JP5849941B2 - 金属被膜の成膜装置および成膜方法 - Google Patents

金属被膜の成膜装置および成膜方法 Download PDF

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Description

本発明は金属被膜の成膜装置および成膜方法に係り、特に、基材の表面に均一に薄い金属被膜を成膜することができる金属被膜の成膜装置および成膜方法に関する。
従来から、電子回路基材などを製造する際には、金属回路パターンを形成すべく、基材の表面に金属被膜が成膜される。たとえば、このような金属被膜の成膜技術として、Siなどの半導体基材の表面に、無電解めっき処理などのめっき処理により金属被膜を成膜したり(例えば、特許文献1参照)、スパッタリングなどのPVD法により金属被膜を成膜したりする成膜技術が提案されている。
しかしながら、無電解めっき処理などのめっき処理を行なった場合には、めっき処理後の水洗が必要であり、水洗された廃液を処理する必要があった。また、スパッタリングなどのPVD法により基材表面に成膜を行った場合には、被覆された金属被膜に内部応力が生じるため、膜厚を厚膜化するには制限があり、特に、スパッタリングの場合には、高真空化でしか、成膜できない場合があった。
このような点を鑑みて、例えば、円柱状に形成した固体電解質の周囲に、絶縁材で形成した握り部を設けた陽極部を備えており、陽極部の固体電解質の一方側の先端を尖らせてノズル部を形成し、その他方側に陽極部材を接触させ、陽極部材と陰極との間に電圧を印加することにより、固体電解質内の金属イオンを析出させて、基板の表面に金属被膜を成膜する成膜装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
この成膜装置によれば、基板にマスキングをすることなく、所望の箇所に陽極部のノズル部先端を基板に押し当てることにより、基板の所望の部分に、金属被膜を成膜することができる。
特開平05−079086号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術を用いた場合には、陽極部のノズル部を基板の表面に押し当ててメッキとなる金属イオンから金属を析出させているが、この場合、押し当てる速度を一定にしたとしても、金属被膜の膜厚を一定にすることは難しい。特に、広範囲のメッキパターンの場合には、金属被膜の膜厚にばらつきが生じやすくなる。
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、たとえ広範囲であっても、マスキングなしに均一な厚みの金属被膜を成膜することができる金属被膜の成膜装置およびその成膜方法を提供することにある。
このような点を鑑みて、本発明に係る金属被膜の成膜装置は、陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極の間において前記陽極に接触するように配置された固体電解質膜と、前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加する電源部と、を少なくとも備えており、前記陽極と前記陰極との間に前記電源部で電圧を印加して、前記固体電解質膜の内部に含有された金属イオンから金属を前記陰極側に析出させることにより、前記金属からなる金属被膜を成膜する金属被膜の成膜装置であって、前記陽極は、前記金属イオンを含む溶液が内部に透過し、かつ前記固体電解質膜に該金属イオンを供給するように空孔が形成された多孔質体からなり、前記固体電解質膜の厚さは、100μm〜200μmの範囲にあることを特徴とする。
本発明によれば、成膜時に、陽極に固体電解質膜が配置された状態で、固体電解質膜を基材に接触させると共に陰極を基材に接触させて電気的に導通する。この状態で、陽極と陰極との間に電源部により電圧を印加することにより、該固体電解質膜の内部に含有された金属イオンを前記陰極側に析出することができる。この結果、金属イオンの金属からなる金属被膜を基材の表面に成膜することができる。
