JP5845130B2 - 積層ゴム支承体 - Google Patents

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本発明は、建築物や精密機器(以下、建築物等)の免震・除振構造に使用される積層ゴム支承体に関し、特にゴム状弾性板と鋼板等の硬質板を交互に積層した積層ゴム体に金属プラグを挿入してなるプラグ挿入型の積層ゴム支承体に関する。
従来、建築物等の免震・除振構造に使用される免震装置として、ゴム状弾性板と硬質板を交互に積層した積層ゴム体に金属プラグを挿入したプラグ挿入型の積層ゴム支承体が知られている(例えば特許文献1,2)。
図1は、プラグ挿入型の積層ゴム支承体の一例を示す断面図である。図1に示すように、積層ゴム支承体5は、複数のゴム状弾性板511と硬質板512とを交互に積層した積層ゴム体51を備え、積層ゴム体51の中央に設けられた円筒状の中空部51aに、鉛等の弾塑性金属(弾性と塑性の性質を併せ持つ金属)からなる金属プラグ52が挿入された構成を有する。
このような積層ゴム支承体5は、通常時は建築物等の荷重を安定して支持できるとともに、小・中規模地震発生時や強風時は金属プラグ52の初期剛性(一次剛性)による抗力で建築物等の振動を抑制できる。また、大規模地震発生時には、積層ゴム体51の柔軟な水平剛性及び金属プラグ52の塑性変形により地震エネルギーを吸収して建築物等へ伝達される振動加速度を低減することができる。すなわち、積層ゴム支承体5は、従来の積層ゴムと金属ダンパーの機能を併せ持っており、設置スペースを削減できるとともに、施工性も向上するという利点を有している。
ここで、金属プラグには、(1)降伏荷重が低い(早期に塑性変形する)こと、(2)延性に優れている(大きな変形に追従できる)こと、(3)温度依存性が小さいこと、(4)常温下で再結晶化する(塑性変形による疲労が蓄積されない)ことが要求される。従来は、金属プラグ材として、このような特性に非常に優れた鉛材が採用されてきた(例えば特許文献1)。
しかし近年では、環境面や健康面から鉛害の問題が指摘されており、積層ゴム支承体に鉛製の金属プラグ(以下、鉛プラグ)を適用する場合には、製造及び設計上の制約がある。また、建築物等を解体して、積層ゴム支承体を廃棄処分とするときに問題が生じる虞がある。
そこで、鉛材の代わりに適用できる金属プラグ材の開発が進められている。例えば、特許文献2では、錫基合金(例えば錫−亜鉛系合金、錫−銅系合金等)製の金属プラグ(以下、錫基合金プラグ)を適用した積層ゴム支承体が開示されている。
しかし、錫基合金プラグを適用した積層ゴム支承体は、水平変形に対する疲労回復性が低く、水平変形を繰り返し受けたときに減衰性能が低下する上、初期剛性が大きいために地震による振動加速度が建築物等に伝わり易い。
また、金属プラグ材として、鉛や錫よりもエネルギーの吸収力(減衰性能)が高いアルミニウム材を適用することも考えられる。しかし、アルミニウムは常温下で再結晶化しないため、アルミニウム製の金属プラグ(以下、アルミニウムプラグ)は鉛プラグに比較して疲労回復性が低く、純度の高いアルミニウム材(例えば純度99.99%以上)を用いても、水平変形の繰り返しによって亀裂が発生する虞がある。
実公平4−42363号公報 特開2004−169894号公報
上述した理由から、従来の積層ゴム支承体では、鉛プラグが採用されることが多い。一方、純錫は、弾塑性金属材として知られているものの、低温下での減衰性能に問題があるとして、金属プラグ材として適さないとされてきた。このような定説に反して、本発明者等は、鉛に代わる金属プラグ材として純錫に着目して検討を重ねた。そして、金属プラグ材として純錫を適用できることを確認した。
