JP6210172B2 - 焼入れ鋼材の製造方法 - Google Patents
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Description
鋼材を加熱することで鋼材の表面に酸化被膜を生成する酸化被膜生成工程と、
前記酸化被膜生成工程によって表面に酸化被膜が生成された鋼材を、加熱する位置が前記鋼材の軸方向に移動するように、部分的にAc3変態点以上の温度に急速加熱する加熱工程と、
前記鋼材に生じる高温部が局所的になるように、前記加熱工程により加熱する位置に近接する位置を冷却して焼入れする焼入れ工程と、
前記加熱工程と前記焼入れ工程により発生した鋼材の軸方向に移動する局所的な高温部に曲げモーメントを加えて前記高温部を曲げ変形する変形工程と、
を備える焼入れ鋼材の製造方法が提供される。
実施形態の焼入れ鋼材の製造方法は、鋼材の表面に酸化被膜を生成する酸化被膜生成工程と、この酸化被膜生成工程によって表面に酸化被膜が生成された鋼材を熱間曲げ焼入れ(3DQ加工)する熱間曲げ焼入れ工程と、を備える。
Ac3=910−203×√C−15.2×Ni+44.7×Si+104×V+31.5×Mo−30×Mn−11×Cr −20×Cu+700×P+400×Al+50×Ti ・・・・(1)
加熱により生成する酸化被膜にCu(Cu−Zn含む)を取り込ませるため、また、Cu−Znの変質させるためには、Ac3変態点以上の加熱温度で10秒以上加熱することが好ましい。より好ましくは、5分以上の加熱時間である。また、過度の加熱による鋼材表層の脱炭や結晶粒の粗大化を防止するため、加熱時間は60分以内が好ましい。
次に、図1を参照して、上述の製造方法に用いる焼入れ鋼材製造装置10を説明する。
熱間変形焼入れ部12は、高周波誘導加熱装置52と水冷装置54とを備えている。高周波誘導加熱装置52は鋼材移動方向2の上流側に配置され、冷却装置54は鋼材移動方向2の下流側に配置されている。
変形力付与装置71は、変形力付与装置71の保持部72で鋼材1のノズル53よりも鋼材移動方向2の下流側の部分を保持する。保持部72としては、例えば、チャックが好適に用いられる。変形力付与装置71としては、例えば、マニピュレータが好適に用いられる。マニピュレータとチャックに代えて、可動ローラーダイスも好適に用いられる。変形力付与装置71によって、誘導加熱コイル51によって局所的に誘導加熱された一部分61とノズル53によって冷却水が吹き付けられ急速冷却される部分65との間の加熱された高温部分63に局所的に変形力が加えられる。変形力としては曲げモーメントを含み、場合によっては捩り力やせん断力が付与される。
ガイド40は、熱間変形焼入れ部12の誘導加熱コイル51よりも鋼材移動方向2の上流側であって、誘導加熱コイル51に近接して設けられている。
移動装置21は、移動装置21の保持部23で鋼材1の鋼材移動方向2の上流側の部分を保持して、長尺の鋼材1をその長手方向(鋼材移動方向2)に沿って連続して移動させる。
移動装置21、高周波誘導加熱装置52、水冷装置54、および変形力付与装置71は制御装置100に接続され、制御装置100によって制御される。前述および後述の熱間変形焼入れ等は、制御装置100による、移動装置21、高周波誘導加熱装置52、水冷装置54、および変形力付与装置71の制御によって行われる。
素材である鋼材は、好ましくは、
化学組成が、質量%で、
C:0.12%以上0.60%以下、
Si:0.001%以上2.0%以下、
Mn:0.5%以上3.0%以下、
P:0.05%以下、
S:0.01%以下、
sol.Al:0.001%以上1.0%以下、
N:0.01%以下、
B:0.01%以下、
残部:Feおよび不純物である。
Ti:0.001%以上0.05%以下、
Nb:0.001%以上0.05%以下、
V :0.02%以上0.5%以下、
Cr:0.02%以上0.5%以下、
Mo:0.02以上0.5%以下、
Cu:0.02%以上1.0%以下および
Ni:0.02%以上1.0%以下、
からなる群から選ばれた1種または2種以上の元素を含有してもよい。
