JP5835003B2 - 有機物質の利材化方法 - Google Patents

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Description

本発明は、廃プラスチックなどの有機物質を改質して低分子化された改質物を得るとともに、低分子化反応で生じた固体状残渣を有効利用する有機物質の利材化方法に関する。
一貫製鉄所において、コークスは鉄鉱石の還元剤として多量に使用されており、さらに、鉄鉱石焼結機の凝結材としてもコークスが使用されている。一方、コークスを製造するコークス炉からは多量のコークス炉ガスが発生し、また、コークスで鉄鉱石の還元を行う高炉からも多量の高炉ガスが発生し、これらの副生ガスは製鉄所の燃料や還元剤として活用されている。
近年、製鉄所では、炭酸ガスの排出削減という社会的要請や原料炭の高騰などの理由から、LNGなどの石炭以外の炭素源が燃料や還元剤の一部として利用されるようになってきた。しかし、さらなる炭酸ガス排出削減のために、LNGなどの化石燃料への依存を低下させることが求められている。
ところで、廃プラスチック、含油スラッジ、廃油、バイオマスなどの多くは焼却処理されているのが現状である。しかし、焼却処理ではCO発生などの環境負荷が高く、また、焼却炉の熱的損傷の問題もあり、ケミカルリサイクル技術の確立が求められている。
ケミカルリサイクル技術のなかでも、有機物質を気体生成物や液体生成物に転換するための技術は、廃プラスチックを中心に従来から種々検討がなされ、例えば、以下のような提案がなされている。
特許文献1には、水素濃度60vol%以上、好ましくは80vol%以上、温度600℃以上のコークス炉ガス(COG)を廃プラスチックなどの有機物質と反応させることにより、有機物質を高効率で水素化分解・ガス化し、COGを増熱化する方法が開示されている。
また、特許文献2には、石油の流動接触触媒(FCC)を熱媒体兼触媒として用い、温度350〜500℃で廃プラスチックを分解して液体燃料に変換する方法が開示されている。
また、特許文献3には、RDFや木材などを熱分解するにあたり、熱分解で生成したガスを水蒸気改質し、この水蒸気改質により水素濃度を高くしたガスを熱分解部に循環し、水素濃度を高くしたガス雰囲気で熱分解を行う方法が開示されている。
特開2007−224206号公報 特開2010−013657号公報 特開2001−131560号公報
しかしながら、上記従来技術には、以下のような問題がある。
まず、特許文献1に関しては、COG中の水素濃度が60vol%以上となるのは石炭乾留工程のうちでも乾留末期に限られるので、特許文献1の方法では、乾留末期のタイミングでガス流路を切替え、多量のダストを含む600℃以上のCOGを廃プラスチック水素化分解反応器に供給する必要がある。しかし、このような過酷な条件で、流路切替弁を長期間安定して作動させ続けることは困難であり、この意味で実現性に乏しい技術であると言える。さらに、廃プラスチックの効率的なガス化のためには、60vol%以上の水素を含有するCOGを連続的に水素化分解反応器に供給することが必要であるが、このためには炭化室毎に水素濃度計と流路切替弁を設置する必要があり、設備コストが増大する。
また、特許文献2の方法は、FCC触媒の添加によって接触分解と芳香族化が進むものの、不活性ガスフローで反応を行っているため、重油分とコークが合計で13質量%生成しており(実施例1)、軽質燃料の製造技術として満足できる水準とは言えない。
また、特許文献3の方法で生成するガスは、H、CO、COが主体で、燃焼熱が冶金炉発生排ガスのそれよりやや低い1800kcal/Nm程度のものであり、気体燃料としての価値は限定的なものとなる。
さらに、廃プラスチックなどの高分子量有機物質を分解して、気体生成物や液体生成物に転換するにあたり、固体状残渣の生成を完全に抑制することは困難である。しかしながら、固体状残渣を有効活用する方法は殆ど知られていないのが現状である。
したがって本発明の目的は、廃プラスチックなどの有機物質を低分子化して気体生成物や液体生成物などに転換する際に、安定的に供給可能なガスを用いて有機物質を効率的に改質して低分子化し、重質分や炭素質が少なく、軽質分を多量に含有する改質物を得ることができるとともに、低分子化反応で生じた固体状残渣を有効利用することができる有機物質の利材化方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため検討を重ねた結果、冶金炉で発生する一酸化炭素を含有する排ガスに過剰の水蒸気を添加してシフト反応を行わせ、このシフト反応後のガス、すなわちシフト反応で生成した水素および炭酸ガスと残存した水蒸気とを含む混合ガスを用い、高分子量の有機物質を改質して低分子化する方法によれば、安定的に供給可能なガスを用いて有機物質を効率的に改質して低分子化し、重質分や炭素質が少なく、軽質分を多量に含有する改質物を得ることができ、しかも、低分子化反応で生じた固体状残渣を、製鉄所などで行われる製造または処理プロセスにおいて、炭素材料として有効利用できることを見出した。また、有機物質の改質を鉄系触媒の存在下で行う場合には、低分子化反応で生じた固体状残渣を、製鉄所などで行われる製造または処理プロセスにおいて、鉄源を含有する炭素材料として有効利用できることを見出した。
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
[1]冶金炉で発生した一酸化炭素を含有する排ガス(g)に過剰の水蒸気を添加してシフト反応を行わせることで、シフト反応で生成した水素および炭酸ガスと、シフト反応に消費されなかった水蒸気とを含む混合ガス(g)とし、この混合ガス(g)を有機物質に接触させることにより、有機物質を改質して低分子化する反応を生じさせ、該反応により生じた有機物質の低分子化改質物と固体状残渣を回収し、該固体状残渣を炭素材料として利材化することを特徴とする有機物質の利材化方法。
[2]冶金炉で発生した一酸化炭素を含有する排ガス(g)に過剰の水蒸気を添加してシフト反応を行わせることで、シフト反応で生成した水素および炭酸ガスと、シフト反応に消費されなかった水蒸気とを含む混合ガス(g)とし、この混合ガス(g)を鉄系触媒の存在下、有機物質に接触させることにより、有機物質を改質して低分子化する反応を生じさせ、該反応により生じた有機物質の低分子化改質物と固体状残渣を回収し、該固体状残渣を鉄源を含有する炭素材料として利材化することを特徴とする有機物質の利材化方法。
[3]上記[2]の方法において、鉄系触媒が転炉ダストであることを特徴とする有機物質の利材化方法。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかの方法において、排ガス(g)が、冶金炉で発生した一酸化炭素と窒素を含有する排ガスから窒素の少なくとも一部を分離することで一酸化炭素濃度を高めた排ガスであることを特徴とする有機物質の利材化方法。