しかし、錫基合金に比較して、純錫の剛性は小さい。また、鉛に比較して、純錫の降伏荷重及び引張り強度は約2〜4倍程度高く、伸びは約0.7倍程度小さい。このように、純錫の機械特性(降伏荷重、延性等)は従来の金属プラグ材と異なるため、単に同一形状の純錫製金属プラグを製造して置き換えただけでは、所望の減衰性能が得られない。また、純錫は、錫基合金のように成分組成の調整によって降伏荷重等の物性を制御することもできない。
本発明の目的は、金属プラグを純錫で構成する場合に有用で、所望の減衰性能を安定して発揮できる積層ゴム支承体を提供することである。
本発明に係る積層ゴム支承体は、複数のゴム状弾性板と複数の硬質板とが交互に積層されてなり、少なくとも1つの中空部が上下方向に貫通して形成された積層ゴム体と、
前記中空部に圧入される金属プラグと、を備え、
前記金属プラグが、純度が99.9〜99.99%である純錫で構成されており、
常温かつ無負荷時における前記金属プラグの体積Vp1と前記中空部の容積Vr1との比Vp1/Vr1が、0.97〜1.02であり、
前記金属プラグの総断面積ΣA p と前記ゴム状弾性板の断面積A r との比ΣA p /A r が、0.006〜0.067であり、
前記積層ゴム体の内周面と前記金属プラグの外周面との摩擦係数が0.4以上であることを特徴とする。
本発明によれば、金属プラグが純錫で構成されており、また水平変形が繰り返されても良好な密着状態が確保されるので、所望の減衰性能を安定して発揮できる積層ゴム支承体が実現される。
従来の金属プラグ挿入型の積層ゴム支承体を示す断面図である。 本発明の一実施の形態に係る積層ゴム支承体を示す部分断面図である。 実施の形態に係る積層ゴム支承体を示す断面図である。 純錫プラグと積層ゴム体との間に隙間が生じる場合の履歴特性を示す図である。 無負荷時プラグ充填率Vp1/Vr1を0.96、0.98としたときの履歴特性を示す図である。 無負荷時プラグ充填率Vp1/Vr1を変化させたときの切片荷重の変化率を示す図である。 純錫プラグの総断面積ΣApとゴム状弾性板の断面積Arとの比ΣAp/Arを0.023とした積層ゴム支承体の履歴特性を示す図である。 純錫プラグの総断面積ΣApとゴム状弾性板の断面積Arとの比ΣAp/Arを0.010とした積層ゴム支承体の履歴特性を示す図である。 積層ゴム支承体の変形例を示す断面図である。 変形例に係る積層ゴム支承体の履歴特性を示す図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図2は本発明の一実施の形態に係る積層ゴム支承体を示す部分断面図である。図3は積層ゴム支承体の断面図である。
図2、3に示すように、積層ゴム支承体1は、積層ゴム体11、金属プラグ12、及びフランジ13を備える。なお、図3では、フランジ13を省略している。
積層ゴム体11は、天然ゴムを主成分とするゴム状弾性板111と中間鋼板112が交互に積層され、上下端部に連結鋼板113が加硫接着された構造を有する。積層ゴム体11の中央部には円筒状の中空部11aが形成され、この中空部11aに金属プラグ12が圧入される。
ここでは、積層ゴム体11として、面圧依存性などに優れる鋼板露出型構造を採用している。なお、積層ゴム体11の外周面を保護ゴム層で包被するようにしてもよい。
積層ゴム体11の上下面(連結鋼板113)にはフランジ13がボルト締めにより接合される。積層ゴム支承体1は、建物基礎と上部構造体との間に介設され、フランジ13の周縁部のボルト穴13aに挿通されたボルト(図示略)により固定される。
このように、積層ゴム支承体1は、複数のゴム状弾性板111と複数の中間鋼板112(硬質板)とが交互に積層されてなり、少なくとも1つの中空部11aが上下方向に貫通して形成された積層ゴム体11と、中空部11aに圧入される金属プラグ12を備える。
