JP2013234360A - 亜鉛系めっき熱処理鋼管の製造方法 - Google Patents

亜鉛系めっき熱処理鋼管の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】特開2011−122240号公報において開示される技術において、亜鉛系めっき鋼板を造管した溶接鋼管を1本ずつまたは数本ずつをバッチ方式で熱処理するのではなく、連続式で液処理することにより亜鉛系めっき熱処理鋼管の生産性を向上する。
【解決手段】少なくとも片面に、付着量が片面当り30〜90g/mであり、Fe含有量が8〜35質量%であるZn−Fe合金めっき皮膜を備えるめっき鋼板を、硫酸根を0.1mol/L以上含有する液に接触させて、めっき層を0.5g/m以上溶解し乾燥してから、このめっき鋼板を用いて溶接鋼管を造管し、この溶接鋼管を、30℃/秒以上の昇温速度で焼入れが可能な温度域への加熱を行ってから30℃/秒以上の冷却速度での冷却を行うことにより、亜鉛系めっき熱処理鋼管を製造する。
【選択図】図1

Description

本発明は、亜鉛系めっき鋼管に熱処理を施した亜鉛系めっき熱処理鋼管の製造方法に関し、さらに詳しくは、自動車構造部材等に好適に用いられる、高強度を有するとともに塗装後耐食性に優れる亜鉛系めっき熱処理鋼管の製造方法に関する。
コスト面で優れる亜鉛系めっき鋼材である溶融亜鉛めっき鋼板,合金化溶融亜鉛めっき鋼板または電気亜鉛めっき鋼板が、使用環境における耐食性が必要十分であることから、自動車構造部材として広く用いられる。ここで、自動車構造部材とは、自動車の車体をなすボディシェルを構成する各種構造部材や、このボディシェルに装着されるフード,ドアー,フェンダー等のカバー類を構成する各種構造部材を意味する。
合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、鋼板に連続的に溶融亜鉛めっきを行った後に500〜550℃程度の温度で熱処理することによりめっき層全体をFe−Znの金属間化合物層に変化させたものである。合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、めっき層が電気化学的に幾分貴となるために犠牲防食能は溶融亜鉛めっき鋼板や電気亜鉛めっき鋼板に比較すると僅かに低下するものの、めっき層の塗膜との密着性が向上することから、化成処理および電着塗装を行われる自動車構造部材に賞用される。
近年、自動車構造部材には、地球環境への配慮から、軽量で高強度を有することが一段と強く要請されるようになってきた。また、車体に対する安全性の要求もさらに高まり、安全対策の一つとして、衝突時の安全性確保の観点から、衝突時のエネルギー吸収特性を高めるための開発も行われている。例えば、自動車の側面からの衝突に対する安全性を高めるために、鋼管等の金属管が補強用のドアービームとして用いられ、こうした金属管に適当な湾曲形状を与えることにより衝突エネルギーの吸収能を高めている。
さらに、車体軽量化の観点から、自動車構造部材には高張力化への要請も高く、このような要請に対応するため、従来とは全く異なる強度レベルからなる高張力鋼、例えば、引張強さが780MPa以上、さらに900MPa以上という超高強度の鋼材が広く用いられている。
高張力鋼からなる素材に、冷間で曲げ加工することは困難であり、また熱間で曲げ加工すると不均一な歪みの発生により成形形状のばらつきを防止することが困難になり、形状凍結性に問題がある。これに加えて、上述の観点から最適な形状に曲げ加工を行うために、多岐にわたる曲げ形状、例えば、曲げ方向が2次元的さらには3次元的に異なる曲げ形状からなる鋼材を高い寸法精度で加工する曲げ加工技術の開発も強く要請されている。
