JP5845791B2 - 焼鈍炉の冷却装置 - Google Patents
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Description
特許文献1に記載されている技術は、焼鈍炉ベルの内部空間において、インナーケースの外面へ空気を吹き付けて、インナーケース内に配置したコイル材を冷却する間接冷却を行うものである。
上記の問題を解決するための技術としては、例えば、特許文献2に記載されているような技術がある。
なお、コイル材Cの焼鈍中は、圧力測定口48において、圧力計14により、炉圧(インナーケース2の内部空間の気圧)を測定するとともに、雰囲気ガスバルブスタンド30から必要量の雰囲気ガスを供給して、炉圧を適正値に保持する。この場合、例えば、コイル材Cが薄板用コイル材であれば、常時、4[Nm3/hr.]程度の雰囲気ガスを供給し、炉圧をプラス10[mmAq]程度に保持して、薄板用コイル材の焼鈍を行う。
コイル材の内径面に雰囲気ガスを吹き付ける技術では、冷却効率の点から、大流量の雰囲気ガスが必要となるため、コイル材の内径面に吹き付けた後の雰囲気ガスを回収してガスクーラーで冷却した後、循環ファンで送風して、再度、コイル材の内径面に吹き付ける循環方法が考案されている。
具体的には、雰囲気ガスを循環させて使用する方式では、冷却能力の点から、最大で2400[Nm3/hr.]程度の流量が必要である。
また、コイル材の冷却開始時には、急激な炉圧変動による外気の侵入を防止するために、さらに、雰囲気ガスの流量を4[Nm3/hr.]程度まで絞る必要がある。
したがって、コイル材の内径面に雰囲気ガスを吹き付ける技術では、雰囲気ガスの流量を制御する範囲として必要な制御範囲が、2400[Nm3/hr.]程度〜4[Nm3/hr.]程度となる。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、流量比の大きな雰囲気ガスの流量制御を可能として、冷却効率の悪化を抑制することが可能な、焼鈍炉の冷却装置を提供することを課題とする。
前記コイル材の内周側へ配置されてコイル材の内径面へ雰囲気ガスを吹き付ける冷却塔と、
前記炉内と連通する雰囲気ガス投入用配管及び雰囲気ガス排気用配管を有する循環経路上に配置され、前記コイル材の内径面へ吹き付けて前記炉内から排気された雰囲気ガスを前記循環経路上で循環させる循環ファンと、
前記循環ファンから送風された雰囲気ガスの単位時間当たりの流量を変化させて、前記冷却塔から前記コイル材の内径面へ吹き付ける雰囲気ガスの単位時間当たりの流量を変化可能な複数の流量調節弁と、
前記循環経路の外部から導入した雰囲気ガスの単位時間当たりの流量を変化させて、前記冷却塔から前記コイル材の内径面へ吹き付ける雰囲気ガスの単位時間当たりの流量を変化可能な雰囲気ガスバルブスタンドと、
前記複数の流量調節弁の流量と、前記雰囲気ガスバルブスタンドの流量と、を個別に制御可能な流量制御部と、を備え、
前記複数の流量調節弁は、それぞれ、前記単位時間当たりの流量を変化可能な範囲が異なり、且つ前記循環経路上へ並列に配置され、さらに、前記複数の流量調節弁のうち、前記流量を変化可能な範囲が上下に隣り合う選択した二つの流量調整弁のうち一方の雰囲気ガスの単位時間当たりの流量の下限値は、前記流量を変化可能な範囲が上下に隣り合う選択した二つの流量調整弁のうち他方の雰囲気ガスの単位時間当たりの流量の上限値と等しく、
前記雰囲気ガスバルブスタンドが前記単位時間当たりの流量を変化可能な範囲は、前記複数の流量調節弁が前記単位時間当たりの流量を変化可能な範囲よりも小さく、
前記流量制御部は、前記コイル材の焼鈍時に、前記循環経路における予め設定した前記雰囲気ガスの単位時間当たりの循環流量に応じて、前記雰囲気ガスバルブスタンドから前記コイル材の内径面へ吹き付ける雰囲気ガスの単位時間当たりの流量を制御した後に、前記複数の流量調節弁のうち前記単位時間当たりの流量が小さい流量調節弁から、前記コイル材の内径面へ吹き付ける雰囲気ガスの単位時間当たりの流量を制御して、前記複数の流量調節弁の流量を個別に制御することを特徴とするものである。
