JP5850518B2 - 高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物の潰瘍性消化管の炎症の処置剤 - Google Patents

高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物の潰瘍性消化管の炎症の処置剤 Download PDF

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本発明は、潰瘍性消化管の炎症を予防もしくは治療するための高分子化抗酸化剤、特に高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物の潰瘍性消化管の炎症を予防もしくは治療するための使用に関する。
潰瘍性消化管の炎症の中でも、潰瘍性大腸炎は大腸、特に直腸の粘膜(最も内側の層)にびらんまたは潰瘍ができる炎症性腸疾患であり、症状として、下血を伴うまたは伴わず、下痢だけでなく腹痛等がみられる。この潰瘍性大腸炎は難病に指定されており、わが国の潰瘍性大腸炎の患者数は、104,721人(平成20年度特定疾患医療受給者証交付件数より)と報告されており、毎年おおよそ5,000人増加している。一方、米国の潰瘍性大腸炎の患者数は100万人と言われている。しかしながら、この疾患の原因は明らかになっておらず、これまでに腸内細菌の関与や本来は外敵から身を守る免疫機構が正常に機能しない自己免疫反応の異常、あるいは食生活の変化、さらには心理的要因の関与などが考えられているが、どれが正確な原因であるかは今日でも不明である。
2010年現在、潰瘍性大腸炎を完治に導く内科的治療はない。従来の治療法では、5−アミノサリチル酸製剤、ステロイド薬、免疫抑制薬などに一定の効果が認められているが、治療無効例や日光過敏症による発疹・発熱・悪心・嘔吐・肝機能障害などの副作用が問題となっている。また近年では、抗TNFα抗体などの生物学的製剤の有効性が注目されているものの、非常にコストが高いといった問題点を有している。さらに、治療無効例での外科手術による人工肛門造設等日常生活の制限や長期慢性活動性炎症による炎症性発がんが問題となっているため、画期的治療法の開発が期待されている。
このような潰瘍性大腸炎の治療とは無関係に、本発明者等は、広範な炎症に関与すると考えられている酸化ストレス障害を引き起こす活性酸素種(ROS)を効率的に消去し、また診断できるラジカルナノ粒子(RNP)として、高分子化(特に、ポリエチレングリコール化)環状ニトロキシドラジカル化合物に由来する高分子ミセルを提供した(非特許文献1もしくは2、または特許文献1)。これらの高分子ミセルは、水性媒体中で、環状ニトロキシドラジカル、例えば、ROSを効率的に消去する4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシド(TEMPO)が粒子内部に封入され、周囲還元性環境下ですら当該特性を長期にわたり維持でき、また、水難溶性のTEMPO等が水性媒体中で可溶化もしくは安定に均質に分散されるので、注入(特に、静脈内または動脈内注入)薬として製剤化するのに適している。また、高分子化に用いたポリマー鎖と環状ニトロキシドラジカルの連結基にイミノ基が導入されたpH応答性のRNP(N−RNP)は、酸性条件下で壊れてTEMPOラジカルを放出するという性質を持っている(概念図を示す図1参照)。一方、炎症・癌・虚血などの組織では、pHが酸性に傾いており、仮に、RNPがこれらの組織にデリバリーされればその場で崩壊することによって治療効果を向上させると推測される。現に、本発明者等は、上記の特許文献でRNPを投与することにより、虚血・再灌流後の脳・腎臓の障害を効果的に抑制できることを明らかにした。
WO2009/133647A
Yoshitomi,et al.Biomacromolecules:10(3)596(2009) Yoshitomi,et al.,Bioconju.Chem.,20 1792(2009)
本発明者等は、仮に、高分子化抗酸化剤、特に上記の高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物が、潰瘍性大腸炎の疾患部位ないしはその周囲に効果的にデリバリーでき、しかも高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物が潰瘍性大腸炎に効能を示す可能性があるなら、当該化合物は潰瘍性大腸炎の治療または予防に使用できるかもしれないと推測した。そこで、当該技術分野で常用される各種賦形剤を用いて調製され当該高分子ミセル製剤や当該高分子ミセルそれ自体の各種投与経路を介する投与試験に供してみた。
