JP5849624B2 - トロイダル型無段変速機 - Google Patents

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Description

この発明は、自動車用の変速装置として、或いは、ポンプ等の各種産業機械の運転速度を調節する為の変速装置として利用するトロイダル型無段変速機の改良に関する。具体的には、トロイダル型無段変速機を構成するスラスト玉軸受を潤滑する事で、高温になった潤滑油(トラクションオイル)が、パワーローラの周面と、入力ディスク及び出力ディスクの内側面との転がり接触部(トラクション部)に触れにくくできる構造を実現するものである。
図7は、特許文献1に記載されており、自動車用自動変速装置として使用されるトロイダル型無段変速機の1例を示している。このトロイダル型無段変速機は、ダブルキャビティ型と呼ばれるもので、互いに対向する軸方向側面をトロイド曲面とした1対の入力ディスク1、1と、同じく出力ディスク2、2との間に、複数個のパワーローラ3、3を挟持して成る。運転時には、前記両入力ディスク1、1の回転が、これら各パワーローラ3、3を介して前記両出力ディスク2、2に伝達される。これら各パワーローラ3、3は、それぞれトラニオン4、4に回転自在に支持されており、これら各トラニオン4、4は、それぞれ前記両ディスク1、2の中心軸に対し捩れの位置にある枢軸(図示省略)を中心とする揺動変位を自在に支持されている。前記両ディスク1、2同士の間の変速比を変える場合は、前記各パワーローラ3、3の周面と、前記両入力ディスク1、1及び前記両出力ディスク2、2の内側面との転がり接触部(トラクション部)の位置を変更する。
上述の様なトロイダル型無段変速機の運転時、前記各パワーローラ3、3は、前記各ディスク1、2から大きなスラスト荷重を受けつつ高速で回転する。この為に、前記各パワーローラ3、3と前記各トラニオン4、4との間に、それぞれスラスト玉軸受5、5を設け、これら各スラスト玉軸受5、5により、前記各パワーローラ3、3に加わる前記スラスト荷重を支承自在としている。これら各スラスト玉軸受5、5は、図8に示す様に、パワーローラ3の外側面(図8の左側面)に形成された内輪軌道6と、前記各トラニオン4、4の内側面に設置された外輪7の内側面(図8の右側面)に形成された外輪軌道8と、これら内輪軌道6と外輪軌道8との間に転動自在に設けられた、それぞれが転動体である玉9、9と、これら各玉9、9を保持する保持器10とから成る。尚、前記図8に示した構造の場合、前記図7に示した構造とは異なり、前記外輪7を、前記パワーローラ3を回転自在に支持する為の支持軸11、並びに、このパワーローラ3を前記各トラニオン4、4に、入力、出力各ディスク1、2の軸方向に関する変位を許容した状態で支持する為の枢支軸12と、一体に形成している。又、前記パワーローラ3の形状に関しても、図7の構造とは異ならせている。但し、これらの相違点は、本発明との関係では、重要ではない。
又、前述した様なトロイダル型無段変速機は、前記各スラスト玉軸受5、5に、潤滑油として機能するトラクションオイルを供給する為の潤滑油給油路13を備えている。この潤滑油給油路13は、下流側給油路14と上流側給油路15(図1〜2参照)とから成る。
このうちの下流側給油路14は、前記各スラスト玉軸受5、5を構成する外輪7及び前記支持軸11の内部に設けられている。一方、前記上流側給油路15は、前記各トラニオン4、4の内部に、その下流端開口が前記下流側給油路14の上流端開口に繋がる状態で設けられている。
又、前記外輪7の外側面(図8の左側面)でこの下流側給油路14の上流端開口を囲む部分には、この外輪7の揺動方向に長い凹部16を形成して、この外輪7の揺動変位に拘らず、前記下流側給油路14と前記上流側給油路15とが互いに連通する様にしている。尚、この様な潤滑油給油路13の構造に就いては、前記特許文献1に記載される等して従来から知られている為、詳しい説明は省略する。
