以下、図面を用いてこの発明の好ましい態様について説明する。なお、以下の説明は、すべての点で例示であって、この発明を限定するものと解されるべきではない。
(画像形成装置の構成)
図1を用いて画像形成装置101の構成を説明する。
画像形成装置101は、露光装置102および、作像ユニット103y、103m、103c、103bを含む。作像ユニット103y、103m、103c、103bは、転写搬送ベルト104の移動方向である矢印105の方向に、この順番で一列に並んで配列される。作像ユニット103y、103m、103c、103bは、各色相の画像情報に対応する静電潜像を形成し、その静電潜像を現像して、各色の現像剤で現像剤像を形成する。作像ユニット103y、103m、103c、103bは、それぞれブラック色、シアン色、マゼンタ色、イエロー色の画像情報に対応するトナー像を形成する。
以下、作像ユニット103y、103m、103c、103bのうち、イエロー色に対応する作像ユニット103yを例として説明し、他の作像ユニットについては説明を省略する。他の作像ユニットとの相違点は、現像剤の色および画像形成部106に入力される画像情報の画素信号が対応する色についてである。
なお、各色に対応する部材を個々に示す場合には、イエロー色、マゼンタ色、シアン色、ブラック色について、それぞれ符号の末尾にアルファベットの添字y、m、c、bを付して表す。
図2は、作像ユニット103yの構成を示す図である。作像ユニット103yは、感光体ドラム107、帯電ローラ108、光走査ユニット109、現像装置110、およびドラムクリーナ111を含む。
感光体ドラム107は、トナー像が表面に形成される像担持体であり、軸線回りに回転駆動可能に支持され、導電性基体と、導電性基体の表面に形成される有機感光層とを含む。なお、導電性基体は円筒状であることが好ましいが、円柱状や薄膜シート状であってもよい。
帯電ローラ108は、感光体ドラム107の表面を所定の極性の電位に帯電させる帯電手段である。帯電状態にある感光体ドラム107の表面に、光走査ユニット109からイエロー色の画像情報に対応するレーザ光を照射し、イエロー色の画像情報に対応する静電潜像を形成する。なお、帯電手段としては、帯電ローラ108に限定されるものではなく、帯電ローラ108に代えて、ブラシ型帯電器、チャージャー型帯電器、またはスコロトロンというコロナ帯電器なども使用できる。また、レーザ光の光源には、半導体レーザ素子などが用いられる。
現像装置110は、感光体ドラム107に臨んで設けられる現像手段である。現像スリーブ112表面に、2成分現像剤に含まれるイエロー色トナーおよびキャリアのうち、イエロー色トナーを担持し、層厚規制部材113によって所定量の厚さに規制して感光体ドラム107表面に搬送し、感光体ドラム107の表面に形成される静電潜像を現像して顕像化する。なお、現像剤としては、キャリアを含まない1成分現像剤を用いることもできる。
現像スリーブ112は、感光体ドラム107に近接する現像ニップ部において、感光体ドラム107の回転駆動方向と逆の方向に回転駆動する。
(二成分現像剤)
以下に、本実施形態の画像形成装置101で用いられる2成分現像剤について詳細に説明する。2成分現像剤は、トナーと、キャリアとを含む。
トナーは、結着樹脂、着色剤および離型剤を含有するトナー粒子で構成される。結着樹脂としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ポリスチレン、スチレンの置換体の単独重合体、スチレン系共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタンなどが挙げられる。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
これらの結着樹脂の中でも、カラートナー用としては、保存性および耐久性などの点から、軟化点が100〜150℃であり、ガラス転移点が50〜80℃の結着樹脂が好ましく、上記範囲内に軟化点およびガラス転移点を有するポリエステルが特に好ましい。ポリエステルは軟化または溶融状態で高い透明度を示す。結着樹脂がポリエステルである場合、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックのトナー像が重ね合わされた多色トナー像を、後述する定着装置114で記録媒体115に定着させると、ポリエステル自体は透明化するので、減法混色によって十分な発色が得られる。
着色剤としては、従来から電子写真方式の画像形成技術に用いられるトナー用顔料、および染料を使用できる。トナー顔料は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
