JP5843188B2 - 抗真菌剤の活性増強作用を有する新規物質およびその製造方法と用途 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリエンマクロライド系薬剤、アゾール系薬剤等の抗真菌剤の活性増強作用を有する新規FKI−4981B物質およびその製造法に関する。本発明はまた、このFKI−4981B物質を生産する能力を有する新規微生物およびFKI−4981B物質の用途にも関する。
1950年代以降の抗生物質に関する研究開発の急速な進歩およびその広範な普及により、各種感染性疾患に対する多くの治療薬が開発されてきた。その一方で、近年、カンジダ、アスペルギルス、クリプトコッカス等の真菌による深在性真菌症の増加と重篤化が見られるようになった。これには、白血病、悪性リンパ腫、HIV感染等による免疫不全、抗がん剤の投与による免疫能の低下、或いは抗生物質の大量使用による菌交代現象等の問題が関与していると考えられる。
現在、深在性真菌症の治療には、ポリエンマクロライド系薬剤、アゾール系薬剤、フルシトシン等が使用されている。例えば、ポリエンマクロライド系薬剤のひとつであるアムホテリシンBは、抗真菌活性の強さから重篤な疾患の治療に有効であるが、腎毒性等の副作用を生じることがあり、安全面での問題が指摘されている(非特許文献1)。フルシトシンについても、安全性の低さや耐性菌の存在が問題となっている。
一方、アゾール系薬剤は、一般に安全域が広く、副作用は比較的少ないと言われているが、抗菌域が狭く、作用が静菌的なため重篤な疾患に対する有効性が低い。また、耐性菌の増加も指摘されている(非特許文献2)。近年、ミカファンギンやカスポファンギン等のキャンディン系薬剤(非特許文献3)が開発され、深在性真菌症の治療に用いられているが、抗真菌スペクトルが狭いためカンジダ症とアスペルギルス症に限られており、また耐性菌の報告例も徐々に増加している。
Gallisら、Rev.Infect.Dis.、12巻、309-329頁、1990年 Rexら、Antimicrob.AgentsChemothe.、39巻、1-8頁、1995年 Denning、Lancet、362巻、9330号、1142-1151頁、2003年
HIV感染や血液疾患などの免疫力の低下を伴う疾患では、易感染状態が惹起され、日和見感染症として真菌感染症の発生頻度が増加する。またこれら免疫力低下を伴う疾患の多くは重篤で、治療期間も長期にわたる。このため、真菌感染症の化学療法も長期間におよぶ場合が多い。現在、深在性真菌症などの真菌症治療に高頻度に使用されているアムホテリシンBは、副作用として重篤な腎毒性が、また、アゾール系抗真菌剤は薬剤耐性の誘導が極めて起こりやすいことが、それぞれ問題とされている。
そのため、アムホテリシンBおよびアゾール系抗真菌剤の抗真菌活性を上昇させる薬剤は、薬剤の投与量を減量し、及び/又は期間を短縮させることにより、腎毒性あるいは耐性菌出現の頻度を低減させることが期待される。かかる状況において、抗真菌剤の活性増強作用を有する薬剤を提供することは、深在性真菌症をはじめとする多くの真菌感染症の治療上有用であり、その実現が課題となっている。
本発明者らは、ポリエンマクロライド系薬剤、アゾール系薬剤等の抗真菌剤の活性増強作用を有する新規物質となり得る化合物を微生物産物中より探索した結果、土壌から分離したシンプリシリウム・エスピーFKI−4981(Simplicillium sp. FKI-4981)に属する糸状菌の培養物中に抗真菌剤アムホテリシンBの活性増強作用を有する物質が産生されていることを見出した。次いで、該培養物から抗真菌剤アムホテリシンBの活性増強作用を有する物質を分離、精製した結果、後述する化学構造を有する新規な物質であることを見出し、本物質をFKI−4981B物質と称することにした。
かかる知見に基づいて完成した本発明は、1側面において、抗真菌剤アムホテリシンBの活性増強作用を有する成分として有用な、式[I]で表される、FKI−4981Bと命名された新規物質及びその塩、特に製薬的に許容される塩である。
Figure 0005843188