運転時には、前記潤滑油給油路13を構成する前記上流側給油路15に送り込まれたトラクションオイルが、前記凹部16を介して、前記下流側給油路14に送り込まれる。そして、このトラクションオイルが、この下流側給油路14の中間部に設けられた分岐路17を通り、前記各スラスト玉軸受5、5を構成する前記各玉9、9が配置された転動体配置空間18に、径方向内側から送り込まれる。又、前記各スラスト玉軸受5、5を潤滑したトラクションオイルは、遠心力によりこの転動体配置空間18の径方向外端開口から、この転動体配置空間18の周囲に排出される。
前述の様に前記各スラスト玉軸受5、5を潤滑した後の前記トラクションオイルは、高温である。この様に高温になったトラクションオイルが、前記転動体配置空間18から排出されて、前記入力、出力各ディスク1、2、或は前記各パワーローラ3、3に触れると、これら入力、出力各ディスク1、2、或はこれら各パワーローラ3、3の温度を上昇させてしまう。前記各トラクション部に前記高温になったトラクションオイルが触れると、前記入力、出力各ディスク1、2を含めて、前記各トラクション部の温度を上昇させてしまう。更に、これら各ディスク1、2の軸方向側面に付着した、高温でトラクション係数が低下したトラクションオイルが前記各トラクション部に送り込まれると、これら各トラクション部で有害なグロススリップが発生し易くなる。このグロススリップが発生すると、前記各ディスク1、2の側面と前記各パワーローラ3、3の周面とが、前記トラクションオイルの油膜を介する事なく金属接触し、これら各面の耐久性を著しく損なう原因となる。
特開2008−25821号公報
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、トロイダル型無段変速機の運転時に於いて、このトロイダル型無断変速機を構成するスラスト玉軸受を潤滑した後のトラクションオイルが、入力、出力各ディスク及びパワーローラに触れにくくして、前記各トラクション部の伝達効率が低下したり、有害なグロススリップが発生する事の防止を図れる構造を実現すべく発明したものである。
本発明のトロイダル型無段変速機は、入力ディスク及び出力ディスクと、複数個のトラニオンと、複数本の支持軸と、複数個のパワーローラと、複数組のスラスト玉軸受と、給油路とを備える。
このうちの入力ディスク及び出力ディスクは、相対回転を自在として互いに同心に支持されている。
又、前記各トラニオンは、前記両ディスクの軸方向に関してこれら両ディスクの間部分に設けられ、それぞれの両端部に互いに同心に、且つ、これら両ディスクの中心軸に対して捩れの位置に設けられた枢軸を中心とする揺動変位を自在とされている。
又、前記各支持軸は、前記各トラニオンの内側面から突出する状態で、これら各トラニオン毎に1本ずつ設けられている。
又、前記各パワーローラは、前記各支持軸の周囲に回転自在に支持された状態で、前記両ディスク同士の間に挟持されている。
又、前記各スラスト玉軸受は、前記各パワーローラの外側面と前記各トラニオンの内側面との間に設けられている。この様な各スラスト玉軸受は、前記各パワーローラの外側面に形成された内輪軌道と、前記各トラニオンの内側面に設置された外輪の内側面に形成された外輪軌道と、これら内輪軌道と外輪軌道との間に転動自在に設けられた複数個の玉とを備える。
更に、前記給油路は、前記各スラスト玉軸受を構成する各玉を配置した転動体配置空間に、この転動体配置空間の径方向内端開口から潤滑油として機能するトラクションオイルを供給する為のものであり、その一部が前記支持軸の内部に設けられている。
特に、本発明のトロイダル型無段変速機に於いては、前記スラスト玉軸受が、シール構造と、1乃至複数個の外輪側排油路とを有する。
このうちのシール構造は、前記転動体配置空間の径方向外端開口部に設けられている。
