JP5857867B2 - 亜鉛系めっき熱処理鋼材の製造方法 - Google Patents

亜鉛系めっき熱処理鋼材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、亜鉛系めっき鋼材に熱処理を施した亜鉛系めっき熱処理鋼材の製造方法に関し、さらに詳しくは、自動車構造部材等に好適に用いられる、高強度を有するとともに塗装後耐食性に優れる亜鉛系めっき熱処理鋼材の製造方法に関する。
コスト面で優れる亜鉛系めっき鋼材である溶融亜鉛めっき鋼板,合金化溶融亜鉛めっき鋼板または電気亜鉛めっき鋼板が、使用環境における耐食性が必要十分であることから、自動車構造部材として広く用いられる。ここで、自動車構造部材とは、自動車の車体をなすボディシェルを構成する各種構造部材や、このボディシェルに装着されるフード,ドアー,フェンダー等のカバー類を構成する各種構造部材を意味する。
合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、鋼板に連続的に溶融亜鉛めっきを行った後に500〜550℃程度の温度で熱処理することによりめっき層全体をFe−Znの金属間化合物層に変化させたものである。合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、めっき層が電気化学的に幾分貴となるために犠牲防食能は溶融亜鉛めっき鋼板や電気亜鉛めっき鋼板に比較すると僅かに低下するものの、めっき層の塗膜との密着性が向上することから、化成処理および電着塗装を行われる自動車構造部材に賞用される。
近年、自動車構造部材には、地球環境への配慮から、軽量で高強度を有することが一段と強く要請されるようになってきた。また、車体に対する安全性の要求もさらに高まり、安全対策の一つとして、衝突時の安全性確保の観点から、衝突時のエネルギー吸収特性を高めるための開発も行われている。例えば、自動車の側面からの衝突に対する安全性を高めるために、鋼管等の金属管が補強用のドアービームとして用いられ、こうした金属管に適当な湾曲形状を与えることで衝突エネルギーの吸収能を高めている。また、センターピラーの補強材もその形状や曲率の適正化を図ることにより、衝突時のエネルギー吸収能を高めている。こうした観点から、金属管、特に鋼管素材や鋼板の成形品素材を、自動車構造部材として最適な形状に曲げ加工する工夫がなされている。
さらに、車体軽量化の観点から、自動車構造部材には高張力化への要請も高く、このような要請に対応するため、従来とは全く異なる強度レベルからなる高張力鋼、例えば、引張強さが780MPa以上、さらに900MPa以上という超高強度の鋼材が広く用いられている。
高張力鋼からなる素材に、冷間で曲げ加工することは困難であり、また熱間で曲げ加工すると不均一な歪みの発生により成形形状のばらつきを防止することが困難になり、形状凍結性に問題がある。これに加えて、上述の観点から最適な形状に曲げ加工を行うために、多岐にわたる曲げ形状、例えば、曲げ方向が2次元的さらには3次元的に異なる曲げ形状からなる鋼材を高い寸法精度で加工する曲げ加工技術の開発も強く要請されている。
そこで、本発明者らは、先に特許文献1により、鋼材の曲げ方向が3次元的に異なる連続曲げの場合であっても効率的に曲げ加工、さらには同時に被加工材の焼入れを行うことができる熱間曲げ加工方法およびその曲げ加工方法を利用した曲げ加工装置を開示した。
特許文献1により開示された曲げ加工方法は、高周波加熱コイルにより被加工材である鋼材を、その長手方向へ搬送しながら、逐次連続的に被加工材の塑性加工が容易な温度、または必要により被加工材の焼入可能な温度以上で、かつ組織が粗粒化しない温度まで急速加熱した後に急速冷却することによって、搬送される鋼材の長手方向の一部に高温領域(変形抵抗低下領域)を部分的に形成し、可動ローラダイスを用いて高温領域に曲げモーメントを与えて塑性変形させるものである。この曲げ加工方法は、被加工材を大気中で加熱して実施することが経済的である。