そこで、本発明者らは、先に特許文献1により、鋼材の曲げ方向が3次元的に異なる連続曲げの場合であっても効率的に曲げ加工、さらには同時に被加工材の焼入れを行うことができる熱間曲げ加工方法およびその曲げ加工方法を利用した曲げ加工装置を開示した。
特許文献1により開示された曲げ加工方法は、高周波加熱コイルにより被加工材である鋼材を、その長手方向へ搬送しながら、逐次連続的に被加工材の塑性加工が容易な温度以上,または必要により被加工材の焼入可能な温度以上で、かつ組織が粗粒化しない温度まで急速加熱した後に急速冷却することによって、搬送される鋼材の長手方向の一部に高温領域(変形抵抗低下領域)を部分的に形成し、可動ローラダイスを用いて高温領域に曲げモーメントを与えて塑性変形させるものである。この曲げ加工方法は、被加工材を大気中で加熱して実施することが経済的である。
前述の通り、自動車構造部材に用いられる鋼材には、基本的に車体組み立て後に化成処理および電着塗装を施されるが、耐食性を強化する観点から、亜鉛系めっき鋼材が多用されている。したがって、特許文献1により開示された曲げ加工方法等において被加工材として亜鉛系めっき鋼材を用いることができれば、被加工材の加熱による酸化を防止できるとともに、耐食性を有する曲げ加工部材や焼入部材を得ることができ、亜鉛系めっき鋼材の自動車用途への適用範囲を大幅に拡大することが可能になる。
しかし、亜鉛めっき鋼材をそのA点以上、さらにA点以上に加熱すると、(a)亜鉛の蒸気圧は、例えば200mmHg:788℃、400mmHg:844℃と、温度の上昇とともに急増するために加熱過程で気化する可能性があるとともに、(b)大気中での加熱に伴い亜鉛の急激な酸化(燃焼)が生じるおそれがある。
これらの問題に対応するため、特許文献2には、亜鉛めっきされた高周波焼入用鋼板を、Ar点〜1000℃の焼入温度で、かつ加熱開始から350℃に冷却されるまでのヒートサイクルタイムを60秒間以内に制限して、加熱および冷却する方法が開示されている。この方法によれば、高周波焼入強化部材として、焼入用鋼板を素板とする溶融亜鉛めっき鋼板を用いて強度を向上させる部位に高周波焼入れを施しても、焼入部にめっき層に残存させることができ、しかも、めっき層中のFe含有量が35%以下(本明細書では特に断りがない限り「%」は「質量%」を意味する)に制御され、塗装性および耐食性に優れる自動車用部材を提供できるとしている。
さらに、本発明者らは、特許文献3により、亜鉛めっきされた鋼材を一旦500〜800℃の温度範囲で1〜60分間熱処理し、その後Ac点以上の温度域に急速に加熱および冷却する方法を開示した。一旦熱処理をすることにより母材のFeとめっきのZnとの相互拡散が促進されてめっきの耐熱性が向上し、その後の急速な加熱による加熱温度が高くてもZnが残留するようになり、耐食性を確保することが可能になる。
国際公開第2006/093006号パンフレット 特開2000−248338号公報 特開2011−122240号公報
特許文献3において具体的に開示される方法は、亜鉛系めっき鋼板を造管して亜鉛系めっき溶接鋼管としてから、この亜鉛系めっき溶接鋼管を500〜800℃の温度範囲で熱処理することにより、亜鉛系めっき熱処理鋼管を製造するものである。したがって、この方法では、不可避的に亜鉛系めっき溶接鋼管を1本ずつまたは数本ずつバッチ方式で熱処理することになり、生産性の低下は否めない。
生産性の低下を防ぐために、例えば、亜鉛系めっき鋼板を連続的に熱処理してから造管する工程も考えられる。しかし、合金化溶融亜鉛めっき鋼板のプレス加工においてめっき層のFe含有量が高いとプレス成形の際にめっき層が粉状に破壊剥離するパウダリングが発生することが広く知られているように、上述の工程では、めっき層のFe含有量が上昇した状態で板から管への変形を受けることになるため、造管加工の際にめっき層が粉状に破壊剥離する可能性が高い。
