、それを次の顧客に貸し出すことが考えられる。本実施形態によれば、搭載時の検査を簡単化することができ、賃貸業務を簡単化することができる。バッテリユニット3のみがレンタル又はリースされてもよく、その場合にも同様の効果を得ることができる。
搭載場所110は、小売店舗や賃貸店舗のように車両提供場所以外の場所に設定されてもよく、例えば、電動二輪車1を修理又は点検する整備店舗であってもよい。整備店舗の場合には、バッテリユニット3に異常が見つかった場合に、バッテリユニット3を車体2に搭載し直すことが考えられる。本実施形態によれば、搭載時の検査を簡単化でき、整備作業及び修理作業を簡単化することができる。搭載場所110は充電場所であってもよい。充電場所で充電されたバッテリユニット3に搭載しなおすことで、充電作業を行うことなく走行再開するにあたっての検査を簡単化することができる。搭載場所110は小売店舗へ電動二輪車1を卸す卸売店舗でもよく、卸売のために車体2及びバッテリユニット3が備蓄される場所でもよい。
搭載場所110は、電動二輪車1の顧客がその提供を受ける場所(製造業者から見た場合の仕向地)に各検査場所112,162と比べて近い、又は当該場所そのものである。搭載場所110は各検査場所112,162と同一国内にある場合もあるが、両場所が国境を跨ぐほど離れる場合もある。いずれにしても、車体2及びバッテリユニット3をそれぞれ準備してから、その車体2にそのバッテリユニット3が搭載されるまでには、輸送期間や在庫期間が存在する。以下では、準備から搭載までの期間を待機期間と称し、待機期間には輸送期間及び在庫期間が含まれる。
この待機期間のうち少なくとも一部の期間において、車体2及びバッテリユニット3は、搭載場所110まで配達されない段階で保管され(保管段階)、この保管段階の後に、車体2及びバッテリユニット3が搭載場所110へと移動される場合がある(移送段階)。保管段階では、車体2及びバッテリユニット3は、例えば在庫物として保管される。保管段階では、車体2は車体保管区域115で保管され、バッテリユニット3は、バッテリ保管部屋165で保管される。このように、車体2及びバッテリユニット3は搭載場所110に移送されるまで互いに分離して搬送され、保管されるときも互いに分離した状態のままである。バッテリ保管部屋165は、車体保管区域115と同一場所に設置されることを妨げないものの、車体保管区域115からは物理的に隔絶されており、その温度や湿度等の空調環境は、空調設備を用いるなどしてバッテリ61の保管に適した所定空調範囲内(例えば、温度範囲内)に調整される。これにより、保管段階でのバッテリ61の劣化を抑制することができる。また、車体2にバッテリユニット3を搭載した状態で同じ作用を得ようとする場合、空調管理下にあるバッテリ保管部屋165の容積を車体2の分だけ大きくしなければならない。本実施形態では、車体2を空調管理下におかずに保管することが許容されるので、このような場合と比べ、電動二輪車1の在庫管理が容易化される。
バッテリ61は、電源に使用されていなくても自然放電し、過放電により著しく劣化する。そこでバッテリユニット3は、保管段階で、バッテリ61の再充電又はバッテリ61の検査が実施されてもよい。例えば、ある期間が経過するたび、バッテリ61のメンテナンスのため、充電コネクタ65にバッテリ保管部屋165内に設置された外部電源151を接続してバッテリ61を充電してもよい。移送段階の直前にこのような充電が実施されてもよい。また、移送段階の直前にバッテリ61の劣化の程度が検査されてもよい。良好な検査結果が得られなかったバッテリ61は、移送段階に進まず、バッテリ組立場所161に戻って整備又は交換されてもよい。なお、バッテリユニット3は、移送段階でも温度管理された空間内に収容されていてもよい。これにより、バッテリ61の劣化を更に抑制することができ、搭載場所110がバッテリ保管部屋165と地理的に離れている場合に有益である。
バッテリユニット3は搭載場所110に配達されるまで車体2に搭載されることはないため、品質検査を合格してから顧客に実際に引き渡されるまでの待機期間中、バッテリユニット3の品質管理を容易に行うことができる。そして、バッテリ搭載段階では、保管段階で、再充電されたバッテリユニット3又は良好な検査結果を得たバッテリユニット3を車体2に搭載することができる。すると、搭載場所110でのバッテリ61のメンテナンス作業負担を軽減することができるし、また、高品質の電動二輪車1を顧客に提供することができるので有益である。