前述の通り、自動車構造部材に用いられる鋼材には、基本的に車体組み立て後に化成処理および電着塗装を施されるが、耐食性を強化する観点から、亜鉛系めっき鋼材が多用されている。したがって、特許文献1により開示された曲げ加工方法等において被加工材として亜鉛系めっき鋼材を用いることができれば、被加工材の加熱による酸化を防止できるとともに、耐食性を有する曲げ加工部材や焼入部材を得ることができ、亜鉛系めっき鋼材の自動車用途への適用範囲を大幅に拡大することが可能になる。
しかし、亜鉛めっき鋼材をそのA点以上、さらにはA点以上に加熱すると、(a)亜鉛の蒸気圧は、例えば200mmHg:788℃、400mmHg:844℃と、温度の上昇とともに急増するために急速加熱過程で気化する可能性があるとともに、(b)大気中での加熱に伴い亜鉛の酸化が生じるおそれがある。
これらの問題に対応するため、特許文献2には、亜鉛めっきされた高周波焼入用鋼板を、Ar点〜1000℃の焼入温度で、かつ加熱開始から350℃に冷却されるまでのヒートサイクルタイムを60秒間以内に制限して、加熱および冷却する方法が開示されている。この方法によれば、高周波焼入強化部材として、焼入用鋼板を素板とする溶融亜鉛めっき鋼板を用いて強度を向上させる部位に高周波焼入れを施しても、焼入部にめっき層を残存させることができ、しかも、めっき層中のFe濃度が35%以下(本明細書では特に断りがない限り「%」は「質量%」を意味する)に制御され、塗装性および耐食性に優れる自動車用部材を提供できるとしている。
さらに、本発明者らは、特許文献3により、亜鉛めっきされた鋼材を一旦500〜800℃の温度範囲で1〜60分間熱処理し、その後Ac点以上の温度域に急速に加熱および冷却する方法を開示した。一旦熱処理をすることにより母材のFeとめっきのZnとの相互拡散が促進されてめっきの耐熱性が向上し、その後の急速な加熱による加熱温度が高くてもZnが残留するようになり、耐食性を確保することが可能になる。
しかし、非特許文献1に開示されているように、鋼材を急速加熱して焼入れにより硬化するには、実用的な多くの鋼材では900℃以上に加熱する必要がある。
高周波誘導加熱コイルによる加熱は、必ずしも被加熱材を均一に加熱できるものではない。特許文献4には、加熱の均一性を向上した高周波誘導加熱コイルが開示されているが、特許文献4の実施例の欄(段落0090〜0092)には、被加熱材である鋼材の部位による温度差が、発明例であっても80℃であることが記載されている。
国際公開第2006/093006号パンフレット 特開2000−248338号公報 特開2011−122240号公報 国際公開第2011/083817号パンフレット 神戸製鋼技報 vol.61 2011年 45頁 図6
鋼材に生じる温度差は、高周波加熱コイルによる加熱ばらつきのみに起因するのではなくて、鋼材の肉厚のばらつきや高周波誘導加熱コイルの中心位置からの鋼材の偏在等にも起因して、発生する。このため、鋼材に生じる温度差は、最大で約200℃にも達し得る。200℃の温度差が鋼材に発生する頻度は実際には低いものの、自動車構造鋼材は量産されるものであるから、無視し難い数量の不良品が発生する可能性を否定できない。したがって、900℃を確保して加熱しようとすれば、鋼材の加熱温度が約1100℃まで高まる可能性もある。
このように、大量生産でも安定的に所定の焼入れ硬度を確保しながらめっき層の耐食性を確保するためには、前記(a),(b)の現象が生じないような加熱温度の領域をできるだけ拡大できる製造方法、より好ましくは約1100℃に加熱されても前記(a),(b)の現象が生じ難い製造方法が求められる。
本発明者らは、亜鉛系めっき鋼材を約1100℃に加熱してもめっき層の燃焼や酸化が生じない方法を鋭意検討した結果、略述すると、素材であるZn系めっき鋼材を急速に加熱する前に、Zn系めっき鋼材を予備加熱してからめっき層を溶解し得る液と接触させることによって、Zn系めっき鋼材を急速に加熱した際のめっき層の耐熱性を向上できるようになることを知見し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。
