JP5832989B2 - ペット用排尿処理材及びその製造方法 - Google Patents

ペット用排尿処理材及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5832989B2
JP5832989B2 JP2012272075A JP2012272075A JP5832989B2 JP 5832989 B2 JP5832989 B2 JP 5832989B2 JP 2012272075 A JP2012272075 A JP 2012272075A JP 2012272075 A JP2012272075 A JP 2012272075A JP 5832989 B2 JP5832989 B2 JP 5832989B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
urine
weight
water
component
formula
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2012272075A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014117169A (ja
Inventor
英昭 黒▲崎▼
英昭 黒▲崎▼
田中 正範
正範 田中
駿 金田
駿 金田
正輝 星野
正輝 星野
雄希 長井
雄希 長井
悌治 佐藤
悌治 佐藤
Original Assignee
黒崎白土工業株式会社
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 黒崎白土工業株式会社 filed Critical 黒崎白土工業株式会社
Priority to JP2012272075A priority Critical patent/JP5832989B2/ja
Publication of JP2014117169A publication Critical patent/JP2014117169A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5832989B2 publication Critical patent/JP5832989B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Housing For Livestock And Birds (AREA)

Description

本発明は、ペット用排尿処理材及びその製造方法に係り、特に、ベントナイト系のペット用排尿処理材とその製造方法に関する。
従来より、天然のジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土を炭酸ナトリウム等のアルカリで処理して膨潤性や粘性等を向上させた所謂活性ベントナイトが種々の用途に使用されている。活性ベントナイトの粒状成形物は、水や食塩水と接触するとその水分を吸収して固化塊状物を形成する性質を有することから、「固まる砂」などのキャッチフレーズとともに、所謂ペット用トイレ砂として多用されてきた。
ペット用トイレ砂の主材として用いられる活性ベントナイト系トイレ砂用基材、すなわちペット用排尿処理材の原料粘土である天然のジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土は、一般的には酸性白土やサブベントナイトと呼ばれている。酸性白土乃至サブベントナイトは、スメクタイトの層状構造粒子の層間あるいは表面にMgイオン、Caイオン、Kイオン、Naイオンの他に個体酸(ブレンステッド酸)の素となるHイオン(H+)がその酸性度に応じて保持されている。このため、原料粘土自身は尿から発生するアンモニア等の塩基性臭気成分に対しては優れた脱臭性能を有しているものである。
しかしながら、酸性白土やサブベントナイトといった原料粘土のままでは、脱臭性能には優れているものの膨潤性や粘結性に劣り、固まる砂としての実用的な固化性能が得られない。このため、酸性白土やサブベントナイトをアルカリ処理により活性ベントナイト化して固化性に優れたペット用排尿処理材を製してきたものである。
