JP5849452B2 - 電極用バインダー樹脂組成物、電極合剤ペースト、及び電極 - Google Patents

電極用バインダー樹脂組成物、電極合剤ペースト、及び電極 Download PDF

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタなどの電気化学素子の電極用のバインダー樹脂組成物に関する。
リチウムイオン二次電池は、高いエネルギー密度を有し、高容量であるため、移動情報端末の駆動電源などとして広く利用されている。近年は、大容量を必要とする電気・ハイブリッド自動車への搭載など産業用途での使用も広まりつつあり、更なる高容量化や高性能化のための検討がなされている。その試みの一つは、例えば負極活物質として単位体積あたりのリチウム吸蔵量の多いケイ素やスズ、或いはこれらを含む合金を用いて、充放電容量を増大させようとするものである。
しかし、例えばケイ素やスズ、或いはこれらを含む合金のような充放電容量の大きな活物質を用いると、充放電に伴って活物質が非常に大きな体積変化を起こす。このため、これまでの電極で用いられていたポリフッ化ビニリデンやゴム系樹脂を結着剤(バインダー)として用いると、活物質層が破壊されたり、集電体と活物質層との界面で剥離が発生したりして、電極の集電構造が破壊され、電池のサイクル特性が容易に低下するという問題があった。
このため、非常に大きな体積変化に対しても電極の破壊や剥離を起こしにくい、電池環境下での接着性が高い電極用のバインダーが望まれていた。
特許文献1には、リチウム二次電池において、負極の結着剤としてポリイミド樹脂を用いると、充放電サイクルを繰り返し行っても電池容量が低下しにくくサイクル寿命が長くなることが記載されている。ここでは、電極は350℃で2時間加熱処理されて製造されている。(参照:実施例1、2)
特許文献2には、サイクル特性などを改良した、特定の結晶子サイズのケイ素粒子及び/又はケイ素合金粒子を含む負極活性物質粒子を用いたリチウム二次電池が記載され、負極バインダーがポリイミドであることも記載されている。ここでは、電極の加熱処理工程は、バインダーの熱可塑領域温度以上で行うこと、20〜150℃で行われる乾燥工程とは異なる後工程として200℃以上の温度で行うことが好ましいこと、250〜480℃の温度範囲で負極熱処理温度が電池特性に与える影響を検討し、400℃程度が好適であることが記載されている。(参照:段落0034、0035、0042、0113、第6実施例、表6)
特許文献3には、特定の化学構造を持つポリイミドを電極のバインダー樹脂に用いることが記載されている。ここでも、電極加熱処理工程は275℃乃至300℃以上の高温で行うことが好ましいことが記載され、255℃〜470℃の温度範囲で負極熱処理温度が電池特性に与える影響を検討し、400℃程度が好適であることを記載されている。(参照:段落0042、0043、第9実施例、表9)
特許文献4には、ケイ素、及びケイ素系合金からなる活物質と、特定の化学構造を有するポリイミド樹脂をバインダーに用いたリチウム二次電池が提案されている。このポリイミド樹脂は、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸残基を有するポリイミドであった。
一方、非特許文献1には、電解液に対する電極用のバインダー樹脂の膨潤度が小さいほど充放電サイクルに伴う放電容量保持率が高くなるので好ましいことが示されている。
特開平6−163031号公報 WO2004/004031号公報 特開2007−149604号公報 特開2008−34352号公報
日立化成テクニカルレポート第45号(2005年7月)
本発明の目的は、電池環境下でも膨潤度が小さく優れた接着性を保つことができるバインダー樹脂になる、新たな化学構造からなる電極用バインダー樹脂組成物を提案することである。
ポリイミドをバインダーとして電極を製造する際には、加熱処理温度を極めて高温にする必要があるために特別な装置や環境が必要とされる。このため、ポリフッ化ビニリデンやゴム系樹脂などの通常のバインダーと同程度の比較的低温で加熱処理を行うことが望まれている。
また、近年、電池用の集電体(銅箔など)は極薄化が進んで厚さが10μm以下のものが使用されるようになり、電極製造工程で集電体が高温に曝されると機械強度が大幅に低下するなどの問題が生じることから、200℃以下の比較的低温で熱処理することが望まれている。
本願発明者らは、種々検討した結果、特定の化学構造からなる樹脂組成物を用いると、電池環境下でも膨潤度が小さく、優れた接着性を有する、新たな電極用バインダー樹脂組成物を得ることを見出して、本発明に至った。
さらに、200℃以下の比較的低温で加熱処理することによって、電池環境下でも膨潤度が小さく、且つ優れた付着性や接着性を保つことができる高性能のリチウム二次電池用の電極を得ることができる。
すなわち、本発明は以下の項に関する。
1. (a)ジイソシアネート化合物、(b)下記化学式(1)で示される2官能性水酸基末端ポリカーボネートを含む一種類以上のジオール化合物、及び(c)下記化学式(2)で示される2官能性水酸基末端イミドオリゴマーを反応して得られる変性ポリイミド樹脂(A)と、硬化性樹脂(B)と、溶剤と、を含むことを特徴とする電極用バインダー樹脂組成物。
Figure 0005849452
但し、式中、Rは2価の脂肪族又は芳香族炭化水素基を示し、nは1〜40の整数である。
Figure 0005849452
但し、式中、Rは2価の脂肪族又は芳香族炭化水素基を示し、Xはテトラカルボン酸のカルボキシル基を除いた4価の基を示し、Yはジアミンのアミノ基を除いた2価の基を示し、mは0〜20の整数である。
2. 硬化性樹脂(B)が、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ブロック化された多官能イソシアネート、シアネートエステル樹脂からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の電極用バインダー樹脂組成物。
3. 前記項1又は2に記載の電極用バインダー樹脂組成物と、ポリアミック酸(C)と、を含むことを特徴とする電極用バインダー樹脂組成物。
4. ポリアミック酸(C)が、下記化学式(3)で表される繰返し単位からなることを特徴とする前記項3記載の電極用バインダー樹脂組成物。
Figure 0005849452
化学式(3)において、Aは、その10〜100モル%が下記化学式(4)で示される4価の基であり、その90〜0モル%が下記化学式(5)、下記化学式(6)、及び下記化学式(7)の少なくともいずれか1つで示される4価の基であり、Bは、1〜4個の芳香族環を有する2価の基である。
Figure 0005849452
Figure 0005849452
Figure 0005849452
Figure 0005849452
5. さらに、ピリジン類化合物を含有することを特徴とする前記項1〜4のいずれかに記載の電極用バインダー樹脂組成物。
6. 電極活物質と前記項1〜5のいずれかに記載の電極用バインダー樹脂組成物とを含む電極合剤ペースト。
7. 電極活物質が、リチウム含有金属複合酸化物、炭素粉末、ケイ素粉末、スズ粉末、ケイ素を含む合金粉末、及びスズを含む合金粉末、の少なくともいずれかを含むことを特徴とする前記項6に記載の電極合剤ペースト。
8. 前記項6又は7に記載の電極合剤ペーストを集電体上に塗布し、加熱処理して溶媒を除去するとともにイミド化反応することにより得られることを特徴とする電極。
9. 25℃で24時間ジメチルカーボネートに浸漬したときの質量変化が±3.0質量%以下であることを特徴とする前記項8に記載の電極。
10. 加熱処理温度が250℃以下であることを特徴とする前記項8又は9に記載の電極。
11. リチウムイオン二次電池用負極であることを特徴とする前記項8〜10のいずれかに記載の電極。
本発明によれば、電池環境下でも膨潤度が小さく、優れた接着性を有するバインダー樹脂になる、新たな化学構造からなる電極用バインダー樹脂組成物を得ることができる。
さらに、200℃以下の比較的低温で加熱処理することによって、ポリイミドをバインダーとした、電池環境下でも膨潤度が小さく且つ優れた付着性や接着性を保つことができる高性能のリチウム二次電池用の電極を容易に得ることができる。
