JP5854905B2 - マイクロ波発熱構造体 - Google Patents

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Description

本発明は、基材と該基材表面に形成されたマイクロ波発熱層とを含むマイクロ波発熱構造体に関する。
マイクロ波による発熱は、一般的に誘電加熱といわれるもので、マイクロ波が水分子を振動させ、この振動エネルギーが熱に変換されることで生じる。また水分子によるマイクロ波の吸収だけではなく、誘電損失の高い物質にマイクロ波を照射することによっても発熱を起こすことが可能である。よって、この誘電加熱によりマイクロ波を吸収した水や誘電損失の高い物質などの誘電体自体が発熱するものである。
電子レンジは、このマイクロ波(たとえば2.45GHz)を加熱対象物に照射することにより、主に食品中に含まれる水分を利用して食品自体を加熱する調理器具であり、広く普及している。なお、このマイクロ波の利用は、食品自体を加熱するだけではなく、食品を収容する容器自体を加熱させることにより、短時間での加熱調理を可能にしたものがある。
このような容器自体を加熱する技術として、たとえば特開2006−314489号公報(特許文献1)は、電子レンジでのマイクロ波による誘電加熱の発熱を利用し、マイクロ波を吸収する発熱体としてアルミニウム粉末をセラミックスなどの陶磁器材料に含有させたマイクロ波発熱体を開示している。
また、特開2008−062990号公報(特許文献2)は、食品を電子レンジのマイクロ波により加熱したり焦げ目を付けたりして加熱調理するためのシートとして、耐熱性フィルム層とアルミニウム蒸着層と接着剤層と紙層とをこの順に積層形成したサセプター台紙を開示している。このサセプターが発熱する原理は、特許文献1の誘電加熱と異なり、誘導加熱の原理によるものであり、極薄膜アルミニウム層に発生する渦電流のジュール熱で加熱するものである。一方、このアルミニウム層がアルミニウム箔のような数μm以上の厚みになると、照射されたマイクロ波を反射してしまうが、その厚みを80Å程度より薄くするとマイクロ波の一部を透過するようになる。このときにマイクロ波の一部は薄いアルミニウム層で渦電流になり、この渦電流が電気抵抗を持つ薄いアルミニウム層を流れることによりジュール熱が発生し、それに接触する食品を表面から加熱する。
特開2006−314489号公報 特開2008−062990号公報
電子レンジによる加熱調理は、上述のとおり、食品中の水分を利用するため、水分含有量の少ない食品や凍結した食品に対しては調理時間が長くなる問題がある。また、食品の中心部分の温度が上がりにくいことや、表面やコーナー部分が過剰に加熱されるという問題もある。このような問題に対して、電子レンジ側のアプローチとしては、ターンテーブルを用いて加熱対象物を回転させることにより均一な加熱を行なったり、ファンを用いてマイクロ波を拡散させるなどの方法がとられているが、十分なる解決には至っていない。
また、特許文献1は、電子レンジで用いられる容器側のアプローチであり、これによりある程度加熱時間を短くすることは可能であるが、陶磁器材料自体に予めアルミニウム粉末を含有して陶磁器を成形する必要がある。このため、一般の既存の陶磁器(すなわち通常の材質からなる陶磁器)の表面にマイクロ波を吸収する発熱体を塗布するというような簡便な方法ではない。また、材質が陶磁器に限定されるので、紙や樹脂フィルムなど耐熱性の低い材料には応用することができない。
また、特許文献2は、基材として紙を使用できるが、食品に焦げ目を付けたり、クリスピー感を発現するという急激な加熱を目的とするため、これをそのまま用いることにより食品全体を均一に加熱することはできない。さらに、特許文献2のサセプターを立体的な構造体に付与することは困難である。すなわち、容器のような立体的な形状を持つ構造体では、構造体の任意の部分に対して蒸着による均一な成膜を行なうことは困難である。また、アルミニウム蒸着を施したフィルムを立体的な構造体の各部分に、しわが発生することなく付与することも困難である。また、そもそもサセプターの発熱する原理は、上述のとおり誘導加熱によるものであるので、アルミニウム蒸着層は60±20Å程度と非常に薄い厚みである必要がある。一方、このアルミニウム蒸着層の厚みを厚くするとマイクロ波が透過しなくなり、逆にマイクロ波を反射してしまうことになるため発熱しなくなってしまう。また、このアルミニウム蒸着層の厚みを蒸着により厚くするには非常にコストがかかり生産性も悪化する。
以上のとおり、通常に用いられる紙、樹脂フィルム、セラミックスなどから構成される容器に対して発熱体をそのまま塗布などすることにより簡便に上記の問題を解決できる技術はまだ知られていない。
本発明は、上記のような現状に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、マイクロ波を照射することによって発熱するマイクロ波発熱層を種々の基材に簡易に形成することによって、主に電子レンジを利用した食品の調理時間の短縮や均一な加熱を可能にするマイクロ波発熱構造体を提供することにある。
本発明のマイクロ波発熱構造体は、基材と、該基材の表面に形成されたマイクロ波発熱層とを含むものであって、該マイクロ波発熱層は、樹脂とアルミニウムフィラーとを含み、かつその厚みが50〜500μmであり、該アルミニウムフィラーは、その平均粒子径が1〜30μmであり、かつ該マイクロ波発熱層に30〜95質量%の濃度で含まれることを特徴とする。