このため、流量制御部が雰囲気ガスの流量を制御可能な範囲が、複数の流量調節弁でそれぞれ異なる、単位時間当たりの流量を変化可能な範囲となり、流量比の大きな雰囲気ガスの流量制御が可能となる。
このため、雰囲気ガスバルブスタンドを、複数の流量調節弁のうち、単位時間当たりの流量が最小の流量調節弁の代わりとして用いることが可能となり、複数の流量調節弁の個数を一つ減らしても、複数の流量調節弁の個数を一つ減らさない場合と同様に、コイル材の焼鈍を行うことが可能となる。
前記炉内の雰囲気ガスを前記循環経路の外部へ放散可能な雰囲気ガス放散量調整用バルブと、を備え、
前記流量制御部は、前記圧力計が測定した前記炉圧が予め設定した炉圧閾値を超えていると判定すると、前記圧力計が測定した前記炉圧が前記炉圧閾値以下となるように、前記雰囲気ガス放散量調整用バルブの開閉度合いを制御することを特徴とするものである。
このため、コイル材の焼鈍時に、冷却能力を優先させて雰囲気ガスの流量を制御した結果、炉圧が炉圧閾値を超えている場合であっても、雰囲気ガス放散量調整用バルブの開閉度合いを制御して、炉内の雰囲気ガスを循環経路の外部へ放散させることにより、炉圧を適正値に制御することが可能となる。
以下、本発明の第一実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
まず、図1から図6を用いて、本実施形態の焼鈍炉の冷却装置の構成を説明する。
図1は、本実施形態の焼鈍炉の冷却装置1の概略構成を示す図である。なお、以下の説明では、上述した従来例の焼鈍炉の冷却装置(図8参照)と同様の構成については、記載を省略する場合がある。
図1中に示すように、冷却装置1を適用する焼鈍炉は、炉内に配置された円筒形状のコイル材Cを焼鈍するベル型焼鈍炉Bであり、インナーケース2と、焼鈍炉ベル4と、コイル材受け金物6と、炉床レンガ8と、ガスシール10を備えている。
焼鈍炉ベル4は、インナーケース2を内部空間に配置可能に形成されており、インナーケース2と同様、ベル形状に形成されている。
コイル材受け金物6は、コイル材Cを載置した状態で、インナーケース2の内部空間に配置されている。すなわち、インナーケース2の内部空間は、ベル型焼鈍炉Bの炉内を形成している。
ガスシール10は、インナーケース2と炉床レンガ8との間に介装されており、インナーケース2の内部空間を焼鈍炉ベル4側の外気から遮断している。
冷却塔12は、複数の開口部(図示せず)を外径面に有しており、コイル材Cの内周側へ配置されてコイル材Cの空隙部内に挿入された状態で、インナーケース2の内部空間に配置されている。
圧力計14は、インナーケース2の内部空間とガスクーラー34とを連通する雰囲気ガス排気用配管46のうち、インナーケース2の内部空間に設定した圧力測定口48において、インナーケース2の内部空間(炉内)の気圧(炉圧)を測定し、この測定したインナーケース2の内部空間の気圧を含む情報信号を、流量制御部40へ出力する。
雰囲気ガス供給部20は、炉内と連通する雰囲気ガス投入用配管44及び雰囲気ガス排気用配管46を有する循環経路上に配置されて、冷却塔12と循環ファン32との間において、雰囲気ガス投入用配管44と連通しており、循環ファン32から冷却塔12への、雰囲気ガス(アルゴンガスや窒素ガス)の供給経路を形成している。
第一流量調節部22aと、第二流量調節部22b及び第三流量調節部22cは、それぞれ、独立した雰囲気ガスの供給経路を形成している。
第一流量調節部22aは、第一流量調節弁24aと、第一流量計26aを備えており、第一流量調節部22a、第二流量調節部22b及び第三流量調節部22cの中では、雰囲気ガスの流量が最大となっている。
本実施形態では、一例として、第一流量調節弁24aを、その開閉度合いに応じて、雰囲気ガスの流量を、2400[Nm3/hr.]〜240[Nm3/hr.]の間で変化可能に形成した場合を説明する。
