JP5835092B2 - ガスセンサ素子 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関の燃焼制御等に使用され、燃焼排気等の被測定ガス中に含まれる特定ガス成分を検出するガスセンサ素子に関する。
従来、内燃機関の燃焼排気流路等に設けられ、燃焼排気等の被測定ガス中に含まれる酸素濃度等の特定ガス成分を検出するガスセンサが広く用いられている。
酸素センサ、NOxセンサ、アンモニアセンサ等のガスセンサには、酸素イオン、プロトン等の特定のイオンに対して伝導性を呈する固体電解質材料からなる略平板状の固体電解質体の両面に少なくとも一対の対向電極を設け検出セルを構成している。
検出セルの一方の電極は、ガスセンサ素子の内部に区画された被測定ガスを導入する内部空間に対向しており、多孔質の拡散抵抗層によって、内部空間内に導入される被測定ガスの拡散律速を図っている。
例えば、特許文献1には、長手方向に延びる固体電解質層、及び該固体電解質層の表裏面に対向する電極を有する第1セルと、該第1セルに積層される第1多孔質部と、該第1多孔質部を介して前記第1セルと積層される遮蔽体と、前記第1多孔質部、前記第1セル及び前記遮蔽体で区画され、前記電極の一方が配置された測定室と、を有する板状のガスセンサ素子であって、前記第1多孔質部を介して前記測定室とは反対側に配置され、前記第1多孔質部よりも拡散抵抗が小さい多孔質状をなすとともに、BET比表面積が1.0m2/g以上である第2多孔質部を有することを特徴とするガスセンサ素子が開示されている。
一方、この種のガスセンサ素子に用いられるジルコニア等の固体電解質体は300℃以上の高温で活性状態となるため、通常は固体電解質体に積層された発熱体により加温された状態で用いられている。
このため、ガスセンサ素子に被測定対ガス中の水滴や油滴が付着すると熱衝撃によりクラックが発生する虞があった。
特に、特許文献1にあるように、被測定ガスを導入する内部空間を緻密な遮蔽体と多孔質部とによって区画して、被測定ガスの拡散律速を図った場合、発熱体発熱時に発生する熱応力の大きい部位に、応力集中の起こり易い多孔質部と遮蔽体との境界が存在するため、発熱体昇温時や被水時の熱ストレスによる素子割れが起こり易いことが判明した。
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、特定のイオンに対して伝導性を有する固体電解質層と、その表面に設けた、少なくとも、一対の電極対と、その電極対の一方が露出し、緻密な絶縁体からなり、内側に内部空間を区画した内部空間形成層と、その内部空間に所定の拡散抵抗の下で被測定ガスを導入するための多孔質の拡散抵抗層と、絶縁体の内部に埋設され、通電により発熱して、上記固体電解質層を加熱する発熱体とを具備するガスセンサ素子において、熱ストレスによって上記内部空間形成層と上記拡散抵抗層との境界に応力が集中して素子割れ起こすのを抑制し、耐久性の高いガスセンサ素子を提供することを目的とする。
請求項1の発明(10、10a〜d)では、少なくとも、特定のイオンに対して伝導性を有する平板状の固体電解質層(100、100d)と、その表面に設けた一対の電極対(110、120、110d、120d)と、その電極対(110、120、110d、120d)の一方(110、110d)が露出する内部空間(141、141a〜d)を区画した内部空間形成層(140、140a〜d)と上記固体電解質層(100、100d)に積層された緻密な絶縁体(160、180)と上記内部空間(141、141a〜d)に所定の拡散抵抗の下で被測定ガスを導入するための多孔質の拡散抵抗層(130、130a〜d)と、上記絶縁体(160、180)の内部に埋設され、通電により発熱して、上記固体電解質層(100、100d)の上記電極対(110、120、110d、120d)を設けた領域を加熱する発熱体(170)と、を具備するガスセンサ素子において、
上記拡散抵抗層(130、130a〜d)は、上記内部空間(141、141a〜d)に、素子幅方向の側面側から対向するように、上記内部空間形成層(140、140a〜d)に埋設されており、
上記内部空間(141、141a〜d)の素子長手方向の先端は、上記発熱体(170)の素子長手方向の先端よりもさらに先端側に位置しており、