ここで、陽極は多孔質体であり、この多孔質体からなる陽極は、上述した如き空孔が形成されているので、金属イオンを含む溶液を内部に透過させることができ、透過した溶液を、前記固体電解質膜に供給することができる。これにより、成膜時において、多孔質体である陽極を介して、金属イオンを含む溶液を随時供給することができる。供給された金属イオンを含む溶液は、陽極内部を透過して、陽極に隣接する固体電解質膜に接触し、固体電解質膜内に金属イオンが含浸される。
このような結果、固体電解質膜内の金属イオンは、成膜時に析出すると共に、陽極側から供給されることになる。よって、析出させることができる金属量に制限を受けることがなく、所望の膜厚の金属被膜を、複数の基材の表面に連続して成膜することができる。
特に、本発明では、固体電解質膜の厚さを100μm〜200μmの範囲にすることにより、より均一な金属被膜を形成することができる。固体電解質膜の厚さが、100μm未満の場合には、陽極である多孔質体の空孔から供給される金属イオンが、固体電解質膜に均一に拡散しないため、固体電解質膜内部の面内方向に金属イオンの濃度分布が発生する。これにより、固体電解質膜内のイオン濃度の高い部分と低い部分で、金属被膜の成膜速度が異なり、金属被膜の表面に凹凸が発生する(膜厚のばらつきが大きくなる)。一方、固体電解質膜の厚さが、200μmを越えた場合には、固体電解質膜の抵抗増加に伴い、金属イオンから析出した金属が異常な粒成長をするため、この場合も、金属被膜の膜厚にばらつきが生じてしまう。
より好ましい態様としては、前記多孔質体は、前記固体電解質膜に接触する接触面積率が15%〜35%の範囲となるように多数の空孔が形成されている。この態様によれば、接触面積率をこのような範囲にすることにより、より均一な膜厚の金属被膜を成膜することができる。
ここで、陽極である多孔質体の接触面積率が15%未満の場合には、多孔質体の接触面積率が小さいため、これらの接触部分において、固体電解質膜に局所的に高い面圧が作用するため、固体電解質膜が破損するおそれがある。固体電解質膜が破損した場合には、陽極と陰極との間に電圧を印加した際に、これらが短絡し、金属被膜を成膜することができないおそれがある。一方、接触面積率が35%を超えた場合には、上述した固体電解質膜の膜厚の範囲において、固体電解質膜内に金属イオンが均一に拡散せず、より均一な膜厚の金属被膜を成膜することができないことがある。
本発明として、金属被膜を成膜するに好適な成膜方法をも開示する。本発明に係る成膜方法は、陽極と陰極の間において前記陽極に接触するように固体電解質膜を配置し、該固体電解質膜を基材に接触させると共に前記陰極を前記基材に導通させ、前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加し、前記固体電解質膜の内部に含有された金属イオンから金属を前記陰極側に析出することにより、前記金属からなる金属被膜を前記基材の表面に成膜する金属被膜の成膜方法であって、前記陽極として、前記金属イオンを含む溶液が透過し、かつ前記固体電解質膜に該金属イオンを供給するように空孔が形成された多孔質体を用い、前記固体電解質膜の厚さが、100μm〜200μmの範囲にある固体電解質膜を用いることを特徴とする。
本発明によれば、陽極に接触するように固体電解質膜を配置し、前記固体電解質膜を前記基材に接触させると共に陰極を前記基材に導通させる。この状態で、陽極と陰極との間に、電圧を印加し、固体電解質膜の内部に含有された金属イオンを前記陰極側に析出することにより、金属被膜を前記基材の表面に成膜することができる。
ここで、陽極に、上述した空孔が形成された多孔質体を用いることにより、金属イオンを含む溶液をその内部に透過させることができ、透過した溶液を、固体電解質膜に供給することができる。これにより、成膜時において、多孔質体である陽極を介して、金属イオンを含む溶液を随時供給することができる。供給された金属イオンを含む溶液は、陽極内部を透過して、陽極に隣接する固体電解質膜に接触し、固体電解質膜内に金属イオンが含浸される。このような結果、固体電解質膜内の金属イオンは、成膜時に析出すると共に、陽極側から供給されることになる。よって、析出させることができる金属量に制限を受けることがなく、所望の膜厚の金属被膜を、複数の基材の表面に連続して成膜することができる。