第二流量調節部22bは、第二流量調節弁24bと、第二流量計26bを備えており、雰囲気ガスの流量が、第一流量調節部22aよりも少なくなっているとともに、第三流量調節部22cよりも大きくなっている。
第二流量調節弁24bは、第一流量調節弁24aと同様、流量制御部40が出力した指令信号に応じて開閉度合い(開度)が変化する弁であり、その開閉度合いに応じて、雰囲気ガスの流量を変化可能に形成されている。
本実施形態では、一例として、第二流量調節弁24bを、その開閉度合いに応じて、雰囲気ガスの流量を、240[Nm3/hr.]〜24[Nm3/hr.]の間で変化可能に形成した場合を説明する。
第二流量計26bは、第二流量調節弁24bよりも、雰囲気ガスの供給経路で下流側に配置されており、第二流量調節弁24bから供給される雰囲気ガスの流量を測定し、この測定した雰囲気ガスの流量を含む情報信号を、流量制御部40へ出力する。
第三流量調節弁24cは、第一流量調節弁24aと同様、流量制御部40が出力した指令信号に応じて開閉度合い(開度)が変化する弁であり、その開閉度合いに応じて、雰囲気ガスの流量を変化可能に形成されている。
本実施形態では、一例として、第三流量調節弁24cを、その開閉度合いに応じて、雰囲気ガスの流量を、24[Nm3/hr.]〜2.4[Nm3/hr.]の間で変化可能に形成した場合を説明する。
以上により、本実施形態では、雰囲気ガス供給部20全体によって、大きな流量比(1/1000=2.4[Nm3/hr.]/2400[Nm3/hr.])の制御を行うことが可能となっている。
以上により、複数の流量調節弁24(第一流量調節弁24a、第二流量調節弁24b、第三流量調節弁24c)は、それぞれ、単位時間当たりの流量を変化可能な範囲が異なり、且つ上述した循環経路上へ並列に配置されている。
雰囲気ガスバルブスタンド30は、冷却塔12と雰囲気ガス供給部20との間において、雰囲気ガス投入用配管44と連通している。すなわち、雰囲気ガスバルブスタンド30は、雰囲気ガス供給部20から冷却塔12への雰囲気ガスの供給経路に連通している。
循環ファン32は、雰囲気ガス供給部20よりも、上述した循環経路上で上流側に配置されており、雰囲気ガスを、雰囲気ガス投入用配管44、具体的には、雰囲気ガス供給部20へ送風する送風機であり、モータの駆動により動作する。
ガスクーラー34は、雰囲気ガス排気用配管46を介して、インナーケース2の内部空間と連通しており、インナーケース2の内部空間から排気された雰囲気ガスを冷却する。ガスクーラー34で冷却された雰囲気ガスは、循環ファン32により雰囲気ガス供給部20へ送風される。
雰囲気ガス放散量調整用バルブ36は、雰囲気ガス排気用配管46のうち、インナーケース2の内部空間とガスクーラー34との間と外気との間に配置されている。
流量制御部40は、例えば、コンピュータ等を用いて形成されており、第一流量調節弁24a、第二流量調節弁24b及び第三流量調節弁24cの流量と、雰囲気ガスバルブスタンド30の流量を、個別に制御可能である。
本実施形態では、一例として、冷却パターンを、図2中に示すように、冷却開始時に900[℃]程度であるコイル材Cの温度が、冷却開始から100時間後には250[℃]程度まで低下するように、コイル材Cを冷却するパターンとした場合を説明する。なお、図2は、コイル材Cの冷却パターンを示す図であり、縦軸にコイル材Cの温度(図中では、「温度[℃]」と記載する)を示し、横軸に冷却開始からの経過時間(図中では、「時間[h]」と記載する)を示している。
以下、図1及び図2を参照しつつ、図3から図6を用いて、流量制御部40が行う循環流量の制御について説明する。
流量制御部40は、循環流量を制御する際に、予め設定した冷却パターンに応じて、第一流量調節弁24a、第二流量調節弁24b及び第三流量調節弁24cへ出力する指令信号と、スタンド用弁へ出力する指令信号を、それぞれ、冷却開始からの経過時間に応じて演算する。
なお、図3は、循環経路を循環する雰囲気ガスの流量と冷却時間との関係を示す図であり、縦軸に循環経路を循環する雰囲気ガスの流量(図中では、「循環ガス流量[Nm3/hr.]」と記載する)を示し、横軸に冷却開始からの経過時間(図中では、「時間[h]」と記載する)を示している。