ここで、該基材は、紙または樹脂フィルムであることが好ましく、該マイクロ波発熱構造体は、食品用容器であることが好ましい。また、該食品用容器は、食品全体を覆う形状を有することが好ましい。
本発明のマイクロ波発熱構造体は、サセプターのようにスパークを発生するなどの異常加熱を伴うことなくマイクロ波により加熱対象物を適度に加熱することができ、以って基材としても耐熱性の低い材料を使用することができる。特に、本発明のマイクロ波発熱構造体が食品用容器であり、食品全体を覆う形状とした場合には、電子レンジによるいわゆる加熱ムラを防ぎ、均一に加熱しながら通常の方法で加熱するよりも早く温度を上昇させることができるという優れた効果を示す。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
<マイクロ波発熱構造体>
本発明のマイクロ波発熱構造体は、基材と、該基材の表面に形成されたマイクロ波発熱層とを含むものであって、該マイクロ波発熱層は、樹脂とアルミニウムフィラーとを含み、かつその厚みが50〜500μmであり、該アルミニウムフィラーは、その平均粒子径が1〜30μmであり、かつ該マイクロ波発熱層に30〜95質量%の濃度で含まれることを特徴とする。
本発明のマイクロ波発熱構造体は、このような構成を有することにより、マイクロ波を照射することで短時間に発熱し、しかも最高到達温度が200℃程度であるため、基材として紙や樹脂フィルムなど耐熱性の低い材料を用いることができる。また、マイクロ波発熱層にはアルミニウムフィラーを用いており、これによりマイクロ波の照射によって発熱するだけではなく該層自体の熱伝導率を向上させることができる。このため、マイクロ波で加熱されたマイクロ波発熱層は発熱した熱をより効率的に加熱対象物に伝えることができる。
しかもこのアルミニウムフィラーは、サセプターを構成するアルミニウム蒸着層のような緻密な連続層ではなく樹脂中に分散した形態をとるため、塗装、印刷など簡便な方法により容器のような立体的な形状の構造体に対しても均一なマイクロ波発熱層を付与することができる。
このようなマイクロ波発熱構造体は、基材とマイクロ波発熱層とを含む限り、他の任意の構成を含むことができる。また、マイクロ波発熱層は、基材の表面全体に形成されていもよいし、基材上の一部分に形成されていてもよい。
なお、本発明でいうマイクロ波とは、主に電子レンジ内で照射される周波数2.45GHz程度の電磁波をいう。
<マイクロ波発熱層>
本発明のマイクロ波発熱層は、樹脂とアルミニウムフィラーとを含み、かつその厚みが50〜500μm(50μm以上500μm以下)であることを特徴とする。
この厚みが50μmより薄い場合は、充分な発熱効果を得ることができず、また粒子径の大きなアルミニウムフィラーを用いる場合該フィラーが該層から突き出るなどの問題を生じ、マイクロ波を照射した場合にスパークを発生するなどの危険を伴う。一方、500μmを超えると、マイクロ波発熱層のコストが高くなることや、マイクロ波発熱層にクラックなどの欠陥を生じやすくなったり、マイクロ波発熱構造体の成形加工が困難になるなどの問題を生じる。このマイクロ波発熱層のさらに好ましい厚みは、70〜300μmである。
このように本発明のマイクロ波発熱層の厚みは、従来技術のサセプターのアルミニウム蒸着層の厚みとは全く異なっており、本発明のマイクロ波発熱構造体の発熱原理がサセプターの発熱原理とは全く異なっていることを示している。
このようなマイクロ波発熱層は、たとえば樹脂とアルミニウムフィラーとを含む塗料やインキを基材上に塗布することにより形成することができる。また、このような塗料やインキを任意の支持体に塗布した塗装物や印刷物を基材上に転写することにより形成することもできる。さらに、アルミニウムフィラーを添加した樹脂を基材上に射出成型することにより形成することもできる。このように、本発明のマイクロ波発熱層は種々の方法により簡易に形成することができ、その形成方法は特に限定されるものではない。上記の塗料やインキとしては、有機溶剤型、UV硬化型、水性型のいずれも採用可能である。
なお、本発明のマイクロ波発熱層は、樹脂とアルミニウムフィラーとを含む限り、他の成分が添加されていても差し支えない。このような他の成分としては、たとえば湿潤分散剤、レベリング剤、表面調整剤、レオロジーコントロール剤等を挙げることができる。
<アルミニウムフィラー>
本発明のマイクロ波発熱層は、アルミニウムフィラーを含む。アルミニウムフィラーは、上記のようにマイクロ波の照射によって発熱するだけではなく該層自体の熱伝導率を向上させることができるという優れた効果を有するとともに、人体に対する安全性、コスト、比重、価格などの諸特性において優れている。このようなアルミニウムフィラーは、後述の樹脂中に分散することにより、マイクロ波発熱層を構成する。
本発明のアルミニウムフィラーは、アルミニウム単独で構成されていてもよいし、アルミニウムと他の金属との合金により構成されていてもよい。この場合、他の金属としては、たとえばマンガン、銅、マグネシウム、シリコン等を挙げることができる。また、このようなアルミニウムフィラーは、表面に絶縁性の自然酸化被膜を有していてもよい。