これら活性ベントナイト系ペット用排尿処理材として用いられる活性ベントナイト粒の従来の活性化製法としては、スメクタイト純度の或る程度高い原料粘土(カチオン交換容量:50meq/100g以上)を選び、主に炭酸ナトリウムの固体粉末または水溶液を添加し、混練して緊密・均質に分散し、適量のナトリウムイオンがスメクタイトの層間に侵入して一部をNa型スメクタイトに転化できる条件で行う活性ベントナイト粒状物の製法が知られている(特許文献1〜4参照)。
Na型スメクタイト化を効率よく進める製法としては、発明者等も何度か提案してきたように、上記のように製した活性ベントナイト粉末を再度造粒してより均質な活性ベントナイト造粒物となす方法(特許文献1)、天然の原料粘土含水物と無水炭酸ナトリウムを押出造粒機を用いて緊密混合された粒状物となし、密封状態で24時間エージングした後さらに捏和・造粒し、乾燥温度としては比較的低温の150℃で長時間(10時間)かけて乾燥して製する方法(特許文献2,3)、などが現実的である。
従来公知のペットのトイレ砂用基材として用いられてきた活性ベントナイト系の粘土粒状成型物は、ネコ等のペットの尿を吸収すると粒状成型物を構成するスメクタイト粒子がその高い膨潤性により迅速に膨潤し、それにつれて個々の粒状成型物自体も急激な膨張を引き起こし、泥状乃至ゲル状の粒状成型物同士の強い接触による押し合い・圧し合いとともに、接触域での泥状化からゲル化の過程において粘着・固化が起こり、尿を吸い取った粒状成型物同士が塊状に結合した状態で固化するものである。
これは、該粒状成型物が敷き詰められたトレイの上にペットが排尿すると尿を吸収した粒状成型物同士が粘着して塊状に固結するために、この固結部分(固化塊状物)を手で掴みだしたり、スコップで掘り起こしたりして除去するだけでよく、簡単に且つ衛生的に排尿処理を行うことができるため、このような固結性能が要求されてきたものである。
このように従来のペット用排尿処理材に求められる固化性能は、上記作用機序によって固結した塊状物、即ち尿を吸収し内部が所謂粘土質の弾力を残した半乾燥ゲル化状態となっている排尿後数十分〜数時間の間における固結塊状物が、該固結塊状物の除去時における人の手掴みや除去用スコップ等による外力で壊れずに除去・廃棄できる程度でよかった。
しかしながら、ネコ等のペット飼育人口が拡大し、昨今では多種多様な生活スタイルを有する飼育者が現れてきており、このような従前の固化性能では飼育者が満足する処理対応ができない事例が増えてきている。
例えば、主婦や健常な高齢者のような在宅時間が長い人のいる家庭では、ペットが排尿を終えた後、数十分〜数時間の間に尿を吸収して固まった固化塊状物が除去用スコップ等を用いて除去されるのが一般的である。
このように吸水から除去までの時間が数十分〜数時間程度の場合には、除去される時点で固化塊状物の内部の多くの部分は未だ相当の水分を含み弾力のある所謂粘土質の芯を形成している。このため、固化塊状物全体の表面に近い部分を構成している半乾き状態の個々の粒状成型物の一部が粘土質の芯の一部を構成するように一体となって芯と強固に繋がっていたり、該粒状成型物同士が乾いた状態で繋がったりして、普通の除去作業程度の外力を受けても壊れないので、尿を吸収した粘土粒の塊がバラバラに壊れて生じる様々なトラブルの心配は少ない。
一方、最近増えてきた共働き家庭や単身生活者等の住人不在時間が長い飼育家庭では、半日乃至一日の間、ペットが居る自宅を留守にすることが日常化しており、このような家庭では飼い主の留守中に飼いネコ等のペットがした排尿による固化塊状物は半日以上の間放置されることが多く、ときには1日以上放置されるケースも珍しくない。
このような不在時間の長い飼い主からは、トイレ砂の性能に関する苦情として、固化塊状物が崩れる、脱臭性能に問題がある、といったことが言われる。即ち、尿を含む固化塊状物をトイレ砂が入れられているトレイ等から除去するときや、この固化塊状物を廃棄の為に移動させたりする際に、この固化塊状物の一部が割れたり崩れたりしてバラバラになり床やトレイ上に散らばることがある。これは、吸尿後長時間放置されて含尿塊状物が殆ど乾いた状態になることでその粘結力乃至凝結力が低下するため、ちょっとした振動や衝撃で崩れやすくなっていることが原因である。