本発明は、少なくとも片面に、付着量が片面当り30〜90g/mであるとともにFe含有量が8〜35%であるZn−Fe合金めっき皮膜を備える管状の亜鉛系めっき鋼材を、大気雰囲気、または酸素を20体積%以下、残部は窒素、二酸化炭素および水蒸気からなる雰囲気下で、500〜800℃の温度範囲で1〜60分間保持した後に、めっき層を溶解し得る溶液と接触させ、めっき層を0.2g/m以上溶解させ、乾燥させてから、30℃/秒以上の昇温速度で焼入れが可能であって、かつ1130℃以下の温度域への加熱を行ってから30℃/秒以上の冷却速度での冷却を行うことを特徴とする亜鉛系めっき熱処理鋼材の製造方法である。
い。
本発明によれば、特許文献1により開示された曲げ加工方法等において、被加工材として亜鉛系めっき鋼材を用いた場合に、従来より高温に加熱しても被加工材の加熱による亜鉛めっき層の酸化を防止できるとともに耐食性を有する曲げ加工部材や焼入部材を得ることができ、亜鉛系めっき鋼材の自動車用途への適用範囲を大幅に拡大することが可能になる。
図1は、X線解析結果を示すグラフである。
本発明は、以下に説明する素材に下記の予熱工程,液処理工程,急速加熱および冷却工程を経て亜鉛系めっき熱処理鋼材を製造する。そこで、(1)素材,(2)予熱工程,(3)液処理工程、(4)急速加熱および冷却工程を順次説明する。
(1)素材
素材は、Zn−Fe合金めっき皮膜を備える管状の亜鉛系めっき鋼材である。
管状の亜鉛系めっき鋼材は、特定の横断面形状を有するものには限定されず、例えば、丸形,矩形さらには台形等の横断面形状を有する閉断面材,押し出し加工により製造される異型断面材(例えばチャンネル),または各種の横断面形状を有する棒材(丸棒,角棒,異型棒)でもよいし、さらには、これらの部材であって、かつ横断面積が長手方向へ連続的に変化する、いわゆるテーパー型の鋼材であってもよい。
Zn−Fe合金めっき皮膜は、鋼材の少なくとも片面に形成される。ここで、「片面」とは、鋼材が閉断面鋼材または異型断面鋼材である場合には内面または外面を意味し、棒鋼材である場合には表面を意味する。
Zn−Fe合金めっき皮膜の付着量は片面当り30〜90g/mである。Zn−Fe合金めっき皮膜の付着量が30g/m未満であると、塗装疵部の腐食深さを抑制する効果が不足し、自動車構造部材として要求される耐食性を満足できないおそれがある。一方、Zn−Fe合金めっき皮膜の付着量が90g/m超であると、加熱によりめっき層が液相状態になることに伴って、液タレやZn融液の飛沫付着を生じ易くなり、外観不良を生じるおそれがある。このため、Zn−Fe合金めっき皮膜の付着量は30g/m以上90g/m以下とする。Zn−Fe合金めっき皮膜の付着量は、好ましくは40g/m以上80g/m以下であり、さらに好ましくは50g/m以上70g/m以下である。なお、Zn−Fe合金めっき皮膜の付着量は、Zn−Fe合金めっき皮膜がFeやAlを含有する場合には、これらも加算される。
Zn−Fe合金めっき皮膜のFe含有量は8〜35%以下である。Zn−Fe合金めっき皮膜のFe含有量が8%を下回ると、めっきの電位が卑になるとともに、めっき被膜上に塗装が施される際の塗膜密着性が劣る。一方、Zn−Fe合金めっき皮膜のFe含有量が35%を超えると、Zn系被膜が電気化学的に貴となり過ぎて犠牲防食能が低下する。Zn−Fe合金めっき皮膜のFe含有量は、好ましくは25%以下であり、さらに好ましくは20%以下である。
