以下に、本発明に係る運転支援装置および運転支援方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
〔実施形態〕
図1は、実施形態に係る運転支援装置2を備える車両1の概略図である。実施形態に係る運転支援装置2を備える車両1(以下、自車両1と呼ぶこともある)は、内燃機関であるエンジン5が動力源として塔載され、エンジン5で発生する動力が変速装置6等の駆動装置を経由して車輪3に伝達されることにより、走行可能になっている。また、車両1には、車輪3を制動することにより走行中の車両1を制動する制動手段であるブレーキ装置が備えられており、ブレーキ装置を作動させる際における油圧を制御するブレーキ油圧制御装置10が設けられている。また、駆動装置には、駆動装置の出力軸の回転速度を検出することを介して車速を検出する車速検出手段である車速センサ21が設けられている。
また、車両1には、運転者が運転操作をする際に用いるアクセルペダル15及びブレーキペダル16が備えられており、このうち、アクセルペダル15の近傍には、アクセルペダル15の操作量を検出するアクセルセンサ22が設けられている。また、ブレーキ油圧制御装置10には、ブレーキペダル16の操作時における油圧であるブレーキ圧を検出することによりブレーキペダル16の操作量を検出するブレーキ圧センサ23が設けられている。
さらに、車両1には、運転者が操舵輪を操舵する際に用いるステアリングホイール17が備えられており、ステアリングホイール17は、電動パワーステアリング装置であるEPS(Elecric Power Steering)装置12に接続されている。これにより、ステアリングホイール17は、EPS装置12を介して、操舵輪である前輪を操舵可能に設けられている。また、このように設けられるEPS装置12には、ステアリングホイール17の回転角度である舵角を検出する舵角検出手段である舵角センサ24が設けられている。
また、車両1には、自車両1の周辺の環境情報を取得する環境情報取得手段として、カメラ31と、走行音センサ32とが塔載されている。このうち、カメラ31は、車両1の前方等の車両1の周囲を撮像することにより、車両1の周囲の画像情報を取得する撮像手段として設けられている。このカメラ31は、例えば、車内に配設されて、フロントウィンドウ越しに前方を撮影することにより、他の車両や、車両1が走行する道路の環境等を撮影することが可能になっている。また、カメラ31は、検知対象物から光が届く範囲で検知対象物の検知が可能な、直接型センサになっている。
また、走行音センサ32は、車両1の前端付近に配設されており、車両1の周囲の音情報を検出し、音情報を取得する集音手段として設けられている。この走行音センサ32は、例えば、車両1の前側のバンパ等に複数が配設されており、複数の走行音センサ32によって音の方向も含めて周囲の音情報を検出することが可能になっている。これにより走行音センサ32は、車両1の周囲から伝達される音情報や、車両1から発せられた音の反響音に基づいて、車両1の周囲の遮蔽物の存在や、車両1の前方に位置する交差点で交差している道路における、死角領域を移動する他の車両等の移動体の存在及び接近方向を検知することが可能になっている。
図2は、図1に示す車両1の車内の概略図である。図3は、図2のA−A矢視図である。図4は、図3のB部詳細図である。車内には、ダッシュボード40上に、所定の情報を運転者に対して報知する運転支援手段を構成する警報装置50が設置されており、詳しくは、ダッシュボード40上におけるフロントウィンドウ41の下端付近に配設されている。この警報装置50は、運転者に対して視覚的に情報を報知する表示部51と、音によって情報を報知するブザー52とを有している。警報装置50は、これらのように表示部51やブザー52を備えることにより、音と光とを用いた報知による運転支援が可能になっている。なお、ブザー52は、メータ内に設けられたものであってもよい。
また、車内には、本実施形態に係る運転支援装置2の作動モードを切り替える作動モード切替スイッチ55が設けられている。運転支援装置2は、作動モードを、自動的に作動するオートモードと、運転者が作動のONとOFFとを切り替えるマニュアルモードとに切り替え可能になっており、作動モード切替スイッチ55は、このオートモードとマニュアルモードとを切り替えるスイッチになっている。また、ステアリングホイール17には、作動モード切替スイッチ55をマニュアルモードに切り替えた際に、ONとOFFとを切り替えることができるステアリングスイッチ56が配設されている。このうち、ステアリングスイッチ56は、運転者の意思で運転支援の作動と停止とを切り替える支援要求手段として設けられている。
これらのエンジン5や変速装置6、ブレーキ油圧制御装置10、EPS装置12、車速センサ21、アクセルセンサ22、ブレーキ圧センサ23、舵角センサ24、カメラ31、走行音センサ32、警報装置50、作動モード切替スイッチ55、ステアリングスイッチ56は、車両1に塔載されると共に車両1の各部を制御するECU(Electronic Contol Unit)に接続されている。このECUとしては、車両1の走行制御を行う走行制御ECU60と、車両1の走行中に運転者の運転支援をする制御である運転支援制御を行う運転支援ECU70と、が設けられている。
図5は、図1に示す運転支援装置2の要部構成図である。ECUに接続される各部のうち、エンジン5やブレーキ油圧制御装置10等の車両1の走行時に作動させる装置や、車速センサ21等の車両1の走行状態を検出する検出手段は、走行制御ECU60に接続されている。また、走行制御ECU60には、アクセルセンサ22やブレーキ圧センサ23、舵角センサ24等の運転者による運転操作の状態を検出する検出手段も接続されている。これに対し、カメラ31や警報装置50、作動モード切替スイッチ55、ステアリングスイッチ56等の運転支援制御に用いられる装置は、運転支援ECU70に接続されている。
