JP2019147871A - 有機物質の熱分解方法及び熱分解設備 - Google Patents

有機物質の熱分解方法及び熱分解設備 Download PDF

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Abstract

【課題】有機物質を熱分解して熱分解生成物を得る際に、ガス状物質の収率を高めることができる有機物質の熱分解方法を提供する。【解決手段】流動化ガスとしてH2及びCO2を含む混合ガス(g)が導入される流動層式の反応器Aにおいて、有機物質を混合ガス(g)と接触させることで熱分解させる際に、反応器Aから取り出された油状物質の少なくとも一部を、反応器Aの側壁部を貫通して設置された吹込み管Cを通じて流動層f内に吹き込み、熱分解させる。反応器Aから取り出された油状物質をそのまま還流管などで反応器Aに還流させると、炭素の鎖状構造が切断されて低分子化する前に揮発してしまうが、吹込み管Cで流動層f内に直接吹込むことで反応器A内での滞留時間が長くなり、揮発前に炭素の鎖状構造が切断されてガス状物質となり、このためガス状物質の収率が向上する。【選択図】図1

Description

本発明は、廃プラスチックなどの有機物質を熱分解してガス状物質などに転換するための有機物質の熱分解技術に関する。
廃プラスチック、含油スラッジ、廃油などの多くは焼却処理されているのが現状である。しかし、焼却処理ではCO発生などの環境負荷が高く、また、焼却炉の熱的損傷の問題もあり、ケミカルリサイクル技術の確立が求められている。
ケミカルリサイクル技術のなかでも、有機物質を気体燃料や液体燃料に転換するための技術は、廃プラスチックを中心に従来から種々検討がなされ、例えば、以下のような提案がなされている。
特許文献1には、水素濃度60vol%以上、好ましくは80vol%以上、温度600℃以上のコークス炉ガス(COG)を廃プラスチックなどの有機物質と反応させることにより、有機物質を高効率で水素化分解・ガス化し、COGを増熱化する方法が開示されている。
また、特許文献2には、ガス化溶融炉で発生した一酸化炭素と水素を含有する排ガスを利用し、この排ガスに過剰の水蒸気を添加してシフト反応を行わせ、このシフト反応生成ガスを有機物質に接触させることで、有機物質を改質して低分子化(熱分解)する方法が開示されている。
また、特許文献3には、冶金炉で発生した一酸化炭素を含有する排ガスを利用し、この排ガスに過剰の水蒸気を添加してシフト反応を行わせ、このシフト反応生成ガスを有機物質に接触させることで、有機物質を改質して低分子化(熱分解)するとともに、改質反応器から出た低分子化生成物(熱分解生成物)のうち、液体生成物を改質反応器に還流させて再熱分解し、ガス化率を向上させるようにした方法が開示されている。
特開2007−224206号公報 特許第5679088号公報 特開2013−173884号公報
しかしながら、上記従来技術には、以下のような問題がある。
まず、特許文献1に関しては、有機物質のガス化率がきわめて高くなることが特徴であるが、COG中の水素濃度が60vol%以上となるのは石炭乾留工程のうちでも乾留末期に限られるので、特許文献1の方法では、乾留末期のタイミングでガス流路を切替え、多量のダストを含む600℃以上のCOGを廃プラスチックの水素化分解反応器に供給する必要がある。しかし、このような過酷な条件で、流路切替弁を長期間安定して作動させ続けることは困難であり、この意味で実現性に乏しい技術であると言える。さらに、廃プラスチックの効率的なガス化のためには、60vol%以上の水素を含有するCOGを連続的に水素化分解反応器に供給することが必要であるが、このためには炭化室毎に水素濃度計と流路切替弁を設置する必要があり、設備コストが増大する。
また、特許文献2の方法は、設備的には比較的温和な条件で反応がなされるため、実施が容易であることや設備コストを低減できる利点を有するものの、得られる熱分解生成物は油状物質の割合が多くなり、ガス状物質の収率が低いという課題がある。油状物質は、使用場所までの輸送を考慮した場合、粘性を保つために保温が必要であるなどハンドリング性が悪い。このため有機物質の熱分解では、可能な限りガス状物質の収率を高めることが望まれる。
そのような課題に対して、特許文献3の方法では、気体生成物の収率を高めるために、改質反応器から出た熱分解生成物のうち、液体生成物を改質反応器に還流させて再熱分解させているが、本発明者らが検証実験を実施したところ、特許文献3の方法のように液体生成物を改質反応器に還流させても、その大部分が揮発するのみで熱分解が進まず、再び常温で液状となる物質として回収されてしまうことが判った。
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、廃プラスチックなどの有機物質を熱分解して熱分解生成物を得る際に、気体生成物(常温で気体である熱分解生成物)の収率を高めることができる有機物質の熱分解方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、そのような有機物質の熱分解方法の実施に好適な設備を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため検討を重ねた結果、流動層式の反応器において、反応器から取り出された熱分解生成物のうちの液体生成物を反応器に還流させて再熱分解を行う際に、液体生成物を反応器の側壁部を貫通して設置された吹込み管を通じて流動層内に直接吹き込むことにより、気体生成物(常温で気体である熱分解生成物)に効率的に熱分解させることができ、これにより気体生成物(常温で気体である熱分解生成物)の収率を高めることができること、特に、流動化ガスとして反応器に導入される混合ガスの一部を、液体生成物とともに吹込み管を通じて流動層内に吹き込むことにより、気体生成物(常温で気体である熱分解生成物)の収率を飛躍的に高めることができることを見出した。
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
[1]流動化ガスとして少なくとも水素及び二酸化炭素を含む混合ガス(g)が導入される流動層式の反応器(A)において、有機物質を混合ガス(g)と接触させることにより熱分解させる方法であって、
反応器(A)から取り出された有機物質の熱分解生成物のうち、常温で液体である熱分解生成物(x)の少なくとも一部を、液体の状態で、反応器(A)の側壁部を貫通して設置された吹込み管(C)を通じて流動層(f)内に吹き込み、反応器(A)内で熱分解させることを特徴とする有機物質の熱分解方法。
[2]上記[1]の熱分解方法において、流動化ガスとして反応器(A)に導入される混合ガス(g)の一部を、液状の熱分解生成物(x)とともに吹込み管(C)を通じて流動層(f)内に吹き込むことを特徴とする有機物質の熱分解方法。
[3]上記[2]の熱分解方法において、吹込み管(C)が単管構造又は内管と外管からなる二重管構造を有し、単管構造を有する吹込み管(C)の場合には、混合ガス(g)と液状の熱分解生成物(x)を単管から混合状態で吹き込み、二重管構造を有する吹込み管(C)の場合には、内管と外管のうちの一方から混合ガス(g)を、他方から液状の熱分解生成物(x)を、それぞれ吹き込むことを特徴とする有機物質の熱分解方法。
[4]上記[2]又は[3]の熱分解方法において、吹込み管(C)の設置高さよりも上部側の領域での反応器内空塔速度をu(m/sec)、下部側の領域での反応器内空塔速度をu*(m/sec)とした場合、吹込み管(C)を通じて反応器(A)内に吹き込む混合ガス(g)の流速u(m/sec)を、下記(1)式及び(2)式を満足するように制御することを特徴とする有機物質の熱分解方法。
≧u …(1)
