JP5887892B2 - 亜鉛系めっき熱処理鋼材の製造方法 - Google Patents

亜鉛系めっき熱処理鋼材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、亜鉛系めっき鋼材に熱処理を施した亜鉛系めっき熱処理鋼材製造方法に関し、さらに詳しくは、自動車用部材等に好適な高強度特性を有するとともに塗装後の耐食性に優れる亜鉛系めっき熱処理鋼材製造方法に関する。
コスト面で優れる亜鉛系めっき鋼材である溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板または電気亜鉛めっき鋼板が、使用環境における耐食性が必要十分であることから、自動車用部材に広く用いられる。
合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、鋼板を連続的に溶融亜鉛めっきした後に500〜550℃程度の温度で熱処理し、めっき層全体をFe−Znの金属間化合物層に変化させたものである。合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、めっき層が電気化学的に幾分貴となるため、犠牲防食能が溶融亜鉛めっき鋼板や電気亜鉛めっき鋼板に比較すると僅かに低下するものの、めっき層の塗装膜との密着性が向上することから、化成処理および電着塗装を行われる自動車用部材用として多用される。
近年、自動車構造用鋼材は、地球環境への配慮から軽量で高強度の材料が要請されるようになってきた。また、車体に対する安全性の要求も高まり、安全対策の一つとして、衝突時の安全性確保の観点から、衝突時のエネルギー吸収特性を高めるための開発も行われている。
例えば、自動車の側面からの衝突に対する安全性を高めるために、鋼管等の金属管が補強用のビームとして用いられ、こうした金属管に適当な湾曲形状を付与することで衝突エネルギーの吸収能を高めている。また、センターピラーの補強材もその形状、曲率の適正化を図ることにより、衝突時のエネルギー吸収能を高めることができる。こうした観点から、金属管、特に鋼管素材や、鋼板のプレ成形品素材を、自動車用部材として最適な形状に曲げ加工等を行う工夫がなされている。
さらに、車体軽量化の観点から、自動車用部材は高張力材へのニーズが高く、このような要請に対応するため、従来とは全く異なる強度レベルからなる高張力鋼、例えば、引張強さが780MPa以上、さらに900MPa以上という高強度の鋼材が広く用いられている。
高張力鋼を素材として冷間で曲げ加工を行うのは困難であり、また熱間で曲げ加工を行う場合であっても、不均一な歪みの発生による形状のばらつきを防止することが困難であり、形状凍結性に問題がある。これに加えて、上述の観点から最適な形状に曲げ加工を行うために、多岐にわたる曲げ形状、例えば、曲げ方向が2次元的、さらに3次元的に異なる曲げ形状からなる鋼材を寸法精度よく加工する曲げ加工技術の開発が強く要請されている。
本発明者らは、特許文献1により、鋼材の曲げ方向が3次元的に異なる連続曲げの場合であっても、後述するように、多次元に可動するローラダイスを用いて効率的に曲げ加工、さらには同時に被加工材の焼入を行うことができる熱間曲げ加工方法およびその曲げ加工方法を適用できる加工装置を、開示した。
特許文献1により開示した曲げ加工方法は、高周波加熱コイルにより被加工材である鋼材を逐次連続的に被加工材の塑性加工が容易な温度、または必要により被加工材の焼入可能な温度以上で、かつ組織が粗粒化しない温度まで急速に加熱および冷却することによって、鋼材の長手方向の一部に局部的な高温領域を形成し、可動ローラダイスを用いてこの高温領域を塑性変形させる。この曲げ加工方法は、被加工材を大気中で加熱して実施することが経済的である。
前述の通り、自動車用部材に用いられる鋼材には、基本的に化成処理や電着塗装が施されるが、耐食性を強化する観点から、亜鉛系めっき鋼材が多用されている。したがって、特許文献1により開示した加工方法等において被加工材として亜鉛系めっき鋼材を用いることができれば、被加工材の加熱による酸化を防止できるとともに耐食性を有する曲げ加工部材や焼入部材を得ることができ、自動車用用途への適用範囲を大幅に拡大することが可能になる。
しかし、亜鉛めっき鋼材をそのA点、さらにはA点以上に加熱すると、めっき層としての機能が喪失されるおそれがある。その第1の理由は、亜鉛の蒸気圧は、例えば200mmHg:788℃、400mmHg:844℃と、温度の上昇とともに急増するために急速加熱過程で気化する可能性があることであり、第2の理由は、大気中での加熱に伴い亜鉛の酸化が生じることであり、第3の理由は、亜鉛めっき鋼材が600℃以上、特にΓ相(FeZn10)が分解する660℃を超える温度に加熱されると、鋼素地のフェライト中へのZnの固溶現象が顕著になり、めっき層が失われる可能性があることである。
これらの問題に対応するため、特許文献2には、亜鉛めっきされた高周波焼入用鋼板をAr点〜1000℃の焼入温度で、かつ加熱開始から350℃に冷却されるまでのヒートサイクルタイムを60秒間以内に制限して加熱および冷却する方法が開示されている。この方法によれば、高周波焼入強化部材として、焼入用鋼板を素板とする溶融亜鉛めっき鋼板を用いて強度を向上させる部位に高周波焼入を施しても、焼入部にめっき層に残存させることができ、しかも、めっき層中のFe濃度が35%以下(本明細書では特に断りがない限り「%」は「質量%」を意味する)に制御され、塗装性および耐食性に優れる自動車用部材を提供できるとしている。