トイレ砂の破片や微粉がフロアリング、カーペット、畳など上に散乱した場合清掃作業の煩わしさや、清潔で衛生的な排尿処理が困難であることが、不在時間の長い飼育者からの苦情の一例である。また、固化塊状物がトレイ上で崩壊しトイレ砂の破片等がバラバラに散乱した場合には、トレイ上の未だ尿が接触していない新しいペット用トイレ砂と使用済みトイレ砂とが混ざり合って分別不能となり、トレイ上のトイレ砂全体の固化性能のみならず、脱臭性能も低下するとの苦情もある。
このようなペット用トイレ砂による効果を長時間維持させる技術としては、特許文献5にペットの排泄物による悪臭を長時間マスキングする排泄物処理剤とその製造方法が開示されている。
特開平01−269440号公報 特開2000−288384号公報 特開2007−236354号公報 特開2004−073053号公報 特開2000−236766号公報
しかしながら、特許文献1〜4に記載されているのは従前の一般的な飼育者を前提としたペット用トイレ砂に関する発明であり、また、特許文献5においても考慮されているのは臭気のマスキングのみで長時間放置する場合の固化性能については十分な検討がなされていないのが現状である。
さて、先にも述べたように、活性ベントナイト系の粒状成型物からなるペットのトイレ砂用基材の固化性能は、その粒状成型物を構成するスメクタイト粒子が尿由来の水分を吸収して膨潤し、それにつれて個々の粒状成型物自体も急激な膨張を引き起こし、泥状乃至ゲル状の粒状成型物同士の強い接触による押し合い・圧し合いとともに、接触域での泥状化からゲル化の過程において粘着・固化が起こり、尿を吸い取った粒状成型物同士が塊状に結合した状態で固化することにより発現するものである。
すなわち、粒状成型物同士の接触域において、尿水分吸収初期では、粒状成型物に含まれるスメクタイト粒子が、粒状成型物を構成する粘土粒の外層において膨潤拡散することで分散濃度が上昇して泥状化し、粒状成型物同士の泥状接触域を形成する。そして泥状接触域における水分が粘土粒の内層に引き続き吸収されるため、該接触域は更に濃い泥状(ヒドロゾル〜糊状)となって粘土粒同士を繋ぎ合せ、固化塊状物を形成するに至る。
このような作用機序によって固結した固化塊状物は、その後、放置による時間の経過とともに風乾されることで蒸散により更に水分が失われ、該固化塊状物の外表面から半乾燥化が進行し、該接触域はヒドロゲル〜キセロゲル化して行く。
すなわち、排尿吸収後数十分〜数時間の間における固化塊状物であれば、尿を吸収した粘土粒内部が粘土質の弾力を残した半乾燥のヒドロゲル化状態であり、外層を構成している半乾き状の粘土粒もある程度弾力性を有した状態で結着して全体として適度な弾力のある固化塊状物を形成しているため、壊れにくい粘土粒の集合塊状物となっている。このため除去時に該固化塊状物に加わる外力で壊れずに、簡単に除去、廃棄ができるものである。なお、このような粒状成型物同士の接触域における泥状化からゲル化に至る過程での粘着・固化に起因する固化性能は、粒状成型物を構成している活性ベントナイトの膨潤性や粘着性などによって異なるが、従来の通常の使用上は差し支えない優劣差である。
発明者等は、活性ベントナイトを乾燥させた場合の強度について、幾つかの方法で検証を行った。先ず、スメクタイト系粘土である活性ベントナイトのスラリーを用いた検証を行った。活性ベントナイトを水に分散したスラリーをフッ素樹脂製のバットに適量注ぎ入れ、100℃前後の乾燥器中で加熱濃縮することで或る程度水分が残っている乾固物を得た。この乾固物はやや弾力性のあるシート乃至フィルム状の形状であったが、さらに加熱を続けて完全に水分を飛ばすと、折り曲げ(屈曲)などの外力に対してかなり脆くなった。
次いで、ペット用トイレ砂にペット尿を吸水させて得た固化塊状物を静置して経過を観察したところ、季節や室内の温湿度環境によっても程度は異なるが、排尿吸収後半日乃至1日以上も経過すると水分の少ない乾燥状態となり、除去時に受ける外力に対して脆い状態となることが多かった。
本発明者らは、ペット用トイレ砂の供給者の立場から現在乃至将来的ニーズに応え、顧客の満足度を一層高めるべく、活性ベントナイト系ペット用トイレ砂に要求される重要な性能、特に吸尿固化性能と脱臭性能において更なる改良に努め、本発明に到った。