*≧u/2 …(2)
[5]上記[1]〜[4]のいずれかの熱分解方法において、有機物質が廃プラスチック、含油スラッジ、廃油、バイオマスの中から選ばれる1種以上であることを特徴とする有機物質の熱分解方法。
[6]上記[1]〜[5]のいずれかの熱分解方法において、混合ガス(g)は、さらに水蒸気を含むことを特徴とする有機物質の熱分解方法。
[7]上記[6]の熱分解方法において、混合ガス(g)は、水蒸気濃度が20〜70vol%、水素濃度が10〜40vol%、二酸化炭素濃度が10〜40vol%であることを特徴とする有機物質の熱分解方法。
[8]上記[1]〜[7]のいずれかの熱分解方法において生成した、常温で気体である熱分解生成物を有用ガス状物質として回収することを特徴とするガス状物質の製造方法。
[9]流動化ガスとして少なくとも水素及び二酸化炭素を含む混合ガス(g)が導入される流動層式の反応器であって、有機物質を混合ガス(g)と接触させることにより熱分解させる反応器(A)と、
該反応器(A)から排出された、有機物質の熱分解生成物を含むガス(g)を常温又は常温近傍まで冷却し、ガス(g)に含まれる有機物質の熱分解生成物の一部を液化させてガス(g)から分離する分離装置(B)と、
反応器(A)の側壁部を貫通して設置され、分離装置(B)でガス(g)から分離された液状の熱分解生成物(x)の少なくとも一部を流動層(f)内に吹き込む吹込み管(C)を有することを特徴とする有機物質の熱分解設備。
[10]上記[9]の熱分解設備において、分離装置(B)が散水式の装置からなる熱分解設備であって、
さらに、分離装置(B)で分離された液状の熱分解生成物(x)から水分を除去する水分除去装置(D)と、該水分除去装置(D)で水分が除去された液状の熱分解生成物(x)の少なくとも一部を吹込み管(C)に供給する供給手段(E)を有することを特徴とする有機物質の熱分解設備。
[11]上記[9]又は[10]の熱分解設備において、さらに、流動化ガスとして反応器(A)に導入される混合ガス(g)の一部を吹込み管(C)に供給する供給手段(F)を有し、該供給手段(F)で吹込み管(C)に供給された混合ガス(g)が、液状の熱分解生成物(x)とともに流動層(f)内に吹き込まれるようにしたことを特徴とする有機物質の熱分解設備。
[12]上記[11]の熱分解設備において、吹込み管(C)が単管構造又は内管と外管からなる二重管構造を有し、単管構造を有する吹込み管(C)の場合には、混合ガス(g)と液状の熱分解生成物(x)が単管から混合状態で吹き込まれ、二重管構造を有する吹込み管(C)の場合には、内管と外管のうちの一方から混合ガス(g)が、他方から液状の熱分解生成物(x)が、それぞれ吹き込まれるようにしたことを特徴とする有機物質の熱分解設備。
本発明によれば、廃プラスチックなどの有機物質を熱分解して熱分解生成物を得る際に、気体生成物(常温で気体である熱分解生成物)の収率を効果的に高めることができる。また、実施設備に関しても、特別な計測器や流路切替弁などが必要なく、しかも比較的低い反応温度でも有機物質の熱分解を行うことができるので、比較的簡易な設備で実施することができる。また、熱分解に使用するガスは製鉄所やごみ処理場などで安定的に供給可能なガスを用いればよく、このようなガスを用いて有機物質を効率的に熱分解し、気体生成物(常温で気体である熱分解生成物)の割合が高い熱分解生成物を得ることができる。
本発明による有機物質の熱分解方法のフロー及び熱分解設備の一実施形態を模式的に示す全体構成図 図1の熱分解設備において、有機物質の熱分解生成物を含むガス(g)を常温又は常温近傍まで冷却し、ガス(g)に含まれる有機物質の熱分解生成物の一部を液化させてガス(g)から分離する分離装置Bを模式的に示す構成図(縦断面図) 図1の熱分解設備において、液状の熱分解生成物と水分とを分離するための水分除去装置Dを模式的に示す構成図(縦断面図) 本発明において、液状の熱分解生成物を反応器A内に吹き込む吹込み管Cの種々の実施形態を模式的に示す構成図(縦断面図) 本発明において、吹込み管Cの設置高さよりも上部側の領域での反応器内空塔速度uと、下部側の領域での反応器内空塔速度u*と、吹込み管Cを通じて反応器A内に吹き込む混合ガス(g)の流速uを示す説明図
本発明法は、流動化ガスとして少なくとも水素及び二酸化炭素を含む混合ガス(g)が導入される流動層式の反応器Aにおいて、有機物質を混合ガス(g)と接触させることにより熱分解させる方法であって、反応器Aから取り出された有機物質の熱分解生成物のうち、常温で液体である熱分解生成物(x)の少なくとも一部を、液体の状態で、反応器Aの側壁部を貫通して設置された吹込み管Cを通じて流動層f内に吹き込み、反応器A内で熱分解させるものである。また、好ましくは、流動化ガスとして反応器Aに導入される混合ガス(g)の一部を、液状の熱分解生成物(x)とともに吹込み管Cを通じて流動層f内に吹き込むものである。なお、以下の説明では、有機物質の熱分解生成物のうち、常温で液体である熱分解生成物(x)を「油状物質」、常温で気体である熱分解生成物を「ガス状物質」という。
上記のように、反応器Aから取り出された熱分解生成物のうち、油状物質を反応器Aに還流させて再熱分解を行う際に、吹込み管Cを通じて流動層f内に直接吹き込んで熱分解させることにより、油状物質をガス状物質に効率的に熱分解させることができ、これによりガス状物質の収率を高めることができる。また、特に、流動化ガスとして反応器Aに導入される混合ガス(g)の一部を、油状物質とともに吹込み管Cを通じて流動層f内に吹き込むことにより、ガス状物質の収率を飛躍的に高めることができる。
本発明において有機物質の熱分解に用いる、少なくとも水素及び二酸化炭素を含む混合ガス(g)としては、例えば、ガス化溶融炉や製鉄プロセスで発生するガス、或いはこれらのガスを改質したものを用いることができる。すなわち、ガス化溶融炉や製鉄プロセスで発生するガスが所定のガス組成を満足する場合は、そのまま使用すればよいが、例えば、転炉ガスのように一酸化炭素リッチで水素が少ないガスを使用する場合には、過剰の水蒸気を添加してシフト反応を行わせればよい。これにより、もともと含まれていた水素と、シフト反応で生成した二酸化炭素および水素と、シフト反応に消費されなかった水蒸気とを含む混合ガスが生成され、有機物質の熱分解に適したガス組成とすることができる。
ここで、ガス化溶融炉とは、ごみを低酸素状態で加熱することで熱分解させ、この熱分解で発生したガスを燃焼又は回収するとともに、灰分及び不燃物を高温で溶融する炉設備であり、熱分解と溶融を一体で行う方式と、分離して行う方式とがある。具体的には、ガス化改質方式(例えば、サーモセレクト方式など)、シャフト炉方式(例えば、コークスベッド式、酸素式、プラズマ式など)、キルン炉方式、流動床方式、半乾留・負圧燃焼方式などがある。本発明では、いずれの方式のガス化溶融炉で発生した排ガスを用いてもよく、また、2種以上の排ガスが混合されたものを用いてもよい。ガス化溶融炉で発生する排ガスとしては、例えば、二酸化炭素濃度が20〜60vol%、水素濃度が60〜20vol%である二酸化炭素と水素を含有する排ガス、一酸化炭素濃度が10〜50vol%、水素濃度が50〜10vol%である一酸化炭素と水素を含有する排ガスが挙げられ、これらの排ガスをそのまま或いは所定のガス組成に改質した上で、有機物質の熱分解用の混合ガス(g)として用いることができる。
また、製鉄プロセスにおける転炉ガスや高炉ガスなども利用可能なガスであり、上述のように水素が不足するガスの場合には、いわゆるシフト反応によって水素が生成するため、水素濃度が10vol%程度であっても本発明の混合ガス(g)として好適な組成となる。