また、特許文献3には、亜鉛めっきされた鋼材を、一旦500〜800℃の温度範囲で1〜60分間熱処理し、その後Ac点以上の温度域に急速に加熱して冷却する方法が開示されている。一旦熱処理をすることにより母材のFeとめっきのZnとの相互拡散が進んでめっきの耐熱性が向上し、急速加熱および冷却での温度が高くてもZnが残留するようになり、耐食性を確保することが可能になる。特許文献3は、本願発明と同様の加工熱処理法における同様の課題について本発明者らが開示したものである。
国際公開第2006/093006号パンフレット 特開2000−248338号公報 特開2011−122240号公報
本発明者らは、特許文献2により提案された焼入用鋼板に形成される亜鉛めっき層の挙動を明らかにするため、亜鉛系めっき鋼材を用いて誘導加熱による加熱・冷却実験を行った。
通常のめっき付着量レベルである60g/m(片面当たり)の亜鉛系めっき鋼材を900℃程度に加熱してから急冷した場合に、めっき層は10%以上のFeを含有する組成となる。
亜鉛系めっき鋼材に600℃以上の温度域、特にA点〜1000℃のような高温域に加熱して冷却するプロセスを施すと、めっき層が鋼素地へ拡散し、または酸化若しくは蒸発により消失する現象を示す。
加熱後の母材硬度と靱性を確保するには、最高到達温度を高めることが有効であるが、これにより加熱時のZn気化と酸化が顕著になる。このため、犠牲防食能がある金属Zn量が少なくなり、表面の酸化Zn皮膜が化成処理性を悪化させるため、部材の耐食性が低下する。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、亜鉛系めっき鋼材を用いて600℃以上の高温加熱および冷却プロセスを施す場合であっても、熱処理後に所定のめっき付着量を残存させるとともにめっき層中のFe濃度をコントロールし、めっき層の表面性状(中心線平均粗さRa)を改善し、自動車用部材としての塗装後の適正な耐食性および塗膜密着性を確保できる亜鉛系めっき熱処理鋼材製造方法を提供することを目的とする。
なお、特許文献3により開示した方法でもこの課題は解決することができる。しかし、一旦熱処理する際にめっきのZnの一部が母材に拡散し、また一部は酸化亜鉛を形成し、犠牲防食能を有する金属Znを一部失い、耐食性能を一部失うおそれがある。また熱処理は加熱炉設備とエネルギーコストを必要とする。上記の欠点がより少なく、より短時間で低コストなめっき耐熱性の向上方法が求められている。
本発明者らは、亜鉛系めっき鋼材を脱脂し、各種薬液に接触させ、適宜水洗し、乾燥した後に、急速に加熱および冷却することを検討した結果、薬液処理によってめっきの耐熱性が向上し、同じ加熱条件でのZn気化量および酸化量を減少させることができることが判明した。このため、より高い温度で加熱してもZn付着量を十分に確保することができる。また、加熱後の亜鉛系めっき熱処理鋼材の粗度も低下することが判明した。これは、電着塗装の欠陥を生じ難くするため、好ましい。
本発明は、亜鉛系めっき鋼材の少なくとも一部に、塑性変形が可能な温度域または焼入れが可能な温度域への加熱を行って得られる亜鉛系熱処理鋼材であって、加熱を行われた部分の表面に存在するめっき層の付着量が片面当たり20〜100g/m であり、このめっき層のFe濃度が10〜35%であり、このめっき層の表面の、JIS B 0601により規定される中心線平均粗さRa(以下、単に「表面粗さRa」という)が0.5〜2.5μmである亜鉛系めっき熱処理鋼材の製造方法であって、少なくとも一部に形成されるめっき層の付着量が片面当たり30〜150g/mであるとともにこのめっき層中に20%以下のFeを含有する亜鉛系めっき鋼材を、めっき層を溶解し得る溶液と接触させ、0.2g/m以上めっき層を溶解させ、乾燥させてから、30℃/秒以上の昇温速度で焼入れが可能な温度域への加熱を行ってから30℃/秒以上の冷却速度での冷却を行うことを特徴とする亜鉛系めっき熱処理鋼材の製造方法である。
また、本発明は、亜鉛系めっき鋼材の少なくとも一部に、塑性変形が可能な温度域または焼入れが可能な温度域への加熱を行って得られる亜鉛系熱処理鋼材であって、加熱を行われた部分の表面に存在するめっき層の付着量が片面当たり20〜100g/m であり、このめっき層のFe濃度が10〜35%であり、このめっき層の表面の、JIS B 0601により規定される表面粗さRaが0.5〜2.5μmである亜鉛系めっき熱処理鋼材の製造方法であって、少なくとも一部に形成されるめっき層の付着量が片面当たり30〜150g/mであるとともにこのめっき層中に20%以下のFeを含有する亜鉛系めっき鋼材を、めっき層を溶解し得る溶液と接触させ、0.2g/m以上めっき層を溶解させ、乾燥させてから、30℃/秒以上の昇温速度で塑性変形が可能な温度域への加熱を行い、この加熱をされた部分に、曲げモーメントを付与してから30℃/秒以上の冷却速度での冷却を行うことを特徴とする亜鉛系めっき熱処理鋼材の製造方法である。
また、本発明は、亜鉛系めっき鋼材の少なくとも一部に、塑性変形が可能な温度域または焼入れが可能な温度域への加熱を行って得られる亜鉛系熱処理鋼材であって、加熱を行われた部分の表面に存在するめっき層の付着量が片面当たり20〜100g/m であり、このめっき層のFe濃度が10〜35%であり、このめっき層の表面の、JIS B 0601により規定される表面粗さRaが0.5〜2.5μmである記の本発明に係る亜鉛系めっき熱処理鋼材の製造方法であって、少なくとも一部に形成されるめっき層の付着量が片面当たり30〜150g/mであるとともにこのめっき層中に20%以下のFeを含有する亜鉛系めっき鋼材を、めっき層を溶解し得る溶液と接触させ、0.2g/m以上めっき層を溶解させ、乾燥させてから、30℃/秒以上の昇温速度で焼入れが可能な温度域への加熱を行い、この加熱をされた部分に曲げモーメントを付与してから30℃/秒以上の冷却速度での冷却を行うことを特徴とする亜鉛系めっき熱処理鋼材の製造方法である。