離型剤としては、たとえば、ワックスを使用できる。ワックスとしてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックスなどが挙げられる。
トナーは、結着樹脂、着色剤および離型剤の他に、帯電制御剤、流動性向上剤、定着促進剤および導電剤などの一般的なトナー用添加剤の1種または2種以上を含有してもよい。
トナーの体積平均粒径は、特に制限されないが、好ましくは2μm以上7μm以下である。トナーの体積平均粒径が適度に小さい場合には、記録媒体115に対する被覆率が高くなるので、低付着量での高画質化、およびトナー消費量の低減化を達成できる。
トナーの体積平均粒径が2μm未満では、トナーの流動性が低下し、現像動作の際に、トナーの供給、撹拌および帯電が不十分になるので、感光体ドラム107に供給されるトナー量の不足や逆極トナーの増加などが発生し、高画質画像が得られないおそれがある。トナーの体積平均粒径が7μmを超えると、定着時に中心部分まで軟化し難い大粒径のトナー粒子が多くなるので、記録媒体115へのトナー像の定着性が低下するとともに、画像の発色が悪くなり、特にOHPシートへの定着の場合には、画像が暗くなる。
本実施形態の画像形成装置101で用いられるトナーは、ガラス転移点が60℃であり、軟化点が120℃であり、体積平均粒径が6μmの負帯電性の絶縁性非磁性トナーである。
キャリアとしては、磁性を有する粒子を使用することができる。磁性を有する粒子としては、たとえば、鉄、フェライトおよびマグネタイトなどの金属、これらの金属とアルミニウムまたは鉛などの金属との合金などが挙げられる。
また、磁性を有する粒子に樹脂を被覆した樹脂被覆キャリア、または樹脂に磁性を有する粒子を分散させた樹脂分散型キャリアなどをキャリアとして用いてもよい。2成分現像剤におけるトナーとキャリアとの混合割合は特に制限されず、トナーおよびキャリアの種類に応じて適宜選択すればよい。
(中間転写部)
図1に示すように、中間転写部116は、転写搬送ベルト104と、中間転写ローラ117y、117m、117c、117bと、支持ローラ118、119、120と、ベルトクリーナ121とを含む。本実施形態では、中間転写部116と、後述する2次転写部122とによって、転写手段を構成する。
転写搬送ベルト104は、支持ローラ118、120と支持ローラ119との間に張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルト状の像担持体である。転写搬送ベルト104は、感光体ドラム107y、107m、107c、107bとほぼ同じ周速度で、矢印105の方向に、すなわち、感光体ドラム107y、107m、107c、107bに臨む像担持面が、感光体ドラム107yから感光体ドラム107bに向かって移動するように回転駆動される。転写搬送ベルト104には、たとえば厚さ100μmのポリイミドフィルムを使用できる。中間転写ローラ117y、117m、117c、117bは、それぞれ、転写搬送ベルト104を介して感光体ドラム107y、107m、107c、107bに対向するように設けられるローラ状部材であり、転写搬送ベルト104における像担持面の反対面に圧接し、かつ図示しない駆動手段によりその軸線回りに回転駆動可能に設けられる。中間転写ローラ117には、たとえば金属製軸体と、金属製軸体の表面に形成される導電性層とを含むローラ状部材が用いられる。
中間転写ローラ117には、感光体ドラム107の表面に形成されるトナー像を転写搬送ベルト104上に転写するために、トナーの帯電極性とは逆極性の中間転写バイアスが定電圧制御によって印加される。これによって、感光体ドラム107に形成されるイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラック色のトナー像が転写搬送ベルト104の像担持面に順次重ね合わさって転写され、多色のトナー像が形成される。ただし、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラック色の一部のみの画像情報が入力される場合には、作像ユニット103のうち、入力される画像情報の色に対応する作像ユニット103のみにおいてトナー像が形成される。
支持ローラ118、119、120は、図示しない駆動手段によって軸線回りに回転駆動可能に設けられ、転写搬送ベルト104を張架して矢印105の方向に回転駆動させる。支持ローラ118、120には、たとえば直径30mm、および肉厚1mmのアルミニウム製円筒体が用いられる。このうち、支持ローラ119は、転写搬送ベルト104を介して後述する2次転写ローラ123に圧接して2次転写ニップ部を形成し、かつ電気的に接地される。