Zn−Fe合金めっき皮膜はAlを含有してもよい。Zn−Fe合金めっき皮膜の急速加熱時には、AlはZnより酸化し易いとともにめっき層が一時的に融液になって元素の拡散が速くなるため、Zn−Fe合金めっき皮膜中のAlが速やかにめっき表層に濃化し、Al酸化物の皮膜を形成する。Al酸化物の皮膜には、酸素の侵入を阻害しZnの酸化を防ぐ作用がある。Al含有量が高いほうが(例えばAl含有量≧0.05%とするのが好ましい)、急速加熱でAl酸化物の皮膜が厚く形成され、Znの酸化を防ぐ作用が大きくなると考えられる。一方、Al含有量が高過ぎると、熱処理後の塗装性や溶接性等に悪影響を及ぼし得る。このため、Zn−Fe合金めっき皮膜中のAl含有量は0.5%以下とすることが好ましい。
鋼材が鋼管である場合、この鋼管は、母材である鋼管に溶融亜鉛めっき処理および合金化熱処理を施して得られたものでもよく、あるいは電気亜鉛めっき鋼管を加熱して、合金化溶融亜鉛めっき鋼管として得られたものでよいし、さらには、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の板材を素材として製管加工して得られたものでもよい。
また、母材である鋼管の素材として、例えば、C:0.1〜0.3%,Si:0.01〜0.5%,Mn:0.5〜3.0%,P:0.003〜0.05%,S:0.05%以下,Cr:0.1〜0.5%,Ti:0.01〜0.1%,Al:1%以下,B:0.0002〜0.004%,およびN:0.01%以下を含有し、必要に応じてCu:1%以下,Ni:2%以下,Mo:1%以下,V:1%以下およびNb:1%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上,残部Feおよび不純物が、例示される。
この化学成分を満足する鋼管を素材とすれば、焼入可能温度まで急速加熱してから急速冷却することにより、1200MPa以上の引張強度を与えることができる。
本発明における素材であるZn−Fe合金めっき皮膜を備える管状の金属材は、以上のように構成される。
(2)予熱工程
本発明では、この素材である鋼材に、予熱工程によって予備加熱を行う。この予備加熱は、大気雰囲気下、または酸素を20体積%以下,残部は窒素,二酸化炭素および水蒸気からなる雰囲気下で、500〜800℃の温度範囲で1〜60分間保持し、好ましくは200℃以下に冷却して大気雰囲気に暴露することにより、行われる。
予備加熱は、めっき層を高温で比較的安定なFe−Zn金属間化合物相の層に変化させること、および、めっき層の表面に酸化亜鉛主体の酸化物が密着した層を形成することによって、急速加熱および冷却工程における急速加熱時の亜鉛の飛散を抑制するために、行う。このため、予備加熱は、大気雰囲気下で行ってもよいし、あるいは酸素を20体積%以下,残部は窒素,二酸化炭素および水素からなる雰囲気下で行ってもよい。
予備加熱の加熱温度が500℃未満であると、工業的に現実的な時間以内に、めっき層をFe−Zn金属間化合物相の層に変化させること、およびめっき層の表面に酸化亜鉛主体の酸化物が密着した層を形成することがいずれも不十分となり、上記急速加熱時の亜鉛の飛散を抑制することができない。一方、予備加熱の加熱温度が800℃を超えると、この予備加熱の際に亜鉛の酸化,蒸発が発生してしまう。
予備加熱を過度に長時間行うと、時間とエネルギーの点から不経済であるばかりでなく、予備加熱中にZnが一部酸化して一部が母材中に拡散する量が増加して製品の耐食性に悪影響を及ぼす。
(3)液処理工程
本発明では、予熱工程により予熱された鋼材を、めっき層を溶解し得る溶液と接触させ、めっき層を0.2g/m以上溶解させ、乾燥させる。
予熱工程により予熱された鋼材に対して、次の要領で薬液処理する。はじめに、薬液処理の前に鋼材を脱脂するのが好ましい。脱脂は、薬液処理を均一に進行させるために行う。予熱前の時点で鋼材に油などがついていても、予熱中に油が燃えるので予熱後の表面には油はない場合がほとんどである。しかし油の種類、予熱の雰囲気・温度・時間によっては予熱後の表面に油が残る場合がある。油等が残存していると、その部分で薬液との反応が遅れ、めっき耐熱性の不均一や、部材耐食性の不均一の原因となり易い。
