(第1の実施形態)
以下、本発明の燃料充填システムの第1の実施形態である車両用の燃料充填システムを、図1〜図7を参照して説明する。
この燃料充填システムは、車両に搭載された燃料タンクに液化石油ガス(LPG)燃料を充填するシステムであり、利用者が自動充填操作を行うと燃料の充填を開始し、燃料タンク内の燃料の液量が、予め定められた燃料供給停止量Lsに到達すると当該燃料タンクへの燃料の供給速度を徐々に遅くして、燃料タンクの最大充填量Lmに到達する前に供給速度を0にする、即ち、燃料の供給を停止する。その後は、利用者が手動充填操作により燃料を供給して最大充填量Lmまで充填を行う。勿論、このような構成は一例であって当該構成に限定されるものではなく、例えば、予備計測やシミュレーションなどに基づいて供給速度と燃料充填量との関係についてのデータテーブルや数式などを取得しておき、燃料タンク内の燃料の液量が、予め定められた燃料供給停止量Lsに到達すると、上記データテーブル等を用いて当該燃料タンクへの燃料の供給速度を徐々に遅くして当該供給速度を0にしたときに、丁度燃料タンクの最大充填量Lmまで充填されるようにしてもよく、又は、燃料タンク内の燃料の液量が、予め定められた最大充填量Lmに到達すると当該燃料タンクへの燃料の供給速度0にして充填を終了させてもよい。このようにすることで、手動充填操作を省略できる。
最大充填量Lmと燃料供給停止量Lsは、燃料の種類、燃料タンクの構成、システムの構成等に応じて適宜設定され、本実施形態において、最大充填量Lmは、燃料タンク容積の85%に設定されている。また、燃料供給停止量Lsは、燃料タンク容積の70%に設定されている。
燃料充填システム1は、図1に示すように、車両に搭載された燃料タンク10の各部分タンク10A、10Bのそれぞれに設けられた複数の液量計測部20A、20B及び信号調整部26を有する供給速度決定装置29と、燃料充填装置30と、を有している。
燃料タンク10は、略箱形に形成された複数の部分タンク10A、10Bを連通管16、17で連通して構成されている。連通管16は、各部分タンク10A、10Bの下部に設けられ、主に燃料の液相部を連通し、連通管17は、各部分タンク10A、10Bの上部に設けられ、主に燃料の気相部を連通する。部分タンク10Aの側壁部10aには燃料を内部に充填するための充填口11が設けられている。この充填口11には、後述する燃料充填装置30の充填ホース32の先端に設けられた充填ノズル31が着脱可能なクイックカップリング12が設けられており、充填口11に充填ノズル31を容易に取り付けたり取り外したりすることができる。部分タンク10A、10Bは略箱形に形成されているので、部分タンク10A、10B内の液量は液面高さに比例する。勿論、部分タンク10A、10Bの形状は任意であり、その場合でも部分タンク10A、10B内の液量と液面高さとは関係を有している。
また、燃料タンク10には、燃料充填管13と、燃料タンク配線14と、が設けられている。燃料充填管13は、その一端が充填口11のクイックカップリング12内に配置され、その他端が部分タンク10A内に上方に向けられて配置されている。また、燃料充填管13の他端には、上述した従来の燃料充填システムと同様の過充填防止装置13aが設けられており、この過充填防止装置13aによって最大充填量Lmを超える燃料の充填を防止している。燃料タンク配線14は、その一端が充填口11のクイックカップリング12に設けられた図示しないコネクタソケットの充填口側端子部14aに接続され、その他端が、後述する供給速度決定装置29の信号調整部26に接続されている。
液量計測部20Aは、部分タンク10Aに設けられており、部分タンク10A内の燃料の液面高さ、即ち、部分タンク10Aの液量に応じた信号を出力する。液量計測部20Aは、図2に示すように、燃料の液面に浮かぶフロート21と、フロート21の位置に応じて回動する回動軸22と、この回動軸22とともに回動するように設けられた検知用マグネット23と、この検知用マグネット23の磁力を検知するホール素子からなる第1液量計測センサ24、第2液量計測センサ25と、を有している。
第1液量計測センサ24は、検知用マグネット23の回動位置により示される燃料の液面高さに比例して電圧が変化する信号を出力するように構成されている。第2液量計測センサ25も、第1液量計測センサ24と同様に、検知用マグネット23の回動位置により示される燃料の液面高さに比例して電圧が変化する信号を出力するように構成されている。第1液量計測センサ24は、車両に搭載された図示しないコンビネーションメータに設けられた燃料計Mに接続されており、第2液量計測センサ25は、配線15によって信号調整部26に接続されている。