[5]上記[1]〜[4]のいずれかの方法において、混合ガス(g)の水蒸気濃度が5〜70vol%であることを特徴とする有機物質の利材化方法。
[6]上記[5]の方法において、混合ガス(g)は、水蒸気濃度が20〜70vol%、水素濃度が10〜40vol%、炭酸ガス濃度が10〜40vol%であることを特徴とする有機物質の利材化方法。
[7]上記[1]〜[6]のいずれかの方法において、改質される有機物質が、廃プラスチック、含油スラッジ、廃油、バイオマスの中から選ばれる1種以上であることを特徴とする有機物質の利材化方法。
[8]上記[1]〜[7]のいずれかの方法において、固体状残渣を、製鉄所で行われる製造または処理プロセスにおいて炭素材料として利用することを特徴とする有機物質の利材化方法。
[9]上記[8]の方法において、製鉄所で行われる製造または処理プロセスが、焼結鉱製造プロセス、コークス製造プロセス、転炉脱炭プロセス、高炉プロセスのうちの1つ以上のプロセスであることを特徴とする有機物質の利材化方法。
[10]上記[1]〜[9]のいずれかの方法において、回収された有機物質の低分子化改質物を、製鉄所内で燃料および/または還元剤として利用することを特徴とする有機物質の利材化方法。
[11]上記[10]の方法において、回収された有機物質の低分子化改質物を高炉に吹き込むことを特徴とする有機物質の利材化方法。
本発明によれば、廃プラスチックなどの高分子量の有機物質を低分子化して気体生成物や液体生成物に転換する際に、安定的に供給可能なガスを用いて有機物質を効率的に改質して低分子化することで軽質分を多量に含有する高カロリーの改質物を得ることができるとともに、発生する少量の固体状残渣も炭素材料として、或いは鉄源を含有する炭素材料として、製鉄所などで行われる製造または処理プロセスにおいて有効利用することができる。このため廃プラスチックなどの高分子量有機物質を、エミッションレスでケミカルリサイクルすることが可能となる。
また、実施設備に関しても、特別な計測器や流路切替弁などが必要なく、しかも比較的低い反応温度でも有機物質の改質を行うことができるので、比較的簡易な設備で実施することができる。また、シフト反応によって生成するCOは、有機物質の改質中に炭酸ガス改質反応でCOに変化するため、有機物質のケミカルリサイクルをCO発生量を増加させることなく実施することが可能となる。
転炉ガスに水蒸気を添加して行うシフト反応において、水蒸気の添加量とシフト反応後のガスの組成(温度430℃における平衡組成計算値)との関係を示すグラフ 実施例において、シフト反応生成ガスの水蒸気濃度と、ポリエチレンの改質(低分子化)におけるガス化率および液化率との関係を示すグラフ 実施例において、シフト反応生成ガスの水蒸気濃度と、ポリエチレンの改質(低分子化)で得られた気体生成物および液体生成物のLHVとの関係を示すグラフ 実施例において、シフト反応生成ガスの水蒸気濃度と、ポリエチレンの改質(低分子化)におけるポリエチレン分解率との関係を示すグラフ 実施例において、シフト反応生成ガスの炭酸ガス濃度と、ポリエチレンの改質(低分子化)で得られた気体生成物の水素濃度との関係を示すグラフ 実施例において、シフト反応生成ガスの水素濃度と、ポリエチレンの改質(低分子化)で得られた気体生成物の炭酸ガス濃度との関係を示すグラフ 実施例(発明例11)で用いた設備を模式的に示す説明図
本発明法では、冶金炉で発生した一酸化炭素を含有する排ガス(g)(以下、「冶金炉発生排ガス」という場合がある)に過剰の水蒸気を添加してシフト反応を行わせることで、シフト反応で生成した水素および炭酸ガスと、シフト反応に消費されなかった水蒸気とを含む混合ガス(g)とし、この混合ガス(g)(以下「シフト反応生成ガス」という場合がある。)を有機物質に接触させることにより、有機物質を改質して低分子化する反応を生じさせ、この反応により生じた有機物質の低分子化改質物と固体状残渣(少量)を回収し、この固体状残渣を、炭素材料として製鉄所などで行われる製造または処理プロセスにおいて利材化する。或いは、有機物質の低分子化反応を鉄系触媒の存在下で行い、この反応により生じた有機物質の低分子化改質物と固体状残渣(少量)を回収し、この固体状残渣を、鉄源を含有する炭素材料として、製鉄所などで行われる製造または処理プロセスにおいて利材化する。
なお、排ガス(g)に過剰の水蒸気を添加するとは、シフト反応で消費されない余剰の水蒸気が混合ガス(g)中に残存するように水蒸気を添加するという意味である。
このような本発明法では、比較的低い反応温度でも効率的に有機物質の低分子化が促進され、水素消費量も少なく、且つ重質分や炭素質の生成もほとんど認められない。
一般に廃プラスチックなどの高分子量有機物質は、300〜400℃以上で加熱すると熱分解が始まることが知られているが、この時、軽質化とともに重質化も進行してしまう。熱分解時に水素を共存させると、炭化水素種への水素付加反応と水素化分解反応が進行するため、重質化抑制と低分子化に有効である。しかしながら、水素化分解に高温が必要であり、且つ水素消費量が多くなることが問題である。
一方、水蒸気改質や炭酸ガス改質は、HOやCO分子中の酸素による炭化水素の酸化と看做すことができ、少ない水素添加量で低分子化と炭素質生成抑制が達成できる。さらに、水蒸気改質や炭酸ガス改質は、改質される有機分子の炭素鎖が長くなるにつれて反応温度が低下するという特徴を有する。本発明法において、比較的低い反応温度でも効率的に有機物質の低分子化が促進され、水素消費量も少なく、且つ重質分や炭素質の生成もほとんど認められないのは、上記混合ガス(g)を用いて有機物質の改質(低分子化)を行うことにより、水素化、水素化分解、水蒸気改質、炭酸ガス改質の4反応が同時に進行するためであると考えられる。
なお、前記水素化反応としては、炭化水素種への水素付加反応だけではなく、メタンなどの軽質炭化水素を生成するCOやCOへの水素付加反応も進行していることが気体生成物の分析結果から示唆される。本発明の説明では簡単のため、COやCOへの水素付加反応を炭化水素種への水素化反応と区別することなく、単に水素化(または水素化反応)として記述した。
例えば、転炉などの冶金炉から発生する排ガスには、通常、COが25〜80vol%程度含有されている。したがって、これに水蒸気を添加すると、下記のシフト反応(1)によってHとCOが生成する。
CO+HO→H+CO …(1)