次に、めっき鋼材に薬液を接触させる。薬液は、めっき層の亜鉛を溶解し得る水溶液であればよく、例えば塩酸,硫酸,硝酸,酢酸などの有機酸,過酸化水素,重曹,硫安,アンモニア,水酸化ナトリウムのいずれか一種または二種以上を含む水溶液である。二種以上を含んでいてもよいが、薬品の組み合わせによっては互いを中和するため、酸同士またはアルカリ同士を混合するのが望ましい。
薬液の濃度,温度さらに浸漬時間は、特に限定を要さないが、めっき耐熱性の向上効果が十分に得られる条件の組みあわせとすることが望ましい。めっき溶解量が0.2g/m以上あればめっき耐熱性を向上させることが可能である。溶解量が過多であるとめっきのZnが必要以上に失われ、熱処理後時点での金属Zn量が不足し、耐食性が所定の水準を満たさなくなる。実用上は2g/m程度減量させれば十分であると考えられる。
鋼材に薬液を接触させる方法は、特に限定を要するものではなく、浸漬,スプレー塗布さらにはロールコート等が例示される。鋼材に薬液を接触させる処理を行うことによって、この急速加熱時のめっき層の耐熱性が向上する理由は明確ではない。しかし、以上の列挙した薬剤以外にも、めっき表面を溶解させる薬液には同様の向上効果があるものと期待される。具体的には、弗酸,硼酸,燐酸,砒酸,塩素水,過塩素酸,クロム酸,および蟻酸,枸櫞酸,蓚酸,ステアリン酸,ピクリン酸,酒石酸,乳酸,酪酸などの各種有機酸にも同様の効果があると期待される。また、硫酸アンモニウムにも効果があることから、これらの酸,アルカリの塩にも同様の効果があると期待される。
鋼材に薬液を接触させるこの処理によってめっき耐熱性が向上し、1100℃の耐熱性を有するようになる理由は不明である。推定される理由は、めっき最表層に付着物,加工層,酸化皮膜などが存在すると、急速加熱時にこれらを基点にして酸化皮膜が破れ、加熱されたZnと大気が直接接触して燃焼反応し、燃え広がりが起こってめっき層全体の耐熱性が劣化することである。薬液処理によりめっき最表層の付着物,加工層,酸化皮膜を除去しておけば、加熱中のZn酸化皮膜が安定し、これにより、めっき層の耐熱性が向上するものと考えられる。
鋼材は、薬液と接触させた後に必要に応じて水洗される。薬液によっては水洗を省略してもよい。その後、鋼材を乾燥する。熱風などで乾燥を促進してもよいが、薬液によっては常温で大気中に放置して自然乾燥するようにしてもよい。
(4)急速加熱および冷却工程
液処理工程を経た鋼材に、30℃/秒以上の昇温速度で焼入れが可能な温度域への加熱を行ってから30℃/秒以上の冷却速度での冷却を行う。
乾燥後の鋼材は、塑性変形が可能である温度域、または焼入れが可能な温度域への急速な加熱を行われ、熱間曲げ加工や焼入処理、またはこれらを同時に施すことによって、自動車用部材として好適な、良好な塗装後耐食性および塗膜密着性を有する熱処理鋼材が製造される。
具体的には、薬液処理を行われためっき鋼材を、30℃/秒以上の昇温速度で、焼入が可能な温度域(Ac点以上)、および/または、塑性変形が可能な温度域(少なくとも600℃以上、望ましくはAc点以上)への加熱を行い、この加熱をされた部分に、曲げモーメントを付与してから30℃/秒以上の冷却速度での冷却を行う。
熱処理パターンとしては、昇温速度が30℃/秒以上で加熱し、30℃/秒以上の冷却速度で冷却する。昇温速度や冷却速度が上記で規定する速度を満足しないと、ヒートサイクルが長時間になり、Znの蒸発や酸化が促進され、めっき層中の合金化が過剰になり、素地鋼によっては溶融亜鉛脆化の危険を生じる。このため、昇温速度および冷却速度はいずれも30℃/秒以上とする。
本発明に係る熱処理鋼材の製造方法では、最高到達温度またはその近傍温度域での保持時間は特に規定しないが、10秒間以下とすることが望ましく、さらに望ましくは5秒間以下である。高温域での保持時間が長くなると、めっき層中で過度の合金化が進行し、亜鉛蒸発が進行し亜鉛系めっき層としての耐食性が劣化する。
本発明に係る製造方法を実施するための製造装置は、特に限定を要するものではなく、例えば、特許文献1の図1に開示された製造装置を用いることが例示される。
