JP5844562B2 - 偏光性積層フィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
本発明に係る偏光性積層フィルムの製造方法は下記工程を含む。
(b)積層フィルムを一軸延伸して延伸フィルムを得る延伸工程、
(c)延伸フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を二色性色素で染色して、染色フィルムを得る染色工程、
(d)染色フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を、架橋剤を含む溶液に浸漬して偏光子層を形成し、架橋フィルムを得る架橋工程、および
(e)架橋フィルムを乾燥する乾燥工程。
本工程では、図1を参照して、熱可塑性樹脂にゴム成分が分散(ブレンド分散)されてなるフィルムを基材フィルム10として、その一方の面にポリビニルアルコール系樹脂層20を形成して積層フィルム100を得る。
基材フィルム10のベースとなる熱可塑性樹脂は、透明性、機械的強度、熱安定性、延伸性などに優れる熱可塑性樹脂であることが好ましい。このような熱可塑性樹脂の具体例を挙げれば、たとえば、鎖状ポリオレフィン系樹脂;環状ポリオレフィン系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;ポリエステル系樹脂;セルロースエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂;酢酸ビニル系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;およびこれらの混合物または共重合物などが挙げられる。
ポリビニルアルコール系樹脂層20を形成するポリビニルアルコール系樹脂としては、たとえば、ポリビニルアルコール樹脂およびその誘導体が挙げられる。ポリビニルアルコール樹脂の誘導体としては、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタールなどの他、ポリビニルアルコール樹脂をエチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のアルキルエステル、アクリルアミドなどで変性したものが挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール樹脂を用いるのが好ましい。
ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は特に制限されるものではないが、100〜10000が好ましく、1500〜8000がより好ましく、さらには2000〜5000であることが最も好ましい。ここでいう平均重合度もJIS K 6726(1994)によって定められた方法によって求められる数値である。
本工程は、基材フィルム10およびポリビニルアルコール系樹脂層20を備える積層フィルム100を一軸延伸して延伸フィルム200を得る工程である(図2参照)。積層フィルム100の延伸倍率は、所望する偏光特性に応じて適宜選択することができるが、好ましくは積層フィルム100の元長に対して5倍超17倍以下であり、より好ましくは5倍超8倍以下である。延伸倍率が5倍以下であると、延伸されたポリビニルアルコール系樹脂層20’が十分に配向しないため、結果として、偏光子層の偏光度が十分に高くならない。一方、延伸倍率が17倍を超えると延伸時のフィルムの破断が生じ易くなると同時に、フィルムの厚みが必要以上に薄くなり、後工程での加工性・取扱い性が低下するおそれがある。本発明においては、上記のようなゴム成分が分散された基材フィルム10を用いるため、延伸倍率を5倍超にした場合であっても、得られる延伸フィルム200は、延伸方向への裂けに対する高い耐性を有する。したがって、本発明によれば、高い偏光特性を示すとともに、高い耐久性を備える偏光性積層フィルムを提供することができる。
本工程は、延伸フィルム200のポリビニルアルコール樹脂層20’を、二色性色素で染色して染色フィルム300を得る工程である(図3参照)。二色性色素としては、たとえば、ヨウ素や有機染料などが挙げられる。有機染料としては、たとえば、レッドBR、レッドLR、レッドR、ピンクLB、ルビンBL、ボルドーGS、スカイブルーLG、レモンイエロー、ブルーBR、ブルー2R、ネイビーRY、グリーンLG、バイオレットLB、バイオレットB、ブラックH、ブラックB、ブラックGSP、イエロー3G、イエローR、オレンジLR、オレンジ3R、スカーレットGL、スカーレットKGL、コンゴーレッド、ブリリアントバイオレットBK、スプラブルーG、スプラブルーGL、スプラオレンジGL、ダイレクトスカイブルー、ダイレクトファーストオレンジS、ファーストブラックなどが使用できる。これらの二色性物質は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本工程は、二色性色素で染色させて得られた染色フィルム300のポリビニルアルコール系樹脂層30に対して架橋処理を行ない、ポリビニルアルコール系樹脂層を偏光子層40とする架橋フィルム400を得る工程である(図4参照)。架橋工程は、たとえば架橋剤を含む溶液(架橋溶液)中に染色フィルム300を浸漬することにより行なうことができる。架橋剤としては、従来公知の物質を使用することができる。たとえば、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物や、グリオキザール、グルタルアルデヒドなどが挙げられる。これらは1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