特に、本発明では、固体電解質膜の厚さが100μm〜200μmの範囲となる固体電解質膜を用いることにより、より均一な金属被膜を形成することができる。固体電解質膜の厚さが、100μm未満の場合には、上述した如く、固体電解質膜内の金属イオンの濃度の差により、金属被膜の成膜速度が異なり、金属被膜の膜厚のばらつきが大きくなる。一方、固体電解質膜の厚さが、200μmを越えた場合には、析出した金属が異常な粒成長をするため、この場合も、金属被膜の膜厚にばらつきが生じてしまう。
より好ましい態様としては、前記多孔質体に、前記固体電解質膜に接触する接触面積率が15%〜35%の範囲となるように多数の空孔が形成された多孔質体を用いる。この態様によれば、接触面積率をこのような範囲にすることにより、より均一な膜厚の金属被膜を成膜することができる。接触面積率が15%未満の場合には、上述した如く、固体電解質膜および多孔質体が破損するおそれがあり、金属被膜を成膜することができないおそれがある。一方、接触面積率が35%を超えた場合には、固体電解質膜内に金属イオンが均一に拡散せず、より均一な膜厚の金属被膜を成膜することができないことがある。
本発明によれば、たとえ広範囲であっても、マスキングなしに均一な厚みの金属被膜を成膜することができる。
本発明の実施形態に係る金属被膜の成膜装置の模式的概念図。 図1に示す金属被膜の成膜装置による成膜方法を説明するための図であり、(a)は、成膜装置の成膜前状態を説明するための模式的断面図であり、(b)は、成膜装置の成膜時の状態を説明するための模式的断面図。 固体電解質膜の膜厚が本発明の範囲を満たさない場合の成膜装置の模式的断面図。 実施例1〜4および比較例1、2に係る金属被膜の膜厚のばらつきの測定を説明するための図であり、(a)は、膜厚の測定箇所を説明するための図、(b)は、膜厚のばらつきの算出方法を説明するための図。 実施例1〜4および比較例1、2にかかる固体電解質膜の膜厚と、金属被膜のばらつきの関係を示したグラフ。 実施例5、6および比較例3、4にかかる固体電解質膜の膜厚と、金属被膜のばらつきの関係を示したグラフ。
以下に本発明の実施形態に係る金属被膜の成膜方法を好適に実施することができる成膜装置について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る金属被膜の成膜装置の模式的概念図である。図2は、図1に示す金属被膜の成膜装置による成膜方法を説明するための図であり、(a)は、成膜装置の成膜前状態を説明するための模式的断面図であり、(b)は、成膜装置の成膜時の状態を説明するための模式的断面図である。
図1に示すように、本発明に係る成膜装置1Aは、金属イオンから金属を析出させて、該析出した金属からなる金属被膜を基材Bの表面に成膜する装置である。ここで、基材Bは、アルミニウムなどの金属材料からなる基材、または樹脂またはシリコン基材の処理表面に金属下地層が形成されている基材を用いる。
成膜装置1Aは、金属製の陽極11と、金属製の陰極12と、陽極11の表面に配置された固体電解質膜13と、陽極11と陰極12との間に電圧を印加する電源部14と、を少なくとも備えている。
さらに、陽極11の上面には、金属イオンを含む溶液(以下、金属イオン溶液という)Lを陽極11に供給する、金属イオン供給部15が配置されている。金属イオン供給部15の底部には開口が形成され、その内部空間に、陽極11が内壁15bと嵌合した状態で収容可能されている。
金属イオン供給部15の一方側には、金属イオン溶液Lが収納された溶液タンク17が、供給管17aを介して接続されており、その他方側には、使用後の廃液を回収する廃液タンク18が、廃液管18aを介して接続されている。