このようにして、亜鉛系めっき熱処理鋼材を製造する。この亜鉛系めっき熱処理鋼材は、管状の鋼材からなるとともに二次元または三次元に屈曲する形状の本体を有する曲げ加工部材である。その本体は、少なくとも片面には、付着量が片面当り30〜90g/mであるとともにFe含有量が8〜60%であるZn系の被膜を備えている。この被膜は、Fe−Zn固溶相を厚さ1μm以上有するとともに、Γ相,またはΓ相を有し、Γ相,Γ相またはFe−Zn固溶相の表面に酸化Zn相が存在し、任意の観察視野における、酸化Zn相とΓ相,またはΓ相またはFe−Zn固溶相との空隙の垂直高さが5μm以下である部分の水平方向の長さが、観察視野の水平方向の長さの半分以上である。
この亜鉛系めっき熱処理鋼材は、自動車構造部材として要求される、良好な塗装後耐食性および塗膜密着性を兼ね備える。
このように、本発明によれば、特許文献1により開示された曲げ加工方法等において、被加工材として亜鉛系めっき鋼材を用いた場合に、従来よりも高温に加熱しても被加工材の加熱による亜鉛めっき層の酸化を防止できるとともに耐食性を有する曲げ加工部材や焼入部材を得ることができ、亜鉛系めっき鋼材の自動車用途への適用範囲を大幅に拡大することが可能になる。
実施例を参照しながら、本発明をより具体的に説明する。
本発明の効果を確認するため、表1に示す化学組成(表1に示す以外の残部はFeおよび不純物、単位は質量%)を有する鋼板(板厚1.6mm)に溶融亜鉛めっきおよび合金化処理を施して合金化溶融亜鉛めっき鋼板を作成した。作成した合金化溶融亜鉛めっき鋼板を所定の板幅にスリット加工し、造管ラインを通過させ、肉厚1.6mm,外径31.8mmの丸管形状の合金化溶融亜鉛めっき鋼管を作成した。合金化溶融亜鉛めっき皮膜は、めっき付着量48.7g/m,Fe含有量11.6%,中心線表面粗さRa0.53μmであった。そして、合金化溶融亜鉛めっき鋼管から肉厚1.6mm,外径31.8mm,長さ200mmの試験片を多数採取した。
電気炉でこれらの試験片を予備加熱した。炉内雰囲気を大気雰囲気とし、炉内温度を600〜700℃とするとともに炉内時間を10〜60分間とした。まず、電気炉を所定の温度に保持しておき、電気炉の扉を開け試験片を設置し扉を閉め、設置してから所定時間経過後に、炉の扉を開け試験片を取り出し、大気中で放冷した。
次に、この試験片を溶液に浸漬処理した。溶液の成分は、1%塩酸(PH0.6)または2.5%硫酸(PH0.6)であり、溶液の液温はいずれも常温(約20℃)として、試験片を15〜60秒間浸漬した。試験片のめっき皮膜の溶解量を測定した結果を表2に示す。
この試験片を、鋼材急熱急冷装置を用いて通電加熱および水冷し、または、特許文献1により開示された曲げ加工装置を用いて、加熱,曲げ加工および水冷した。
試験片の昇温速度は、いずれの加熱においても150℃/秒とした。また、試験片の最高加熱温度は焼入可能な900℃〜1250℃の範囲で適宜変更した。
冷却は水冷で行い、冷却速度は1000℃/秒以上であった。
作成した試験片は、まず白色ZnOの生成を目視で観察した。加熱中にZnが発火,燃焼すると、金属Znが失われ、白色の酸化亜鉛が多量に生成する。また、このような試験片は、表面粗さも大きくなる。試験後の白色酸化亜鉛の有無と、急速加熱時のZn炎上の有無とは対応する。Znが炎上し白色酸化亜鉛が生成すると、金属Znの残留量が少なくなり、化成処理性および耐食性がいずれも劣化する。なお、炎上していない試験片でも、薄いZnOの皮膜がSEM観察・XRDにより確認される。
後述する表3,4では、白色ZnOの生成を目視で観察して評点をつけた。全面でZn燃焼がなく白色酸化亜鉛が生成していないものを○とし、部分的にZn燃焼し白色酸化亜鉛が生成しているものを△とし、全面でZn燃焼し白色酸化亜鉛が生成しているものを×とした。
