JP5846096B2 - 内周刃ブレードのドレッシング方法 - Google Patents
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Description
このようなコーン状の端部の切断加工や、胴体部を複数のブロックに切断加工する場合には、内周刃スライサー、外周刃スライサーなどが多く用いられてきた。近年のウェーハの大口径化に伴ってバンドソーも多く使用されるようになってきた。
図11に示すように、内周刃スライサー110の内周刃ブレード101は、ドーナツ状薄板104の内周部にダイヤモンド砥粒が電着されて刃先103が形成されている。インゴット113はクランパ(不図示)等によって押圧されて保持されている。そして、インゴット113のウェーハに切断される側の端面は吸着手段111によって真空吸着されている。
このようにして切断を重ねていくと、内周刃ブレード101の刃先103にスラッジ(切断粉末)が堆積するなどして表面のダイヤモンド砥粒が埋もれたり、切断によって砥粒が摩耗、或いは脱落したりしてその切断能力が低下してしまう。このような状態で切断を行うと、図12(A)に示すように、インゴット113の軸方向で+方向又は−方向のどちらか刃先の切れ易い方向へ内周刃ブレード101が変位してしまう。
例えば、図12(B)に示すように、内周刃ブレード101が−方向(吸着手段側)に変位した場合、切断中のウェーハを吸着手段111に押しつける方向で力が作用する為に、結果として切断中にウェーハが割れてしまい、内周刃ブレード101の回転によりウェーハが吸着手段111から外れ飛ばされてしまうこともある。
その手段として、内周刃ブレードに応じて設定された主軸モーターの基準負荷電流値と切断中に測定された主軸モーターの負荷電流値との差を逐次算出し、ブレードに作用する切断抵抗が増大すれば主軸モーターの負荷電流値も増加するため、基準負荷電流値との差の変化を監視することで、ドレッシング必要時期を判断するスライシングマシンが開示されている(特許文献1)。
前記技術に加え、ブレードの厚さ方向の変位を検出するセンサーと、ブレードに厚さ方向の非接触力を加える非接触力発生手段と、ブレードの変位が一定量を超えた時、非接触力発生手段を制御してブレードの変位を補正する制御手段を具備したスライシングマシンが開示されている。この技術では、特許文献1のドレッシングを行う前に非接触力発生手段を制御して、ブレードの厚さ方向に非接触力を加えることで、ブレードの刃先自体の切れ味改善を行わずに、強制的にブレード変位を補正している。このため、ドーナツ状の薄板に損傷を与える可能性があり、ブレード変位が修正されてもブレード寿命が短くなる問題がある。
内周刃ブレードに対して接触させるローラ砥石を、駆動モーターによりX軸及びZ軸方向へ移動自在に支持するX軸Z軸両駆動機構の駆動制御を行いながら、ローラー砥石を内周刃ブレードに対して所定の軌道にて接触させ、負荷量検出器及びブレード変位センサーから検出される回転負荷と内周刃ブレードの変位量に基づいてドレッシング量を演算する手段である。
この方法では、短時間で効果的に内周刃ブレードの刃先を局所的にドレッシングして、内周刃ブレードの変位を効果的に修正、且つ、内周刃ブレードのライフを向上することができ、ハンドドレッシングのように危険性が極めて高い作業を皆無にすることができている。しかし、上記したように、刃先の左右どちら側の部分をドレッシングするかの選択や、変位量に応じてどの程度の強さでドレッシングするかは作業者の判断に任されており、個人差が生じていた。
内周刃ブレードの変位は、刃先の切れ味などにより変化するが、図13(a)のように+方向或いは、図13(b)のように−方向の片方向にのみ変化したり、図13(c)のように+方向と−方向の両方向へ変化する場合もあり、刃先の左右どちら側の部分をドレッシングするか作業者の判断を要する。
また、変位チャートの+方向、或いは−方向の変位の大きさ(山の大きさ)により、ドレス材の深さ方向の送り量やドレス材を相対的に移動する速度等を、都度判断する必要があり、これも作業者のスキルに大きく依存してしまう場合もある。
また、最近では設備の自動化による省力化、無人化が進んでおり、特に無人稼働中に内周刃ブレードの変位が大きくなりドレッシングが必要になった場合には、ドレッシングを行うことができず、設備の長時間停止による稼働率の低下、または内周刃ブレード破断による設備損害の原因となっていた。
このように選択することで、内周刃ブレードの変形をより正確に把握して刃先をより効果的にドレッシングできる側を選択することができる。
このようにドレッシング強さも自動で選択することで、より効率的に精度良くドレッシングすることができる。
このようにドレッシングを行うことで、作業者によるハンドドレッシング作業を行うことなく、短時間で効果的に内周刃ブレードの刃先の選択した側の部分のみのドレッシングを行うことができるので、切断中の内周刃ブレードの変位を効果的に修正できる。
このような基準溝を形成することで、ドレッシングすると選択した側とは反対側の刃先の部分をより確実にドレス材と接触させずにドレッシングすることができる。