このようなアルミニウムフィラーは、マイクロ波発熱層に30〜95質量%(30質量%以上95質量%以下)の濃度で含まれる。その濃度が30質量%未満では、マイクロ波の照射時に充分な発熱効果を発揮することができない。一方、その濃度が95質量%を超えると、アルミニウムフィラーのコストが増大することやマイクロ波発熱層自体の質量が大きくなるという問題が生じるとともに、マイクロ波発熱層自体の強度を保持することができず、クラック、基材からの剥れ等が発生し外観上の欠陥を生じる。アルミニウムフィラーの濃度は、より好ましくは40〜80質量%である。
なお、マイクロ波発熱層中のアルミニウムフィラーの濃度は、製造時においては添加するアルミニウムフィラーの量と樹脂の量と(すなわち両者の混合比)を調整することにより制御することができる。また、基材上にマイクロ波発熱層を形成した後のアルミニウムフィラーの濃度は、樹脂を溶解することのできる溶媒を用いて充分に洗浄し、その後乾燥させ、樹脂を除去した後の残渣質量を測定することによって確認することができる。また、樹脂の熱分解が可能でありかつアルミニウムフィラーの酸化による質量変化が生じないような温度範囲において不活性雰囲気中で示差熱/熱重量同時測定(TG/DTA)を行なうことによっても確認することができる。
また、本発明のアルミニウムフィラーは、平均粒子径が1〜30μm(1μm以上30μm以下)である。平均粒子径が1μm未満であると、発熱能力が低いことに加えて凝集などを起こしやすく、マイクロ波発熱層形成時の塗料やインキなどへの分散が困難となり、樹脂中への均一な分散が困難となって充分な発熱効果が得られなかったり、局所的な異常発熱等の原因となる。一方30μmを超えると、マイクロ波照射時に過度に温度が上昇しマイクロ波発熱構造体が変形したり、発火する恐れがあるとともに、スパークを生じる可能性がありマイクロ波発生装置の故障にも繋がる。アルミニウムフィラーのより好ましい平均粒子径は、5〜20μmである。このような平均粒子径は、走査型電子顕微鏡によりアルミニウムフィラーを直接観察することにより確認することができる。
なお、このようなアルミニウムフィラーは、特にその製造方法が限られるものではないが、本発明に用いることのできる粒度の粉末を効率よく製造できる点、および製造にかかる費用が安い点等の観点からアトマイズ法により製造されたものが好ましい。
また、本発明のアルミニウムフィラーの形状は、フレーク状または粒状等、特に限定されない。しかしながら、フレーク状への加工は一般的にボールミルなど粉砕メディアと溶媒を用いた湿式加工であり、コスト増加や用いる溶媒の残留が懸念される。このため、このような加工を必要としない粒状の形状とすることが好適である。なお、本発明においてフレーク状とは、魚鱗の様に薄く扁平化されている形状を意味し、粒状とは上記以外の形状を意味する。このような粒状としては、たとえば真球状、球状、不定形(芋状の細長いものを含む)等を例示することができる。
ところで、このようなアルミニウムフィラーは、塗料やインキ、または食品などに含まれる水分やアルカリ、酸成分と直接接触することにより化学反応を起こし、アルミニウムイオンが溶出する恐れがある。特に食品加熱用途に本発明のマイクロ波発熱構造体を用いる場合、溶出したアルミニウムを摂取すると人体に対し悪影響を及ぼす可能性がある。また、水との接触による化学反応により水素ガスが発生する問題もある。
このため、この化学反応を防止するために、アルミニウムフィラーの表面に対して種々の処理を施すことができる。たとえば、燐酸、クロム酸、モリブデン酸等による表面処理、酸素存在下において比較的高温で加熱することによりアルミニウムフィラー表面の酸化皮膜の厚みを増大させる処理、シリカ、チタニア、アルミナ等による金属酸化物被覆処理(これらの水和物も含む)、アクリル樹脂、ニトロセルロースなどによる樹脂被覆処理などをアルミニウムフィラー表面に施すことができる。これらの各処理の中でも、充分な皮膜厚みを確保でき、かつ被覆処理時に溶媒としてアルコールや水を用いることができるため、金属酸化物被覆処理が好ましい。さらに原材料自体の価格を考慮すると、珪素化合物を用いた金属酸化物被覆処理がより好ましい。この場合、アルミニウムフィラーの表面に金属酸化物として非晶質のシリカ(水酸化物を含む)が形成される。
珪素化合物で被覆するためには、アルミニウムフィラーを分散させた水中でpHをコントロールしながら水ガラスを添加する方法や、いわゆるゾルゲル法と呼ばれるシランアルコキシド、シロキサン、変性シロキサン、アルキルシラン、シランカップリング剤およびジシラザンからなる群より選ばれた少なくとも1種の珪素化合物を加水分解させ、さらに脱水縮合させることによりアルミニウムフィラー表面に非晶質シリカ(水酸化物を含む)や珪酸塩を析出させる方法を採用することができる。特にゾルゲル法を用いることが好ましい。
また、上記の金属酸化物による被覆処理を行なうに先立ち、アルミニウムフィラーに対してポリモリブデン酸、燐酸等の酸、または、アンモニア、苛性ソーダ等の塩基を用いて前処理を行なってもよい。
このような珪素化合物を用いた金属酸化物被覆処理は、具体的には、処理溶媒100質量部に対し、アルミニウムフィラー1〜50質量部を分散させて撹拌しながら、加水分解させるための触媒を加えてpHを調整し、溶液の温度を20〜90℃に保持した状態で、有機珪素化合物を添加する。添加方法としては、徐々に添加してもよく、一度に添加してもよい。処理時間は、1〜48時間の範囲内が好ましく、2〜24時間の範囲内がより好ましい。処理中に溶液のpHが変化するので、随時、加水分解させるための触媒を加えてpHを調整する。処理の終了後、フィルターで固液分離する。その後、必要に応じて80〜500℃の温度で加熱処理する。