めっき皮膜の表面粗さは、JIS B 0601の規定に準拠し、カットオフ値を0.8mmとして、東京精密製サーフコムを用いて測定した。測定装置の型式は、SURFCOM1900DXであり、触針には型式E−DT−SS01Aを用いた。測定の際には、粗度標準片(東京精密製E−MC−S24B)を用い、Ra3.18μm標準片の粗度測定値が±2%の範囲内(3.12〜3.24μm)であり、Ra0.41μm標準片の粗度測定値が0.38〜0.44μmの範囲内であることを確認した。めっき皮膜の表面粗さは、試験片の熱電対溶接部の近傍を2回測定し、その平均値として求めた。
さらに、試験片から所定面積の小片を採取し、インヒビタ(朝日化学社製700BK、1g/L)を添加した10%塩酸水溶液に浸漬してめっき皮膜を溶解した。得られた溶液中の各元素の濃度をICP発光分析法および原子吸光法で求めた。このようにしてめっき付着量,めっき中のFeの組成を求めた。
以上の結果を、試験条件とともに表3,4にまとめて示す。表3,4における評価は、外観,表面粗さの大小およびめっき付着量により、自動車構造部材におけるめっき層として求められる機能を有しているか否かを勘案して総合的に評価した。
また、一部試験片の外観を表5に示す。
表3,4における試料No.22〜38,43〜48,51〜57,59〜69は、本発明で規定する条件を全て満足する本発明例である。1100℃を超える耐熱温度でも良品を得ることが可能である。
これに対し、試料No.1〜7は、予熱および液処理を行わない比較例であり、良品が得られるのは900℃までである。
試料No.8〜17は、予熱を行わない比較例であり、良品が得られるのは約980℃までである。
試料No.18〜21,39〜42は、液処理を行わない比較例であり、良品が得られるのは約980℃までである。
なお、試料No.49,50,70は、本発明で規定する条件を全て満足するが、それでもなお加熱温度が高すぎると不芳であることを示す参考例である。
表3,4に示すように、本発明で規定する条件を全て満足することにより、自動車構造部材におけるめっき層として求められる機能を有する亜鉛系めっき熱処理鋼材を製造できるが、本発明で規定する条件を全て満足しないとこの亜鉛系めっき熱処理鋼材を製造できないことがわかる。
さらに、試験片から小片を採取し、断面を樹脂に埋め込んで機械研磨し、エッチングせずにC蒸着し、SEM観察した。WD10mm,加速電圧15kV,1000倍で反射電子像を撮影し、Zn−Fe固溶相の存在,およびZnOの皮膜を調べた。
結果を表6に示す。
GA管をそのまま観察したもの(表6における左から1列目)では、母材が暗く、めっき層が明るく映っている。本発明材(表6における左から4〜6列)では、めっき層と母材の界面に、めっき層と母材の間に明るさが中間の固溶相が、厚さ1μm以上形成されていることがわかる。また、表5に示す、外観評点が○の条件では、ZnOの密着した層が形成されていることがわかる。
さらに、試験片から小片を採取し、X線回折プロファイルを測定した。Co管球で2θ=30〜110℃の範囲のプロファイルを測定した。得られたピークをJCPDSのΓ相,Γ相,ZnO相の標準ピークと比較し、相を同定した。
結果を図1に示す。図1に示すように、本発明材では、Γ相,Γ相,ZnO層が存在していることがわかる。

Claims (1)

  1. 少なくとも片面に、付着量が片面当り30〜90g/mであるとともにFe含有量が8〜35質量%であるZn−Fe合金めっき皮膜を備える管状の亜鉛系めっき鋼材を、
    大気雰囲気、または酸素を20体積%以下、残部は窒素、二酸化炭素および水蒸気からなる雰囲気下で、500〜800℃の温度範囲で1〜60分間保持した後に、
    めっき層を溶解し得る溶液と接触させ、めっき層を0.2g/m以上溶解させ、乾燥させてから、
    30℃/秒以上の昇温速度で焼入れが可能であって、かつ1130℃以下の温度域への加熱を行ってから30℃/秒以上の冷却速度での冷却を行うこと
    を特徴とする亜鉛系めっき熱処理鋼材の製造方法。
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