車体保管区域115は、車体検査場所112に隣接して設置されていてもよい。車体2が製造業者から卸売業者を仲介して小売業者等に譲渡される場合、車体保管区域115は卸売業者に管轄され又は帰属する場所に設置されていてもよい。更に、車体保管区域115は、物流業者に管轄され又は帰属する場所に設置されてもよい。図4では車体保管区域115が1つのみ示されているが、複数の車体保管区域115が車体検査場所112と搭載場所110との間に存在してもよい。バッテリ保管部屋165についても同様である。また、市場に一旦出回った製品が顧客の元を離れて中古車として流通する場合、車両のみを継続使用して新品のバッテリユニットのみを搭載したり、古くなったバッテリユニットを取り外して劣化の少ない中古品のバッテリユニットを転用したりする必要がある。これらの作業も搭載場所110で実施することができる。
各検査場所112,162と搭載場所110とが国境を跨ぐ場合、車体保管区域115は各検査場所112,162側の国内に設置されてもよいし、搭載場所110側の国内に設置されてもよい。バッテリ保管部屋165も同様であるが、特に搭載場所110側の国内に設置されるのが好ましい。これにより、バッテリユニット3が検査場所162から搭載場所110へと搬送される過程のうち搭載場所110に配達される直前に、バッテリユニット3をメンテナンスすることができ、バッテリ61の劣化を抑制しつつバッテリユニット3を搭載場所110へと移送することができる。この場合、バッテリ保管部屋165は、搭載場所110側の国における輸入業者及び/又は卸売業者に管轄され又は帰属する場所に設置されてもよい。
また、バッテリ搬送段階のうちバッテリユニット3の輸出入では、低緯度帯域を通過する長期海上輸送を必要とすることが多い。このため、海上輸送ではバッテリユニット3の温度管理が劣化抑制のために肝要になる可能性がある。本実施形態では、バッテリユニット3が車体2に搭載されないまま輸送され、輸送先でバッテリユニット3を車体2に搭載するので、バッテリユニット3のみを温度管理下において輸送することができる。他方、車体2は輸送時に特別な温度管理を必要としなくて済む。このため、バッテリユニット3を車体2に搭載した状態で海上輸送する場合と比べ、輸送コストを抑えながらバッテリ61の劣化を抑制することができる。
車体2及びバッテリユニット3は搭載場所110で集合し、そこでバッテリユニット3が車体2に搭載される。このバッテリ搭載段階では、バッテリユニット3の車体2への搭載可否が決定される。搭載許可が決定された場合にのみ、搭載可否決定の対象とされたバッテリユニット3及び車体2によって電動二輪車1を組み立てることができ、当該電動二輪車1が完成車両として顧客に提供される。これにより、好ましくないバッテリユニット3を用いた完成車両が顧客に提供されるのを未然に防止することができる。搭載可否の決定は、搭載作業員自身の判断によって行われてもよい。また、以下に説明する組立管理システム200(図5参照)を用いて自動的に行われてもよい。
図5は、図4に示すバッテリ搭載段階においてバッテリユニット3の車体2への搭載可否を決定するための組立管理システム200の構成を示すブロック図である。図5に示すように、組立管理システム200は、電動二輪車1に通信可能に接続される外部認証装置201を有している。このような外部認証装置201を利用することで、電動二輪車1が認証のための装置を装備する必要がなく、車両の大型化を避けることができる。本実施形態では、電動二輪車1は、電気モータ12の動作を許可する許可状態と、電気モータ12の動作を禁止する禁止状態とを切換え可能な切換え装置190を備えている。本実施形態では、切換え装置190は、バッテリ61と電気モータ12との間の接続及び遮断を切り換えるように構成される。
切換え装置190は、そのハードウェア要素の一例として、バッテリユニット3が車体2に機械的に接続された状態でバッテリ61を電気モータ12に電気的に接続する配線上に設けられ、当該配線を開閉する開閉器を有している。開閉器は常開であり、開閉制御器による指令を受けて配線を閉じることができるので、切換え装置190のハードウェア要素には開閉制御器も含まれ得る。前述のリレー81a,81bは開閉器の一例であり、前述のバッテリ監視装置75は開閉制御器の一例である。開閉器及び開閉制御器は車体2に設けられていてもよい。また、インバータ25が適切なスイッチング動作をしない限り直流のバッテリ61を電源として交流の電気モータ12を適切に動作させることはできないので、切換え装置190のハードウェア要素には、インバータ25が含まれてもよく、更にはインバータ25の動作を司るインバータ制御器(一例として、前述の車両制御装置26)が含まれてもよい。