その結果、当該高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物を単に水性媒体中で可溶化した溶液(高分子ミセルが形成したもの)を、デキストラン硫酸(DSS)を用いて潰瘍性大腸炎を誘発する潰瘍性大腸炎モデルマウスに経口投与したところ、疾患の発症を有意に抑制し、また、疾患を有意に治療できることが確認できた。このことは、上述したように、特定の高分子化抗酸化剤または高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物が酸性条件下で壊れてTEMPOラジカルを放出して虚血・再灌流後の脳・腎臓の障害に効能を発揮すると推察されていたことに照らせば、塩酸やペプシン等を含み、pHが1.0〜2.5くらいであるとされる強酸性胃液に曝されるにもかかわらず、所期の効果を示すことは全く驚くべきことである。
したがって、本発明によれば、高分子化抗酸化剤、特に特定の高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物を有効成分として含む、潰瘍性大腸炎を包含する潰瘍性消化管の炎症の予防または治療をするための経口用医薬製剤が提供される。
また、潰瘍性大腸炎を包含する潰瘍性消化管の予防または治療方法であって、処置の必要な患者に、有効量の特定の高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物を投与する工程を含んでなる、方法も提供される。
より具体的には、特定の高分子環状ニトロキシドラジカル化合物は、下記式Iで表される。
式中、Aは、非置換または置換C−C12アルコキシを表し、置換されている場合の
置換基は、ホルミル基または式RCH−の基を表し、ここで、R及びRは独立して、C−CアルコキシまたはRとRは一緒になって−OCHCHO−、−O(CHO−もしくは−O(CHO−を表し、
は、結合または連結基を表し、
は、連結基を表し、
Rは、Rの総数nの少なくとも50%が2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル−3−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリン−1−オキシル−3−イル及び2,4,4−トリメチル−1,3−オキサゾリジン−3−オキシル−2−イル、2,4,4−トリメチル−1,3−チアゾリジン−3−オキシル−2−イル及び2,4,4−トリメチル−イミダゾリンジン−3−オキシル−2−イルからなる群より選ばれる環状ニトロキシドラジカル化合物の残基を表し、存在する場合には、残りのRが水素原子、ハロゲン原子またはヒドロキシ基であり、
mは、15〜10,000の整数を表し、そして
nは、3〜3,000の整数を表する。
当該化合物は、好ましくは、水性媒体中で形成された高分子ミセルの形態で用いられる。
発明の詳細な説明
式Iで表される高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物は、上記の特許文献1に記載されているか、また、特許文献1に記載されている方法、必要があれば当該技術分野で周知の知見にもとづいて改変する方法により製造することができる。特許文献1は、ここに引用することによりその内容が本明細書の内容として組み入れられる。
式IのLにいう「連結基」は、当該化合物が水性媒体中で高分子ミセルを形成でき、本発明の目的に悪影響を及ぼさないものであれば、限定されるものでないが、一般的に、連結基の長さが原子16個までの二価の有機基である。このような有機基としては、限定されるものでないが、−(CHS−、−(CHS(CH−、−(CHNH−、−(CHNH(CH−、−(CHNHCO−、−(CHNHCO(CH−、−(CHNHC(=S)NH−、−(CHNHC(=S)NH(CH−、−(CHNHC(=O)NH−、−(CHNHC(=O)NH(CH−、−(CHOCO−、−(CHOCO(CH−、−(CHO−、−(CHO(CH−、−(CH−からなる群より選ばれ、ここでcは1〜5、好ましくは2の整数である基を挙げることができる。
一方、Lにいう「連結基」は、当該化合物が水性媒体中で高分子ミセルを形成でき、本発明の目的に悪影響を及ぼさないものであれば、限定されるものでないが、一般的に、連結基の長さが原子12個までの二価の有機基である。このような有機基としては、限定されるものでないが、−CH−NH−、−CH−NH−CH−、−CH−O−、−CH−O−CH−、−CHOCO−、−CHOCOCH−、−CH−S−、−CH−S−CH−、−CHNHCO−、−CHNHCOCH−、−CHCONH−、−CHCONHCH−、を挙げることができる(なお、結合の方向性は、左側がポリマー鎖に結合する)。