本発明は、従来の技術が有するこのような課題に鑑みてなされたものであり、亜鉛系めっき鋼管に熱処理を施した亜鉛系めっき熱処理鋼管、詳しくは、自動車構造部材等に好適に用いられる、高強度を有するとともに塗装後耐食性に優れる亜鉛系めっき熱処理鋼管を、高い生産性で製造する方法を提供することを目的とする。
本発明は、少なくとも片面に、付着量が片面当り30〜90g/mであるとともにFe含有量が8〜35質量%であるZn−Fe合金めっき皮膜を備えるめっき鋼板、例えばめっき鋼帯を、硫酸根を0.1mol/L以上含有する液に接触させ、めっき層を0.5g/m以上溶解させ、乾燥させてから、このめっき鋼板、例えばめっき鋼帯を用いてZn−Fe合金めっき溶接鋼管を造管し、このZn−Fe合金めっき溶接鋼管を、30℃/秒以上の昇温速度で焼入れが可能な温度域への加熱を行ってから30℃/秒以上の冷却速度での冷却を行うことを特徴とする亜鉛系めっき熱処理鋼管の製造方法である。
本発明によれば、高強度を有するとともに塗装後耐食性に優れる亜鉛系めっき熱処理鋼管を、高い生産性で製造することができるようになる。すなわち、本発明は、鋼板または鋼帯の状態で液処理を連続的に行うことが可能になる点に特徴を有する。造管後の溶接鋼管を一本ずつまたは数本ずつバッチ方式で熱処理する方法に比較して、極めて高速で液処理しながら亜鉛系めっき熱処理鋼管を製造することが可能になる。
また、Zn−Fe合金めっき皮膜を備えるめっき鋼板、例えばめっき鋼帯を製造する者と造管する者とが異なる場合には、めっき鋼板の製造者により液処理された鋼帯が造管する者に出荷されることとなるため、造管する者は、その製造工程において液処理工程を省略することができる。
さらに、Zn−Fe合金めっき皮膜を備えるめっき鋼板の製造工程の後工程において液処理する場合にも、めっき鋼板の製造工程における既存の設備をそのまま利用することができるため、既存の設備の改造も伴うことがないとともに製造工程の増加もないため、亜鉛系めっき熱処理鋼管を高い生産性で製造することができる。
本発明によれば、亜鉛系めっき溶接鋼管を1本ずつまたは数本ずつバッチ方式で熱処理するのではなく、連続式で液処理することができるため、亜鉛系めっき熱処理鋼管の生産性を高めることができるようになる。
図1は、本発明の製造方法における工程を模式的に示す説明図である。 図2は、X線回折結果を示すグラフである。 図3は、断面SEM写真である。
本発明では、図1に示すように、以下に説明するめっき鋼板に、特定の液処理工程を経てから溶接鋼管に造管し、その溶接鋼管を急速加熱および冷却する工程を経て亜鉛系めっき熱処理鋼管を連続して製造する。そこで、1.素材(めっき鋼板),2.液処理工程,3.造管工程,4.急速加熱および冷却工程を順次説明する。
1.素材
素材は、Zn−Fe合金めっき皮膜を備えるZn−Fe合金めっき鋼板である。
Zn−Fe合金めっき皮膜は、母材である鋼板の片面または両面に形成される。Zn−Fe合金めっき皮膜は、鋼板に溶融亜鉛めっき処理または電気亜鉛めっきをしてからこれを加熱合金化処理して得られたものでよい。
Zn−Fe合金めっき皮膜の付着量は、片面当り30〜90g/mである。Zn−Fe合金めっき皮膜の付着量が30g/m未満であると、塗装疵部の腐食深さを抑制する効果が不足し、自動車構造部材として要求される耐食性を満足できないおそれがある。一方、Zn−Fe合金めっき皮膜の付着量が90g/m超であると、加熱によりめっき層が液相状態になることに伴って、液タレやZn融液の飛沫付着を生じ易くなり、外観不良を生じるおそれがある。このため、Zn−Fe合金めっき皮膜の付着量は30g/m以上90g/m以下とする。Zn−Fe合金めっき皮膜の付着量は、好ましくは40g/m以上80g/m以下であり、さらに好ましくは50g/m以上70g/m以下である。なお、Zn−Fe合金めっき皮膜の付着量は、Zn−Fe合金めっき皮膜がFeやAlを含有する場合には、これらも加算される。