液量計測部20Aは、勿論、このような構成以外にも、燃料液面上に浮かぶフロートの位置に応じて抵抗体上を摺動する接点を有し、抵抗体の両端に印加した電圧を分圧した電圧を接点に出力するような構成のものなどを用いても良い。
液量計測部20Bは、部分タンク10Bに設けられており、部分タンク10B内の燃料の液面高さ、即ち、部分タンク10Bの液量に応じた信号を出力する。液量計測部20Bは、上述した液量計測部20Aと同一に構成されており、その詳細説明は省略する。
信号調整部26は、液量計測部20A、20Bにより計測された各部分タンク10A、10B内の液量を示す信号が配線15を通じて入力され、これら信号に基づいて燃料タンク10への燃料の供給速度を決定して、この供給速度に応じた供給速度信号を燃料タンク配線14を通じて、後述する燃料充填装置30に出力する。信号調整部26は、燃料充填装置30から燃料タンク配線14等を通じて供給される電源により動作する。
信号調整部26は、図3に示すように、周知のマイクロコンピュータ(MPU)27などで構成されており、このMPU27は、予め定められたプログラムに従って各種の処理や制御などを行う中央演算処理装置(CPU)27a、CPU27aのための処理プログラムや各種情報等を格納した読み出し専用のメモリであるROM27b、各種のデータを格納するとともにCPU27aの処理作業に必要なエリアを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM27c等を有して構成されている。
また、MPU27にはアナログ−デジタル変換器(ADC)に接続された複数の入力ポートP1、P2が設けられており、これら入力ポートP1、P2には、液量計測部20A、20Bにより計測された各部分タンク10A、10B内の液量を示す液量信号が配線15を通じて入力される。入力ポートP1、P2に入力された液量信号は、アナログ−デジタル変換器によって液量を示す値(デジタル値)に変換されてCPU27aに送られる。CPU27aはこの液量を示す値に基づいて、供給速度を決定する。また、MPU27にはデジタル−アナログ変換器(DAC)に接続された出力ポートP3が設けられており、液量を示す値に応じたアナログ電圧に変換されて、このアナログ電圧が燃料タンク配線14に出力される。
なお、本実施形態においては、各部分タンク10A、10Bが略箱形に形成されているので、それら液面高さとタンク内の液量とは比例し、そのため、各部分タンク10A、10B内の液面高さを示す信号をそのまま液量信号として用いている。しかしながら、各部分タンク10A、10Bの形状が複雑な場合には液面高さとタンク内の液量とが比例しないので、そのような場合には、CPU27aが、液面高さと液量との関係を示す関係式やデータテーブルなどに上記液量信号(即ち、液面高さを示す信号)から得た値を当てはめて液量を検出するように構成される。
ROM27bには、燃料タンク10の最大充填量Lm、燃料供給停止量Lsが格納されている。また、ROM27bには、燃料タンク10に燃料供給停止量Lsの燃料が充填されたときの部分タンク10Aにおける液量を示す供給停止閾値LAs、このときの部分タンク10Bにおける液量を示す供給停止閾値LBs、及び、供給停止閾値LAsより大きい絶対停止閾値LAm、が格納されている。また、ROM27bには、連通管16の内径等から求められた各部分タンク10A、10Bの間を流れる燃料の流動速度を超える第1速度V1、前記流動速度より遅い第2速度V2、が格納されている。なお、第2速度V2は、前記流動速度より遅ければその速度は任意である。また、ROM27bには、各部分タンク10A、10B内の液量の計測値が安定するまでの時間である液量安定時間Tが格納されている。ROM27bに格納された上記各パラメータは、燃料充填システムの構成などに応じて適宜定められる。
次に、上述したCPU27aが実行する本発明に係る処理(供給速度決定処理1)の一例を、図4に示すフローチャートを参照して説明する。
CPU27aは、電源が供給されると所定の初期化処理を実行したのち、所定の周期で以下の供給速度決定処理1を繰り返し実行する。