これらの本発明に係る亜鉛系めっき熱処理鋼材の製造方法では、めっき層が6.5%以下のAlを含有することが好ましい。
これらの本発明に係る亜鉛系めっき熱処理鋼材の製造方法では、めっき層を溶解し得る溶液が、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、過酸化水素、重曹、硫安、アンモニア、水酸化ナトリウムのいずれか一種、または二種以上を含む水溶液であることが例示される。
これらの本発明に係る亜鉛系めっき熱処理鋼材の製造方法では、めっき層が5.5%以下のAlを含有することが好ましい。
これらの本発明に係る亜鉛系めっき熱処理鋼材の製造方法では、水溶液または溶液と接触した直後の亜鉛系めっき鋼材の酸化膜の厚さが30nm以下であることが好ましい。
上記の液処理は、めっき皮膜の溶解量がめっき片面あたり0.5g/m以上となるように行うことが好ましい。これ未満とすることは、めっき皮膜を均一に溶解することが操業上難しいためである。また溶解量の上限は特に定めない。溶解量を増していっても、急速加熱の際のZnの焼失量には大きな変化がみられないとともに、その一方で溶解量が大きくなるほど熱処理後に残留する金属Zn量が少なくなり犠牲防食能が劣るようになるからである。好ましい溶解量は0.5〜30g/mであり、さらに好ましい範囲は、1〜20g/mであり、さらに好ましい範囲は3〜15g/mである。
めっき鋼材のめっきの最表面には、厚い酸化膜および有機物が固着した皮膜が形成されている。これは、めっき板を鋼材に加工したもので特に顕著であることから、加工の際にZnめっきが油と共存下で受けるしごき加工が原因であると推定される。液処理によってめっき耐熱性が向上することは確認されており、また液処理によってこの酸化膜と有機物皮膜が除去されていることが確認されている。耐熱性の向上と、酸化膜と有機物皮膜の除去の関係を調査した結果は実施例3において後述するが、この関係には依然不明な点がある。しかし、現象的には、液処理で酸化膜と有機物皮膜が除去されること、液処理でめっき耐熱性が向上することが確認されている。そこで、液処理直後の酸化膜厚さを30nm以下とする。
酸化膜の厚さとは、オージェ深さ分析などでごく最表層の深さ方向の元素組成プロファイルを測定し、Oの組成値が、最表面でのOの組成値の半分になる深さとする。また、酸化膜と有機物皮膜の合計厚さとは、同様に、OとCの組成合計値が、最表面でのOとCの組成合計値の半分になる深さとする。
酸化膜の厚さは、液処理直後以降、時間経過とともに増加し、熱処理直前時点では上記の規定を超えることがある。後述する実施例3によれば、液処理直後の酸化膜厚さがこの規定内であれば、その後の時間経過で酸化膜厚さが増加しても、液処理の向上効果が損なわれることはない。よって、熱処理直前時点の酸化膜厚さ、または酸化膜と有機物皮膜の合計厚さは、特に規定せず、上記の規定を上回っていてもよいものとする。
これらの本発明に係る亜鉛系めっき熱処理鋼材の製造方法では、亜鉛系めっき鋼材が、その長手方向へ向けて断続的または連続的に送られながら、支持手段により支持されるとともに、加圧ロールが、支持手段の下流側に配置されるとともにその位置が二次元または三次元に移動自在である可動ローラダイスによって回転自在に支持され、さらに、亜鉛系めっき鋼材の加熱が、この可動ローラダイスと支持手段との間であって亜鉛系めっき鋼材の外周に亜鉛系めっき鋼材から離間して配置される加熱手段によって行われるとともに、冷却が、この加熱手段と可動ローラダイスとの間に配置される冷却手段によって行われることが、好ましい。
これらの本発明における「鋼材」とは、丸形、矩形、台形等の断面形状を有する閉断面材、ロールフォーミング等により製造されるチャンネル材等の開断面材、押し出し加工により製造されるチャンネル材等の異型断面材、または例えば丸棒、角棒さらには異形棒等の各種の断面形状を有する棒材等を意味するものであり、長手方向へ断面形状がテーパー状に変化するテーパー形状のものも包含する。
本発明の亜鉛系めっき熱処理鋼材の製造方法によれば、亜鉛系めっき鋼材を用いて高温加熱および冷却による熱処理を施す場合であっても、めっき鋼材を脱脂し薬液に接触させ、適宜水洗し乾燥させてから、急速加熱、曲げ加工、急冷を行うことにより、加熱時のめっき気化と酸化を抑制し、より高い加熱温度であっても加熱後のZn付着量を高め、酸化Zn量を低減でき、粗度を低下することが可能になる。
部材の耐食性能は、製品のこれらの特性が要因と判明しており、製品の耐食性能はこれらの特性に見合った高い水準になると推定される。このため、本発明に係る亜鉛系めっき熱処理鋼材によれば、自動車用部材としての塗装後の適正な耐食性および塗膜密着性を確保することができる。
図1は、鉛系めっき熱処理鋼材を製造するための製造装置の構成を例示する説明図である。 図2は、鉛系めっき熱処理鋼材を製造するための製造装置における誘導加熱コイルおよび冷却装置の構成の概略を例示する断面図である。 図3(a)〜図3(c)は、いずれも、鉛系めっき熱処理鋼材の製造に用いることができる可動ローラダイスの形状を例示する説明図である。 図4は、実施例3の結果を示す断面SEM写真である。 図5は、実施例3におけるオージェ深さ分析での元素組成プロファイルを示す説明図である。 図6は、実施例3におけるオージェ深さ分析での元素組成プロファイルを示す説明図である。