また、走行制御ECU60と運転支援ECU70とは、互いに接続され、情報や信号のやり取りが可能になっている。これらの走行制御ECU60と運転支援ECU70とのハード構成は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理部や、RAM(Random Access Memory)等の記憶部等を備えた公知の構成であるため、説明は省略する。
これらのECUのうち、走行制御ECU60は、エンジン5の運転制御を行うエンジン制御部61と、ブレーキ油圧制御装置10を制御することにより制動力の制御を行うブレーキ制御部62と、車速センサ21での検出結果より車速の情報を取得する車速取得手段である車速取得部63と、アクセルセンサ22での検出結果よりアクセルペダル15の操作量であるアクセル操作量を取得するアクセル開度取得部64と、ブレーキ圧センサ23での検出結果よりブレーキペダル16の操作量であるブレーキ操作量を取得するブレーキ操作取得部65と、舵角センサ24での検出結果よりステアリングホイール17の操舵の状態を取得する舵角取得部66と、を有している。このうち、アクセル開度取得部64と、ブレーキ操作取得部65と、舵角取得部66とは、運転者の運転操作の情報を取得する運転操作取得手段として設けられている。
また、運転支援ECU70は、作動モード切替スイッチ55やステアリングスイッチ56の状態に基づいて運転支援制御の動作状態を制御する動作状態制御部71と、カメラ31の制御を行うカメラ制御部72と、走行音センサ32の制御を行う走行音センサ制御部73と、運転支援が必要な交差点の有無を判定する交差点判定部74と、を有している。
さらに、運転支援ECU70は、自車両1の前方の画像情報に基づいて、自車両1が走行する道路に交差する道路を移動する他車両である交差車両が出現する頻度である交差車両出現頻度を算出する出現頻度算出手段である出現頻度算出部75と、自車両1の前方に存在する交差点を自車両1から見た場合にカメラ31が視認可能な範囲の自車両1からの角度である開放角を算出する開放角算出部76と、走行音センサ32で検出した音情報より検出する情報の精度を、開放角算出部76で算出した開放角に基づいて算出する検出精度算出部77と、画像情報に基づく交差車両出現頻度の度合いを判定する出現頻度判定手段である出現頻度判定部79と、車両1の周囲を走行する他の車両の情報を取得する他車両情報取得部80と、運転支援の態様を変更する支援決定手段である支援決定部81と、運転支援として危険回避を誘導する支援を実行する運転支援手段を構成する支援実行部85と、を有している。このうち、支援決定部81は、交差車両が出現する確定性を表す指標として相互情報量を算出する相互情報量算出部82と、相互情報量算出部82で算出した相互情報量と、検出精度算出部77で算出した検出精度と、出現頻度算出部75で算出した交差車両出現頻度と、に基づいて、交差点の状況によって異なる誤報率や欠報率の目標値を設定する目標値設定部83と、開放角算出部76で算出した開放角および他車両情報取得部80で算出した環境騒音レベルに基づいて、目標値設定部83により設定された誤報率や欠報率の目標値により示される交差車両110の検出特性を取得する検出特性取得部84と、を有している。また、支援実行部85は、警報装置50を作動させることにより運転者に対して警報を行う警報制御部86を有している。
本実施形態に係る運転支援装置2は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。車両1の通常の走行時は、運転者がアクセルペダル15やブレーキペダル16を操作することにより、エンジン5やブレーキ油圧制御装置10等の各アクチュエータが作動し、車両1は運転者の運転操作に応じて走行する。例えば、走行制御ECU60が有するエンジン制御部61は、アクセルセンサ22での検出結果に基づいてアクセル開度取得部64で取得したアクセル操作量に応じてエンジン5を制御することにより、運転者の要求に沿った駆動力を発生させる。
また、ブレーキペダル16を操作することにより、ブレーキ装置を作動させる際における油圧がブレーキ油圧制御装置10で発生し、この油圧によってブレーキ装置が作動し、制動力が発生する。このように、ブレーキペダル16の操作時にブレーキ油圧制御装置10で発生する油圧であるブレーキ油圧は、ブレーキ圧センサ23で検出し、ブレーキ操作取得部65で取得する。ブレーキ操作取得部65は、このブレーキ油圧を、運転者のブレーキ操作量として取得する。
また、車両1の走行時には、車両1の各部に設けられるセンサ類によって車両1の走行状態が検出され、車両1の走行制御に用いられる。例えば、車速センサ21で検出した車速情報は、走行制御ECU60が有する車速取得部63で取得し、車速情報を用いて走行制御を行う際に使用される。
また、本実施形態に係る運転支援装置2は、車両1の走行時に運転者に対して注意喚起を行うことにより運転支援を行うことが可能になっている。具体的には、自車両1が走行する道路に交差する道路を移動する他車両である交差車両等の移動体に対して、出会い頭に衝突することを防ぐために、通常の走行時よりも注意を払いながら走行する必要がある交差点に自車両1が進入する際に、運転支援を行うことが可能になっている。
運転支援装置2で行う運転支援は、カメラ31で撮影した画像情報、及び走行音センサ32で検出した音情報を用いて、警報装置50によって行う。つまり、本実施形態に係る運転支援装置2では、自車両1の周辺の環境情報を取得する環境情報取得手段として設けられたカメラ31と走行音センサ32とによって検出した画像情報と音情報とに基づいて警報装置50を制御し、運転者に対して警報することにより、運転支援を実行する。