循環経路を循環する雰囲気ガスの流量は、例えば、第一流量計26a、第二流量計26b及び第三流量計26cが出力した情報信号に基づいて算出する。
ここで、流量制御部40は、冷却開始から約2時間が経過するまでの間において、図4中に示すように、循環経路を循環する雰囲気ガスの循環流量が、時間の経過につれて増加するように、第一流量調節弁24a、第二流量調節弁24b及び第三流量調節弁24cへ出力する指令信号と、スタンド用弁へ出力する指令信号を演算する。
具体的には、流量制御部40は、図5中に示すように、コイル材Cの冷却開始時には、循環経路を循環する雰囲気ガスの循環流量が4[Nm3/hr.]となるように、指令信号を演算する。
さらに、流量制御部40は、図5中に示すように、コイル材Cの冷却開始から約0.2時間(約12分)が経過するまでの間に、循環経路を循環する雰囲気ガスの循環流量が4[Nm3/hr.]から24[Nm3/hr.]まで、時間の経過とともに増加するように、指令信号を演算する。
これに加え、本実施形態では、第三流量調節弁24cを、その開閉度合いに応じて、雰囲気ガスの流量を、24[Nm3/hr.]〜2.4[Nm3/hr.]の間で変化可能に形成している。
このため、流量制御部40は、冷却開始時には、スタンド用弁を開放状態とする指令信号と、第一流量調節弁24a、第二流量調節弁24b及び第三流量調節弁24cの開度を「0」とする指令信号を演算する。
この場合、流量制御部40は、コイル材Cの冷却開始から約0.2時間(約12分)が経過するまでの間で、第三流量調節弁24cから供給される雰囲気ガスが、時間の経過とともに、0[Nm3/hr.]から20[Nm3/hr.]まで増加するように、第三流量調節弁24cの開度度合いを変化させる指令信号を演算する。
これに加え、流量制御部40は、第一流量調節弁24a及び第二流量調節弁24bの開度を「0」とする指令信号と、スタンド用弁を開放状態に維持する指令信号を演算する。
具体的には、流量制御部40は、図4中に示すように、冷却初期段階が終了(コイル材Cの冷却開始から約0.2時間(約12分)が経過)した後、冷却開始から約2時間が経過するまでの間に、循環経路を循環する雰囲気ガスの循環流量が24[Nm3/hr.]から2400[Nm3/hr.]まで、時間の経過とともに増加するように、指令信号を演算する。
これに加え、本実施形態では、第一流量調節弁24aを、その開閉度合いに応じて、雰囲気ガスの流量を、2400[Nm3/hr.]〜240[Nm3/hr.]の間で変化可能に形成している。
これに加え、流量制御部40は、スタンド用弁を開放状態に維持する指令信号を演算する。
なお、炉圧閾値は、例えば、コイル材Cの冷却パターン、インナーケース2の強度、ガスシール10のシール性能等に応じて設定し、予め、流量制御部40に記憶させておく。
以下、図1から図6を参照して、上記の構成を備えた焼鈍炉の冷却装置1が行う動作・作用等について説明する。
本実施形態の焼鈍炉の冷却装置1を用いて、コイル材Cを冷却する際には、まず、コイル材受け金物6上へ、冷却塔12がコイル材Cの空隙部内に挿入された状態となるように、コイル材Cを載置する。そして、コイル材Cを載置したコイル材受け金物6にインナーケース2及び焼鈍炉ベル4を被せるとともに、ガスシール10により、インナーケース2の内部空間を焼鈍炉ベル4側の外気から遮断して、コイル材C、インナーケース2及び焼鈍炉ベル4の設置を終了する。
ここで、流量制御部40は、スタンド用弁を開放状態とする指令信号と、第一流量調節弁24a、第二流量調節弁24b及び第三流量調節弁24cの開度を「0」とする指令信号を演算する。そして、流量制御部40は、演算した指令信号を、スタンド用弁、第一流量調節弁24a、第二流量調節弁24b及び第三流量調節弁24cへ、それぞれ、出力する。
指令信号の入力を受けたスタンド用弁は、開放状態となり、雰囲気ガスバルブスタンド30から雰囲気ガス投入用配管44へ、4[Nm3/hr.]の雰囲気ガスを供給する。