本発明の電極用バインダー樹脂組成物は、変性ポリウレタン樹脂(A)と、硬化性樹脂(B)と、溶剤とを含んで構成、あるいは変性ポリウレタン樹脂(A)と、硬化性樹脂(B)と、溶剤と、ポリアミック酸(C)を含んで構成される。
電極用バインダー樹脂組成物は、少なくともカルボキシル基を有し、好ましくは酸価が16〜40mgKOH/gの変性ポリウレタン樹脂(A)と、硬化性樹脂(B)とを含んで構成される。
少なくともカルボキシル基を有する変性ポリウレタン樹脂(A)は、ウレタン結合を有する主鎖中の側鎖として或いは主鎖の末端部に、特許文献1〜4に記載されているような既に公知の方法によってカルボキシル基を導入することによって、好適に製造することができる。その酸価は、変性ポリウレタン樹脂(A)を製造する際に、カルボキシル基を導入するために用いる(通常はカルボキシル基含有)成分の使用比率を変更することによって、容易に調節することができる。
このカルボキシル基は、電極用バインダー樹脂組成物に含有される硬化性樹脂(B)と架橋反応を行うことができるので、電極用バインダー樹脂組成物は、良好な硬化性を有し、優れた特性を有する硬化膜を形成することができる。
本発明において、少なくともカルボキシル基を有し、酸価が16〜40mgKOH/g、好ましくは18〜40mgKOH/g、より好ましくは18〜38mgKOH/gの変性ポリウレタン樹脂(A)は、好ましくは、少なくともジイソシアネート化合物(a1)と、ポリカーボネートジオールまたはポリブタジエンジオールを含むポリオール化合物(a2)と、カルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物(a3)とを反応して得ることができる。
ジイソシアネート化合物(a1)は、通常のポリウレタンを製造する際に用いられるものを好適に用いることができる。すなわち、1分子中にイソシアネート基を2個有するものであればどのようなものでもよく、脂肪族、脂環族または芳香族のポリイソシアネートであってよいが、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,9−ノナンメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、2,2’−ジエチルエーテルジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、o−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、シクロヘキサン−1,3−ジメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジメチレレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−メチレンジトリレン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、テトラクロロフェニレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素化1,3−キシリレンジイソシアネート、水素化1,4−キシリレンジイソシアネートなどのジイソシアネートを好適に挙げることができる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、ジイソシアネート化合物(a1)は、エポキシ樹脂への膨潤や、アンダーフィル耐性が良好であることから、脂環構造を有するジイソシアネート化合物が好ましく、その中でも、イソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)が特に好ましい。また、水分による失活を防ぐため、ブロック化されたジイソシアネートを用いることもできる。
ポリカーボネートジオールまたはポリブタジエンジオールを含むポリオール化合物(a2)は、ポリカーボネートジオールまたはポリブタジエンジオールを含むポリオール化合物であって、必要に応じてそれらの両者共含むポリオール化合物であってもよい。なお、本発明においては、このポリオール化合物(a2)には、カルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物は含まれない。
ポリカーボネートジオールは、主鎖中にカーボネート結合を有するジオール化合物であれば特に限定されないが、下記化学式(1)で示される2官能性水酸基末端のポリカーボネートジオールを好適に用いることができる。
Figure 0005849452
(式中、Rは2価の脂肪族又は芳香族炭化水素基、好ましくは炭素数が2〜20の2価の脂肪族又は芳香族炭化水素基を示し、nは1〜40の整数である。)
ポリカーボネートジオールは、数平均分子量が500〜10000のものが好ましく、1000〜5000のものがより好ましい。数平均分子量が500未満になると好適な柔軟性が得難くなり、また数平均分子量が10000を越えると耐熱性や耐溶剤性が悪くなることがあるので前記程度のものが好適である。本発明で用いられるポリカーボネートジオール(b1)は、具体的には宇部興産株式会社製のETERNACOLL UHシリーズ、UNシリーズ、UDシリーズ、UCシリーズ、UBシリーズ、ダイセル化学工業株式会社製のPLACCELシリーズ、クラレ株式会社製のクラレポリオールシリーズ、旭化成ケミカルズ株式会社製のPCDLシリーズなどを好適に挙げることができる。これらのポリカーボネートジオールは、単独で、または二種類以上組合せて用いられる。
ポリブタジエンジオールは、限定するものではないが、2官能性水酸基末端のポリブタジエンジオールが好ましく、また数平均分子量が500〜10000のものが好ましく、1000〜5000のものがより好ましい。数平均分子量が500未満になると好適な柔軟性が得難くなり、また数平均分子量が10000を越えると耐熱性や耐溶剤性が悪くなることがあるので前記程度のものが好適である。なお、ポリブタジエンジオールは、分子内に二重結合を有していても、分子内の二重結合を水添したものであってもよいが、分子内に二重結合が残っていると架橋反応を起こして柔軟性がなくなる場合があるので、特に好ましくは分子内の二重結合を水添されたものである。本発明で用いられるポリブタジエンジオールは、具体的には日本曹達株式会社製のGシリーズ、GIシリーズ、出光石油化学株式会社製のPoly bdシリーズ、Poly ipシリーズ、エポールシリーズ、KRASOLシリーズ、三菱化学株式会社製のポリテールHシリーズなどを好適に挙げることができる。
カルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物(a3)は、置換基としてカルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物を好適に用いることができる。この結果、変性ポリウレタン樹脂はカルボキシル基を有することとなり、硬化性樹脂(B)と容易に反応できるようになる。すなわち、変性ポリウレタン樹脂を架橋する際、効果的に架橋することが可能となり、得られる硬化物の耐熱性や耐溶剤性を増大することができる。
カルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物(a3)としては、特に限定するものではないが、置換基としてカルボキシル基を持った、炭素数が1〜30更に炭素数が2〜20のジヒドロキシ化合物が好適である。具体的には、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、N,N−ビスヒドロキシエチルグリシン、N,N−ビスヒドロキシエチルアラニンなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、溶媒への溶解度の観点から、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸が好ましい。
本発明において、変性ポリウレタン樹脂(A)は、さらに主鎖中にイミド環を有する変性ポリウレタン樹脂であることが好ましい。主鎖中にイミド環を有する変性ポリウレタン樹脂は、ポリカーボネートジオールまたはポリブタジエンジオールを含むポリオール化合物(a2)と、カルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物(a3)と共に、テトラカルボン酸二無水物やトリカルボン酸一無水物を、または例えば下記化学式(2)で表されるようなアルコール性水酸基末端のイミドオリゴマーを、ジイソシアネート化合物(a1)と反応させることによって容易に得ることができる。