上記拡散抵抗層(130)の素子長手方向の先端側で上記内部空間(141)と接する境界部(BND1)が、上記発熱体(170)の素子長手方向の先端よりもさらに先端側に位置するとともに、上記拡散抵抗層(130)の素子長手方向の基端側で上記内部空間(141)と接する境界部(BND2)が、上記発熱体(170)の素子長手方向の基端よりもさらに基端側に位置する配置関係、
上記拡散抵抗層(130a、130c、130d)の全体が、上記発熱体(170)の素子長手方向の先端よりもさらに先端側に位置する配置関係、及び、
上記拡散抵抗層(130b)の全体が、上記発熱体(170)の素子長手方向の基端よりもさらに基端側に位置する配置関係、のいずれか1つを充足する
請求項2の発明(10)では、上記発熱体(170)によって表面温度が500℃以上に加熱される上記ガスセンサ素子(10)の2次元的な範囲を、上記境界部(BND1、BND2)を配設しない境界部形成忌避領域(AREX)とし、上記拡散抵抗層(130の上記境界部(BND1)該境界部形成忌避領域(AREXよりも素子長手方向の先端側に配設するとともに、上記拡散抵抗層(130)の上記境界部(BND2)を、上記境界部形成忌避領域(AR EX )よりも素子長手方向の基端側に配設する。
請求項3の発明(10a〜d)では、上記発熱体(170)によって表面温度が500℃以上に加熱される上記ガスセンサ素子(10a〜d)の2次元的な範囲を、上記境界部(BND1、BND2)を配設しない境界部形成忌避領域(AR EX )とし、上記拡散抵抗層(130a〜d)の全体を、該境界部形成忌避領域(AR EX )に対する素子長手方向の先端側又は基端側に配設する。
本発明者等の鋭意試験から、本発明によれば、上記拡散抵抗層と上記内部空間形成層との境界部が、上記発熱体形成領域に対向する位置よりも外側となる位置に配設されているので、上記発熱体によってガスセンサ素子が加熱されても、所定の温度以上には加熱されず、一定温度以上に加熱される上記発熱体形成領域内に上記拡散抵抗層と上記内部空間形成層との境界部が位置する場合に比べて、熱ストレスが小さくなり、上記境界部における素子割れを起こり難くできることが判明した。
本発明の第1の実施形態におけるガスセンサ素子の概要を示す展開斜視図。 本発明の第1の実施形態に係る試験方法を説明するための図。 図2の試験結果を示す特性図。 発熱体に通電した際の温度分布と、本実施形態における試験水準との関係を示す特性図。 本発明の第2の実施形態に係る試験方法を説明するための図。 図5の試験結果を示す特性図。 発熱体に通電した際の温度分布と、本実施形態における試験水準との関係を示す特性図。 本発明の第1の実施形態における拡散抵抗層形成領域と発熱体形成領域との関係を示す平面図。 本発明の第2の実施形態における拡散抵抗層形成領域と発熱体形成領域との関係を示す平面図。 本発明の第3の実施形態における拡散抵抗層形成領域と発熱体形成領域との関係を示す平面図。 本発明の第4の実施形態における拡散抵抗層形成領域と発熱体形成領域との関係を示す平面図。 本発明の第5の実施形態におけるガスセンサ素子の概要を示す展開斜視図。 本発明の第5の実施形態における拡散抵抗層形成領域と発熱体形成領域との関係を示す平面図。
本発明のガスセンサ素子は、内燃機関の燃焼排気等を被測定ガスとして、被測定ガス中に含まれる、酸素、NO、NH、HC、SO等の特定成分の濃度を検出し、内燃機関の燃焼制御や、排気浄化装置の再生制御等に利用されるガスセンサに用いられるものである。
ガスセンサ素子10は、特定のイオンに対して伝導性を有する固体電解質層100と、その表面に設けた一対の電極対110、120と、その電極対110、120の一方110が露出し、緻密な絶縁体からなり、内側に内部空間141を区画した内部空間形成層140と、その内部空間141に所定の拡散抵抗の下で被測定ガスを導入するための多孔質の拡散抵抗層130と、絶縁体160、180の内部に埋設され、通電により発熱して、固体電解質層100を加熱する発熱体170と、を具備するガスセンサ素子10において内部空間形成層140と拡散抵抗層130との境界部BND1、BND2が、発熱体170を形成する発熱体形成領域ARHTを内部空間形成層140に投影した領域の外側に位置するように、拡散抵抗層130を形成する拡散抵抗層形成領域AR130を配置したことを特徴とする。