すなわち、本発明は上述の問題点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、排尿直後の吸尿固化速度と吸尿量を維持乃至向上させた上で、吸尿後の固化塊状物の強度を長時間保持できるペット用排尿処理材を提供することにある。
本発明の他の目的とするところは、上述の目的を達成した上で、さらに固化塊状物中に固定された尿が分解されることで発生するアンモニアやエチルメルカプタン等の悪臭ガスに対する脱臭性能をも向上させたペット用排尿処理材を提供することにある。
また、本発明の他の目的並びに作用効果については、以下の記述を参照することにより、当業者であれば容易に理解されるであろう。
本発明の課題は、以下の構成を有するペット用排尿処理材及びその製造方法により解決することができると考えられる。
本発明に係るペット用排尿処理材は、低結晶性シリカ成分を含有する天然のジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土粒子にナトリウム化合物を添加混合して製した活性ベントナイト造粒物からなり、前記ジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土は、粉末X線回折法による測定で、回折角(2θ)=21.5〜22.5°の領域に結晶性シリカの[111]面由来のピークを有し、相対湿度(RH):65%の雰囲気下で120時間吸湿したときに、前記粉末X線回折法による測定で、スメクタイト成分の[001]面の底面反射によるピーク位置が、2θ=5.2〜6.8°の領域にあり、下記の式(1)で表される水浸出性ケイ酸ナトリウム成分を、前記活性ベントナイト造粒物100重量%(乾燥重量)に対して、酸化ケイ素(SiO2)換算で0.1〜1.0重量%の範囲で含有していることを特徴とするものである。
Na2O・xSiO2 ・・・式(1)
(式中、xはSiO2成分のモル数を表す係数で、0.3〜3の数である)
ここで、「水浸出性ケイ酸ナトリウム成分」とは、後述の試験法に記載されているように、活性ベントナイト造粒物を水中に投入して常温下で2時間撹拌したときに水相に溶解し浸出してくるケイ酸ナトリウム成分を意味する。
また、ここにおける「乾燥重量」とは、活性ベントナイト造粒物を150℃で2〜3時間乾燥させ、付着水と層間水が共に脱水されたものを基準としていることを意味する。
そして、このような構成によれば、活性ベントナイト造粒物が回折角(2θ)=21.5〜22.5°の領域に結晶性シリカの[111]面由来のピークを有することから低結晶質乃至非晶質且つ多孔質のシリカ粒子が含まれることが担保され、活性ベントナイト造粒物のスメクタイト粒子で構成されるマトリックス中に分散したシリカ粒子により多くの細孔が形成される。これにより、粒状成型品中の粘土質の部分が吸尿や吸水により膨潤・ゲル化した場合であっても、細孔の繋がった孔路が水や尿の流路となり水分の更なる浸透を助けることで吸尿性乃至吸水性に優れたペット用排尿処理材となる。
また、前述の条件で吸湿後のスメクタイト成分の[001]面の底面反射によるピーク位置が、2θ=5.2〜6.8°の領域にあることは活性ベントナイト造粒物のNa型化の進行度合いがあまり高くなく、所謂Ca型乃至Mg型のベントナイトの適度な範囲内に留まっていることを意味している。このため、Na型化が過度に進行しないことにより造粒物外表面に水分との接触時に遮水層のようなものが生じにくく、この点からもより高い吸尿性乃至吸水性を保持できるのである。
更に、水浸出性ケイ酸ナトリウム成分として酸化ケイ素と酸化ナトリウムを或る程度の量で含有しているとは、例えば水に浸漬したとき、ポリケイ酸イオンとナトリウムイオンとして水相に浸出し得る状態で、活性ベントナイト造粒物の固態マトリックス中に分子レベルに分散して存在していることを意味し、抽出条件によっても異なるが、水浸出性ケイ酸ナトリウム成分として測定される量はその極一部であると推量される。
したがって、或る抽出条件下で測定された水浸出性ケイ酸ナトリウム成分の量は、実際に活性ベントナイト造粒物中に分子レベルに分散して存在している全ケイ酸ナトリウム成分の一部ではあるが、該全ケイ酸ナトリウムの存在量(含有量)が多ければ多い程、水浸出性ケイ酸ナトリウム成分の量も多くなることは推量に難くない。