実施の形態にの加工方法は、熱処理と加工履歴を制御して、オーステナイト相からマルテンサイト等の硬質相へ組織変態した高強度化・加工品を得る、いわゆる焼入れを利用した製造方法である。鋼板の焼入れ後の強度は、主にマルテンサイト相の硬さを支配するC含有量によって決まるため、求める強度に応じてC含有量を決定する。実施の形態での狙いの強度1200MPa以上を確保するために、C含有量を0.12%以上とすることが好ましい。より高強度を安定して得るためには0.20%超とすることがより好ましい。0.60%超のC含有量の場合、焼入れ後の組織靭性が劣化し、脆性破壊を発生する危険性が高まる。したがってC含有量の上限を0.60%とすることが好ましく、より好ましくは、0.50%以下である。
Siは、オーステナイト相から低温変態相へ変態するまでの冷却過程において炭化物の生成を抑制するため延性を劣化させることなく、あるいは、延性を向上させて、焼入れ後の強度を高める作用を有する元素である。Si含有量が0.001%未満では上記作用を得ることが困難である。したがって、Si含有量は0.001%以上とすることが好ましい。なお、Si含有量を0.05%以上にすると、延性がさらに向上する。したがって、Si含有量は0.05%以上とすることがより好ましい。一方、Si含有量が2.0%超では、上記作用による効果は飽和して経済的に不利となる上、表面性状の劣化が著しくなる。したがって、Si含有量は2.0%以下とすることが好ましい。より好ましくは1.5%以下である。
Mnは、鋼の焼入れ性を高め、焼入れ後の強度を安定して確保するために、非常に効果のある元素である。しかし、Mn含有量が0.5%未満では、実施の形態のような急速冷却条件下でもその効果が十分に得られず、焼入れ後の強度で1200MPa以上の引張強度を確保することが非常に困難となる。したがって、Mn含有量は0.5%以上とすることが好ましい。なお、Mn含有量を1.0%以上にすると、焼入れ後の強度で1350MPa以上の引張強度を確保することが可能となる。このため、Mn含有量は1.0%以上とすることがより好ましい。一方、Mn含有量が3.0%超では、バンド状の組織の不均一組織となり、衝撃特性の劣化が顕著となる。したがって、Mn含有量は3.0%以下とすることが好ましい。合金コスト等の観点からMn含有量を2.5%以下とすることがより好ましい。
Pは、一般には鋼に不可避的に含有される不純物であるが、固溶強化により、強度を高める作用を有するので積極的に含有させてもよい。しかし、P含有量が0.05%超では本発明部材と他部材との抵抗溶接性の劣化が著しくなる。また2500MPa以上の高強度化を狙った場合に脆性破壊の危険性が高まる。したがって、P含有量は0.05%%以下とすることが好ましい。P含有量はより好ましくは0.02%以下である。上記作用をより確実に得るには、P含有量を0.003%以上とすることが好ましい。
Sは、鋼に不可避的に含有される不純物であり、MnやTiと結合して硫化物を生成して析出する。この析出物量が過度に増加するとその析出物と主相の界面が破壊の起点となることがあるため低いほど好ましい。S含有量が0.01%超ではその悪影響が著しくなる。したがって、S含有量は0.01%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.003%以下、さらに好ましくは0.0015%以下である。
Alは、鋼を脱酸して鋼材を健全化する作用を有する元素であり、また、Ti等の炭窒化物形成元素の歩留まりを向上させる作用を有する元素でもある。sol.Al含有量が0.001%未満では上記作用を得ることが困難となる。したがって、sol.Al含有量は0.001%以上とすることが好ましい。より好ましくは0.015%以上である。一方、sol.Al含有量が1.0%超では、溶接性の低下が著しくなるとともに、酸化物系介在物が増加して表面性状の劣化が著しくなる。したがって、sol.Al含有量は1.0%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.080%以下である。
Nは、鋼に不可避的に含有される不純物であり、溶接性の観点からは低いほど好ましい。N含有量が0.01%%超では溶接性の低下が著しくなる。したがって、N含有量は0.01%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.006%以下である。