したがって、コイル材Cの冷却開始時には、冷却塔12が有する複数の開口部から、流量が4[Nm3/hr.]の雰囲気ガスが、コイル材Cの内径面に吹き付けられ(衝風され)、コイル材Cの冷却が開始される。
指令信号の入力を受けたスタンド用弁は開放状態を維持し、雰囲気ガスバルブスタンド30から雰囲気ガス投入用配管44への、4[Nm3/hr.]の雰囲気ガスの供給を継続する。
これに加え、指令信号の入力を受けた第三流量調節弁24cは、コイル材Cの冷却開始から約0.2時間(約12分)が経過するまでの間で、時間の経過とともに、雰囲気ガスの流量が0[Nm3/hr.]から20[Nm3/hr.]まで増加するように、開度度合いを変化させる。
したがって、本実施形態では、コイル材Cの冷却開始から約0.2時間(約12分)が経過するまでの間には、冷却塔12が有する複数の開口部から、時間の経過とともに、流量が4[Nm3/hr.]から24[Nm3/hr.]まで徐々に増加する雰囲気ガスが、コイル材Cの内径面に吹き付けられて、コイル材Cが、時間の経過につれて徐々に冷却されることとなる。
このため、コイル材Cの冷却開始から約0.2時間(約12分)が経過するまでの間である冷却初期段階では、コイル材Cの緩冷却を行うこととなり、コイル材Cへ加わる熱衝撃を減少させて、コイル材Cに発生する品質不良を抑制することが可能となる。
冷却初期段階が終了した後、冷却初期段階に続いて、冷却開始から約2時間が経過するまでの間においては、循環ファン32及びガスクーラー34の作動を継続させるとともに、流量制御部40が、上述した循環経路を循環する雰囲気ガスの循環流量が24[Nm3/hr.]から2400[Nm3/hr.]まで、時間の経過とともに増加するように、指令信号を演算する。
この場合、流量制御部40は、第三流量調節弁24c、第二流量調節弁24b、第一流量調節弁24aの順番、すなわち、雰囲気ガスの流量が小さい流量調節弁から大きい流量調節弁の順番で、時間の経過とともに、雰囲気ガスの流量を増加させる指令信号を演算する。
指令信号の入力を受けたスタンド用弁は開放状態を維持し、雰囲気ガスバルブスタンド30から雰囲気ガス投入用配管44への、4[Nm3/hr.]の雰囲気ガスの供給を継続する。
これに加え、指令信号の入力を受けた第一流量調節弁24a、第二流量調節弁24b及び第三流量調節弁24cは、それぞれ、冷却初期段階が終了した後、冷却開始から約2時間が経過するまでの間で、時間の経過とともに、雰囲気ガスの流量が20[Nm3/hr.]から2396[Nm3/hr.]まで増加するように、開度度合いを変化させる。
なお、冷却塔12からインナーケース2の内部空間へ供給され、コイル材Cを冷却して昇温した雰囲気ガスは、インナーケース2の内部空間から、雰囲気ガス排気用配管46を介してガスクーラー34へ移動する。そして、ガスクーラー34へ移動した雰囲気ガスは、ガスクーラー34において冷却された後、循環ファン32により雰囲気ガス供給部20へ送風されて、上述した循環経路を循環する。
以下、本実施形態の効果を列挙する。
(1)本実施形態の焼鈍炉の冷却装置1では、流量制御部40が、循環経路における、予め設定した雰囲気ガスの単位時間当たりの循環流量に応じて、単位時間当たりの流量を変化可能な範囲がそれぞれ異なり、循環経路上へ並列に配置した第一流量調節弁24a、第二流量調節弁24b及び第三流量調節弁24cの流量を、個別に制御する。
このため、流量制御部40が雰囲気ガスの流量を制御可能な範囲が、第一流量調節弁24a、第二流量調節弁24b及び第三流量調節弁24cでそれぞれ異なる、単位時間当たりの流量を変化可能な範囲となり、流量比の大きな雰囲気ガスの流量制御が可能となる。
その結果、コイル材Cの焼鈍において、冷却効率の悪化を抑制することが可能となる。
このため、上述した冷却初期段階において、コイル材Cの緩冷却を行うこととなり、コイル材Cへ加わる熱衝撃を減少させて、コイル材Cに発生する品質不良を抑制することが可能となる。
その結果、コイル材Cの焼鈍において、冷却効率の悪化を抑制することが可能となるとともに、コイル材Cの形状変化を防止して、コイル材Cの品質不良を抑制することが可能となる。