本発明法では、排ガス(g)に過剰の水蒸気が添加されるので、シフト反応後の混合ガス(g)には、シフト反応により生成したH、COと過剰添加分のHOが含まれることになる。そして、このシフト反応生成ガス(g)による有機物質の改質(低分子化)では、各ガス成分による水素化、水素化分解、水蒸気改質、炭酸ガス改質の4反応が同時進行するものと考えられる。
本発明では、排ガス(g)に対して過剰に添加する水蒸気の過剰割合やシフト反応の反応率を適宜制御することによって、ガス中の水蒸気、水素、炭酸ガスの各濃度を制御し、有機物質改質用の混合ガス(g)とすることができる。ただし、ガスホルダー(例えば、製鉄所内で使用されている一般的なガスホルダー)に貯蔵される冶金炉発生排ガスの一般的組成は、CO:50〜70vol%、CO:10〜20vol%、N:10〜20vol%、H:0〜5vol%(他に飽和水蒸気を含む)程度であるため、一般には、シフト反応の反応率制御まで行う必要はなく、水蒸気の過剰割合を調整するだけで、混合ガス(g)の水蒸気、水素、炭酸ガスの各濃度を所望のレベルに制御することができる。
なお、シフト反応の反応率は、シフト反応器内での滞留時間を調整することで制御することができる。例えば、滞留時間を短くするには、シフト反応器長さを小さくしたり、或いは触媒充填量を少なくする方法が一般的であり、その場合、シフト反応器長さや触媒充填量は、ほぼ平衡まで反応を進行させる場合の1/2〜1/4程度とすればよい。
一例として、CO:65vol%、CO:15vol%、N:18vol%、H:1vol%、HO:1vol%からなる組成の転炉ガス100kmol/h(=2240Nm/h)に、水蒸気の添加量を60kmol/h(=1340Nm/h)から540kmol/h(=12100Nm/h)まで変化させてシフト反応を行う場合について、水蒸気添加量とシフト反応後のガスの組成(温度430℃における平衡組成計算値)を図1に示す。これによれば、水蒸気添加量を調整するだけで、混合ガス(g)の水蒸気、水素、炭酸ガスの各濃度を制御でき、後述するような好ましいガス組成にできることが判る。なお、シフト反応は、通常、ほぼ平衡まで反応が進行することはよく知られている。
以下、本発明法の詳細と好ましい条件について説明する。
本発明において、シフト反応させる排ガス(g)として冶金炉発生排ガスを用いる理由は、冶金炉発生排ガスは比較的高濃度に一酸化炭素を含有し、且つ不要な窒素の濃度が低いためである。一酸化炭素を含有する冶金炉発生排ガス(g)としては、任意のものが使用できる。最も代表的なものは、鉄鋼製造プロセスの脱炭工程が行われる転炉から発生する転炉ガスであるが、それ以外にも、例えば、溶銑予備処理炉、溶融還元炉、シャフト炉などから発生する排ガスを例示することができ、これらの1種または2種以上の混合ガスを用いることができる。
冶金プロセスで生成する一酸化炭素が、さらに酸化されて二酸化炭素が生成する割合である二次燃焼率(CO/(CO+CO)×100)は、一般に10〜50%程度に過ぎない。また、排ガス(g)中には水素と窒素も含まれるが、H濃度は冶金プロセスに応じて変化し、0〜20vol%程度である。窒素は、炉内撹拌や煙道保安などのために供給されており、通常、排ガス(g)中の濃度は10〜30vol%程度である。
以上の点から、一般的な冶金炉発生排ガス(g)の組成は、概ね以下のような範囲となる。
CO:80〜25vol%(二次燃焼率10〜50%に相当)
CO:10〜25vol%(二次燃焼率10〜50%に相当)
:10〜30vol%
:0〜20vol%
シフト反応には一酸化炭素が必要であるが、ガスの組成が上記の範囲であれば、排ガス(g)の組成に特段の問題はない。ここで、窒素は本発明で生じる化学反応(シフト反応、水素化、水素化分解、水蒸気改質、炭酸ガス改質)には何ら寄与せず、一方において、製造される気体生成物を希釈し、低位燃焼熱(以下、「LHV」という)を低下させる。特に、窒素濃度が50vol%を超えると、気体生成物のLHVの低下が顕著になるとともに、シフト反応速度も低下する傾向になる。このため窒素濃度は上記組成範囲内であることが好ましい。
さきに述べたように、ガスホルダー(例えば、製鉄所内で使用されている一般的なガスホルダー)に貯蔵される冶金炉発生排ガスの一般的組成は、CO:50〜70vol%、CO:10〜20vol%、N:10〜20vol%、H:0〜5vol%(他に飽和水蒸気を含む)程度であり、この組成は、上記の一般的な冶金炉発生排ガスの組成の中で高CO濃度組成に相当する。ガスホルダーに貯蔵されたガスは、製鉄所内の各工場で燃料ガスとして利用するため、利用先での燃焼効率の低下を防止する必要がある。そのため、ガス中CO濃度の下限値をガスホルダーへの貯蔵条件として設定しておくことが、高CO濃度組成になっている理由である。
本発明では、製鉄所内で使用されている一般的なガスホルダーに貯蔵されているような比較的CO濃度が高い排ガスであっても、上記のような一般的な冶金炉発生排ガスの組成であっても、排ガス(g)として利用することができる。
ところで、冶金炉発生排ガス(g)のなかには、一酸化炭素を含有するものの、窒素濃度が比較的高いものがあり、このような冶金炉発生排ガス(g)については、含有する窒素の少なくとも一部を分離(除去)して一酸化炭素濃度を高めた上で、過剰の水蒸気を添加してシフト反応を行わせるようにしてもよい。
窒素分離をするのが好ましい代表的な排ガスとしては、高炉ガスを挙げることができるが、この他にも電炉や窒素濃度が高くなる条件で操業しているシャフト炉の発生排ガスなどを挙げることができる。なお、転炉ガスなどのように、比較的高濃度の一酸化炭素を含有する排ガスについて窒素の分離を行い、一酸化炭素濃度をさらに高めた上で、シフト反応を行うこともできる。
排ガスから窒素を分離する方法に特別な制限はなく、吸着分離法、蒸留分離法など任意の方法を適用することができるが、窒素と一酸化炭素の沸点差が小さいことから、吸着分離法が特に好ましい。例えば、CO吸着剤として知られているCuを担持した活性炭はCOも吸着するため、Cu担持活性炭を吸着剤とするPSA法によって、高炉ガス(概略組成:N:50vol%、CO:25vol%、CO:25vol%)から脱着ガスとして概略組成がN:15vol%、CO:45vol%、CO:40vol%のガスを得ることができ、これは高炉ガス中の窒素を分離して一酸化炭素を濃縮したことになる。
本発明法でのシフト反応は公知の手法で行えばよく、特別な制限はない。一般的には、冶金炉発生排ガス(g)に事前に水蒸気を添加しておき、これを触媒が充填された固定床反応器に導入してシフト反応を行う。また、事前に添加する水蒸気を一部とし、反応器内に触媒を多段で充填し、触媒層と触媒層との間から残りの水蒸気を添加するようにしてもよい。
なお、本発明のようなシフト反応を行うことなく、冶金炉発生排ガス(g)に水蒸気、水素、炭酸ガスをそれぞれ添加すれば、本発明のシフト反応で得られる有機物質改質用の混合ガス(g)と同等の組成のガスを得ることはできるが、このような方法では、水蒸気に加えて、高価な水素ガスと炭酸ガスを添加しなければならず、コスト高となる。