このように構成することにより、溶液タンク17に収納された金属イオン溶液Lを、供給管17aを介して金属イオン供給部15の内部に供給し、使用後の廃液を廃液管18aを介して廃液タンク18に送ることができる。
また、金属イオン供給部15の内部空間に陽極11が内壁15bと嵌合した状態で収容されているので、内部空間の上方から供給された金属イオン溶液Lが、陽極11の周縁を回り込むことなく、上方から陽極11(後述する多孔質体)の内部に浸透する(供給する)ことができる。
ここで、陽極11は、電源部14に電気的に接続されている。陽極11は、金属イオン溶液Lが透過し、かつ固体電解質膜に金属イオンを供給するように、多数の空孔が形成された多孔質体からなる。このような多孔質体としては、(1)金属イオン溶液Lに対して耐食性を有し、(2)陽極として作用可能な導電率を有し、(3)金属イオン溶液Lを透過することができ、(4)後述する加圧部16により加圧することができることが条件であり、たとえば、発泡チタンなど、めっき金属イオンよりもイオン化傾向が高く、開気孔の連続気泡体からなる発泡金属体などを挙げることができる。
ここで陽極11となる多孔質体は、上述した条件を満たし、さらに、後述する固体電解質膜13に接触する接触面積率が15%〜35%の範囲となるように多数の空孔が形成されている。このような接触面積率を得るには、多孔質体の気孔率は60〜90体積%の範囲のものが好ましく、さらに、孔径は膜厚の10〜60%程度、厚さ0.1〜2mm程度のものが好ましい。
このような金属製の多孔質体は、たとえば、金属粉末と樹脂粉末を混合して成形し、生成された成形体を熱処理で樹脂を消失させることにより得ることができる。ここで、多孔質体の接触面積率は、金属粉末と樹脂粉末との配合比を変更することにより、調整することができる。
一方、陰極12は、電源部14のマイナス極に接続されている。陰極12は、金属イオン溶液Lに対して耐食性を有し、かつ陰極12として作用可能な導電性を有するものであればよい。そして、基材Bを載置することができる形状であれば、その大きさおよび形状は特に限定されるものではない。
さらに、金属イオン供給部15の蓋部15aには、加圧部16が接続されている。加圧部16は、陽極11を基材Bに向かって移動させることにより、固体電解質膜13を基材Bの成膜領域Eに加圧するものである。例えば、加圧部16としては、油圧式または空気式のシリンダなどを挙げることができる。
また、成膜装置1Aは、基材Bを固定し、陽極11および陰極12に対して基材Bのアライメントを調整する基台21と、基台を介して基材Bの温度調整を行う温度制御部を備えている。本実施形態では、基台21の上に載置された基材Bを搬送する搬送装置40が設けられている。
金属イオン溶液Lは、たとえば、銅、ニッケル、銀などのイオンを含む水溶液などを挙げることができる。たとえば、銅イオンの場合には、硫酸銅、ピロリン酸銅などを含む溶液を挙げることができる。そして、固体電解質膜13は、固体電解質からなる膜、フィルム等のものである。
固体電解質膜13は、上述した金属イオン溶液Lに接触させることにより、金属イオンを内部に含浸することができ、電圧を印加したときに陰極側において金属イオン由来の金属が析出するとこができるのであれば、特に限定されるものではない。固体電解質膜13の材質としては、たとえばデュポン社製のナフィオン(登録商標)などのフッ素系樹脂、炭化水素系樹脂、ポリイミド、旭硝子社製のセレミオン(CMV、CMD,CMFシリーズ)などの陽イオン交換機能を有した膜を挙げることができる。本実施形態では、これらの材料にかかわらず、固体電解質膜13の厚さは、100μm〜200μmの範囲となっている。これにより、後述するように、より均一な金属被膜Fを形成することができる。