上記で用いる有機珪素化合物としては、たとえば、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等が用いられる。この場合、処理溶媒としては、たとえば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、アセトン等の親水性溶媒を用いることができ、特にアルミニウムと水との異常反応を避けるという点で好ましい。ただし、これらの処理溶媒に対して、水が少量、たとえば、20質量%以下程度含まれていてもよい。
有機珪素化合物を加水分解させるための触媒としては、たとえば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アンモニア、エチレンジアミン、t−ブチルアミン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、尿素、珪酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等の塩基性触媒、蓚酸、酢酸、硝酸、硫酸、燐酸、ホスホン酸等の酸性触媒を用いることが好ましい。
上記溶液のpHは、塩基性触媒を用いる場合には7〜14の範囲内に調整することが好ましく、7.5〜10の範囲内に調整することがより好ましい。酸性触媒を用いる場合には、pHを1.5〜4の範囲内に調整することが好ましく、2〜3の範囲内に調整することがより好ましい。なお、塩基性触媒を用いる場合、非晶質シリカの生成速度が大きいので、生産性が高くなる。
アルミニウムフィラー上への金属酸化物被覆は20〜500nmの厚みであることが好ましく、さらに好ましくは50〜250nmである。金属酸化物被覆の厚みが20nmより薄い場合、アルミニウムフィラーの化学反応や腐食を防ぐ効果が充分とはいえない。一方500nmを超える場合、金属酸化物被覆を行なうための金属酸化物源を多く必要とし材料コストや処理に掛かる時間が増大する。この問題はアルミニウムフィラーの比表面積が大きい場合には特に大きな問題となる。さらにアルミニウムフィラー本来の高い熱伝導率を阻害するために、加熱速度が低下する問題も発生する。なお、金属酸化物被覆の厚みは、アルミニウムフィラーの断面を走査型電子顕微鏡などで直接観察することにより測定することができる。
このように表面被覆したアルミニウムフィラーは、金属の溶出によるUV硬化樹脂のゲル化や水性塗料中の水との化学反応を防ぐことができるため、表面被覆したアルミニウムフィラーと水性インキ、水性塗料、UV硬化樹脂との組合せは好適に用いることができる。また、フレーク状のアルミニウムフィラーを用いる場合、マイクロ波照射時にスパークを生じるため、表面を上記の皮膜で被覆することは安全性を確保するためにも好ましい。
<樹脂>
本発明のマイクロ波発熱層は、樹脂を含む。この樹脂は、主として基材上にアルミニウムフィラーを固定する作用を有するものである。このような樹脂としては、該作用を有する限り特にその種類は限定されない。たとえばアクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ニトロセルロース樹脂、フッ素樹脂等を挙げることができる。
本発明のマイクロ波発熱構造体が食品用容器である場合は、特に人体に対して安全性の高い樹脂を用いることが好ましい。
<基材>
本発明で用いられる基材としては、特に限定されず、マイクロ波の照射により加熱対象物を加熱することを目的として、上記のマイクロ波発熱層を形成することができるものであればいずれのものも採用することができる。たとえば、紙、樹脂フィルム、プラスチック、セラミックス等を挙げることができる。
特に、加熱対象物が食品である場合は、このような基材として紙または樹脂フィルムを用いることが好ましい。このような紙または樹脂フィルムは、一般的にセラミック等に比し耐熱性が低い材料であるが、このような耐熱性の低い材料を基材として用いることができる点も本発明の大きな特徴である。
上記のような紙としては、たとえば普通紙、コート紙、アート紙、マット紙、ケント紙、上質紙、中質紙、特殊塗工紙等を挙げることができる。また、樹脂フィルムを構成する樹脂としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン等を挙げることができる。
<用途>
本発明のマイクロ波発熱構造体は、マイクロ波により加熱対象物を加熱する種々の用途に使用することができる。中でも、本発明のマイクロ波発熱層が有する上記のような特性に鑑み、本発明のマイクロ波発熱構造体は食品用容器とすることが特に好ましく、このような食品用容器としては、食品全体を覆う形状とすることが好適である。
より具体的には、たとえば30〜500g/m2の紙(単層または多層)を基材としたプレス成型紙容器、厚み50〜1000μmの樹脂フィルム(各種ポリエチレンテレフタレートシート、各種ポリプロピレンシート、各種ポリスチレンシート)を基材とし熱板成形および真空成形により成形したプラスチック容器、各種無機材料を焼結や混練し切削や圧縮により成形したセラミック容器やシートなど、加熱対象物(食品)を置いたり、収納したりできる形状とし、このような基材上にマイクロ波発熱層が形成される。なお、このような形状は、上記のように食品全体を覆う形状とすることが好ましい。なお、上記容器には、箱、皿、コップなどが含まれる。