当該化合物は、式Iにおける、エチレングリコールの反復単位が10〜10,000、好ましくは、20〜5,000、より好ましくは20〜1,000、最も好ましくは40〜400のポリ(エチレングリコール)鎖セグメントとスチレンの反復単位が3〜3,000、好ましくは3〜500、より好ましくは5〜100、最も好ましくは10〜60の
ポリ(スチレン)鎖セグメントを含んでなり、かつ、該ポリ(スチレン)鎖セグメントにおけるスチレンの反復単位の少なくとも30%、より好ましくは50%、さらにより好ましくは80%、特に好ましくは100%がフェニル基の4位において上記Lの連結基を介して環状ニトロキシドラジカル化合物の残基が共有結合しており、存在するばあいには、該4位の残りがハロゲン原子、水素原子またはヒドロキシル基であり、そして該環状ニトロキシドラジカル化合物の残基が2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル−3−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリン−1−オキシル−3−イル及び2,4,4−トリメチル−1,3−オキサゾリジン−3−オキシル−2−イル、2,4,4−トリメチル−1,3−チアゾリジン−3−オキシル−2−イル及び2,4,4−トリメチル−イミダゾリンジン−3−オキシル−2−イルからなる群より選ばれる、化合物を挙げることができる。
より具体的には、式I
式中、Aは、非置換または置換C−C12アルコキシを表し、置換されている場合の置換基は、ホルミル基または式RCH−の基を表し、ここで、R及びRは独立して、C−CアルコキシまたはRとRは一緒になって−OCHCHO−、−O(CHO−もしくは−O(CHO−を表し、
は、原子化結合、−(CHS−、−CO(CHS−、からなる群より選ばれる連結基を表し、ここでcは1ないし5、好ましくは2の整数であり、
は、メチルイミノ、メチルイミノメチル、メチルオキシ、メチルオキシメチル、メチルエステル及びメチルエステルメチルからなる群より選ばれる連結基を表し、
Rは、Rの総数nの少なくとも50%、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは実質的に100%が、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル−3−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリン−1−オキシル−3−イル及び2,4,4−トリメチル−1,3−オキサゾリジン−3−オキシル−2−イル、2,4,4−トリメチル−1,3−チアゾリジン−3−オキシル−2−イル及び2,4,4−トリメチル−イミダゾリンジン−3−オキシル−2−イルからなる群より選ばれる環状ニトロキシドラジカル化合物の残基を表し、存在する場合には、残りのRが水素原子、ハロゲン原子またはヒドロキシ基であり、
mは、20〜1,000の整数を表し、そして
nは、5〜100の整数を表す、
で表される、該高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物を挙げることができる。該化合物の好ましいものとしては、一般式Iにおける、Lが原子化結合または−CHCH
S−であり、Lが−CH−NH−、−CH−NH−CH−、−CH−O−、−CH−O−CH−、−CHOCO−、−CHOCOCH−、好ましくは、−CH−O−、−CH−O−CH−、−CHOCO−、−CHOCOCH−であり、そして
Rの実質的に全てが、次式
式中、R’はメチル基である(なお、ここにいう、「実質的に全て」とは、「少なくとも98%」を包含する概念である。)、
のいずれかで表される化合物を挙げることができる。
本発明によると、投与経路は、経口に特定される。
本発明の経口用医薬製剤は、生理学的に許容され得る賦形剤、すなわち、治療的に不活性な物質またはキャリアを含むことができ、また、未高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物、脂溶性抗酸化剤(ビタミンE、β−カロテン、ユビキノン(コエンザイムQ)、ビリルビン、カテキン、レスベラトール、タンニン、エブセレン、アミノステロイド、ステロイド誘導体、プロブコール、ビタミンE類縁化合物、エイコサノイド代謝阻害薬、カテノロイド、レチノイド、ピペリン)、水溶性抗酸化剤(ビタミンE(アスコルビン酸)、グルタチオン、フラボノイド、尿酸)、抗酸化能を有するタンパク質(スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、ペルオキシダーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、セルロプラスミン、メタロチオネイン、チオレドキシン)、粒子類(白金コロイド、フラーレン、セレン化合物)等の様々な抗酸化剤を含むこともできる。