交差点進入時の運転支援について説明すると、車両1が、自車両1が走行中の道路である走行道路101を走行している際において、車両1の進行方向に、一時停止線104がある交差点103など注意が必要な交差点103が存在する場合に、運転支援を実行する。車両1の進行方向に、より注意が必要で、運転支援が必要な交差点103が存在するか否かの判断は、車両1の走行状態と運転者の運転操作の状態に基づいて判断する。具体的には、車速取得部63で取得した車速が所定の速度以下で、且つ、アクセル開度取得部64で取得したアクセル操作量とブレーキ操作取得部65で取得したブレーキ操作量とが、それぞれ所定の基準値以下である場合に、運転支援が必要な交差点103が存在するとの判定を、運転支援ECU70が有する交差点判定部74で行う。
つまり、運転者に対して注意喚起等の運転支援を行う必要のある交差点103、即ち、より注意深く走行する必要がある交差点103に車両1が進入する場合には、運転者は車速を低減させ、さらに、アクセルペダル15とブレーキペダル16とのうち、少なくとも一方は完全に戻し、他方は完全に戻すか、若干踏み込んだ状態で進入する。これにより、アクセル操作量とブレーキ操作量とは、共に所定の基準値以下の状態になり、アクセル操作量とブレーキ操作量とが共に小さく、車速も低い状態で、車両1は交差点103にゆっくり進入する。即ち、運転者は、走行道路101に対して交差する交差道路102を移動する交差車両110等の移動体の状況を確認しながら、自車両1を交差点103内にゆっくり進入させる。
運転支援が必要な交差点103に進入する際には、このように、アクセル操作量とブレーキ操作量とを共に小さくし、車速が低い情報で進入するため、交差点判定部74は、車両1の走行状態と運転者の運転状態が、停車状態以外でこれらの条件を満たす場合には、車両1はこのような交差点103に向かっていると判定する。
運転支援装置2は、このような交差点103に進入すると交差点判定部74で判定した場合において、作動モード切替スイッチ55やステアリングスイッチ56によって、運転支援を作動させる状態に切り替えられているときに、運転支援を実行する。この運転支援としては、運転者に対する注意喚起等の運転支援制御を、運転支援ECU70が有する支援実行部85によって実行することにより、運転者に対する運転支援を行う。
また、運転支援装置2による運転支援は、作動モード切替スイッチ55を切り替えることにより、交差点103への進入時に自動的に実行するか、運転者の任意で実行するかを切り替えることが可能になっている。作動モード切替スイッチ55は、車両1が交差点103に進入する際に、自車両1の状態と周囲の環境とに応じて自動的に運転支援を実行するオートモードと、交差点103への進入時に運転支援を実行するか否かを運転者が選択することができるマニュアルモードとに切り替えることが可能になっている。
また、作動モード切替スイッチ55がマニュアルモードの場合は、ステアリングホイール17に配設されるステアリングスイッチ56のONとOFFとを切り替えることにより、交差点103への進入時における運転支援のONとOFFとを切り替えることが可能になっている。これらの作動モード切替スイッチ55やステアリングスイッチ56の状態は、運転支援ECU70が有する動作状態制御部71で取得し、運転支援ECU70は、動作状態制御部71で取得したスイッチの状態に応じて、運転支援制御を行う。
つまり、動作状態制御部71は、作動モード切替スイッチ55がオートモードの場合、及び作動モード切替スイッチ55がマニュアルモードで、ステアリングスイッチ56がONの場合に、支援実行部85に対して交差点進入時の運転支援を実行させる。これに対して、動作状態制御部71は、作動モード切替スイッチ55がマニュアルモードで、ステアリングスイッチ56がOFFの場合には、支援実行部85で運転支援を実行させないようにする。
このため、作動モード切替スイッチ55をオートモードに切り替えた場合には、運転支援装置2は、車両1の走行状態と運転者の運転状態とに基づいて、運転支援が必要な交差点103に車両1が進入すると判断する度に、運転支援制御を行う。
これに対し、作動モード切替スイッチ55をマニュアルモードに切り替えた場合には、運転支援装置2は、ステアリングスイッチ56がONの状態で、運転支援が必要であると判断された交差点103内に自車両1が進入する際に、運転支援制御を行う。また、作動モード切替スイッチ55をマニュアルモードに切り替え、ステアリングスイッチ56をOFFにした状態では、運転支援が必要であると判断された交差点103に車両1が進入する場合でも、運転支援装置2は運転支援制御を行わない。
図6乃至図9は、交差点進入時に運転支援を行う際に取得する各種情報についての説明図である。図6は、交差点進入時に取得する交差車両出現頻度が小さい場合についての説明図である。運転支援を行う際には、カメラ31で撮影した画像情報に基づいて、交差道路102を走行する交差車両110が交差点103に出現する頻度である交差車両出現頻度を導出する。詳しくは、運転支援ECU70が有する出現頻度算出部75によって、自車両1が走行道路101を走行している際において、自車両1の前方の交差点103を一定時間t撮像した画像情報に基づいて、交差車両110がどの程度含まれるかを判定することで、交差車両出現頻度を導出する。例えば、出現頻度算出部75は、自車両1の前方の交差点103を一定時間t撮像した画像情報に含まれる交差車両110が所定数未満であると判定した場合、交差車両出現頻度は小さいと導出する。この場合、出現頻度算出部75は、交差点103を交差車両110が稀にしか通らない状況を示す交差車両出現頻度小を導出する。
図7は、交差点進入時に取得する交差車両出現頻度が大きい場合についての説明図である。出現頻度算出部75は、自車両1の前方の交差点103を一定時間t撮像した画像情報に含まれる交差車両110−1〜3が所定数以上であると判定した場合、交差車両出現頻度は大きいと導出する。この場合、出現頻度算出部75は、交差点103を交差車両110が頻繁に通る状況を示す交差車両出現頻度大を導出する。
図8は、交差点進入時に取得する開放角についての説明図である。運転支援を行う際には、カメラ31で撮影した画像情報に基づいて、交差点103の近傍に位置する建物や塀等、自車両1から交差道路102の視認時における自車両1に対する遮蔽物105の遮蔽量を導出する。詳しくは、自車両1から交差点103を見た際に、遮蔽物105によって遮蔽されずに視界が開放されている範囲の自車両1からの角度である開放角θを、運転支援ECU70が有する開放角算出部76で算出することにより、遮蔽物105の遮蔽量を導出する。