Figure 0005849452
(式中、Rは2価の脂肪族又は芳香族炭化水素基、好ましくは炭素数が1〜10の2価の脂肪族又は芳香族炭化水素基を表し、Xはテトラカルボン酸のカルボキシル基を除いた4価の基、好ましくは4価の炭素数が1〜20の脂肪族又は芳香族化水素基を示し、Yはジアミンのアミノ基を除いた2価の基、好ましくは2価の炭素数が1〜20の脂肪族又は芳香族化水素基を示し、mは0〜20の整数、好ましくは1〜20の整数である。)
主鎖中にイミド環を有する変性ポリウレタン樹脂(A)を用いることで、硬化性樹脂(B)を含む電極用バインダー樹脂組成物を加熱処理して得られた電極、さらにはポリアミック酸(C)を含む電極用バインダー樹脂組成物を加熱処理して得られた電極は、電池環境下でも膨潤度が小さく優れた接着性を保つことができるので好適である。
前記化学式(2)で表されるアルコール性水酸基末端のイミドオリゴマーは、テトラカルボン酸成分と、ジアミン化合物及び水酸基を1個有するモノアミン化合物からなるアミン成分とから得られる。式中、mは0〜20の整数を示し、特に1〜20であり、さらに好ましくは1〜10である。mが20以上では得られる変性ポリウレタン樹脂の溶解性が悪くなることがあるので前記程度のものが好適である。なお、このアルコール性水酸基末端のイミドオリゴマーは、限定されるものではないが、例えば特開2007−238818号公報などに記載の公知の方法で容易に得ることができる。
すなわち、本発明の変性ポリウレタン樹脂(A)は、好ましくはジイソシアネート化合物(a1)、ポリカーボネートジオールまたはポリブタジエンジオールを含むジオール化合物(a2)、カルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物(a3)、さらに必要に応じてテトラカルボン酸二無水物、トリカルボン酸一無水物または例えば下記化学式(2)で表されるようなアルコール性水酸基末端のイミドオリゴマーなどのイミド環を導入するための化合物成分(a4)を反応して、好適に得ることができる。
使用するジイソシアネート化合物(a1)と他の化合物(a2)、(a3)、(a4)とのモル比[他の化合物(a2)、(a3)、(a4)の合計の総モル数/ジイソシアネート化合物(a1)のモル数]は、好ましくは0.5〜3.0、より好ましくは0.8〜2.5、さらに好ましくは0.9〜2.0の範囲である。前記モル比が小さすぎると溶液が増粘することがあるので好ましくなく、前記モル比が大きすぎると変性ポリウレタン樹脂の分子量が低くなり、耐熱性などが低下する。
変性ポリウレタン樹脂(A)の調製に使用するカルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物(a3)の量は、得られるポリウレタン樹脂の酸価が、好ましくは16〜40mgKOH/gとなる様に使用割合が決定される。
カルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物(a3)と、ポリカーボネートジオールまたはポリブタジエンジオールを含むジオール化合物(a2)とを用いる場合には、そのモル比[カルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物(a3)のモル数/ポリカーボネートジオールまたはポリブタジエンジオールを含むジオール化合物(a2)のモル数]は、概ね0.2〜6、好ましくは0.5〜3の範囲である。
カルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物(a3)、ポリカーボネートジオールまたはポリブタジエンジオールを含むジオール化合物(a2)、及びテトラカルボン酸二無水物、トリカルボン酸一無水物または例えば下記化学式(2)で表されるようなアルコール性水酸基末端のイミドオリゴマーなどのイミド環を導入するための化合物成分(a4)を用いる場合には、そのモル比[カルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物(a3)のモル数/ポリカーボネートジオールまたはポリブタジエンジオールを含むジオール化合物(a2)とイミド環を導入するための化合物成分(a4)との合計の総モル数]は、概ね0.2〜10、好ましくは0.5〜5の範囲である。
変性ポリウレタン樹脂(A)の製造方法は、より具体的には、ジイソシアネート化合物(a1)と、ポリカーボネートジオールまたはポリブタジエンジオールを含むジオール化合物(a2)、カルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物(a3)、さらに必要に応じてテトラカルボン酸二無水物、トリカルボン酸一無水物または例えば下記化学式(2)で表されるようなアルコール性水酸基末端のイミドオリゴマーなどのイミド環を導入するための化合物成分(a4)などの他の化合物との反応は、無溶媒あるいは有機溶媒に溶解して行うことができる。通常、ジイソシアネート化合物(a1)の失活を防ぐため、他の化合物を反応容器へ仕込み均一に分散、溶解さえた後、ジイソシアネート化合物(a1)を仕込むことが好ましい。また、溶解性を改善するなどの目的で、この仕込みの順番を変更することがある。反応温度は30℃〜200℃好ましくは80℃〜180℃であり、反応時間は通常1〜48時間である。また、触媒として、公知のウレタン化触媒を用いることができる。この反応はイソシアネートが水分によって失活するのを防ぐために窒素雰囲気下で行うことが好ましい。また、粘度調整をおこなう目的で、反応混合液が所定粘度に増粘したところで、末端停止剤としてアルコールを添加しても構わない。
反応に用いる溶剤としては、特に限定されないが、含窒素系溶媒、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタムなど、含硫黄原子溶媒、例えばジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ヘキサメチルスルホルアミドなど、含酸素溶媒、例えばフェノ−ル系溶媒のクレゾ−ル、フェノ−ル、キシレノ−ルなど、ジグライム系溶媒のジエチレングリコ−ルジメチルエ−テル、エチレングリコールジエチルエーテル、カルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、メトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、エトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、トリエチレングリコ−ルジメチルエ−テル、テトラグライムなど、ケトン系溶媒のアセトン、アセトフェノン、プロピオフェノン、シクロヘキサノン、イソホロンなど、エーテル系溶剤のエチレングリコール、ジオキサン、テトラヒドロフランなど、ラクトン系溶媒のγ−ブチロラクトンなど、を挙げることができる。特に、γ−ブチロラクトン、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコ−ルジメチルエ−テルなどを好適に使用することができる。
本発明で用いられる変性ポリウレタン樹脂(A)の数平均分子量は、限定するものではないが、好ましくは3000〜100000より好ましくは5000〜50000である。ここで、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の値である。数平均分子量が前記範囲よりも低いと、得られる硬化膜の伸度、可撓性および強度などの機械的特性を損なうことがあり、一方、前記範囲を超えると粘度が必要以上に増加するために用途が限定される恐れがある。
本発明の電極用バインダー樹脂組成物の必須成分である硬化性樹脂(B)は、変性ポリウレタン樹脂中のカルボン酸と反応する化合物である。変性ポリウレタン樹脂中のカルボン酸と反応する化合物であれば、特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ブロック化された多官能イソシアネート、シアネートエステル樹脂が好適である。
エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、N−グリシジル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、キレート型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエンなどの、一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物などを好適に用いることができる。特に、N−グリシジル型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂は、反応性に優れ、一方、脂環式エポキシ樹脂や、エポキシ化ポリブタジエンは、塩素不純物が少なく絶縁信頼性が良好であるため、好適に用いることができる。また、難燃性付与のために、塩素、臭素等のハロゲンや燐等の原子がその構造中に導入されたエポキシ化合物を使用してもよい。
アミノ樹脂としては、例えば完全アルキル化型、メチロール基型、イミノ基型、イミノ/メチロール型のメラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、グリコールウリル樹脂などを好適に用いることができる。特にベンゾグアナミン樹脂は、絶縁信頼性が良好であることから好適である。
ブロック化された多官能イソシアネートとしては、1分子中にイソシアネ−ト基を2個以上有する多官能イソシアネート化合物のイソシアネート基がブロックされたものを好適に用いることができる。例えば、脂肪族、脂環族又は芳香族の多官能イソシアネ−トのイソシアネート基がブロックされたもの、好ましくはイソシアネート基を除いて炭素数が2〜30の脂肪族、脂環族又は芳香族の多官能イソシアネ−トのイソシアネート基がブロックされたものであり、限定しないが、例えば1,4−テトラメチレンジイソシアネ−ト、1,5−ペンタメチレンジイソシアネ−ト、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、2,2,4−トリメチル−1,6−へキサメチレンジイソシアネ−ト、リジンジイソシアネ−ト、3−イソシアネ−トメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネ−ト(イソホロンジイソシアネ−ト)、1,3−ビス(イソシアネ−トメチル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネ−ト、トリレンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、1,5−ナフタレンジイソシアネ−ト、トリジンジイソシアネ−ト、キシリレンジイソシアネ−ト等のイソシアネート基がブロックされたものを例示することができる。
ブロックに関しては、例えばオキシム誘導体、ピラゾール誘導体もしくは活性メチレン化合物でブロックされた多官能イソシアネートを好適に用いることができる。特にピラゾール誘導体もしくは活性メチレン化合物でブロックされた多官能イソシアネートは、反応性が高いため好適である。
本発明の電極用バインダー樹脂組成物は、変性ポリウレタン樹脂を有機溶媒に均一に溶解した溶液組成物として好適に用いられる。有機溶媒としては、特に限定されないが、含窒素系溶媒、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタムなど、含硫黄原子溶媒、例えばジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ヘキサメチルスルホルアミドなど、含酸素溶媒、例えばフェノ−ル系溶媒、例えばクレゾ−ル、フェノ−ル、キシレノ−ルなど、ジグライム系溶媒例えばジエチレングリコ−ルジメチルエ−テル(ジグライム)、トリエチレングリコ−ルジメチルエ−テル(トリグライム)、テトラグライムなど、ケトン系溶媒例えば、アセトン、アセトフェノン、プロピオフェノン、シクロヘキサノン、イソホロンなどエチレングリコール、ジオキサン、テトラヒドロフランなど、ラクトン系溶媒、例えばγ−ブチロラクトンなど、を挙げることができる。特に、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、トリエチレングリコ−ルジメチルエ−テルなどを好適に使用することができる。また、変性ポリウレタン樹脂を合成する際に使用できる有機溶媒をそのまま使用することができる。
本発明のポリアミック酸(C)は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とからなり、主に下記化学式(3)で示される繰返し単位を有し、ポリアミック酸と溶剤とからなることもある。ポリアミック酸はテトラカルボン酸成分とジアミン成分とから容易に調製することができる。テトラカルボン酸成分は、テトラカルボン酸類すなわちテトラカルボン酸、その酸二無水物及びそのエステル化化合物などであり、好ましくは二無水物である。ジアミン成分は、ジアミン類すなわちジアミン、ジイソシアネートなどであり、好ましくはジアミンである。これらはいずれもポリイミドのテトラカルボン酸成分或いはジアミン成分として用いることができる。
Figure 0005849452
化学式(1)において、Aは、その10〜100モル%が下記化学式(4)で示される4価の基であり、その90〜0モル%が下記化学式(5)及び/または下記化学式(6)で示される4価の基であり、Bは、1〜4個の芳香族環を有する2価の基である。
Figure 0005849452
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本発明のポリアミック酸を構成するテトラカルボン酸成分は、4,4’−オキシジフタル酸類、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸類、ピロメリット酸類、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸類からなる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のポリアミック酸を構成するジアミン成分は、1〜4個の芳香族環を有する芳香族ジアミン類であって、具合例としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,4−ビス(β−アミノ−第三ブチル)トルエン、ビス−p−(1,1−ジメチル−5−アミノ−ペンチル)ベンゼン、1−イソプロピル−2,4−m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミンなどの1個の芳香族環を有する芳香族ジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、ビス(4−アミノ−3−カルボキシフェニル)メタン、ビス(p−β−アミノ−第三ブチルフェニル)エーテルなどの2個の芳香族環を有する芳香族ジアミン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス(p−β−メチル−6−アミノフェニル)ベンゼン、などの3個の芳香族環を有する芳香族ジアミン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニルなどの4個の芳香族環を有する芳香族ジアミン、或いはそれらに対応する1〜4個の芳香族環を有する芳香族ジイソシアネートを好適に挙げることができる。
本発明のポリアミック酸を構成するテトラカルボン酸成分とジアミン成分とのモル比[テトラカルボン酸成分/ジアミン成分]は略等モル、具体的には0.95〜1.05好ましくは0.97〜1.03になるようにすることが重要である。このモル比の範囲外では、得られるポリイミド樹脂の靭性が低くなる恐れがある。
ポリアミック酸は、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを溶剤中で反応させることで容易に調製することができる。限定するものではないが、好ましくはジアミン成分を溶剤に溶解した溶液にテトラカルボン酸成分を一度に、或いは多段階で添加し、攪拌することにより好適に行うことができる。反応温度は10℃〜60℃が好ましく、15℃〜55℃がさらに好ましく、15℃〜50℃が特に好ましい。反応温度が10℃より低いと反応が遅くなることから好ましくなく、60℃より高いと溶液の粘度が低くなることがあり好ましくない。反応時間は、0.5時間〜72時間の範囲が好ましく、1時間〜60時間がさらに好ましく、1.5時間〜48時間が特に好ましい。反応時間が0.5時間より短いと反応が十分進行せず、合成されたポリアミック酸溶液の粘度が不安定になることがある。一方、72時間以上の時間をかけるのは生産性の面から好ましくない。