以下に本実施形態にかかる成膜方法について説明する。まず、基台21に基材Bを配置し、陽極11および陰極12に対して基材Bのアライメントを調整し、温度制御部により、基材Bの温度調整を行う。次に、多孔質体からなる陽極11の表面に固体電解質膜13を配置し、陽極11の一方側下面を固体電解質膜13に接触させる。次に、図2(b)に示すように、加圧部16で、この状態の固体電解質膜13を基材Bに接触させると共に、陰極12を基材Bに導通させる。さらに、加圧部16を用いて、陽極11を基材Bに向かって移動させることにより、固体電解質膜13を基材Bの成膜領域Eに加圧する。これにより、陽極11を介して固体電解質膜13を加圧することができるので、固体電解質膜13を成膜領域Eの基材Bの表面に均一に倣わせることができる。
次に、電源部14を用いて、陽極11と陰極12との間に電圧を印加し、固体電解質膜13の内部に含有された金属イオンを陰極側に析出させる。この際、陽極11に、金属イオン溶液Lを供給しながら、金属被膜Fの成膜を行う。
このような結果、多孔質体からなる陽極11を用いることにより、金属イオン溶液Lをその内部に透過させることができ、透過した溶液Lを、多数の空孔からこれに面した固体電解質膜13に供給することができる。これにより、成膜時において、多孔質体である陽極11を介して、金属イオン溶液Lを随時供給することができる。供給された金属イオン溶液Lは、陽極11内部を透過して、陽極11に隣接する固体電解質膜13に接触し、固体電解質膜13内に金属イオンが含浸される。
そして、陽極11と陰極12との間に電圧を印加することにより、陽極側から供給された金属イオンは、固体電解質膜13内の金属イオンは陽極11側から陰極12側に移動し、固体電解質膜13の内部に含有された金属イオンが陰極側に析出される。これにより、金属被膜Fを基材Bの表面に成膜することができる。
このように、多孔質体である陽極11を介して、金属イオン溶液Lを随時供給することができるので、析出させることができる金属量に制限を受けることがなく、所望の膜厚の金属被膜Fを、複数の基材Bの表面に成膜することができる。さらに、成膜後の基材Bを搬送装置40により搬送し、未成膜の基材と入れ替え、上述した作業を繰り返すことにより、複数の基材の表面に連続して成膜することができる。
ここで、本実施形態では、固体電解質膜13の厚さを、100μm〜200μmの範囲に設定したことにより、均一な金属被膜Fを形成することができる。すなわち、固体電解質膜13の厚さが、100μm未満の場合には、陽極11である多孔質体の空孔から供給される金属イオンが、固体電解質膜13内に均一に拡散しないため、固体電解質膜13内部の面内方向に金属イオンの濃度分布が発生する。これにより、固体電解質膜13内のイオン濃度の高い部分と低い部分で、金属被膜Fの成膜速度が異なり、図3に示すように、金属被膜Fの表面に凹凸が発生する(膜厚のばらつきが大きくなる)。
一方、固体電解質膜13の厚さが、200μmを越えた場合には、固体電解質膜の抵抗増加に伴い、金属イオンから析出した金属が異常な粒成長をするため、この場合も、金属被膜の膜厚にばらつきが生じてしまう。
さらに、陽極11である多孔質体が、固体電解質膜13に接触する接触面積率が15%〜35%の範囲となるように多数の空孔が形成されているので、より均一な膜厚の金属被膜Fを成膜することができる。固体電解質膜13に対する多孔質体(陽極11)の接触面積率が15%未満の場合には、多孔質体の接触面積率が小さいため、固体電解質膜13と多孔質体の接触部分に局所的に高い面圧が作用し、固体電解質膜13が破損するおそれがある。固体電解質膜13が破損した場合には、陽極11と陰極12との間に電圧を印加した際に、これらが短絡し、金属被膜を成膜することができないおそれがある。一方、接触面積率が35%を超えた場合には、上述した固体電解質膜の膜厚の範囲において、固体電解質膜13内に金属イオンが均一に拡散せず、より均一な膜厚の金属被膜を成膜することができないことがある。
本発明を以下の実施例により説明する。
[実施例1]
上述した図1に示す装置を用いて、表面に成膜する基板として、純アルミニウム基板(50mm×50mm×厚さ1mm)を準備し、その表面のうち矩形状の成膜領域に、金属被膜として銅被膜を成膜した。本実施形態では、陽極に、気孔率65体積%、接触面積率30%、10mm×10mm×1mmの発泡チタンからなる多孔質体(三菱マテリアル製)を用い、膜厚127μmの電解質膜(デュポン社製:ナフィオンN117)を用いた。イオン溶液には、1mol/Lの硫酸銅層溶液を準備し、電流密度5mA/cm、処理時間60分、陽極より上部0.1MPaで加圧しながら、成膜を行った。なお、接触面積率は、後述する方法により測定したものである。