供給速度決定処理1において、最初に、CPU27aは、入力ポートP1、P2に入力された液量信号に基づいて部分タンク10A、10Bの液量を検出する(S110)。
そして、充填口11が設けられた部分タンク10Aの液量が、絶対停止閾値LAm以上であるかを判定して(S120)、絶対停止閾値LAm以上であれば(S120でY)、燃料タンク10への燃料の供給速度を0に決定して、この供給速度を示す供給速度信号を出力ポートP3から出力して(S130)、液量安定時間Tが経過するまで処理を停止して待ったのち(S140)、再度、部分タンク10A、10Bの液量を検出する(S110に戻る)。
また、部分タンク10Aの液量が、絶対停止閾値LAm未満であれば(S120でN)、続いて、部分タンク10Aの液量が、供給停止閾値LAs以上であるかを判定して(S150)、供給停止閾値LAs以上であれば(S150でY)、燃料タンク10への燃料の供給速度を第1速度V1に決定して、この供給速度を示す供給速度信号を出力ポートP3から出力する(S160)。そして、本フローチャートを終了する。
また、部分タンク10Aの液量が、供給停止閾値LAs未満であれば(S150でN)、続いて、他の部分タンク10Bの液量が、供給停止閾値LBs以上であるかを判定して(S170)、供給停止閾値LBs以上であれば(S170でY)、供給速度を0に向かって徐々に遅くなる速度に決定して(S180)、この供給速度を示す供給速度信号を出力ポートP3から出力する。そして、本フローチャートを終了する。ステップS180において、供給速度を0に向かって徐々に遅くなる速度に決定しているが、供給速度を0に決定してもよい。但し、水撃作用を軽減する観点から前者の決定のほうが望ましい。
また、部分タンク10Bの液量が、供給停止閾値LBs未満であれば(S170でN)、供給速度を第2速度V2に決定して、この供給速度を示す供給速度信号を出力ポートP3から出力する(S190)。そして、本フローチャートを終了する。
なお、燃料充填システムの構成上、充填口11が設けられた部分タンク10Aの液量が絶対停止閾値LAm以上になることがない場合には、上述したステップS110からS150に直接処理を移行し、ステップS120〜S140の処理を省略しても良い。
燃料充填装置30は、街中に所在する燃料スタンドなどに地面に固定して設けられており、燃料タンク10の充填口11に着脱可能な充填ノズル31が先端に設けられた充填ホース32と、地中に設けられた図示しない燃料貯蔵タンクから燃料を吸い上げるとともに燃料タンク10に供給するポンプなどからなる燃料供給部33と、配線38を通じて燃料供給部33と接続され、燃料供給部33による燃料の供給速度を制御する供給速度制御部34と、を有している。
また、燃料充填装置30は、燃料供給管35と、充填装置接続配線36と、を有している。燃料供給管35は、その一端が充填ノズル31接続され、その他端が燃料供給部33に接続され、充填ノズル31から充填ホース32内を通り燃料供給部33まで連なるように設けられている。また、充填装置接続配線36は、その一端が充填ノズル31に設けられた図示しないコネクタプラグのノズル側端子部36aに接続され、その他端が供給速度制御部34に接続されており、充填ノズル31から充填ホース32内を通り供給速度制御部34まで連なるように設けられている。
充填ノズル31が燃料タンク10の充填口11に設けられたクイックカップリング12に装着されると、燃料充填管13と燃料供給管35とが互いに連結され、これと同時に、上記コネクタソケットと上記コネクタプラグとが嵌合して、充填口側端子部14aとノズル側端子部36aとが互いに接触して電気的に接続される。これにより、信号調整部26と供給速度制御部34とが燃料タンク配線14及び充填装置接続配線36を通じて接続される。
供給速度制御部34は、供給速度決定装置29からの供給速度信号が充填装置接続配線36を通じて入力され、この供給速度信号により示される供給速度で燃料タンク10に燃料を供給するように、燃料供給部33を制御する。
供給速度制御部34は、図5に示すように、周知のマイクロコンピュータ(MPU)37などで構成されており、このMPU37は、予め定められたプログラムに従って各種の処理や制御などを行う中央演算処理装置(CPU)37a、CPU37aのための処理プログラムや各種情報等を格納した読み出し専用のメモリであるROM37b、各種のデータを格納するとともにCPU37aの処理作業に必要なエリアを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM37c等を有して構成されている。