本発明において、シフト反応で得られる有機物質改質用の混合ガス(g)は、水蒸気、水素および炭酸ガスを含むものであり、それらの濃度に特別な制限はないが、以下のような理由から、水蒸気濃度は5〜70vol%であることが好ましい。すなわち、水蒸気濃度が低いと廃プラスチックなどの有機物質の分解率が低くなるが、水蒸気濃度を5vol%以上とすることにより、一定水準の有機物質の分解率を確保でき、気体生成物の生成率(ガス化率)・液体生成物の生成率(液化率)を一定の水準にできるとともに、発生する固体状残渣である重質分の生成量を少なくできる。一方、水蒸気濃度が高いと有機物質の改質反応生成ガス(有機物質の改質による低分子化で生成したガス。以下同様)中にCOが残留しやすくなるとともに、気体生成物・液体生成物のLHVが低下しやすくなるが、水蒸気濃度が70vol%以下であれば、改質反応生成ガス中でのCOの残留を抑えることができ、また、気体生成物・液体生成物のLHVの低下も抑えることができる。
また、有機物質の分解率を確保し、固体状残渣を少なくする観点から、混合ガス(g)の水素濃度および炭酸ガス濃度はともに5vol%以上が好ましい。
また、以下のような理由から、有機物質改質用の混合ガス(g)のより好ましい組成は、水蒸気濃度:20〜70vol%、水素濃度:10〜40vol%、炭酸ガス濃度:10〜40vol%である。なお、この混合ガス(g)に、他のガス成分(例えば、窒素など)が含まれることは妨げない。水蒸気濃度を20vol%以上とすることにより、有機物質の分解率を十分に高めることができるとともに、気体生成物のLHVを高くすることができる。水蒸気濃度を70vol%以下とする理由は、さきに述べたとおりである。水素濃度を10vol%以上(より好ましくは12vol%以上)とすることにより、特に、比較的低温で有機物質の改質反応を行った場合でも、気体生成物中にCOが残留することを抑えることができる。炭酸ガス濃度を10vol%以上(より好ましくは13vol%以上)とすることにより、気体生成物中に炭化水素やCOに比べて低カロリーのガス成分であるHが残留しにくくなる。また、水素濃度や炭酸ガス濃度を40vol%以下とすることにより、廃プラスチックなどの有機物質の分解率を好ましいレベルにし、固体状残渣を少なくすることができる。また、以上のような観点から、混合ガス(g)のより好ましいガス組成は、水蒸気濃度:25〜65vol%、水素濃度:15〜35vol%、炭酸ガス濃度:15〜35vol%である。なお、この混合ガス(g)に、他のガス成分(例えば、窒素など)が含まれることは妨げない。
また、本発明の特徴の一つとして、有機物質改質用の混合ガス(g)の水蒸気濃度によって、有機物質の改質における気体生成物生成量と液体生成物生成量との比を制御できることが挙げられる。すなわち、混合ガス(g)の水蒸気濃度を50vol%以上にすると気体生成物が主に生成し(すなわち、気体生成物生成量>液体生成物生成量)、水蒸気濃度を40vol%以下にすると液体生成物が主に生成する(すなわち、気体生成物生成量<液体生成物生成量)。なお、水素濃度、炭酸ガス濃度の影響は水蒸気濃度の影響ほど顕著ではないので、本発明の好適範囲内であればよい。
次に、シフト反応で得られた混合ガス(g)による有機物質の改質(低分子化)条件について説明する。
本発明において、改質による低分子化の対象となる有機物質に特別な制限はないが、高分子量の有機物質が好適であり、例えば、廃プラスチック、含油スラッジ、廃油、バイオマスなどが挙げられ、これらの1種以上を対象とすることができる。
対象とする廃プラスチックの種類に特別な制限はないが、例えば、産業廃棄物系、容器包装リサイクル法の対象プラスチックなどを挙げることができる。より具体的には、PEやPPなどのポリオレフィン類、PAやPETなどの熱可塑性ポリエステル類、PSなどのエラストマー類、熱硬化性樹脂類、合成ゴム類や発砲スチロールなどを挙げることができる。なお、多くのプラスチック類にはフィラーなどの無機物が添加されているが、本発明では、このような無機物は反応に関与しないので、固体状残渣として改質(低分子化)反応器(有機物質を改質して低分子化するための反応器。以下同様)から排出される。また、廃プラスチックは、必要に応じて適当なサイズに事前裁断された後、改質反応器に投入される。
また、廃プラスチックがポリ塩化ビニルなどの塩素含有樹脂を含んでいると、改質反応器内で塩素が発生し、この塩素が気体生成物や液体生成物中に含有されてしまう恐れがある。したがって、廃プラスチックが塩素含有樹脂を含む恐れがある場合には、改質反応器内にCaOなどのような塩素吸収剤を投入し、塩素分が生成する気体生成物や液体生成物中に含有されないようにすることが好ましい。
含油スラッジとは、含油廃液処理工程で発生する汚泥状の混合物のことであり、一般に30〜70質量%程度の水分を含んでいる。スラッジ中の油分としては、例えば、各種鉱物油、天然および/または合成油脂類、各種脂肪酸エステル類などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、改質反応器に含油スラッジを供給する際などのハンドリング性を向上させるために、遠心分離などの手法により、スラッジ中の水分を30〜50質量%程度まで低減させてもよい。
廃油としては、例えば、使用済みの各種鉱物油、天然および/または合成油脂類、各種脂肪酸エステル類などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これら2種以上の廃油の混合物であってもよい。また、製鉄所の圧延工程で発生する廃油の場合、一般に多量(通常、80質量%超程度)の水分を含有しているが、この水分についても、比重分離などの手法によって事前に低減させておくことが、ハンドリング性の面で有利である。
有機物質が水を含んでいる場合には、改質反応器内で水蒸気が発生するので、その分を考慮してシフト反応で添加する水蒸気の過剰割合を決定する。
バイオマスとしては、例えば、下水汚泥、紙、建設廃材、間伐材などの他、ゴミ固形燃料(RDF)などの加工されたバイオマスなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。バイオマスには、通常、多量の水分が含有されているので、事前に乾燥させておくことがエネルギー効率の点から好ましい。また、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属を比較的高濃度に含むバイオマスの場合、改質反応器内でアルカリ金属が析出する可能性があるので、水洗などの方法によって事前にアルカリ金属を溶出させておくことが好ましい。なお、建設廃材などの大型のバイオマスは、事前に裁断して改質反応器に投入される。