本実施の形態では、金属プラグ12は純錫材で構成される。以下、純錫製の金属プラグ12を純錫プラグ12と称する。純錫は、良好な延性を有するとともに、常温下で再結晶化する性質を有する。そのため、純錫プラグ12は、疲労回復性に優れ、水平変形を繰り返し受けても安定した減衰性能を維持することができる。また、純錫プラグ12は、鉛プラグに比較して剛性(初期剛性(一次剛性)、降伏後剛性(二次剛性))が高いため、純錫プラグ12の減衰性能(地震エネルギーの吸収力)は、鉛プラグよりも優れる。
ただし、純錫材の純度が99.9%未満の場合、延性が低下し、再結晶温度も常温より高くなるため、純錫プラグ12が水平変形を繰り返し受けたときに十分な疲労回復が見込めず、安定した減衰性能を維持できなくなる虞がある。また、純度99.99%を超える純錫材は、大量生産に不向きで非常に高価となり採算的にも実用的でない。したがって、金属プラグ材としては、純度99.9%〜99.99%の純錫材が好適である。
上述したように、純錫プラグ12は剛性が高いので減衰性能に優れるが、逆に、純錫プラグ12の積層ゴム体11への変位追従性は悪くなる。つまり、水平変形したときに、純錫プラグ12と積層ゴム体11との間に隙間が生じやすくなる。そして、地震が発生した際、すなわち周期的な水平変形が生じている間やその後において、積層ゴム体11と純錫プラグ12との間に隙間が生じると、積層ゴム支承体1は良好な減衰性能を発揮できなくなる。
図4は、純錫プラグ12と積層ゴム体11との間に隙間が生じる場合の履歴特性を示す図である。
図4に示すように、積層ゴム体11と純錫プラグ12との間に隙間が生じる場合の履歴曲線C2(図4の点線)は、純水平変形を仮定して設計されたモデルの履歴曲線C1(図4の実線)からずれてしまう。積層ゴム支承体1の減衰性能は、履歴曲線で囲まれた面積で表される。
積層ゴム体11の内周面と純錫プラグ12の外周面との間に隙間が生じると、切片荷重Qd(履歴曲線と水平荷重軸(Y軸)との交点の荷重)が低下し、履歴曲線C2で囲まれた面積は履歴曲線C1で囲まれた面積よりも小さくなるため、期待通りの減衰性能が得られなくなる。つまり、水平荷重と水平ひずみとの関係(履歴特性)において、積層ゴム体11による減衰効果が主となり、純錫プラグ12による減衰効果が得られなくなる。
また、積層ゴム体11と純錫プラグ12との間に隙間が生じると、水平変形を繰り返したときに純錫プラグ12に蓄積される疲労が大きくなり、疲労破壊を早めてしまう。
そこで、積層ゴム体11と純錫プラグ12との間に隙間が生じないように対策することが重要となる。純錫材は錫基合金のように成分組成の調整によって物性を制御することができないため、本発明者等は、純錫プラグ12の体積Vと積層ゴム体11の中空部11aの容積Vとの比Vp/Vrを調整することにより、積層ゴム体11と純錫プラグ12との密着性を高めることを検討し、本発明を完成するに至った。
すなわち、積層ゴム支承体1では、常温・無負荷時における純錫プラグ12の体積Vp1と積層ゴム体11の中空部11aの容積Vr1との比Vp1/Vr1(以下、無負荷時プラグ充填率)が、0.97〜1.02となっている。
ここで、純錫プラグ12の体積Vp1は、常温・無負荷時における純錫プラグ12の断面積×高さで求められる。また、中空部11aの容積Vr1は、常温・無負荷時における純錫プラグ12が充填される部分の断面積×高さ(上部の連結鋼板113の上面から下部の連結鋼板113の下面まで)で求められる。