また、MPU37にはアナログ−デジタル変換器(ADC)に接続された入力ポートQ1が設けられており、この入力ポートQ1には、供給速度決定装置29からの供給速度信号が充填装置接続配線36を通じて入力される。入力ポートQ1に入力された信号は、アナログ−デジタル変換器によって供給速度を示す値(デジタル値)に変換されてCPU37aに送られる。また、MPU37には燃料供給部33と通信するための通信インタフェースCが設けられており、CPU37aは、この供給速度で燃料を供給するように燃料供給部33を制御するための制御信号を生成するとともにこの通信インタフェースCから配線38を通じて燃料供給部33に送信する。
CPU37aは、次のように動作する。CPU37aは、電源が供給されると所定の初期化処理を実行したのち、燃料充填装置30に設けられた図示しない操作部への自動充填操作の入力を待つ。そして、自動充填操作が入力されると、供給速度決定装置29から充填装置接続配線36を通じて入力された供給速度信号に示される供給速度で燃料を供給するように、燃料供給部33を制御する。そして、燃料タンク10に燃料供給停止量Lsまで燃料が充填されて供給速度0を示す供給速度信号が入力された状態が所定時間(例えば、上述の液量安定時間Tの1.5倍以上)続くと、自動充填が終了したものとして、以降は操作部への手動充填操作の入力を待ち、手動充填操作の入力に応じて、安全に燃料供給が可能な低速度で燃料を供給するように燃料供給部33を制御する。
次に、上述した燃料充填システム1における本発明に係る動作の一例について、図6、図7を参照して説明する。
燃料充填システム1による燃料タンク10への燃料の充填に際して、車両はイグニッションオフ状態にされる。この状態で、充填口11のクイックカップリング12に充填ノズル31を装着すると、供給速度決定装置29は、充填装置接続配線36及び燃料タンク配線14を通じて電源が供給されて動作を開始する。供給速度決定装置29は、電源が供給されると液量計測部20A、20Bによる各部分タンク10A、10Bのそれぞれの液量を測定し、これら液量に応じて決定された供給速度信号を出力する。この状態において、燃料充填装置30に、自動充填操作が入力されると、燃料供給部33が供給速度信号に示される供給速度での燃料の供給を開始する。
そして、図6(a)に示すように、各部分タンク10A、10B内のそれぞれの液量が供給停止閾値LAs、LBs未満のときは、供給速度として第1速度V1を示す供給速度信号が出力されて、この第1速度V1で燃料が供給される。
そして、図6(b)に示すように、部分タンク10B内の液量が供給停止閾値LBs未満で、且つ、部分タンク10A内の液量が供給停止閾値LAsに到達すると、供給速度として第2速度V2を示す供給速度信号が出力されて、この第2速度V2で燃料が供給される。
そして、図6(c)に示すように、各部分タンク10A、10B内のそれぞれの液量が供給停止閾値LAs、LBs以上になると、供給速度として0に向かって徐々に遅くなる速度を示す供給速度信号が出力されて、供給速度が第2速度V2から0に向かって徐々に遅くなり、最終的に供給速度が0になって燃料の供給が停止され、燃料の自動充填が終了する。
また、上記とは別のケースを以下に示す。図7(a)に示すように、各部分タンク10A、10B内のそれぞれの液量が供給停止閾値LAs、LBs未満のときは、供給速度として第1速度V1を示す供給速度信号が出力されて、この第1速度V1で燃料が供給される。
そして、図7(b)に示すように、何らかの原因で、部分タンク10Aの液量が供給停止閾値LAsを超えて絶対停止閾値LAmに到達してしまうと、供給速度として0を示す供給速度信号が出力されて、燃料供給部33からの燃料供給が停止される。
そして、図7(c)に示すように、所定の液量安定時間Tを経過した後に液量を検出して、このときの各部分タンク10A、10B内のそれぞれの液量が供給停止閾値LAs、LBs未満であると、供給速度として第1速度V1を示す供給速度信号が再度出力されて、この第1速度V1で燃料が再度供給される。
そして、図7(d)に示すように、部分タンク10A内の液量が供給停止閾値LBs未満で、且つ、部分タンク10A内の液量が供給停止閾値LAsに到達すると、供給速度として第2速度V2を示す供給速度信号が出力されて、この第2速度V2で燃料が供給される。