すなわち、水浸出性ケイ酸ナトリウム成分中の酸化ケイ素(SiO)の量が活性ベントナイト造粒物100重量%(乾燥重量)に対して0.1〜1.0重量%の範囲にあるということは、活性ベントナイト造粒物中に分子レベルに分散しているポリケイ酸は当該範囲の上限および下限のそれぞれ何層倍か多い量の範囲で存在していると言える。
加えて、式(1)で表される水浸出性ケイ酸ナトリウム成分が、活性ベントナイト造粒物100重量%(乾燥重量)に対して、酸化ケイ素(SiO2)換算で0.1〜1.0重量%の範囲で含有されていることから、この活性ベントナイト造粒物中に分子レベルに分散しているポリケイ酸が活性ベントナイト造粒物を構成しているスメクタイト粒子塊や低結晶質乃至非晶質シリカの粒子塊を繋ぎ合せる、謂わば無機接着剤(バインダー)的な役割を担い、活性ベントナイト造粒物自体の強度をより高めることとなる。
また、活性ベントナイト造粒物に適当量の水浸出性ケイ酸ナトリウムが含まれていることにより、活性ベントナイト造粒物が尿や水を吸収して固化塊状物が形成される際に、活性ベントナイト造粒物間で形成される泥状接触域が泥状(ヒドロゾル状態)から風乾状(ヒドロゲル状態)へ変化するにつれて水相に溶解していたポリケイ酸イオンは更に縮合が進んでより高分子なポリケイ酸の3次元の網状骨格を形成して固まり、半乾燥状態の沢山の造粒物が集まった強固な固化塊状物を生じさせる。このため、吸尿後、時間が経過しても固化塊状物の強度が低下しにくく、外出時間の長い飼育者であっても除去時の崩れ等に悩まされずに済むペット用排尿処理材が得られる。
本発明の好ましい実施の形態においては、前記アルカリ剤が、下記の式(2)で表される水溶性ケイ酸ナトリウムを含有し、この水溶性ケイ酸ナトリウムは、下記の式(2)において係数(n)として表されるSiO2成分とNa2O成分の含有モル比が、0.4〜4の範囲であることが好ましい。
Na2O・nSiO2 ・・・式(2)
(式中、nはSiO2成分のモル数を表す係数である)
ここで、「水溶性ケイ酸ナトリウム」とは、上記の式(2)で表されるケイ酸ナトリウムの内、Na2O成分はナトリウムイオンとして、SiO2成分はポリケイ酸イオンとして、水に溶解可能なモル比(n)となっているケイ酸ナトリウムのことである。
そして、このような構成によれば、水浸出性ケイ酸ナトリウム成分が前述の範囲で含まれたペット用排尿処理材を容易に製することができる。
また、本発明においては、前記水浸出性ケイ酸ナトリウム成分中のSiO2成分とNa2O成分の含有モル比(x)が、0.5〜2.8の範囲であることが好ましい。
このような構成によれば、活性ベントナイト造粒物中にも該造粒物同士の結着域中にも適度な縮合度のポリケイ酸高分子からなる3次元構造体が形成され、個々の造粒物と固化塊状物の双方の強度が増して、所謂固化性能に優れたペット用排尿処理材が得られる。
本発明の好ましい実施の形態においては、前記活性ベントナイト造粒物は、前記水浸出性ケイ酸ナトリウム成分の他に、回折角(2θ)=21.5〜22.5°の領域に有する[111]面由来のX線回折ピークの半値幅(°/2θ)が0.4以上であるアルカリ可溶性シリカ成分を、SiO2換算で前記活性ベントナイト造粒物(乾燥重量)当たり20〜35重量%の範囲で含有していてもよい。
また、本発明の好ましい実施の形態においては、前記アルカリ可溶性シリカ成分が、低結晶性オパール乃至非晶質シリカ(含水シリカ)からなる低結晶性シリカ成分であってもよい。
ここで、「アルカリ可溶性シリカ成分」とは、水酸化ナトリウムやケイ酸ナトリウム等のアルカリ水溶液に可溶であり、通常の活性ベントナイト造粒物を調製する条件下では僅か一部しか溶けずに未溶解のまま残っている低結晶性シリカ成分のことである。
このような構成によれば、回折角(2θ)=21.5〜22.5°の領域に有する[111]面由来のX線回折ピークの半値幅(°/2θ)が0.4以上であるため、シリカ成分由来の細孔の割合が多くより大きな細孔の繋がった孔路が形成されるため、更に優れた吸尿性乃至吸水性を保有できることとなる。
加えて、該アルカリ可溶性シリカ成分の含有量が20〜35重量%の範囲であれば、本効果は充分に発揮された上で、活性ベントナイト造粒物とそれによる固化塊状物の双方において十分な強度が担保される。