なお、本発明において、特に検出対象となるガス成分を限定するものでなく、固体電荷質層に用いる固定電解質材料の変更や、検出セルを構成する電極対の形成パターンの変更、検出セルで検知された電気的特性の演算処理を適宜変更することができる。
以下の説明においては、本発明の特徴の理解を容易にするために、本発明の第1の実施形態におけるガスセンサ素子として、最も基本的な構成の酸素センサに用いられ、固体電解質層として、酸素イオン伝導性を有するジルコニアを用いたガスセンサ素子10を例に説明する。
本実施形態におけるガスセンサ素子10は、図1に示すように、固体電解質層100、測定側電極110、測定側リード部111、測定側スルーホール電極112、113、測定側電極端子114、基準側電極120、基準側リード部121、基準側スルーホール電極122、123、124、基準側電極端子125、拡散抵抗層130、内部空間形成層(測定ガス室形成層)140、内部空間(測定ガス室)141、遮蔽層150、基準ガス室絶縁層160、基準ガス室161、発熱体170、発熱体リード部171、172、発熱体スルーホール電極173、174、発熱体電極端子175、176、絶縁層180が一体的に積層されている。
本発明においては、内部空間形成層140と拡散抵抗層130との境界部BND1、BND2が、発熱体170の形成された発熱体形成領域ARHTを内部空間形成層140に投影した領域の外側に位置するように、拡散抵抗層130を形成する拡散抵抗層形成領域AR130を配置したことを特徴とする。
図1に示す実施形態においては、拡散抵抗層130は、ガスセンサ素子10の両側面側から、内部空間141の連通するように形成されており、かつ、拡散抵抗層130の先端側で内部空間形成層140と接する境界部BND1が発熱体形成領域ARHTの先端よりもさらに先端側に位置し、基端側で内部空間形成層140と接する境界部BND2が、発熱体形成領域ARHTの基端よりもさらに基端側に位置するように形成されている。
ここで、本実施形態におけるガスセンサ素子10の製造方法の概要について簡単に説明する。
固体電解質層100は、イットリア、又は、カルシアをドーピングして安定化したジルコニア等の公知の酸素イオン伝導性を有する固体電解質材料の粉末を、PVA、PVB等の結合材、DBP等の可塑剤、分散剤と共に、トルエン/エターノール等の有機溶剤、又は、水等の分散媒に分散させた固体電解質スラリー作成し、これを、ドクターブレード法、プレス成形法等の公知の成形方法を用いて、所定の板厚を有する略平板状に形成してある。
固体電解質層100の一方の表面には、被測定ガスに対向する測定側電極110が形成されている。
測定側電極110は、測定側リード部111、測定側スルーホール電極112、113、測定側電極端子114を介して外部に接続されている。
固体電解質層100の他方の表面には、固体電解質層100を介して測定側電極110に対向する位置において、基準ガスに対向する基準側電極120が形成されている。
基準側電極120は、基準側リード部121、基準側スルーホール電極122、123、124、基準側電極端子125を介して外部に接続されている。
測定側電極110、基準側電極120には、Mg、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Pbのいずれかを含む多孔質金属電極、又は、多孔質サーメット電極によって構成され、厚膜印刷やメッキ等の公知の方法によって形成されている。
拡散抵抗層130は、アルミナ、又は、焼成後にアルミナとなる水酸化アルミニウム(Al(OH))、アルミニウムオキシ酸化物(AlO(OH))、酸化アルミニウム水和物等の粉末と、焼成後に焼失して所定の拡散抵抗を生む気孔を形成する有機化合物と、所定の結合材、分散剤、分散媒とを混合・分散させた拡散抵抗層用スラリーを用い公知のドクターブレード法によりシート成形し、測定側電極110を形成した固体電解質層100の所定位置に積層してある。
また、拡散抵抗層130は、同様の材料をペースト状に調整した拡散抵抗層用ペーストを用い公知の厚膜印刷によって測定側電極110を形成した固体電解質層100の所定位置に印刷形成しても良い。