そして、図7(e)に示すように、各部分タンク10A、10B内のそれぞれの液量が供給停止閾値LAs、LBs以上になると、供給速度として0に向かって徐々に遅くなる速度を示す供給速度信号が出力されて、供給速度が第2速度V2から0に向かって徐々に遅くなり、最終的に供給速度が0になって燃料の供給が停止され、燃料の自動充填が終了する。
以上より、本実施形態によれば、複数の部分タンク10A、10Bにそれぞれ設けられた複数の液量計測部20A、20Bによって計測された各部分タンク10A、10B内のそれぞれの液量に基づいて、燃料タンク10への燃料の供給速度を決定するので、複数の部分タンク10A、10B内のそれぞれの液量に応じた燃料の供給制御を行うことができ、そのため、複数の部分タンク10A、10Bでの燃料の充填状態にばらつきが生じた場合でも燃料を正確に充填できる。
また、燃料タンク10に設けられた供給速度決定装置29の信号調整部26により燃料の供給速度を決定するとともに当該供給速度を示す供給速度信号を出力し、そして、燃料充填装置30に設けられた供給速度制御部34によって、供給速度信号に基づき燃料供給部33を制御するので、燃料タンク10の構成の違いを供給速度決定装置29によって吸収することができ、そのため、車両などに設けられる燃料タンク10と、燃料スタンドなどに設けられる燃料充填装置30と、の間のインタフェースを標準化できる。
また、複数の部分タンク10A、10Bのうち1つの部分タンク10Aには、燃料が供給される充填口11が設けられ、複数の部分タンク10A、10B内のそれぞれの液量の全てが、これら部分タンク10A、10B毎に予め設定された供給停止閾値LAs、LBs未満のとき、供給速度を部分タンク10A、10B間の流動速度を超える第1速度V1に決定し、部分タンク10A内の液量が供給停止閾値LAs以上で且つ部分タンク10B内の液量が供給停止閾値LBs未満のとき、供給速度を部分タンク10A、10B間の流動速度以下の第2速度V2に決定し、複数の部分タンク10A、10B内のそれぞれの液量の全てが、供給停止閾値LAs、LBs以上のとき、供給速度0に向けて徐々に遅くなる速度に決定するので、燃料を高速に充填するために部分タンク10A、10B間の流動速度を超えた供給速度で燃料を供給すると、部分タンク10A内の液量が最初に所定の供給停止閾値LAsに到達するが、このようなときでも燃料の供給を止めることなく供給速度を上記流動速度以下に低下させて、引き続き各部分タンク10A、10B内の液量の全てが供給停止閾値LAs、LBsになるまで燃料供給を行うことができ、そのため、複数の部分タンク10A、10Bでの燃料の充填状態にばらつきが生じた場合でも燃料を正確に且つ高速で安全に充填できる。
また、充填口の設けられた部分タンク10A内の液量が供給停止閾値LAsより大きく設定された絶対停止閾値LAmを超えたとき、供給速度を0に決定し、そのあとに複数の部分タンク10A、10B内のそれぞれの液量の全てが、供給停止閾値LAs、LBs未満で且つ液量が安定したとき、供給速度を第1速度V1に決定するので、燃料の供給速度が非常に速いと、部分タンク10A内の液量が一時的に供給停止閾値LAsを大きく超えてしまうことがあるが、この液量が供給停止閾値LAsより大きく設定された絶対停止閾値LAmを超えると、燃料の供給速度を0にして供給を一旦停止し、そのあとに各部分タンク10A、10B内の液量が供給停止閾値LAs、LBs以下で変動無く安定すると燃料の供給を再開することができ、そのため、燃料をさらに安全に充填できる。
(第2の実施形態)
以下、本発明の燃料充填システムの第2の実施形態である車両用の燃料充填システムを、図8、図9を参照して説明する。この第2の実施形態は、上述した第1の実施形態と信号調整部26のMPU27が備えるCPU27aの動作に関連する部分が異なる以外は、同一の構成であるので、同一の部分については説明を省略する。
ROM27bには、各部分タンク10A、10Bのそれぞれの容積と、燃料タンク10に燃料供給停止量Lsの燃料が充填されたときの各部分タンク10A、10Bのそれぞれにおける充填率(=液量/部分タンク容積)の平均値を示す充填率閾値Jsが、さらに格納されている。
上述したCPU27aが実行する本発明に係る処理(供給速度決定処理2)の一例を、図8に示すフローチャートを参照して説明する。
CPU27aは、電源が供給されると所定の初期化処理を実行したのち、所定の周期で以下の供給速度決定処理2を繰り返し実行する。