本発明はまた、シンプリシウム属に属し、FKI−4981B物質を生産する能力を有する微生物を培地に培養し、培養物中にFKI−4981B物質を蓄積せしめる工程、及び該培養物からFKI−4981B物質を採取する工程を含む、前記FKI−4981B物質の製造方法も提供する。この方法に用いる微生物としては、シンプリシリウム・エスピーFKI−4981(Simplicillium sp. FKI-4981)(受託番号:NITE P-1031)が好ましい。
さらに本発明は、シンプリシウム属に属し、FKI−4981B物質を生産する能力を有する微生物、特にシンプリシリウム・エスピーFKI−4981(Simplicillium sp. FKI-4981)(受託番号:NITE P-1031)およびその変異株、並びに前記新規物質FKI−4981B又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物も提供する。この医薬組成物は、特に真菌感染症の治療および予防に有効であり、ポリエンマクロライド系薬剤およびアゾール系薬剤から選ばれた少なくとも1種の抗真菌剤をさらに含むことができる。
本発明により提供される上記の式[I]で表される新規物質FKI−4981B(以下、「化合物[I]」と略称する)およびその塩は、アムホテリシンBといったポリエンマクロライド系薬剤およびミコナゾーズその他のアゾール系薬剤を包含する抗真菌剤の活性を著しく増強する作用を有しており、真菌感染症の治療又は予防のための抗真菌剤との併用剤として非常に有用であると期待される。この化合物[I]単独での抗真菌活性は、現在までのところほとんど認められないが、糸状菌に属するムコール・ラセモサス (Mucor racemosus) に対して弱い抗真菌活性を有していることが判明している。
本発明はまた、シンプリシウム属に属し、化合物[I]を生産する能力を有する微生物、特にシンプリシリウム・エスピーFKI−4981(Simplicillium sp. FKI-4981)株を提供する。
本発明に係る化合物[I]の紫外部吸収スペクトル(メタノール溶液中)を示す。 本発明に係る化合物[I]の赤外部吸収スペクトル(臭化カリウム法)を示す。 本発明に係る化合物[I]のプロトン核磁気共鳴スペクトル(重ピリジン中)を示す。 本発明に係る化合物[I]のカーボン核磁気共鳴スペクトル(重ピリジン中)を示す。
本発明に係る化合物[I]を製造するには、シンプリシウム属に属し、化合物[I]を生産する能力を有する微生物を培地に培養して培養物中に化合物[I]を蓄積せしめ、該培養物から化合物[I]を採取する方法が使用できる。化合物[I]の生産に使用される菌株としては、一例として、本発明者等によって東京都港区で採取した土壌より新に分離されたシンプリシリウム・エスピーFKI−4981(Simplicillium sp. FKI-4981)株が挙げられる。
このFKI−4981株の菌学的性状は以下の通りである。
1.形態的特徴
本菌株は、ポテト・デキストロース寒天培地、麦芽エキス寒天培地、ポテト・キャロット寒天培地で中程度に生育し、各種寒天培地で分生子の着生は良好であった。
ポテト・キャロット寒天培地に生育したコロニーを顕微鏡で観察すると、菌糸は透明で隔壁を有している。フィアライドは基底菌糸より直生する。
フィアライドの大きさは10.8〜30.6(〜46.8)×0.9〜1.7μmで、単生または、2〜3本輪生して生じ、先端にいくほど細くなる。フィアライドの先端から分生子が生じ、粘性球形を形成する。分生子は球形〜亜球形、時々楕円形で、大きさは2.0〜3.5×1.8〜2.5(〜2.8)μm、その表面は滑面である。
2.培養性状
各種寒天培地上で、25℃、7日間培養した場合の肉眼的観察結果を表1に示す。
Figure 0005843188
3.生理的性状
1)最適生育条件
本菌株の最適生育条件はpH5〜8、温度17.0〜25.0℃である。
2)生育の範囲
本菌株の生育範囲はpH3〜10、温度9.2〜29.4℃である。
3)好気性、嫌気性の区別
好気性
上記FKI−4981株の形態的特徴、培養性状および生理的性状に基づき、既知菌種との比較を試みた結果、本菌株をシンプリシリウム(Simplicillium)に属する一菌株と同定し、シンプリシリウム・エスピーFKI−4981と命名した。なお本菌株はシンプリシリウム・エスピーFKI−4981(Simplicillium sp. FKI-4981)として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許生物寄託センターに寄託されている(受託番号:NITE P-1031)。