Zn−Fe合金めっき皮膜のFe含有量(濃度)は8〜35%である。Zn−Fe合金めっき皮膜のFe含有量が8%を下回ると、めっきの電位が卑になるとともに、めっき皮膜上に塗装が施される際の塗膜密着性が劣る。一方、Zn−Fe合金めっき皮膜のFe含有量が35%を超えると、Zn系皮膜が電気化学的に貴となり過ぎて犠牲防食能が低下する。Zn−Fe合金めっき皮膜のFe含有量は、好ましくは25%以下であり、さらに好ましくは20%以下である。
Zn−Fe合金めっき皮膜はAlを含有してもよい。Zn−Fe合金めっき皮膜の急速加熱時には、AlはZnより酸化し易いとともにめっき層が一時的に融液になって元素の拡散が速くなるため、Zn−Fe合金めっき皮膜中のAlが速やかにめっき表層に濃化し、Al酸化物の皮膜を形成する。Al酸化物の皮膜には、酸素の侵入を阻害しZnの酸化を防ぐ作用がある。Al含有量が高いほうが(例えばAl含有量≧0.05%とするのが好ましい)、急速加熱でAl酸化物の皮膜が厚く形成され、Znの酸化を防ぐ作用が大きくなると考えられる。一方、Al含有量が高過ぎると、熱処理後の塗装性や溶接性等に悪影響を及ぼし得る。このため、Zn−Fe合金めっき皮膜中のAl含有量は0.5%以下とすることが好ましい。
また、母材である鋼板の化学成分として、例えば、C:0.1〜0.3%,Si:0.01〜0.5%,Mn:0.5〜3.0%,P:0.003〜0.05%,S:0.05%以下,Cr:0.1〜0.5%,Al:1%以下,およびB:0.0002〜0.004%を含有し、必要に応じて、(i)Ti:0.01〜0.1%,(ii)N:0.01%以下,(iii)Cu:1%以下,Ni:2%以下,Mo:1%以下,V:1%以下およびNb:1%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上,残部Feおよび不純物、が例示される。
この化学成分を満足する鋼板を素材とすれば、焼入可能温度まで急速加熱してから急速冷却することにより、1200MPa以上の引張強度を与えることができる。
本発明における素材であるZn−Fe合金めっき鋼板は、以上のように構成される。
2.液処理工程
本発明では、上述のZn−Fe合金めっき鋼板を、硫酸根を0.1mol/L以上含有する水溶液に接触させて、めっき層を0.5g/m以上溶解し、乾燥する。
液処理の前には、Zn−Fe合金めっき鋼板の表面を脱脂洗浄するのが好ましい。
次に、Zn−Fe合金めっき鋼板に硫酸根を含有する水溶液に接触させる。本発明における硫酸根とは、水溶液中で硫酸イオン(SO 2−)として存在するものの他に、硫酸水素イオン(HSO 2−)や電離しないままで溶解している硫酸またはその塩で存在するものも含む。
硫酸根を含む水溶液によるめっき層の溶解量が0.5g/m以上あれば、めっき層の耐熱性を向上させることが可能である。好ましくは2g/m以上、より好ましくは4g/m以上溶解させる。実用上は1g/m程度減量させれば十分であると考えられる。溶かし過ぎると、最終的に製造される亜鉛系めっき熱処理鋼管の耐食性の低下が懸念される。
Zn−Fe合金めっき鋼板に薬液を接触させる方法は、特に限定を要するものではなく、浸漬,スプレー塗布,ロールコート等が例示される。薬液と接触させた後にZn−Fe合金めっき鋼板を、必要に応じて水洗し、その後、乾燥する。
3.造管工程
上記の液処理工程を経たZn−Fe合金めっき鋼板を溶接鋼管に造管する。
造管は、慣用される造管工程により行えばよい。鋼板から鋼管を製造する手法には、電縫鋼管、スパイラル鋼管、UO鋼管があるが、本発明の効果は造管の方法による限定を受けない。本発明は自動車部品用の鋼管への適用を想定しているが、これに一般的な外径と肉厚の鋼管は電縫鋼管で連続的に造管するのが能率的である。
この造管工程では、Zn−Fe合金めっき鋼板を搬送する搬送ロールや曲げ加工機により、Zn−Fe合金めっき鋼板の表面には摺動(しごき)が加わる。そのため、造管前に上記の液処理を行ってもめっき層の耐熱性の向上効果は期待できないと思われた。