ポリアミック酸の調製には従来ポリアミック酸を調製する際に用いられる公知の有機溶剤を使用することができる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホロトリアミド、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、テトラヒドロフラン、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エーテル、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジフェニルエーテル、スルホラン、ジフェニルスルホン、テトラメチル尿素、アニソール、m−クレゾール、フェノール、γ−ブチロラクトンが挙げられる。これらの溶剤は、単独または2種以上混合して使用しても差し支えない。これらのうち、ポリアミック酸の溶解性、および安全性から、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチロラクトンが好ましく、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンが特に好ましい。
本発明の電極用バインダー樹脂組成物は、固形分濃度が5質量%超〜45質量%、好ましくは10質量%超〜40質量%、より好ましくは15質量%超〜30質量%の組成物として好適に用いることができる。固形分濃度が5質量%より低いと溶液の粘度が低くなりすぎ、45質量%より高いと溶液の流動性がなくなることがある。また溶液粘度は、30℃における溶液粘度が、好ましくは1000Pa・sec以下、より好ましくは0.5〜500Pa・sec、さらに好ましくは1〜300Pa・sec、特に好ましくは3〜200Pa・secである。
溶液粘度が1000Pa・secを超えると、電極活物質粉末の混合や集電体上への均一な塗布が困難となり、また、0.5Pa・secよりも低いと、電極活物質粉末の混合や集電体上への塗布時にたれなどが生じ、加熱乾燥、イミド化後のポリイミド樹脂の靭性が低くなる恐れがある。
本発明の電極用バインダー樹脂組成物においては、さらにピリジン類化合物を含有することが、得られるポリイミド樹脂の電解液に対する膨潤度をより小さくし、接着性をより大きくすることができ、さらに電極を得るための加熱処理温度を低く抑えることができるので、好適である。
ピリジン類化合物は、化学構造中にピリジン骨格を有する化合物のことであり、例えばピリジン、3−ピリジノール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、6−tert−ブチルキノリン、アクリジン、6−キノリンカルボン酸、3,4−ルチジン、ピリダジン、などを好適に挙げることができる。これらのピリジン系化合物は、単独または2種以上併用して使用しても差し支えない。
電極用バインダー樹脂組成物においてピリジン類化合物の添加量は、限定するものではないが、ポリアミック酸のアミック酸構造に対して(アミック酸構造1モル当たり)、好ましくは0.05〜2.0モル当量、より好ましくは0.1〜1.0モル当量である。添加量がこの範囲外では、電解液に対する樹脂の膨潤度をより小さくし、得られるポリイミド樹脂の接着性をより大きくし、さらに電極を得るための加熱処理温度を低く抑えるというピリジン類化合物の添加効果を得ることが難しい場合があり好ましくない。
本発明の電極用バインダー樹脂組成物に、少なくとも電極活物質を、限定するものではないが、好ましくは10℃〜60℃の温度範囲で混合することにより、電極合剤ペーストを好適に調製することができる。電極活物質は公知のものを好適に用いることができるが、リチウム含有金属複合酸化物、炭素粉末、ケイ素粉末、スズ粉末、ケイ素を含む合金粉末、及びスズを含む合金粉末、の少なくともいずれかを含むことが好ましい。電極合剤ペースト中の電極活物質の量は、格別限定されないが、通常、固形分質量に対して、質量基準で0.1〜1000倍、好ましくは1〜1000倍、より好ましくは5〜1000倍、さらに好ましくは10〜1000倍である。活物質量が少なすぎると、集電体に形成された活物質層に不活性な部分が多くなり、電極としての機能が不十分になることがある。また、活物質量が多すぎると活物質が集電体に十分に結着されずに脱落し易くなる。なお、電極合剤ペースト中には、必要に応じて界面活性剤や粘度調整剤や導電補助剤などの添加剤を加えることができる。また、固形分がペーストの全固形分中の1〜15質量%となるよう混合することが好ましい。この範囲外では電極の性能が低下することがある。
充放電により可逆的にリチウムイオンを挿入・放出できる例えばリチウム含有金属複合酸化物のような電極活物質を用いて得られる電極合剤ペーストを、アルミニウムなどの導電性の集電体上に流延あるいは塗布して、低温で溶媒を除去し、次いで加熱処理によって、変性ポリウレタン樹脂(A)と硬化性樹脂(B)とが架橋反応を行うように、さらにはポリアミック酸(C)のイミド化反応を進行させるために、例えば80〜250℃、好ましくは80〜200℃、より好ましくは100〜200℃、さらに好ましくは120〜180℃で、10分〜12時間好ましくは20分〜6時間より好ましくは30分〜2時間、熱風や赤外線によって加熱処理することによって、電極を得ることができる。
加熱処理温度が前記の範囲外の場合、イミド化反応が十分に進行しなかったり、電極成形体の物性が低下したりすることがある。加熱処理は発泡や粉末化を防ぐために多段で行ってもよい。また、加熱処理時間は10分〜12時間の範囲が好ましい。12時間以上は生産性の点から好ましくなく、10分より短いと架橋反応、イミド化反応や溶媒の除去が不十分となることがあり好ましくない。
得られる電極はリチウムイオン二次電池の正極として特に好適に用いることができる。
また、充放電により可逆的にリチウムイオンを挿入・放出できる例えば炭素粉末、ケイ素粉末、スズ粉末、またはケイ素若しくはスズを含む合金粉末のような電極活物質を用いて得られる電極合剤ペーストを、銅などの導電性の集電体上に流延あるいは塗布して、低温で溶媒を除去し、次いで加熱処理によって、変性ポリウレタン樹脂(A)と硬化性樹脂(B)とが架橋反応を行うように、さらにはポリアミック酸(C)のイミド化反応を進行させるために、例えば80〜250℃、好ましくは80〜200℃、より好ましくは100〜200℃、さらに好ましくは120〜180℃で、10分〜12時間好ましくは20分〜6時間より好ましくは30分〜2時間、熱風や赤外線によって加熱処理することによって、電極を得ることができる。
加熱処理温度が前記の範囲外の場合、イミド化反応が十分に進行しなかったり、電極成形体の物性が低下したりすることがある。加熱処理は発泡や粉末化を防ぐために多段で行ってもよい。また、加熱処理時間は10分〜12時間の範囲が好ましい。12時間以上は生産性の点から好ましくなく、10分より短いと架橋反応、イミド化反応や溶媒の除去が不十分となることがあり好ましくない。
得られる電極はリチウムイオン二次電池の負極として特に好適に用いることができる。
本発明の特定の構造からなる電極用バインダー樹脂組成物は、この程度の低温の加熱処理によって、電池環境下でも膨潤度が小さく(ジメチルカーボネートに25℃で24時間浸漬したときの膨潤による質量変化率が好ましくは±3質量%以内より好ましくは±2質量%以下である)且つ優れた付着性(集電体との90°ピール強度が0.5N/mm以上、より好ましくは0.7N/mm以上であり、且つ25℃で24時間ジメチルカーボネートに浸漬した後の90°ピール強度の保持率が80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上であり、また集電体とのクロスカット法による付着性試験で、剥離が5%未満であり、且つ25℃で24時間ジメチルカーボネートに浸漬した後の剥離も5%未満である)や靱性を保つことができるという高性能電池のバインダーとして要求される優れた特性を発現することができる。