本発明に係る化合物[I]を製造するには、上記シンプリシリウム・エスピーFKI−4981(Simplicillium sp. FKI-4981)株を用いるのが好ましいが、これに限定されることなく、該株の人工変異株や自然変異株も含めた、シンプリシウム属に属し、化合物[I]を生産する能力を有する微生物であれば、すべて使用することができる。
上記微生物を培養するための培地としては、栄養源に微生物が同化し得る炭素源、消化し得る窒素源、さらに必要に応じて無機塩、ビタミン等を含有させた栄養培地が使用される。同化し得る炭素源としては、グルコース、フラクトース、マルトース、ラクトース、ガラクトース、デキストリン、澱粉等の糖類、大豆油等の植物性油脂類が単独でまたは組み合わせて用いられる。消化し得る窒素源としては、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、大豆粉、綿実粉、コーン・スティープ・リカー、麦芽エキス、カゼイン、アミノ酸、尿素、アンモニウム塩類、硝酸塩類が単独でまたは組み合わせて用いられる。その他必要に応じて、リン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などの塩類、鉄塩、マンガン塩、銅塩、コバルト塩、亜鉛塩等の重金属塩類やビタミン類、その他化合物[I]の生産に好適なものが適宜添加される。
培養の際、発泡が激しいときには、必要に応じて液体パラフィン、動物油、植物油、シリコン、界面活性剤等の消泡剤を添加してもよい。上記の培養は、上記栄養源を含有すれば、培地は液体でも固体でもよいが、通常は液体培地を用い培養するのがよい。目的物質を大量に工業生産する場合には、通気攪拌培養するのが好ましい。
培養を大きなタンクで行う場合には、生産工程において菌の生育遅延を防止するために、はじめに比較的少量の培地に生産菌を接種培養した後、次に培養物を大きなタンクに移して、そこで生産培養するのが好ましい。この場合、前培養に使用する培地および生産培養に使用する培地の組成は、同一であっても異なっていてもよい。
培養を通気攪拌条件で行う場合は、例えばプロペラやその他機械による攪拌、ファンメーターの回転または振盪、ポンプ処理、空気の吹き込み等、既知の方法が適宜使用される。通気用の空気は滅菌したものを使用する。
培養温度は、化合物[I]の生産菌がこれらの物質を生産する範囲内で適宜変更し得るが、通常は20〜30℃、好ましくは27℃前後で、適宜振盪培養と静置培養を単独または組み合わせて培養するのがよい。
培養時間は培養条件によっても異なるが、化合物[I]の生産には、振盪培養と静置培養を組み合わせた場合、通常、10〜16日程度である。培養物に蓄積された本発明の新規物質を採取するには、微生物培養物から代謝産物を採取するのに通常使用される方法を用いることができる。例えば、有機溶媒による抽出、濃縮、乾燥、吸着、濾過、遠心分離、クロマトグラフィーなどの方法により目的物質を分離・精製する。
本発明の化合物[I]を、シンプリシリウム・エスピーFKI−4981(Simplicillium sp. FKI-4981)の培養物から採取するには、全培養物をエタノール等の水混和性有機溶媒で抽出し、抽出液より減圧下において有機溶媒を留去した後、続いて残渣をダイアイオンHP-20(三菱化学)等の吸着剤で抽出する方法を採用することができる。これらの抽出法に加え、水溶性物質の採取に用いられる公知の方法、例えば吸着クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、遠心向流分配クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等を適宜組み合わせ、または繰り返すことによって、化合物[I]を分離、精製することができる。
このようにして得られた本発明の化合物[I]の理化学的性状について説明する。
(1)性状:白色粉末
(2)分子式:C244411
HRESI-MS(m/z)[M+Na]+ 計算値531.2781, 実測値531.2769