しかし、後述する実施例で示すように、上記の硫酸根を含む水溶液で液処理したZn−Fe合金めっき鋼板を造管して得られるZn−Fe合金めっき溶接鋼管は、意外にも、造管後に液処理したものと同様の耐熱性向上効果を得られる。
4.急速加熱および冷却工程
造管工程を経たZn−Fe合金めっき溶接鋼管に、30℃/秒以上の昇温速度で、塑性変形が可能である温度域、または焼入れが可能な温度域への急速な加熱を行ってから30℃/秒以上の冷却速度での冷却を行う。これにより、Zn−Fe合金めっき溶接鋼管は熱間曲げ加工,焼入処理,またはこれらを同時に施され、自動車用部材して好適な、良好な塗装後耐食性および塗膜密着性を有する亜鉛系めっき熱処理鋼管が製造される。
具体的には、造管工程を経たZn−Fe合金めっき溶接鋼管を、30℃/秒以上の昇温速度で、焼入が可能な温度域(Ac点以上)、または、塑性変形が可能な温度域(少なくとも600℃以上、望ましくはAc点以上)への加熱を行い、この加熱をされた部分に曲げモーメントを付与してから30℃/秒以上の冷却速度での冷却を行う。
ヒートパターンとしては、昇温速度が30℃/秒以上で加熱し、30℃/秒以上の冷却速度で冷却する。昇温速度や冷却速度が上記で規定する速度を満足しないと、ヒートサイクルが長時間になり、Znの蒸発や酸化が促進され、めっき層中の合金化が過剰になり、素地鋼によっては溶融亜鉛脆化の危険を生じる。このため、昇温速度および冷却速度はいずれも30℃/秒以上とする。
本発明に係る亜鉛系めっき熱処理鋼管の製造方法では、最高到達温度またはその近傍温度域での保持時間は特に規定しないが、10秒間以下とすることが望ましく、さらに望ましくは5秒間以下である。高温域での保持時間が長くなると、亜鉛が母材中に拡散する量が増加して製品の耐食性が低下する。
本発明に係る製造方法を実施するための製造装置は、特に限定を要するものではない。また、焼入れと熱間加工が並行してなされる装置(プロセス)でもよく、例えば、特許文献1の図1に開示された熱間曲げ部材製造装置を用いることが例示される。
この製造装置から得られる亜鉛系めっき熱処理鋼管は、二次元または三次元に屈曲する形状の本体を有する管状の曲げ加工部材である。
本発明により得られる亜鉛系めっき熱処理鋼管は、塗装後耐食性および塗膜密着性の観点から、内面および外面の一方または双方に、付着量が片面当り30〜90g/mであるとともにFe含有量が8〜60%であるZn系の皮膜を備える。
この皮膜は、Fe−Zn固溶相を厚さ1μm以上有するとともに、Γ相またはΓ相を有し、Γ相,Γ相またはFe−Zn固溶相の表面に酸化Zn相が存在し、任意の観察視野における、酸化Zn相とΓ相、またはΓ相またはFe−Zn固溶相との空隙の垂直高さが5μm以下である部分の水平方向の長さが、観察視野の水平方向の長さの半分以上であることが好ましい。
亜鉛系めっき熱処理鋼管のこのような表面は、急速加熱条件を調整すること、定性的には、合金化が進行し過ぎないように高温にある時間をあまり長くしないこと、例えば前述したような急速加熱後の保持時間をあまり長くしないことにより、得られる。
次に、実施例を参照しながら、本発明をより具体的に説明する。
本発明の効果を確認するため、表1に示す化学組成(表1に示す以外の残部はFeおよび不純物、単位は質量%)を有する鋼板(板厚1.6mm)に溶融亜鉛めっきおよび合金化処理を施し、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を作成した。
合金化溶融亜鉛めっきは、付着量48.7g/m,Fe含有量11.6%,Al含有量0.42%,粗さRa1.0μmであった。
図1は、本実施例で用いた実機の造管工程を模式的に示す説明図である。