ベルトクリーナ121は、転写搬送ベルト104の像担持面上のトナー像を後述の2次転写部122において記録媒体115に転写した後に、像担持面上に残存するトナーを除去する部材であり、転写搬送ベルト104を介して支持ローラ120に対向するように設けられる。
中間転写部116においては、中間転写ローラ117にトナーの帯電極性とは逆極性の高電圧が均一に印加される。これによって、転写搬送ベルト104の像担持面の所定位置に重ね合わされて中間転写され、多色のトナー像が形成される。このトナー像は、後述するように、2次転写ニップ部において記録媒体115に2次転写される。2次転写後に転写搬送ベルト104の像担持面に残留するトナー、および紙粉などがベルトクリーナ121によって除去され、転写搬送ベルト104の像担持面には再度多色のトナー像が転写される。
(2次転写部)
図1に示したように、2次転写部122は、支持ローラ119と、2次転写ローラ123とを含む。支持ローラ119は、転写搬送ベルト104を張架する機能と共に、転写搬送ベルト104上の多色のトナー像を記録媒体115に2次転写させる機能を有する。2次転写ローラ123は、転写搬送ベルト104を介して支持ローラ119に圧接し、かつ軸線方向に回転駆動可能に設けられるローラ状部材である。
2次転写ローラ123は、たとえば、金属製軸体と、金属製軸体の表面に形成される導電性層とを含む。金属製軸体は、たとえばステンレス鋼などの金属によって形成される。導電性層は、導電性弾性体などによって形成される。
導電性弾性体としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえばカーボンブラックなどの導電材を含む、EPDM、発泡EPDMおよび発泡ウレタンなどが挙げられる。2次転写ローラ123には図示しない電源が接続され、トナーの帯電極性とは逆極性の高電圧が均一に印加される。支持ローラ119と転写搬送ベルト104と2次転写ローラ123との圧接部が2次転写ニップ部である。
2次転写部122においては、転写搬送ベルト104上のトナー像が2次転写ニップ部に搬送されるのに同期して、後述する記録媒体供給部124から送給される記録媒体115が2次転写ニップ部に搬送される。そして、2次転写ニップ部において多色のトナー像と記録媒体115とが重ね合わされ、2次転写ローラ123にトナーの帯電極性とは逆極性の高電圧が均一に印加されることによって、未定着のトナー像が記録媒体115に2次転写される。そして、未定着トナー像を担持した記録媒体115は、定着装置114に搬送される。
(記録媒体供給部)
記録媒体供給部124は、記録用紙収容トレイ125と、記録用紙搬出ローラ126と、搬送ローラ127a、127bと、搬送路Pとを含む。記録用紙収容トレイ125は、記録媒体115を収容する。記録用紙搬出ローラ126は、記録用紙収容トレイ125に収容されている記録媒体115を搬出する。搬送ローラ127a、127bは、搬出された記録媒体115を2次転写部122へ搬送する。
(定着装置)
図3は、定着装置114の構成を示す断面図である。定着手段である定着装置114は、加圧ローラ128と、定着ローラ129と、テンションローラ130と、定着ベルト131と、加熱部材としてのヒータユニット132とを含む。
定着ベルト131は、定着ローラ129とテンションローラ130との間に張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルト状部材である。定着ベルト131は、定着ローラ129と加圧ローラ128との圧接点で加圧ローラ128に接触するように設けられ、記録媒体115に担持されるトナー像を構成するトナーを加熱溶融させて記録媒体115に定着させるものである。定着ローラ129は加圧ローラ128の矢印133方向の回転駆動によって矢印134の方向に従動回転する。
図4はヒータユニット132が加熱する定着ベルト131の一辺の断面図である。図4の左側が定着ベルト131の内側、右側が外側となる。本実施形態では、定着ベルト131として、内側から外側に向けて、基材層135と、弾性層136と、離型層137を含む3層構造で、直径50mmの円筒形状に形成された無端ベルトを使用する。
基材層135を形成する材料としては、耐熱性および耐久性に優れるものであれば特に制限されないが、耐熱性合成樹脂を挙げることができ、中でも、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ニッケル電鋳、SUS(ステンレス鋼)などが好ましい。これらの材料は、強度、耐熱性、価格性等に優れている。基材層135の厚さは、特に制限されないが、好ましくは、30〜200μmである。