(3)分子量:508
ESI-MS(m/z)で[M+Na]+531, [M-H]-507を観測
(4)紫外部吸収スペクトル:メタノール溶液中で測定した紫外部吸収スペクトルは図1に示すとおりであり、λmax(MeOH,ε):218(1,100)、247(500)、332(300)nmに吸収極大を示す。
(5)赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定した赤外吸収スペクトルは図2に示すとおりであり、νmax 3392、2929、2863、1722、1646、1392、1241、1173、1076cm-1等に特徴的な吸収極大を示す。
(6)比旋光度:[α]D 25 −24°(c=0.1、メタノール)
(7)溶剤に対する溶解性:クロロホルム、ピリジンに易溶、メタノールに難溶、水に不溶。
(8)プロトン及びカーボン核磁気共鳴スペクトル:重ピリジン中で、バリアン社製600 MHz核磁気共鳴スペクトロメータで測定した水素の化学シフト(ppm)及び炭素の化学シフト(ppm)は下記に示すとおりである:
δH:0.78(3H), 0.81(3H), 1.18(4H), 1.22(4H), 1.40(1H), 1.46(2H), 1.59(1H), 1.64(1H), 1.70(1H), 1.75(2H), 2.21(1H), 2.30(1H), 2.78(1H), 2.82(1H), 2.98(1H), 3.32(1H), 3.89(1H), 4.14(1H), 4.23(1H), 4.47(1H), 4.52(1H), 4.53(1H), 4.58(1H), 4.87(1H), 5.20(1H), 5.55(1H) ppm;
δC:14.2,14.3,22.9,23.0,25.3,25.9,32.0,32.2,34.8,38.2,39.8,42.0,44.0,63.2,68.6,69.2,71.8,72.8,74.8,76.0,78.9,102.0,172.4,174.7 ppm。
これらの化合物[I]のプロトン核磁気共鳴スペクトルおよびカーボン核磁気共鳴スペクトルをそれぞれ図3および4に示す。
以上のように、化合物[I]の各種理化学性状やスペクトルデータを詳細に検討した結果、化合物[I]は下記の式[I]で表される化学構造であることが決定された。
Figure 0005843188
化合物[I]の「製薬学的に許容される塩」としては、製薬学的に許容される塩基との塩が挙げられる。塩基との塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属或いはカルシウム等のアルカリ土類金属等との塩が挙げられる。いうまでもないが、このような塩は、上記式[I]におけるカルボキシル基とアルカリ金属又はアルカリ土類金属化合物との反応で得られる。
上記の化合物[I]は、該化合物を生産可能なシンプリシウム属糸状菌を培養し、該培養物から該化合物を採取することによって製造することができる。化合物[I]を生産可能なシンプリシウム属糸状菌としては、化合物[I]を生産する能力を有するものであれば特に限定されないが、一例として、シンプリシリウム(Simplicillium)属に属する糸状菌であるシンプリシリウム・エスピーFKI−4981(Simplicillium sp. FKI-4981)株が挙げられる。
本発明の化合物[I]およびその製薬学的に許容される塩は、真菌感染症、特に深在性真菌感染症の治療に使用されているポリエンマクロライド系薬剤およびアゾール系薬剤といった抗真菌剤の活性増強作用を有している。従って、化合物[I]およびその製薬学的に許容される塩から選ばれた少なくとも1種の化合物を有効成分(具体的には抗真菌剤活性増強剤)として含有する医薬組成物は、ヒトを含む動物に医薬として投与することができ、真菌感染症の治療又は予防に効果がある。
本発明の化合物[I]およびその製薬学的に許容される塩は、真菌感染症、特に深在性真菌感染症の治療に使用されているポリエンマクロライド系薬剤およびアゾール系薬剤といった抗真菌剤と一緒に投与することができる。それにより、一緒に投与される抗真菌剤の活性を高めることができるので、その投与量の低減及び/又は投与期間の短縮による副作用の低減(耐性菌の出現阻止も含む)が可能となる。