又、前記各外輪側排油路は、前記各外輪の径方向外端寄り部分に、これら各外輪の内側面から外側面に貫通した状態で形成されている。
この様な本発明のトロイダル型無段変速機を実施する場合には追加的に、前記各トラニオンに、これら各トラニオンの内側面から外側面に貫通した状態で、1乃至複数個のトラニオン側排油路を形成する構成を採用できる。そして、これら各トラニオン側排油路の上流端開口と、前記外輪側排油路の下流端開口との間で、潤滑油の受け渡しを可能とする。
又、前述した様な本発明のトロイダル型無段変速機を実施する場合に、例えば、請求項に記載した発明の様に、前記シール構造を、非接触式のシール構造とする。
本発明のトロイダル型無段変速機によれば、入力、出力各ディスクとパワーローラとのトラクション部での伝達効率が低下してしまう事の防止、及び有害なグロススリップが発生する事の防止を図れる。即ち、本発明のトロイダル型無段変速機の場合、スラスト玉軸受を構成する外輪に、1乃至複数個の外輪側排油路を設けている。この為、このスラスト玉軸受を潤滑して高温になったトラクションオイルは、転動体配置空間から、これら各外輪側排油路を通じて、前記トラニオン側(入力、出力各ディスク及びパワーローラが配置された方向と反対側)に排出される。従って、高温でトラクション係数が低下したトラクションオイルは、前記入力、出力各ディスク及びパワーローラに触れにくく、このトラクションオイルが前記トラクション部に送り込まれる事もない。その結果、このトラクション部の伝達効率が低下したり、有害なグロススリップが発生する事を防止でき、延いては、前記入力、出力各ディスク及びパワーローラの耐久性の向上を図れる。
又、発明の場合、トラニオンに、前記外輪側排油路から前記高温になった前記トラクションオイルの受け渡しが可能な、トラニオン側排油路を設けている。この為、このトラクションオイルは、前記各外輪側排油路及びこれら各トラニオン側排油路を通じて、前記トラニオンの周囲に排出される。その結果、前記トラクションオイルが、前記入力、出力各ディスク及びパワーローラに接触する事の防止を、より効果的に図れる。
本発明に関連する参考例の1例を示す、パワーローラユニット及びトラニオンの部分断面図。 本発明の実施の形態の第1例を示す、図1と同様の図。 同じく、第例を示す、パワーローラユニットのみの断面図。 同じく、第例を示す、図3と同様の図。 同じく、第例を示す、図3と同様の図。 同じく、第例を示す、図3と同様の図。 従来から知られているトロイダル型無段変速機の断面図。 同じく、パワーローラユニットの断面図。
本発明に関連する参考例の1例]
図1は、本発明に関連する参考例の1例を示している。尚、本参考例を含めて、本発明の特徴は、トロイダル型無段変速機を構成するスラスト玉軸受5aを潤滑して高温になったトラクションオイルが、入力、出力各ディスク1、2(図7参照)とパワーローラ3aとの転がり接触部(トラクション部)に触れる事を防止すべく、このトラクションオイルを前記スラスト玉軸受5aの転動体配置空間18から排出する為の構造を工夫した点にある。その他のトロイダル型無段変速機の構造は、前述の図7に示した構造等、従来から知られているトロイダル型無段変速機と同様である。この為、従来構造と同等部分に関する図示並びに説明は、省略若しくは簡略にし、以下、本参考例の特徴部分を中心に説明する。
参考例のトロイダル型無段変速機を構成するパワーローラ3aの軸方向(図1の左右方向)に関する外側面(図1の左側面)の径方向外端部の全周に亙り、この外側面から軸方向外方(図1の左側)突出した状態で、パワーローラ側円筒部19を設けている。又、このパワーローラ側円筒部19の内周面の軸方向外端寄り部分の全周に亙り、この内周面から凹んだ状態で、パワーローラ側凹溝20を形成している。