賦形剤としては、水、脱イオン水、純粋、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、ポリエチレングリコール(重合度5−10,000)溶、マンニトール、キシリトール、グルコース、乳糖等の1種以上をふくむことのでき、剤形としては、液剤、懸濁剤、エマルジョン、ゲル剤、分散剤、等であることができ、また、結合剤(例えば、糊化澱粉、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、)増量剤(例えば、乳糖および他の糖、結晶セルロース、ゼラチン、エチルセルロース)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ、トウモロコシ澱粉)等を含むことのでき、剤形としては、粉末剤、散剤、錠剤、カプセル剤、であることもできる。
このような剤形を調製する際には、式Iの高分子環状ニトロキシドラジカル化合物を予め水性媒体中で処理して高分子ミセルを形成し、必要があれば、凍結乾燥した後、上記の賦形剤、キャリア、または他の成分を含めることができる。高分子ミセルの形成、その凍結乾燥は当該技術分野で周知の方法により実施できる。
また上記した脂溶性抗酸化剤(ビタミンE、β−カロテン、ユビキノン(コエンザイムQ)、ビリルビン、カテキン、レスベラトール、タンニン、エブセレン、アミノステロイド、ステロイド誘導体、プロブコール、ビタミンE類縁化合物、エイコサノイド代謝阻害
薬、カテノロイド、レチノイド、ピペリン)、水溶性抗酸化剤(ビタミンE(アスコルビン酸)、グルタチオン、フラボノイド、尿酸)、抗酸化能を有するタンパク質(スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、ペルオキシダーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、セルロプラスミン、メタロチオネイン、チオレドキシン)、粒子類(白金コロイド、フラーレン、セレン化合物)等の様々な抗酸化剤はそのまま低分子化合物として、また、上記特許文献1に記載されているとおりに、高分子かして、本発明の医薬製剤に加えることにより、本発明の効果をさらに高めることもできる。
高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物の用量は、処置される患者の状態の重篤度および応答性に応じて変動するが、一般には、イン・ビトロ(in vitro)およびイン・ビボ(in vivo)動物モデルで有効であることが確認されるEC50に基づき決定し得る。一般に、体重1kg当り、0.01μgから1000gまで、好ましくは、0.1μgから1gまで、より好ましくは、10μgから100mgまでであることができる。投与スケジュールも、イン・ビトロおよびイン・ビボ動物モデル試験の結果を参照に決定できる。
式Iの化合物は、好ましくは、水性媒体(水、緩衝化された水、生理食塩水等)中で当該化合物から形成された高分子ミセル(以下、「ナノ粒子」ともいう)の状態で患者に経口投与されるのが好ましい。
このような式Iの化合物を含む経口用医薬製剤は、デキストラン硫酸(DSS)を用いて誘発される潰瘍性大腸炎モデルマウスに対し、かような大腸炎が誘発されるのを効果的に抑制(もしくは予防)し、かつ、誘発された大腸炎を効果的に治療できる。このような予防または治療効果は、未高分子化低分子環状ニトロキシドラジカルに比べて有意に高い。また、式Iの化合物を用いてその他の消化管の炎症性疾患も同様に予防または治療できる。このような疾患として、胃粘膜障害、虚血−再灌流惹起性小腸粘膜障害やNSAIDs障害、クローン病等を挙げることができる。
さらに、式Iの化合物は、水性媒体中で高分子ミセル化することにより、ポリエチレングリコール鎖で構成される外殻(シェル)に環状ニトロキシドラジカルが内包された形態にあると考えられるナノ粒子を形成し、経口投与により血中に吸収されず、消化管内のみを通過するので、環状ニトロキシドラジカルそれ自体が有する、例えば、血圧低下などの副作用・毒性を著しく軽減するか、または殆ど毒性を示さなくなる。したがって、当該化合物は、潰瘍性消化管の炎症の予防または治療のための経口投与用医薬製剤の有効成分となり得る。
