JP5858712B2 - 薄膜蒸発処理油脂の製造方法 - Google Patents

薄膜蒸発処理油脂の製造方法 Download PDF

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本発明は、薄膜蒸発処理油脂の製造方法に関する。
コレステロールは、細胞膜等の構成成分として、また、副腎皮質ホルモン及びビタミンD等の前駆体として、生体内において重要な役割を果たす脂質である。他方、血中コレステロール値が高まると、動脈硬化症、肥満等を引き起こす可能性があることが知られる。そのため、近年では、コレステロールの含有量が低い食品やコレステロールが含まれていない食品が求められる傾向にある。
植物油は、主にトリグリセリド(トリアシルグリセロール)からなり、少量のジグリセリド(ジアシルグリセロール)、モノグリセリド(モノアシルグリセロール)、微量の脂肪酸、植物ステロール、トコフェロール類等が含まれるが、コレステロールは実質的に含まれていない(なお、コレステロールの含有量が食品100gあたり5mgであり、かつ、飽和脂肪酸の含有量が1.5gである等の基準値を満たさない場合、コレステロールを「含まない旨の表示」が可能である;平成8年5月23日衛新第46号、別紙2)。そのため、植物油は、上述した近年の傾向に応える食品である。
しかし、食品中にコレステロールが含まれていなくとも、当該食品1食分の量を15g以下である旨を表示し、かつ、当該食品中の脂肪酸の量のうち飽和脂肪酸の量の占める割合が15%以下でなければ、食品中にコレステロールが含まれない旨の表示をして当該食品を販売することができない(栄養表示基準第8条第2項ただし書き)。
すなわち、植物油にはコレステロールが実質的に含まれていないとはいえ、当該植物油中の油脂(グリセリド)を構成する全脂肪酸中の飽和脂肪酸の含有量が所定値よりも高ければ、当該植物油についてコレステロールが含まれない旨の表示をすることはできない。そのため、かかる場合は、油脂を構成する全脂肪酸中の飽和脂肪酸の含有量を低減する必要がある。
特許文献1には、薄膜蒸発処理によって油脂中のモノグリセリドの含有量を低減する方法が開示されているが、飽和脂肪酸の含有量を低減する方法は明らかではない。
特開2011−63702号公報
本発明は、原料油脂中の油脂を構成する全脂肪酸中の飽和脂肪酸の含有量が低減された薄膜蒸発処理油脂を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、特定の原料油脂を薄膜蒸発処理することにより、薄膜蒸発処理油脂中の油脂を構成する全脂肪酸中の飽和脂肪酸の含有量を低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、以下の発明を提供する。
(1) 原料油脂を構成する全脂肪酸中に炭素数16〜24の飽和脂肪酸を15質量%を超えて25質量%以下含有し、かつ、原料油脂を構成する全脂肪酸中にパルミチン酸を5質量%以上含有し、かつ、原料油脂中にトリグリセリドを85質量%以上含有する原料油脂を、薄膜蒸発処理して残留分を得る工程を含む薄膜蒸発処理油脂の製造方法であって、上記薄膜蒸発処理の条件が、真空度2〜15Pa、蒸発面温度260〜330℃であり、上記残留分中の油脂を構成する全脂肪酸中の上記炭素数16〜24の飽和脂肪酸の含有量を低減する薄膜蒸発処理油脂の製造方法。
(2) 上記原料油脂は、大豆油、ごま油、トウモロコシ油、米油、落花生油、又はオリーブ油から選ばれる1種以上である(1)記載の薄膜蒸発処理油脂の製造方法。
(3) 上記残留分を脱臭する工程をさらに含む(1)又は(2)記載の薄膜蒸発処理油脂の製造方法。
(4) 上記残留分に抗酸化剤を添加する工程をさらに含む(1)〜(3)のいずれかに記載の薄膜蒸発処理油脂の製造方法。