又、前記スラスト玉軸受5aを構成する外輪7aの外周面と、前記パワーローラ側凹溝20の内周面との間に、接触式のシールリング21を設けて、前記転動体配置空間18の径方向外端開口部を塞いでいる。この様なシールリング21を設ける事により、この転動体配置空間18内のトラクションオイルが、この転動体配置空間18の径方向外端開口から外部空間に流出する事の防止を図ると共に、外部空間から、この転動体配置空間18内に、異物等が浸入する事の防止を図っている。尚、この様なシールリング21としては、従来から知られている、各種構造の接触式のシールリングを採用する事ができる。この為、詳しい説明は省略する。
又、前記外輪7aの外側面(図1の左側面)の径方向外端寄り部分から、外周面の中間部に掛けての全周に亙り、傾斜面22を形成している。この様な傾斜面22を設ける事で、トラニオン4aの内側面と、前記外輪7aの外側面の径方向外端寄り部分との間に、排油用空間23を設けている。そして、この外輪7aの径方向外端寄り部分の円周方向複数箇所(例えば4箇所)に、この外輪7aの内側面(図1の右側面)から前記傾斜面22に貫通する状態で、外輪側排油路24を形成している。本例の場合、これら各外輪側排油路24は、全長に内径が一定の円孔としている。但し、これら各外輪側排油路24は、単なる円孔に限定されず、例えば、傾斜面22側に向う程内径が小さくなる方向に傾斜したテーパ孔、或いは、傾斜面22側の内径が小さくなった段付き円孔等としても良い。又、これら各外輪側排油路24の個数、構造(内径、長さ、経路等)は、前記外輪7aの強度等を考慮して適宜決定する。
前述した様な本参考例のトロイダル型無段変速機を構成するスラスト玉軸受5aを潤滑する場合、前記トラニオン4aの内部に形成された上流側給油路15を通じて、前記外輪7a及び支持軸11の内部に形成された下流側給油路14にトラクションオイルが供給される。更に、このトラクションオイルは、この下流側給油路14の軸方向(図1の左右方向)中間部に形成された分岐路17を介して、前記スラスト玉軸受5aの転動体配置空間18の径方向内端側に供給される。尚、この様な下流側給油路14及び上流側給油路15の構造は、前記特許文献1に記載される等して従来から知られている各種構造を採用する事ができる。
又、前述の様に前記スラスト玉軸受5aを潤滑した後のトラクションオイルは、遠心力により、前記転動体配置空間18内を径方向外方へと移動する。そして、このトラクションオイルは、前記各外輪側排油路24を通じて、この転動体配置空間18から前記排油用空間23側へと排出される。又、この様に前記転動体配置空間18の外部に排出されたトラクションオイルは、前記トラニオン4aの内側面等を伝ってオイルパン等の油溜(図示省略)が設けられている、下方へと移動する。
この様な本参考例のトロイダル型無段変速機によれば、入力、出力各ディスクとパワーローラとのトラクション部での伝達効率が低下してしまう事の防止、及び有害なグロススリップが発生する事の防止を図れる。
即ち、本参考例のトロイダル型無段変速機の場合、前記転動体配置空間18の外径側を前記シールリング21により塞ぐと共に、前記スラスト玉軸受5aを構成する外輪7aに前記各外輪側排油路24を設けている。この為、このスラスト玉軸受5aを潤滑して高温になったトラクションオイルは、これら各外輪側排油路24を通じて、前記入力、出力各ディスク1、2及びパワーローラ3aと反対側方向に排出される。従って、高温でトラクション係数が低下したトラクションオイルは、前記入力、出力各ディスク及びパワーローラ3aに触れにくく、このトラクションオイルが前記トラクション部に送り込まれにくい。その結果、このトラクション部の伝達効率が低下したり、有害なグロススリップが発生する事の防止を図る事ができ、延いては、前記各ディスク1、2の側面及び前記各パワーローラ3、3の周面の耐久性の向上を図る事ができる。
[実施の形態の第例]
図2は、請求項に対応する、本発明の実施の形態の第例を示している。本例のトロイダル型無段変速機の場合、スラスト玉軸受5bを構成する外輪7bの径方向外端寄り部分の円周方向複数箇所(例えば4箇所)に、この外輪7bの内側面(図2の右側面)から外側面(図2の左側面)に貫通する状態で、外輪側排油路24aを形成している。