内部空間形成層(測定ガス室形成層)140は、焼成後に緻密な絶縁体となるアルミナ、チタニア、スピネル等の耐熱性セラミック粉末と所定の焼結助剤、結合材、分散剤とを所定の割合で混合し、有機溶剤、又は、水等の分散媒に分散させた絶縁層用スラリーを用い、公知のドクターブレード法によりシート成形し、プレス等により、内部空間141となる空間及び拡散抵抗層130を埋設する空間を形成し、測定側電極110を形成した固体電解質層100に積層してある。
また、内部空間形成層140は、同様の材料をペースト状に調整した絶縁層用ペーストを用い公知の厚膜印刷によって測定側電極110を形成した固体電解質層100の所定位置に印刷形成しても良い。
このとき、内部空間141となる部分に焼成により焼失可能なカーボン粉末、PVA、PVB、MC、CMC等に有機物をテレピノール等の分散媒に分散させてペースト状にした焼失層用ペーストを印刷することで、内部空間141を覆う遮蔽層150を積層したときに、遮蔽層150の内部空間141への垂れ下がりを防ぎ、成形過程でのクラックの発生を抑制できる。
遮蔽層150は、内部空間形成層140と同材質の絶縁層用スラリーを用いて形成した絶縁層用シートを積層することによって形成しても良いし、内部空間形成層149と同材質の絶縁層用ペーストを用いて、内部空間形成層140を覆うように印刷形成しても良い。
また、遮蔽層150は、必ずしも、内部空間形成層140と同材質である必要はなく、内部空間141、及び、拡散抵抗層130への上面側からの被測定ガスの侵入の阻止、及び、絶縁性の確保ができれば、耐熱性ガラス等でも良い。
基準ガス室形成層160は、内部空間形成層140と同様の絶縁層用シートを用いて、基準ガス室161となる部分を切り欠いて略U字状に形成したシートと平板状の絶縁層用シートとを重ね合わせて形成し、固体電解質層100の基準側電極120を形成した側に積層してある。
また、上述の焼失層ペーストを用いて、平板状に形成した基準ガス室形成層160に表面に基準ガス室161となる部分を印刷形成して、固体電解質層100の基準側電極120を形成した側に積層して、焼成時に焼失層ペーストを焼失させて基準ガス室161を形成するようにしても良い。
発熱体170は、Pt、Rh、Pd、又は、これらの合金等の公知の抵抗発熱材料を用いて、絶縁層用シートからなる絶縁層180の表面に印刷形成し、基準ガス室形成層16と絶縁層180との間に埋設してある。
基準側リード部111、測定側リード部121、基準側電極端子114、測定側電極端子125、発熱体リード部171、172、発熱体電極端子173、174は、Pt、Rh、Pd、又は、これらの合金等の公知の導電性材料を用いた厚膜印刷や、メッキ等の公知の方法によって形成されている。
測定側スルーホール電極112、113、基準側スルーホール電極122、123、124、発熱体スルーホール電極173、174は、Pt、Rh、Pd、又は、これらの合金等、公知の導電性材料を用いた吸引印刷等の公知の方法によって各層を貫通するように形成されている。
絶縁層180、発熱体170、基準ガス室形成層160、基準側電極120、固体電解質層100、測定側電極110、拡散抵抗層130、内部空間形成層140、遮蔽層150は、積層、加熱、圧着された後、一体的に焼成され、ガスセンサ素子10を形成する。
なお、各層の密着強度を高めたり、熱膨張差を少なくしたりするため、各層の境界にそれぞれの層の中間的な材質に調整した接着ペーストを介挿して一体化するようにしても良い。
図2、図3、図4及び表1を参照し、本発明を想到するに至った本発明者等の行った第1の試験方法とその結果について説明する。
図2に示すように、発熱体形成領域ARHTは、約10mmの幅で形成されており、ガスセンサ素子10の表面温度が最も高くなる発熱体170の中心軸を基準とした、拡散抵抗層130と内部空間形成層140との境界部BND1、BN2までの距離a、bについて、表1に示すように、a、bを3.0mm〜6.0mm迄変化させた、8水準の条件で作成し、それぞれの水準について20個づつ試料を用意し、発熱体170への通電を行って、ガスセンサ素子10を700℃に加熱した状態で、最も熱衝撃が大きくなる発熱体170が埋設された領域の中心線C/L上に位置する素子端縁の角部を水滴滴下位置PDRPとして、水滴を滴下し、発熱体中心軸から境界部BND1、BN2迄の距離a、bの違いによる被水割れの発生頻度P(%)を測定した。
