JP5853567B2 - 有機el素子用基板及びその製造方法、並びに有機el素子 - Google Patents
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Description
また本発明の有機EL素子用基板の製造方法によれば、簡便な方法により、本発明の有機EL素子用基板を提供することができる。また、ロールトゥロール方式の有機EL素子の製造に好適な帯状の有機EL素子用基板を製造することも可能である。
(1) すなわち、まず水分や酸素などに対するガスバリア性を改善すべく、基板の材料を樹脂フィルムから金属製の基材とすることを検討した。トップエミッション構造の場合、基板は透明である必要はないからである。また、基材の厚さを薄くすることにより可撓性も確保することが可能である。
(2) また、基板の上に電極を設ける構成であることから該基板の電極形成面には電気絶縁性が必要であり、さらに後工程(発光層形成工程)で加熱されることから、金属製の基材表面に電気絶縁性及び耐熱性を有する膜を形成する必要がある。
(3) また、基板上に設ける電極を後工程の加熱でヒロックの発生しやすいAlやAl合金などの金属の電極から加熱によってもヒロックの発生しないインジウム錫酸化物(ITO)などの透明電極とする前提とし、反射特性を基板に付与することを検討した。ここでは、前記電気絶縁性及び耐熱性を有する膜に高反射特性を付与する必要がある。
(4) また、リーク電流防止のために、基板上の透明電極表面を平滑化する必要がある。この場合、透明電極単体である程度の平滑化を図ることは可能であるが、透明電極の厚さは1μm未満(100nm程度)であるため、基板の表面粗さの影響が大きい。ここでは、前記電気絶縁性及び耐熱性を有する膜の表面粗さを小さくする必要がある。
以上のことから、有機EL素子用基板として、(1)金属製の基材と、(2)電気絶縁性及び耐熱性を有する膜と、を有し、該電気絶縁性及び耐熱性を有する膜には(3)優れた反射特性(高反射率)と(4)平滑な表面(表面粗さの小さいこと)が必要である。
発明者は、この要件を満足する有機EL用基板を実現すべく鋭意検討を行い、本発明を成すに至った。
以下、本発明の有機EL素子の実施形態について説明する。
図1は、本発明に係る有機EL素子用基板の構成例を示す断面図である。
図1に示すように、有機EL素子用基板(以下、基板という)10は、金属製の基材1と、該基材1の一方の面に設けられ白色微粒子2a及び樹脂バインダー2bを含む絶縁反射層2と、を有し、可視光領域の表面反射率(以下、反射率)が70%以上であり、表面の最大高さ粗さRzが100nm以下であることを特徴とするものである。なお、図1では、基材1表面に化成処理皮膜1aを設けた例を示している。
なお、ここでいう反射率とは、可視光領域における反射率であり、例えば波長520nmにおける全反射率のことである(以降、同じ)。
これにより、基板10を用いてトップエミッション構造の有機EL素子を作製した場合、発光層から基板10側へ向かう光を表面に効率的に反射することができ、発光効率の向上を図ることができる。
これにより、基板10を用いてトップエミッション構造の有機EL素子を作製する際、基板10上に容易に平滑な電極(陽極)を形成することができ、リーク電流を防止することが可能となる。
このとき、濃色顔料としては、カーボンブラック、黒色粉末、セラミック粉末、遷移金属酸化物粉末、複合酸化物粉末等のうち、熱吸収能の高い顔料が用いられる。
なお、放熱塗膜3は省略してもよい。
本発明者らは、基板10において反射率と表面粗さの両立を図るべく鋭意検討を行い、反射率を満足する塗膜の表面を研磨することにより、表面の平滑化を実現する技術を開発した。
次に、本発明の有機EL素子用基板を用いた有機EL素子の構成について説明する。
有機EL素子は、本発明の有機EL素子用基板(基板10)の絶縁反射層2の上に、少なくとも透明電極である陽極及び陰極と、該陽極と陰極の間に設けられる有機発光材料からなる発光層と、を有する。以下、その構成例について説明する。
<陽極>