同図に示すように、Zn−Fe合金めっき鋼板に液処理工程により液処理を行い、液処理されたZn−Fe合金めっき鋼板を造管工程によりZn−Fe合金めっき溶接鋼管とし、Zn−Fe合金めっき溶接鋼管を、急速加熱および冷却工程を経て連続的に亜鉛系めっき熱処理鋼管に製造する。なお、上述のように、急速加熱および冷却工程において、曲げ加工等の成形加工を行ってもよい。
本実施例は、液処理なしに比較して向上効果が見られるかを基準にする。
この合金化溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼管を、各種水溶液に浸漬した。
一種類目の液処理では、塩酸軽酸洗処理を行った。室温の1%塩酸水溶液に15秒間浸漬し、引き上げて室温の重曹飽和水溶液に5秒間浸漬し、流水で水洗し、ブロワーで乾燥した。
二種類目の液処理では、鉄めっき液浸漬を行った。Fe−Zn合金電気めっきに使用される硫酸酸性めっき液(硫酸鉄FeSO・7HO:410g/L,硫酸亜鉛ZnSO・7HO:35g/L,硫酸ナトリウムNaSO:75g/L,および硫酸を含有する水溶液。PH1.8、硫酸イオンと硫酸水素イオンを合計3.1mol/L含有)を50℃に保持し、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を5秒間浸漬し、水洗し、乾燥した。
三種類目の液処理では、硫酸浸漬処理を行った。13%硫酸水溶液(PH−0.12,硫酸イオンと硫酸水素イオンを合計1.3mol/L含有)を60℃に保温し、めっき板を7秒間浸漬し、水洗し、乾燥した。
それぞれ液処理について、液処理前後の試験片重量を測定し、面積あたりの溶解量を算出した。結果を表2にまとめて示す。
上記液処理された合金化溶融亜鉛めっき鋼板に潤滑剤を塗布し、先端の曲率半径1RのV曲げ工具を、100kgの荷重で押し付け、4回同じ向きに摺動させることで、めっき層の表面にしごき加工を加えた。なお、このしごき加工は実機での造管後の表面状態を模擬するためのもので、後述する急速加熱冷却後の外観や粗さが、実機で造管された鋼管と、ともに液処理をしない条件下でほぼ同等となるように選択したものである。
このようにしてしごき加工を加えた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を急速加熱急冷装置で通電加熱および水冷した。昇温速度は150℃/秒とした。最高温度は焼入可能な900℃を下限として種々変更した。冷却は、水冷により行い、冷却速度の実績は1000℃/秒以上であった。
得られた試験片について、まず白色ZnOの生成を目視で観察した。加熱中にZnが発火,燃焼すると、金属Znが失われ、白色の酸化亜鉛が多量に生成する。試験後の白色酸化亜鉛の有無と急速加熱時のZn炎上の有無とは対応する。Znが炎上して白色酸化亜鉛が生成すると、金属Znの残留量が少なくなり、化成処理性,耐食性が劣化する。なお、炎上していない試験片では、目視では白色酸化Znは観察されないが、断面SEMではZnOの皮膜が観察され、X線回折パターンではZnOのピークが観察される。
目視で観察し、全面でZn燃焼がなく白色酸化亜鉛ができていないものを○とし、部分的にZn燃焼し白色酸化亜鉛ができているを△とし、さらに、全面でZn燃焼し白色酸化亜鉛ができているものを×として、表点を付けた。
粗さは、JIS B 0601の規定に準拠し、カットオフ値を0.8mmとして、東京精密製サーフコムを用いて測定した。測定装置の型式は、SURFCOM1900DXであり、触針には型式E−DT−SS01Aを用いた。測定の際には、粗度標準片(東京精密製E−MC−S24B)を用い、Ra3.18μm標準片の粗度測定値が±2%の範囲内(3.12〜3.24μm),Ra0.41μm標準片の粗度測定値が0.38〜0.44μmの範囲内であることを確認した。試験片の熱電対溶接部の近傍を2回測定し、平均値を求めた。