低分子TEMPOと高分子化TEMPOの構造式及び後者の形成するナノ粒子の概念図である。 実験例1による(1)の下痢・下血・体重減少インデックス(Disease activity index;DAI)の結果(同時投与)を表すグラフ表示である。 実験例1による(2)のDSS誘発潰瘍性大腸炎モデルマウスの大腸の長さの結果(同時投与)を表すグラフ表示である。 実験例2による(1)下痢・下血・体重減少インデックスの結果(DSS障害惹起後、薬剤を投与)を表すグラフ表示である。 実験例2によるDSS誘発潰瘍性大腸炎モデルマウスの大腸の長さの結果(DSS障害惹起後、薬剤を投与)を表すグラフ表示である。
本発明のより具体的態様の説明
本願発明を具体的に説明するにあたり、説明を簡潔にするため、式Iで表される化合物のうち、Aがエトキシ基であり、Lが−CHCHS−であり、Lが−CHNH−であり、Rが2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イルであり、mが平均44であり、そしてnが17であるもの(エトキシ−PEG−b−PCMS−N−TEMPOといい、当該化合物より形成されるナノ粒子をN−RNPと略記する)、ならびにAがエトキシ基であり、Lが−CHCHS−であり、Lが−CHO−であり、Rが2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イルであり、mが平均44であり、そしてnが17であるもの(エトキシ−PEG−b−PCMS−O−TEMPOといい、当該化合物より形成されるナノ粒子をO−RNPと略記する)を用いるが、本発明をこれらに限定することを意図するものでない。
また、以下の実験例では、上記の高分子化TEMPOに加えて、低分子Amino−TEMPO(アミノ基を有するTEMPO誘導体)及びHydroxy−TEMPO(ヒドロキシル基を有するTEMPO誘導体)を比較化合物として用いた。
実験例1:DSSが誘発する潰瘍性大腸炎に対する環状ニトロキシドラジカル含有ナノ粒子の効果(DSSと有効成分の同時投与)
5週齢で購入したICR雄マウス(SPF)を3日間予備飼育し、無作為に6匹/群の6群に分けた後、一群目を対照(water)群、ほかの群をDSS投与群としました。DSS(分子量5,000、和光純薬工業)を水道水に5%濃度に溶解させ、飲料水として7日間、自由摂取させた。また、エトキシ−PEG−b−PCMS−O−TEMPOをジメチルホルムアミド溶液に溶解し、分画分子量3,500の透析膜に入れ、透析法により調製されたO−RNP(5mg/mL)、エトキシ−PEG−b−PCMS−N−TEMPOをジメチルホルムアミド溶液に溶解し、分画分子量3,500の透析膜に入れ、透析法により調製されたN−RNP(10mg/mL)、hydroxyl−TEMPO(1.3mg/mL)、amino−TEMPO(1.3mg/mL)を7日間毎日、同様のTEMPO濃度で、1mLずつ投与した。なお、添付する図面の図2〜5では、前記TEMPOをTMEPOと表示している。
なお、実験系は次の通りである。
1)Water群:水道水の7日間投与のみ。
2)DSS投与群:7日間DSSを自由摂取
3)DSS+O−RNP群:7日間DSSを自由摂取させつつ、1日1回O−RNP(1
mL)を投与した。
4)DSS+N−RNP群:7日間DSSを自由摂取させつつ、1日1回N−RNP(1
mL)を投与した。
5)DSS+hydroxyl−TEMPO群:DSS+N−RNP群:7日間DSSを
自由摂取させつつ、1日1回hydroxy−TEMPO(1mL)を投与した。
6)DSS+amino−TEMPO群:DSS+N−RNP群:7日間DSSを自由摂
取させつつ、1日1回amino−TEMPO(1mL)を投与した。
投与開始後7日間、表1に示す基準に従い下痢、血便の状態を観察しスコア化した。また最終日(7日後)にマウスを頚椎脱臼で安楽死させ、大腸組織を摘出後、その全長を測定しました。下痢スコア、血便スコアおよび大腸の長さは群毎の平均値±標準誤差を算出した。
実験結果
(1)図2に下痢・下血・体重減少インデックスの結果を示す。このスコア、下痢スコア、血便スコアと体重減少スコアの総計から算出した。下記の結果が示すとおり、ラジカル含有ナノ粒子を投与することにより、症状の軽減示すことが明らかとなった。
(2)図3に大腸の長さ測定の結果を示す。一般的に、潰瘍性大腸炎になると大腸の長さが著しく短くなることが知られている。低分子のTEMPO誘導体とRNPともに、治療効果を示すが、特にO−RNPを投与することにより、潰瘍性大腸炎障害をより強く抑制したことが明らかになった。
実験例2:DSSが誘発する潰瘍性大腸炎に対するラジカル含有ナノ粒子の効果(DSS障害を惹起した後、RNP(薬剤)を投与)