弾性層136を構成する材料としては、ゴム弾性を有するものであれば特に制限はないが、さらに耐熱性にも優れるものが好ましい。このような材料の具体例としては、たとえば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴムなどが挙げられる。これらの中でも、特にゴム弾性に優れるシリコーンゴムが好ましい。弾性層136の硬度は、JIS−A硬度1〜60度であることが好ましい。このJIS−A硬度の範囲であれば、弾性層136の強度の低下や、密着性の不良を防止しつつ、トナーの定着性の不良を防止できる。このシリコーンゴムとしては具体的には、1成分系、2成分系又は3成分系以上のシリコーンゴム、LTV型、RTV型又はHTV型のシリコーンゴム、縮合型又は付加型のシリコーンゴム等が挙げられる。弾性層136の厚さは、100〜200μmであることが好ましい。この厚さ範囲であれば、弾性層136の弾性効果を維持しつつ、断熱性を低く抑えることができて省エネルギー効果を発揮できる。ここでは、JIS−A硬度5度のシリコーンゴムを使用した。
離型層137は、フッ素樹脂チューブまたはフッ素樹脂を含有する樹脂を塗布し、これを焼成することにて形成された層よりなる。このようなフッ素樹脂の材料としては、耐熱性および耐久性に優れ、トナーとの付着力が弱いものであれば特に制限されず、たとえば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)などが挙げられる。離型層137の厚さは、5〜50μmであることが好ましい。この厚さ範囲であれば、適度な強度を持ち、弾性層の弾性を活かしながら、記録材の微小な凹凸に追従することが可能である。
定着ローラ129は、図示しない支持手段によって回転自在に支持され、加圧ローラ128、定着ベルト131の回転駆動によって、矢印134の方向に所定の速度で従動回転するローラ状部材である。本実施の形態では、定着ローラ129として、芯金138と、弾性層139と表面層140を含む直径30mmの円筒形状に形成されるローラ状部材を使用する。
芯金138を形成する金属には熱伝導率の高い金属を使用でき、たとえば、アルミニウム、鉄などが挙げられる。
弾性層139を構成する材料としては、ゴム弾性を有するものであれば特に制限はないが、さらに耐熱性にも優れるものが好ましい。このような材料の具体例としては、たとえば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴムなどが挙げられる。これらの中でも、特に液状熱硬化型シリコーンゴムが好ましい。また、定着ローラ129の断熱性を高めるためにスポンジ状とすることが好ましい。
表面層140は弾性層139上に設けられ、定着ベルト131の寄りを修正する。これにより定着ローラ129の表面の摺動性が向上し、定着ベルト131の寄りを修正し易くなる。表面層140を構成する材料としては、耐熱性および耐久性に優れ、摺動性が高いものであれば特に制限されず、たとえば、PFA(テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素系樹脂材料、フッ素ゴム等が好ましい。ただし、表面層140を設けない構成であっても良い。
また、定着ローラ129の内部に、補助的な加熱手段を設けてもよい。これは、画像形成装置101の電源ONから画像形成可能になるまでの立ち上げ時間の短縮や、トナー像定着時に記録媒体115に熱が移行することに起因する定着ローラ129の表面温度の低下などを防止するためである。
加圧ローラ128は、定着ローラ129の鉛直方向最下点よりも定着ローラ129の回転方向下流側において、図示しない加圧機構により定着ベルト131を介して定着ローラ129に圧接され、定着ニップ部を形成する。加圧ローラ128は図示しない駆動手段によって回転駆動される。加圧ローラ128は、定着ローラ129によるトナー像の記録媒体115への加熱定着に際し、溶融状態にあるトナーを記録媒体115に対して押圧することによって、トナー像の記録媒体115への定着を促進する。
本実施形態では、加圧ローラ128として、芯金142と、弾性層143と、表面層144を含む直径30mmのローラ状部材を使用する。芯金142、弾性層143および表面層144を形成する材料としては、それぞれ、定着ローラ129の芯金138、弾性層139、および表面層140を形成する金属または材料と同じものを使用できる。