陽極13には、透明電極であって効率良く正孔を注入するために電極材料の真空準位からの仕事関数が大きいもの、例えばIWO(酸化インジウムタングステン)、ITO(酸化インジウム錫)、InZnO(酸化インジウム亜鉛)等が用いられる。このうち、IWOの表面平滑透明導電層がより好ましい。
正孔注入層14aおよび正孔輸送層14bは、それぞれ発光層14cへの正孔注入効率を高めるためのものである。このような正孔注入層14aもしくは正孔輸送層14bの材料としては、例えば、ベンジン、スチリルアミン、トリフェニルアミン、ポルフィリン、トリフェニレン、アザトリフェニレン、テトラシアノキノジメタン、トリアゾール、イミダゾール、オキサジアゾール、ポリアリールアルカン、フェニレンジアミン、アリールアミン、オキザゾール、アントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベンあるいはこれらの誘導体、または、ポリシラン系化合物、ビニルカルバゾール系化合物、チオフェン系化合物あるいはアニリン系化合物等の複素環式共役系のモノマー、オリゴマーあるいはポリマーを用いることができる。
発光層14cは、陽極13側から注入された正孔と、陰極15側から注入された電子とが再結合して発光光を発生する領域である。このような発光層14cは、炭素及び水素のみから構成される有機材料で形成された有機薄膜であっても良く、正孔輸送性を示す三級アミンを分子構造中に有する材料を用いて構成された層であっても良い。加えて、発光層14cは、ドーパントとして、ベリレン誘導体、クマリン誘導体、ピラン系色素、トリフェニルアミン誘導体等の有機物質を微量含む混合有機薄膜であっても良い。この場合には発光層14cを構成するホスト材料(主材料)と、ドーパントとなる材料との共蒸着によって、発光層14cが形成される。また特に、正孔輸送性を示す三級アミンを分子構造中に有する材料のうち、分子間相互作用が小さく濃度消光しにくい特徴を有するものであれば、高濃度のドーピングが可能になり、最適なドーパントの1つとして機能する。
電子輸送層14dは、陰極15から注入される電子を発光層14cに輸送するためのものである。電子輸送層14dの材料としては、例えば、キノリン、ペリレン、ビススチリル、ピラジン、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、フルオレノン、またはこれらの誘導体が挙げられる。具体的には、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(略称Alq3)、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、アントラセン、ペリレン、ブタジエン、クマリン、アクリジン、スチルベン、またはこれらの誘導体が挙げられる。
陰極15は、例えば、有機層14側から順に第1層(電子注入層)15a、第2層(陰極電極層)15bを積層させた2層構造で構成されている。
また、基板10に金属製の基材1を用いているので良好なガスバリア性を示し、発光層14cを含む有機層14の劣化を防止することができる。さらに、有機EL素子11,11’を駆動(発光)させたときに発生する熱を金属製の基材1で奪い、有機EL素子の発光面における局所的な過熱を防止することができる。特に、従来の大面積の有機EL素子では、発光面中央部の温度が端部よりも上昇することにより中央部が暗くなるような明度差が発生するが、本発明の有機EL素子11,11’によれば連続使用によっても金属製の基材1により発光面の均熱化を図ることができ、発光面全面の明度を均一にすることが可能である。これは放熱塗膜3を設ければより有効である。
また、基板10は、金属製の基材1を適切な厚さとすることにより、適度な剛性及び可撓性を有することから、ロールトゥロール方式の製造方法により生産性よく大面積の有機EL素子11,11’を製造することができる。また、このように製造した有機EL素子11,11’は取り扱い性に優れ、デザインの自由度の高いものとして照明装置や表示装置に用いることができる。
なお、本発明の基板10を薄膜太陽電池や半導体装置の基板として用いてもよい。
(実施例1)
以下の条件で、基板10を作製した。
(作製条件)
(1)基材1;
・鋼種;SUS304(板厚0.1mm)