5週齢で購入したICR雄マウス(SPF)を3日間予備飼育し、無作為に6匹/群の6群に分けた後、一群目を対照(water)群、ほかの群をDSS投与群とした。DSS(分子量5,000、和光純薬工業)を水道水に5%濃度に溶解させ、飲料水として7日間、自由摂取させた。その後、DSSの投与をストップし、水道水を自由接取させながら、3日間、O−RNP(5mg/mL)、N−RNP(10mg/mL)、hydroxyl−TEMPO(1.3mg/mL)、amino−TEMPO(1.3mg/mL)を、同様のTEMPO濃度で、0.5mLずつ、1日2回経口投与した。
なお、実験系は次の通りである。
1)Water群:水道水の10日間自由摂取のみ。
2)DSS投与群:DSS水溶液を7日間自由摂取した後、3日間水道水を自由接取。
3)DSS+O−RNP群:7日間DSSを自由摂取させた後、3日間水道水を自由接取
するとともに、1日2回O−RNP(0.5mL)を投与した。
4)DSS+N−RNP群:7日間DSSを自由摂取させた後、3日間水道水を自由接取
するとともに、1日2回N−RNP(0.5mL)を投与した。
5)DSS+hydroxyl−TEMPO群:DSS+N−RNP群:7日間DSSを
自由摂取させた後、3日間水道水を自由接取するとともに、1日2回hydroxy
−TEMPO(0.5mL)を投与した。
6)DSS+amino−TEMPO群:DSS+N−RNP群:DSS+N−RNP群
:7日間DSSを自由摂取させた後、3日間水道水を自由接取するとともに、1日2
回amino−TEMPO(0.5mL)を投与した。
投与開始後10日間、表1示す基準に従い下痢、血便の状態を観察しスコア化した。ま
た、最終日(10日後)にマウスを頚椎脱臼で安楽死させ、大腸組織を摘出後、その全長を測定した。
下痢スコア、血便スコアおよび大腸の長さは群毎の平均値±標準誤差を算出した。
実験結果
(1)図4に下痢スコア、血便スコアと体重減少スコアの総計から算出した結果を示す。図4の結果が示すとおり、DSS障害を惹起してからのラジカル含有ナノ粒子投与によっても、症状の軽減示すことが明らかとなった。
(2)大腸の長さ測定の実験結果を図5に示す。図5からも、潰瘍性大腸炎になった後のラジカル含有ナノ粒子投与によっても、著しく高い治療効果が得られることが明らかとなった。

Claims (4)

  1. 下記式Iで表される高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物を有効成分として含んでなる、潰瘍性消化管の炎症の予防または治療をするための経口用医薬製剤。
    式中、Aは、非置換または置換C1−C12アルコキシを表し、置換されている場合の置換基は、ホルミル基または式R12CH−の基を表し、ここで、R1及びR2は独立して、C1−C4アルコキシまたはR1とR2は一緒になって−OCH2CH2O−もしくは−O(CH23O−もしくは−O(CH24O−を表し、
    1は、−(CH2cS−と−(CH2cNHCO−と−(CH2cNHC(=S)NH−と−(CH2cNHC(=O)NH−と−(CH2cOCO−と−CO(CH2cS−と−(CH2cO−と−(CH2c−とからなる群より選ばれ、ここでcは1〜5の整数である、連結基を表し、
    2は、−CH2−O−と−CH2−O−CH2−と−CH2−S−と−CH2−S−CH2−とからなる群より選ばれる連結基を表し、
    Rは、Rの総数nの少なくとも50%が2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イルと2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル−3−イルと2,2,5,5−テトラメチルピロリン−1−オキシル−3−イルと2,4,4−トリメチル−1,3−オキサゾリジン−3−オキシル−2−イルと2,4,4−トリメチル−1,3−チアゾリジン−3−オキシル−2−イルと2,4,4−トリメチル−イミダゾリンジン−3−オキシル−2−イルとからなる群より選ばれる環状ニトロキシドラジカル化合物の残基を表し、存在する場合には、残りのRが水素原子またはハロゲン原子またはヒドロキシ基であり、
    mは、15〜10,000の整数を表し、そして
    nは、3〜3,000の整数を表し、かつ、
    前記式Iで表される化合物が高分子ミセルの形態にあるナノ粒子である。
  2. 潰瘍性消化管の炎症が潰瘍性大腸炎である、請求項1記載の経口用医薬製剤。
  3. 1の連結基が−(CH2c−S−と−CO(CH2cS−と−(CH2c−とからなる群より選ばれ、
    2の連結基が−CH2−O−である、請求項1または2記載の経口用医薬製剤。
  4. Rが、次式
    で表され、R’がメチル基を表す、請求項1〜3のいずれかに記載の経口用医薬製剤。
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