さらには、加圧ローラ128の内部に加熱手段を設けてもよい。これは、画像形成装置101の電源ONから画像形成可能になるまでの立ち上げ時間の短縮や、トナー像定着時に記録媒体115に熱が移行することに起因する加圧ローラ128の表面温度の急激な低下などを防止するためである。加熱手段にはハロゲンランプなどが用いられる。
テンションローラ130は、定着ベルト131にテンションを加えられるように設けられたローラ状部材である。テンションローラ130は、定着ベルト131の矢印146方向の回転に従動回転する。テンションローラ130には、アルミニウム、鉄などの熱伝導率の高い金属からなる金属製ローラを使用できる。金属製ローラは必要に応じてその表面にフッ素樹脂層が形成されてもよい。更に金属製ローラに熱が逃げないようにローラ表面にシリコンスポンジ等の耐熱性に優れた断熱部材が形成されてもよい。
サーミスタ147は、ヒータユニット132と定着ベルト131の接触点よりも回転方向下流側でかつ、定着ベルト131と加圧ローラ128の接触点よりも上流側の位置において定着ベルト131に近接するように設けられ、定着ベルト131の温度を検知する。サーミスタ147による検知結果は図示しないCPU(Central Processing Unit、中央処理装置)に入力される。
CPUは、サーミスタ147の検知結果から、サーミスタ147の温度が設定範囲内にあるか否かを判定する。定着ベルト131の温度が設定範囲よりも低い場合には、後述する面状発熱体148に接続される電源に制御信号を送り、面状発熱体148に電力を供給して発熱を促す。定着ベルト131の温度が設定範囲よりも高い場合には、面状発熱体148への給電力の有無を確認する。電力供給が継続される場合は、電力供給を停止する制御信号を送る。
その他、CPUは、定着ローラ129とヒータユニット132と定着ベルト131と加圧ローラ128を含む定着機構を制御する。
(ヒータユニットの構成)
図5に示したように、ヒータユニット132は、伝熱部材149、面状発熱体148、断熱部材150、押圧部材151、補強部材152で構成され、定着ベルト131に接触し、定着ベルト131を加熱するように設けられた部材である。
伝熱部材149は、面状発熱体148の熱を定着ベルト131に伝達する部材である。伝熱部材149は、耐熱性があり、熱伝導率の高い部材であれば特に制限はないが、アルミニウム、鉄などの金属が好ましい。今回、伝熱部材149には、アルミニウム製の長さ320mmのものを使用した。
伝熱部材149の表面は、定着ベルト131の内面と摺動するため、弧状とすることが好ましい。ただし、弧の曲率半径が小さい場合、定着ベルト131が伝熱部材149の形状に追従することができず、伝熱部材149の中央部において、定着ベルト131が伝熱部材149から浮いてしまうといった不具合が発生するため、伝熱部材149の表面の曲率半径は、R=10〜200(mm)の範囲であることが望ましい。
また、定着ベルト131の内面と良好に摺動させるため、必要に応じて伝熱部材149の表面にフッ素樹脂層を形成してもよい。
断熱部材150は、面状発熱体148の熱が押圧部材151を通して拡散するのを防ぐために面状発熱体148と押圧部材151の間に配置するもので、耐熱性、断熱性に優れるものであれば特に制限はないが、発泡ポリイミドシートやアラミドシートなどを使用することができる。
補強部材152は、定着ベルト131にヒータユニット132を接触させる際に、ヒータユニット132がたわむのを防止するための部材である。また、伝熱部材149を安定して接続するための部材としての役割も果たす。補強部材152は、耐熱性があり、剛性の高い部材であれば特に制限はないが、鉄などの金属が好ましい。
図6は、面状発熱体148の構成を示す詳細図である。面状発熱体148は、平面視矩形短冊状のセラミックなどの絶縁基板上に銀・パラジウム(AgPd)などからなる抵抗発熱体153が複数本配置されている。この基板は、耐熱性、良熱伝導性、電気絶縁性などを備えたものであれば特に制限はないが、アルミナや窒化アルミなどのセラミック材料が挙げられる。また、耐熱性に優れ、電気絶縁性を持つガラス材料などをコーティングしたSUSなどの金属板を使用することも可能である。
抵抗発熱体153は、基板上にペースト状の導電材料を印刷などの方法により所定のパターンに形成する。本発明では、3本の直線状の抵抗パターンとしている。それぞれの抵抗発熱体153の一端および他端は端部電極154でそれぞれ共通に接続されている。また、長手方向の抵抗値を安定させるために両端の端部電極の間に導通部155を設けている。抵抗発熱体153には、銀・パラジウムペーストなどが用いられる。導通部155には、銀ペーストなどが用いられる。なお本実施例における抵抗発熱体153および導通部155の厚みは、それぞれ約10μmの層である。