本発明を実施するための形態を、添付図面を参照しながら説明する。以下、本発明を、亜鉛系めっき鋼材に熱処理を施した亜鉛系めっき熱処理鋼材、その製造方法およびそれに用いる製造装置例の順に説明する。
1.鉛系めっき熱処理鋼材
鉛系めっき熱処理鋼材(以下、単に「熱処理鋼材」という)は、亜鉛系めっき鋼材(以下、単に「めっき鋼材」という)に、塑性変形が可能な温度域または焼入れが可能な温度域への加熱を行って得られる熱処理鋼材であって、その表面に存在するめっき層の付着量が片面当たり20〜100g/mであり、このめっき層のFe濃度が10〜35%であり、このめっき層の表面の表面粗さRaが0.5〜2.5μmである。
素材であるめっき鋼材の素地鋼として、高強度鋼を採用すれば、熱間曲げ加工を施して熱処理鋼材とした後に、熱処理鋼材の表面に自動車用部材としての下地化成被膜および塗装被膜を形成することによって、塗装耐食性を具備した高強度の曲げ加工部材を製造することができる。高強度鋼を冷間で曲げるのは加工精度が劣り易く、また加工応力が大きいため大掛かりな設備を必要とするので、この観点からも熱間曲げ加工は好ましい。
また、めっき鋼材の素地鋼として、焼入性を有する鋼材を使用し、低強度の鋼材を出発材料として熱間加工を行った後、焼入によって強度を上げることによって、高強度の熱処理鋼材を得ることもできる。
焼入性を有する鋼材として、例えば、その化学組成がC:0.1〜0.3%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.5〜3.0%、P:0.003〜0.05%、S:0.05%以下、Cr:0.1〜0.5%、Ti:0.01〜0.1%、sol.Al:1%以下、B:0.0002〜0.004%、N:0.01%以下を含有し、残部Feおよび不純物からなり、必要に応じて、Cu:1%以下、Ni:2%以下、Mo:1%以下、V:1%以下、およびNb:1%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上を含有する焼入用鋼からなる素地鋼が例示される。
この素地鋼を素板とする亜鉛系めっき鋼板から製造されたチャンネル部材等のめっき鋼であれば、焼入可能な温度まで加熱してから急冷を施すことによって、引張強さが1200MPa以上の熱処理鋼材を製造することができる。
このときの亜鉛系めっき鋼板は、常法により、熱間圧延、酸洗、冷間圧延および溶融亜鉛めっきという工程、若しくは、熱間圧延、酸洗、冷間圧延、焼鈍および電気亜鉛めっきという工程により、製造される。溶融亜鉛めっきの後に合金化処理が施されてもよい。
次に、熱処理鋼材の形状は、特に限定されず、丸形、矩形、台形等の形状を有する閉断面材、ロールフォーミング等により製造された開断面材(チャンネル)、押し出し加工により製造された異型断面材(チャンネル)、または各種の断面形状からなる棒材(丸棒、角棒、異型棒)を採用することができる。さらには、断面積が連続的に変化するテーパー形状の鋼材にも適用できる。
熱処理鋼材の表面に残存するめっき付着量は、片面当たり20g/m以上100g/m以下である。自動車用部材としての耐食性を確保する観点から、めっき付着量が20g/m未満では塗装部の腐食深さを抑制する効果が少ない。一方、残存するめっき付着量が100g/mを超えると、加熱によりめっき層が液相状態になるのに伴って、液タレやZn融液の飛沫付着を生じ易く、得られた亜鉛系めっき熱処理鋼材の外観不良となるおそれがある。なお、このめっき付着量は、めっき層中にFeやAlが含有される場合にはこれらも加算される。
熱処理鋼材のめっき層の表面粗さRaは、0.5μm以上2.5μm以下である。めっき層の表面粗さRaが0.5μm未満であると、塗膜との密着性が低下して水分の浸透が容易となることから、塗膜密着性が低下する。一方、めっき層の表面粗さRaが2.5μmを超えると、電着塗装での膜厚の不均一が要因となって、塗装後の耐食性を十分に確保できなくなる。
熱処理鋼材のめっき層中のFe濃度は、10%以上35%以下である。めっき層の表面粗さRaが0.5〜2.5μmであるため、耐食性を確保するためにめっき層中のFe濃度は10%以上である。一方、めっき層中のFe濃度が35%を超えると、めっき層が電気化学的に貴となり過ぎて犠牲防食性能が低下することから、めっき層中のFe濃度の上限は35%とする。望ましくは25%以下、より望ましくは20%以下である。
熱処理鋼材のめっき層中にAlを含有することができ、望ましい含有量は6.5%以下である。加熱前にめっき層中のAl含有量が6.5%を超えると、加熱過程でFe−Al系合金相を不均一に形成することになる。その後に冷却されると、Al含有量は6.5%を超えて濃化するとともに、めっき層の表面粗度を著しく劣化させる。このため、熱処理鋼材のめっき層中のAl含有量は6.5%以下とすることが望ましい。Alは、Znの酸化防止に効果があるが、この効果は加熱前のめっき層がAlを0.05%以上含有することにより認められる。
熱処理鋼材は、この鋼材の少なくとも一部が本発明で規定する条件を満足するものであればよい。例えば、自動車用の曲げ部材を想定した場合に、この部材の全てに曲げ加工や焼入れが施される必要はなく、例えば端部には曲げ加工も焼入れも行われない部材も本発明の対象となる。このような場合には、一部に熱間曲げや焼入れが施されることとなるが、この部材の全ての部分において本発明で規定するめっき層を有する必要はない。また、加熱された部分の全てにおいて、後述する薬液処理を行う必要はなく、部材として特に重要な面や部分についてのみ薬液処理するようにしてもよい。