(5) (1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法で製造された薄膜蒸発処理油脂を含む食用油脂であって、上記食用油脂中の油脂を構成する全脂肪酸に対する飽和脂肪酸の含有量は15質量%以下である食用油脂。
本発明によれば、原料油脂中の油脂を構成する全脂肪酸中の飽和脂肪酸の含有量が低減された薄膜蒸発処理油脂を得ることができる。
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。
(薄膜蒸発処理工程)
本発明の製造方法は、原料油脂を構成する全脂肪酸中の炭素数16〜24の飽和脂肪酸を15質量%を超えて25質量%以下含有し、かつ、原料油脂を構成する全脂肪酸中にパルミチン酸を5質量%以上含有し、かつ、原料油脂中にトリグリセリドを85質量%以上含有する原料油脂を、薄膜蒸発処理して残留分を得る工程を含む。
[原料油脂]
植物油等の油脂は、実質的にコレステロールが含まれていなくとも、当該油脂1食分の量を15g以下である旨を表示し、かつ、当該油脂中の脂肪酸のうち飽和脂肪酸の量の占める割合が15%以下でなければ、油脂中にコレステロールが含まれない旨の表示をして当該油脂を販売することができない(栄養表示基準第8条第2項ただし書き)。
すなわち、油脂についてコレステロールが含まれない旨の表示をするためには、当該油脂中の油脂を構成する全脂肪酸に対する飽和脂肪酸の含有量が15質量%以下であることが要件のひとつである。
そこで、本発明者らが検討した結果、原料油脂を構成する全脂肪酸中に炭素数16〜24の飽和脂肪酸(パルミチン酸等)を15質量%を超えて25質量%以下含有する原料油脂を、後述する薄膜蒸発処理すると、原料油脂から、これらの飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするグリセリド等が留出分として分離されるため、当該原料油脂の残留分中の油脂を構成する全脂肪酸中の上記炭素数16〜24の飽和脂肪酸の含有量を低減できることを見出した。本発明においては、上記留出分が分離された原料油脂(残留分)を「薄膜蒸発処理油脂」と言う。
炭素数16〜24の飽和脂肪酸としては、パルミチン酸(炭素数;16)、ステアリン酸(炭素数;18)、アラキジン酸(炭素数;20)、ベヘニン酸(炭素数;22)、リグノセリン酸(炭素数;24)等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の製造方法において使用される原料油脂を構成する全脂肪酸中の炭素数16〜24の飽和脂肪酸の含有量は、15質量%を超えて25質量%以下、好ましくは15質量%を超えて20質量%以下、さらに好ましくは15質量%を超えて16質量%以下である。
好ましくは、本発明の製造方法において使用される原料油脂を構成する全脂肪酸中のパルミチン酸が5質量%以上、好ましくは5質量%〜20質量%、さらに好ましくは5質量%〜15質量%、5質量%〜11質量%含まれていてもよい。
本発明者らは、パルミチン酸を構成脂肪酸とするグリセリドが、後述する薄膜蒸発処理によって、原料油脂から留出分として分離しやすいことを見出した。そのため、本発明の製造方法において使用される原料油脂を構成する飽和脂肪酸の多くがパルミチン酸であれば、薄膜蒸発処理後の残留分(すなわち、薄膜蒸発処理油脂)中の全脂肪酸中の炭素数16〜24の飽和脂肪酸の含有量を効率的に低減できる。全脂肪酸中の炭素数16〜24の飽和脂肪酸の含有量を低減するとは、例えば、全脂肪酸に対して炭素数16〜24の飽和脂肪酸の含有量が15質量%以下となることを指す。
本発明の製造方法において使用される原料油脂中のトリグリセリドの含有量は、85質量%以上、好ましくは85質量%〜100質量%、さらに好ましくは85質量%〜98質量%、最も好ましくは90質量%〜98質量%である。
本発明の製造方法において使用される原料油脂中のグリセリド以外の成分としては、例えば、植物ステロール、レシチン、抗酸化成分(トコフェロール等)、色素成分等が含まれてもよい。