試験片から所定面積の小片を採取し、インヒビタ(朝日化学社製700BK、1g/L)を添加した10%塩酸水溶液に浸漬してめっき皮膜を溶解した。得られた溶液中の各元素の濃度をICP発光分析法および原子吸光法で求めた。このようにしてめっき付着量,めっき層中のFe含有量,Al含有量を求めた。
以上の結果を表3にまとめて示す。なお、上述のように、本実施例は、生産性の高いプロセス(板→液処理→造管→3DQ)を模擬した条件で、使用できる薬液を検証することを目的とする。このため、例えば、表3における試料No.7〜9と試料No.24〜26、試料No.10〜13と試料No.27〜29のように、液処理条件が本発明例、液処理しないもの、および液組成が請求項の範囲外のため向上効果が見られないものを比較例とする。
表3に示すように、造管前(しごき加工前)に硫酸根を含有する水溶液で液処理をした本発明例(試料No.7〜9,10〜13)は、液処理をしなかった比較例(試料No.1〜3)と比較して、耐熱性が向上していた。
処理液を13%硫酸とし、液温,浸漬時間を変えてめっき溶解量を制御し、液処理で失われる亜鉛と、急速加熱・水冷で失われる亜鉛の合計が最も小さくなる条件を探索した。また、液処理後の塗油がめっき耐熱性に及ぼす影響を調べた。
試験片は、実施例1と同様に外観評点,粗さ,皮膜分析を行って、評価した。
また、X線回折プロファイルを、Co管球で2θを30〜110℃の範囲で測定した。また、断面を樹脂埋めして機械研磨し、エッチングせずにカーボン蒸着し、SEM観察した。ワーキングディスタンスは10mmとし、加速電圧は15kVとして、反射電子像を撮影した。
外観と粗度と皮膜分析の結果を表4にまとめて示す。表4では、液処理した試料A0〜F4は全て本発明例であり、塗油の有無や溶解量の影響を検証する。
本発明例である試料A0〜F4は、液処理なしの比較例の試料X0〜X3に比較すると、どの条件の液処理でも同じ加熱温度での外観評点,目付が向上し、より高い加熱温度までめっきが残留しており、液処理によってめっき層の耐熱性が向上することがわかる。
また、液温の影響を比較すると、溶解量は同じ6g/mでも、液温が高いほうが耐熱性の向上効果が大きいことがわかり、液温は高いほうが好ましいことがわかる。液温は、25℃よりは40℃が好ましく、40℃よりは60℃が好ましい。
液温を25℃に揃えて溶解量の影響を見ると、溶解量が大きいほど耐熱性の向上効果が大きいことがわかる。液温25℃で溶解量が1〜6gの範囲では、溶解量は大きいほうが好ましい。1g/mよりは2g/mが好ましく、さらに好ましくは4g/m以上、さらに好ましくは6g/m以上である。
さらに、塗油の影響を、液温,溶解量を揃えて比較すると、塗油しないことでめっきの耐熱性が向上している。液処理後の塗油はしないほうがめっき耐熱性に好ましいことがわかる。
なお、参考までに、試料No.C3について、急速加熱急冷後の熱処理鋼材のX線回折スペクトルを図2に示し、急速加熱急冷後の熱処理鋼材の断面SEM像を図3に示す。
図2では、ZnO,Γ相,Γ相の標準ピークの位置にピークが認められ、図3からは、表面の酸化亜鉛が金属間化合物層に概ね密着していること,およびFe−Zn固溶相が1μm以上の厚さで形成されていることが認められた。

Claims (1)

  1. 少なくとも片面に、付着量が片面当り30〜90g/mであるとともにFe含有量が8〜35質量%であるZn−Fe合金めっき皮膜を備えるめっき鋼板を、硫酸根を0.1mol/L以上含有する液に接触させ、めっき層を0.5g/m以上溶解させ、乾燥させてから、
    当該めっき鋼板を用いて溶接鋼管を造管し、
    当該溶接鋼管を、30℃/秒以上の昇温速度で焼入れが可能な温度域への加熱を行ってから30℃/秒以上の冷却速度での冷却を行うこと
    を特徴とする亜鉛系めっき熱処理鋼管の製造方法。
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