得られた架橋フィルム400は、通常、洗浄を行なった後、乾燥される。これにより偏光性積層フィルムが得られる(図5参照)。洗浄は、イオン交換水、蒸留水などの純水に架橋フィルム400を浸漬することにより行なうことができる。水洗浄温度は、通常3〜50℃、好ましくは4〜20℃の範囲である。浸漬時間は、通常2〜300秒間、好ましくは5〜240秒間である。洗浄は、ヨウ化物溶液による洗浄処理と水洗浄処理とを組み合わせてもよく、適宜にメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、プロパノール等の液体アルコールを配合した溶液を用いることもできる。
上記偏光性積層フィルムは、保護フィルムを貼着した偏光板を製造するための中間物としても有用であり、これを用いることにより、保護フィルム付き偏光板を効率的に歩留まり良く製造することができる。保護フィルム付き偏光板の一例を図6に示す。図示される保護フィルム付き偏光板600は、偏光子層40における延伸された基材フィルム10’が積層されていた面とは反対側に保護フィルム50を有する。図6の例においては基材フィルム10’が剥離除去されているが、保護フィルム付き偏光板は基材フィルム10’を有していてもよい。
(B)基材フィルム10’を剥離除去する工程。なお、工程(B)は上述のように任意の工程である。
<実施例1>
(1)基材フィルムの作製
リアクターブレンド法によって、同じ反応容器内で熱可塑性樹脂およびゴム成分を順次調製した。具体的には、チーグラー・ナッタ型触媒を用いて、第一工程としてプロピレンモノマーを気相中でフィードしていき、熱可塑性樹脂であるプロピレン単独重合体を製造した。プロピレンモノマーのフィードを止めて反応を停止させた後、その反応容器にそのまま、第二工程としてエチレンモノマーとプロピレンモノマーを気相中でフィードしていき、ゴム成分であるエチレン−プロピレン共重合体を製造し、ゴム成分であるエチレン−プロピレン共重合体が粒子状で分散されたプロピレン単独重合体を得た。共重合体に占めるエチレンユニットの含有量を重合時の物質収支から求めたところ、35重量%であった。また樹脂全体(熱可塑性樹脂およびゴム成分の合計)に占めるエチレンユニットの含有量を高分子ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616頁に記載されている方法に従って求め、この値から樹脂全体に占めるエチレン−プロピレン共重合体の含有量を算出したところ、29重量%であった(すなわち、エチレン−プロピレン共重合体の含有量は熱可塑性樹脂の40.8重量%)。
ポリビニルアルコール粉末(日本合成化学工業(株)製「Z−200」、平均重合度1100、平均ケン化度99.5モル%)を95℃の熱水に溶解し、濃度3重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液に架橋剤(住友化学(株)製「スミレーズレジン650」)をポリビニルアルコール粉末6重量部に対して5重量部混合した。得られた混合水溶液を、コロナ処理を施した上記基材フィルムのコロナ処理面上にマイクログラビアコーターを用いて塗工し、80℃で10分間乾燥させることにより、厚み0.2μmのプライマー層を形成した。
ポリビニルアルコール粉末(クラレ(株)製「PVA124」、平均重合度2400、平均ケン化度98.0〜99.0モル%)を95℃の熱水に溶解し、濃度8重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液を、上記プライマー層上にリップコーターを用いて塗工し、80℃で2分間、70℃で2分間、ついで60℃で4分間の条件下で乾燥させることにより、基材フィルム上にプライマー層を介してポリビニルアルコール系樹脂層が積層された積層フィルムを作製した。ポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは9.8μmであった。
上記積層フィルムを160℃の延伸温度で5.8倍に自由端縦一軸延伸し、延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの厚みは28.5μmであり、ポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは4.2μmであった。
上記延伸フィルムを60℃の温浴に60秒間浸漬した後、ヨウ素とヨウ化カリウムとを含む水溶液である30℃の染色溶液に150秒間程度浸漬して、ポリビニルアルコール系樹脂層の染色を行ない、ついで10℃の純水で余分なヨウ素液を洗い流した。次に、ホウ酸とヨウ化カリウムとを含む水溶液である76℃の架橋溶液に600秒間浸漬した。その後、10℃の純水で4秒間洗浄し、最後に50℃で300秒間乾燥させることにより、偏光性積層フィルムを得た。