切換え装置190は、そのソフトウェア要素の一例として、開閉器の制御を実行する工程を有していない初期モードと、バッテリ61を電源として電気モータ12が発生する走行駆動力で電動二輪車1を推進できるようにすべく開閉器に閉指令を与える走行許容モードとを切り換える第1モード切換モジュール191を有する。また、切換え装置190は、そのソフトウェア要素として、インバータ25の制御を実行する工程を有していない初期モードと、前述同様に電動二輪車1を推進できるようにすべくインバータ25にスイッチング動作の制御指令を与えることができる走行許容モードとを切り換える第2モード切換モジュール192を有する。
初期状態では、各モード切換モジュール191,192は初期モードを設定している。モジュール191,192のうちいずれか一方が初期モードを設定していれば、バッテリユニット3が車体2に搭載されていたとしても電気モータ12を動作させ得ない。すなわち、切換え装置190は前述の禁止状態になる。バッテリユニット3が車体2に適正に搭載され且つ各モード切換モジュール191,192が走行許容モードをそれぞれ設定すると、切換え装置190は前述の許可状態になる。
第2モード切換モジュール192はインバータ制御器(例えば、車両制御装置26)によって実現される。本実施形態では、開閉器(例えば、リレー81a,81b)及び開閉制御器(例えば、バッテリ監視装置75)がバッテリユニット3に設けられ、第1モード切換モジュール191は開閉制御器によって実現される。このように2つのモジュール191,192が分かれて設けられるが、開閉制御器をインバータ制御器に統合可能であれば、これらモジュール191,192も当該統合された制御器によって実現され得る。
外部認証装置201は、バッテリユニット3を車体2に搭載する際に車体2又はバッテリユニット3に設定されている各設定情報222,232を取得する情報取得モジュール202と、各設定情報222,232に基づいてバッテリユニット3の車体2への搭載許否(更に言えば、電気モータ12の動作許否)を判定する判定モジュール203と、判定モジュール203からの判定結果に応じて切換え装置190に許可状態及び禁止状態のいずれを設定すべきであるのかを示す電気信号を出力する出力モジュール204と、を備える。
外部認証装置201は、情報取得モジュール202が各設定情報222,232を記憶している電動二輪車1のメモリ221,231にアクセスすることができるように、出力モジュール204が電動二輪車1の切換え装置190に前述の電気信号を伝送可能なように、電動二輪車1と通信可能に接続される。情報取得モジュール202は、取得した各設定情報222,232を判定モジュール203に送信する。判定モジュール203は、送信された設定情報222,232に基づいて判定する。この判定において、判定モジュール203は、設定情報222,232の少なくとも一部をデータベース(集約記憶モジュール)205に記憶されている情報と照合する。また、情報取得モジュール202により取得された設定情報222,232の少なくとも一部がデータベース205に記憶及び更新されてもよい。
出力モジュール204は電気信号を切換え装置190の開閉制御器(例えばバッテリ監視装置75)及びインバータ制御器(例えば車両制御装置26)に電気信号を出力する。切換え装置190は、許可状態を設定すべきであることを示す電気信号を入力すると、禁止状態から許可状態に切り換える。本実施形態では、2つのモード切換えモジュール191,192が、初期モードを走行許可モードに切り換え、それにより開閉器が閉可能になり且つインバータ25が電気モータ12に交流を給電できるようにすべくスイッチング動作可能になる。切換え装置190は、禁止状態を設定すべきである旨示す電気信号を入力すると、禁止状態を維持する。本実施形態では、2つのモード切換えモジュールが初期モードを維持し、開閉器を閉動作させ得ない状態及びインバータ25にスイッチング動作させ得ない状態が維持される。