本発明の特定の構造からなる電極用バインダー樹脂組成物から得られた電極は、公知の方法にしたがって、好適に電池を製造することができる。例えばリチウム二次電池の場合には、通常の方法に従って、得られた正極及び負極を、ポリオレフィン多孔質体などのセパレータを挟み込みながら、例えば円筒状に巻き取り、この円筒状の電極体を、円筒状のままで或いは押しつぶして扁平状にして、この電極体と非水電解液とを外装体内に挿入することによって、好適に電池を得ることができる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
実施例で用いた特性の測定方法を以下に示す。
<固形分濃度>
試料溶液(その質量をw1とする)を、熱風乾燥機中200℃で2時間加熱処理して、加熱処理後の質量(その質量をw2とする)を測定する。固形分濃度[質量%]は、次式によって算出した。
固形分濃度[質量%]=(w2/w1)×100
<対数粘度>
試料溶液を、固形分濃度に基づいて濃度が0.5g/dl(溶媒はNMP又はBLO)になるように希釈した。この希釈液について、30℃にて、キャノンフェンスケNo.100を用いて流下時間(T)を測定した。対数粘度は、ブランクのNMP又はBLOの流下時間(T)を用いて、次式から算出した。
対数粘度={ln(T/T)}/0.5
<溶液粘度(回転粘度)>
トキメック社製E型粘度計を用いて30℃で測定した。
<変性ポリウレタン樹脂の酸価>
JIS K0070に従い電位差滴定法にて、変性ポリウレタン樹脂溶液の酸価を求めた。なお、本発明の変性ポリウレタン樹脂は、溶解性が乏しいため、溶剤としてベンジルアルコールを用いた。
酸価A(mgKOH/g)=〔B×f×5.611〕/S
B:0.1N水酸化カリウム−エタノール溶液の使用量(ml)
f:0.1N水酸化カリウム−エタノール溶液のファクター
S:試料の採取量(g)
<DMC膨潤試験>
銅箔と電極合剤層からなる電極を5cm角に切り出したものを試料とし、電極合剤層単独の質量は計算によって銅箔の質量を減じることによって求めることとし、以下のジメチルカーボネート溶液での膨潤試験によって電極合剤層の膨潤度Sを測定した。すなわち、25℃で24時間真空管槽後の電極合剤層の質量を乾燥質量(Wd)とし、ジメチルカーボネート溶液に25℃で24時間浸漬後の電極合剤層の質量を膨潤質量(Ww)とし、次式により膨潤度Sを計算した。
S[質量%]=(Ww−Wd)/Ww×100
<付着性試験(クロスカット法)>
付着性試験は、JIS K 5600−5−6に準拠して行った。なお、評価は目視により、評価基準(3)に準拠した分類0〜分類5(数字が小さいほど強固に付着している)で示した。
なお、付着性試験は、ジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について、それぞれ行った。
<90°ピール強度測定>
90°ピール強度試験は、万能試験機(オリエンテック社製RTC−1225A)を用いて、IPC−TM650に準拠して測定した。
<90°ピール強度保持率>
ジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について、90°ピール強度を測定し、次式により90°ピール強度の保持率を算出した。
90°ピール強度保持率[%]
=浸漬後の90°ピール強度/浸漬前の90°ピール強度×100
以下の各例で使用した化合物は、次のとおりである。
<ジイソシアネート化合物>
デスモジュールW(HMDI):メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート) 住化バイエルウレタン株式会社製
IPDI: イソホロンジイソシアネート デグサジャパン株式会社製
<ポリカーボネートジオール>
UH−200:1,6−ヘキサンジオールベースポリカーボネートジオール 宇部興産株式会社製ETETNACOLL 水酸基価57.2mgKOH/g
C−1065N:1,9−ノナンジオール, 2−メチル−1,8−オクタンジオールベースポリカーボネートジオール 株式会社クラレ製クラレポリオール 水酸基価112mgKOH/g
<カルボキシル基含有ジオール化合物>
Bis−MPA:2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸 広栄パーストープ株式会社社製
DMBA:2,2−ジメチロールブタン酸 日本化成株式会社製
<アルコール>
1−Pentanol:1−ペンタノール 和光純薬株式会社製
<溶剤>
BLO:γ―ブチロラクトン 三菱化学株式会社製
CA:ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート 和光純薬株式会社製
NMP:N−メチル−2−ピロリドン 三菱化学株式会社製
<エポキシ樹脂>
YH434:東都化成株式会社製エポトート、エポキシ当量 121
<アミノ樹脂>
M136:ベンゾグアナミン樹脂 日本サイテックインダストリーズ株式会社製マイコート
<酸無水物>
ODPA:4,4’−オキシジフタル酸二無水物、
s−BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、
PMDA:ピロメリット酸二無水物、
<ジアミン>
PPD:p−フェニレンジアミン、
ODA:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、
BAPP:2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、
<イミドオリゴマージオール溶液の製造>
窒素導入管、ディーンスタークレシバー、冷却管を備えた容量5リットルのガラス製セパラブルフラスコに、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物1471g、エタノール507g及びγ−ブチロラクトン2092gを仕込み、窒素雰囲気下、90℃で1時間撹拌した。次いで、3−アミノプロパノール376g、イソホロンジアミン426gを仕込み、窒素雰囲気下、120℃で2時間、180℃2時間加熱し、イミド化反応により生じた水を反応液中に窒素を吹き込むことで除去した。このイミドオリゴマージオール溶液は、固形分52.3%であった。
〔参考例1〕<変性ウレタン樹脂(PU1)の製造>
撹拌機、温度計、窒素導入管を備えたガラス製反応容器に、ポリカーボネートジオールETERNACOLL UH−200 60.0g、溶剤 γ−ブチロラクトン(BLO) 170.5g、カルボキシル基含有ジオール Bis−MPA 10.1g、参考例で合成したイミドオリゴマージオール溶液 48.0gを仕込み、90℃で溶解した後、デスモジュールW 33.7gを加えた。90℃で1時間攪拌した後、110℃に昇温し、粘度が120〜150Pa・sとなった時点で、1−ペンタノールを加え、更に130℃2時間攪拌した。固形分 40.5%、粘度 97Pa・s、変性ウレタン樹脂固形分の酸価 33mgKOH/gの変性ウレタン樹脂(PU1)溶液を得た。
〔参考例2〕<ポリアミック酸溶液の製造>
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの400gを加え、これにPPDの6.88g(0.064モル)及びODAの29.72g(0.148モル)と、ODPAの19.73g(0.064モル)及びs−BPDAの43.67g(0.148モル)とを加え、50℃で10時間撹拌して、固形分濃度18.3質量%、溶液粘度5.1Pa・s、対数粘度0.68のポリアミック酸溶液を得た。
〔実施例1〕
参考例1で得られた変性ウレタン樹脂(PU1)溶液の100gに対して、YH434の12gを添加し、電極用バインダー樹脂組成物を得た。
得られた電極用バインダー樹脂組成物を塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、次いで200℃で1時間加熱処理して、厚さが25μmのバインダー樹脂フィルムを形成した。
銅箔上に形成したバインダー樹脂フィルムを試料としてDMC膨潤試験を行った。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について付着性試験及び90°ピール強度測定を行った。
これらの結果を表1に示した。
得られたバインダー樹脂組成物2.0g(イミド化後の固形分質量0.8g)と325メッシュパスのケイ素粉末9.2gを乳鉢中で磨り潰すように混練し、電極合剤組成物(電極合剤ペースト)を調製した。得られたペーストは、ガラス棒で銅箔上に薄く延ばすことが可能であった。