本発明において、マイクロ波発熱層は、基材の全体を覆うように形成されていてもよいし、加熱対象物(食品)と接する面だけに形成されていてもよいし、加熱対象物(食品)と接する部分を除く表面に形成されていてもよい。また、マイクロ波発熱層は、基材の片面のみに形成されていてもよいし両面に形成されていてもよい。基材の片面に形成される場合は、加熱対象物(食品)と接する側または面する側の面に形成されていてもよいし、加熱対象物(食品)と接する側または面する側の面とは反対側(裏側)の面に形成されていてもよい。
本発明のマイクロ波発熱構造体は、たとえば以下のようにして製造することができる。すなわち、任意の基材(構造体)にマイクロ波発熱層を形成する方法としては、任意の材料に予め塗装または印刷などによりマイクロ波発熱層を形成し、その後に成形加工することにより任意の形状を有する構造体を製造することもできるし、射出成形などにより任意の形状に成形加工した構造体に塗装などによりマイクロ波発熱層を形成することにより構造体を製造することもできる。また、塗装や印刷によりマイクロ波発熱層を形成したフィルムなどを準備し、これを用いて水転写やインモールド成形によりマイクロ波発熱構造体を製造することも可能である。勿論、前述のように樹脂とアルミニウムフィラーとを含む塗料やインキを直接基材上に塗布することによりマイクロ波発熱構造体を製造することもできる。このように、本発明のマイクロ波発熱構造体は、特にその製造方法が限定されるものではない。
なお、マイクロ波発熱構造体を食品用容器とする場合は、食品とアルミニウムフィラーが直接触れることによる、アルミニウムの腐食やこれに伴うアルミニウムイオンの溶出を防ぐために、食品と触れる部分の裏側にマイクロ波発熱層を形成したり、基材上にマイクロ波発熱層を形成した後に、該層の表面をフィルムを用いてラミネートすることにより、食品とマイクロ波発熱層とが直接触れないような構成とすることが好ましい。
本発明のマイクロ波発熱構造体を食品用容器とし、この食品用容器で食品全体を実質的に覆い、これを電子レンジなどにより加熱することによって加熱時間が短縮され、かつ加熱ムラを防止した調理が可能となる。この場合、食品用容器の形状としては、食品全体を覆うことができれば特に限定されるものではないが、たとえば蓋付きの箱、上下二枚からなる一対のシート、箱とシート状の蓋の組合せ物など、種々の形状とすることができる。このように、本発明のマイクロ波発熱構造体により食品全体を覆う場合は、複数のマイクロ波発熱構造体により1つの食品を覆う場合が含まれる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<アルミニウムフィラーの平均粒子径の測定>
アルミニウムフィラーの平均粒子径の測定は、使用したアルミニウムフィラーを直接走査型電子顕微鏡により観察することにより算出した。
具体的には、アルミニウムフィラーを導電性カーボンテープ上に固定し観察用台座に固定した。また、アルミニウムフィラーの表面に金属酸化物を付与したサンプルは、電子線によるチャージによりハレーションが起こり、観察画像が不鮮明になるため、必要に応じて金をスパッタリング法で極少量観察試料表面に付与することを行なった。このようにして得られたサンプルに対して、各サンプルの粒子径が鮮明に確認できる倍率に適宜調整しながら、観察を行なった。
次いで、観察した任意のアルミニウムフィラー1000個の長径を測定し平均化した値をアルミニウムフィラーの平均粒子径とした。なお、マイクロ波発熱層中のアルミニウムフィラーの平均粒子径を算出する場合は、マイクロ波発熱層に含まれる樹脂を有機溶剤により溶解し、その後洗浄または熱分解により除去し、アルミニウムフィラーを取り出した後、上記の方法により測定することが可能である。
<マイクロ波発熱層の厚みの測定>
マイクロ波発熱層の厚みは、マイクロメーターを用いて測定した。具体的には、基材のみの任意の10箇所の厚みを測定しその平均値Aを算出した。次いで、マイクロ波発熱層が形成された基材の部分の任意の10箇所の厚みを測定しその平均値Bを算出した。そして、両者の差(B−A)をマイクロ波発熱層の厚みとした。
<アルミニウムフィラー表面の金属酸化物被覆の厚みの測定>
マイクロ波発熱層に対してイオンミリング法により断面を露出させ、この断面に対して走査型電子顕微鏡を用いて80000倍以上の倍率で鮮明な画像を取得した。そして、その画像を用いて、任意のアルミニウムフィラー50個について観察し金属酸化物被覆の厚みを求め、その平均値をアルミニウムフィラー表面の金属酸化物被覆の厚みとした。個々のアルミニウムフィラーについて金属酸化物被覆の厚みが不均一である場合は、中庸部分の厚みを測定した。
<マイクロ波照射時の発熱測定>
マイクロ波照射による発熱度合いを測定するために電子レンジ(商品名:「RE-MA1-N 定格高周波出力1000W」、シャープ株式会社製)を用いた。テストピースとして、マイクロ波発熱層を形成した基材(マイクロ波発熱構造体)の一部を10cm×10cmの大きさに切断し、電子レンジ内部の中央にテストピースの中心が重なるように配置した。なお、この配置は、電子レンジ内部の底面の加熱に伴う伝熱の影響を避けるために、アクリル製で四隅に足が付いたテーブルを準備して、このテーブル上にテストピースを置くことにより電子レンジ内部の底面から隔離した状態でテストピースを配置した。