供給速度決定処理2において、最初に、CPU27aは、入力ポートP1、P2に入力された液量信号に基づいて部分タンク10A、10Bの液量を検出する(T110)。そして、これら液量と各部分タンク10A、10Bのそれぞれの容積に基づいて各部分タンク10A、10Bにおける充填率を算出したのち、これら充填率の平均値としての平均充填率を算出する(T120)。
そして、この平均充填率が予め設定された充填率閾値Js以上であるかを判定して(T130)、充填率閾値Js以上であれば(T130でY)、燃料タンク10への燃料の供給速度を0に向かって徐々に遅くなる速度に決定して、この供給速度を示す供給速度信号を出力ポートP3から出力する(T140)。そして、本フローチャートを終了する。
また、充填率閾値Js未満であれば(T130でN)、燃料タンク10への燃料の供給速度を第1速度V1(即ち、請求項中の所定の速度)に決定して、この供給速度を示す供給速度信号を出力ポートP3から出力する(T150)。そして、本フローチャートを終了する。ステップT140において、供給速度を0に向かって徐々に遅くなる速度に決定しているが、供給速度を0に決定してもよい。但し、水撃作用を軽減する観点から前者の決定のほうが望ましい。また、ステップT150において、供給速度を、上記第1速度V1としたが、上記第2速度でも良く、本発明の目的に反しない限り、供給速度については任意である。
次に、上述した第2の実施形態の燃料充填システムにおける本発明に係る動作の一例について、図9を参照して説明する。
この燃料充填システムによる燃料タンク10への燃料の充填に際して、車両はイグニッションオフ状態にされる。この状態で、充填口11のクイックカップリング12に充填ノズル31を装着すると、供給速度決定装置29は、充填装置接続配線36及び燃料タンク配線14を通じて電源が供給されて動作を開始する。供給速度決定装置29は、電源が供給されると液量計測部20A、20Bによる各部分タンク10A、10Bのそれぞれの液量を測定し、これら液量に応じて決定された供給速度信号を出力する。この状態において、燃料充填装置30に、自動充填操作が入力されると、燃料供給部33が供給速度信号に示される供給速度での燃料の供給を開始する。
そして、図9(a)に示すように、各部分タンク10A、10Bの平均充填率が充填率閾値Js未満のときは、供給速度として第1速度V1を示す供給速度信号が出力されて、この第1速度V1で燃料が供給される。
そして、図9(b)に示すように、各部分タンク10A、10Bの平均充填率が充填率閾値Js以上になると供給速度として0に向かって徐々に遅くなる速度を示す供給速度信号が出力されて、供給速度が第1速度V1から0に向かって徐々に遅くなり、最終的に供給速度が0になって燃料の供給が停止される。
そして、燃料の供給の停止により各部分タンク10A、10Bの液量が安定してばらつきが小さくなり、平均充填率が低下して充填率閾値Js未満になると、再度、供給速度として第1速度V1を示す供給速度信号が出力されて、この第1速度V1で燃料が供給されて、上記供給及び供給停止を繰り返して、最終的に、図9(c)に示すように、燃料が燃料供給停止量Lsまで充填されて、燃料の自動充填が終了する。
以上より、本実施形態によれば、複数の部分タンク10A、10Bにそれぞれ設けられた複数の液量計測部20A、20Bによって計測された各部分タンク10A、10B内のそれぞれの液量に基づいて、燃料タンク10への燃料の供給速度を決定するので、複数の部分タンク10A、10B内のそれぞれの液量に応じた燃料の供給制御を行うことができ、そのため、複数の部分タンク10A、10Bでの燃料の充填状態にばらつきが生じた場合でも燃料を正確に充填できる。
また、燃料タンク10に設けられた供給速度決定装置29の信号調整部26により燃料の供給速度を決定するとともに当該供給速度を示す供給速度信号を出力し、そして、燃料充填装置30に設けられた供給速度制御部34によって、供給速度信号に基づき燃料供給部33を制御するので、燃料タンク10の構成の違いを供給速度決定装置29によって吸収することができ、そのため、車両などに設けられる燃料タンク10と、燃料スタンドなどに設けられる燃料充填装置30と、の間のインタフェースを標準化できる。
また、複数の部分タンク10A、10B内のそれぞれの液量から複数の部分タンク10A、10Bの平均充填率を取得して、この平均充填率が予め設定された充填率閾値Js未満のとき、供給速度を所定の速度としての第1速度V1に決定し、平均充填率が前記充填率閾値Js以上のとき、供給速度を0に向けて徐々に遅くなる速度に決定するので、簡易な制御により燃料を正確に充填できる。