ポリエンマクロライド系抗真菌剤としては、アムホテリシンB、ピマリシン、ナイスタチン、ナタマイシンなどが挙げられる。これらのいずれも使用できるが、好ましいのはアムホテリシンBである。前述したように、アムホテリシンBは抗真菌活性が強く、重篤な真菌感染症の治療にも有効であるが、腎毒性等の副作用が問題となっている。本発明により、同じ活性を得るためのアムホテリシンBの投与量の低減及び/又は投与期間の短縮を図ることによりその副作用を減ずることができる。アザール系抗真菌剤としては、イミダゾール系のミコナゾール、並びにトリアゾール系のフルコナゾールおよびイトラコナゾールを挙げることができる。
ここで「一緒に投与」とは、ある特定の治療計画において、同時または逐次的に投与することを含む。従って、化合物[I]と前記抗真菌剤(例、アムホテリシンB)は、同時に投与されても、異なる時期に投与されてもよい。化合物[I]は、その活性を増強する抗真菌剤と同時に投与できるので、同一の製剤(医薬組成物)中に化合物[I]と例えばアムホテリシンBとを含有させることができる。もちろん、両者の薬剤を別々の医薬組成物として投与してもよい。
化合物[I]又はその製薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は、種々の投与形態あるいは使用形態に合わせて、必要に応じて担体等とともに常法に従い製剤化することができる。経口投与のための製剤としては、錠剤、丸剤、顆粒剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、舌下剤等が挙げられる。また非経口投与のための製剤としては、注射剤、経皮吸収剤、吸入剤、坐剤等が挙げられる。製剤化に際しては、界面活性剤、賦形剤、安定化剤、湿潤剤、崩壊剤、溶解補助剤、等張剤、緩衝剤、着色料、着香料等の医薬用添加剤を適宜使用する。なお、アムホテリシンBなどの抗真菌剤と併用する場合、抗真菌剤と化合物[I]の剤形および投与経路は必ずしも同一である必要はなく、一方を経口投与の剤形、他方を非経口投与の剤形とするか、或いは一方を注射剤、他方を経皮吸収剤のように異なる非経口投与の剤形とすることも可能である。
担体としては製薬学上許容されるものを用いることができ、その種類及び組成は投与経路や投与方法によって適宜決定することができる。例えば、液状担体として水、アルコール、大豆油、ゴマ油等を用いることができる。固体担体としてマルトース、スクロースなどの糖類、リジンなどのアミノ酸類、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、シクロデキストリンなどの多糖類、ステアリン酸マグネシウムなどの有機酸塩等を使用できる。注射剤として製剤化する場合には、液状担体は一般に生理食塩水、各種緩衝液、グルコース等の糖類溶液を用いることができる。
本発明の化合物[I]又はその塩を医薬組成物として投与する場合、その投与量は、患者の年齢、体重、疾病の種類や程度、投与経路により異なり、動物試験の結果など種々の状況を勘案して総投与量が一定量を越えない範囲で決定できる。具体的には、ヒトに経口投与する場合には成人一人当たり一日に1〜1000mg/kg、静脈投与の場合には同じく0.1〜100mg/kgの範囲内で投与することができる。
医薬組成物が、化合物[I]に加えて、ポリエンマクロライド系およびアゾール系から選ばれた少なくとも1種の抗真菌剤をさらに含有している場合も、上記と同様に製剤化することができる。その場合、抗真菌剤(例えば、アムホテリシンB)の投与量は、その抗真菌剤に対して規定されている量とする。化合物[I]の投与量は、組み合わせる抗真菌剤の活性増強に有効な量とし、好ましくは、後述する試験例2に示したような微量液体希釈法で求めた生育阻止濃度により求めた増強率が2倍以上、より好ましくは4倍以上となる量とする。この量は、抗真菌剤の種類ごとに異なるが、実験により容易に求めることができる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、ここに示さなかった変法あるいは修飾手段の全てを包括する。
1.FKI−4981株の培養