図9は、交差点進入時に取得する交差車両の情報についての説明図である。運転支援を行う際には、走行音センサ32で検出した音情報に基づいて、運転支援ECU70が有する他車両情報取得部80によって、交差道路102を走行して自車両1の前方の交差点103に接近する交差車両110の情報を取得する。詳しくは、走行音センサ32で検出する音の大きさの変化や、複数の走行音センサ32で検出する音の時間差等に基づいて、自車両1の周囲の環境騒音と、交差道路102を走行する交差車両110で発する音とを分離することにより、交差車両110の情報を取得する。
他車両情報取得部80で交差車両110の情報を取得する際には、複数の走行音センサ32で検出した音情報に基づいて、交差車両110の位置と交差車両110の移動方向、交差車両110の移動速度を推定し、取得する。さらに、他車両情報取得部80は、これらの交差車両110の情報より、自車両1の前方の交差点103において、自車両1と交差車両110とが接触する接触点108に交差車両110が到達するまでの時間である接触点到達予想時間TTCを算出する。この接触点到達予想時間TTCは、遮蔽物105によって自車両1からの死角に存在する他車両である交差車両110が、自車両1の進行方向における自車両1の前方に到達するまでの時間になっている。
運転者に対する運転支援としては、運転支援ECU70の支援実行部85が有する警報制御部86で警報装置50を制御し、警報装置50で警報を発することにより行う。警報制御部86は、警報装置50を制御することにより、交差道路102に交差車両110が存在することを警報装置50の表示部51で表示したり、警報装置50のブザー52から警報音を発したりする。これにより、運転者に対して警報し、運転者に対する注意喚起の運転支援を行う。
図10は、音情報に基づく周囲の環境の検出精度と、警報の誤報率及び欠報率との関係を示す説明図である。交差車両110の情報等の交差道路102の情報に基づいて、運転者に警報を報知する場合、遮蔽物105の開放角θによって、交差道路102からの音を自車両1で直接検出することができる範囲が異なる。このため、音情報に基づいて検出する交差道路102の情報の精度は、開放角θによって変化する。
図11は、遮蔽物が多い交差点の開放角についての説明図である。例えば、図11に示すように、遮蔽物105が比較的多く存在する都会等の見通しの悪い交差点103−1の場合、自車両1の周囲に建物等の遮蔽物105が多く、開放角θ1が小さくなる。この場合は、自車両1で発する音等が遮蔽物105で反響し易くなり、複数の走行音センサ32では、これらの反響音である環境騒音を検出し易くなる。音情報中に環境騒音が多く含まれる状況において、音情報に基づいて運転者に警報を報知する場合、交差車両110の検出精度が低くなる。このため、交差車両110が存在しないにも関わらず、誤って警報の報知を行ってしまう確率である誤報率が高くなり、反対に、交差車両110が存在するにも関わらず、交差車両110を検出することができずに警報の報知を行わない確率である欠報率も高くなる。つまり、開放角θ1が小さい場合における検出精度は、図10の開放角小時検出精度121で示すように、誤報率と欠報率とが共に高くなる。
図12は、遮蔽物が少ない交差点の開放角ついての説明図である。例えば、図12に示すように、遮蔽物105の存在が比較的少ない郊外等の見通しの良い交差点103−2の場合、自車両1の周囲に遮蔽物105が少なく、開放角θ2が大きくなる。この場合は、遮蔽物105での反響音が少なくなるため、複数の走行音センサ32で検出する環境騒音が少なくなる。音情報中に含まれる環境騒音が少ない状況において、音情報に基づいて運転者に警報を報知する場合には、交差車両110の検出精度が高くなる。従って、開放角θ2が大きい場合には、図10の開放角大時検出精度122で示すように、誤報率と欠報率とが、共に低くなる。
音情報に基づく交差車両110の検出は、これらのように開放角θによって検出精度が変化するため、運転支援を行う場合には、走行音センサ32で検出した音情報の他に、カメラ31で撮影した画像情報に基づいて算出する開放角θも使用し、運転支援ECU70が有する検出精度算出部77によって、運転支援の対象となる各交差点103における交差車両110の検出精度を算出する。
詳しくは、カメラ31で撮影した画像情報より算出した開放角θに基づいて、走行音センサ32で検出した音情報に基づいて検出する交差車両110の検出精度を、運転支援ECU70が有する検出精度算出部77で算出する。この検出精度は、開放角小時検出精度121及び開放角大時検出精度122で示すように、開放角θが大きくなるに従って、言い換えれば遮蔽量が小さくなるに従って、検出精度が高くなり、開放角θが小さくなるに従って、言い換えれば遮蔽量が大きくなるに従って検出精度が低くなるものとして、検出精度算出部77で導出する。
また、走行音センサ32で検出した音情報に基づいて交差車両110の情報を検出する際には、交差車両110の接触点到達予想時間TTCを、他車両情報取得部80で検出する。更に、カメラ31で撮像した画像情報に基づいて、運転支援の対象となる交差点103について交差車両出現頻度を、出現頻度算出部75で算出する。運転者に対する運転支援を実行する際には、画像情報より導出される遮蔽物105の遮蔽量に基づく検出精度等を用いて取得される交差車両110の検出特性と、音情報に基づいて検出する接触点到達予想時間TTC等の交差車両110の情報と、画像情報より導出される交差車両出現頻度に応じて、運転支援ECU70の支援決定部81によって運転支援の態様を変更する。