図3、及び、表1に示すように、被水割れを生じなかった水準について、優れた効果ありと判定して◎印を付し、被水割れの頻度が10%以下の水準をやや効果ありと判定して○印を付し、被水割れの頻度が10%を超え50%以下の水準をやや不良と判定して△印を付し、被水割れ頻度が50%を超える水準を不良と判定して×印を付した。
さらに、この結果を、図4に示す素子表面温度の分布と重ね合わせると、所定の素子割れ発生限界温度Tref(具体的には、例えば、500℃以上)となる発熱体形成領域ARHTの内側となる位置に境界部BND1、BND2が存在する水準1、2の条件において被水割れ頻度が高く、境界部BND1、BND2の位置が、熱体形成領域ARHTの外側に遠ざかる程、被水割れの頻度が低くなり、水準5、7、8で特に被水割れの頻度が低いことが判明した。
なお、本試験において、水滴滴下位置PDRPを発熱体170が埋設された領域の中心に位置する素子端縁の角部としたのは、該角部において最もヒータ発熱による発生応力が高くなると予想される。
このため、そこに水滴を滴下したときの熱衝撃が最も大きく、ガスセンサ素子10の任意の場所に水滴が付着したとしても、該角部に水滴が付着した場合に比べて必然的に熱衝撃はより小さくなり、該角部に水滴が付着しても被水割れを起こさない条件を見出すことができれば、それ以外の場所に水滴が付着しても被水割れを起こさない信頼性の高いガスセンサ素子10を実現可能な、境界部BND1、BND2の位置を見出すことができると思料したためである。
また、図4に示すように、実際の温度分布においては、発熱体170の中心位置よりも、やや先端側に最高温度Tmaxの位置がずれていることが判明した。
さらに、素子割れ発生限界温度閾値Trefと等しい温度となる領域は、図4に2点鎖線で示すように、ガスセンサ素子10の幅方向(w方向)と長手軸方向(L方向)に対して2次元的な広がりを有しており、その内側は、限界温度閾値Tref以上となるので、その領域を境界部形成忌避領域AREXとし、境界部BND1、BND2が境界部形成忌避領域AREXの外側の位置となるように拡散抵抗層130を形成すれば、被水割れを生じ難い信頼性の高いガスセンサ素子10を実現できるとの知見を得た。
Figure 0005835092
上記試験においては、拡散抵抗層130と内部空間形成層140との境界部BND1、BND2の位置を発熱体170の中心軸に対して先端側と基端側との両方向に変化させた場合の効果を調べたが、以下に述べる試験においては、発熱体170の中心軸に対して、先端側か基端側かのいずれか一方に境界部BND1、BND2をずらした場合の効果について調査した。
図5、図6、図7及び表2を参照して、第2の試験結果について説明する。
図5に示すように、発熱体170の中心軸から境界部BND1、BND2の一方までの長手方向の最短距離aについて、−6mmから6mm(先端側を+、基端側を−とした。)まで、変化させた9水準について20個づつサンプルを作成し、第1の試験と同様に、被水割れの発生頻度Pについて調査を行った。
その結果、図6、図7、表2に示すように、境界部BND1、BND2のいずれか一方の位置が、発熱体170の中心軸に近いほど被水割れ頻度Pが高く、遠ざかるほど被水割れ頻度Pが低くなることが判明した。
以上から、発熱体(170)によって表面温度が500℃以上に加熱される範囲を、境界部BND1、BND2を配設しない境界部形成忌避領域AREXとし、境界部形成忌避領域AREXの外側となるように配設することにより、熱衝撃に対して耐久性の高いガスセンサ素子10a〜cを得られるとの知見を得た。
Figure 0005835092
図8A、図8B、図8C、図8Dのそれぞれに本発明の第1の実施形態におけるガスセンサ素子10、第2の実施形態におけるガスセンサ素子10a、第3の実施形態におけるガスセンサ素子10b、第4の実施形態におけるガスセンサ素子10cの特徴をまとめた。ガスセンサ素子10では、第1、第2の境界部BND1、BND2が、発熱体形成領域ARHTの両外側へ振り分けられるように拡散抵抗層130が形成されている。
ガスセンサ素子10aでは、第2の境界部BND2が、発熱体形成領域ARHTの先端よりもさらに、先端側に位置するように、拡散抵抗層130aが形成されている。