その後、焼成炉に投入され、所定の焼成条件によりセラミックシートの焼成が行われたのち、絶縁保護層として抵抗発熱体表面をガラス材料などの絶縁材料によりコーティングを施すことで面状発熱体148が完成される。
(張架機構)
図7は本発明の定着装置114における張架機構を示した説明図である。
張架機構は、保持部材156、張力付与部材157で構成される。張架機構は、テンションローラ130を張架し、定着ローラ129との間で定着ベルト131がループ状の移動経路を形成するようにするための機構である。
保持部材156は、テンションローラ130を保持する部材であり、図示しない部材により固定された支点158を中心に回転運動が可能である。また、支点158と反対側に配置された張力付与部材157によって、テンションローラ130に張力の付与を行う。保持部材156は張架付与によって変形しないように、鉄などの金属材料からなることが好ましい。
図7に示したように、ヒータユニット132が加熱する定着ベルト131の一辺と平行で、保持部材156の支点158を通り、定着ローラ129からテンションローラ130に向かう方向を正とする軸をy軸とする。さらに、保持部材156の平面上において、y軸に対して垂直かつ、保持部材156の支点158を通り、ヒータユニット132から、ヒータユニット132が加熱する定着ベルト131の一辺に向かう方向を正とする軸をx軸とする。なお、定着ベルト131がヒータユニット132によって大きくたわんでいる場合などは、「ヒータユニット132が加熱する定着ベルト131の一辺が、定着ローラ129およびテンションローラ130から離れる点を結んだ線」を「ヒータユニット132が加熱する定着ベルト131の一辺」とみなしてy軸を定めても良い。また、角度の正負は、x軸を直角に回転させてy軸に重ねる方向を正の方向とする。したがって、図7の例においては、反時計回り方向が正の方向である。
このように定着ローラ129、テンションローラ130、保持部材156および張力付与部材157を配置することによって、張力付与部材157がy軸から傾いた方向にテンションローラ130を張架することができるため、定着装置114のy軸方向の幅が小さくなり、装置の大型化を抑えることができる。
ここで、保持部材156の支点158と、テンションローラ130の中心であるローラ中心159を結んだ線がy軸に対してなす角度をθとする。そして、本発明の定着装置114においては、ローラ中心159のx座標およびy座標の符号が一致するように、すなわち、θが下記の式(1)を満たすようにテンションローラ130が配置されている。なお、x座標およびy座標のいずれかが0になるような場合は除くものとする。
90°<θ<180°または270°<θ<360°・・・式(1)
さらには、式(1)の範囲のうち、ローラ中心159のx座標の絶対値が、y座標の絶対値よりも大きくなるように、すなわち、θが下記の式(2)を満たすようにテンションローラ130が配置されていてもよい。
90°<θ<135°または270°<θ<315°・・・式(2)
図7の例においては、θが約100°になるようにテンションローラ130が保持されており、式(1)に示した範囲を満たす。定着ベルト131が経年劣化等により長くなると、張力付与部材157の作用により、保持部材156とともにテンションローラ130が実線で示した位置から点線で示した位置へと移動する。すると、テンションローラ130のローラ中心159は移動後ローラ中心160の位置へと移動する。
θが式(1)の範囲を満たす場合、移動後ローラ中心160のx座標は、ローラ中心159のx座標よりも小さくなる。したがって、テンションローラ130および定着ベルト131はx方向負の方向に移動することになる。これによって、定着ベルト131がヒータユニット132に近づく方向に移動する。したがって、装置の大型化を抑えた定着装置において、テンションローラ130の位置が張力付与部材157の張力付与方向へと移動した場合に、ヒータユニット132が定着ベルト131を加熱する速度が減少することを抑えることができる。
また、このように定着ベルト131がヒータユニット132に近づく方向に移動する場合においても、その移動量が大きい場合は、定着ベルト131とヒータユニット132との接触抵抗による回転トルクが大きくなるため、この移動量をできるだけ小さくしたい場合がある。この場合においては、θが式(2)の範囲を満たすようにすれば良い。