ここで、運転支援の対象となる交差点において、交差車両110を自車両1で検出する場合、図6に示すような交差車両110が稀にしか通らない交差点、つまり、交差車両出現頻度が小さい交差点と、図7に示すような交差車両110が頻繁に通る交差点、つまり、交差車両出現頻度が大きい交差点とでは、運転者の運転支援に対する感じ方が異なると考えられる。
例えば、交差車両110が稀にしか通らない交差点と、交差車両110が頻繁に通る交差点との両方の交差点において警報を行う場合、運転者に違和感を与える警報が行われることがある。例えば、運転者は、交差車両が稀にしか通らない交差点では、警報を行う回数が少ないため、欠報による不信を感じる可能性が高く、交差車両が頻繁に通る交差点では、警報を行う回数が増えるため、誤報による煩わしさを感じる可能性が高いと考えられる。
そこで、本実施形態に係る運転支援装置2は、交差車両110が稀にしか通らない交差点では、運転者は、誤報による煩わしさよりも欠報による不信を感じる可能性が高いため、運転支援を通常よりも早いタイミングで行う。これにより、欠報が生じる可能性が低減され、この結果、運転者が欠報による不信を感じる可能性も低減される。また、本実施形態に係る運転支援装置2は、交差車両110が頻繁に通る交差点では、運転者は、欠報による不信よりも誤報による煩わしさを感じる可能性が高いため、運転支援を通常よりも遅いタイミングで行う。これにより、誤報が生じる可能性が低減され、この結果、運転者が誤報による煩わしさを感じる可能性も低減される。このようにして、本実施形態に係る運転支援装置2は、交差車両110の欠報および誤報を含む誤判定によって運転者に与える運転支援に対する違和感を低減する。
以下、図13乃至図21を参照して、本実施形態に係る運転支援装置2において実行される、交差車両110の出現頻度に応じて、注意喚起の吹鳴タイミングを変化させる処理の詳細について説明する。
本実施形態に係る運転支援装置2では、交差車両110が出現する確定性を表す指標として、相互情報量を用いている。本実施形態に係る運転支援装置2では、この確定性を最適化するために、誤報率や欠報率の目標値を設定している。そして、本実施形態にかかる運転支援装置2では、これらの目標値により示される交差車両110の検出特性に基づき、交差車両110の出現頻度に応じて運転支援のタイミングを変化させて、情報提供を行っている。
図13は、交差車両110の接近を情報提供する状況の一例を示す図である。例えば、図13に示すように、自車両1が走行道路101を交差点103に向かって走行しており、かつ、交差車両110が走行道路102を交差点103に向かって走行している状況では、自車両1の運転者から交差車両110は遮蔽物105により死角になっているため確認できない。そのため、このような状況では、自車両1と交差車両110とが出会い頭に衝突することを防ぐために、自車両1の運転者に対して交差車両110が接近していること注意喚起するために情報提供が実行される。
図14は、相互情報量H(X;Y)の算出方法について説明するための表である。相互情報量H(X;Y)とは、確率論および情報理論において、2つの確率変数の相互依存の尺度を表す量であり、相互情報量算出部82で一般的に下記の数式により算出される。
本実施形態では、相互情報量H(X;Y)は、情報提供に関する確率変数Xと、交差車両110に関する確率変数Yとの相互依存の尺度を表している。図14において、Xは、図13に示した状況において行われた情報提供に関する確率変数を示し、Yは、交差車両110に関する確率変数を示している。例えば、図14において、Xが「来る」場合であって、Yが「来ない」場合のaは、交差車両110が来るとの情報提供があったが実際は交差車両110が来なかった場合の誤報率を示している。また、図14において、Xが「来ない」場合であって、Yが「来る」場合のbは、情報提供がなかったが実際は交差車両110が来た場合の欠報率を示している。
また、図14において、Xが「来ない」場合であって、Yも「来ない」場合のcは、情報提供がなく実際も交差車両110が来なかった場合の確率を示している。また、図14において、Xが「来る」場合であって、Yも「来る」場合のdは、情報提供があって実際も交差車両110が来た場合の確率を示している。各確率a〜dは足し合わせると1になるので、図14に示すように、「(c+b)+(a+d)=1」となり、「(c+a)+(b+d)=1」となる。ここで、的中配分率αを考慮すると、情報提供がなく、実際も交差車両110が来なかった場合の確率cは、「c=(1−a−b)×α」となり、情報提供があって、実際も交差車両110が来た場合の確率dは、「d=1−a−b−c」となる。
図15は、的中配分率α=0.5の場合の、相互情報量H(X;Y)と誤報率aと欠報率bとの関係を示すグラフである。図15に示すように、縦軸に相互情報量H(X;Y)をとり、横軸に欠報率bをとると、誤報率aおよび欠報率bが大きくなるにつれて、相互情報量H(X;Y)が減少していくことがわかる。つまり、誤報率aおよび欠報率bが大きくなるにつれて、交差車両110の確定性が下がってしまうことが確認できる。
図16は、誤報率a=0.15、欠報率b=0.15の場合の的中配分率αの大きさと相互情報量H(X;Y)との関係を示すグラフである。図17は、誤報率a=0.15、欠報率b=0.30の場合の的中配分率αの大きさと相互情報量H(X;Y)との関係を示すグラフである。図16および図17に示すように、縦軸に相互情報量H(X;Y)をとり、横軸に的中配分率αをとると、的中配分率αの大きさが0.5を頂点としたときが、相互情報量H(X;Y)が最も増加したときであり、的中配分率αが0.5より大きくとも小さくとも、相互情報量H(X;Y)が減少することがわかる。
つまり、的中配分率αが0.5、すなわち的中配分率αが1/2(半分)のときに、相互情報量H(X;Y)が最大となり、交差車両110の確定性が最大となることが確認できる。よって、情報提供がなく実際も交差車両110が来なかった場合の確率cと、情報提供があって実際も交差車両110が来た場合の確率dと、が等確率の場合、相互情報量H(X;Y)が最大になるといえる。したがって、相互情報量H(X;Y)が最大となる場合に、交差車両110の確定性も最大となると考えられるため、的中配分率αが1/2となる誤報率aと欠報率bを求めることが望ましい。