本発明の製造方法において使用される原料油脂は、脱ガム工程、脱酸工程、水洗工程等によって精製された油脂、又は未精製の油脂であってもよい。油脂の精製方法としては、特に限定されないが、ケミカル精製(ケミカルリファイニング)、フィジカル精製(フィジカルリファイニング)のいずれであってもよい。なお、前者のケミカル精製は、原料となる植物を圧搾・抽出した原油が、脱ガム処理、アルカリ脱酸処理、脱色処理、脱ろう処理、脱臭処理を経ることで精製され、精製油となる。これに対し、後者のフィジカル精製は、原油が、脱ガム処理、蒸留等によるアルカリを使用しない脱酸処理、脱色処理、脱臭処理を経ることで精製され、精製油となる。本発明における原料油脂は、ある程度の不純物が除かれていることが好ましく、脱酸油、脱色油又は脱ロウ油が特に好ましい。
本発明の製造方法において使用される原料油脂としては植物油が好ましい。本発明の製造方法において使用される植物油としては、特に限定されないが、大豆油、ごま油、トウモロコシ油、米油、落花生油、又はオリーブ油から選ばれる1種以上であることが好ましい。これらの植物油は、油脂を構成する全脂肪酸中のパルミチン酸の割合が高い。そのため、これらの植物油は、後述する薄膜蒸発処理によって、飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするグリセリドを留出分として分離しやすいので好ましい。
[薄膜蒸発処理]
本発明における原料油脂は薄膜蒸発処理される。
本発明における薄膜蒸発処理とは、原料油脂を薄膜にして減圧下で加熱し、蒸発を行うことを言う。当該処理により、原料油脂から留出分が分離された残留分(すなわち、薄膜蒸発処理油脂)を得ることができる。留出分には、脂肪酸、モノグリセリド及び/又はジグリセリド等が含まれ得る。残留分には、トリグリセリド等が含まれる。
本発明者による検討の結果、薄膜蒸発処理により、飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするグリセリドを含む留出分を原料油脂から分離できるため、残留分中の油脂を構成する全脂肪酸中の炭素数16〜24の飽和脂肪酸の含有量を、例えば15質量%以下まで低減できることが見出された。
本発明における薄膜蒸発処理は、2〜15Pa、好ましくは、2〜13Pa、より好ましくは2〜10Paの真空度で行ってもよい。本発明における真空度は、2Paに近いことが好ましい。真空度が上記の範囲であると、上述した残留分中の油脂を構成する全脂肪酸中の炭素数16〜24の飽和脂肪酸の含有量を低減できる点で好ましい。
なお、本発明における「真空度」は、絶対圧基準で表記される。この値は、絶対真空をゼロとして、理想的な真空の状態(絶対真空)にどの程度接近しているかを示す。
本発明における薄膜蒸発処理は、薄膜蒸発機の蒸発面の温度を260〜330℃、好ましくは260〜310℃、より好ましくは260〜300℃としてもよい。蒸発面の温度をこれらの範囲で加熱した状態で原料油脂を薄膜蒸発処理すると、原料油脂から飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするグリセリドを効率的に留出分として分離でき、上述した残留分中の油脂を構成する全脂肪酸中の炭素数16〜24の飽和脂肪酸の含有量をより確実に低減できる点で好ましい。
本発明における薄膜蒸発処理は、上述した真空度及び温度範囲を組み合わせることが好ましい。例えば、真空度が2〜15Paであり、かつ、蒸発面の温度が260〜330℃である条件で薄膜蒸発処理を行うと、原料油脂から飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするグリセリドを効率的に留出分として分離でき、上述した残留分中の油脂を構成する全脂肪酸中の炭素数16〜24の飽和脂肪酸の含有量をより確実に低減できる点で好ましい。