寒天斜面培地[グリセロール0.1%(関東化学)、KH2PO4 0.08%(関東化学)、K2HPO4 0.02%(関東化学)、MgSO4・H2O 0.02%(和光純薬)、KCl 0.02%(関東化学)、NaNO3 0.2%(和光純薬)、酵母エキス0.02%(オリエンタル酵母)、寒天1.5%(清水食品)、pH6.0に調整]で培養したFKI−4981株を、種培地[グルコース2%(和光純薬)、ポリペプトン0.5%(和光純薬)、MgSO4・7H2O 0.05%(和光純薬)、酵母エキス0.2%(オリエンタル酵母)、KH2PO4 0.1%(関東化学)、寒天0.1%(清水食品)pH6.0に調整]100mLを分注した500mL容三角フラスコに一白金耳ずつ接種し、27℃で3日間ロータリーシェイカー(210rpm)にて培養した後、生産培地[スクロース3.0%(和光純薬)、可溶性デンプン3.0%(関東化学)、肉エキス1.0%(極東製薬)、エビオス0.3%(アサヒビール)、KH2PO4 0.05%(関東化学)、MgSO4・7H2O 0.05%(和光純薬)、pH6.0に調整]20Lを分注した30L容ジャーファーメンター(2基、三ツワ社製)に1%植菌し、27℃で6日間培養した(回転数:250rpm、通気量:10L/min)。
2.FKI−4981B物質の精製
培養終了後、この培養液(40L)をシャープレス型遠心機(11,000rpm)で遠心分離し、上清と菌体とに分け、分離された菌体にアセトン(9L)を加え、1時間撹拌後、吸引濾過し抽出液を得た。得られた抽出液を減圧下でアセトンを留去し、残った水溶液(9L)を上清と合わせた。これをダイアイオンHP−20(三菱化学)カラム(2L)に通塔し、水、30%、60%、100%アセトンを溶出溶媒(各4L)として用い、500mLずつ分画した。FKI−4981B物質を含む60%アセトン溶出の1〜4番目の画分を集め、減圧下濃縮乾固することで、茶色物質(2.38g)を得た。
この茶色物質に10mLのクロロホルムを加え、クロロホルム可溶画分(1.75g)と不溶画分(0.63g)とに分けた。不溶画分を、さらに10mLのメタノールを加えてメタノール可溶画分(0.59g)と不溶画分(0.04g)とに分けた。メタノール可溶画分(0.59g)を、クロロホルム:メタノール:水=2:2:1を2層系溶媒とし、上層を固定相、下層を移動相とした液々分配クロマトグラフィー(CPC;回転数:700rpm)を用い、3mL/minの流速で移動相を流し、18mlずつ分画した。粗FKI−4981B物質を含む8〜15番目の画分を集め、減圧下濃縮乾固することで粗FKI−4981B物質(161.8mg)を得た。
この粗FKI−4981B物質を少量のメタノールに溶解し、分取HPLC(カラム:PEGASIL ODS、20φ×250mm、センシュー科学)により精製を行った。まず、30〜70%アセトニトリル溶液のリニアグラジエント(40分間)を移動相とし、8ml/mimの流速で、蒸発光散乱検出器(ELSD;チューブ温度:40℃、ガス流量:1.5L/min)を用いてモニターした。その結果、保持時間22.2分に検出されたFKI−4981B物質のピークを分取し、分取溶液を減圧下濃縮乾固して、白色粉末のFKI−4981B物質(化合物[I])を19.9mgの収量で単離した。
(試験例1)
実施例1で得た化合物[I]の臨床抗菌薬アムホテリシンBおよびミコナゾールが示す抗真菌活性の増強作用について、ペーパーディスク法を用いた以下の方法で試験した。 試験菌としてカンジダ・アルビカンスATCC64548を用いて、ワックスマン培地[グルコース2.0%(和光純薬)、ペプトン0.5%(和光純薬)、乾燥酵母0.3%(極東製薬)、肉エキス0.5%(極東製薬)、NaCl 0.5%(極東製薬)、CaCO3 0.3%(関東化学)、pH7.0]で27℃、48時間の種培養を行った。その後、GY寒天培地[グルコース1.0%(和光純薬)、酵母エキス0.5%(オリエンタル酵母)、寒天0.8%(清水食品)、pH6.0]に種培地を0.1%植菌した。抗真菌剤アムホテリシンB(シグマ社製)或いはミコナゾール(シグマ社製)のGY寒天培地への添加濃度は、試験菌の生育に影響を与えない、それぞれ0.036μM(終濃度)及び0.0038μM(終濃度)とした。化合物[I]を、ペーパーディスク(薄手6mm:アドバンテック社製)に1枚当たり1、3又は10μgの量で含ませ、乾燥した後、上記のGY寒天培地に載せ、27℃で24時間の培養後に阻止円を測定することにより、化合物[I]の抗真菌剤活性増強剤としての活性を評価した。結果を表2に示す。