Bは、低温靭性を高める作用を有する元素である。したがって、Bを含有させてもよい。しかし、0.01%を超えて含有させると、熱間加工性が劣化して、熱間圧延が困難になる。したがって、B含有量は0.01%以下とすることが好ましい。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、B含有量を0.0003%以上とすることが好ましい。
質量%で、Ti:0.001%以上0.05%以下、Nb:0.001%以上0.05%以下、V:0.02%以上0.5%以下、Cr:0.02%以上0.5%以下、Mo:0.02以上0.5%以下、Cu:0.02%以上1.0%以下およびNi:0.02%以上1.0%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上の元素を鋼の焼入れ性を向上させ、かつ焼入れ後の強度を安定して確保するために必要応じて添加してもよい。
加熱時間が5分の場合は、900℃、950℃の条件で、表面割れが存在せず、1030℃の条件でも表面割れの存在したサンプルが50%未満であった。なお、前熱処理後のスケール厚は、36μmであった。
2 鋼材移動方向
10 焼入れ鋼材製造装置
12 熱間変形焼入れ部
21 移動装置
23 保持部
40 ガイド
51 誘導加熱コイル
52 高周波誘導加熱装置
53 ノズル
54 水冷装置
55 高周波電源
57 冷却水供給部
71 変形力付与装置
72 保持部
100 制御装置
Claims (5)
- 鋼材を前記鋼材のAc3変態点以上で5分以上加熱して鋼材の表面に酸化被膜を生成する酸化被膜生成工程と、
前記酸化被膜生成工程によって表面に酸化被膜が生成された鋼材を、加熱する位置が前記鋼材の軸方向に移動するように、部分的にAc3変態点以上の温度に急速加熱する加熱工程と、
前記鋼材に生じる高温部が局所的になるように、前記加熱工程により加熱する位置に近接する位置を冷却して焼入れする焼入れ工程と、
前記加熱工程と前記焼入れ工程により発生した鋼材の軸方向に移動する局所的な高温部に曲げモーメントを加えて前記高温部を曲げ変形する変形工程と、
を備える焼入れ鋼材の製造方法。 - 鋼材を加熱炉内で加熱して鋼材の表面に酸化被膜を生成する酸化被膜生成工程と、
前記酸化被膜生成工程によって表面に酸化被膜が生成された鋼材を、加熱する位置が前記鋼材の軸方向に移動するように、部分的にAc3変態点以上の温度に急速加熱する加熱工程と、
前記鋼材に生じる高温部が局所的になるように、前記加熱工程により加熱する位置に近接する位置を冷却して焼入れする焼入れ工程と、
前記加熱工程と前記焼入れ工程により発生した鋼材の軸方向に移動する局所的な高温部に曲げモーメントを加えて前記高温部を曲げ変形する変形工程と、
を備える焼入れ鋼材の製造方法。 - 溶接鋼管である鋼材を加熱して鋼材の表面に酸化被膜を生成する酸化被膜生成工程と、
前記酸化被膜生成工程によって表面に酸化被膜が生成された鋼材を、加熱する位置が前記鋼材の軸方向に移動するように、部分的にAc3変態点以上の温度に急速加熱する加熱工程と、
前記鋼材に生じる高温部が局所的になるように、前記加熱工程により加熱する位置に近接する位置を冷却して焼入れする焼入れ工程と、
前記加熱工程と前記焼入れ工程により発生した鋼材の軸方向に移動する局所的な高温部に曲げモーメントを加えて前記高温部を曲げ変形する変形工程と、
を備える焼入れ鋼材の製造方法。 - 前記酸化被膜生成工程で生成する酸化被膜の厚さが36μm以上である請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の焼入れ鋼材の製造方法。
- 前記加熱工程における前記Ac3変態点以上の温度は、900〜1030℃である、
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の焼入れ鋼材の製造方法。
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