本発明における薄膜蒸発処理の処理時間は、特に限定されないが、0.05〜10分、好ましくは0.05〜5分、さらに好ましくは0.05〜1分としてもよい。これらの処理時間で薄膜蒸発処理を行うことにより、薄膜蒸発処理による原料油脂への熱影響を抑制しつつ、原料油脂から飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするグリセリドを留出分として分離でき、上述した残留分中の油脂を構成する全脂肪酸中の炭素数16〜24の飽和脂肪酸の含有量を低減できる。
本発明における薄膜蒸発処理において使用される薄膜蒸発機は、特に限定されないが、流下液膜式、上昇液膜式、ワイプトフィルム式等の蒸発機を使用できる。原料油脂の薄膜蒸発機内滞留時間が短く、原料油脂への熱影響を少なくできる等の点でワイプトフィルム式の蒸発機が好ましい。ワイプトフィルム式の蒸発機としては、ワイプレン(株式会社神鋼環境ソリューション製)等が挙げられる。
本発明における薄膜蒸発処理後の残留分中の油脂を構成する全脂肪酸中の炭素数16〜24の飽和脂肪酸の含有量はキャピラリーガスクロマトグラフ法によって確認できる。
本発明の製造方法によれば、上述した残留分における酸価を低下させ得る。酸価は、加水分解等から生じた、油脂中の遊離の脂肪酸量を示す指標である。酸価が低いことは、油脂中の遊離の脂肪酸量が低減されており、油脂の精製度が高いことを示す。
(脱臭工程)
本発明の製造方法は、上述した残留分を230℃以上、好ましくは230℃〜270℃、さらに好ましくは230℃〜260℃で脱臭する工程をさらに含んでいてもよい。脱臭により、上述した残留分に含まれる色素及び過酸化脂質等が分解され、外観や風味のよい薄膜蒸発処理油脂が得られる。
脱臭工程におけるその他の条件は、特に限定されないが、減圧又は水蒸気吹込を行うことが好ましく、減圧及び水蒸気吹込を行うことがより好ましい。また、脱臭時間は、15〜150分であることが好ましく、40〜100分であることがより好ましい。また、バッチ式、半連続式、連続式等のいずれの方式を使用してもよい。
(抗酸化剤の添加)
本発明の製造方法においては、薄膜蒸発処理により、原料油脂中のトコフェロール等の抗酸化物質が、原料油脂から留出分として分離されるため、上述した残留分においては、トコフェロール等の抗酸化物質の含有量が少ない可能性がある。抗酸化物質の含有量が少ない油脂においては、油脂の酸化が促進しやすく、油脂の風味等が劣化してしまうという問題が生じ得る。
そのため、本発明の製造方法は、上述した残留分に抗酸化剤を添加する工程をさらに含んでいてもよい。当該工程により、上述した残留分の酸化を抑制できるため、風味等の劣化が抑制された薄膜蒸発処理油脂が得られる。
本発明の製造方法において使用される抗酸化剤としては、特に限定されないが、トコフェロール(ビタミンE)、アスコルビン酸(ビタミンC)、アスコルビン酸パルミテート、等が挙げられる。また、これら抗酸化剤と相乗作用のあるクエン酸、リン脂質等を添加してもよい。
本発明の製造方法において使用される抗酸化剤の添加量は、特に限定されないが、上述した残留分中に質量比で100〜3000ppmとなるように添加することが好ましく、100〜1000ppm添加することがさらに好ましい。
(本発明における薄膜蒸発処理油脂を含む食用油脂)
本発明の食用油脂は、上述した本発明の製造方法により得られる薄膜蒸発処理油脂を含むことを特徴とする。本発明の食用油脂は、食用油脂中の油脂を構成する全脂肪酸に対する飽和脂肪酸の含有量が低減されている。
本発明の食用油脂は、本発明の製造方法において、異なる種類の油脂が混合された原料油脂を使用することで得られた薄膜蒸発処理油脂を含んでいてもよい。例えば、油脂を構成する全脂肪酸中の炭素数16〜24の飽和脂肪酸の含有量が多い油脂(例えば、パームオレイン)と、油脂を構成する全脂肪酸中の炭素数16〜24の飽和脂肪酸の含有量が少ない油脂(例えば、菜種油)とを適切な割合で混合した原料油脂を本発明の製造方法において使用できる。これにより、飽和脂肪酸の含有量が所望の量まで低減された薄膜蒸発処理油脂(例えば、薄膜蒸発処理油脂中の油脂を構成する全脂肪酸に対する飽和脂肪酸の含有量が15質量%以下である薄膜蒸発処理油脂)を効率よく得られる。