一般に廃プラスチックなどの高分子量有機物質は300〜400℃以上で加熱すると熱分解が始まることが知られているが、この時、軽質化とともに重質化も進行してしまう。熱分解時に水素を共存させると、炭化水素種への水素付加反応と水素化分解反応が進行するため、重質化抑制と低分子化に有効である。しかしながら、水素化分解には高温が必要であり、且つ水素消費量が多くなることが問題である。
一方、水蒸気改質や炭酸ガス改質は、HOやCO分子中の酸素による炭化水素の酸化と看做すことができ、少ない水素添加量で低分子化と炭素質生成抑制が達成できる。さらに、水蒸気改質や炭酸ガス改質は、改質される有機分子の炭素鎖が長くなるにつれて反応温度が低下するという特徴を有する。これら水素化、水素化分解、水蒸気改質、および炭酸ガス改質を組み合わせることにより、比較的低い反応温度でも効率的に有機物質の低分子化を促進することが可能になる。
したがって、本発明で用いる混合ガス(g)は、水素及び二酸化炭素に加えて、水蒸気を含有することが好ましい。
本発明で用いられる有機物質を炭化水素(C)で示すと、上述の反応は、以下に示す反応式で表すことができる。
水素化:C+H→Cn+2
水素化分解:C+H→C+C(m=p+r、n+2=q+s)
水蒸気改質:C+HO→Cm−1n−2+CO+2H
炭酸ガス改質:C+CO→Cm−1n−2+2CO+H
ただし、水素化には下記のCO、COのメタネーション反応も含まれる。
CO+3H→CH+HO、CO+4H→CH+2H
なお、水蒸気改質や炭酸ガス改質で生成したHによっても、上記の水素化や水素化分解が進行する。
また、一酸化炭素を含有するガスに水蒸気を添加して、下記(i)のシフト反応を行えば、COをHとCOに変換できるので、本発明で用いる混合ガス(g)として好適なものとなる。
CO+HO→H+CO …(i)
ガス化溶融炉で発生する排ガスや製鉄所で発生するガスには一酸化炭素を多く含むものがあるため、この方法によれば、一酸化炭素と水蒸気のシフト反応を制御することで、熱分解用として好適な混合ガスを得ることができる。
特に、一酸化炭素を含有する排ガスに水蒸気を過剰に添加すると、生成ガス中に水蒸気が残留するため水蒸気改質反応を利用することができるようになる。つまりシフト反応の反応率を適宜制御することによって、ガス中の水蒸気、水素、炭酸ガスの各濃度を制御し、有機物質熱分解用として好適なガス組成の混合ガス(g)とすることができる。
シフト反応の反応率は、シフト反応器内での滞留時間を調整することで制御することができる。例えば、滞留時間を短くするには、シフト反応器長さを小さくしたり、或いは触媒充填量を少なくする方法が一般的であり、その場合、シフト反応器長さや触媒充填量は、ほぼ平衡まで反応を進行させる場合の1/2〜1/4程度とすればよい。
サーモセレクト方式のガス化溶融炉から発生する排ガスには、通常、COが20〜40vol%、COが40〜20vol%、Hが20〜40vol%程度含有されている。したがって、このような二酸化炭素と水素を含有する排ガスに適量の水蒸気を混合するだけで、CO:15〜20vol%、CO:10〜35vol%、H:15〜20vol%、HO:20〜50vol%程度の組成となり、有機物質熱分解用の混合ガス(g)として好適なものとなる。
また、製鉄所で発生する高炉ガスや転炉ガスについても、同様のシフト反応を利用することで、有機物質熱分解用として好適なガス組成に改質することができる。
なお、混合ガス(g)として、上述したようなシフト反応で生成したガスを用いる場合において、反応器Aに投入する有機物質が水を含んでいる場合には、反応器A内で水蒸気が発生するので、その分を考慮してシフト反応で添加する水蒸気の過剰割合を調整することが好ましい。
本発明において、熱分解の対象となる有機物質に特別な制限はないが、高分子量の有機物質が好適であり、例えば、廃プラスチック、含油スラッジ、廃油、バイオマスなどが挙げられ、これらの1種以上を対象とすることができる。
対象とする廃プラスチックの種類に特別な制限はないが、例えば、産業廃棄物系、容器包装リサイクル法の対象プラスチックなどを挙げることができる。より具体的には、PEやPPなどのポリオレフィン類、PAやPETなどの熱可塑性ポリエステル類、PSなどのエラストマー類、熱硬化性樹脂類、合成ゴム類や発砲スチロールなどを挙げることができる。なお、多くのプラスチック類にはフィラーなどの無機物が添加されているが、本発明では、このような無機物は反応に関与しないので、固体状残渣として反応器Aから排出される。また、廃プラスチックは、必要に応じて適当なサイズに事前裁断された後、反応器Aに投入される。
また、廃プラスチックがポリ塩化ビニルなどの塩素含有樹脂を含んでいると、反応器A内で塩素が発生し、この塩素がガス状物質や油状物質中に含有されてしまう恐れがある。したがって、廃プラスチックが塩素含有樹脂を含む恐れがある場合には、反応器A内にCaOなどのような塩素吸収剤を投入し、塩素分が生成するガス状物質や油状物質中に含有されないようにすることが好ましい。
含油スラッジとは、含油廃液処理工程で発生する汚泥状の混合物のことであり、一般に30〜70質量%程度の水分を含んでいる。スラッジ中の油分としては、例えば、各種鉱物油、天然及び/又は合成油脂類、各種脂肪酸エステル類などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、反応器Aに含油スラッジを供給する際などのハンドリング性を向上させるために、遠心分離などの手法により、スラッジ中の水分を30〜50質量%程度まで低減させてもよい。
廃油としては、例えば、使用済みの各種鉱物油、天然及び/又は合成油脂類、各種脂肪酸エステル類などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これら2種以上の廃油の混合物であってもよい。また、製鉄所の圧延工程で発生する廃油の場合、一般に多量(通常、80質量%超程度)の水分を含有しているが、この水分についても、比重分離などの手法によって事前に低減させておくことが、ハンドリング性の面で有利である。
バイオマスとしては、例えば、下水汚泥、紙、木材(建設廃材、間伐材など)、農作物由来の廃棄物(例えば、籾殻、茶殻、コーヒー殻(滓)など)などの他、ゴミ固形燃料(RDF)などの加工されたバイオマスなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。バイオマスには、通常、多量の水分が含有されているので、事前に乾燥させておくことがエネルギー効率の点から好ましい。また、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属を比較的高濃度に含むバイオマスの場合、反応器A内でアルカリ金属が析出する可能性があるので、水洗などの方法によって事前にアルカリ金属を溶出させておくことが好ましい。なお、建設廃材などの大型のバイオマスは、事前に裁断して反応器Aに投入される。
反応器A内での反応温度は400〜800℃程度が望ましく、600〜700℃程度がより望ましい。反応温度が400℃未満では有機物質の熱分解が進みにくく、ガス状物質の収率が低くなる。一方、反応温度が800℃を超えると熱分解生成物のガス状物質のうちC1〜C4化合物の熱分解が進んでCOやCOが生成され、ガス状物質の発熱量が低下し、気体燃料としての価値が低下する。
なお、反応温度が高いとガス状物質の生成量が増加し、油状物質の生成量が減少する傾向があるが、反応温度が低い方がエネルギーコストは小さくなるため、できるだけ低温での反応が有利である。圧力の影響はほとんど認められないので、常圧〜数kg/cm程度の微加圧で反応器Aを運転することが経済的である。