(第3の実施形態)
以下、本発明の燃料充填システムの第3の実施形態である車両用の燃料充填システムを、図10、図11を参照して説明する。この第3の実施形態は、上述した第1の実施形態と信号調整部26のMPU27が備えるCPU27aの動作に関連する部分が異なる以外は、同一の構成であるので、同一の部分については説明を省略する。
上述したCPU27aが実行する本発明に係る処理(供給速度決定処理3)の一例を、図10に示すフローチャートを参照して説明する。
CPU27aは、電源が供給されると所定の初期化処理を実行したのち、所定の周期で以下の供給速度決定処理3を繰り返し実行する。
供給速度決定処理3において、最初に、CPU27aは、入力ポートP1、P2に入力された液量信号に基づいて部分タンク10A、10Bの液量を検出する(U110)。
そして、各部分タンク10A、10Bのそれぞれの液量の全てが、供給停止閾値LAs、LBs未満であるかを判定して(U120)、供給停止閾値LAs、LBs未満であれば(U120でY)、燃料タンク10への燃料の供給速度を第1速度V1(即ち、請求項中の所定の速度)に決定して、この供給速度を示す供給速度信号を出力ポートP3から出力する(U140)。そして、本フローチャートを終了する。
また、各部分タンク10A、10Bのそれぞれの液量のうち1つでも供給停止閾値LAs、LBs以上であれば(U120でN)、燃料タンク10への燃料の供給速度を0に向かって徐々に遅くなる速度に決定して、この供給速度を示す供給速度信号を出力ポートP3から出力する(U130)。そして、本フローチャートを終了する。ステップU130において、供給速度を0に向かって徐々に遅くなる速度に決定しているが、供給速度を0に決定してもよい。但し、水撃作用を軽減する観点から前者の決定のほうが望ましい。また、ステップU140において、供給速度を、上記第1速度V1としたが、上記第2速度でも良く、本発明の目的に反しない限り、供給速度については任意である。
次に、上述した第3の実施形態の燃料充填システムにおける本発明に係る動作の一例について、図11を参照して説明する。
この燃料充填システムによる燃料タンク10への燃料の充填に際して、車両はイグニッションオフ状態にされる。この状態で、充填口11のクイックカップリング12に充填ノズル31を装着すると、供給速度決定装置29は、充填装置接続配線36及び燃料タンク配線14を通じて電源が供給されて動作を開始する。供給速度決定装置29は、電源が供給されると液量計測部20A、20Bによる各部分タンク10A、10Bのそれぞれの液量を測定し、これら液量に応じて決定された供給速度信号を出力する。この状態において、燃料充填装置30に、自動充填操作が入力されると、燃料供給部33が供給速度信号に示される供給速度での燃料の供給を開始する。
そして、図11(a)に示すように、各部分タンク10A、10B内の液量の全てが供給停止閾値LAs、LBs未満のときは、供給速度として第1速度V1を示す供給速度信号が出力されて、この第1速度V1で燃料が供給される。
そして、図11(b)に示すように、各部分タンク10A、10B内の液量のうち少なくとも1つが供給停止閾値LAs、LBs以上になると、供給速度として0に向かって徐々に遅くなる速度を示す供給速度信号が出力されて、供給速度が第1速度V1から0に向かって徐々に遅くなり、最終的に供給速度が0になって燃料の供給が停止される。
そして、燃料の供給の停止により各部分タンク10A、10Bの液量が安定してばらつきが小さくなり、各部分タンク10A、10B内の液量が低下して全てが供給停止閾値LAs、LBs未満になると、再度、供給速度として第1速度V1を示す供給速度信号が出力されて、この第1速度V1で燃料が供給されて、上記供給及び供給停止を繰り返して、最終的に、図11(c)に示すように、燃料が供給停止閾値LAs、LBs(即ち、燃料供給停止量Ls)まで充填されて、燃料の自動充填が終了する。
以上より、本実施形態によれば、複数の部分タンク10A、10Bにそれぞれ設けられた複数の液量計測部20A、20Bによって計測された各部分タンク10A、10B内のそれぞれの液量に基づいて、燃料タンク10への燃料の供給速度を決定するので、複数の部分タンク10A、10B内のそれぞれの液量に応じた燃料の供給制御を行うことができ、そのため、複数の部分タンク10A、10Bでの燃料の充填状態にばらつきが生じた場合でも燃料を正確に充填できる。