また、本発明の食用油脂は、本発明の製造方法によって製造された薄膜蒸発処理油脂に、さらに任意の油脂を添加したものであってもよい。任意の油脂は、得られる食用油脂中の油脂を構成する全脂肪酸に対する飽和脂肪酸の含有量が15質量%以下となるものであれば特に限定されない。例えば、菜種油、アマニ油、サフラワー油等の飽和脂肪酸の含有量が少ない油脂が挙げられる。
本発明の食用油脂には、ポリグリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、蔗糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、シリコーン、二酸化珪素等の食用油脂に通常含まれる添加剤等が含まれていてもよい。
以下、本発明の実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら限定されるものではない。
<実施例1;大豆油の薄膜蒸発処理>
脱色処理された大豆油を、薄膜蒸発機(2−03型ワイプレン、株式会社神鋼環境ソリューション製)に、予備加熱を行った後に、蒸発面へ3.4g/分の供給流量で導入し、真空度10Paの減圧条件下で伝熱面積0.03mで薄膜蒸発処理した。真空ポンプは油回転真空ポンプ及び油拡散ポンプを併用した。
なお、薄膜蒸発機は下記のように設定した。なお、蒸発面に供給される油脂が十分に加熱されるように、油脂をクッションタンクによって予備加熱した(以下の実施例及び比較例において同様である)。
蒸発面;290℃(マントルヒーターによる加熱)
クッションタンク;予備加熱160℃(リボンヒーターによる加熱)
コンデンサーの周囲温度;75℃
以上の条件で薄膜蒸発処理した後の残留分及び留出分を採取した。
薄膜蒸発処理前の大豆油(原料油脂)、薄膜蒸発処理後の大豆油から得た残留分(薄膜蒸発処理油脂)及び留出分について、下記のように物性及び組成を検討した。
[酸価]
日本油化学協会編「基準油脂分析試験法 2.3.1−1996 酸価」に基づき測定した。
[色度]
色度を、日本油化学協会編「基準油脂分析試験法2.2.1.1.」のロビボンド法に準拠し、測定した。測定装置として、ロビボンド比色計(133.4mmセル使用,F型,Tintometer社製,測定温度25℃)を使用した。ロビボンド比色計の黄色セルの観測数値(Y値)をYとし、赤色セルの観測数値(R値)をRとした。
[脂肪酸組成]
日本油化学協会編「基準油脂分析試験法 暫17−2007 トランス脂肪酸含量(キャピラリーガスクロマトグラフ法)」に準拠し、測定した。
[トコフェロールの含有量]
日本油化学協会編「基準油脂分析試験法 2.4.10−2003 トコフェロール(蛍光検出器−高速液体クロマトグラフ法)」に基づき測定した。
[脂質組成]
キャピラリーガスクロマトグラフ法にて分析した。サンプル7.5μlをヘキサン1.5mlで希釈後、GC(カラム:65TG)で分析した。GC条件は、カラム温度:350℃、昇温:1℃/分、最終温度:365℃とした。
薄膜蒸発処理前の大豆油(原料油脂)、薄膜蒸発処理後の大豆油から得た残留分(薄膜蒸発処理油脂)及び留出分の物性及び脂肪酸組成を表1に示す。表中、「MG」はモノグリセリド、「DG」はジグリセリド、「TG」はトリグリセリドを示す。表中の「%」は質量%を示す。
Figure 0005858712
表1に示される通り、薄膜蒸発処理により、残留分中の油脂を構成する全脂肪酸中の炭素数16〜24の飽和脂肪酸の含有量が15質量%以下となった。また、薄膜蒸発処理により、薄膜蒸発処理前の大豆油と比較して、残留分の酸価は減少し、モノグリセリド、ジグリセリドの含有量が低減した。また、残留分には、トコフェロールが含まれていなかった。