本発明では、反応器Aとして、熱伝導に優れるため有機物質を高い熱分解速度で熱分解することができる流動層式の反応器を用い、この流動層式の反応器A内に投入された有機物質を混合ガス(g)と接触させることにより熱分解させる。そして、反応器Aから取り出された有機物質の熱分解生成物のうち、油状物質の少なくとも一部を反応器Aに還流させるに当たり、ガス状物質の収率を高めるため、反応器Aの側壁部を貫通して設置された吹込み管Cを通じて油状物質を流動層f内に吹き込む。なお、反応器Aに還流させる油状物質は、反応器Aから取り出された油状物質の一部でもよいし、全部でもよい。
反応器Aから取り出される油状物質は、通常、C10〜C12を主成分として、C5〜C24の炭化水素からなり、ナフサ(C5〜C8)、灯油(C9〜C12)、軽油(C13〜C24)の混合物であり、重油相当(C25以上)をほとんど含まない良質の軽質油である。したがって、そのまま回収して液体燃料などとして使用することが可能であるが、輸送の利便性や燃焼性などを観点からすると、ガス状物質の収率を高めることが望ましい。
上述したような混合ガス(g)を用い、反応温度を400〜800℃として、有機物質の熱分解実験を実施したところ、ガス状物質の収率は概ね3〜4割程度であり、油状物質の収率が6〜7割程度であった。油状物質を分析すると、C10〜C12を主成分とした炭化水素であった。高分子である有機物質は反応器内で熱分解が進み、C10〜C12程度に分解されると揮発して反応器外に排出され、常温に冷却されると油状物質になるものと推定された。この油状物質を反応器上部から滴下して還流させてもほとんど熱分解されず揮発してしまい、ふたたび常温で油状物質となるため、還流量が少量ではガス状物質の収率向上にはつながらず、収率向上のためには大量の油状物質を還流(循環)させることが必要であることが判った。
そこで、反応器Aから回収した油状物質を、反応器Aの側壁部を貫通して設置された吹込み管Cを通じて流動層f内に吹き込むことで反応器Aに還流させたところ、油状物質が熱分解され、ガス状物質の収率を向上させることができた。これは、C10〜C12程度の油状物質をそのまま反応器に還流させると、炭素の鎖状構造が切断されて低分子化する前に揮発してしまうのに対して、反応器Aの流動層f内に直接吹込みをすることで反応器A内での滞留時間が長くなり、揮発前に炭素の鎖状構造が切断されてガス状物質となり、その結果、C1〜C4のガス状物質の収率が向上するものと考えられる。
すなわち、油状物質が反応器Aの流動層f内に直接還流され加熱される場合、流動媒体との接触が良好であり、油状物質および揮発した油状物質と流動媒体とが接触する際に熱分解が進行するため、ガス状物質の収率が向上するものと考えられる。
また、油状物質を吹込み管Cを通じて流動層f内に吹き込む際に、流動化ガスとして反応器Aに導入される混合ガス(g)の一部を吹込み管Cに供給し、この混合ガス(g)を油状物質とともに流動層f内に吹き込むことにより、(i)油状物質とガス化剤である混合ガス(g)とが近接した状態で流動層f内に供給されること、(ii)油状物質が混合ガス(g)とともに吹き込まれることにより流動層f内で拡散しやすくなること、により流動層f内での油状物質の熱分解が効率的に生じ、ガス状物質の収率が飛躍的に高められる。
図1〜図3は、本発明による有機物質の熱分解方法のフロー及び熱分解設備の一実施形態を模式的に示すものであり、図1は全体構成図、図2は図1中の分離装置Bを模式的に示す構成図(縦断面図)、図3は図1中の水分除去装置Dを模式的に示す構成図(縦断面図)である。
この実施形態の熱分解設備は、流動化ガスとして少なくとも水素及び二酸化炭素を含む混合ガス(g)が導入される流動層式の反応器であって、有機物質を混合ガス(g)と接触させることにより熱分解させる反応器Aと、この反応器Aから排出された、有機物質の熱分解生成物を含むガス(g)を常温又は常温近傍まで冷却し、ガス(g)に含まれる有機物質の熱分解生成物の一部を液化させてガス(g)から分離する分離装置Bと、反応器Aの側壁部を貫通して設置され、分離装置Bでガス(g)から分離された液状の熱分解生成物(x)(油状物質)の少なくとも一部を流動層f内に吹き込む吹込み管Cを備える。さらに、この実施形態では、散水式の分離装置Bで分離された油状物質から水分を除去する水分除去装置Dと、この水分除去装置Dで水分が除去された油状物質の少なくとも一部を吹込み管Cに供給する供給手段E(油分還流管11)を有するとともに、流動化ガスとして反応器Aに導入される混合ガス(g)の一部を吹込み管Cに供給する供給手段F(ガス分岐管17)を備える。
流動層式の反応器A(熱分解炉)内の分散板1上には、流動層fを構成する流動媒体が充填されている。分散板1の下方の風箱2には、ガス供給管3を通じて流動化ガスとして混合ガス(g)が導入され、この混合ガス(g)が分散板1から吹き出すことにより、流動媒体による流動層fが形成される。また、反応器Aの上部には有機物質の供給管4が接続され、貯留槽5から定量切出装置6によって切り出された有機物質が、この供給管4を通じて反応器A内に定量供給される。なお、供給管4には、反応器A内のガスが貯留槽5に流出しないようするための弁機構などが設けられる。
反応器Aは、反応温度までの昇温やガス化に伴う吸熱反応の熱補償のため、ヒーター7で加熱される。なお、反応器Aの加熱手段の形式は任意であり、例えば、流動媒体の一部を反応器Aの外部に取り出してキルンなどの加熱炉で加熱し、この加熱された流動媒体を再び反応器A内に戻す循環式加熱システムを用いてもよい。
所定温度に昇温され且つ流動層fが形成された反応器A内に供給管4を通じて有機物質が定量供給され、有機物質の熱分解が開始される。反応器A内で生成した有機物質の熱分解生成物(ガス状物質及びガス化した油状物質)を含むガス(g)は、ガス取出管8で反応器Aから取り出され、分離装置Bに送られる。なお、反応器Aから取り出されるガス(g)には、通常、混合ガス(g)の未反応ガス成分が含まれる。
分離装置Bでは油状物質がガスから分離されるが、本実施形態の分離装置Bは、図2に示すような散水式のもので構成されている。この分離装置Bでは、高温のガス(g)に水供給管12により供給される水をノズル13から散水することにより、ガス(g)の温度は常温付近まで冷却され、有機物質の熱分解生成物のうち常温で液体である熱分解生成物が液化して油状物質となる。すなわち、ガス(g)から油状物質が分離される。分離装置Bで油状物質が分離されたガス(ガス状物質)は、製品ガスとしてガス輸送管9により系外に輸送され、種々の用途に利用される。
一方、油状物質は油分輸送管10により水分除去装置Dに送られ、ここで油状物質と水分の分離が行われる。図3に示す本実施形態の水分除去装置Dは、分離装置Bにおいて散水に用いた水と油状物質を分離するための比重分離槽14を備えており、この比重分離槽14に油分輸送管10を通じて油状物質が水とともに供給される。比重分離槽14内では、比重の大きい水が沈み、比重の小さい油状物質が浮上することにより油水分離を行う。比重分離槽14内で浮上した油状物質はオーバーフローさせて回収し、沈んだ水は水回収バルブ15により抜き出され、水回収管16を通じて水処理装置(図示しない)等へ輸送され、必要に応じて分離装置Bにて再利用される。
比重分離槽14からオーバーフローさせて回収された油状物質は、供給手段Eである油分還流管11を通じて吹込み管Cに供給され、この吹込み管Cから反応器Aの流動層f内に吹き込まれるが、本実施形態では、ガス供給管3から分岐したガス分岐管17(供給手段F)を通じて混合ガス(g)の一部が吹込み管Cに供給され、油状物質ともに吹込み管Cから流動層f内に吹き込まれる。