情報取得モジュール202、判定モジュール203、出力モジュール204及びデータベース205は、異なるデバイスに分散されていてもよいし、同一のデバイスに統合されていてもよい。本実施形態では、情報取得モジュール202及び出力モジュール204が同一の端末装置211で統合される。端末装置211は、電動二輪車1に設けられた制御器と情報を直接的に送受信する。判定モジュール203及びデータベース205は、端末装置211とは異なるサーバ(管理装置)212によって実現される。端末装置211は、サーバ212と公知の通信インフラ技術を用いて通信可能に接続されている。端末装置211は、電動二輪車1との間での情報送受信を容易にするため、搭載場所110で用いられる。サーバ212は搭載場所110とは異なる場所に設けられている。
本実施形態では、搭載場所110が地理的に分散して多数存在する。このシステム200においては搭載場所110の数に応じて複数の端末装置211が準備される一方、サーバ212は単一であってもよい。このように単一のサーバ212にデータベース205が設けられていると、データベース(集中記憶モジュール)205には、地理的に分散した多数の搭載場所110から、各搭載場所110でバッテリ搭載段階が実行されるたびに電動二輪車1の設定情報222,232が集約され、データベース(集中記憶モジュール)205はこのように集約された設定情報222,232を記憶することができる。
設定情報222,232には、バッテリ61に関するバッテリ設定情報222と、車体2に関する車体設定情報232とが含まれる。バッテリ設定情報222は、バッテリユニット3に搭載されたメモリ221に記憶される。前述のバッテリ監視装置75はセル監視ユニット74と協動してバッテリ設定情報222を収集し又は生成することができる。メモリ221はこのバッテリ監視装置75の記憶領域により実現されてもよい。車体設定情報232は、車体2に搭載されたメモリ231に記憶される。前述の車両制御装置26は車両状態を検出する各種センサと通信可能に接続されており、車体設定情報232を収集し又は生成することができる。メモリ231はこの車両制御装置26の記憶領域により実現されてもよい。
バッテリ設定情報222は、バッテリ61の劣化に関連する劣化指標情報223と、バッテリ製造番号に関連する製造識別情報224とが含まれる。製造識別情報224は、品質検査を合格してバッテリ製造番号が付与されると、例えばバッテリ検査場所162(図4参照)においてメモリに221に格納される。
劣化指標情報223には、バッテリ61の状態の履歴を示す状態履歴情報226を含む。状態履歴情報226は、バッテリ61の状態を示す時系列データ又はこの時系列データに基づいて生成されるデータであり、バッテリユニット3が車体2に搭載されているか否かに関わらず定期的に取得される。すなわち、バッテリユニット3が車体2への組付けのため準備されてから車体2に実際に組み付けられようとするまでの期間(前述の待機期間)でさえも、バッテリ監視装置75は状態履歴情報226を定期的に取得してメモリ221に格納する。このように、図4に示す組立方法及び組立管理方法では、バッテリ搭載段階の前に(更に言えば、バッテリ検査段階の後に)、バッテリ61の状態を検出するバッテリ検出段階が含まれる。
本実施形態では、バッテリ監視装置75はバッテリ61を電源として動作することができるように構成されている。そのために前述の初期モードにおいて、バッテリ監視装置75は、リレー83a,83b,85a,85bを閉じるように制御してもよい。また、バッテリ監視装置75はタイマを有し、タイマがある時間の経過を計測するたびに状態履歴情報226をメモリ221に格納する処理を実行する。このような構成により、バッテリユニット3が車体2に搭載されていなくとも、状態履歴情報226は定期的に取得されることができる。
状態履歴情報226には、例えば、バッテリ61の総放電量を示す放電量情報、車体2に搭載された状態において電気モータ12の電源として使用された総時間を示す使用時間情報、バッテリ61周囲の温度に関連するバッテリ周囲温度情報、バッテリ61に与えられた振動を示すバッテリ振動情報、バッテリ61自身の温度に関連するバッテリ温度情報などが含まれる。放電量情報及び使用時間情報は、状態履歴情報226の取得タイミングごとに更新されるので、バッテリ61の使用期間が長くなろうともデータ量が大きくなることを防ぎ、メモリ221の圧迫を防ぐことができる。なお、使用時間情報はバッテリ61の製造年月日情報で代用してもよい。セル監視ユニット74は、対応するバッテリバッテリセル61aの温度を逐次検出しており、逐次検出結果をバッテリ監視装置75に出力する。バッテリ監視装置75は、前回の取得タイミングから今回の取得タイミングまでの期間内に、セル監視ユニット74から入力する時系列データを一時的に格納し、格納されているデータを用いて温度情報を生成する。温度情報は、最大温度、最小温度及び平均温度を示す情報でもよい。これら最大温度、最小温度及び平均温度を示す情報の生成においては、状態履歴情報226の生成及び記憶を開始してから今回の取得タイミングまでの期間にセル監視ユニット74から入力した時系列データが用いられる。これにより、放電量情報と同様にして、バッテリ61の使用期間が長くなろうともデータ量が大きくなることを防ぎ、メモリ221の圧迫を防ぐことができる。