図18は、図14に示した表中のdをcに書き換えた場合の表である。図18に示すように、情報提供がなく実際も交差車両110が来なかった場合の確率と、情報提供があって実際も交差車両110が来た場合の確率とも等確率である(c=d)なので、各確率a〜cを足し合わせると、「a+b+2c=1」となる。
図19は、検出精度曲線と相互情報量を示す直線との交点を示すグラフである。例えば、図19に示すように、縦軸に欠報率bをとり、横軸に誤報率aをとると、ある交差点における検出精度を示す曲線(検出精度曲線)が与えられた場合、目標値設定部83によって相互情報量を示す直線「a+b+2c=1」との交点(a1,b1),(a2,b2)が求められる。
ここで、交差車両110が稀にしか通らない交差点における誤報率aと欠報率bとの大小関係は、「b+c<c+a⇒b<a」となると考えられる。言い換えると、交差車両110が稀にしか通らない交差点における誤報率aと欠報率bとの大小関係は、交差車両110が実際に来なかった確率「c+a」の方が、交差車両110が実際に来た確率「b+c」より大きくなる。更に、両辺のcを消去すると、欠報率bより誤報率aの方が大きくなる「b<a」。よって、交差車両110が稀にしか通らない交差点では、誤報率aと欠報率bとの大小関係は「b<a」となるため、目標値設定部83によって「b1<a1」が設定される。
一方、交差車両110が頻繁に通る交差点における誤報率aと欠報率bとの大小関係は、「b+c>c+a⇒b>a」となると考えられる。言い換えると、交差車両110が頻繁に通る交差点における誤報率aと欠報率bとの大小関係は、交差車両110が実際に来た確率「b+c」の方が、交差車両110が実際に来なかった確率「c+a」より大きくなる。更に、両辺のcを消去すると、誤報率aより欠報率bの方が大きくなる「b>a」。よって、交差車両110が頻繁に通る交差点では、誤報率aと欠報率bとの大小関係は「b>a」となるため、目標値設定部83によって「b2>a2」が設定される。
図20は、開放角大であり環境騒音小である交差点における交差車両110の検出特性の一例を示すグラフである。図21は、開放角小であり環境騒音大である交差点における交差車両110の検出特性の一例を示すグラフである。図20および図21に示すように、縦軸に交差車両100の欠報率bおよび誤報率aをとり、横軸に接触点到達予想時間TTCをとると、検出特性取得部84により、目標値設定部83で設定された交点(a1,b1)または(a2,b2)に基づいて、交差車両出現頻度が小さい場合のTTC1または交差車両出現頻度が大きい場合のTTC2が取得される。図20および図21に示すように、交差点車両頻度が小さい場合のTTC1は、目標値設定部83により誤報率aの方が欠報率bよりも大きい位置に設定されている。この場合、交差点車両頻度が小さい場合のTTC1は、交差点車両頻度が大きい場合のTTC2よりも大きい(すなわち、時間が長い)ため、支援実行部85によって実行される運転支援は、交差点に近づく前の早いタイミングから行われることになる。そのため、運転支援のタイミングは、交差点車両頻度が小さい場合の方が早くなる。また、交差点車両頻度が大きい場合のTTC2は、目標値設定部83により欠報率bの方が誤報率aよりも大きい位置に設定されている。この場合、交差点車両頻度が大きい場合のTTC2は、交差点車両頻度が小さい場合のTTC1よりも小さい(すなわち、時間が短い)ため、支援実行部85によって実行される運転支援は、交差点の直前の遅いタイミングで行われることになる。そのため、運転支援のタイミングは、交差点車両頻度が大きい場合の方が遅くなる。
続いて、本実施形態に係る運転支援装置2で運転支援を行う場合における処理手順の概略について説明する。図22は、実施形態に係る運転支援装置2によって運転支援を行う際におけるフロー図である。なお、以下の処理は、作動モード切替スイッチ55がオートモードの場合、または作動モード切替スイッチ55がマニュアルモードで、且つ、ステアリングスイッチ56がONの場合で、自車両1の前方に交差点103が存在すると交差点判定部74で判定された際に呼び出されて実行する。
車両1の走行中に、運転支援のフローが呼び出された場合には、まず、運転支援装置2は、自車両1の前方の画像情報を取得する(ステップST101)。この自車両1の前方の画像情報は、運転支援ECU70のカメラ制御部72でカメラ31を制御することにより、カメラ31で撮影した画像情報をカメラ制御部72で取得する。ステップST101における画像情報は、例えば図6および図7に示したように、交差点103から比較的離れた位置から自車両1の前方の交差点103を一定時間t撮像したものである。
次に、運転支援装置2は、交差車両出現頻度を算出する(ステップST102)。この交差車両出現頻度は、運転支援ECU70の出現頻度算出部75により、ステップST101にてカメラ制御部72で取得された自車両1の前方の交差点103を一定時間t撮像した画像情報に基づいて、交差車両110がどの程度含まれるかを判定することで導出する。ステップST102において導出された交差車両出現頻度は、ステップST111の処理において用いられる。
次に、運転支援装置2は、再度、自車両1の前方の画像情報を取得する(ステップST103)。この自車両1の前方の画像情報は、ステップST101と同様に、運転支援ECU70のカメラ制御部72でカメラ31を制御することにより、カメラ31で撮影した画像情報をカメラ制御部72で取得する。ステップST103における画像情報は、例えば図8に示したように、交差点103の一時停止線104の直前の位置にて自車両1の前方の交差点103を撮像したものである。