[実施例2]
実施例1と同じようにして、基板の表面に銅被膜と成膜した。実施例1と相違する点は、膜厚183μmの電解質膜を用いた点である。
[実施例3および4]
実施例1と同じようにして、基板の表面に銅被膜と成膜した。実施例3が、実施例1と相違する点は、陽極に、気孔率85体積%、接触面積率20%の多孔質体を用いた点である。実施例4が、実施例1と相違する点は、陽極に、気孔率85体積%、接触面積率20%の多孔質体を用いた点と、膜厚183μmの電解質膜を用いた点である。
[比較例1および2]
実施例1と同じようにして、基板の表面に銅被膜と成膜した。比較例1が、実施例1と相違する点は、膜厚50μmの電解質膜を用いた点であり、比較例2が、実施例1と相違する点は、膜厚254μmの電解質膜を用いた点である。
<膜厚ばらつきの測定>
実施例1〜4および比較例1、2に係る金属被膜(銅被膜)の膜厚のばらつきを測定した。具体的には、図4(a)に示すように、任意の6箇所において(具体的にはA〜Fの破線のラインに沿って)、接触式粗さ計を用いて銅被膜の表面プロフィールを測定し、各箇所において、図4(b)に示すように、最大粗さを最大膜厚、最小粗さを最小膜厚、算術平均粗さを平均膜厚として、下記の式により銅被膜の膜厚のばらつきを算出した。
膜厚のばらつき(%)={(最大膜厚−平均膜厚)+(平均膜厚−最小膜厚)}÷2/平均膜厚
この結果を、表1および図5に示す。図5は、実施例1〜4および比較例1、2にかかる固体電解質膜の膜厚と、銅被膜のばらつきの関係を示したグラフである。なお、膜厚のばらつきが30%以下の銅被膜が良好とした。
Figure 0005849941
<結果1>
実施例1〜4の膜厚のばらつきは、比較例1のものに比べて小さかった。これは、実施例1〜4の固定電解質膜は、比較例1のものよりも、膜厚が十分に確保されているため、多孔質体の空孔から供給された銅イオンが、基板側に到達するまでに面内方向に均一に拡散したからであると考えられる。すなわち、比較例1の如く、固体電解質膜の厚さが100μm未満であるのため、その膜厚が薄すぎて、陽極である多孔質体の空孔から供給される銅イオンが、固体電解質膜内に面内方向に均一に拡散する前に、固体電解質膜の基板側の表面に到達するこれにより、固体電解質膜内の銅イオン濃度の高い部分と低い部分で、銅被膜の成膜速度が異なり、銅被膜の表面に凹凸が発生する(膜厚のばらつきが大きくなる)。
さらに、実施例1〜4の膜厚のばらつきは、比較例2のものに比べて小さかった。これは、比較例2の如く、固体電解質膜の厚さが200μmを越えた場合には、固体電解質膜の抵抗増加に伴い、銅イオンから析出した銅が異常な粒成長をするからであると考えられる。
[実施例5および6]
実施例1と同じようにして、基板の表面に銅被膜と成膜した。実施例5が、実施例1と相違する点は、膜厚183μmの電解質膜を用いた点である(なお陽極の多孔質体は気孔率65体積%、接触面積率30%である)。実施例6が、実施例1と相違する点は、陽極に、気孔率85体積%、接触面積率20%の多孔質体を用いた点と、膜厚183μmの電解質膜を用いた点である。なお、接触面積率は、多孔質体(陽極)の接触表面を光学顕微鏡で撮影したのち、接触部と非接触部分の面積を2値化して、以下の式により算出した。
接触面積率(%)=(接触部の面積)/(全体の面積)×100
[比較例3および4]
実施例1と同じようにして、基板の表面に銅被膜と成膜した。比較例3が、実施例1と相違する点は、陽極に、気孔率90体積%、接触面積率10%の多孔質体を用いた点と、膜厚183μmの電解質膜を用いた点である。比較例4が、実施例1と相違する点は、陽極に、気孔率55体積%、接触面積率38%の多孔質体を用いた点と、膜厚183μmの電解質膜を用いた点である。接触面積率は、実施例5および6と同様の方法で算出した。