・表面仕上げ;BA(算術平均粗さRa=32nm、最大高さ粗さRz=2.6μm)
(2)クロムフリー化成処理液
化成処理液として、表1に示す成分のものを用いた。
・白色微粒子2a:TiO2微粒子(商品名タイピュアR900、デュポン社製、2次平均粒径2μm) 25質量部
・顔料分散剤(商品名フローレンDOPA−35、共栄社化学製、カチオン基含有アクリルポリマー) 1質量部
・主樹脂:ポリエーテルスルホン樹脂(商品名PES5003P、住友化学工業製、数平均分子量23,000) 50質量部
・混合有機溶媒:N−メチル−2−ピロリドン(NMP)50質量%、キシレン30質量%、メチルエチルケトン(MEK)20質量%の混合有機溶剤 100質量部
まず白色微粒子、顔料分散剤、混合有機溶媒を所定量混合し、ペイントシェーカーで分散処理を行いTiO2微粒子分散液を得た。ついで、該分散液に塗料主樹脂を添加し、攪拌機にて攪拌処理を行い、塗料とした。
(4)有機EL素子用基板10の製造方法
(S11)基材1の表面を脱脂した後、表1に示す組成のクロムフリー化成処理液をTiおよびZrの総金属元素換算付着量が3.5mg/m2となるようにバーコーターで塗布し、該化成処理液を塗布した基材1を到達板温100℃で10秒間加熱して、基材1表面に化成処理皮膜を形成する。
(S12)ついで、化成処理された基材1の片面に調製した絶縁反射層2用塗料をバーコーター方式で塗布し、到達板温330℃で90秒間焼き付けて、基材1表面に乾燥膜厚17μmの絶縁反射層2用塗膜を形成する。
(S13)ついで、絶縁反射層2用塗膜の表面を研磨して、膜厚15μmの絶縁反射層2を形成し、有機EL素子用基板10を得た。なお、このときの研磨方式は、乾式ロール方式である。具体的には、バフ研磨機(型番RT−1500−H、野水機械製作所製)に、綿バフ(商品名バイヤス両面ネルバフ、光陽社製、バフ外径350mm、厚さ12〜16mm)を15枚重ね合わせた綿バフロール(研磨幅約200mm)を取り付けて使用した。綿バフロールは研磨剤(商品名ダンジーD−491、主成分1μmアルミナ、固形パラフィン)を含浸して使用した。研磨条件は、綿バフ表面速度1500m/min、押し付け荷重0.1MPa、絶縁反射層2用塗膜形成基材1の研磨速度は0.5m/minとした。
(1)反射率測定方法
積分球式反射率測定装置(型番CM3700d、ミノルタ社製)を用いて正反射光を含んだSCIモードにより、ステップS12の塗膜及び基板10について、波長520nmにおける全反射率を測定した。
(2)表面粗さ測定方法
原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope(AFM)、型番Dimension Edge、ビーコ・インスツルメンツ社製)を用いて、ステップS12の塗膜及び基板10について測定領域50μm×50μmを走査周波数300kHz(タッピングモード)で測定し、JIS B6010:2001に規定される表面粗さに準ずる値として、算術平均粗さRa及び最大高さ粗さRzを求めた。
(3)測定結果
塗膜の表面反射率は75%、算術平均粗さRaは81nm、最大高さ粗さRzは778nmであった。
また、得られた基板10の表面反射率は81%、算術平均粗さRaは9nm、最大高さ粗さRzは69nmであった。
実施例1において、基材1の表面仕上げを2B(算術平均粗さRa=124nm、最大高さ粗さRz=3.6μm)に変更し、それ以外は実施例1の条件で基板10を作製した。
このとき、塗膜の表面反射率は68%、算術平均粗さRaは142nm、最大高さ粗さRzは1561nmであり、基板10の表面反射率は75%、算術平均粗さRaは19nm、最大高さ粗さRzは96nmであった。
実施例1において、基材1の表面仕上げをHT(算術平均粗さRa=60nm、最大高さ粗さRz=4.6μm)に変更し、それ以外は実施例1の条件で基板10を作製した。
このとき、塗膜の表面反射率は71%、算術平均粗さRaは108nm、最大高さ粗さRzは1050nmであり、基板10の表面反射率は77%、算術平均粗さRaは14nm、最大高さ粗さRzは87nmであった。
実施例1において、塗料における主樹脂をポリアミドイミド樹脂(商品名HPC−5010S、日立化成工業製、数平均分子量17,000)に変更し、それ以外は実施例1の条件で基板10を作製した。