劣化指標情報223には、バッテリ61の正常性を示す診断情報227が含まれてもよい。例えば、診断情報227にはバッテリ61の漏電が発生したことを示す漏電情報が含まれてもよい。そのために、バッテリユニット3が漏電を検出する漏電センサ(図示せず)を有し、バッテリ監視装置75が漏電センサと通信可能に接続されていてもよい。漏電情報は、前述の状態履歴情報226の取得タイミングと同時にメモリ222に記憶されてもよいし、漏電センサからの入力を受けると同時にメモリ222に記憶されてもよい。その他、診断情報には、バッテリユニット3を構成する電装品の異常(例えば、リレーの固着など)が発生したことを示す電装品異常情報が含まれていてもよい。そのために、バッテリ監視装置75がリレーの固着検出専用のリレー開閉シーケンスプログラムを記憶していてもよく、当該プログラムは前述の状態履歴情報226の取得タイミングと同時に実行されてもよい。
車体設定情報232には、車体2の劣化に関連する劣化指標情報233と、車体2の製造番号に関連する製造識別情報234とが含まれる。製造識別情報234は、車体検査を合格して製造番号が付与されると、例えば車体検査場所112(図4参照)においてメモリ231に格納される。
劣化指標情報233には、車体2の状態の履歴を示す状態履歴情報236を含む。状態履歴情報236には、車体2の総走行距離を示す距離情報、車体2の使用時間を示す使用時間情報、電気モータ12の使用回転数に関連する回転数情報、電気モータ12の温度に関連するモータ温度情報、インバータの温度に関連するインバータ温度情報、インバータ25を流れた電流量を示す総電流量情報などが含まれる。回転数情報は、例えば、ゼロから定格回転数までの回転数範囲内で複数の回転数帯域を予め規定し、帯域ごとの使用頻度を相対的に示す情報(いわゆる回転数ヒストグラム)であってもよい。モータ温度情報及びインバータ温度情報は、バッテリ温度情報と同様にして生成され、そのためこれら情報がメモリ231を圧迫しない。
劣化指標情報233には、診断情報237が含まれてもよい。診断情報237には、車体2に設けられている電装品に漏電が発生したことを示す漏電情報や、車体2に転倒が発生したことを示す転倒情報や、車体2に衝突が発生したことを示す衝突情報が含まれていてもよい。その場合、車両制御装置26は、漏電の発生を検出するセンサや、転倒を検出するためのセンサと通信可能に接続される。
車体制御装置26は車体2に設けられているイグニションスイッチ(図示せず)がオンになることで、低圧バッテリ24を電源として動作可能になる。このため、劣化指標情報233は車体2がバッテリユニット3と組み付けられて完成車両としての電動二輪車1に用いられている場合に取得され、新品又は新古品の車体2には記憶されていない。
本実施形態に係るシステム200では、バッテリユニット3を車体2に搭載するときに、その搭載作業者が端末装置211をサーバ212、車両制御装置26及びバッテリ監視装置75に接続する。車体2のイグニションスイッチをオンとしておき、車両制御装置26を動作可能な状態としておく。そして、端末装置211に記憶された認証アプリケーションを起動し、認証処理の開始指令を与える。
すると、以下の組立管理方法又は認証処理が実行される。すなわち、端末装置211の情報取得モジュール202が、メモリ221からバッテリ設定情報222を取得し、メモリ231から車体設定情報232を取得する。情報取得モジュール202は、取得した各設定情報222,232をサーバ212の判定モジュール203に送信する。
判定モジュール203は、送信された各設定情報222,232に基づいて、認証許可条件を満たすか否かを判断する。認証許可条件には、各製造識別情報224,234に関連した識別認証条件が含まれる。サーバ212は、端末装置211から送信された製造識別情報224,234を、車体2及びバッテリユニット3の製造業者から提供されてデータベース205に予め記憶されている識別情報と照合する。車体2及びバッテリユニット3の両方において、データベース205の識別情報に製造識別情報224,234に対応するものが含まれていれば、識別認証条件が充足する。