次に、運転支援装置2は、開放角θを算出する(ステップST104)。この算出は、ステップST103にてカメラ制御部72で取得した画像情報に基づいて、運転支援ECU70の開放角算出部76で行う。開放角算出部76は、カメラ制御部72で取得した画像情報より、交差点103の近傍に位置する遮蔽物105の形態を推定し、自車両1から交差点103を見た際における遮蔽物105の遮蔽量を推定することにより、開放角θを算出する。ステップST104において算出された開放角θは、ステップST110の処理において用いられる。
次に、運転支援装置2は、自車両1の周囲の音情報を取得する(ステップST105)。この音情報は、運転支援ECU70の走行音センサ制御部73で走行音センサ32を制御することにより、走行音センサ32で検出した自車両1の周囲の音情報を走行音センサ制御部73で取得する。
次に、運転支援装置2は、環境騒音と交差車両110のロードノイズとを分離する(ステップST106)。この分離は、運転支援ECU70が有する他車両情報取得部80で行う。他車両情報取得部80は、走行音センサ制御部73で取得した音情報のうち、音量や周波数が変化する音の成分を交差車両110の走行音であるロードノイズであると判定し、音量等の変化が少ない音の成分を環境騒音であると判定し、これらの音の成分を分離する。
つまり、環境騒音は、時間の経過に伴う変化が少ないため、音情報のうち、音量等の変化が少ない音の成分は、環境騒音であると判断することができる。これに対し、交差道路102を走行中の交差車両110は、時間の経過に伴って自車両1との距離が変化するため、自車両1で検出する交差車両110のロードノイズは、時間の経過に伴って変化する。このため、音情報のうち、音量や周波数が変化する音の成分は、交差車両110のロードノイズであると判断することができる。
従って、他車両情報取得部80は、所定時間分の音情報を使用してこれらを判断し、時間の経過に伴う音量等の変化が少ない音の成分を環境騒音、時間の経過に伴って音量等が変化する音の成分を交差車両110のロードノイズであると判定し、これらを分離する。
次に、運転支援装置2は、環境騒音レベルを算出する(ステップST107)。この環境騒音レベルは、他車両情報取得部80により、ステップST106にて分離された環境騒音の音の大きさが所定閾値より大きいか否かを判定することで算出する。例えば、他車両情報取得部80は、ステップST106にて分離された環境騒音が所定閾値より大きい場合、環境騒音の音の大きさとしてレベル大を算出する。また、他車両情報取得部80は、ステップST106にて分離された環境騒音が所定閾値未満である場合、環境騒音の音の大きさとしてレベル小を算出する。ステップST107において算出された環境騒音レベルは、ステップST110の処理において用いられる。
次に、運転支援装置2は、交差車両レベルを算出する(ステップST108)。この交差車両レベルは、他車両情報取得部80により、ステップST106にて分離された交差車両ロードノイズを用いて、交差車両110の位置と交差車両110の移動方向、交差車両110の移動速度を推定し、取得することで、交差車両110の接近度合いを示すレベルを算出する。
次に、運転支援装置2は、交差車両110の接触点到達予想時間TTCを算出する(ステップST109)。この接触点到達予想時間TTCの算出は、他車両情報取得部80で行う。他車両情報取得部80は、交差道路102を走行する交差車両110の走行状態を、ステップST108にて算出した交差車両レベルを用いて推定し、交差車両110が接触点108に到達するまでの時間である接触点到達予想時間TTCを算出する。ステップST109において算出された接触点到達予想時間TTCは、ステップST112またはST114の処理において用いられる。
次に、運転支援装置2は、ステップST104にて算出した開放角θと、ステップST107にて算出した環境騒音レベルに基づいて、図20または図21に示したような交差点の状況によって異なる交差車両110の検出特性を取得する(ステップST110)。例えば、運転支援ECU70の検出特性取得部84は、ステップST104にて算出した開放角θが大きく、ステップST107にて算出した環境騒音レベルが小さい場合、図20の検出特性を取得する。また、運転支援ECU70の検出特性取得部84は、ステップST104にて算出した開放角θが小さい、ステップST107にて算出した環境騒音レベルが大きい場合、図21の検出特性を取得する。
次に、運転支援装置2は、ステップST102で算出した交差車両出現頻度の度合いを判定する(ステップST111)。例えば、運転支援ECU70の出現頻度判定部79は、ステップST102で算出した交差車両出現頻度が所定閾値より小さいか否かを判定することで、交差車両出現頻度の度合いを判定する。出現頻度判定部79は、交差車両出現頻度が所定閾値より小さい場合は、ステップST112の処理へ移行し、交差車両出現頻度が所定閾値以上である場合は、ステップST114の処理へ移行する。
次に、運転支援装置2は、出現頻度判定部79での判定により、出現頻度は小さいと判定された場合(ステップST111、Yes判定)には、TTC<TTC1であるか否かを判定する(ステップST112)。この判定は、運転支援ECU70が有する支援決定部81で行う。この判定に用いる接触点到達予想時間TTCは、ステップST109にて他車両情報取得部80により取得される。また、この判定に用いるTTC1は、ステップST110にて検出特性取得部84により取得した図20または図21の検出特性を参照することで、得られる。支援決定部81での判定により、TTC<TTC1ではないと判定された場合(ステップST112、No判定)には、この処理手順から抜け出る。
これに対し、運転支援装置2は、支援決定部81での判定により、TTC<TTC1であると判定された場合(ステップST112、Yes判定)には、運転者に対する注意喚起のタイミングを早くして運転支援を実行する(ステップST113)。つまり、TTC1の時間の長さに基づいて、交差点から比較的離れた位置から運転支援を実行する決定を支援決定部81で行い、運転支援のタイミングを早くする旨の信号を運転支援ECU70の支援実行部85に伝達する。支援実行部85は、この信号に応じて警報制御部86で警報装置50を制御することにより、運転者に対する運転支援のタイミングが早くなるように警報装置50を作動させる。