このようにドレッシングすることで、ドレッシングすると選択した側のみのドレッシングをより確実に十分に行うことができる。
このように上記移動とドレッシングを繰返し行えば、ドレッシングすると選択した側のみのドレッシングをさらに十分に行って、内周刃ブレードの変位をより確実に修正できる。
そして本発明では、内周刃ブレード1の変位の方向及び変位量を計測器2により計測し、該計測した内周刃ブレード1の変位の方向及び変位量に基づいて、刃先3の左右どちら側の部分をドレッシングするかを制御機器15により選択する工程と、刃先3のドレッシングすると選択した側の部分のみを局所的にドレッシングする工程とを、自動で行う。
本発明では、内周刃ブレードの刃先の左右どちら側の部分をドレッシングするかの判断やドレッシングの強さ(例えば、ドレス材の深さ方向の送り量及びドレス材を相対的に移動する速度)を自動的に判断するために、内周刃ブレード1の変位を計測できる計測器2と、計測した内周刃ブレード1の変位を数値制御できるシーケンサなどの制御機器15を用いる。
−方向側の面積11=Km(B1+B2+B3+Bn・・・)
一方、−方向側の面積11>+方向側の面積10の場合には、刃先3の−方向側が切れやすいため、刃先3の+方向側を局所的にドレッシングする。
この際用いる+方向の係数Kpと−方向の係数Kmは、実験の結果、係数比Km/Kp=1.6〜2.5が好ましいことが分かった。これにより、特に−方向(吸着手段側)への変位を確実に抑制して、ウェーハの割れ等を効果的に防止することができる。
本発明で設定できる具体的なしきい値の例を以下に示す。
+方向のしきい値(1)=100μm
+方向のしきい値(2)=110μm
+方向のしきい値(3)=120μm
+方向のしきい値(4)=150μm
+方向のしきい値(5)=180μm
−方向のしきい値(1)=20μm
−方向のしきい値(2)=40μm
−方向のしきい値(3)=60μm
−方向のしきい値(4)=90μm
−方向のしきい値(5)=130μm
ここで、上記した+方向のしきい値(4)、(5)及び−方向のしきい値(2)−(5)は、前記管理値−30μm〜120μmを超えた値となっているが、これは、何らかの原因により内周刃ブレード1のダイヤモンド砥粒が大幅に脱落すること、ダイヤモンドが電着されているドーナツ状の薄板4に損傷が生じ、急激に変位が大きくなる場合を想定して設定されている。
まず、図5(A)に示すように、ドレス材13に予め基準溝14を形成する(図5のA参照)。この基準溝14の高さhdは、特に限定されることはないが、例えば図5(B)に示すように、ドレッシングする内周刃ブレード1の刃先3の高さhb以上であることが望ましく、ドレス材13を完全に切り離してしまうことなく、ドレッシング時にドレス材13が基準溝14の下方で破損してしまわない程度の高さに形成すればドレス材13を有効利用できるので好ましい。
この基準溝14の形成は、例えば図5(B)に示すように、ドレッシングを行う内周刃ブレード1を用いて、ドレス材13に切り込むことで形成することができる。もちろん、別のブレード等を用いて形成することもできる。
このようにすれば、ドレッシングすると選択した側とは反対側の刃先3の部分をドレス材13と確実に接触させずにドレッシングでき、すなわちドレッシングすると選択した側のみのドレッシングを十分に確実に行うことができる。
ここで、繰り返し行う内周刃ブレード1及びドレス材13を相対的に移動する工程での基準位置を、図7に示すように、例えばドレッシングすると選択した側を右とした場合に前工程のドレッシングで切り込んだ部分の下方のドレス材13の基準溝14の開口部の角R2とすることができる。そして、その基準位置から上記のようにしてドレッシングを行う。さらにこれら工程を繰り返す場合には、図7に示すように、そのドレッシングによる切り込み後のドレス材13の基準溝14の開口部の角R3を基準位置とすることができる。
また、上記のようにしてドレッシングを繰り返し行っていくと基準溝14の幅が次第に大きくなり、同じドレス材13ではその長さによって使用の限界に達する。この場合にはドレス材13の交換が必要になり、交換後には予め基準溝14を形成しておく。
(実施例)
内周刃ブレードの変位量の管理範囲を−30μm〜120μmと定め、本発明にて切断開始直後より10秒間隔で内周刃ブレードの変位を積算した(図8参照)。
+方向側の面積10=Kp(A1+A2+A3+An・・・)
−方向側の面積11=Km(B1+B2+B3+Bn・・・)
の面積の比較で、この面積が大きい方とは逆の側を局所的にドレッシングする側として選択されるようにした。上記係数は+側係数Kpを0.5、−側係数Kmを1.0として、係数比Km/Kp=2.0とした。変位の積算間隔は、10秒よりも狭い間隔の方が正確な面積を算出できるが、−30μm〜120μmの管理範囲においては、10秒間隔で計測して、内周刃ブレードの刃先のどちらかをドレッシングするかの選択が適正に行われた。
以上のドレッシングするか否かの判断、ドレッシングする側の選択、ドレッシング強さの決定を制御機器で行い、さらに選択した条件でのドレッシングを、全て自動で行った。