2.熱処理鋼材の製造方法、製造装置
熱処理鋼材の製造方法において、実用的な価値が高いのは、めっき鋼材として素地鋼板(以下、単に「素板」ということがある)から製管された鋼管等からなる自動車用の長尺部材を用い、焼入れ、若しくは加熱後に熱間曲げ加工、または焼入と熱間曲げ加工とを同時に施し、熱処理鋼材を得ることである。以下に、この製造方法を詳細に説明する。
熱処理鋼材の素材である亜鉛系めっき鋼材は、溶融亜鉛めっき処理を施した溶融亜鉛めっき鋼材であってもよく、溶融亜鉛めっき後に合金化熱処理を施した合金化溶融亜鉛めっき鋼材であってもよい。また、電気亜鉛めっき鋼材を用いることもでき、Zn−Al溶融亜鉛めっき鋼材を適用することができる。
熱処理鋼材の製造方法では、素材として、少なくとも一部に形成されるめっき層の付着量が片面当たり30〜150g/mであるとともにこのめっき層中に20%以下のFeを含有する亜鉛系めっき鋼材を用いる。亜鉛系めっき鋼材のめっき付着量は、めっき層中にFeやAlが含有される場合にはこれらも加算される。
本発明では、焼入れが可能な温度域として最高到達温度は850℃以上となるところ、加熱過程で幾分かのZnが蒸発しても熱処理後にも十分な耐食性を確保するために、片面当り20g/mの付着量を残存させる。このため、熱処理前のめっき鋼材のめっき付着量は、30g/m以上とする。
一方、上述したように、加熱に伴いめっき層が液相状態になると、熱処理後のめっき付着量が100g/mを超える場合には、液タレ等が誘発され、外観不良を発生する。これを防止するために、加熱前のめっき鋼材のめっき付着量を150g/m以下とする。めっき鋼材のより望ましいめっき付着量は、40g/m以上120g/m以下である。
めっき鋼材のめっき層中のFe濃度は20%以下とする。なお、通常量産される合金化溶融亜鉛めっき鋼板の皮膜中のFe濃度は15%未満である。さらに、めっき鋼材は、めっき層中にAlを含有してもよいが、望ましい含有量は5.5%以下である。めっき層中にAlが5.5%を超えて含有されると、加熱過程でFe−Al系合金相を不均一に形成させるため、冷却後の表面粗度が著しく悪化し、加圧による矯正が困難になる。
このめっき鋼材に対して、次の要領で薬液処理する。はじめに、薬液処理の前にめっき鋼材を脱脂するのが好ましい。脱脂は、薬液処理を均一に進行させるために行う。油等が残存していると、その部分で薬液との反応が遅れ、めっき耐熱性の不均一や、部材耐食性の不均一の原因となり易い。
次に、めっき鋼材に薬液を接触させる。薬液は、めっき層の亜鉛を溶解し得る水溶液であればよく、例えば塩酸、硫酸、硝酸、酢酸などの有機酸、過酸化水素、重曹、硫安、アンモニア、水酸化ナトリウムのいずれか一種、または二種以上を含む水溶液である。二種以上を含んでいてもよいが、薬品の組み合わせによっては互いを中和するため、酸同士またはアルカリ同士を混合するのが望ましい。
薬液の濃度、温度さらに浸漬時間は、特に限定を要さないが、めっき耐熱性の向上効果が十分に得られる条件の組みあわせとすることが望ましい。組み合わせの一例を、後述する実施例の欄に例示する。
実施例3、4に示すように、めっき溶解量が0.2g/m以上あればめっき耐熱性を向上させることが可能である。溶解量が過多ではめっきのZnが必要以上に失われ、熱処理後時点での金属Zn量が不足し、耐食性が所定の水準を満たさなくなる。実用上は2g/mも減量させれば十分と考えられる。
めっき鋼材に薬液を接触させる方法は、特に限定を要するものではなく、浸漬、スプレー塗布さらにはロールコート等が例示される。めっき鋼材に薬液を接触させる処理を行うことによって、この急速加熱時のめっき耐熱性が向上する理由は、明確ではない。しかし、以上の列挙した薬剤以外にも、めっき表面を溶解させる薬液には同様の向上効果があるものと期待される。具体的には弗酸、硼酸、燐酸、砒酸、塩素水、過塩素酸、クロム酸、および蟻酸、枸櫞酸、蓚酸、ステアリン酸、ピクリン酸、酒石酸、乳酸、酪酸などの各種有機酸には同様の効果があると期待される。また硫酸アンモニウムにも効果があることから、これらの酸・アルカリの塩にも同様の効果があると期待される。
めっき鋼材に薬液を接触させるこの処理によってめっき耐熱性が向上する理由は不明である。推定されるのは、めっき最表層に付着物、加工層、酸化皮膜などがあると急速加熱中にこれらを基点にして酸化皮膜が破れ、加熱されたZnと大気が直接接触して燃焼反応し、燃え広がりが起こってめっき全体の耐熱性が劣化する。薬液処理でこれらを除去しておけば加熱中のZn酸化皮膜が安定し、めっき耐熱性が向上するものと考えられる。
薬液と接触させた後にめっき鋼材は、必要に応じて水洗される。薬液によっては水洗を省略してもよい。その後、めっき鋼材を乾燥する。熱風などで乾燥を促進してもよいが、薬液によっては常温で大気中に放置して自然乾燥するようにしてもよい。
乾燥後に、めっき鋼材は、塑性変形が可能である温度域、または焼入れが可能な温度域への加熱を行われ、熱間曲げ加工や焼入処理、またはこれらを同時に施すことによって、熱処理鋼材が製造される。これにより、自動車用部材として塗装後の良好な耐食性や塗装密着性を有する熱処理鋼材が製造される。
具体的には、薬液処理を行われためっき鋼材を、30℃/秒以上の昇温速度で、焼入が可能な温度域(Ac点以上)、および/または、塑性変形が可能な温度域(少なくとも600℃以上、望ましくはAc点以上)への加熱を行い、この加熱をされた部分に、曲げモーメントを付与してから30℃/秒以上の冷却速度での冷却を行う。