認証許可条件には、各劣化指標情報223,233に関連した劣化認証条件が含まれる。判定モジュール203は、送信された各劣化指標情報223,233から、車体2及びバッテリユニット3が実用に耐え得るか否か、別の言い方をすると整備点検を必要とするか否かを判断する。劣化認証条件では、各劣化指標情報223,233を構成する情報が予め定められた閾値と比較され、その比較結果に応じて条件成否が判断される。例えば、放電量情報で示されているバッテリ61の総放電量が所定の閾値を超えていれば、そのバッテリ61は実用に耐えられず整備点検(交換を含む)が必要であるものとして、劣化認証条件が不成立となってもよい。バッテリ61の総放電量の他、バッテリ61の交換回数や充電回数が所定の閾値を超えていれば、劣化認証条件が不成立となってもよい。バッテリユニット3が製造されてからの期間が所定の期間を過ぎていると、劣化認証条件が不成立となってもよい。バッテリ61の残容量が所定の閾値未満であれば、劣化認証条件が不成立となってもよい。環境が悪い状態(例えば、温度が高い)におかれた期間が所定時間を超えていると、劣化が進んでいるとして劣化認証条件が不成立となってもよい。
識別認証条件及び劣化認証条件の両方が成立すると、認証許可条件が成立する。認証許可条件が成立したとき、サーバ212の判定モジュール203はその旨示す情報を端末装置211の出力モジュール204に送信する。出力モジュール204は、当該情報を受信すると、切換え装置190のバッテリ監視装置75及び車両制御装置26にそれぞれ許可状態を設定すべき旨示す電気信号を出力する。これにより切換え装置190は許可状態を設定し、電気モータ12の動作が許可されて電動二輪車1が電気モータ12により発生される走行駆動力で推進することができるようになる。なお、この出力モジュール204から出力される電気信号は暗証化されている。したがって、このシステム200を用いて認証許可条件を成立させなければ、切換え装置190の状態を自由に変更することはできない。
認証許可条件が不成立であるとき、サーバ212の判定モジュール203はその旨示す情報を端末装置211の出力モジュール204に送信する。出力モジュール204は、当該情報を受信すると、切換え装置190のバッテリ監視装置75及び車両制御装置26にそれぞれ禁止状態を設定すべき旨示す電気信号を出力する。これにより切換え装置190は禁止状態を維持し、バッテリユニット3が車体2に適正に搭載されていても電気モータ12は動作し得ず、電動二輪車1は電気モータ12により発生される走行駆動力で推進し得ない。よって、認証を受けることができなかったバッテリユニット3及び車体2の組合せによる完成車両が顧客に提供されるのを防ぐことができる。特に、劣化認証条件を充足せず性能低下の可能性があるバッテリユニット3が車体2に搭載されるのを未然に防ぐことができる。
認証許可条件が成立した場合、その認証を受けた車体2の製造識別情報234が、データベース205に記憶されているバッテリの識別情報に関連付けされたうえで、データベース205に記憶される。バッテリユニット3の製造識別情報224も同様であり、車体の識別情報に関連付けされたうえでデータベース205に記憶される。これにより、電動二輪車1の製造業者は、どの車体がどのバッテリユニットと組み合わされて完成車両としての電動二輪車1が顧客に提供されたのか追跡することができる。
識別認証条件が不成立であった場合、どの搭載場所110で真正な製造識別情報を記憶していない車体2又はバッテリユニット3がバッテリ搭載段階に紛れたのかを示す情報が、データベース205に記憶されてもよい。これにより、製造業者が意図しない物の流通を追跡することができる。
識別認証条件が成立した場合、劣化指標情報223,233が、対応の識別情報と関連付けされたうえでデータベース205に記憶されてもよい。また、識別認証条件が成立した場合、認証許可条件が成立したか否かの結果を示す情報が、対応の識別情報と関連付けされたうえでデータベース205に記憶されてもよい。すなわち、データベース205には、情報取得モジュール202及び出力モジュール203の入出力結果をデータベース205に記憶させてもよい。これにより、製造業者は、組立場所111,161及び検査場所112,162から出荷された自己の製品の状態を追跡することができる。