無負荷時プラグ充填率Vp1/Vr1が小さ過ぎると、積層ゴム体11と純錫プラグ12との間に隙間が生じやすくなり、無負荷時プラグ充填率Vp1/Vr1が0.97未満の場合に明らかに減衰性能が低下する。また、無負荷時プラグ充填率Vp1/Vr1が1.02を超えると、積層ゴム体11に純錫プラグ12を圧入して一体化する際に、純錫プラグ12の剛性により、中間鋼板112が変形する虞がある。
本実施の形態では、無負荷時プラグ充填率が0.97〜1.02となるように、積層ゴム体11及び純錫プラグ12を設計されているので、積層ゴム支承体1が水平変形を繰り返しても、積層ゴム体11と純錫プラグ12との密着性が確保される。また、隙間によって純錫プラグ12に蓄積される疲労が大きくなることもないので、耐久性が向上する。したがって、積層ゴム支承体1は、所望の減衰性能を安定して維持することができる。
なお、無負荷時プラグ充填率が1.00未満の場合、無負荷時では純錫プラグ12と積層ゴム体11との間に部分的に隙間が生じるが、積層ゴム支承体1を設置する際には、上部構造体の荷重を受けて積層ゴム体11が純錫プラグ12以上に圧縮されるので、密着性は確保される。また、無負荷時プラグ充填率が1.00超の場合には、積層ゴム体11のゴム状弾性板111に純錫プラグ12が食い込んで圧入されることとなる。
上述したように、積層ゴム支承体1において、無負荷時プラグ充填率を0.97〜1.02とすることで所望の減衰性能を安定して維持することができるが、特に、無負荷時プラグ充填率Vp1/Vr1が0.98〜1.01であることが好ましい。
無負荷時プラグ充填率Vp1/Vr1を0.98以上とすることで、積層ゴム体11と純錫プラグ12との密着性はさらに高まり、切片荷重Qdの低下が抑えられるので、より良好な減衰性能が得られる。また、切片荷重Qdの値が安定するので、仮に無負荷時プラグ充填率Vp1/Vr1にばらつきが発生したとしても、所望の減衰性能が得られる。また、無負荷時プラグ充填率Vp1/Vr1を1.01以下とすることで、積層ゴム体11に純錫プラグ12を圧入して一体化する際に、純錫プラグ12の剛性により中間鋼板112が変形するのを、より確実に防止することができる。
ところで、積層ゴム支承体1を建物基礎と上部構造体との間に設置する際、純錫プラグ12及び積層ゴム体11は上部構造体の荷重を受けて変形する。積層ゴム支承体1にかかる荷重は上部構造体によって様々であり変形量も異なる。
そのため、積層ゴム支承体1が所望の減衰性能を発揮するには、純錫プラグ12に常温で基準面圧σを載荷したときの体積Vp2と、積層ゴム体11の中空部11aに常温で基準面圧σを載荷したときの容積Vr2との比Vp2/Vr2(載荷時プラグ充填率)が1.00〜1.05であることが好ましく、より好ましくは1.00〜1.03である。
ここで、基準面圧とは、水平方向の変形が零の時の圧縮限界強度の10%以上30%以下に相当する面圧であり、積層ゴム支承体1が長期にわたって支持しうる面圧である。
また、純錫プラグ12の体積Vp2は、常温・載荷時における純錫プラグ12の断面積×高さで求められる。常温・載荷時の純錫プラグ12の体積Vp2は、常温・無負荷時の体積Vp1と同じと考えてよい。
また、中空部11aの容積Vr2は、常温・載荷時における純錫プラグ12が充填される部分の断面積×高さで求められる。常温・載荷時の中空部11aの容積Vr2は、常温・無負荷時の容積Vr1に比較して積層ゴム体11が圧縮される分だけ減少する。なお、常温・載荷時の中空部11aの断面積(直径dp)は、常温・無負荷時の断面積(直径dp)と同じである(圧縮によるゴム状弾性板111の中空部11aへの膨出量は無視する)ものとする。