以下、本実施形態の変形例を記載する。
(1)本実施形態の焼鈍炉の冷却装置1では、雰囲気ガス供給部20の構成を、第一流量調節部22aと、第二流量調節部22bと、第三流量調節部22cを備えた構成として、三個の流量調節弁24を備えた構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、雰囲気ガス供給部20の構成を、二個の流量調節弁24を備えた構成としてもよく、四個以上の流量調節弁24を備えた構成としてもよい。
以下、本発明の第二実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
まず、図1から図6を参照しつつ、図7を用いて、本実施形態の焼鈍炉の冷却装置の構成を説明する。
図7は、本実施形態の焼鈍炉の冷却装置1の概略構成を示す図である。なお、以下の説明では、上述した上述した第一実施形態の焼鈍炉の冷却装置1と同様の構成については、記載を省略する場合がある。
本実施形態の焼鈍炉の冷却装置1が備える雰囲気ガス供給部20は、第一流量調節部22aと、第二流量調節部22bを備えている。すなわち、本実施形態の焼鈍炉の冷却装置1が備える雰囲気ガス供給部20は、上述した第一実施形態と異なり、第三流量調節部22cを備えておらず、二つの流量調節部を備えている。
すなわち、スタンド用弁は、流量制御部40が出力した指令信号に応じて開閉度合い(開度)が変化する弁であり、その開閉度合いに応じて、貯蔵している雰囲気ガスの雰囲気ガス投入用配管44への供給量を変化可能に形成されている。
すなわち、雰囲気ガスバルブスタンド30により変化する雰囲気ガスの流量は、冷却塔12からコイル材Cの内径面へ吹き付ける雰囲気ガスの単位時間当たりの流量である。
したがって、雰囲気ガスバルブスタンド30が、単位時間当たりの流量を変化可能な範囲は、複数の流量調節弁24(第一流量調節弁24a、第二流量調節弁24b)が単位時間当たりの流量を変化可能な範囲よりも小さくなっている。
また、本実施形態の焼鈍炉の冷却装置1が備える流量制御部40は、循環流量の制御として、上述した第一実施形態と異なる制御を行う。
以下、図1から図7を参照して、本実施形態の焼鈍炉の冷却装置1が備える流量制御部40が行う循環流量の制御について説明する。
本実施形態の焼鈍炉の冷却装置1が備える流量制御部40は、循環流量を制御する際に、予め設定した冷却パターン(図2参照)に応じて、第一流量調節弁24a及び第二流量調節弁24bへ出力する指令信号と、スタンド用弁へ出力する指令信号を、それぞれ、冷却開始からの経過時間に応じて演算する。
ここで、流量制御部40は、冷却開始から約2時間が経過するまでの間において、特に、冷却開始から約12分が経過するまでの冷却初期段階では、循環経路を循環する雰囲気ガスの循環流量が、時間の経過につれて徐々に増加するように、第一流量調節弁24a及び第二流量調節弁24bへ出力する指令信号と、スタンド用弁へ出力する指令信号を演算する(図5参照)。
流量制御部40は、コイル材Cの冷却開始時には、循環経路へ供給する雰囲気ガスの流量が4[Nm3/hr.]となるように、指令信号を演算する。
ここで、本実施形態では、雰囲気ガスバルブスタンド30を、スタンド用弁の開閉度合いに応じて、貯蔵している雰囲気ガスの雰囲気ガス投入用配管44への供給量を、24[Nm3/hr.]〜2.4[Nm3/hr.]の間で変化可能に形成している。
このため、流量制御部40は、冷却開始時には、雰囲気ガスバルブスタンド30から雰囲気ガス投入用配管44への雰囲気ガスの供給量が、4[Nm3/hr.]となるように、スタンド用弁の開度度合いを変化させる指令信号を演算する。
さらに、流量制御部40は、コイル材Cの冷却開始から約0.2時間(約12分)が経過するまでの間に、循環経路へ供給する雰囲気ガスの流量が4[Nm3/hr.]から24[Nm3/hr.]まで、時間の経過とともに増加するように、指令信号を演算する。
これに加え、流量制御部40は、第一流量調節弁24a及び第二流量調節弁24bの開度を「0」とする指令信号を演算する。