又、トラニオン4bの内側面(図2の右側面)から外側面(図2の左側面)に貫通する状態で、前記外輪7bの外輪側排油路24aとトラクションオイルの受け渡しを可能な、複数個(例えば4個)のトラニオン側排油路25を形成している。即ち、前記外輪7bが前記トラニオン4bに対し揺動変位していない状態で、前記各トラニオン側排油路25の上流端開口と、この外輪7bの各外輪側排油路24aの下流端開口とを、この外輪7bの円周方向に関して整合させている。
又、前記各トラニオン側排油路25の上流端開口を囲む部分に、前記外輪7bの揺動方向に長いトラニオン側凹部26を形成して、この外輪7bの前記トラニオン4bに対する揺動変位に拘らず、前記各外輪側排油路24aの下流端と前記各トラニオン側排油路25の上流端とが、互いに連通する様にしている。
運転時に於いて、前述した参考例の第1例の場合と同様に、前記スラスト玉軸受5bの転動体配置空間18に供給されたトラクションオイルは、このスラスト玉軸受5bを潤滑した後、遠心力によりこの転動体配置空間18の径方向外方へと移動する。そして、この様に転動体配置空間18の径方向外方へと移動したトラクションオイルは、前記各外輪側排油路24aを通り、これら各外輪側排油路24aの下流端側開口から前記転動体配置空間18の外部(前記トラニオン4b側)へと排出される。更に、この転動体配置空間18から排出されたトラクションオイルは、前記各トラニオン側凹部26を介して、前記各トラニオン側排油路25の上流端開口へと流れ込み、これら各トラニオン側排油路25の下流端開口から、前記トラニオン4bの外部に排出される。この様にして排出されたトラクションオイルは、このトラニオン4bの外側面を伝わって、オイルパン等の油溜(図示省略)が設けられている、下方へと移動する。尚、前記各トラニオン側排油路25の下流端開口に、この下流端開口と連通する、可撓性を有する排油ホース(図示省略)を設け、この排油ホースを通じて、前記トラクションオイルをオイルパン等の油溜に戻す構造とする事もできる。
この様に本例の場合、前記トラニオン4bに、前記各外輪側排油路24aから、トラクションオイルの受け渡しが可能な状態で前記各トラニオン側排油路25を設けている。この為、前記スラスト玉軸受5bを潤滑して高温になったトラクションオイルを、前記各外輪側排油路24a及び前記各トラニオン側排油路25を通じて、入力、出力各ディスク1、2(図7参照)及びパワーローラ3aと反対方向に、より確実に排出できる。その結果、前記高温になったトラクションオイルが、前記入力、出力各ディスク1、2及びパワーローラ3aに接触する事の防止を、より効果的に図れる。
尚、前述した様な各トラニオン側排油路25は、このトラニオン4bの内部に設けられた上流側給油路15と干渉しない位置に設ける。又、前記各トラニオン側排油路25の構造(内径、長さ、経路等)は、前記トラニオン4bの剛性等を考慮して適宜設計的に決定する。その他の構造、及び作用、効果は前述した参考例の1例と同様である。
[実施の形態の第例]
図3は請求項に対応する、本発明の実施の形態の第例を示している。本例のトロイダル型無段変速機の場合、スラスト玉軸受5cを構成する外輪7cの各外輪側排油路24b、24bを、傾斜した状態で形成している。即ち、これら各外輪側排油路24bの上流端開口(図3の右側開口)を、下流端開口(図3の左側開口)よりも、前記外輪7cの径方向に関して外方に設けている。
又、図示は省略するが、前述した実施の形態の第例と同様に、トラニオン4b(図2参照)に、前記各外輪側排油路24b、24bからトラクションオイルの受け渡しが可能なトラニオン側排油路25(図2参照)を設けている。