電子レンジのマイクロ波照射出力は500Wで行ない、1分間マイクロ波を照射した後、電子レンジの扉を開け3秒以内にサーモグラフィー(商品名:「FSV-7000E」、株式会社アピステ製)を用いてテストピースの表面温度を測定した(以下の各表ではこの測定結果を「1分後温度」とした)。また10分間照射後の表面温度も同様にして測定した(以下の各表ではこの測定結果を「10分後温度」とした)。なお、当該測定は各テストピースごとに3回行ない、その平均値を採用した。
<熱伝導率の測定>
マイクロ波発熱層の熱伝導率を非定常法細線加熱法により測定した。具体的には迅速熱伝導率計(商品名:「QTM−500」、京都電子工業株式会社製)を用いて、上記の発熱測定に用いたのと同様の各テストピースについて3回測定を行ない、その平均値を熱伝導率とした。
<アルミニウムフィラーの耐水性評価>
金属酸化物被覆処理を施したアルミニウムフィラーの耐水性評価を行なった。この評価は、アルミニウムフィラーと水との反応により発生する水素量を測定することにより行なった。
具体的には、まずモノエタノールアミンをイオン交換水にて0.3質量%水溶液となるように希釈し評価溶液とした。この評価溶液の25℃におけるpHは10.6であった。次に、上記のテストピースに用いられている金属酸化物被覆処理を施したアルミニウムフィラー1.0gを試験管中に投入し、40℃に加温した上記評価溶液99ccを加え、フッ素樹脂製のチューブ付きシリコン栓を素早く試験管に接続した。さらに試験管を40℃の湯浴に浸した。この様にして発生する水素ガスを水上置換法にて捕集して気体の総量を算出した。水素ガス発生量が多いものほど、耐水性に劣ることを示す。
<実施例1>
アルミニウムフィラーとして、アトマイズ法により製造し分級により平均粒子径19.4μmに調整された非フレーク状(すなわち粒状)アルミニウム粉40質量%と、樹脂として、酢酸エチル溶解アクリル系バインダー溶液を固形分換算で60質量%(有効成分32質量%)とを均一に混合分散させることにより、マイクロ波発熱層を構成する樹脂とアルミニウムフィラーとを含んだインキを調製した(マイクロ波発熱層中のアルミニウムフィラーの濃度は40質量%となる)。
次いで、このインキを用いて基材上に印刷(塗工)を行なった。具体的には、ダイコーターを用いて行ない、基材である多層厚紙(300g/m2)の一方の表面上に対して300mm幅にてこのインキを塗工し、ダイコーター付属の80℃乾燥ゾーンを通過させることにより印刷面を充分乾燥させながら巻き取りを行った。このようにして、基材表面にマイクロ波発熱層が形成されたマイクロ波発熱構造体を作製した。
このマイクロ波発熱構造体について、上記の方法によりマイクロ波発熱層の厚みを測定し、またテストピースとして任意の部分を10cm×10cmの大きさに切断し、上記の方法によりマイクロ波照射時の発熱(四隅および中心部の平均値)を測定した。また、マイクロ波10分照射後の外観も観察した。それらの結果を以下の表1に示す。
<比較例1>
実施例1において使用した基材のみを用いて同様の方法によりマイクロ波照射時の発熱測定を行なった。その結果を以下の表1に示す。
<実施例2〜6および比較例2〜3>
アルミニウムフィラーの平均粒子径が異なることを除き、他は全て実施例1と同様にしてマイクロ波発熱構造体を作製し、実施例1と同様の評価を行なった。その結果を以下の表1に示す。
Figure 0005854905
なお、表1中、「平均粒子径」とはアルミニウムフィラーの平均粒子径を示し、「濃度」とはマイクロ波発熱層中のアルミニウムフィラーの濃度を示し、「厚み」とはマイクロ波発熱層の厚みを示し、「照射後外観」とはマイクロ波発熱構造体のマイクロ波照射後の外観を示す(特に断らない限り、以下の各表において同じ)。
表1より明らかなように、比較例1の基材(マイクロ波発熱層が形成されていない基材)は、基材中の水分による発熱しか起こらなかったため、「1分後温度」および「10分後温度」の両者において温度は低くなった。また、比較例2は、アルミニウムフィラーの平均粒子径が1μm未満であるため、マイクロ波照射時の発熱効果は充分ではなかった。
これに対し実施例1〜6は、アルミニウムフィラーの平均粒子径が1〜30μmの範囲内にあるため、マイクロ波照射1分後(「1分後温度」)でも比較例1〜2に比べて高い発熱効果を示した。
また、実施例1〜6は、マイクロ波照射後10分経っても(「10分後温度」)、発熱温度は概ね200℃以下であり、基材として紙や樹脂フィルム(プラスチック)の様な耐熱性の低い材料でも使用が可能であることが示された。特に実施例3〜4においては発熱効果がより高く、また基材の焦げなどの問題も生じなかった。
一方、比較例3は、アルミニウムフィラーの平均粒子径が30μmを超えるため、マイクロ波照射後1分以内にスパークに続く発火が生じ、食品用容器として使用することは困難であると判断された。
<実施例7〜12および比較例4〜5>
実施例1で用いたインキの処方を調整することにより、アルミニウムフィラーの含有量(マイクロ波発熱層中のアルミニウムフィラーの濃度)が異なることを除き、他は全て実施例1と同様にしてマイクロ波発熱構造体を作製し、実施例1と同様の評価を行なった。その結果を以下の表2に示す。
Figure 0005854905