一方、薄膜蒸発処理により、留出分中の油脂を構成する全脂肪酸中の炭素数16〜24の飽和脂肪酸の含有量が15質量%を超えた。また、薄膜蒸発処理により、薄膜蒸発処理前の大豆油と比較して、留出分中の酸価が上昇し、モノグリセリド、ジグリセリドの含有量が増加した。また、留出分中の色度は、薄膜蒸発処理により顕著に低下した。
<実施例2;ごま油の薄膜蒸発処理>
脱色処理された焙煎ごま油を、薄膜蒸発機(2−03型ワイプレン、株式会社神鋼環境ソリューション製)に、予備加熱を行った後に3.4g/分の供給流量で導入し、真空度10Paの減圧条件下で、伝熱面積0.03mで薄膜蒸発処理した。真空ポンプは油回転真空ポンプ及び油拡散ポンプを併用した。
なお、薄膜蒸発機は下記のように設定した。
蒸発面;290℃(マントルヒーターによる加熱)
クッションタンク;予備加熱160℃(リボンヒーターによる加熱)
コンデンサーの周囲温度;75℃
以上の条件で薄膜蒸発処理した後の残留分及び留出分を採取した。脂肪酸組成を実施例1と同様に検討した。
薄膜蒸発処理前の焙煎ごま油(原料油脂)、薄膜蒸発処理後の焙煎ごま油から得た残留分(薄膜蒸発処理油脂)及び留出分の脂肪酸組成を表2に示す。表中の「%」は質量%を示す。
Figure 0005858712
表2に示される通り、薄膜蒸発処理により、残留分中の油脂を構成する全脂肪酸中の炭素数16〜24の飽和脂肪酸の含有量が15質量%以下となった。また、残留分には、トコフェロールが含まれていなかった。
<比較例1;菜種油の薄膜蒸発処理>
脱色処理された菜種油を、薄膜蒸発機(2−03型ワイプレン、株式会社神鋼環境ソリューション製)に、予備加熱を行った後に3.4g/分の供給流量で導入し、真空度10Paの減圧条件下で伝熱面積0.03mで薄膜蒸発処理した。真空ポンプは油回転真空ポンプ及び油拡散ポンプを併用した。
なお、薄膜蒸発機は下記のように設定した。
蒸発面;270℃(マントルヒーターによる加熱)
クッションタンク;予備加熱160℃(リボンヒーターによる加熱)
コンデンサーの周囲温度;75℃
以上の条件で薄膜蒸発処理した後の菜種油の残留分及び菜種油から分離した留出分を採取した。物性及び組成を実施例1と同様に検討した。
薄膜蒸発処理前の菜種油(原料油脂)、薄膜蒸発処理後の菜種油から得た残留分(薄膜蒸発処理油脂)及び留出分の物性及び組成を表3に示す。表中の「%」は質量%を示す。
Figure 0005858712
表3に示される通り、薄膜蒸発処理の前後において、菜種油中の油脂を構成する全脂肪酸中の飽和脂肪酸の含有量はほぼ変化しなかった。また、原料油脂にはトコフェロールが620ppm含まれていたが、残留分には、トコフェロールが含まれていなかった。
<参考例;パームオレインの薄膜蒸発処理>
脱臭処理されたパームオレイン(ヨウ素価;56)を、薄膜蒸発機(2−03型ワイプレン、株式会社神鋼環境ソリューション製)に、予備加熱を行った後に3.4g/分の供給流量で導入し、真空度10Paの減圧条件下で、伝熱面積0.03mで薄膜蒸発処理した。真空ポンプは油回転真空ポンプ及び油拡散ポンプを併用した。
なお、薄膜蒸発機は下記のように設定した。
蒸発面;270℃(マントルヒーターによる加熱)
クッションタンク;予備加熱160℃(リボンヒーターによる加熱)
コンデンサーの周囲温度;75℃
以上の条件で薄膜蒸発処理した後の残留分及び留出分を採取した。脂肪酸組成を実施例1と同様に検討した。脂質組成におけるDG/TG比、DG含有量及びTG組成を下記のように検討した。なお、「DG」はジグリセリド、「TG」はトリグリセリドを示す。
[DG/TG比、DG含有量及びTG組成]
キャピラリーガスクロマトグラフ法にて分析した。サンプル7.5μlをヘキサン1.5mlで希釈後、GC(カラム:65TG)で分析した。GC条件は、カラム温度:350℃、昇温:1℃/分、最終温度:365℃である。DG/TG比は、DGとTGの各量(質量)から算出した。なお、TG組成は全トリグリセリドに対する各トリグリセリド成分の割合(質量%)を示す。