有機物質改質時の反応温度は、有機物質の種類に応じて、以下のようにすることが好ましい。廃プラスチックやバイオマスの場合には、反応温度は400〜900℃程度が適当である。反応温度が400℃未満では廃プラスチックやバイオマスの分解率が低く、一方、900℃を超えると炭素質の生成が多くなる。また、含油スラッジや廃油の場合には、反応温度は300〜800℃程度が適当である。反応温度が300℃未満では含油スラッジや廃油の分解率が低くなる。一方、反応温度が800℃を超えても含油スラッジや廃油の改質(低分子化)特性に影響はないが、必要以上の高温であるため、経済的でない。
また、廃プラスチックおよび/またはバイオマスと含油スラッジおよび/または廃油からなる混合物を対象とする場合には、上述した点から、反応温度は400〜800℃程度が適当である。なお、気体生成物生成量と液体生成物生成量との比に対する反応温度の影響はほとんど見られない。また、圧力の影響もほとんど認められないので、常圧または数kg/cm程度の微加圧で改質反応器を運転することが経済的である。
改質反応器の種類は特に限定されないが、反応器内で廃プラスチックなどの有機物質が円滑に移動し、且つ有機物質改質用の混合ガス(g)と効率的に接触でき、さらに、固体状残渣を連続的に排出できるという点から、ロータリーキルンのような横型の移動床方式反応器が好ましい。
本発明では有機物質の改質に特に触媒を必要としないので、触媒を用いない場合に発生する固体状残渣は、製鉄所などで行われる製造または処理プロセスにおいて炭素材料として利用される。また、本発明では、Ni系改質触媒、Ni系水素化触媒、Pt/ゼオライト系石油精製触媒などの水蒸気改質活性、炭酸ガス改質活性、水素化活性、水素化分解活性をそれぞれ有する1種または2種以上の触媒を用いて改質反応を行うこともでき、その場合に発生する固体状残渣は、触媒と分離した後、製鉄所などで行われる製造または処理プロセスにおいて炭素材料として利用される。触媒の分離方法は特に制限がないが、遠心分離やサイクロンなどの比重差を利用した分離方法の他、目視による分離など任意の方法が採用できる。
一方、鉄系触媒を用いて有機物質の改質反応を行う場合には、発生する固体状残渣は鉄源(鉄系触媒由来の鉄源)を含有する炭素材料として利用される。鉄系触媒としては、転炉で発生する転炉ダスト、Fe−Cr系などの高温用シフト触媒、アルミナやゼオライトなどの各種担体に担持した鉄系触媒が好ましい。特に、転炉ダストは微細な鉄粒子であり、有機物質の改質反応に高い活性を示すだけでなく、転炉脱燐などの溶銑予備処理プロセスや転炉脱炭プロセスの副生物であり安価であるため、使い捨てとすることも可能であるため特に好ましい。一方、エチルベンゼン脱水素触媒(例えば、Fe−K系)のような脱水素活性を有する触媒は、改質反応で発生する炭素質を増加させるため、好ましくない。
触媒を充填する場合には、廃プラスチックなどの有機物質と触媒との接触が良好となることから、ロータリーキルンのような横型の移動床式改質反応器ではなく、縦型の改質反応器を採用してもよい。この場合、シフト反応で得られた混合ガス(g)は、改質反応器の上部よりも、下部および/または側部から供給する方が、混合ガス(g)と有機物質や触媒との接触が良好となり好ましい。
縦型の改質反応器としては、化学工業で用いられる一般的な固定床反応器を用いることができるが、特に、混合ガス(g)を改質反応器下部から供給する方式を採用する場合には、製鉄設備である高炉やシャフト炉、或いは転炉を改質反応器として利用することもできる。高炉やシャフト炉を改質反応器として利用する場合は、炉上部から有機物質と触媒を、炉下部から混合ガス(g)を、それぞれ連続的に供給して向流接触させ、炉上部から気体生成物を、炉下部から液体生成物と固体状残渣および触媒を連続的に抜き出す移動床式とすると、反応効率が高くなり好ましい。また、転炉を改質反応器として利用する場合は、有機物質と触媒を炉に投入した後、炉下部から混合ガス(g)を連続的に供給し、気体生成物は炉上部から連続的に抜き出し、液体生成物と固体状残渣および触媒は一定時間の反応後に炉を傾けて抜き出すという、吹錬と同様の回分式反応形式とすることができる。いずれの場合も、固体状残渣と触媒は液体生成物と分離され、触媒が鉄系触媒である場合には、通常、製鉄所などで行われる製造または処理プロセスにおいて鉄源を含有する炭素材料として利用される。また、触媒が非鉄系触媒である場合には、固体状残渣と触媒は分離され、固体状残渣が製鉄所などで行われる製造または処理プロセスにおいて炭素材料として利用される。
特に、転炉ダストを触媒とする場合、転炉ダストが安価で使い捨てとすることが可能なため、ロータリーキルンのような横型の移動床式反応器とすることも好ましい。この場合、炉前部から有機物質と触媒を、炉後部から混合ガス(g)を、それぞれ連続的に供給して向流接触させ、炉前部から気体と液体生成物を、炉後部から固体状残渣と触媒を連続的に抜き出す移動床式とすると、反応効率が高くなり好ましい。固体状残渣と触媒は、何ら分離工程を経ることなく、鉄源を含有する炭素材料として、製鉄所などで行われる製造または処理プロセスにおいて利用できる。
本発明法で得られる有機物質の改質物は、改質反応生成ガスを冷却した後、気液分離することによって、それぞれ気体生成物と液体生成物に分離することができる。また、必要に応じて蒸留分離することによって、液体生成物からナフサ相当留分、灯油相当留分、軽油相当留分などに分離することができる。改質反応生成ガスの冷却方法、気液分離方法、並びに蒸留分離方法は公知の方法で行うことができ、特別な制限はない。
気体生成物中の可燃成分は一酸化炭素とC1〜C4の炭化水素から成り、そのLHVは約6〜10Mcal/Nmである。このように、天然ガス並みのLHVであるにも拘わらず、一酸化炭素濃度が高いので、天然ガスよりも燃焼性が高いことが特徴である。一酸化炭素濃度が高く且つ燃焼性が高いことから、一貫製鉄所の主要な燃料であるコークス炉ガスの代替燃料として用いることができる。また、COと軽質炭化水素からなる混合ガスであるので、天然ガス代替として高炉内に吹きこむこともできる。
液体生成物はC5〜C24の炭化水素から成っていることから、ナフサ(C5〜C8)、灯油(C9〜C12)、軽油(C13〜C24)の混合物であり、重油相当(C25以上)をほとんど含まない良質の軽質油である。この液体生成物は、蒸留分離によって、ナフサ、灯油、軽油として別々に利用してもよいが、混合物のまま、製鉄所などのような冶金炉を有する工場の燃料や溶鉱炉の重油代替還元剤として利用することができる。