尚、前記トラニオン側排油路25を設けず、前述した参考例の1例と同様に、前記各外輪側排油路24b、24bの下流端開口から排出されたトラクションオイルを、そのままオイルパン等の油溜が設けられている、下方に移動させる構造とする事もできる。この様な構造を採用する場合、前記トラニオン4bの内側面のうちの、前記各外輪側排油路24b、24bの下流端開口を囲む部分に、その一部が、前記外輪7cの径方向外端縁よりも径方向外方に位置する、凹部等を設ける。この様にして、前記各外輪側排油路24b、24bの下流端開口と前記トラニオン4bの内側面との間に排油用空間(図示省略)を設けて、これら各外輪側排油路24b、24bの下流端開口から排出されたトラクションオイルを、前記外輪7cの径方向外方の外部空間に移動させる様にする。
この様な本例の構造の場合、前記各外輪側排油路24b、24bの上流端開口の、前記外輪7cの径方向に関する位置を、前記スラスト玉軸受5cの転動体配置空間18のうちで、可及的に外方に設ける事ができる。この為、この転動体配置空間18のうちの、前記各外輪側排油路24b、24bの上流端開口よりも径方向外方に存在する空間を小さくする事ができる。その結果、この空間に滞留するトラクションオイルの量を少なくして、このトラクションオイルを効率良く循環させる事ができる。その他の構造、及び作用、効果は前述した参考例の1例、或は実施の形態の例と同様である。
[実施の形態の第例]
図4は総ての請求項に対応する、本発明の実施の形態の第例を示している。本例のトロイダル型無段変速機の場合、スラスト玉軸受5dを構成する外輪7dの内側面(図4の右側面)のうちの径方向外端部分に、この内側面から軸方向内方(図4の右側)に突出した状態で、外輪側円筒部27を設けている。
又、パワーローラ3bの外側面(図4の左側面)の径方向外端部に、全周に亙りこの外側面から軸方向外方(図4の左側)に突出した状態で、パワーローラ側円筒部19aを設けている。
又、前記パワーローラ側円筒部19aの軸方向外側面(図2の左側面)と、前記外輪7dの内側面とを近接対向させて、この近接対向させた部分に、非接触式のラビリンスシール28を設けている。
更に、前記パワーローラ側円筒部19aの外周面と、前記外輪側円筒部27の内周面との間に、接触式のシールリング21aを設けている。その他の構造、及び作用、効果は前述した参考例の1例、或は実施の形態の例と同様である。
[実施の形態の第例]
図5は、請求項に対応する、本発明の実施の形態の第例を示している。本例のトロイダル型無段変速機の場合、スラスト玉軸受5eを構成する外輪7eの内側面(図5の右側面)の径方向外端寄り部分の全周に亙り、この内側面から凹んだ状態で外輪側係合凹溝29を形成している。
そして、パワーローラ3bのパワーローラ側円筒部19aの軸方向外端面(図5の左端面)と、前記外輪側係合凹溝29の底面との間に、接触式のシールリング21bを設けている。その他の構造、及び作用、効果は前述した参考例の1例、或は実施の形態の例と同様である。
[実施の形態の第例]
図6は、総ての請求項に対応する、本発明の実施の形態の第例を示している。本例のトロイダル型無段変速機の場合、前述した実施の形態の第例と同様に、スラスト玉軸受5fを構成する外輪7eの内側面(図6の右側面)の径方向外端寄り部分に、外輪側係合凹溝29を形成している。
又、パワーローラ3cの外側面(図6の左側面)の径方向外端部の全周に亙り、この外側面から軸方向外方(図6の左側)に突出した状態で、パワーローラ側円筒部19bを設けている。尚、このパワーローラ側円筒部19bの軸方向(図6の左右方向)に関する寸法は、前述した実施の形態の第例のパワーローラ側円筒部19aよりも大きい。
そして、前記外輪側係合凹溝29の内面と、この内面と対向する前記パワーローラ側円筒部19aの周面及び端面とを近接対向させて、この近接対向した部分に非接触式のラビリンスシール30を形成している。