ペーストを塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、次いで200℃で1時間加熱処理して、電極合剤層の厚みが100μmの電極を作製した。
得られた電極を試料としてDMC膨潤試験を行った。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について付着性試験を行った。
これらの結果を表1に示した。
〔実施例2〕
実施例1で得られた電極用バインダー樹脂組成物の80.2gと、参考例2で得られたポリアミック酸溶液の19.8gを添加し、電極用バインダー樹脂組成物を得た。
得られた電極用バインダー樹脂組成物を塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、次いで200℃で1時間加熱処理して、厚さが25μmのバインダー樹脂フィルムを形成した。
銅箔上に形成したバインダー樹脂フィルムを試料としてDMC膨潤試験を行った。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について付着性試験及び90°ピール強度測定を行った。
これらの結果を表1に示した。
得られたバインダー樹脂組成物2.0g(イミド化後の固形分質量0.8g)と325メッシュパスのケイ素粉末9.2gを乳鉢中で磨り潰すように混練し、電極合剤組成物(電極合剤ペースト)を調製した。得られたペーストは、ガラス棒で銅箔上に薄く延ばすことが可能であった。
ペーストを塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、次いで200℃で1時間加熱処理して、電極合剤層の厚みが100μmの電極を作製した。
得られた電極を試料としてDMC膨潤試験を行った。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について付着性試験を行った。
これらの結果を表1に示した。
〔実施例3〕
実施例1で得られた電極用バインダー樹脂組成物の51.2gと、参考例2で得られたポリアミック酸溶液の48.8gを添加し、電極用バインダー樹脂組成物を得た。
得られた電極用バインダー樹脂組成物を塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、次いで200℃で1時間加熱処理して、厚さが25μmのバインダー樹脂フィルムを形成した。
銅箔上に形成したバインダー樹脂フィルムを試料としてDMC膨潤試験を行った。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について付着性試験及び90°ピール強度測定を行った。
これらの結果を表1に示した。
得られたバインダー樹脂組成物2.0g(イミド化後の固形分質量0.8g)と325メッシュパスのケイ素粉末9.2gを乳鉢中で磨り潰すように混練し、電極合剤組成物(電極合剤ペースト)を調製した。得られたペーストは、ガラス棒で銅箔上に薄く延ばすことが可能であった。
ペーストを塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、次いで200℃で1時間加熱処理して、電極合剤層の厚みが100μmの電極を作製した。
得られた電極を試料としてDMC膨潤試験を行った。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について付着性試験を行った。
これらの結果を表1に示した。
〔実施例4〕
実施例1で得られた電極用バインダー樹脂組成物の31.0gと、参考例2で得られたポリアミック酸溶液の69.0gを添加し、電極用バインダー樹脂組成物を得た。
得られた電極用バインダー樹脂組成物を塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、次いで200℃で1時間加熱処理して、厚さが25μmのバインダー樹脂フィルムを形成した。
銅箔上に形成したバインダー樹脂フィルムを試料としてDMC膨潤試験を行った。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について付着性試験及び90°ピール強度測定を行った。
これらの結果を表1に示した。
得られたバインダー樹脂組成物2.0g(イミド化後の固形分質量0.8g)と325メッシュパスのケイ素粉末9.2gを乳鉢中で磨り潰すように混練し、電極合剤組成物(電極合剤ペースト)を調製した。得られたペーストは、ガラス棒で銅箔上に薄く延ばすことが可能であった。
ペーストを塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、次いで200℃で1時間加熱処理して、電極合剤層の厚みが100μmの電極を作製した。
得られた電極を試料としてDMC膨潤試験を行った。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について付着性試験を行った。
これらの結果を表1に示した。
〔実施例5〕
実施例1で得られた電極用バインダー樹脂組成物の16.2gと、参考例2で得られたポリアミック酸溶液の83.8gを添加し、電極用バインダー樹脂組成物を得た。
得られた電極用バインダー樹脂組成物を塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、次いで200℃で1時間加熱処理して、厚さが25μmのバインダー樹脂フィルムを形成した。
銅箔上に形成したバインダー樹脂フィルムを試料としてDMC膨潤試験を行った。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について付着性試験及び90°ピール強度測定を行った。
これらの結果を表1に示した。
得られたバインダー樹脂組成物2.0g(イミド化後の固形分質量0.8g)と325メッシュパスのケイ素粉末9.2gを乳鉢中で磨り潰すように混練し、電極合剤組成物(電極合剤ペースト)を調製した。得られたペーストは、ガラス棒で銅箔上に薄く延ばすことが可能であった。
ペーストを塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、次いで200℃で1時間加熱処理して、電極合剤層の厚みが100μmの電極を作製した。
得られた電極を試料としてDMC膨潤試験を行った。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について付着性試験を行った。
これらの結果を表1に示した。
〔実施例6〕
実施例1で得られた電極用バインダー樹脂組成物の4.8gと、参考例2で得られたポリアミック酸溶液の95.2gを添加し、電極用バインダー樹脂組成物を得た。
得られた電極用バインダー樹脂組成物を塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、次いで200℃で1時間加熱処理して、厚さが25μmのバインダー樹脂フィルムを形成した。
銅箔上に形成したバインダー樹脂フィルムを試料としてDMC膨潤試験を行った。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について付着性試験及び90°ピール強度測定を行った。
これらの結果を表1に示した。
得られたバインダー樹脂組成物2.0g(イミド化後の固形分質量0.8g)と325メッシュパスのケイ素粉末9.2gを乳鉢中で磨り潰すように混練し、電極合剤組成物(電極合剤ペースト)を調製した。得られたペーストは、ガラス棒で銅箔上に薄く延ばすことが可能であった。
ペーストを塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、次いで200℃で1時間加熱処理して、電極合剤層の厚みが100μmの電極を作製した。
得られた電極を試料としてDMC膨潤試験を行った。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について付着性試験を行った。
これらの結果を表1に示した。
〔比較例1〕
参考例1で得られた変性ウレタン樹脂(PU1)溶液を塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、次いで200℃で1時間加熱処理して、厚さが25μmのバインダー樹脂フィルムを形成した。