なお、ナフサ(C5〜C8)の含有率が多いことから、ナフサ分は蒸留分離して化学工業原料として活用し、ナフサ分離後の蒸留残渣(灯油、軽油の混合物)だけを製鉄所で重油代替還元剤として利用してもよい。
以上のように本発明法において、有機物質の低分子化反応で生成し、回収された低分子化改質物(気体生成物、液体生成物)は、必要に応じて蒸留分離などの工程を経た後、それぞれ気体燃料や液体燃料などとして有効利用することができる。特に、製鉄所内で燃料および/または還元剤として利用し、また、熱源および還元剤として高炉内に吹き込むことができるので、高炉や製鉄所において安価で且つ高品質の燃料や還元剤を安定的に確保することができる。気体生成物(ガス)の高炉内への吹き込みは、通常、羽口を通じて行うが、これに限られるものではない。気体生成物を羽口から吹き込む場合、羽口に吹込みランスを設置し、この吹込みランスから吹き込むのが一般的である。
一方、有機物質の低分子化反応で発生し、回収された固体状残渣は、炭素材料(「鉄源を含有する炭素材料」の場合を含む。以下同様)として、製鉄所などで行われる製造または処理プロセスにおいて有効利用することができる。製鉄所で行われる製造または処理プロセスとしては、例えば、焼結鉱製造プロセス、コークス製造プロセス、転炉脱炭プロセス、高炉プロセスなどが挙げられ、これらの1つ以上のプロセスにおいて、炭素材料として利用することができる。また、製鉄所以外の製造または処理プロセスにおいて、炭素材料として利用してもよい。具体的には、活性炭や黒鉛電極などの炭素材料製造プロセスにおける代替炭素源としての利用などを例示することができる。
焼結鉱製造プロセス(焼結機)では粉状のコークスを鉄鉱石の凝結材として利用しており、この粉コークスの一部を上記固体状残渣で代替できる。固体状残渣が鉄源を含んでいる場合には、その鉄源は鉄鉱石とともに凝結し、塊鉱石を形成する。
また、コークス製造プロセス(コークス炉)では、原料炭の一部代替材料として上記固体状残渣を利用することができる。なお、コークス炉では原料炭の一部代替として廃プラスチックを投入しているので、この廃プラスチックの代替とすることもできる。
転炉脱炭プロセス(転炉)では、土状黒鉛などの転炉加炭材の代替材料として上記固体状残渣を利用することができる。特に、転炉ダストを触媒として有機物質の改質反応を行った後の転炉ダストを含有する固体状残渣は、転炉から発生したダストを鉄源とした炭素材料であるため、転炉の操業に何ら影響を与えることがないので、好ましい。
高炉プロセスでの上記固体状残渣の利用については、焼結鉱製造プロセスやコークス製造プロセスにおいて上記固体状残渣を利用して製造した塊鉱石やコークスを高炉原料とすること自体が、高炉での上記固体状残渣の利用に相当する。また、上記固体状残渣を成型したものをそのまま高炉原料(炭材)として利用することもでき、特に、鉄系触媒(なかでも転炉ダスト)用いて有機物質の改質反応を行った後の固体状残渣を成型したものは、鉄源(鉄系触媒由来の鉄源)+炭材からなる高炉原料として利用することができる。
なお、以上述べた点からして、本発明で得られる混合ガス(g)と同等の組成の混合ガスを用いれば、有機物質を効率的に分解し、低分子化することができる。特に、水蒸気濃度:20〜70vol%、水素濃度:10〜40vol%、炭酸ガス濃度:10〜40vol%、より好ましくは水蒸気濃度:25〜65vol%、水素濃度:15〜35vol%、炭酸ガス濃度:15〜35vol%である混合ガスを用いることにより、有機物質の分解率を十分に高めることができるとともに、気体生成物のLHVを高くすることができる。なお、この混合ガスに、他のガス成分(例えば、窒素など)が含まれることは妨げない。
このようなガス組成の限定理由は、さきに述べた本発明法における限定理由と同様である。本発明法以外でこのような組成の混合ガスを得るには、例えば、ベースとなるガスに水蒸気、水素、炭酸ガスの1種以上を添加する。
この混合ガスによる有機物質の改質(低分子化)条件は、さきに述べた本発明法における改質(低分子化)条件と同様である。
したがって、その方法の要旨は下記[i]〜[viii]の通りであり、後述する本発明の実施例は、下記[i]〜[viii]の方法の実施例でもある。
[i]水蒸気濃度が20〜70vol%、水素濃度が10〜40vol%、炭酸ガス濃度が10〜40vol%である混合ガスを有機物質に接触させることにより、有機物質を改質して低分子化する反応を生じさせ、該反応により生じた有機物質の低分子化改質物と固体状残渣を回収し、該固体状残渣を炭素材料として利材化することを特徴とする有機物質の利材化方法。
[ii]水蒸気濃度が20〜70vol%、水素濃度が10〜40vol%、炭酸ガス濃度が10〜40vol%である混合ガスを鉄系触媒の存在下、有機物質に接触させることにより、有機物質を改質して低分子化する反応を生じさせ、該反応により生じた有機物質の低分子化改質物と固体状残渣を回収し、該固体状残渣を鉄源を含有する炭素材料として利材化することを特徴とする有機物質の利材化方法。
[iii]上記[i]または[ii]の方法において、混合ガスは、水蒸気濃度が25〜65vol%、水素濃度が15〜35vol%、炭酸ガス濃度が15〜35vol%であることを特徴とする有機物質の利材化方法。
[iv]上記[i]〜[iii]のいずれかの方法において、改質される有機物質が、廃プラスチック、含油スラッジ、廃油、バイオマスの中から選ばれる1種以上であることを特徴とする記載の有機物質の利材化方法。
[v]上記[i]〜[iv]のいずれかの方法において、固体状残渣を、製鉄所で行われる製造または処理プロセスにおいて炭素材料として利用することを特徴とする有機物質の利材化方法。
[vi]上記[v]の方法において、製鉄所で行われる製造または処理プロセスが、焼結鉱製造プロセス、コークス製造プロセス、転炉脱炭プロセス、高炉プロセスのうちの1つ以上のプロセスであることを特徴とする有機物質の利材化方法。
[vii]上記[i]〜[vi]のいずれかの方法において、回収された有機物質の低分子化改質物を、製鉄所内で燃料および/または還元剤として利用することを特徴とする有機物質の利材化方法。
[viii]上記[vii]の方法において、回収された有機物質の低分子化改質物を高炉に吹き込むことを特徴とする有機物質の利材化方法。
・発明例1
転炉ガスを一時貯留するガスホルダーのガス払出し配管に分岐管を設け、この分岐管を通じて転炉ガスの一部を抜き出すことができるようにした。この分岐管の下流側には流量調節弁、スチーム混合器、予熱器(転炉ガスとスチームの混合ガス用)、シフト反応器(円筒竪型)、改質反応器(外熱式ロータリーキルン)、液体生成物捕集器を備えた改質反応生成ガス冷却用のガス冷却器を、この順に配置した。前記改質反応器の入側には、スクリューコンベア方式の廃プラスチック定量投入装置を設置した。また、シフト反応器の出側配管とガス冷却器の冷却後ガスの出側配管には、サンプリングポートと流量計を設置した。