この様に本例のトロイダル型無段変速機の場合、前記スラスト玉軸受5fの転動体配置空間18の径方向外端開口を塞ぐシール構造を、非接触式の前記ラビリンスシール30としている。この為、接触式のシール構造の場合と比べて、前記パワーローラ3cと前記外輪7eとの間の回転抵抗を低く抑える事ができる。その他の構造、及び作用、効果は前述した参考例の1例、或は実施の形態の例と同様である。
本発明を実施する場合、トロイダル型無段変速機の運転時に、入力、出力各ディスク、各パワーローラの弾性変形に基づき、これら各パワーローラをこれら各ディスクの軸方向に変位させる為の構造は、前述した実施の形態の各例のトラニオン及びスラスト玉軸受の構造に限定されるものではない。例えば、前記特許文献1に記載されている様な、トラニオンの中間部に設けた円筒状凸面を有する支持梁部と、パワーローラを回転自在に支持しているスラスト玉軸受を構成する外輪の外側面に設けた部分円筒面状の凹部とを係合させる様な構造とする事もできる。
1 入力ディスク
2 出力ディスク
3、3a、3b、3c パワーローラ
4、4a、4b トラニオン
5、5a、5b、5c、5d、5e、5f スラスト玉軸受
6 内輪軌道
7、7a、7b、7c、7d、7e 外輪
8 外輪軌道
9 玉
10 保持器
11 支持軸
12 枢支軸
13 潤滑油給油路
14 下流側給油路
15 上流側給油路
16 凹部
17 分岐路
18 転動体配置空間
19、19a、19b パワーローラ側円筒部
20 パワーローラ側凹溝
21、21a、21b シールリング
22 傾斜面
23 排油用空間
24、24a、24b 外輪側排油路
25 トラニオン側排油路
26 トラニオン側凹部
27 外輪側円筒部
28 ラビリンスシール
29 外輪側係合凹溝
30 ラビリンスシール

Claims (2)

  1. 相対回転を自在として互いに同心に支持された入力ディスク及び出力ディスクと、
    これら両ディスクの軸方向に関してこれら両ディスクの間部分に設けられ、それぞれの両端部に互いに同心に、且つ、これら両ディスクの中心軸に対して捩れの位置に設けられた枢軸を中心とする揺動変位を自在とされた複数個のトラニオンと、
    これら各トラニオンの内側面から突出する状態で、これら各トラニオン毎に1本ずつ設けられた支持軸と、
    これら各支持軸の周囲に回転自在に支持された状態で前記両ディスク同士の間に挟持された複数個のパワーローラと、
    これら各パワーローラの外側面と前記各トラニオンの内側面との間に設けられたスラスト玉軸受と、
    給油路とを備え、
    前記各スラスト玉軸受は、前記各パワーローラの外側面に形成された内輪軌道と、前記各トラニオンの内側面に設置された外輪の内側面に形成された外輪軌道と、これら内輪軌道と外輪軌道との間に転動自在に設けられた複数個の玉とを備えるものであり、
    前記給油路は、前記各スラスト玉軸受を構成する各玉を配置した転動体配置空間に、この転動体配置空間の径方向内端開口から潤滑油として機能するトラクションオイルを供給する為のものであり、その一部が前記支持軸の内部に設けられているトロイダル型無段変速機に於いて、
    前記スラスト玉軸受は、シール構造と、1乃至複数個の外輪側排油路とを有し、
    このうちのシール構造は、前記転動体配置空間の径方向外端開口部に設けられており、
    前記各外輪側排油路は、前記各外輪の外輪軌道が形成された位置よりも径方向外側に、これら各外輪の内側面から外側面に貫通した状態で形成されており、
    前記各トラニオンに、これら各トラニオンの内側面から外側面に貫通した状態で、1乃至複数個のトラニオン側排油路が形成されており、
    これら各トラニオン側排油路の上流端開口と、前記各外輪側排油路の下流端開口との間で、潤滑油の受け渡しが可能である事を特徴とするトロイダル型無段変速機。
  2. 前記シール構造が、非接触式のシール構造である、請求項1に記載したトロイダル型無段変速機。
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