載荷時プラグ充填率Vp2/Vr2が1.00未満の場合、積層ゴム体11と純錫プラグ12との間に隙間が生じて、所定の減衰性能が得られない虞がある。また、載荷時プラグ充填率Vp2/Vr2が1.05を超えると、水平変形によってゴム状弾性板111が過度に圧縮され、水平変形の繰り返しによりゴム状弾性板111が劣化する虞がある。また、水平変形によってゴム状弾性板111が過度に圧縮されるのを確実に防止するためには、載荷時プラグ充填率Vp2/Vr2が1.03以下であることが好ましい。
すなわち、載荷時プラグ充填率が1.00〜1.05、好ましくは1.00〜1.03となるように、積層ゴム体11及び純錫プラグ12を設計することにより、積層ゴム支承体1が水平変形を繰り返しても、積層ゴム体11と純錫プラグ12との密着性が確保される。また、隙間によって純錫プラグ12に蓄積される疲労が大きくなることもないので、耐久性が向上する。したがって、積層ゴム支承体1は、所望の減衰性能を安定して維持することができる。
また、純錫プラグ12の総断面積ΣApとゴム状弾性板111の断面積Arとの比ΣAp/Arは、0.006〜0.067であることが好ましく、より好ましくは0.010〜0.042、さらに好ましくは0.010〜0.023である。ここで、純錫プラグ12の総断面積ΣApは、積層ゴム体11の中空部11aに純錫プラグ12を圧入したときの総断面積であり、中空部11aの総断面積に他ならない。
図3に示す積層ゴム支承体1においては、積層ゴム体11に純錫プラグ12が1本だけ圧入されているので、純錫プラグ12の総断面積ΣApはπdp 2/4であり、ゴム状弾性板111の断面積Arはπ(dr 2−dp 2)/4となる。純錫プラグ12が積層ゴム体11に複数本配置される場合、純錫プラグ12の総断面積ΣApは、各純錫プラグ12の断面積の和となり、ゴム状弾性板111の断面積Arはπdr 2/4−ΣApとなる。
純錫プラグ12の総断面積ΣApとゴム状弾性板111の断面積Arとの比ΣAp/Arが0.006より小さいと十分なエネルギー吸収が得られない。
また、純錫プラグ12の総断面積ΣApとゴム状弾性板111の断面積Arとの比ΣAp/Arが0.067より大きいと、積層ゴム支承体1の初期剛性が高くなるため、地震による振動加速度が建築物等に伝わりやすくなる。
したがって、純錫プラグ12の総断面積ΣApとゴム状弾性板111の断面積Arとの比ΣAp/Arが、0.006〜0.067、より好ましくは0.010〜0.042、さらに好ましくは0.010〜0.023となるように、積層ゴム体11及び純錫プラグ12を設計する。これにより、十分なエネルギー吸収が得られ、建築物等へ伝達される振動加速度を低減することができ、所望の減衰性能を安定して維持することができる。
また、積層ゴム体11の内周面(中空部11a)と純錫プラグ12の外周面との摩擦係数は0.4以上であることが好ましく、より好ましくは固着状態である。
中間鋼板112を形成する鋼材同士の摩擦係数は0.4程度であり、これよりも摩擦係数を大きくする。つまり、摩擦係数を0.4以上、好ましくは固着状態とすることで、積層ゴム体11の内周面と純錫プラグ12の外周面との密着性が向上するので、所望の減衰性能を維持することができる。
なお、積層ゴム体11の内周面と純錫プラグ12の外周面との摩擦係数を0.4以上、または固着状態とする方法は特に限定されない。例えば、純錫プラグ12の表面を荒らして微小凹凸を形成してもよいし、ゴム状弾性板111が中空部11aに孕み出すように積層ゴム体11を成形し、ゴム状弾性板111と純錫プラグ12を接触させてもよい。また、純錫プラグ12の外周面に摩擦力を増大させる網状の筒を密着させてもよい。
[実験例1]
実験例1では、無負荷時プラグ充填率Vp1/Vr1が0.96、0.98となるように純錫プラグ12及び積層ゴム体11を設計し、積層ゴム支承体1を作製した。また、純錫プラグ12を純度99.99%の錫材で形成した。