表2より明らかなように、実施例7〜12は、マイクロ波発熱層中のアルミニウムフィラーの濃度が30〜95質量%の範囲内にあるため、比較例1と比べてマイクロ波による発熱効果が得られ、特に実施例9〜12は著しい発熱効果を示した。
これに対し、比較例4は、アルミニウムフィラーの濃度が30質量%未満であるため、比較例1と比較して有意な発熱効果を得ることはできなかった。また比較例5は、アルミニウムフィラーの濃度が95質量%を超えるため、発熱効果については著しい効果を発揮したものの、マイクロ波照射後においてマイクロ波発熱層の外観が劣化していた(基材からの剥れやヒビ割れが発生した)。
<実施例13〜18および比較例6〜7>
実施例1においてダイコーターを用いた塗工時のダイと基材との間隔(ギャップ)を調整することにより、マイクロ波発熱層の厚みが異なることを除き、他は全て実施例1と同様にしてマイクロ波発熱構造体を作製し、実施例1と同様の評価を行なった。その結果を以下の表3に示す。
さらに、対となった金型を用いて金型の間にマイクロ波発熱構造体をはさみ、絞り加工することによって容器状に成形し、成形物の底壁とその底壁から広がって立ち上がる周壁の接合部を目視にて観察した。その観察結果を同じく表3の「成形後外観」の欄に示す。
Figure 0005854905
表3より明らかなように、実施例13〜18は、マイクロ波発熱層の厚みが50〜500μmの範囲内にあるため、比較例1と比較してマイクロ波による高い発熱効果が確認された。特に実施例15〜18はマイクロ波照射による発熱効果が著しかった。一方、実施例17〜18は、成形後の外観において、マイクロ波発熱層に微小のクラックが観察された。
これに対し、比較例6は、マイクロ波発熱層の厚みが50μm未満であるため、比較例1と比較して有意な発熱効果を得ることはできなかった。一方、比較例7は、実施例と同等の発熱効果が示されたが、マイクロ波発熱層の厚みが500μmを超えるため、成形後の外観においてマイクロ波発熱層に著しい剥れが生じた。
<実施例19>
アルミニウムフィラーとして、アトマイズ法により製造し分級により平均粒子径19.4μmに調整された非フレーク状(すなわち粒状)アルミニウム粉600gを準備した。次いで、このアルミニウム粉600gをイソプロピルアルコール1300gに分散させ、攪拌を続けながら温度65℃まで加熱した。この温度に達した時点で、2.3%のアンモニア水490gを加え、さらに攪拌を続けた。その溶液に、有機珪素化合物(商品名:「正珪酸エチル」、多摩化学製)20gと同質量のイソプロピルアルコールから成る混合溶液をゆっくり滴下した。そして、滴下終了後、5分間攪拌を続けた後に濾取してイソプロピルアルコールで十分に洗浄し、その後、温度150℃で12時間乾燥することによりシリカ被覆アルミニウム粉末(すなわち金属酸化物被覆アルミニウムフィラー)を調製した。
このようにして得た金属酸化物被覆アルミニウムフィラーに対して、上記の方法により金属酸化物(シリカ)被覆の厚みの測定および耐水性評価を行なった。その結果を以下の表4に示す。表4中、「水素ガス発生量」が耐水性評価の結果である。
またその後、実施例1におけるアルミニウムフィラーを上記で得られた金属酸化物被覆アルミニウムフィラーに変えることを除き、他は全て実施例1と同様にしてマイクロ波発熱構造体を作製し、実施例1と同様の評価を行なった。その結果を以下の表4に示す。なお、熱伝導率も上記の方法により測定し、同じく表4に示す。
<実施例20〜25>
実施例19において、有機珪素化合物の添加量を調整することを除き、他は全て実施例19と同様にして金属酸化物被覆アルミニウムフィラーを得、それによりマイクロ波発熱構造体を作製し、実施例19と同様の評価を行なった。その結果を以下の表4に示す。
<比較例8>
アルミニウムフィラーを用いない以外は全て実施例19と同様にしてマイクロ波発熱構造体を作製し、実施例19と同様の評価を行なった。
Figure 0005854905
表4より明らかなように、実施例19〜25は、水素がほとんど発生しておらず、優れた耐水性を示すことが確認できた。また、熱伝導率に関しても、実施例19〜25において比較的高い数値となっており、またマイクロ波による発熱効果が得られることも確認できた。
<実施例26>
アトマイズ法で調整した平均粒子径3μmの粒状アルミニウム粉末、ミネラルスピリット、脂肪酸を混合したスラリーと鉄製粉砕メディアとをボールミルへ投入し20時間の粉砕を行なうことによりアルミニウム粉のフレーク化処理を行なった。次いで濾過、洗浄、乾燥工程を経ることによって、アルミニウムフィラーとして平均粒子径20.5μmのフレーク状アルミニウム粉末を得た。
このようにして得られたフレーク状アルミニウム粉末200gをイソプロピルアルコール1300gに分散させ、攪拌を続けながら温度65℃まで加熱した。この温度に達した時点で、2.3%のアンモニア水490gを加え、さらに攪拌を続けた。
次いで、上記の攪拌溶液に、有機珪素化合物(商品名:「正珪酸エチル」、多摩化学製)250gと同質量のイソプロピルアルコールとから成る混合溶液をゆっくり滴下した。そして滴下終了後、5分間攪拌を続けた後に濾取してイソプロピルアルコールで十分に洗浄し、その後、温度150℃で12時間乾燥することにより平均粒子径21.3μmのシリカ被覆アルミニウム粉末(すなわち金属酸化物被覆アルミニウムフィラー)を調製した。