吹込み管Cは、ランス式の管体であり、反応器Aの側壁部を水平に貫通して設置されている。この吹込み管Cは、油状物質を反応器A(流動層f)の中心領域に送り込むことで、流動層f全体に拡散させるようするため、その先端側が反応器Aの中心方向に延出(突出)している。この吹込み管Cの突出長に特別な制限はないが、突出長が長すぎると吹込み管の摩耗等が生じ、吹込み管の寿命が短くなり、突出長が短すぎると反応器壁面に付着物が堆積することもあるため、反応器Aの内径をR、吹込み管Cの炉内への突出長をrとしたとき、0.01≦r/R≦0.3程度とするのが望ましい。
反応器Aに対して吹込み管Cは1本以上設けることができ、2本以上設ける場合には、反応器Aの周方向で適宜間隔をおいて設けることが好ましい。吹込み管Cを複数本設ける場合、例えば、2〜16本程度の吹込み管Cを反応器Aの周方向でほぼ等間隔で設けることができる。
吹込み管Cとしては、例えば、(i)単管構造を有し、混合ガス(g)と油状物質を単管から混合状態で吹き込むもの、(ii)内管と外管からなる二重管構造を有し、内管と外管のうちの一方から混合ガス(g)を、他方から油状物質を、それぞれ吹き込むもの、などを用いることができる。
図4は、そのような吹込み管Cの種々の実施形態を模式的に示す構成図(縦断面図)である。図4(1)に示す吹込み管Cは単管構造のものであり、単管20の後端に油分還流管11とガス分岐管17がそれぞれ接続され、ガス分岐管17から供給された混合ガス(g)と油分還流管11から供給された油状物質が管内で混合され、混合状態で流動層f内に吹き込まれるようにしてある。また、図4(2)に示す吹込み管Cは、図4(1)と同様に単管構造のものであるが、反応器A内は高温雰囲気であるため、ランス保護のために水冷構造としたものであり、単管20の外側に冷却水流路用の管体23を設け、この管体23に冷却水供給管18を接続したものである。
また、図4(3)に示す吹込み管Cは、内管21と外管22からなる二重管構造のものであり、内管21の後端にガス分岐管17が、外管22の後端に油分還流管11がそれぞれ接続され、ガス分岐管17により供給された混合ガス(g)が内管21の先端から、油分還流管11により供給された油状物質が外管22の先端から、それぞれ噴射され、吹込み管Cの先端で混合した状態で流動層f内に吹き込まれるようにしてある。また、図4(4)に示す吹込み管Cは、図4(3)と同様に二重管構造のものであるが、ランス保護のために水冷構造としたものであり、外管22の外側に冷却水流路用の管体23を設け、この管体23に冷却水供給管18を接続したものである。
なお、図4(3)、(4)に示すような二重管構造を有する吹込み管Cでは、内管21から混合ガス(g)を、外管22から油状物質を、それぞれ吹き込むようにしてもよい。
なお、例えば図4(3)、(4)のように油状物質を単独で吹込む場合には、送液用のポンプ(図示せず)が用いられる。また、例えば図4(1)、(2)のように油状物質を気体を同時に吹込む場合には、送液用のポンプ(図示せず)を用いてもよいし、気体によるエジェクター作用などを利用してもよい。
本実施形態のように、油状物質を混合ガス(g)とともに吹込み管Cから流動層fに吹き込むことにより、(i)油状物質とガス化剤である混合ガス(g)とが近接した状態で流動層f内に供給されること、(ii)油状物質が混合ガス(g)とともに吹き込まれることにより流動層f内で拡散しやすくなること、により流動層f内での油状物質の熱分解が効率的に生じ、ガス状物質の収率が飛躍的に高められる。
本発明者らは、吹込み管Cを通じて反応器A内に吹き込む混合ガス(g)の流速について検討した結果、吹込み管Cの設置高さよりも上部側の領域での反応器内空塔速度をu(m/sec)、下部側の領域での反応器内空塔速度をu*(m/sec)とした場合、吹込み管Cを通じて反応器A内に吹き込む混合ガス(g)の流速u(m/sec)を、下記(1)式及び(2)式を満足するように制御することが好ましく、これよりガス状物質の収率をより向上させることができることを見出した。
≧u …(1)
*≧u/2 …(2)
図5は、吹込み管Cの設置高さよりも上部側の領域での反応器内空塔速度uと、下部側の領域での反応器内空塔速度u*と、吹込み管Cを通じて反応器A内に吹き込む混合ガス(g)の流速uを示している。
吹込み管Cから反応器A内に導入する混合ガス(g)の流速uが小さすぎると、流動層f内に油状物質が十分に拡散せず(吹込み管先端付近に油状物質の濃度が極端に高い領域が形成される)、油状物質と流動媒体や流動化ガスとの接触が不十分となり、結果としてガス状物質の収率の向上効果は小さくなる。一方、吹込み管Cから導入する混合ガスの流速uを高めるためには、ガス分岐管17(供給手段F)を通じて吹込み管Cに供給する混合ガス(g)の量を増やす必要があるが、これに伴い反応器Aの風箱2に導入される混合ガス(g)の量は減少することになり、吹込み管Cの設置高さよりも下部側の領域での反応器内空塔速度u*が低下する。空塔速度が低下すると流動媒体の運動量も低下するため、吹込み管Cの設置高さよりも下部側の領域での流動層(流動媒体)の流動性が低下し、ガス状物質の収率も低下する。
以上のような問題を回避するために、吹込み管Cに供給する混合ガス(g)の量を調整して吹込み管Cから吹き込む混合ガス(g)の流速uを適正化することが好ましい。すなわち、まず、上記(1)式のように、吹込み管Cから吹き込む混合ガス(g)の流速uを、吹込み管Cの設置高さよりも上部側の領域での反応器内空塔速度u以上とすることにより(u≧u)、油状物質を流動層f内に十分に拡散させることができる。さらに、混合ガス(g)の一部を吹込み管Cを通じて流動層f内に吹き込むことにより、反応器Aの風箱2に導入される混合ガス(g)の量が減少し、吹込み管Cの設置高さよりも下部側の領域での流動性が過度に低下しないようにするため、上記(2)式のように、下部側の領域での反応器内空塔速度u*が上部側の領域での反応器内空塔速度uの1/2以上となるように(u*≧u/2)、吹込み管Cから吹き込む混合ガス(g)の流速u(吹込み管Cから吹き込む混合ガス(g)のガス量)を制御する。
混合ガス(g)の流速uを制御するには、例えば、ガス分岐管17に流量制御弁(図示せず)を設け、吹込み管Cに供給するガス量を調整する。
上述したように、混合ガス(g)の一部を吹込み管Cから吹き込むと、吹込み管Cの設置高さよりも下部側の領域での流動性が低下するので、このような領域をなるべく小さくするため、吹込み管Cの反応器Aの側壁部での設置高さ(油状物質の吹込み高さ)はなるべく低い方が好ましい。また、油状物質の吹込み高さが低い方が、吹込まれた油状物質の流動層f内での滞留時間が長くなり、熱分解効率が高くなるので、この点からも、吹込み管Cの設置高さはなるべく低い方が好ましい。具体的には、図5に示すように、吹込み管Cの設置高さh(分散板上面からの高さ)は、流動層fの高さH(分散板上面からの高さ)の1/2以下の位置とすることが好ましい。
本発明法で得られるガス状物質は、可燃成分が一酸化炭素とC1〜C4程度の炭化水素からなり、そのLHVは約4〜8Mcal/Nmで高い発熱量を有する。このため、本発明法で得られるガス状物質は気体燃料として好適であり、また、天然ガス代替として高炉の還元剤や焼結鉱製造プロセスの凝結剤などとしても使用できる。
・発明例1
精製サーモセレクト方式のガス化溶融炉(Thermoselect Waste Gasification and Reforming Process)から発生し、塩化水素などの不純物を除去した後の排ガス(以下、サーモガス(Purified synthesis gas)という。)に水蒸気を添加したガスを有機物質熱分解用の混合ガス(g)として用いた。このためサーモガスの払出し配管に分岐管を設け、この分岐管を通じてサーモガスの一部を抜き出すことができるようにするとともに、この分岐管の下流側には流量調節弁、スチーム混合器、ガス予熱器を配置した。