このように上記システム200をバッテリ搭載段階に利用すると、好ましくない車体2及びバッテリユニット3の組合せによる完成車両が顧客に提供されるのを未然に防ぐことができる。また、製造業者は、完成車両としての電動二輪車1が組み立て上がる場所が自己管轄外であってもその品質を保証することができる。また、出荷された自己の製品の状態について追跡することができて有益である。製造業者は、車体2とバッテリユニット3とを組み合わせた場合の不具合、車体2とバッテリユニット3との相性に関してもデータベース205に格納された履歴情報を分析することで確認できる。このようにサーバ212は、マッチング履歴及びログ情報の管理も行う。
特に、本実施形態では、車体2及びバッテリユニット3が独立して小売業者まで移送され、バッテリユニット3は完成車両としての電動二輪車1は無論、車体2からも完全に独立して流通し、単独で商取引の対象になり得る。よって、真正な製造業者により製造されていないバッテリユニット3が流通する可能性を生じさせる。しかし、上記システム200によれば、製造識別情報に基づいて予め定める規則に従ってバッテリユニット3の車体3への搭載可否を決定するので、真正な製造業者により生産されていないバッテリユニットは識別認証条件を充足し得ない。よって、このような好ましくないバッテリユニットを用いて完成車両を組み立て上げようとしてもその車両の電気モータ12は動作し得ない。よって、製造業者により品質保証された製品を顧客に提供することができる。
また、上記システム200によれば、バッテリ搬送段階の過程(前述のバッテリ検出段階)でのバッテリ61の状態に関する検出結果に基づいてバッテリユニット3の車体3への搭載可否を決定する。このため、バッテリ搬送段階で万が一バッテリ61に劣化が生じたとしても、そのバッテリユニット3は劣化認証条件を充足し得ない。よって、このような好ましくないバッテリユニット3を用いて完成車両を組み立て上げようとしてもその車両の電気モータ12は動作し得ない。よって、製造業者は高品質の製品を顧客に提供することができる。
このシステム200を利用すると、新車販売時はもちろん、中古車販売時や賃貸時に特に有益である。このような場合、電動二輪車1に搭載された実績のあるバッテリユニット3が一旦車体2から取り外され、次の顧客に完成車両を提供すべく再びそのバッテリユニット3が車体2に搭載されることが想定される。以前の使用実績や、前回使用から今回搭載までの保管状況などに応じて、車体2及びバッテリユニット3に劣化が生じているおそれがある。本実施形態では、劣化認証条件の成否を判断することで、このような劣化により実用に耐えない車体2又はバッテリユニット3が完成車両として用いられるのを防ぐことができる。中古車販売時や賃貸時におけるバッテリユニット3の車体2への組付けにおいてシステム200を有効に働かせるため、通信コネクタ35,80の接続を一旦解除すると、バッテリ監視装置75及び車両制御装置26が共に自動的に初期モードに移行してもよい。これにより、通信コネクタ35,80を解除された車体2及びバッテリユニット3は再びシステム200の認証を通らなければ完成車両として用いられ得なくなる。
本実施形態では、外部認証装置202(サーバ212)が予め定める規則に従って搭載可否を判定するので、搭載場所110での不正な搭載や製造業者が意図しない搭載作業を防ぐことができる。この認証処理の自動化に際し、外部認証装置202(サーバ212)のデータベース205が必要な情報を記憶しているので、バッテリユニット3及び車体2が記憶すべき情報は自己の設定情報222,232のみで済む。このため、メモリ221,231の容量を小さくすることができる。外部認証装置202(サーバ212)が搭載可否を判断するので、バッテリユニット3の性能の低下を発見しやすい。例えば、一度性能劣化したバッテリユニット3を発見した場合、そのバッテリユニット3の製造識別情報を、性能劣化を発見した旨示す情報及び搬送ルートを示す情報と関連付けしたうえでデータベース212で記憶しておくこともできる。すると、その後当該バッテリユニット3と同様にして保管及び搬送されたバッテリユニット3が車体2と組み合わされようとしている際に、判定モジュール203はデータベース212に蓄積された過去の情報(この場合、性能低下を発見した旨示す情報)を根拠に認証許可条件を不成立としてもよい。なお、搬送ルートを示す情報は、車体検査場所112において製造識別情報と共にメモリ231に記憶されてもよい。
以上、実施形態について説明したが、上記構成は本発明の趣旨の範囲内で変更、削除及び追加することができる。