銅箔上に形成したバインダー樹脂フィルムを試料としてDMC膨潤試験を行ったが、変性ウレタン樹脂(PU1)が溶解してしまった。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前の試料について付着性試験及び90°ピール強度測定を行った。
これらの結果を表1に示した。
参考例1で得られた変性ウレタン樹脂(PU1)溶液2.0g(イミド化後の固形分質量0.8g)と325メッシュパスのケイ素粉末9.2gを乳鉢中で磨り潰すように混練し、電極合剤組成物(電極合剤ペースト)を調製した。得られたペーストは、ガラス棒で銅箔上に薄く延ばすことが可能であった。
ペーストを塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、次いで200℃で1時間加熱処理して、電極合剤層の厚みが100μmの電極を作製した。
得られた電極を試料としてDMC膨潤試験を行ったが、変性ウレタン樹脂(PU1)が溶解してしまい、電極合剤層がすべて脱落してしまった。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前の試料について付着性試験及び90°ピール強度測定を行った。
これらの結果を表1に示した。
〔比較例2〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの450gを加え、これにPVDF(Mw:14万)の50gを加え、25℃で4時間撹拌して、ポリマー濃度10.0質量%のバインダー樹脂組成物を得た。
得られた電極用バインダー樹脂組成物を塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下で、120℃で6時間加熱処理して、厚さが25μmのバインダー樹脂フィルムを形成した。
銅箔上に形成したバインダー樹脂フィルムを試料としてDMC膨潤試験を行った。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について付着性試験及び90°ピール強度測定を行った。
これらの結果を表2に示した。
得られたバインダー樹脂組成物8.0g(ポリマー質量0.8g)と325メッシュパスのケイ素粉末9.2gを乳鉢中で磨り潰すように混練し、電極合剤ペーストを調製した。得られたペーストは、ガラス棒で銅箔上に薄く延ばすことが可能であった。ペーストを塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下で、120℃で6時間加熱処理して、電極合剤層の厚みが100μmの電極を作製したが、電極合剤層の一部に脱落が見られた。
これらの結果を表2に示した。
〔比較例3〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、水分散SBR(ポリマー濃度40質量%)の300gにカルボキシメチルセルロース2質量%水溶液200gを加え、25℃で4時間撹拌して、バインダー樹脂組成物を得た。
得られた電極用バインダー樹脂組成物を塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下で、120℃で6時間加熱処理して、厚さが25μmのバインダー樹脂フィルムを形成した。
銅箔上に形成したバインダー樹脂フィルムを試料としてDMC膨潤試験を行った。またジメチルカーボネート溶液での膨潤試験前後の試料について付着性試験及び90°ピール強度測定を行った。
これらの結果を表2に示した。
得られたバインダー樹脂組成物3.23g(ポリマー質量0.8g)と325メッシュパスのケイ素粉末9.2gを乳鉢中で磨り潰すように混練し、電極合剤ペーストを調製した。得られたペーストは、ガラス棒で銅箔上に薄く延ばすことが可能であった。ペーストを塗布した銅箔を基板上に固定し、減圧下で、120℃で6時間加熱処理して、電極合剤層の厚みが100μmの電極を作製したが、電極合剤層の一部に脱落が見られた。
これらの結果を表2に示した。
Figure 0005849452
Figure 0005849452
本発明によれば、リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタなどの電気化学素子の電極のバインダー用途として好適な、電池環境下でも膨潤度が小さく、優れた接着性を有する、新たな化学構造からなる電極用バインダー樹脂組成物を得ることができる。
本発明によって、200℃以下の比較的低温で加熱処理することによって、ポリイミドをバインダーとした、電池環境下でも膨潤度が小さく且つ優れた付着性や接着性を保つことができる高性能のリチウム二次電池用の電極を容易に得ることができる、電極の製造方法を提案することができる。

Claims (9)

  1. (a1)ジイソシアネート化合物、(a2)下記化学式(1)で示される2官能性水酸基末端のポリカーボネートジオールを含むポリオール化合物、(a3)カルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物、及び(a4)下記化学式(2)で示されるアルコール性水酸基末端のイミドオリゴマーを有機溶媒に溶解して反応して得られる変性ポリウレタン樹脂(A)溶液に、硬化性樹脂(B)を添加することを特徴とする電極用バインダー樹脂組成物の製造方法。
    Figure 0005849452
    但し、式中、Rは2価の脂肪族又は芳香族炭化水素基を示し、nは1〜40の整数である。
    Figure 0005849452
    但し、式中、Rは2価の脂肪族又は芳香族炭化水素基を示し、Xはテトラカルボン酸のカルボキシル基を除いた4価の基を示し、Yはジアミンのアミノ基を除いた2価の基を示し、mは0〜20の整数である。
  2. 硬化性樹脂(B)が、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ブロック化された多官能イソシアネート、シアネートエステル樹脂からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の電極用バインダー樹脂組成物の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の電極用バインダー樹脂組成物の製造方法により製造した電極用バインダー樹脂組成物に、ポリアミック酸(C)を添加することを特徴とする電極用バインダー樹脂組成物の製造方法。
  4. ポリアミック酸(C)が、下記化学式(3)で表される繰返し単位からなることを特徴とする請求項3記載の電極用バインダー樹脂組成物の製造方法。
    Figure 0005849452
    化学式(3)において、Aは、その10〜100モル%が下記化学式(4)で示される4価の基であり、その90〜0モル%が下記化学式(5)、下記化学式(6)、及び下記化学式(7)の少なくともいずれか1つで示される4価の基であり、Bは、1〜4個の芳香族環を有する2価の基である。
    Figure 0005849452
    Figure 0005849452

    Figure 0005849452
    Figure 0005849452

  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法により製造した電極用バインダー樹脂組成物に、電極活物質を混合することを特徴とする電極合剤ペーストの製造方法。
  6. 電極活物質が、リチウム含有金属複合酸化物、炭素粉末、ケイ素粉末、スズ粉末、ケイ素を含む合金粉末、及びスズを含む合金粉末、の少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項5に記載の電極合剤ペーストの製造方法。
  7. 請求項5又は6に記載の製造方法により製造した電極合剤ペーストを集電体上に塗布し、加熱処理して溶媒を除去するとともにイミド化反応することを特徴とする電極の製造方法。
  8. 加熱処理温度が250℃以下であることを特徴とする請求項に記載の電極の製造方法。
  9. リチウムイオン二次電池用負極であることを特徴とする請求項7又は8に記載の電極の製造方法。
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