ガスセンサ素子10bでは、第1の境界部BND1が、発熱体形成領域ARHTの基端よりもさらに、基端側に位置するように、拡散抵抗層130bが形成されている。
ガスセンサ素子10cでは、発熱体形成領域ARHTの先端側であって、境界部形成忌避領域AREXの外側となり、内部空間141cの側面と先端側底面とが直交する角部に連通するように、拡散抵抗層130cが形成されている。
いずれの実施形態においても、第1、第2の境界部BND1、BND2が発熱体170によって加熱される温度が、クラック発生限界温度Trefよりも低く、昇温時や被水時等に負荷される熱ストレスが、発熱体形成領域ARHTの内側よりも小さく、第1、第2の境界部BND1、BND2への応力集中による素子割れを起こし難くなることが判明した。
図9A、図9Bを参照して、本発明の第4の実施形態におけるガスセンサ素子10dの概要について説明する。
上記実施形態おいては、酸素センサや空燃比センサに用いられ、固体電解質層100を介して対向する一対の測定側電極110と基準側電極と120とによって検出セルCを構成した例について説明したが、本実施形態においては、NOxセンサ等に用いられ、複数の内部空間141、142が形成され、検出セルCとポンピングセルCとが形成されている点が相違する。
本実施形態においては、内部空間141dとは別に第2の内部空間142を区画し、内部空間141dに対向して設けた第1の測定側電極110dと、第1の測定側電極110dに固体電解質層100を介して対向する第1の基準側電極120dとによって検出セルCを構成し、第2の内部空間142に対向して設けた第2の測定側電極210と、第2の測定側電極210に固体電解質層100を介して対向するように設けた第2の基準側電極220とによってポンピングセルCを構成している。
第1の内部空間141dと第2の内部空間142とは、連結路143によって連通され、ポンピングセルC2は、第2の測定側電極210と第2の基準側電極との間に通電することにより、第2の内部空間142内の酸素を導入し、又は、第2の内部空間142内の酸素を排出して、酸素濃度の調整を図ることにより、検出セルCの検出値との関係から被測定ガス中のNOx濃度等を検出する。
本実施形態においても、上述の第2の実施形態と同様に、拡散抵抗層130dと内部空間形成層140dとの境界BND2を、発熱体形成領域ARHTよりも先端側に位置するように拡散抵抗層形成領域AR130を配設することによって、熱ストレスに対する耐久性の向上を図っている。
なお、本発明のガスセンサ素子は、上記実施形態に限定するものではなく、所定の拡散抵抗の下に被測定ガスを内部空間に導入するために、拡散抵抗層を設けたガスセンサ素子において、発熱体形成領域内側よりも相対的に低温となる発熱体形成領域の外側となる位置に、多孔質の拡散抵抗層と緻密な内部空間形成層との境界部を配置させて、境界部に作用する熱ストレスを小さくして耐久性の向上を図ろうとする本発明の趣旨に反しない限りにおいて適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態においては、酸素イオン伝導性のあるイットリア安定化ジルコニアを用いた例を示したが、固体電解質層は、ジルコニアに限らず、被測定ガス中の検出対象に応じて、他のイオンに対して伝導性を有する固体電荷室材料を適宜採用することができる。
具体的には、プロトン伝導性を示す固体電解質材料として、4価の金属カチオン又はその一部を遷移金属によって置換したMP型ピロリン酸塩や、ZrO2、又は、CeO2のいずれかを主成分として、CaO、SrO、BaO等のアルカリ土類金属酸化物を含むペロブスカイト型遷移金属酸化物や、安定化ジルコニアとその一部をピロリン酸ジルコニウムとしたもの等が挙げられる。
また、酸素イオン伝導性を有する固体電解質材料として、YやCaOで安定化したZrOを例に挙げたが、ペロブスカイト構造酸化物に、CeO、等をドーピングしたもの等を適宜採用できる。
さらに、ガスセンサ素子10の先端側の被測定ガスに晒される部分に、アルミナ、スピネル、シリカ、チタニア、等の耐熱性酸化物粒子や、SiC、TaC、WC、TiC、Si、TiN、TiB、ZrB等の耐熱性非酸化物粒子等を用い、ディッピングや、プラズマ溶射等の公知の覆膜方法によって多孔質の保護膜を形成しても良い。