そして、それぞれの積層ゴム支承体1について、基準面圧を載荷した状態で±100%の水平ひずみを繰り返し与えたときの履歴特性を測定した。
図5は、無負荷時プラグ充填率Vp1/Vr1を0.96、0.98とした積層ゴム支承体1の履歴特性を示す図である。
図5に示すように、無負荷時プラグ充填率Vp1/Vr1が0.96の場合(図5の点線)、図4の点線で示すような切片荷重Qdの低下がみられた。積層ゴム体11と純錫プラグ12との間に隙間が生じたためと考えられる。
これに対して、無負荷時プラグ充填率Vp1/Vr1が0.98の場合(図5の実線)、切片荷重Qdの低下も抑えられ、無負荷時プラグ充填率Vp1/Vr1が0.96の場合に比較して良好な減衰性能が得られた。積層ゴム体11と純錫プラグ12との密着性が確保されていたためと考えられる。
[実験例2]
実験例2では、無負荷時プラグ充填率Vp1/Vr1が0.96〜1.03の範囲となるように純錫プラグ12及び積層ゴム体11を設計し、積層ゴム支承体1を作製した。また、純錫プラグ12を純度99.99%の錫材で形成した。
そして、それぞれの積層ゴム支承体1について、基準面圧を載荷した状態で±100%の水平ひずみを繰り返し与えたときの履歴特性を測定し、切片荷重Qdを比較した。なお、切片荷重Qdは、水平ひずみが−90〜+90%の範囲における測定点の回帰曲線と水平荷重軸との交点(図5における+Qd、−Qd)の値を平均して求めた。切片荷重Qdが大きくなる程、履歴曲線で囲まれた領域の面積が広くなるので、減衰能力が優れることになる。
図6は、無負荷時プラグ充填率Vp1/Vr1を0.96〜1.03の範囲で変化させたときの切片荷重の変化率を示す図である。図6では、無負荷時プラグ充填率Vp1/Vr1の最小値(0.96付近)における切片荷重Qdの値で標準化して示している。
図6に示すように、無負荷時プラグ充填率Vp1/Vr1を0.96より大きくすることにより、積層ゴム体11と純錫プラグ12との密着性が高まるので、切片荷重Qdの低下が抑えられる(変化率が1.0より大きくなる)。具体的には、無負荷時プラグ充填率Vp1/Vr1を0.97以上とすることで変化率が5%程度大きくなり、減衰性能が格段に向上する。さらに無負荷時プラグ充填率Vp1/Vr1が0.98以上となると、切片荷重Qdの変化率が安定する。
また、実験例2において、無負荷時プラグ充填率Vp1/Vr1を0.97〜1.02の範囲に設定した場合、載荷時プラグ充填率Vp2/Vr2は1.00〜1.05の範囲であった。つまり、載荷時プラグ充填率Vp2/Vr2を1.00〜1.05とすることにより、積層ゴム体11と純錫プラグ12との密着性を確保できるといえる。
[実験例3]
実験例3では、純錫プラグ12の総断面積ΣApとゴム状弾性板111の断面積Arとの比ΣAp/Arを0.023,0.010となるように純錫プラグ12及び積層ゴム体11を設計し、積層ゴム支承体1を作製した。また、純錫プラグ12を純度99.99%の錫材で形成した。この積層ゴム支承体1において、無負荷時プラグ充填率Vp1/Vr1は1.00、載荷時プラグ充填率Vp2/Vr2は1.03であった。そして、それぞれの積層ゴム支承体1について、基準面圧を載荷した状態で±100%の水平ひずみを繰り返し与えたときの履歴特性を測定した。
図7は、純錫プラグ12の総断面積ΣApとゴム状弾性板111の断面積Arとの比ΣAp/Arを0.023とした積層ゴム支承体1の履歴特性を示す図である。図8は、純錫プラグ12の総断面積ΣApとゴム状弾性板111の断面積Arとの比ΣAp/Arを0.010とした積層ゴム支承体1の履歴特性を示す図である。