冷却初期段階が終了した後、流量制御部40は、冷却開始から約2時間が経過するまでの間に、循環経路へ供給する雰囲気ガスの流量が24[Nm3/hr.]から2400[Nm3/hr.]まで、時間の経過とともに増加するように、指令信号を演算する(図4参照)。
このため、流量制御部40は、冷却初期段階が終了した後、冷却開始から約2時間が経過するまでの間に、循環経路を循環する雰囲気ガスの循環流量が、24[Nm3/hr.]から2400[Nm3/hr.]まで、時間の経過とともに増加するように、第一流量調節弁24a及び第二流量調節弁24bの開度度合いを変化させる指令信号を演算する。
これに加え、流量制御部40は、雰囲気ガスバルブスタンド30から雰囲気ガス投入用配管44への雰囲気ガスの供給量が、24[Nm3/hr.]に維持されるように、スタンド用弁の開度度合いを維持する指令信号を演算する。
その他の構成は、上述した第一実施形態と同様である。
以下、図1から図7を参照して、上記の構成を備えた焼鈍炉の冷却装置1が行う動作・作用等について説明する。なお、以降の説明では、上述した第一実施形態と同様の内容については、記載を省略する場合がある。
本実施形態の焼鈍炉の冷却装置1を用いて、コイル材Cを冷却する際には、まず、上述した第一実施形態と同様の手順により、コイル材C、インナーケース2及び焼鈍炉ベル4の設置を終了した後、コイル材Cの冷却開始時において、循環ファン32及びガスクーラー34を作動させ、さらに、流量制御部40が、上述した循環経路を循環する雰囲気ガスの循環流量が4[Nm3/hr.]となるように、指令信号を演算する。
指令信号の入力を受けたスタンド用弁は、開度度合いを変化させて、雰囲気ガスバルブスタンド30から雰囲気ガス投入用配管44へ、4[Nm3/hr.]の雰囲気ガスを供給する。
コイル材Cの冷却を開始した後、コイル材Cの冷却開始から約0.2時間(約12分)が経過するまでの間においては、循環ファン32及びガスクーラー34の作動を継続させるとともに、流量制御部40が、上述した循環経路へ供給する雰囲気ガスの流量が4[Nm3/hr.]から24[Nm3/hr.]まで、時間の経過とともに増加するように、指令信号を演算する。
指令信号の入力を受けたスタンド用弁は、コイル材Cの冷却開始から約0.2時間(約12分)が経過するまでの間で、時間の経過とともに、雰囲気ガスバルブスタンド30から雰囲気ガス投入用配管44への供給量が、4[Nm3/hr.]から24[Nm3/hr.]まで増加するように、開度度合いを変化させる。
したがって、本実施形態では、第一実施形態と異なり、第一流量調節弁24a及び第二流量調節弁24bの閉鎖状態を維持するとともに、スタンド用弁の開度度合いを制御することにより、冷却初期段階においてコイル材Cの緩冷却を行う。これにより、コイル材Cへ加わる熱衝撃を減少させて、コイル材Cに発生する品質不良を抑制することが可能となるとともに、急激な炉圧変動を抑制して、インナーケース2の内部空間への、外気の侵入を防止することが可能となる。
そして、流量制御部40は、演算した指令信号を、スタンド用弁、第一流量調節弁24a及び第二流量調節弁24bへ、それぞれ、出力する。
指令信号の入力を受けたスタンド用弁は、雰囲気ガスバルブスタンド30から雰囲気ガス投入用配管44への、24[Nm3/hr.]の雰囲気ガスの供給を継続する。
したがって、冷却初期段階が終了した後、冷却開始から約2時間が経過するまでの間では、コイル材Cが時間の経過につれて冷却されることとなる。
その他の動作・作用等は、上述した第一実施形態と同様である。
以下、本実施形態の効果を列挙する。
(1)本実施形態の焼鈍炉の冷却装置1では、流量制御部40が、コイル材Cの焼鈍時において、雰囲気ガスバルブスタンド30の流量を制御した後に、複数の流量調節弁24のうち、単位時間当たりの流量が小さい第二流量調節弁24bから、コイル材Cの内径面へ吹き付ける雰囲気ガスの単位時間当たりの流量を制御する。