このような多孔質保護膜を形成することによって、本発明の効果に加え、被測定ガス中に含まれるP.S、Pb等の被毒成分からガス検出素子10を保護したり、多孔質保護膜によって撥水性を高めて水滴の付着を阻止したり、多孔質保護膜の親水性と疎水性とを制御して速やかに付着した水滴を多孔質保護膜内に拡散させたりすることによって冷熱ストレスを緩和し、さらなる耐久性の向上を図ることもできる。
10、10a〜d ガスセンサ素子
100、100d 固体電解質層
110 測定側電極
111 測定側リード部
112、113 測定側スルーホール電極
114 測定側電極端子
120 基準側電極
121 基準側リード部
122、123、124 基準側スルーホール電極
125 基準側電極端子
130、130a〜d 拡散抵抗層
140、140a〜d 内部空間形成層(測定ガス室形成層)
141、141a〜d 内部空間(測定ガス室)
150 遮蔽層
160 基準ガス室形成層
161 基準ガス室
170 発熱体
171、172 発熱体リード部
173、174 スルーホール電極
175、176 発熱体端子
特開2010−185891号公報

Claims (3)

  1. 少なくとも、特定のイオンに対して伝導性を有する平板状の固体電解質層(100、100d)と、その表面に設けた一対の電極対(110、120、110d、120d)と、その電極対(110、120、110d、120d)の一方(110、110d)が露出する内部空間(141、141a〜d)を区画した内部空間形成層(140、140a〜d)と上記固体電解質層(100、100d)に積層された緻密な絶縁体(160、180)と上記内部空間(141、141a〜d)に所定の拡散抵抗の下で被測定ガスを導入するための多孔質の拡散抵抗層(130、130a〜d)と、上記絶縁体(160、180)の内部に埋設され、通電により発熱して、上記固体電解質層(100、100d)の上記電極対(110、120、110d、120d)を設けた領域を加熱する発熱体(170)と、を具備するガスセンサ素子において、
    上記拡散抵抗層(130、130a〜d)は、上記内部空間(141、141a〜d)に、素子幅方向の側面側から対向するように、上記内部空間形成層(140、140a〜d)に埋設されており、
    上記内部空間(141、141a〜d)の素子長手方向の先端は、上記発熱体(170)の素子長手方向の先端よりもさらに先端側に位置しており、
    上記拡散抵抗層(130)の素子長手方向の先端側で上記内部空間(141)と接する境界部(BND1)が、上記発熱体(170)の素子長手方向の先端よりもさらに先端側に位置するとともに、上記拡散抵抗層(130)の素子長手方向の基端側で上記内部空間(141)と接する境界部(BND2)が、上記発熱体(170)の素子長手方向の基端よりもさらに基端側に位置する配置関係、
    上記拡散抵抗層(130a、130c、130d)の全体が、上記発熱体(170)の素子長手方向の先端よりもさらに先端側に位置する配置関係、及び、
    上記拡散抵抗層(130b)の全体が、上記発熱体(170)の素子長手方向の基端よりもさらに基端側に位置する配置関係、のいずれか1つを充足することを特徴とするガスセンサ素子(10、10a〜d)。
  2. 上記発熱体(170)によって表面温度が500℃以上に加熱される上記ガスセンサ素子(10)の二次元的な範囲を、上記境界部(BND1、BND2)を配設しない境界部形成忌避領域(AREX)とし、
    上記拡散抵抗層(130の上記境界部(BND1)該境界部形成忌避領域(AREXよりも素子長手方向の先端側に配設するとともに、上記拡散抵抗層(130)の上記境界部(BND2)を、上記境界部形成忌避領域(AR EX )よりも素子長手方向の基端側に配設した請求項1に記載のガスセンサ素子(10)。
  3. 上記発熱体(170)によって表面温度が500℃以上に加熱される上記ガスセンサ素子(10a〜d)の2次元的な範囲を、上記境界部(BND1、BND2)を配設しない境界部形成忌避領域(AR EX )とし、
    上記拡散抵抗層(130a〜d)の全体を、該境界部形成忌避領域(AR EX )に対する素子長手方向の先端側又は基端側に配設した請求項1に記載のガスセンサ素子(10a〜d)。
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