認証許可条件には、車体2とバッテリユニット3との適合性を判断する車種許可条件が含まれてもよく、車種許可条件が不成立であれば認証許可条件が不成立となってもよい。電動二輪車1の製造業者は、複数種類の車体と複数種類のバッテリユニットとを準備し、組み合わせの多様化によって提供展開する車種の多様化を図ることがある。この場合、車体2及びバッテリユニット3がいずれも真正製品であっても、その組合せの結果が製造業者によって想定されていないものである可能性がある。そこで、車体2とバッテリユニット3とが、製造業者によって想定されている組合せである場合に、車種認証条件が不成立となってもよい。これにより、製造業者が想定している車種の提供展開を保証することができる。
認証許可条件には、搭載場所110に関する情報に関連する条件が含まれていてもよい。例えば、判定モジュール203に送信された搭載場所110の情報及び製造識別情報に基づいて、判定モジュール203は、車体2及びバッテリユニット3が搭載場所110における車両規制(例えば、最大速度規制など)を充足する製品であるか否かを判断してもよい。また、判定モジュール203に送信された搭載場所110の情報及び製造識別情報と、データベース210に識別情報に関連付けされて予め記憶されている仕向け地情報とに基づいて、判定モジュール203は、車体2及びバッテリユニット3が、製造業者が想定している場所で組み合わされようとしているのか否かを判断してもよい。これにより、搭載場所110に適合した車両の提供を保証することができる。搭載場所110の情報は、端末装置211に記憶され、情報取得モジュール202は取得した設定情報222,232と共に判定モジュール203に送信してもよい。
車体2又はバッテリユニット3は、製造業者の想定を超える改造された場合にメモリ221,231にその旨を示す情報を記憶することができるように機械的及び電気的に構成されてもよい。この場合、設定情報222,232には不所望な改造がなされた旨を示す情報が含まれていてもよく、判定モジュール203は、送信された設定情報222,232に基づいて不所望な改造がなされているか否かを判断し、なされていれば認証許可条件を不成立としてもよい。
認証許可条件には、顧客に関する情報に関連する条件が含まれていてもよい。例えば、顧客に運転を免許されている車両のサイズ又は排気量が小さい場合には、判定モジュールは大出力の電気モータ12を搭載した車体2について認証許可条件が不成立であると判定してもよい。また、顧客に関する情報をデータベース205に記憶させてもよい。なお、顧客に関する情報は端末装置211で搭載作業員により入力されてもよい。また、データベース205には、完成車両を組み立て上げようとしている搭載場所110に関する情報、端末装置201(搭載作業者)の情報が記憶されてもよい。
上記実施形態では、切換え装置190が2つのモード切換モジュール191,192を備えるとしたがいずれか一方を備えてもよい。外部認証装置201は、例えばコンピュータ又は携帯情報端末によって実現されてもよい。外部認証装置201は、情報取得モジュール202、出力モジュール203及び判定モジュール204を組み込んだ単一の装置であってもよく、サーバ212を備えていなくてもよい。なお、情報取得モジュール202又は出力モジュール203は情報を入出力可能であればよく、電動二輪車1と有線を介して通信のために機械的に接続されてもよく、無線を介して通信可能に接続されてもよい。
電気モータ12及びバッテリ61の種類は上記実施形態に限定されない。電気モータ12は交流モータでなく直流モータでもよい。バッテリ61には、リチウムイオン電池でなくともよく、例えばニッケル水素電池を用いてもよい。
電動車両は、自動二輪車の形態に限らず、車体に搭載されるバッテリを電源として電気モータ12を駆動し、その電気モータ12によって車輪を駆動する車両であれば、どのような形態の車両にも本発明を適用することができる。特に、保管環境の影響で劣化しやすいバッテリを搭載している電動車両であれば、本実施形態に係る組立方法及び組立管理方法を好適に適用することができる。製造現場以外で車体2にバッテリユニット3が搭載される電動車両であれば、本実施形態に係る組立方法及び組立管理方法を好適に適用することができる。搭載場所での作業負担軽減に照らして、車体2を容易に手押しできるような車体を備える電動車両、例えば鞍乗型車両であれば、本実施形態に係る組立方法及び組立管理方法を好適に適用することができる。鞍乗型電動車両には、電動二輪車に限らず、電動三輪車、電動ATV(all terrain
vehicle)なども含まれる。