図7、8に示すように、純錫プラグ12の総断面積ΣApとゴム状弾性板111の断面積Arとの比ΣAp/Arを0.023、0.010とすることにより、所定の減衰性能が得られる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、図9に示すように、積層ゴム体11の中空部11aに挿入する純錫プラグ12の上下端にクッション層14を設けるようにしてもよい。この場合、無負荷時プラグ充填率Vp1/Vr1及び載荷時プラグ充填率Vp2/Vr2を求めるときの純錫プラグ12の体積Vp1,Vp2には、純錫プラグ12の体積にクッション層14の体積を加算した値を用いる。
クッション層14としては、硬質ゴム(例:ウレタン)、樹脂(例:ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はポリエチレン)等が好適である。
図10は、クッション層14を設けた積層ゴム支承体1の履歴特性を示す図である。図10では、積層ゴム支承体1に基準面圧を載荷した状態で±120%の水平ひずみを繰り返し与えたときの履歴特性を示している。
図10に示すように、純錫プラグ12の上下端にクッション層14を設けることにより、履歴曲線の戻り勾配の一次剛性が緩やかになり、また鉛直剛性を低くすることができる。
また、積層ゴム体11に挿入される純錫プラグ12の数、配置態様等は、実施の形態で示したものに限定されない。例えば、積層ゴム体11に複数の中空部11aを形成し、該複数の中空部11aに純錫プラグ12を圧入する形態としてもよい。この場合、各中空部11aの容積と圧入する純錫プラグ12の体積との関係は、上述した無負荷時プラグ充填率Vp1/Vr1、載荷時プラグ充填率Vp2/Vr2が所定の範囲となるように設定する。
本実施例では、積層ゴム体11は円筒形状としているが、多角形状としてもよい。また、天然ゴムを主成分とするゴム状弾性板111を、クロロプレンゴム等の合成ゴム材で形成してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 積層ゴム支承体
11 積層ゴム体
111 ゴム状弾性板
112 中間鋼板(硬質板)
113 連結鋼板
12 純錫プラグ(金属プラグ)
13 フランジ

Claims (4)

  1. 複数のゴム状弾性板と複数の硬質板とが交互に積層されてなり、少なくとも1つの中空部が上下方向に貫通して形成された積層ゴム体と、
    前記中空部に圧入される金属プラグと、を備え、
    前記金属プラグが、純度が99.9〜99.99%である純錫で構成されており、
    常温かつ無負荷時における前記金属プラグの体積Vp1と前記中空部の容積Vr1との比Vp1/Vr1が、0.97〜1.02であり、
    前記金属プラグの総断面積ΣA p と前記ゴム状弾性板の断面積A r との比ΣA p /A r が、0.006〜0.067であり、
    前記積層ゴム体の内周面と前記金属プラグの外周面との摩擦係数が0.4以上であることを特徴とする積層ゴム支承体。
  2. 常温かつ無負荷時における前記金属プラグの体積Vp1と前記中空部の容積Vr1との比Vp1/Vr1が、0.98〜1.01であることを特徴とする請求項1に記載の積層ゴム支承体。
  3. 常温で基準面圧を載荷したときの前記金属プラグの体積Vp2と、前記中空部の容積Vr2との比Vp2/Vr2が、1.00〜1.05であることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層ゴム支承体。
  4. 常温で基準面圧を載荷したときの前記金属プラグの体積Vp2と、前記中空部の容積Vr2との比Vp2/Vr2が、1.00〜1.03であることを特徴とする請求項3に記載の積層ゴム支承体。
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