実施例1の「(1)基材フィルムの作製」の第二工程において、エチレンモノマーと1−ブテンモノマーをフィードし、ゴム成分としてエチレン−ブテン共重合体を調製したこと以外は、実施例1と同様にして厚み100μmの基材フィルムを作製した。共重合体に占めるエチレンユニットの含有量は35重量%であった。また樹脂全体に占めるエチレンユニットの含有量は30重量%であった(すなわち、エチレン−プロピレン共重合体の含有量は熱可塑性樹脂の42.9重量%)。
プロピレン単独重合体(住友化学(株)製「住友ノーブレンFLX80E4」、融点Tm=163℃)からなる厚み100μmの基材フィルム(ゴム成分なし)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを作製した。ついで、実施例1と同様の条件で自由端縦一軸延伸処理を行ない、厚み30.1μmの延伸フィルムを得た。延伸フィルムにおけるポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは4.5μmであった。
エチレンユニットを約5重量%含むプロピレン−エチレンランダム共重合体(住友化学(株)製「住友ノーブレン W151」、融点Tm=138℃)からなる厚み100μmの基材フィルム(ゴム成分なし)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを作製した。ついで、実施例1と同様の条件で自由端縦一軸延伸処理を行ない、厚み30.1μmの延伸フィルムを得た。延伸フィルムにおけるポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは4.5μmであった。
上記実施例および比較例で得られた延伸フィルムの引き裂き強度を次の方法で測定した。まず、延伸フィルムの短辺端部の中央(フィルム幅方向の中央)から、カッターを用いて延伸方向と平行に切り目を入れた。次に、万能引っ張り試験機((株)島津製作所製「オートグラフAG−I」)を用いて、この切り目の基点から延伸フィルムを引き裂き、そのときの引き裂き強度を同装置を用いて測定した。フィルム引き裂き時の速度は300mm/minとした。本測定により、各引き裂き距離(切り目の基点からの引き裂かれたフィルムの距離)における引き裂き強度が得られるが、引っ張り試験機を用いた引き裂き強度測定においては、ある程度の引き裂き距離に達してフィルムの引き裂き角度が安定するまでは、引き裂き強度が高く出ることが多い。したがって、本測定では、この部分を除外し、引き裂き強度が安定している領域における引き裂き強度の平均値を求め、これを引き裂き強度とした。結果を表1に示す。
<実施例3>
実施例1および2で得られた各偏光性積層フィルムを用いて、次の手順で保護フィルム付き偏光板を作製した。まず、ポリビニルアルコール粉末((株)クラレ製「KL−318」、平均重合度1800)を95℃の熱水に溶解し、濃度3重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液に架橋剤(住友化学(株)製「スミレーズレジン650」)をポリビニルアルコール粉末2重量部に対して1重量部混合し、接着剤溶液とした。
Claims (5)
- 熱可塑性樹脂にエチレンユニットを含む共重合体であるゴム成分が分散されてなる基材フィルムの一方の面にポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層フィルムを得る工程と、
前記積層フィルムを一軸延伸して延伸フィルムを得る工程と、
前記延伸フィルムの前記ポリビニルアルコール系樹脂層を二色性色素で染色して、染色フィルムを得る工程と、
前記染色フィルムの前記ポリビニルアルコール系樹脂層を、架橋剤を含む溶液に浸漬して偏光子層を形成し、架橋フィルムを得る工程と、
前記架橋フィルムを乾燥する工程と、
を含む偏光性積層フィルムの製造方法。 - 前記熱可塑性樹脂がポリプロピレン系樹脂である請求項1に記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂がプロピレン単独重合体である請求項1に記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
- 前記ゴム成分がエチレンユニットと、プロピレンユニット、ブテンユニット、オクテンユニットおよびスチレンユニットからなる群から選択される1種以上のユニットとを含む共重合体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
- 前記共重合体における前記エチレンユニットの含有量が10重量%超90重量%未満である請求項1〜4のいずれか1項に記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
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