このとき、塗膜の表面反射率は68%、算術平均粗さRaは89nm、最大高さ粗さRzは876nmであり、基板10の表面反射率は74%、算術平均粗さRaは11nm、最大高さ粗さRzは72nmであった。
実施例1において、絶縁反射層2の膜厚を27μmに変更し、それ以外は実施例1の条件で基板10を作製した。
このとき、塗膜の表面反射率は79%、算術平均粗さRaは123nm、最大高さ粗さRzは962nmであり、基板10の表面反射率は83%、算術平均粗さRaは14nm、最大高さ粗さRzは89nmであった。
実施例1において、絶縁反射層2の膜厚を4μmに変更し、それ以外は実施例1の条件で基板10を作製した。
このとき、塗膜の表面反射率は61%、算術平均粗さRaは115nm、最大高さ粗さRzは354nmであり、基板10の表面反射率は67%、算術平均粗さRaは14nm、最大高さ粗さRzは104nmであった。
1a 化成処理皮膜
2 絶縁反射層
2a 白色微粒子
2b 樹脂バインダー
3 放熱塗膜
10 有機EL素子用基板
11,11’ 有機EL素子
13 陽極
14 有機層
14a 正孔注入層
14b 正孔輸送層
14c 発光層
14d 電子輸送層
15 陰極
15a 第1層
15b 第2層
Claims (11)
- 金属製の基材と、該基材の一方の面に樹脂バインダー成分100質量部に対して白色顔料微粒子40〜120質量部を配合した塗膜である絶縁反射層と、を有し、
可視光領域の表面反射率が70%以上であり、表面の最大高さ粗さRzが100nm以下であることを特徴とする有機EL素子用基板。 - 前記絶縁反射層内において白色顔料微粒子が基材表面上に均一に分布して該表面を被っていることを特徴する請求項1記載の有機EL素子用基板。
- 前記基材は、ステンレス鋼、普通鋼、めっき鋼板のいずれかからなる金属板または金属箔であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL素子用基板。
- 前記白色顔料微粒子は、その粉末での波長520nmにおける全反射率が70%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機EL素子用基板。
- 前記白色顔料微粒子は、その粉末における2次平均粒径が3μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機EL素子用基板。
- 前記白色顔料微粒子は、TiO2からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機EL素子用基板。
- 前記樹脂バインダーは、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコーン樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機EL素子用基板。
- 前記基材の他方の面に、放熱塗膜を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機EL素子用基板。
- 更に、前記基材と絶縁反射層との間に化成処理皮膜を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機EL素子用基板。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の有機EL素子用基板の製造方法であって、
金属製の基材の一方の面に、樹脂バインダー成分100質量部に対して白色顔料微粒子40〜120質量部を配合した塗料を塗布して白色顔料微粒子及び樹脂バインダーを含む塗膜を形成する工程と、
前記塗膜表面を研磨して絶縁反射層とする工程と、を有することを特徴とする有機EL素子用基板の製造方法。 - 請求項1〜9のいずれか1項に記載の有機EL素子用基板の絶縁反射層の上に、少なくとも、透明電極である一対の電極と、該一対の電極の間に設けられる有機化合物からなる発光層と、を有することを特徴とする有機EL素子。
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