その結果、複数の流量調節弁24の個数を一つ減らしても、複数の流量調節弁24の個数を一つ減らさない場合と同様に、コイル材Cの焼鈍を行うことが可能となるため、焼鈍炉の冷却装置1の設置費用等を低下させることが可能となる。
このため、コイル材Cの焼鈍時に、冷却能力を優先させて雰囲気ガスの流量を制御した結果、炉圧が炉圧閾値を超えている場合であっても、雰囲気ガス放散量調整用バルブ36の開閉度合いを制御して、炉内の雰囲気ガスを循環経路の外部へ放散させることが可能となる。
その結果、炉圧を適正値に制御して、コイル材Cの焼鈍を円滑に行うことが可能となるとともに、焼鈍炉の冷却装置1の損傷を抑制することが可能となる。
2 インナーケース
4 焼鈍炉ベル
6 コイル材受け金物
8 炉床レンガ
10 ガスシール
12 冷却塔
14 圧力計
20 雰囲気ガス供給部
22a 第一流量調節部
22b 第二流量調節部
22c 第三流量調節部
24a 第一流量調節弁
24b 第二流量調節弁
24c 第三流量調節弁
26a 第一流量計
26b 第二流量計
26c 第三流量計
30 雰囲気ガスバルブスタンド
32 循環ファン
34 ガスクーラー
36 雰囲気ガス放散量調整用バルブ
40 流量制御部
42 フレーム
44 雰囲気ガス投入用配管
46 雰囲気ガス排気用配管
48 圧力測定口
50 雰囲気ガス投入口
C コイル材
F 床面
B ベル型焼鈍炉
Claims (2)
- 炉内に配置された円筒形状のコイル材を焼鈍する焼鈍炉の冷却装置であって、
前記コイル材の内周側へ配置されてコイル材の内径面へ雰囲気ガスを吹き付ける冷却塔と、
前記炉内と連通する雰囲気ガス投入用配管及び雰囲気ガス排気用配管を有する循環経路上に配置され、前記コイル材の内径面へ吹き付けて前記炉内から排気された雰囲気ガスを前記循環経路上で循環させる循環ファンと、
前記循環ファンから送風された雰囲気ガスの単位時間当たりの流量を変化させて、前記冷却塔から前記コイル材の内径面へ吹き付ける雰囲気ガスの単位時間当たりの流量を変化可能な複数の流量調節弁と、
前記循環経路の外部から導入した雰囲気ガスの単位時間当たりの流量を変化させて、前記冷却塔から前記コイル材の内径面へ吹き付ける雰囲気ガスの単位時間当たりの流量を変化可能な雰囲気ガスバルブスタンドと、
前記複数の流量調節弁の流量と、前記雰囲気ガスバルブスタンドの流量と、を個別に制御可能な流量制御部と、を備え、
前記複数の流量調節弁は、それぞれ、前記単位時間当たりの流量を変化可能な範囲が異なり、且つ前記循環経路上へ並列に配置され、さらに、前記複数の流量調節弁のうち、前記流量を変化可能な範囲が上下に隣り合う選択した二つの流量調整弁のうち一方の雰囲気ガスの単位時間当たりの流量の下限値は、前記流量を変化可能な範囲が上下に隣り合う選択した二つの流量調整弁のうち他方の雰囲気ガスの単位時間当たりの流量の上限値と等しく、
前記雰囲気ガスバルブスタンドが前記単位時間当たりの流量を変化可能な範囲は、前記複数の流量調節弁が前記単位時間当たりの流量を変化可能な範囲よりも小さく、
前記流量制御部は、前記コイル材の焼鈍時に、前記循環経路における予め設定した前記雰囲気ガスの単位時間当たりの循環流量に応じて、前記雰囲気ガスバルブスタンドから前記コイル材の内径面へ吹き付ける雰囲気ガスの単位時間当たりの流量を制御した後に、前記複数の流量調節弁のうち前記単位時間当たりの流量が小さい流量調節弁から、前記コイル材の内径面へ吹き付ける雰囲気ガスの単位時間当たりの流量を制御して、前記複数の流量調節弁の流量を個別に制御することを特徴とする焼鈍炉の冷却装置。 - 前記炉内の気圧である炉圧を測定する圧力計と、
前記炉内の雰囲気ガスを前記循環経路の外部へ放散可能な雰囲気ガス放散量調整用バルブと、を備え、
前記流量制御部は、前記圧力計が測定した前記炉圧が予め設定した炉圧閾値を超えていると判定すると、前記圧力計が測定した前記炉圧が前記炉圧閾値以下となるように、前記雰囲気ガス放散量調整用バルブの開閉度合いを制御することを特徴とする請求項1に記載した焼鈍炉の冷却装置。
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