そして、実施例1におけるアルミニウムフィラーを上記で得られた金属酸化物被覆アルミニウムフィラーに変えることを除き、他は全て実施例1と同様にしてマイクロ波発熱構造体を作製し、実施例1と同様の評価を行なった。その結果を以下の表5に示す。なお、金属酸化物(シリカ)被覆の厚みは、実施例19と同様の方法により測定した。
Figure 0005854905
なお、表5中、「形状」はアルミニウムフィラーの形状を示す。
表5より明らかなように、実施例26のマイクロ波発熱構造体は、実施例1のマイクロ波発熱と同様の発熱効果を示し、またスパーク等が発生することもなかった。
<実施例27>
実施例1のマイクロ波発熱構造体(テストピースを切断していないもの)を用いて、マイクロ波発熱層が食品と接しない外側に配置されるようにして、長方形の皿状(縦191mm×横145mm×深さ35mm)に成形することによって、食品用容器を得た。
次いで、この食品用容器の内部に食品としてハインツ日本株式会社製ホワイトソース300gを充填し、−10℃で24時間静置することによって、食品容器中のホワイトソースを冷凍させた。その後、別に準備した実施例1のマイクロ波発熱構造体をこの食品用容器上面を完全に覆うことのできるサイズに切り取り、これを蓋部として該食品用容器の上部に固定することにより、内部のホワイトソース試料(食品)全体を実質的に覆った。
続いて、上記のようにして実施例1のマイクロ波発熱構造体で全体を覆った状態のホワイトソースを電子レンジにセットし、マイクロ波を照射することにより加熱した。そして、加熱時間5分後および10分後のホワイトソース試料内部の温度を測定した。
具体的には、温度測定プローブとしてK型熱電対を使用し、ホワイトソース試料中の7箇所の測定点の温度を測定した(測定点は、食品用容器底面の4隅と底面の中心とその中心から左右方向にそれぞれ30mm離れた点とし、各測定点において底面から高さ方向に10mm離れた地点の温度を測定した。なお、ホワイトソースは、底面から約20mmの高さまで充填されていた)。なお、上記の蓋部は測定毎にとり外し、加熱時には毎回再度同様に覆い、マイクロ波発熱構造体で食品全体を覆う状態でマイクロ波を照射させた。
その結果を以下の表6に示す。なお、表6中、「A点」とは、上記測定点のうち、中心およびその中心から左右方向にそれぞれ30mm離れた点の合計3点の測定点の平均温度であり、「B点」とは、底面4隅(合計4点)の測定点の平均温度である。
<実施例28>
実施例27において、マイクロ波発熱構造体の蓋部による覆いを設けないことを除き、他は全て実施例27と同様にして、マイクロ波を照射することによりホワイトソースを加熱し、温度を測定した。その結果を表6に示す。
<比較例9>
実施例27において、マイクロ波発熱層を形成していない基材を用いることを除き、他は全て実施例27と同様にして、マイクロ波を照射することによりホワイトソースを加熱し、温度を測定した。その結果を表6に示す。
Figure 0005854905
表6より明らかなように、実施例27は、加熱時間5分後(マイクロ波照射5分後)のA点の温度が実施例28および比較例9よりも高くなっていた。一方、加熱時間10分後(マイクロ波照射10分後)に関しては、A点の温度は実施例27が実施例28および比較例9よりも低くなっており、かつB点においても実施例27において過度の加熱が起こらないことが確認できた。
また、マイクロ波照射10分後の食品表面を目視で観察した結果、比較例9は容器4隅において過度の加熱に伴う極端な表面乾燥が生じていたが、実施例27においては全く異常は確認されなかった。
以上の結果から、実施例27のようにマイクロ波発熱構造体で実質的に食品全体を覆うことにより、マイクロ波照射の初期においては、通常の加熱では昇温が困難とされる食品の内部(中心部)の加熱を効率的に行なうことができるとともに、マイクロ波照射時間が長くなった場合には、容器コーナー部分の過度の加熱が抑えられ、以って食品を均一に加熱できることが確認できた。
以上、本発明のマイクロ波発熱構造体は、サセプターのようにスパークを発生するなどの異常加熱を伴うことなくマイクロ波により対象物を適度に加熱することができ、以って基材としても耐熱性の低い材料を使用することができるという効果が示されることは明らかである。また、本発明のマイクロ波発熱構造体が食品用容器であり、食品全体を覆う形状とした場合には、電子レンジによるいわゆる加熱ムラを防ぎ、均一に加熱しながら通常の方法で加熱するよりも早く温度を上昇させることができるという優れた効果を示すことも明らかである。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

Claims (4)

  1. 基材と、該基材の表面に形成されたマイクロ波発熱層とを含むマイクロ波発熱構造体であって、
    前記マイクロ波発熱層は、樹脂とアルミニウムフィラーとを含み、かつその厚みが50〜500μmであり、
    前記アルミニウムフィラーは、前記樹脂中に分散されており、その平均粒子径が1〜30μmであり、かつ前記マイクロ波発熱層に30〜95質量%の濃度で含まれる、マイクロ波発熱構造体。
  2. 前記基材は、紙または樹脂フィルムである、請求項1記載のマイクロ波発熱構造体。
  3. 前記マイクロ波発熱構造体は、食品用容器である、請求項1または2記載のマイクロ波発熱構造体。
  4. 前記食品用容器は、食品全体を覆う形状を有する、請求項3記載のマイクロ波発熱構造体。
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