実施例5および6および比較例3および4に係る金属被膜(銅被膜)の膜厚のばらつきを、実施例1と同様にして測定した。この結果を、表2および図6に示す。図6は実施例5、6および比較例3、4にかかる固体電解質膜の膜厚と、銅被膜のばらつきの関係を示したグラフである。
Figure 0005849941
<結果2>
実施例5および6の銅被膜の膜厚のばらつきは、比較例3のものに比べて小さかった。これは、比較例3の如く、接触面積率が35%を超えた場合には、接触面積率が大きすぎるため、各気孔から供給される銅イオンが、基板側の表面に到達するまでに、固体電解質膜の面内方向において均一に拡散しなかったことによると考えられる。
さらに、比較例4の場合には、銅被膜が析出しなかった。これは、比較例4の如く、陽極である多孔質体の接触面積率が10%の場合には、多孔質体の接触面積率が小さいため、これらの接触部分において、固体電解質膜に局所的に高い面圧が作用するため、固体電解質膜が破損したことによると考えられる。この結果、陽極と陰極との間に電圧を印加した際に、これらが短絡し、銅被膜を成膜することができなかったと考えられる。そして、発明者らの経験から接触面積率が15%以上であれば、このような現象は起こらないことがわかった。
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
1A:成膜装置、11:陽極、12:陰極、13:固体電解質膜、14:電源部、15:金属イオン供給部、15a:蓋部、15b:内壁、16:加圧部、17:溶液タンク、17a:供給管、18:廃液タンク、18a:廃液管、B:基材、E:成膜領域、F:金属被膜、L:金属イオン溶液

Claims (4)

  1. 陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極の間において前記陽極に接触するように配置された固体電解質膜と、前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加する電源部と、を少なくとも備えており、前記陽極と前記陰極との間に前記電源部で電圧を印加して、前記固体電解質膜の内部に含有された金属イオンから金属を前記陰極側に析出させることにより、前記金属からなる金属被膜を成膜する金属被膜の成膜装置であって、
    前記陽極は、前記金属イオンを含む溶液が内部に透過し、かつ前記固体電解質膜に該金属イオンを供給するように空孔が形成された多孔質体からなり、
    前記固体電解質膜の厚さは、100μm〜200μmの範囲にあることを特徴とする金属被膜の成膜装置。
  2. 前記多孔質体は、前記固体電解質膜に接触する接触面積率が15%〜35%の範囲となるように多数の空孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の金属被膜の成膜装置。
  3. 陽極と陰極の間において前記陽極に接触するように固体電解質膜を配置し、該固体電解質膜を基材に接触させると共に、前記陰極を前記基材に導通させ、前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加し、前記固体電解質膜の内部に含有された金属イオンから金属を前記陰極側に析出することにより、前記金属からなる金属被膜を前記基材の表面に成膜する金属被膜の成膜方法であって、
    前記陽極として、前記金属イオンを含む溶液が透過し、かつ前記固体電解質膜に該金属イオンを供給するように空孔が形成された多孔質体を用い、
    前記固体電解質膜の厚さが、100μm〜200μmの範囲にある固体電解質膜を用いることを特徴とする金属被膜の成膜方法。
  4. 前記多孔質体に、前記固体電解質膜に接触する接触面積率が15%〜35%の範囲となるように多数の空孔が形成された多孔質体を用いることを特徴とする請求項3に記載の金属被膜の成膜方法。
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