ガスホルダー中の転炉ガスの平均組成は、H:12vol%、CO:54vol%、CO:17vol%、HO:1vol%、N:16vol%であった。スチーム混合器に対して転炉ガスを74Nm/h、水蒸気として圧力10kg/cmGのスチームを100Nm/h供給し、予熱器で320℃まで昇温した後、シフト反応器(Fe−Cr系高温シフト触媒充填)に導入した。シフト反応器でのシフト反応によって、ガス組成がH:26vol%、CO:2vol%、CO:28vol%、HO:37vol%、N:7vol%のガス(シフト反応生成ガス)が得られた。このシフト反応生成ガスは、流量が172Nm/h(質量流量では170kg/h)、反応器出口ガス温度が430℃であった。
改質反応器である外熱式ロータリーキルンは予め500℃に予熱されており、この改質反応器に、シフト反応生成ガスを導入するとともに、廃プラスチックのモデル物質として粒状に破砕処理したポリエチレンを880kg/hで供給し、計画反応温度である800℃まで昇温させた。800℃に到達後、液体生成物捕集器に捕集されていた液体生成物を払い出し、その後1時間、廃プラスチックの改質反応を継続した。
気体生成物分はガス冷却器による冷却後のガス分析結果から、また、液体生成物分は液体生成物捕集器に捕集された液体生成物の分析結果から、それぞれ生成量と組成を求め、また、気体生成物についてはLHVを求めた。それらの結果を表1に示す。
原料として供給したシフト反応生成ガスとポリエチレンの合計量は1050kg/hであるので、供給原料総量に対する生成率は、気体生成物が36%、液体生成物が62%であった。未反応ポリエチレン量を直接計量することは困難なので、供給したシフト反応生成ガスとポリエチレンの合計量(1050kg/h)に対する、気体生成物(380kg/h)と液体生成物(650kg/h)の合計収率をポリエチレン分解率と定義すると、この発明例1では、ポリエチレン分解率が98%と十分に高い値であること、C25以上の炭化水素の生成がほとんど認められないことから、ポリエチレンは効率的に低分子化されたことは明らかである。有機物質の改質反応によりHO、CO、Hは完全に消費されており、水蒸気改質、炭酸ガス改質、水素化、水素化分解の4反応が同時に進行したものと考えられる。生成した気体生成物のLHVは8.9Mcal/Nmと、転炉ガス(1.9Mcal/Nm)の4.7倍に増熱していた。
Figure 0005835003
ポリエチレンは効率的に低分子化されたものの、上記の気体生成物と液体生成物のほかに、2質量%(20kg/h)と僅かではあるが、固体状残渣が発生した。改質反応を無触媒で行ったので、この残渣は鉄源を含有しない炭素材料に相当する。この残渣をコークス炉で利用する実験を行った。固体状残渣を1トンと原料炭19トンを事前に混合し、これを一つの炭化室に装入した。乾留は通常通りの工程で進行し、何ら問題なくコークスを製造できた。このコークス炉の炭化室あたりの原料炭装入量は20トンなので、原料炭を5%削減できたことになる。
・発明例2〜10
発明例1と同様の設備において、シフト反応器に供給するスチーム流量を種々変化させたこと、並びに改質反応温度を800℃と500℃の2水準とした以外は発明例1と同様にして、転炉ガスのシフト反応とシフト反応生成ガスによるポリエチレンの改質反応実験を行った。その結果を表2と図2〜図6に示す。
図2は、シフト反応生成ガスの水蒸気濃度と、ポリエチレンの改質(反応温度:800℃)におけるガス化率および液化率との関係を示したものである(なお、図中に矢印で示すように、■が「液化率」、◆が「ガス化率」をそれぞれ示している)。ここで、ガス化率とは、供給したシフト反応生成ガスとポリエチレンの合計量(kg/h)に対する気体生成物の生成量(kg/h)の割合であり、気体生成物の定義は表1に示すようにHからC4までとした。同様に、液化率とは、供給したシフト反応生成ガスとポリエチレンの合計量(kg/h)に対する液体生成物の生成量(kg/h)の割合であり、液体生成物の定義は表1に示すようにC5からC24までとした。図3は、シフト反応生成ガスの水蒸気濃度と、ポリエチレンの改質(反応温度:800℃)で得られた気体生成物および液体生成物のLHVとの関係を示したものである(なお、図中に矢印で示すように、■が「液体生成物のLHV」、◆が「気体生成物のLHV」をそれぞれ示している)。ここで、液体生成物のLHVは、液体生成物の気体換算の標準状態における体積当たりのLHVで表した。図4は、シフト反応生成ガスの水蒸気濃度と、ポリエチレンの改質によるポリエチレン分解率との関係を示したもので、特に、反応温度500℃と800℃においてポリエチレン分解率が同等であることを示したものである。図5は、シフト反応生成ガスの炭酸ガス濃度と、ポリエチレンの改質(反応温度:800℃)で得られた気体生成物の水素濃度との関係を示したものである。図6は、シフト反応生成ガスの水素濃度と、ポリエチレンの改質(反応温度:500℃)で得られた気体生成物の炭酸ガス濃度との関係を示したものである。
Figure 0005835003
・発明例11
この実施例で使用した設備の概略を図7に示す。この設備は、底部にガス分散板20を有する縦型の改質反応器2(内容積:約3m)を備えており、この改質反応器2内には、最下層に粒状に破砕処理したポリエチレンaを880kg充填し、その上部に金属製の網b(10メッシュ)を乗せ、さらにその上部にNi触媒c(Ni担持率:10質量%、担体:α−Al)を800kg充填した。シフト反応器1で生成したシフト反応生成ガスは改質反応器2の底部に導入され、ガス分散板20を通じて反応器内に供給され、反応器内を上昇する。改質生成物は改質反応器2の上部から排出され、液体生成物捕集器3にて気体生成物と液体生成物に分離される。分離された気体生成物はガス冷却器4で冷却される。なお、転炉ガスを一時貯留するガスホルダーからシフト反応器1に至るまでの設備構成は、発明例1と同様とした。
以上のような設備を用い、改質反応器2での計画反応温度を750℃とした以外は、発明例1と同様の条件(転炉ガス組成、シフト反応生成ガスを得るまでの条件、シフト反応生成ガス組成・温度・流量など)にしてポリエチレンの改質反応実験を行った。
気体生成物と液体生成物の生成量と組成などを、発明例1と同様の方法で求めた。その結果を表3に示す。発明例1とほぼ同等の反応結果であり、改質反応器2での反応温度を750℃と、発明例1よりも50℃低くできたのは触媒添加の効果であると考えられる。