サーモガスの平均組成は、H:31vol%、CO:33vol%、CO:30vol%、HO:<1vol%、N:6vol%であった。スチーム混合器に対してサーモガスを108Nm/hr、水蒸気として圧力10kg/cmGのスチームを64Nm/hr供給し、予熱器で430℃まで昇温した。水蒸気混合後のガス組成は、H:20vol%、CO:21vol%、CO:19vol%、HO:37vol%、N:4vol%であり、流量は172Nm/hr(質量流量では171kg/hr)であった。このガスを有機物質熱分解用の混合ガス(g)として用い、図1〜図3に示す設備構成において廃プラスチックの熱分解処理を実施した。流動媒体は珪砂を用いた。
反応器Aは、内径が1.2mの円筒形であり(高さ方向で径は一定)、反応器A内の流動層fの高さ(分散板上端から流動層上端までの高さ)は3mとした。
吹込み管Cは、図4(3)に示すものを用い、内管21から混合ガス(g)が、外管22から油状物質が、それぞれ吹込まれるようにした。吹込み管Cを構成する内管21は、内径60mm、外径62mmとし、外管22は内径80mmとした。吹込み管Cは反応器Aの周方向でほぼ等間隔で20本設置し、それらの設置高さは流動層fの高さの1/3の高さ(分散板上端から1mの高さ)とした。
流動層式の反応器Aはヒーター7により予め600℃に予熱されており、反応器A内に混合ガス(g)を導入するとともに、廃プラスチックのモデル物質として粒状に破砕処理した廃プラスチックを880kg/hrで供給し、計画反応温度である620℃まで昇温した。620℃に到達後、10日間、廃プラスチックの熱分解処理を継続した。この際、分離装置Bで分離された油状物質を水分除去装置Dで水分を除去した後、吹込み管Cを通じて反応器Aに還流させた。反応状態は廃プラスチックの供給開始から約27時間後、定常状態に達した。
吹込み管Cの内管21から反応器A内に吹き込む混合ガス(g)の流速uを、上部側領域での反応器内空塔速度u(3.5cm/s)以上である15.2cm/sとし、且つ下部側領域での反応器内空塔速度u*(3.2cm/s)が上部側領域での反応器内空塔速度u(3.5cm/s)の1/2以上となるように制御した。
ガス輸送管9を通過するガス状物質の成分分析を行うとともに、LHVを求めた。また、油分還流管11から油状物質を一定時間抜き出して油状物質の還流量を定量した。この発明例における操業条件を表1に、ガス状物質の生成量、組成及びLHVを表2にそれぞれ示す。
定常状態において原料として供給したサーモガス、水蒸気、廃プラスチック及び油分吸着剤の合計量は1051kg/hrであり、ガス状物質の生成量は988kg/hrであるので、収率は94mass%であった。油状物質の還流量は300kg/hrと比較的少ない量に抑えることができた。生成したガス状物質のLHVは7.2Mcal/Nmであり、サーモガス(1.8Mcal/Nm)の4.0倍に増熱していた。
Figure 2019147871
Figure 2019147871
・発明例2
製鉄所の転炉から発生したガスに水蒸気を添加してシフト反応を行わせ、これにより得られたガスを有機物質熱分解用の混合ガス(g)として用いた。このため転炉ガスの払出し配管に分岐管を設け、この分岐管を通じて転炉ガスの一部を抜き出すことができるようにするとともに、この分岐管の下流側には流量調節弁、スチーム混合器、ガス予熱器、Fe−Cr系高温シフト触媒を充填したシフト反応器(円筒竪型)を配置した。
転炉ガスの平均組成は、H:1vol%、CO:65vol%、CO:15vol%、HO:1vol%、N:18vol%であった。スチーム混合器に対して転炉ガスを70Nm/hr、水蒸気として圧力10kg/cmGのスチームを101Nm/hr供給し、予熱器で320℃まで予熱した後、シフト反応器に導入した。シフト反応は発熱反応であり、シフト反応器温度は430℃まで上昇した。シフト反応後のガス組成は、H:26vol%、CO:0vol%、CO:30vol%、HO:35vol%、N:9vol%であり、流量は171Nm/hr(質量流量では171kg/hr)であった。このガスを有機物質熱分解用の混合ガス(g)として用い、図1〜図3に示す設備構成において廃プラスチックの熱分解処理を実施した。流動媒体は珪砂を用いた。
反応器Aは、内径が1.0mの円筒形であり(高さ方向で径は一定)、反応器A内の流動層fの高さ(分散板上端から流動層上端までの高さ)は3mとした。
吹込み管Cは、図4(3)に示すものを用い、内管21から混合ガス(g)が、外管22から油状物質が、それぞれ吹込まれるようにした。吹込み管Cを構成する内管21は、内径100mm、外径103mmとし、外管22は内径120mmとした。吹込み管Cは反応器Aの周方向でほぼ等間隔で25本設置し、それらの設置高さは流動層fの高さの1/3の高さ(分散板上端から1mの高さ)とした。
流動層式の反応器Aはヒーター7により予め600℃に予熱されており、反応器A内に混合ガス(g)を導入するとともに、廃プラスチックのモデル物質として粒状に破砕処理した廃プラスチックを880kg/hrで供給し、計画反応温度である620℃まで昇温した。620℃に到達後、10日間、廃プラスチックの熱分解処理を継続した。この際、分離装置Bで分離された油状物質を水分除去装置Dで水分を除去した後、吹込み管Cを通じて反応器Aに還流させた。反応状態は廃プラスチックの供給開始から約27時間後、定常状態に達した。
吹込み管Cの内管21から反応器A内に吹き込む混合ガス(g)の流速uを、上部側領域での反応器内空塔速度u(5.0cm/s)以下である4.4cm/sとし、且つ下部側領域での反応器内空塔速度u*(4.6cm/s)が上部側領域での反応器内空塔速度u(5.0cm/s)の1/2以上となるように制御した。
ガス輸送管9を通過するガス状物質の成分分析を行うとともに、LHVを求めた。また、油分還流管11から油状物質を一定時間抜き出して油状物質の還流量を定量した。この発明例における操業条件を表3に、ガス状物質の生成量、組成及びLHVを表4にそれぞれ示す。
定常状態において原料として供給したサーモガス、水蒸気、廃プラスチック及び油分吸着剤の合計量は1051kg/hrであり、ガス状物質の生成量は975kg/hrであるので、収率は93mass%であった。油状物質の還流量は302kg/hrと比較的少ない量に抑えることができた。生成したガス状物質のLHVは5.7Mcal/Nmであり、転炉ガス(2.0Mcal/Nm)の2.9倍に増熱していた。
Figure 2019147871
Figure 2019147871
・発明例3
発明例1と同様に、サーモガスに水蒸気を添加したガスを有機物質熱分解用の混合ガス(g)として用いた。このためサーモガスの払出し配管に分岐管を設け、この分岐管を通じてサーモガスの一部を抜き出すことができるようにするとともに、この分岐管の下流側には流量調節弁、スチーム混合器、ガス予熱器を配置した。
サーモガスの平均組成は、H:31vol%、CO:33vol%、CO:30vol%、HO:<1vol%、N:6vol%であった。スチーム混合器に対してサーモガスを108Nm/hr、水蒸気として圧力10kg/cmGのスチームを64Nm/hr供給し、予熱器で430℃まで昇温した。水蒸気混合後のガス組成は、H:20vol%、CO:21vol%、CO:19vol%、HO:37vol%、N:4vol%であり、流量は172Nm/hr(質量流量では171kg/hr)であった。このガスを有機物質熱分解用の混合ガス(g)として用い、図1〜図3に示す設備構成において廃プラスチックの熱分解処理を実施した。流動媒体は珪砂を用いた。
反応器Aは、内径が1.2mの円筒形であり(高さ方向で径は一定)、反応器A内の流動層fの高さ(分散板上端から流動層上端までの高さ)は3mとした。