図9,10ともに、実施例では両方向のブレード変位に対し、そのブレード変位量が小さい段階で適切にドレッシングが行われていることが分かる。これにより、ブレード変位量が小さい段階ではドレッシング強さが弱くても効果があり、ブレード刃先の摩耗の進行を抑制する効果が得られ、結果的にブレードライフを向上することができた。図9,10は、100枚の異なる内周刃ブレードについて評価したものであり、ドレッシングが行われた後は、表3に示すように−30μ〜120μmの管理範囲内に100%修正することができた。その結果、ブレード1枚当たりの平均ブレードライフは比較例の1.07倍となり、設備稼働率は作業者を介さずに自動的にドレッシングが行われたことで比較例に対し1.05倍となった。
内周刃ブレードの変位量が−20μm〜100μmを超えた場合に、内周刃ブレードの刃先の左右どちら側の部分をドレッシングするかの判断、及びドレッシング強さ(ドレス材の深さ方向の移動量、速度及びドレッシングする側の方向へドレス材を相対的に移動する量、速度)を作業者に判断させ、内周刃ブレードのドレッシングを行った。同様の方法で100枚の異なる内周刃ブレードについて評価した。
本発明の実施例と比較すると、作業者の判断などの影響で適切な時期でドレッシングが行われず、ブレード変位量が大きくなってからドレッシングが行われているケースが多かった。前記のとおり、ブレードの変位量が大きいとドレッシング強さが強くなるため、刃先の摩耗促進に繋がる。また、8%のドレッシングにおいて、内周刃ブレードの変位量が、管理範囲の−30μ〜120μmに修正することができず、繰り返しドレッシング作業が行われたため、同様に刃先の摩耗促進に繋がり、結果的にブレードライフが短くなってしまった。
5…インゴット、 6…吸着手段、 7…切断開始、 8…切断終了、
9…変位計測値、 10…+方向側の面積、 11…−方向側の面積、
12…ブレード変位チャート、 13…ドレス材、 14…基準溝、
15…制御機器。
Claims (6)
- ドーナツ状薄板の内周部に砥粒が固着されて刃先が形成された内周刃ブレードをドレス材に切り込ませて前記刃先を局所的にドレッシングする内周刃ブレードのドレッシング方法であって、
前記内周刃ブレードの変位の方向及び変位量を計測器により計測し、該計測した内周刃ブレードの変位の方向及び変位量に基づいて、前記刃先の左右どちら側の部分をドレッシングするかを制御機器により選択する工程と、
前記刃先のドレッシングすると選択した側の部分のみを局所的にドレッシングする工程とを、自動で行い、
前記選択する工程において、前記内周刃ブレードの変位の方向及び変位量を前記内周刃ブレードによる切断開始から切断終了まで計測し、該計測した内周刃ブレードの変位の方向及び変位量に基づいて、前記内周刃ブレードの左側と右側の変位のチャート面積を算出し、該算出したチャート面積の比較によって前記刃先の左右どちら側の部分をドレッシングするかを制御機器により選択することを特徴とする内周刃ブレードのドレッシング方法。 - 前記選択する工程において、前記内周刃ブレードの左側及び右側のそれぞれの変位の方向において、前記内周刃ブレードの変位の変位量のしきい値を複数設け、前記計測した変位量に応じて、前記しきい値毎に定めたドレッシング強さを選択することを特徴とする請求項1に記載の内周刃ブレードのドレッシング方法。
- 前記局所的にドレッシングする工程において、
前記ドレス材に予め基準溝を形成し、
前記基準溝の開口部側が前記ドレッシングすると選択した側とは反対側になるようにして、前記基準溝の開口部の角の位置と前記刃先の最先端位置とが一致するように前記内周刃ブレード及びドレス材を相対的に移動させ、
前記刃先を相対的に前記ドレス材の深さ方向及び前記刃先のドレッシングすると選択した側の方向に同時に送ることによって、該ドレッシングすると選択した側とは反対側の前記刃先の部分を前記ドレス材と接触させずに、前記ドレス材に切り込ませて、前記刃先の選択した側の部分のみを局所的にドレッシングすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の内周刃ブレードのドレッシング方法。 - 前記基準溝を、該基準溝の幅が前記刃先の幅の1/2より大きくなるように形成することを特徴とする請求項3に記載の内周刃ブレードのドレッシング方法。
- 前記刃先を相対的に前記ドレス材の深さ方向に送る際の送り量を前記刃先の高さと同じかそれ以下にし、前記刃先のドレッシングすると選択した側の方向に送る際の送り量を前記刃先の幅の1/2と同じかそれ以下にすることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の内周刃ブレードのドレッシング方法。
- 前記局所的にドレッシングする工程において、前記内周刃ブレード及びドレス材を相対的に移動させ、前記刃先の選択した側の部分のみを局所的にドレッシングすることを繰返し行うことを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれか一項に記載の内周刃ブレードのドレッシング方法。
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