発明例1と同様、2質量%(20kg/h)と僅かではあるが、固体状残渣が発生した。本発明例ではNi触媒を充填しているので、遠心分離によって固体状残渣と触媒の一次分離を行い、さらに目視によって固体状残渣のみを分離した。したがって、この回収残渣は鉄源を含有しない炭素材料に相当する。なお、固体状残渣の回収率は90%(回収量:0.9トン)であった。発明例1と同様、この残渣をコークス炉で利用する実験を行った。固体状残渣を0.9トンと原料炭19.1トンを事前に混合し、これを一つの炭化室に装入した。乾留は通常通りの工程で進行し、何ら問題なくコークスを製造できた。このコークス炉の炭化室あたりの原料炭装入量は20トンなので、原料炭を4.5%削減できたことになる。
Figure 0005835003
・比較例1
水蒸気と水素濃度がともに低いガスによるポリエチレンの改質反応効率を調べるために、H:1vol%、CO:61vol%、CO:19vol%、HO:1vol%、N:18vol%なる組成の標準ガスを作り、このガスによりポリエチレンの改質反応実験を行った。その結果、温度800℃においてもポリエチレン分解率は16%、ガス化率10%、液化率5%に過ぎず、低分子化はほとんど進行しなかった。
・発明例12
一酸化炭素を含有する冶金炉発生排ガスとして高炉ガスを用いた。高炉ガスの脱硫・乾燥処理後の組成は、H:3vol%、CO:23vol%、CO:21vol%、N:53vol%であったので、以下に述べるPSA法によって窒素分離を行い、一酸化炭素の濃度を高めた。
PSA法による窒素分離では、吸着剤としてCu担持活性炭を400kg充填した吸着塔に、上記高炉ガスを常圧で136Nm/h供給した。脱着は7kPa(絶対圧)で行い、脱着ガス(=一酸化炭素を濃縮した高炉ガス)の組成はH<1vol%、CO:47vol%、CO:37vol%、N:16vol%、流量は58Nm/hであった。この一酸化炭素を濃縮した高炉ガス58Nm/hと水蒸気として圧力10kg/cmGのスチーム73Nm/hをスチーム混合器に供給し、発明例1と同様にしてシフト反応を行った。その結果、ガス組成がH:19vol%、CO:2vol%、CO:35vol%、HO:37vol%、N:7vol%のガス(シフト反応生成ガス)が得られた。このシフト反応生成ガスは、流量が130Nm/h(質量流量では146kg/h)、反応器出口ガス温度が430℃であった。
発明例1と同様の装置を用い、触媒として脱水・乾燥した転炉ダストを50kg/h、発明例1と同様に破砕処理したポリエチレンを880kg/hを供給し、上記のシフト反応生成ガス(146kg/h)により、反応温度を600℃でポリエチレンの低分子化反応を行った。反応結果は、気体生成物の生成量320kg/h(LHV:7.5Mcal/Nm)、液体生成物の生成量650kg/h、ポリエチレン分解率95%であった。
発生した固体状残渣は110kg/hであったが、これには触媒である転炉ダスト(50kg/h)が含まれている。転炉ダスト中の鉄分含有量はFeとして50〜80質量%程度である。計算上、本実施例の固体状残渣は、金属鉄換算で鉄源を23〜36質量%含む炭素材料に相当するが、簡単のため30質量%の金属鉄と70質量%の炭素から成るとした。
この残渣を転炉加炭材として利用する実験を行った。この転炉では加炭材として土状黒鉛を5kg/t-steel使用しているが、実験では4kg/t-steelの土状黒鉛に固体状残渣を1.4kg/t-steel(炭素分として1kg/t-steel)混合したものを加炭材とした。その結果、通常と何ら変わりがなく、問題なく吹錬することができた。
1 シフト反応器
2 改質反応器
3 液体生成物捕集器
4 ガス冷却器
20 ガス分散板
a ポリエチレン
b 網
c Ni触媒

Claims (11)

  1. 冶金炉で発生した一酸化炭素を含有する排ガス(g)に過剰の水蒸気を添加してシフト反応を行わせることで、シフト反応で生成した水素および炭酸ガスと、シフト反応に消費されなかった水蒸気とを含む混合ガス(g)とし、この混合ガス(g)を有機物質に接触させることにより、有機物質を改質して低分子化する反応を生じさせ、該反応により生じた有機物質の低分子化改質物と固体状残渣を回収し、該固体状残渣を炭素材料として利材化することを特徴とする有機物質の利材化方法。
  2. 冶金炉で発生した一酸化炭素を含有する排ガス(g)に過剰の水蒸気を添加してシフト反応を行わせることで、シフト反応で生成した水素および炭酸ガスと、シフト反応に消費されなかった水蒸気とを含む混合ガス(g)とし、この混合ガス(g)を鉄系触媒の存在下、有機物質に接触させることにより、有機物質を改質して低分子化する反応を生じさせ、該反応により生じた有機物質の低分子化改質物と固体状残渣を回収し、該固体状残渣を鉄源を含有する炭素材料として利材化することを特徴とする有機物質の利材化方法。
  3. 鉄系触媒が転炉ダストであることを特徴とする請求項2に記載の有機物質の利材化方法。
  4. 排ガス(g)が、冶金炉で発生した一酸化炭素と窒素を含有する排ガスから窒素の少なくとも一部を分離することで一酸化炭素濃度を高めた排ガスであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機物質の利材化方法。
  5. 混合ガス(g)の水蒸気濃度が5〜70vol%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機物質の利材化方法。
  6. 混合ガス(g)は、水蒸気濃度が20〜70vol%、水素濃度が10〜40vol%、炭酸ガス濃度が10〜40vol%であることを特徴とする請求項5に記載の有機物質の利材化方法。
  7. 改質される有機物質が、廃プラスチック、含油スラッジ、廃油、バイオマスの中から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の有機物質の利材化方法。
  8. 固体状残渣を、製鉄所で行われる製造または処理プロセスにおいて炭素材料として利用することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の有機物質の利材化方法。
  9. 製鉄所で行われる製造または処理プロセスが、焼結鉱製造プロセス、コークス製造プロセス、転炉脱炭プロセス、高炉プロセスのうちの1つ以上のプロセスであることを特徴とする請求項8に記載の有機物質の利材化方法。
  10. 回収された有機物質の低分子化改質物を、製鉄所内で燃料および/または還元剤として利用することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の有機物質の利材化方法。
  11. 回収された有機物質の低分子化改質物を高炉に吹き込むことを特徴とする請求項10に記載の有機物質の利材化方法。
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