熱処理パターンとしては、昇温速度が30℃/秒以上で加熱し、30℃/秒以上の冷却速度で冷却する。昇温速度や冷却速度が上記で規定する速度を満足しないと、ヒートサイクルが長時間になり、Znの蒸発や酸化が促進され、めっき層中の合金化が過剰になり、素地鋼によっては溶融亜鉛脆化の危険を生じる。このため、昇温速度および冷却速度はいずれも30℃/秒以上とする。
本発明の熱処理鋼材の製造方法では、最高到達温度またはその近傍温度域での保持時間は特に規定しないが、10秒間以下とすることが望ましく、さらに望ましくは5秒間以下である。高温域での保持時間が長くなると、めっき層中で過度の合金化が進行し、亜鉛蒸発が進行し亜鉛系めっき層としての耐食性が劣化する。
図1は、処理鋼材1bを製造するための製造装置7の構成を例示する説明図である。図1に例示する製造装置7では、被加工材1の断面形状を丸形(丸管)とし、被加工材であるめっき鋼材1aを逐次連続的に加熱し、局部的な加熱部に可動ローラダイス4を用いて塑性変形を生じさせ、その直後に冷却することにより、熱処理鋼材1bを製造する。
このため、めっき鋼材1aを保持するための二組の回転可能な支持手段である支持ロール2、2と、その上流側にはめっき鋼材1aを断続的または連続的に送り移動させる送り装置3が配置される。一方、二対の支持ロール2、2の下流側には、めっき鋼材1aを支持し、当該支持位置または/および移動速度を制御させるための可動ローラダイス4が配置される。図1に示すように、可動ローラダイス4は、めっき鋼材1aの表面に当接する孔型ロールである加圧ロール4a、4bを二つ備える。
可動ローラダイス4の入側には、めっき鋼材1aの外周にめっき鋼材1aから離間して配置されてめっき鋼材1aを部分的に急速に加熱する誘導加熱コイル5と、誘導加熱コイル5により急速に加熱されためっき鋼材1aに冷却媒体を噴射することによってめっき鋼材1aを急速に冷却する冷却装置6とが配置される。
図2は、この製造装置7における誘導加熱コイル5および冷却装置6の構成の概略を例示する断面図である。加熱部を形成すべきめっき鋼材1aの外周にめっき鋼材1aから離間させて、環状の誘導加熱コイル5を配置して、この誘導加熱コイル5によりめっき鋼材1aを部分的に急速に加熱し、次いで、必要に応じて、冷却装置6から冷却媒体(例えば水)を噴射することにより、誘導加熱コイル5により急速に加熱されためっき鋼材1aを急速に冷却する。
このとき、二組の支持ロール2、2を通過しためっき鋼材1aを可動ローラダイス4の加圧ロール4a、4bにより支持し、めっき鋼材1aの外周に配置した誘導加熱コイル5および冷却装置6を用いて、めっき鋼材1aを局部的に加熱および冷却しながら、可動ローラダイス4の位置を二次元または三次元で制御するとともにその移動速度も適宜調整することによって、めっき鋼材1aにおける部分的に高温にある部分に曲げモーメントを与えて曲げ加工を行うことができるとともに、加熱装置5による加熱速度および加熱温度と冷却装置6による冷却速度とを適宜調整することによってめっき鋼材1aの所望の部分に焼入れを行うことができるので、所望の高強度を有するとともに所望の曲率の二次元または三次元の曲げ加工部を有する熱処理鋼材1bを製造することができる。
図3は、処理鋼材1bの製造に用いることができる可動ローラダイス4の形状を例示する説明図であり、図3(a)はめっき鋼材1aが丸管などの閉断面材である場合に2つの加圧ロール4a、4bにより構成される場合であり、図3(b)はめっき鋼材1aが矩形管等の閉断面材である場合に2つの加圧ロール4c、4dにより構成される場合であり、さらに図3(c)はめっき鋼材1aが矩形管などの閉断面材である場合に4つの加圧ロール4e、4f、4g、4hにより構成される場合である。
可動ローラダイス4が、上下方向へのシフト機構、左右方向へのシフト機構、上下方向に傾斜するチルト機構、あるいは左右方向に傾斜するチルト機構を具備すること、望ましくはさらに前後方向への移動機構を具備することによって、3次元的にめっき鋼材1aを支持し、必要により曲げモーメントを付与することができる。
このようにして製造される熱処理鋼材1bは、自動車用部材としての塗装後の適正な耐食性および塗膜密着性を確保することができる。
本発明を、実施例を参照しながら、より具体的に説明する。
C:0.21%、Si:0.23%、Mn:1.29%、P:0.013%、S:0.002%、Al:0.044%、Cr:0.2%、B:0.0014、残部Feおよび不純物の化学組成を有する鋼板に合金化溶融亜鉛めっきを施し、めっき原板を作成した。ロールフォーミングおよび溶接により、肉厚1.6mm×外径31.8mmの丸管の電縫管とした。めっき付着量は片面あたり48.7g/mであり、めっき層のFe含有量は11.6%であるとともにめっき層のAl含有量は0.63%であった。この電縫管を溶剤により脱脂し、ディップゾールを含ませたガーゼで拭き取った。
この電縫管を、室温の1%塩酸に表1に示す時間浸漬した後、重曹飽和水溶液に浸漬して中和し、流水で水洗し、ブロワーで乾燥した。この後、電縫管を通電加熱で150℃/秒の昇温速度で昇温した。温度は試験片に溶接した熱電対で実測し、最高温度950〜980℃を狙った。最高温度到達後は直ちに水冷した。水冷時の冷却速度は990℃/秒であった。
試験片の外面を下記の要領で評価した。白色ZnO生成を目視で観察した。急速加熱しても白色酸化亜鉛が全く見られないものは「○」とし、ごく少量見られるものを「△」とし、多量に見られるものを「×」とした。