吹込み管Cは、図4(3)に示すものを用い、内管21から混合ガス(g)が、外管22から油状物質が、それぞれ吹込まれるようにした。吹込み管Cを構成する内管21は、内径100mm、外径103mmとし、外管22は内径120mmとした。吹込み管Cは反応器Aの周方向でほぼ等間隔で20本設置し、それらの設置高さは流動層fの高さの1/3の高さ(分散板上端から1mの高さ)とした。
流動層式の反応器Aはヒーター7により予め600℃に予熱されており、反応器A内に混合ガス(g)を導入するとともに、廃プラスチックのモデル物質として粒状に破砕処理した廃プラスチックを880kg/hrで供給し、計画反応温度である620℃まで昇温した。620℃に到達後、10日間、廃プラスチックの熱分解処理を継続した。この際、分離装置Bで分離された油状物質を水分除去装置Dで水分を除去した後、吹込み管Cを通じて反応器Aに還流させた。反応状態は廃プラスチックの供給開始から約27時間後、定常状態に達した。
吹込み管Cの内管21から反応器A内に吹き込む混合ガス(g)の流速uを、上部側領域での反応器内空塔速度u(3.5cm/s)以上である51cm/sとし、且つ下部側領域での反応器内空塔速度u*(1.2cm/s)が上部側領域での反応器内空塔速度u(3.5cm/s)の1/2未満となるように制御した。
ガス輸送管9を通過するガス状物質の成分分析を行うとともに、LHVを求めた。また、油分還流管11から油状物質を一定時間抜き出して油状物質の還流量を定量した。この発明例における操業条件を表5に、ガス状物質の生成量、組成及びLHVを表6にそれぞれ示す。
定常状態において原料として供給したサーモガス、水蒸気、廃プラスチック及び油分吸着剤の合計量は1051kg/hrであり、ガス状物質の生成量は970kg/hrであるので、収率は92mass%であった。油状物質の還流量は307kg/hrと比較的少ない量に抑えることができた。生成したガス状物質のLHVは7.2Mcal/Nmであり、サーモガス(1.8Mcal/Nm)の4倍に増熱していた。
Figure 2019147871
Figure 2019147871
・発明例4
発明例1と同様に、サーモガスに水蒸気を添加したガスを有機物質熱分解用の混合ガス(g)として用いた。このためサーモガスの払出し配管に分岐管を設け、この分岐管を通じてサーモガスの一部を抜き出すことができるようにするとともに、この分岐管の下流側には流量調節弁、スチーム混合器、ガス予熱器を配置した。
サーモガスの平均組成は、H:31vol%、CO:33vol%、CO:30vol%、HO:<1vol%、N:6vol%であった。スチーム混合器に対してサーモガスを108Nm/hr、水蒸気として圧力10kg/cmGのスチームを64Nm/hr供給し、予熱器で430℃まで昇温した。水蒸気混合後のガス組成は、H:20vol%、CO:21vol%、CO:19vol%、HO:37vol%、N:4vol%であり、流量は172Nm/hr(質量流量では171kg/hr)であった。このガスを有機物質熱分解用の混合ガス(g)として用い、図1〜図3に示す設備構成において廃プラスチックの熱分解処理を実施した。流動媒体は珪砂を用いた。
反応器Aは、内径が0.8mの円筒形であり(高さ方向で径は一定)、反応器A内の流動層fの高さ(分散板上端から流動層上端までの高さ)は3mとした。
吹込み管Cは、図4(3)に示すものを用いたが、発明例1〜3とは逆に、内管21から油状物質が、外管22から混合ガス(g)が、それぞれ吹込まれるようにした。吹込み管Cを構成する内管21は、内径32mm、外径34mmとし、外管22は内径200mmとした。吹込み管Cは反応器Aの周方向でほぼ等間隔で30本設置し、それらの設置高さは流動層fの高さの1/3の高さ(分散板上端から1mの高さ)とした。
流動層式の反応器Aはヒーター7により予め600℃に予熱されており、反応器A内に混合ガス(g)を導入するとともに、廃プラスチックのモデル物質として粒状に破砕処理した廃プラスチックを880kg/hrで供給し、計画反応温度である620℃まで昇温した。620℃に到達後、10日間、廃プラスチックの熱分解処理を継続した。この際、分離装置Bで分離された油状物質を水分除去装置Dで水分を除去した後、吹込み管Cを通じて反応器Aに還流させた。反応状態は廃プラスチックの供給開始から約27時間後、定常状態に達した。
吹込み管Cの外管22から反応器A内に吹き込む混合ガス(g)の流速uを、上部側領域での反応器内空塔速度u(7.7cm/s)以下である7.1cm/sとし、且つ下部側領域での反応器内空塔速度u*(3.6cm/s)が上部側領域での反応器内空塔速度u(7.7cm/s)の1/2未満となるように制御した。
ガス輸送管9を通過するガス状物質の成分分析を行うとともに、LHVを求めた。また、油分還流管11から油状物質を一定時間抜き出して油状物質の還流量を定量した。この発明例における操業条件を表7に、ガス状物質の生成量、組成及びLHVを表8にそれぞれ示す。
定常状態において原料として供給したサーモガス、水蒸気、廃プラスチック及び油分吸着剤の合計量は1051kg/hrであり、ガス状物質の生成量は951kg/hrであるので、収率は90mass%であった。油状物質の還流量は310kg/hrと比較的少ない量に抑えることができた。生成したガス状物質のLHVは7.2Mcal/Nmであり、サーモガス(1.8Mcal/Nm)の4倍に増熱していた。
Figure 2019147871
Figure 2019147871
・比較例1
発明例1と同様に、サーモガスに水蒸気を添加したガスを有機物質熱分解用の混合ガス(g)として用いた。すなわち、使用したサーモガスの平均組成は、H:31vol%、CO:33vol%、CO:30vol%、HO:<1vol%、N:6vol%であり、このサーモガスをスチーム混合器に108Nm/hr導入し、水蒸気として圧力10kg/cmGのスチームを64Nm/hr供給し、予熱器で430℃まで昇温した。水蒸気混合後のガス組成は、H:20vol%、CO:21vol%、CO:19vol%、HO:37vol%、N:4vol%であり、流量は172Nm/hr(質量流量では171kg/hr)であった。このガスを有機物質熱分解用の混合ガス(g)として用い、図1に示す設備構成において、油状物質を反応器Aに還流させることなく、廃プラスチックの熱分解処理を実施した。反応器Aは、内径が0.8mの円筒形であり(高さ方向で径は一定)、反応器A内の流動層fの高さ(分散板上端から流動層上端までの高さ)は3mとした。
流動層式の反応器Aはヒーター7により予め600℃に予熱されており、反応器Aに混合ガス(g)を導入するとともに、廃プラスチックのモデル物質として粒状に破砕処理した廃プラスチックを880kg/hrで供給し、計画反応温度である620℃まで昇温した。620℃に到達後、10日間、廃プラスチックの熱分解処理を継続した。この際、油状物質は反応器Aに還流させなかった。反応状態は廃プラスチックの供給開始から約22時間後、定常状態に達した。
発明例1と同様の方法で、得られたガス状物質と油状物質の生成量と組成を求めるとともに、ガス状物質についてはLHVを求めた。この比較例における原料供給条件を表9に、ガス状物質の生成量、組成及びLHVを表10に、それぞれ示す。
この比較例では、供給原料総量に対するガス状物質の収率は33mass%と低い値となった。生成したガス状物質のLHVは7.2Mcal/Nmであり、サーモガスの4.0倍に増熱していた。
以上のように、この比較例では油状物質を反応器Aに還流させて再熱分解させなかったため、ガス状物質の生成量が大幅に減少する結果となった。
Figure 2019147871
Figure 2019147871
・比較例2