Figure 0005843188
表2から、本発明の化合物[I]は1、3又は10μg/ペーパーディスクの濃度で薬剤無添加培地上では阻止円を示さないことから、この濃度では抗真菌活性を示さないことが分かる。しかし、この濃度を含むペーパーディスクを、アムホテリシンBあるいはミコナゾール添加培地上の置くと阻止円を形成することから、アムホテリシンBあるいはミコナゾールと化合物[I]を一緒にすることで抗真菌活性を示すことが分かる。尚、阻止円の鮮明度をアルファベットで示し、A>B>C>D>Eの順でより鮮明な阻止円を表す。
(試験例2)
実施例1で得た化合物[I]の臨床真菌薬アムホテリシンBが示す抗真菌活性の増強作用について、NCCLS M27-A2法に従って微量液体希釈法を用いた以下の方法で試験した。
96穴マイクロプレート(Corning社)に、0.5μg/ml(終濃度)の抗真菌剤アムホテリシンB(シグマ社製)および8〜64μg/mL(終濃度)のFKI−4981B(化合物[I])、200μLのRPMI1640培地[RPMI1640培地10.4g/L(GIBCO)、炭酸水素ナトリウム2.0g/L(関東化学)、3−モルホリノプロパンスルホン酸ナトリウム34.53g/L(和光純薬)、pH7.0]および試験菌としてカンジダ・アルビカンス90029(菌数:1〜5x103個/ml)を入れ、35℃で24時間培養した後、吸光度(OD:600nm)を測定し、95%生育阻止濃度(MIC値)を算出した。結果を表3に示す。
Figure 0005843188
表3から、本発明の化合物[I]は、128μg/mLの濃度では抗真菌活性を示さず、アムホテリシンBと一緒に投与することで、アムホテリシンBの抗真菌活性を著しく増強することができることが分かる。従って、本発明に従って化合物[I]をアムホテリシンBと一緒に投与すると、アムホテリシンBの投与量の低減及び/又は投与期間の短縮によるその副作用の軽減を図ることができる。
NITE P−1031

Claims (9)

  1. 下記式[I]で表される化合物であるFKI−4981B物質及びその製薬学的に許容される塩。
    Figure 0005843188
  2. 求項1に記載の式[I]で表される物質を生産する能力を有するシンプリシリウム・エスピーFKI−4981(Simplicillium sp. FKI-4981)(受託番号:NITE P-1031)株またはその変異株である微生物を培地に培養し、培養物中に前記物質を蓄積せしめる工程、及び該培養物から前記物質を採取する工程を含む、式[I]で表される物質の製造方法。
  3. 前記微生物が、シンプリシリウム・エスピーFKI−4981(Simplicillium sp. FKI-4981)(受託番号:NITE P-1031)である、請求項2に記載の方法。
  4. 求項1に記載の式[I]で表される物質を生産する能力を有するシンプリシリウム・エスピーFKI−4981(Simplicillium sp. FKI-4981)(受託番号:NITE P-1031)株またはその変異株である微生物。
  5. シンプリシリウム・エスピーFKI−4981(Simplicillium sp. FKI-4981)(受託番号:NITE P-1031)である、請求項4に記載の微生物。
  6. 請求項1に記載の式[I]で表される物質又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物。
  7. 前記医薬組成物が真菌感染症の治療または予防用である請求項6に記載の医薬組成物。
  8. 前記医薬組成物がポリエンマクロライド系薬剤およびアゾール系薬剤から選ばれた少なくとも1種の抗真菌剤の活性を増強するために、この抗真菌剤と一緒に投与されるものである、請求項7に記載の医薬組成物。
  9. 前記医薬組成物が、ポリエンマクロライド系薬剤およびアゾール系薬剤から選ばれた少なくとも1種の抗真菌剤をさらに含む、請求項7に記載の医薬組成物。
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