粗度はJIS B 0601の規定に準拠し、カットオフ値を0.8mmとして、東京精密製サーフコムを用いて測定した。測定装置の型式は、SURFCOM1900DXであり、触針には型式E−DT−SS01Aを用いた。測定の際には、粗度標準片(東京精密製E−MC−S24B)を用い、Ra3.18μm標準片の粗度測定値が±2%の範囲内(3.12〜3.24μm)、Ra0.41μm標準片の粗度測定値が0.38〜0.44μmの範囲内であることを確認した。熱電対溶接部の近傍を2回測定し、平均値を求めた。
めっき付着量は、インヒビター(朝日化学社製700BK、1g/L)を添加した10%塩酸水溶液中に浸漬してめっき皮膜を溶解し、得られた溶液をICP分光分析法および原子吸光法でめっき付着量およびFe濃度の測定を行った。
結果を表1に示す。
表1に示すように、本発明の薬液処理を行わないもの(No.1、2)は、白色ZnOが生成し、表面粗度が高くし、めっき残留量が少なかった。これに対し、薬液処理を行ったもの(No.3〜12)は、急速加熱の最高温度が高くなっても、白色ZnOを減少させ、粗度上昇を抑制し、めっき残留量を増やすことができることがわかる。
実施例1の電縫管を供試材とし、実施例1と同様に溶剤脱脂し、ディップゾールを含ませたガーゼで拭き取った後に、1%塩酸、1%硫酸、1%硝酸、10%酢酸、5%過酸化水素水、重曹飽和水溶液(7%)、10%硫安、5%アンモニア水、10%水酸化ナトリウム水溶液に電縫管を浸漬した。すべて液温は室温とし、浸漬時間は60秒間とした。浸漬後、水洗して熱風乾燥したものと、水洗せず熱風乾燥したものを作成した。水洗の前には、実施例1のような中和処理は行わなかった。
これらの試験片を実施例1と同じ条件で急速加熱および急冷した。試験片は実施例1同様に白色ZnO生成を目視観察し、粗度を測定した。結果を表2にまとめて示す。
実施例2の結果から、各種の酸またはアルカリ水溶液で処理することで急速加熱しても白色酸化亜鉛の生成が抑制されていた。
また、薬液によっては水洗が省略されても良好であった。具体的には、硫酸、硝酸、酢酸、過酸化水素水、硫安、アンモニア水が該当する。一方、薬液が塩酸または重曹水溶液である場合には、水洗した方が良好であり、水酸化ナトリウム水溶液では水洗しない方が良好であった。
さらに、表1のNo.11、12と、表2のNo.13とでは、塩酸に浸漬した後の中和処理の有無のみが実質的な相違であるが、No.13の結果から中和工程は省略できる可能性が見出された。
以下、薬液処理によるめっき表面への影響を調査した。
(i)薬液処理での溶解量調査
実施例1の電縫管を長さ40mmに切断し、溶剤脱脂した。内面をシールした。外面をディップソールで拭いた。秤量し重量を記録した。室温の1%塩酸または10%硫安水溶液に所定時間浸漬し、重曹飽和水溶液で濯ぎ、水道水で流水洗浄し、ブロワーで乾燥させた。秤量し重量を測定した。重量変化を面積で割り、外面の面積当りの溶解量を算出した。結果を表3に示す。
いずれの薬液処理でも、めっき層の減量が認められた。
(ii)断面SEMの比較
前記電縫管に製管する前のめっき原板、前記電縫管、および前記電縫管を上記の要領で1%塩酸で15秒間処理したものの3種類の供試材の断面を、走査型電子顕微鏡(日立S3400N)で観察した。供試材はそれぞれ、樹脂埋めし、機械研磨し、エッチングせずにカーボン蒸着した。走査電子顕微鏡(日立S3400N)で観察した。観察条件は、作動距離10mm、加速電圧15kVとして、反射電子像を撮影した。結果を図4に示す。
表3によれば、1%塩酸15秒間の薬液処理でも耐熱性は向上するが、そのときの溶解量は1g/mであり、厚さに換算すると約0.14ミクロンである。この厚さは、図4で示されるように、前記電縫管の断面SEMで観察される加工層の厚みに比べて小さいので、加工層を全て除去しているものではないと考えられた。実際、図4でも、この液処理条件では依然としてめっき上層の割れが観察されるように、加工層が残留していた。
(iii)深さ方向の元素分析
前記の3種の供試材を(めっき原板および電縫管は溶剤脱脂をしてから)、Auger電子分光法により、表面からスパッタしながら元素分析を行った。分析装置はアルバック・ファイ社製モデル680を用い、一次ビームは加速電圧10kV、試料電流10nA、分析箇所は写真の枠内のエリア、スパッタ速度は1.0nm/min(SiO換算)、加速電圧3kV、ラスター2×2mmとした。結果を図5に示す。
めっき原板に比べ、電縫管は、溶剤脱脂を行っているにも関わらず、CとOが多く検出されSとClも検出された。すなわち、電縫管の表面には、製管時に使用した潤滑剤に由来する有機物が残存しているとともに、めっき原板と比較して酸化物が増加していると考えられた。酸化物の厚さはOの分析結果から約40nm以上形成されていると考えられた。
これに対し、電縫管を1%塩酸で処理したものは、前述の元素が大幅に低減していた。すなわち、最表面の有機物と酸化物が除去され、酸化物の厚さは概ね20nmと考えられた。
さらに、耐熱性に及ぼす潤滑剤や防錆油の影響、めっき表面のしごきの影響や薬液処理後の経時変化等による酸化物が成長の影響を模擬した実験を行った。
(i)有機物の影響−1
前述した前記電縫管を上記の要領により1%塩酸で15秒間処理したものに、製管時に用いた潤滑剤、および一般的な防錆油の二つをそれぞれ塗布してから、それぞれ実験した。結果を表4にまとめて示す。
表4に示すように、潤滑剤および防錆油のいずれでも耐熱性の悪化はみられなかった。
(ii)有機物の影響−2
製管時のしごき模擬するため、先端1Rの工具を荷重100kgで前記のめっき原板の表面に押し付け、1方向へ4回繰り返した。このとき、潤滑油の使用/不使用の影響も調査した。結果を表5にまとめて示す。
表5に示すように、潤滑剤の有無によらず、しごき加工によって耐熱性は劣化した。
(iii)経時変化による酸化物再形成の影響