図7に示したθが約100°の例のように、θが式(2)の範囲にある場合、ローラ中心159に対する移動後ローラ中心160の移動量は、張力を付与する役割を果たすy方向への移動量に比べてx方向の移動量が小さくなる。したがって、ヒータユニット132に対して定着ベルト131が近づきすぎることがなくなり、接触抵抗による回転トルクの過度の増大を抑えることができる。また、定着ベルト131の基材がステンレス鋼などの硬い部材の場合に、定着ベルト131の変形が追いつかず、ヒータユニット132との接触幅が小さくなるという問題を引き起こすことを抑えることができる。
なお、図8(a)に示したように、θが約80°であり、式(1)を満たさない場合は、移動後ローラ中心160のx座標は、ローラ中心159のx座標よりも大きくなり、定着ベルト131がヒータユニット132から離れる方向に移動することになる。したがって、ヒータユニット132が定着ベルト131を加熱する速度は減少する。
また、図8(b)に示したように、θが約150°であり、式(1)を満たしていても、式(2)を満たさない場合は、ローラ中心159に対する移動後ローラ中心160の移動量は、張力を付与する役割を果たすy方向への移動量に比べてx方向の移動量が大きくなるため、ヒータユニット132に対して定着ベルト131が近づきすぎてしまう場合がある。
図9に示した定着装置114は、図7の定着装置に対し、支点158がテンションローラ130のローラ中心159に対して、x軸で負の方向にあるという点で異なる。この場合においても、x軸およびy軸の向きは変わらないため、θについての式(1)および式(2)の範囲も変わらない。
ここで、θは約290°であり、式(1)に示した範囲を満たす。この場合、実施例1と同様に、移動後ローラ中心160のx座標は、ローラ中心159のx座標よりも小さくなる。したがって、テンションローラ130および定着ベルト131はx軸で負の方向に移動することになる。これによって、定着ベルト131がヒータユニット132に近づく方向に移動する。したがって、装置の大型化を抑えた定着装置において、テンションローラ130の位置が張力付与部材157の張力付与方向へと移動した場合に、ヒータユニット132が定着ベルト131を加熱する速度が減少することを抑えることができる。
図10に示した定着装置114は、図9の定着装置に対し、ヒータユニット132が鉛直方向から傾いて配置されている点が異なる。これにより、y軸およびx軸も同様に傾くことになるが、ヒータユニット132に対する保持部材156の位置関係は変わらないため、θについての式(1)および式(2)の範囲は変わらない。
したがって、図10のようにθが約300°であるとき、実施例1や2と同様に、定着ベルト131をヒータユニット132に近づく方向に移動させることができるため、装置の大型化を抑えた定着装置において、テンションローラ130の位置が張力付与部材157の張力付与方向へと移動した場合に、ヒータユニット132が定着ベルト131を加熱する速度が減少することを抑えることができる。
図11に示した定着装置114は、図7の定着装置に対し、定着装置が水平方向に並んでいるという点で異なる。この場合においても、各部材の位置関係は同じであるため、θについての式(1)および式(2)の範囲は変わらない。
したがって、図11のようにθが約100°であるとき、実施例1〜3と同様に、定着ベルト131をヒータユニット132に近づく方向に移動させることができるため、装置の大型化を抑えながら、テンションローラ130の位置が張力付与部材157の張力付与方向へと移動した場合において、ヒータユニット132が定着ベルト131を加熱する速度が減少することを抑えることができる。
図12に示した定着装置114は、図7の定着装置に対し、ヒータユニット132が定着ベルト131の別の一辺を加熱している点で異なる。この場合においては、x軸の定義により、x軸の正の方向が変わり、角度の正方向は時計回りとなるため、x座標およびy座標の符号が一致するようなθの範囲は式(1)を満たし、ローラ中心159のx座標の絶対値が、y座標の絶対値よりも大きくなるようなθの範囲は式(2)を満たすという点は変わらない。
したがって、図12のようにθが約300°であるとき、実施例1〜4と同様に、定着ベルト131をヒータユニット132に近づく方向に移動させることができるため、装置の大型化を抑えた定着装置において、テンションローラ130の位置が張力付与部材157の張力付与方向へと移動した場合に、ヒータユニット132が定着ベルト131を加熱する速度が減少することを抑えることができる。
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。