また、燃料タンク10に設けられた供給速度決定装置29の信号調整部26により燃料の供給速度を決定するとともに当該供給速度を示す供給速度信号を出力し、そして、燃料充填装置30に設けられた供給速度制御部34によって、供給速度信号に基づき燃料供給部33を制御するので、燃料タンク10の構成の違いを供給速度決定装置29によって吸収することができ、そのため、車両などに設けられる燃料タンク10と、燃料スタンドなどに設けられる燃料充填装置30と、の間のインタフェースを標準化できる。
また、複数の部分タンク10A、10B内のそれぞれの液量の全てが、これら部分タンク10A、10B毎に予め設定された供給停止閾値LAs、LBs未満のとき、供給速度を所定の速度としての第1速度V1に決定し、複数の部分タンク10A、10B内のそれぞれの液量のうち少なくとも1つが供給停止閾値LAs、LBs以上のとき、供給速度を0に向けて徐々に遅くなる速度に決定するので、簡易な制御により燃料を正確に充填できる。
上述した第2、第3の実施形態において、信号調整部26のMPU27の出力ポートP3は液量に応じたアナログ電圧を出力するものであったが、これに代えて、Lレベルの電圧(例えば、グランド電圧0V)、及び、Hレベルの電圧(例えば、電源電圧5V)の2種類のデジタル電圧を出力する汎用出力ポートで構成して、一方の電圧レベルを第1速度V1に割り当て、他方の電圧レベルを0に向かって徐々に遅くなる速度に割り当てても良い。このようにすることで、信号調整部26をより簡易な構成にできる。さらに、供給速度制御部34のMPU37の入力ポートQ1は、アナログ−デジタル変換器(ADC)に接続されたものであったが、これに代えて、Lレベルの電圧(例えば、グランド電圧0V)、及び、Hレベルの電圧(例えば、電源電圧5V)の2種類のデジタル電圧を識別可能な汎用入力ポートで構成することで、供給速度制御部34もより簡易な構成にできる。
また、上述した第3の実施形態において、液量計測部20A、20Bがそれぞれ備える第2液量計測センサ25は、検知用マグネット23の回動位置により示される燃料の液面高さに比例して電圧が変化する信号を出力するように構成され、また、信号調整部26のMPU27の入力ポートP1、P2は、アナログ−デジタル変換器(ADC)に接続されたものであったが、これに代えて、第2液量計測センサ25を、検知用マグネット23の回動位置により示される燃料の液面高さが、燃料タンク10内の液量が上述した供給停止閾値LAs、LBs未満のときHレベルの電圧となり、供給停止閾値LAs、LBs以上のときにLレベルの電圧となる信号を出力するように構成して、また、信号調整部26のMPU27の入力ポートP1、P2を、Lレベルの電圧、及び、Hレベルの電圧の2種類のデジタル電圧を識別可能な汎用入力ポートで構成してもよい。このようにすることで、供給速度制御装置29をより簡易な構成にできる。
また、上述した各実施形態において、燃料タンク10は、2つの部分タンク10A、10Bを連通して構成されているが、これに限定されるものではなく、3つ以上の部分タンクを連通して構成されていても良い。または、例えば、図12に示すように、深さが異なる複数の部分110A、110B、110Cを有する1つの燃料タンク110でもよく、このような燃料タンク110では、各部分110A、110B、110Cを上述した部分タンクとみなして、それぞれに液量計測部20A、20B、20Cを設けて、上記と同様に燃料の充填が行われる。即ち、本発明の目的に反しない限り、複数の部分タンクを有する燃料タンクであれば構成は任意である。
上述した各実施形態は、車両に搭載された燃料タンクに燃料を充填する車両用の燃料充填システムを説明するものであったが、これに限定されるものではない。例えば、工場や家庭などに設置された燃料タンクに燃料を充填する燃料充填システムなどであってもよく、本発明の目的に反しない限り、本発明を適用するシステムは任意である。また、充填対象となる燃料は液化石油ガス(LPG)に限らず、例えば、ジメチルエーテル(DME)、液体水素、液化メタンなどの液化ガス、又は、常温常圧で液状となる燃料(灯油、ガソリン等)など、本発明の目的に反しない限り、その種類は任意である。
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。