発明例1と同様に、サーモガスに水蒸気を添加したガスを有機物質熱分解用の混合ガス(g)として用いた。すなわち、使用したサーモガスの平均組成は、H:31vol%、CO:33vol%、CO:30vol%、HO:<1vol%、N:6vol%であり、このサーモガスをスチーム混合器に108Nm/hr、水蒸気として圧力10kg/cmGのスチームを64Nm/hr供給し、予熱器で430℃まで昇温した。水蒸気混合後のガス組成は、H:20vol%、CO:21vol%、CO:19vol%、HO:37vol%、N:4vol%であり、流量が172Nm/hr(質量流量では171kg/hr)であった。このガスを有機物質熱分解用の混合ガス(g)として用い、図1〜図3に示す設備構成において廃プラスチックの熱分解処理を実施した。流動媒体は珪砂を用いた。
反応器Aは、内径が1.0mの円筒形であり(高さ方向で径は一定)、反応器A内の流動層fの高さ(分散板上端から流動層上端までの高さ)は3mとした。
吹込み管Cは、図4(3)に示すものを用い、内管21から油状物質を吹込み、外管22からは何も吹込まなかった(混合ガス(g)は全量を分散板1を介して反応器Aに導入した)。吹込み管Cを構成する内管21は、内径32mm、外径34mmとした。吹込み管Cは反応器Aの周方向でほぼ等間隔で20本設置し、それらの設置高さは流動層fの高さを超えて、分散板上端から3.5mとした。すなわち、この比較例では、吹込み管Cから流動層f内ではなく、流動層fの上方の空間に油状物質の吹き込みを行った。
流動層式の反応器Aはヒーター7により予め600℃に予熱されており、反応器A内に混合ガス(g)を導入するとともに、廃プラスチックのモデル物質として粒状に破砕処理した廃プラスチックを880kg/hrで供給し、計画反応温度である620℃まで昇温した。620℃に到達後、10日間、廃プラスチックの熱分解処理を継続した。この際、分離装置Bで分離された油状物質を水分除去装置Dで水分を除去した後、反応器Aに還流させた。反応状態は廃プラスチックの供給開始から約27時間後、定常状態に達した。
ガス輸送管9を通過するガス状物質の成分分析を行うとともに、LHVを求めた。また、油分還流管11から油状物質を一定時間抜き出して油状物質の還流量を定量した。この発明例における操業条件を表11に、ガス状物質の生成量、組成及びLHVを表12にそれぞれ示す。
この比較例では、油状物質を反応器A内の流動層f内へ吹込むことなく反応器Aの上部(流動層fの上方の空間)に還流させているため、ほぼ全量をガス状物質として回収できたものの、油状物質の還流量は3500kg/hrと非常に多く、油状物質の還流に大きな設備的負担(費用)が必要となった。
Figure 2019147871
Figure 2019147871
A 反応器
B 分離装置
C 吹込み管
D 水分除去装置
E 供給手段
F 供給手段
1 分散板
2 風箱
3 ガス供給管
4 供給管
5 貯留槽
6 定量切出装置
7 ヒーター
8 ガス取出管
9 ガス輸送管
10 油分輸送管
11 油分還流管
12 水供給管
13 ノズル
14 比重分離槽
15 水回収バルブ
16 水回収管
17 ガス分岐管
18 冷却水供給管
20 単管
21 内管
22 外管
23 管体
f 流動層

Claims (12)

  1. 流動化ガスとして少なくとも水素及び二酸化炭素を含む混合ガス(g)が導入される流動層式の反応器(A)において、有機物質を混合ガス(g)と接触させることにより熱分解させる方法であって、
    反応器(A)から取り出された有機物質の熱分解生成物のうち、常温で液体である熱分解生成物(x)の少なくとも一部を、液体の状態で、反応器(A)の側壁部を貫通して設置された吹込み管(C)を通じて流動層(f)内に吹き込み、反応器(A)内で熱分解させることを特徴とする有機物質の熱分解方法。
  2. 流動化ガスとして反応器(A)に導入される混合ガス(g)の一部を、液状の熱分解生成物(x)とともに吹込み管(C)を通じて流動層(f)内に吹き込むことを特徴とする請求項1に記載の有機物質の熱分解方法。
  3. 吹込み管(C)が単管構造又は内管と外管からなる二重管構造を有し、単管構造を有する吹込み管(C)の場合には、混合ガス(g)と液状の熱分解生成物(x)を単管から混合状態で吹き込み、二重管構造を有する吹込み管(C)の場合には、内管と外管のうちの一方から混合ガス(g)を、他方から液状の熱分解生成物(x)を、それぞれ吹き込むことを特徴とする請求項2に記載の有機物質の熱分解方法。
  4. 吹込み管(C)の設置高さよりも上部側の領域での反応器内空塔速度をu(m/sec)、下部側の領域での反応器内空塔速度をu*(m/sec)とした場合、吹込み管(C)を通じて反応器(A)内に吹き込む混合ガス(g)の流速u(m/sec)を、下記(1)式及び(2)式を満足するように制御することを特徴とする請求項2又は3に記載の有機物質の熱分解方法。
    ≧u …(1)
    *≧u/2 …(2)
  5. 有機物質が廃プラスチック、含油スラッジ、廃油、バイオマスの中から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜4に記載の有機物質の熱分解方法。
  6. 混合ガス(g)は、さらに水蒸気を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の有機物質の熱分解方法。
  7. 混合ガス(g)は、水蒸気濃度が20〜70vol%、水素濃度が10〜40vol%、二酸化炭素濃度が10〜40vol%であることを特徴とする請求項6に記載の有機物質の熱分解方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の熱分解方法において生成した、常温で気体である熱分解生成物を有用ガス状物質として回収することを特徴とするガス状物質の製造方法。
  9. 流動化ガスとして少なくとも水素及び二酸化炭素を含む混合ガス(g)が導入される流動層式の反応器であって、有機物質を混合ガス(g)と接触させることにより熱分解させる反応器(A)と、
    該反応器(A)から排出された、有機物質の熱分解生成物を含むガス(g)を常温又は常温近傍まで冷却し、ガス(g)に含まれる有機物質の熱分解生成物の一部を液化させてガス(g)から分離する分離装置(B)と、
    反応器(A)の側壁部を貫通して設置され、分離装置(B)でガス(g)から分離された液状の熱分解生成物(x)の少なくとも一部を流動層(f)内に吹き込む吹込み管(C)を有することを特徴とする有機物質の熱分解設備。
  10. 分離装置(B)が散水式の装置からなる熱分解設備であって、
    さらに、分離装置(B)で分離された液状の熱分解生成物(x)から水分を除去する水分除去装置(D)と、該水分除去装置(D)で水分が除去された液状の熱分解生成物(x)の少なくとも一部を吹込み管(C)に供給する供給手段(E)を有することを特徴とする請求項9に記載の有機物質の熱分解設備。
  11. さらに、流動化ガスとして反応器(A)に導入される混合ガス(g)の一部を吹込み管(C)に供給する供給手段(F)を有し、該供給手段(F)で吹込み管(C)に供給された混合ガス(g)が、液状の熱分解生成物(x)とともに流動層(f)内に吹き込まれるようにしたことを特徴とする請求項9又は10に記載の有機物質の熱分解設備。
  12. 吹込み管(C)が単管構造又は内管と外管からなる二重管構造を有し、単管構造を有する吹込み管(C)の場合には、混合ガス(g)と液状の熱分解生成物(x)が単管から混合状態で吹き込まれ、二重管構造を有する吹込み管(C)の場合には、内管と外管のうちの一方から混合ガス(g)が、他方から液状の熱分解生成物(x)が、それぞれ吹き込まれるようにしたことを特徴とする請求項11に記載の有機物質の熱分解設備。
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