薄膜蒸発処理前のパームオレイン(原料油脂)、薄膜蒸発処理後のパームオレインから得た残留分(薄膜蒸発処理油脂)及び留出分の脂質組成を表4に示す。表4中、「DG」はジグリセリド、「TG」はトリグリセリド、「P」、「O」、「M」、「S」、「L」は、それぞれトリグリセリドの構成脂肪酸を示し、「P」はパルミチン酸、「O」はオレイン酸、「M」はミリスチン酸、「S」はステアリン酸、「L」はリノール酸、「uk」は同定できなかった物質を示す。表中の「%」は質量%を示す。
Figure 0005858712
薄膜蒸発処理前のパームオレイン(原料油脂)、薄膜蒸発処理後のパームオレインから得た残留分(薄膜蒸発処理油脂)及び留出分の脂肪酸組成を表5に示す。表中の「%」は質量%を示す。
Figure 0005858712
表4に示される通り、薄膜蒸発処理により、薄膜蒸発処理前のパームオレインと比較して、残留分中のジグリセリドの含有量が低減した。
また、表5に示される通り、薄膜蒸発処理により、薄膜蒸発処理前のパームオレインと比較して、残留分中の油脂を構成する全脂肪酸中の飽和脂肪酸の含有量が低減した。
<比較例2;薄膜蒸発処理における真空度の検討>
真空度を20Pa又は40Paとしたこと以外は、実施例1と同様にして、大豆油の残留分及び留出分を採取した。物性及び組成を実施例1と同様に検討した。その結果を表6に示す。表中の「%」は質量%を示す。
Figure 0005858712
表6に示される通り、真空度が20Pa以上である場合、残留分中の油脂を構成する全脂肪酸中の炭素数16〜24の飽和脂肪酸の含有量は低減していなかった。
<実施例3;薄膜蒸発処理油脂の脱臭処理>
実施例1の残留分(薄膜蒸発処理油脂)を脱臭処理(230℃、60分、300Pa、水蒸気量3%)した。得られた脱臭油の風味は良好であった。
<実施例4;薄膜蒸発処理油脂への抗酸化剤の添加>
実施例3で得られた脱臭油に抗酸化剤(トコフェロール)を800ppm添加した脱臭油、及び抗酸化剤を添加していない脱臭油を、それぞれ40℃で1ヶ月保存した。なお、抗酸化剤として、トコフェロール98M(トコフェロール類含有量:90質量%、日清オイリオグループ株式会社製)を使用した。抗酸化剤を添加した脱臭油は、添加していない脱臭油と比較して、風味劣化が抑えられていた。

Claims (5)

  1. 原料油脂を構成する全脂肪酸中に炭素数16〜24の飽和脂肪酸を15質量%を超えて25質量%以下含有し、かつ、原料油脂を構成する全脂肪酸中にパルミチン酸を5質量%以上含有し、かつ、原料油脂中にトリグリセリドを85質量%以上含有する原料油脂を、薄膜蒸発処理して残留分を得る工程を含む薄膜蒸発処理油脂の製造方法であって、
    前記薄膜蒸発処理の条件が、真空度2〜15Pa、蒸発面温度260〜330℃であり、
    前記原料油脂は植物油であり、
    前記残留分中の油脂を構成する全脂肪酸中の前記炭素数16〜24の飽和脂肪酸の含有量を低減する薄膜蒸発処理油脂の製造方法。
  2. 前記原料油脂は、大豆油、ごま油、トウモロコシ油、米油、落花生油、又はオリーブ油から選ばれる1種以上である請求項1記載の薄膜蒸発処理油脂の製造方法。
  3. 前記残留分を脱臭する工程をさらに含む請求項1又は2記載の薄膜蒸発処理油脂の製造方法。
  4. 前記残留分に抗酸化剤を添加する工程をさらに含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄膜蒸発処理油脂の製造方法。
  5. 前記残留分を得る工程で得られた残留分中の油脂を構成する全脂肪酸に対する飽和脂肪酸の含有量は15質量%以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の薄膜蒸発処理油脂の製造方法
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