ステップST111に戻り、運転支援装置2は、出現頻度判定部79での判定により、交差車両出現頻度は大きいと判定された場合(ステップST111、No判定)には、TTC<TTC2であるか否かを支援決定部81で判定する(ステップST114)。この判定は、運転支援ECU70が有する支援決定部81で行う。この判定に用いる接触点到達予想時間TTCは、ステップST109にて他車両情報取得部80により取得される。また、この判定に用いるTTC2は、ステップST110にて検出特性取得部84により取得した図20または図21の検出特性を参照することで、得られる。支援決定部81での判定により、TTC<TTC2ではないと判定された場合(ステップST114、No判定)には、この処理手順から抜け出る。
これに対し、運転支援装置2は、支援決定部81での判定により、TTC<TTC2であると判定された場合(ステップST114、Yes判定)には、運転者に対する注意喚起のタイミングを遅くして運転支援を実行する(ステップST115)。つまり、TTC2の時間の短さに基づいて、交差点の直前にて運転支援を実行する決定を支援決定部81で行い、運転支援のタイミングを遅くする旨の信号を運転支援ECU70の支援実行部85に伝達する。支援実行部85は、この信号に応じて警報制御部86で警報装置50を制御することにより、運転者に対する運転支援のタイミングが遅くなるように警報装置50を作動させる。
以上の運転支援装置2は、運転者に対する運転支援を、走行音センサ32で検出した音情報に基づいて実行し、この運転支援の態様を、カメラ31で撮影した画像情報より導出する交差車両出現頻度に基づいて変更するため、交差車両出現頻度に応じて、運転支援のタイミングを変化させることができる。例えば、運転支援装置2は、交差車両出現頻度が小さい場合には、交差車両出現頻度が大きい場合と比較して、運転支援のタイミングを早くし、交差車両出現頻度が大きい場合には、交差車両出現頻度が小さい場合と比較して、運転支援のタイミングを遅くすることができる。また、運転支援装置2は、運転支援の対象となる交差点における開放角θと環境騒音レベルとに基づいて、交差車両出現頻度が小さい場合に実行される運転支援のタイミングの早さの度合い(TTC1)、および、交差車両出現頻度が大きい場合に実行される運転支援のタイミングの遅さの度合い(TTC2)を決定することができる。この結果、交差車両の欠報および誤報を含む誤判定によって運転者に与える運転支援に対する違和感を低減することができる。
[変形例]
なお、上述した実施形態に係る運転支援装置2では、環境情報取得手段としてカメラ31と走行音センサ32とが用いられているが、自車両1の周辺の環境情報を取得する環境情報取得手段には、これらに加えて、他の環境情報取得手段を用いてもよい。この場合、他の環境情報取得手段としては、例えば、電磁波や赤外線、レーザー等の検出波を用いて対象物を検出するレータを用いてもよい。環境情報取得手段は、交差車両110の走行音を検出する走行音センサ32と、交差点103の画像情報を取得するカメラ31とを有していればよく、さらに、これら以外で、自車両1の周囲の環境情報を取得することができるものを用いることにより、より精度よく自車両1の周囲の環境情報を取得することができる。
また、上述した実施形態に係る運転支援装置2では、運転者に対する運転支援は、警報装置50を用いた警報のみになっているが、これ以外の手法によって運転支援を行ってもよい。例えば、運転者の運転操作に関わらず駆動力や制動力を調節したり、安全方向に操舵をするように促す操舵トルクを、EPS装置12を介して運転者に対して伝達したりすることにより、交差車両110と自車両1との接触を回避する運転支援を行ってもよい。運転支援は、自車両1を安全に走行させることができるものであれば、支援の手法は問わない。
また、このような運転支援を、駆動力や制動力、操舵トルク等によって行う際において、支援タイミングを変更する場合には、これらの制御に対する運転支援の制御の開始タイミングを変化させる。つまり、早い支援タイミングで運転支援を実行する場合には、これらの制御に対する運転支援の制御の開始タイミングを早め、遅い支援タイミングで運転支援を実行する場合には、これらの制御に対する運転支援の制御の開始タイミングを遅らせることにより、運転支援の態様を変更する。これにより、運転支援を運転者に対する警報以外で行った場合でも、運転者にとって適切なタイミングで運転支援を実行することができる。
また、上述した実施形態に係る運転支援装置2では、交差車両出現頻度を算出(ステップST102)し、交差車両110の接触点到達予想時間TTCを算出(ステップST109)し、交差車両の検出特性を取得(ステップST110)しているが、これらは、上述した順番以外でもよい。処理の順番に関わらず、交差車両出現頻度を算出し、交差車両のTTCを算出し、検出特性を取得した後、これら交差車両出現頻度と、交差車両のTTCと、交差車両の検出特性とに基づいて、運転支援の態様を変更することにより、誤報および欠報を含む誤判定による警報を低減しつつ運転支援を行うことができる。
また、上述した実施形態に係る運転支援装置2では、作動モード切替スイッチ55とステアリングスイッチ56とを設けているが、これらのスイッチは、いずれか一方のみでもよく、または、両方設けなくてもよい。スイッチの設置状態に関わらず、運転支援を許可する状態の場合に、上述した処理を行うことにより、適切な運転支援を実行することができる。
また、運転支援装置2は、上述した実施形態、及び変形例で用いられている構成や制御等を適宜組み合わせてもよく、または、上述した構成や制御以外を用いてもよい。運転支援装置2の構成や制御方法に関わらず、交差車両出現頻度に基づいて運転支援のタイミングを決定することにより、誤報および欠報を含む誤判定による警報を低減しつつ、適切に運転支援を行うことができる。