前記電縫管を1%塩酸に15秒間液処理したものを、そのまま恒温恒湿槽に入れた。恒温恒湿槽の条件は、(a)温度50℃、湿度30%、期間1週間、(b)温度50度、湿度95%、期間1週間、の2種類とした。
これらのサンプルについて、実施例2と同様の操作によりめっきの耐熱性を評価した。また恒温恒湿槽から取り出したサンプルを、前述と同様にオージェ分光分析で深さ方向の分析を行った。
深さ分析の結果を図6に、耐熱性の結果を表6に示す。
恒温恒湿槽に入れたものは、特に湿度95%の場合においてめっき表面には酸化物層が厚く成長していたが(約30μm)、耐熱性は良好であった。すなわち、一旦薬液処理することで、その後経時変化で多少めっき表面が再び酸化しても耐熱性は良好であると考えられた。
1 被加工材
1a めっき鋼材
1b 熱処理鋼材
2 支持手段、支持ロール
3 押し出し装置
4 可動ローラダイス
5 誘導加熱コイル
6 冷却装置
7 製造装置

Claims (8)

  1. 亜鉛系めっき鋼材の少なくとも一部に、塑性変形が可能な温度域または焼入れが可能な温度域への加熱を行って得られる亜鉛系熱処理鋼材であって、前記加熱を行われた部分の表面に存在するめっき層の付着量が片面当たり20〜100g/m であり、当該めっき層のFe濃度が10〜35質量%であり、さらに、当該めっき層の表面の中心線平均粗さRaが0.5〜2.5μmである亜鉛系めっき熱処理鋼材の製造方法であって、少なくとも一部に形成されるめっき層の付着量が片面当たり30〜150g/mであるとともに当該めっき層中に20質量%以下のFeを含有する亜鉛系めっき鋼材を、めっき層を溶解し得る溶液と接触させ、0.2g/m以上めっき層を溶解させ、乾燥させてから、30℃/秒以上の昇温速度で焼入れが可能な温度域への加熱を行ってから30℃/秒以上の冷却速度での冷却を行うことを特徴とする亜鉛系めっき熱処理鋼材の製造方法。
  2. 亜鉛系めっき鋼材の少なくとも一部に、塑性変形が可能な温度域または焼入れが可能な温度域への加熱を行って得られる亜鉛系熱処理鋼材であって、前記加熱を行われた部分の表面に存在するめっき層の付着量が片面当たり20〜100g/m であり、当該めっき層のFe濃度が10〜35質量%であり、さらに、当該めっき層の表面の中心線平均粗さRaが0.5〜2.5μmである亜鉛系めっき熱処理鋼材の製造方法であって、少なくとも一部に形成されるめっき層の付着量が片面当たり30〜150g/mであるとともに当該めっき層中に20質量%以下のFeを含有する亜鉛系めっき鋼材を、めっき層を溶解し得る溶液と接触させ、0.2g/m以上めっき層を溶解させ、乾燥させてから、30℃/秒以上の昇温速度で塑性変形が可能な温度域への加熱を行い、当該加熱をされた部分に、曲げモーメントを付与してから30℃/秒以上の冷却速度での冷却を行うことを特徴とする亜鉛系めっき熱処理鋼材の製造方法。
  3. 亜鉛系めっき鋼材の少なくとも一部に、塑性変形が可能な温度域または焼入れが可能な温度域への加熱を行って得られる亜鉛系熱処理鋼材であって、前記加熱を行われた部分の表面に存在するめっき層の付着量が片面当たり20〜100g/m であり、当該めっき層のFe濃度が10〜35質量%であり、さらに、当該めっき層の表面の中心線平均粗さRaが0.5〜2.5μmである亜鉛系めっき熱処理鋼材の製造方法であって、少なくとも一部に形成されるめっき層の付着量が片面当たり30〜150g/mであるとともに当該めっき層中に20質量%以下のFeを含有する亜鉛系めっき鋼材を、めっき層を溶解し得る溶液と接触させ、0.2g/m以上めっき層を溶解させ、乾燥させてから、30℃/秒以上の昇温速度で焼入れが可能な温度域への加熱を行い、前記加熱をされた部分に曲げモーメントを付与してから30℃/秒以上の冷却速度での冷却を行うことを特徴とする亜鉛系めっき熱処理鋼材の製造方法。
  4. 前記めっき層が6.5質量%以下のAlを含有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された亜鉛系めっき熱処理鋼材の製造方法。
  5. 前記めっき層を溶解し得る溶液が塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、過酸化水素、重曹、硫安、アンモニア、水酸化ナトリウムのいずれか一種、または二種以上を含む水溶液である請求項から請求項までのいずれか1項に記載された亜鉛系めっき熱処理鋼材の製造方法。
  6. 前記めっき層が5.5質量%以下のAlを含有することを特徴とする請求項から請求項までのいずれか1項に記載された亜鉛系めっき熱処理鋼材の製造方法。
  7. 前記水溶液または前記溶液と接触した直後の前記亜鉛系めっき鋼材の酸化膜の厚さが30nm以下であることを特徴とする請求項から請求項までのいずれか1項に記載された亜鉛系めっき熱処理鋼材の製造方法。
  8. 前記亜鉛系めっき鋼材は、その長手方向へ向けて断続的または連続的に送られながら、支持手段により支持されるとともに、該支持手段の下流側に配置されるとともにその位置が二次元または三次元に移動自在である可動ローラダイスによって回転自在に支持され、さらに、前記加熱は、当該可動ローラダイスと前記支持手段との間であって前記亜鉛系めっき鋼材の外周に当該亜鉛系めっき鋼材から離間して配置される加熱手段によって行われるとともに、前記冷却は、当該加熱手段と前記可動ローラダイスとの間に配置される冷却手段によって行われる請求項から請求項までのいずれか1項に記載された亜鉛系めっき熱処理鋼材の製造方法。
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