本発明の好ましい実施の形態においては、前記アルカリ剤が水酸化ナトリウムまたは水酸化ナトリウム水溶液であり、前記ナトリウム化合物の添加混合は60℃以上の温度下における水熱反応乃至蒸熱反応の工程を含むものであってもよい。
このような構成によれば、本発明の活性ベントナイト造粒物を製造するためのアルカリ剤としてのナトリウム化合物が水溶性ケイ酸ナトリウムを含有していなくても、原料粘土中の低結晶シリカ成分が水酸化ナトリウムと一部反応し、水溶性ケイ酸ナトリウムと、ケイ酸粒子の表面が中和された不溶性の酸性ケイ酸ナトリウムのごときものが通常の処理よりも多く生じる。すなわち、水溶性ケイ酸ナトリウムは生成しないまでも、該含水シリカ(ケイ酸)がアルカリで中和され、表面にNa原子がイオン結合した[≡Si−O・Na]のごとき構造が生成されることにより吸尿時にケイ酸ナトリウムのような挙動を行い、一部のシリカ成分がケイ酸ナトリウムのような役割を果たすことで固化性能の向上にも寄与する。
本発明の好ましい実施の形態においては、下記の式(3)で定義される置換性水素指数IHが10以上であってもよい。
H=(BH−AH)×1010 ・・・式(3)
(式中、AHは、1重量%水性懸濁液での水素イオン濃度(mol/l)、BHは、
同懸濁液100gに1gの塩化ナトリウムを加えて70℃で60分間処理した
のちの水素イオン濃度(mol/l)である。)
ここで、「置換性水素指数IH」とは、置換性水素イオン量の大小の指標を表したものである。より具体的に説明すると、スメクタイト系粘土のスメクタイト構造の層間または構造粒子表面に存在して固体酸性を有する水素原子は、スメクタイト系粘土が塩化ナトリウム水溶液へ浸漬(懸濁)すると、その一部がナトリウムイオンと置換して水素イオンとして水相に浸出し、懸濁液のpHを低下させる。すなわち、このpHの低下によって見積もられる浸出水素イオン(H+)のモル濃度を算出し、スメクタイト系粘土がその層間または表面に保持している水素イオン量の大小を知ることができ、置換性水素指数IHが高い程その活性ベントナイト乃至原料粘土の脱臭性能は高くなると言える。
置換性水素指数IHは、本発明のようにアルカリ剤であるナトリウム化合物として、例えば炭酸ナトリウムや水酸化ナトリウムを添加した場合に比して、元来、酸基としてシラノール基を多く有する謂わば多塩基酸とも言えるポリケイ酸との塩である水溶性ケイ酸ナトリウムや不溶性の酸性ケイ酸ナトリウムのごときものが添加されている場合の方が高く維持される。また、低結晶性のオパール乃至非晶質シリカのごとき含水シリカ(ケイ酸)が適度に含有されている場合も置換性水素指数IHは高く維持される傾向がある。
そして、このような構成によれば、各種悪臭ガスの脱臭に必要なだけの水素イオンがスメクタイト層間や粒子表面に保持されており、脱臭性能に優れたペット用排尿処理材となる。
また、本発明の好ましい実施の形態においては、当該ペット用排尿処理材に所定の処方による擬似尿電解質溶液を吸収させることで得られた固化塊状物について、下記の式(4)で定義される固化強度保持率KRが、0.8以上となることが好ましい。
R=RS2/RS1・・・式(4)
(式中RS1、RS2は、以下の計算により求められたものである。
S1=(MX1/MO)×102 、RS2=(MX2/MAD)×102
上記MOは、疑似尿電解質溶液8gを吸収した固化塊状物の重量(g)、
X1は、該塊状物を所定の条件下にふるい振とう器にかけて部分的に崩壊した後
にふるい面上に残存する全塊状物の重量(g)、
ADは、疑似尿電解質溶液8gを吸収した固化塊状物を45℃の雰囲気下に
6時間静置後の重量(g)、
X2は、該塊状物を所定の条件下にふるい振とう器にかけて部分的に崩壊した後
にふるい面上に残存する全塊状物の重量(g)、である。)
(上記擬似尿電解質溶液は、5Lのビーカーに2kgの脱イオン水を入れ、撹拌
しながら下記7種の試薬を順次加え入れて溶解し、更に脱イオン水を加えて全量
を3kgとなした上で撹拌して均質な溶液となすことで得られるものである
CaCl2・2H2O(=147.01;≧99%):0.22g
MgCl2・6H2O(=203.30;≧97%):2.83g
KCl(=74.55;≧99%):27.11g
NaCl(=58.44;≧99%):3.54g
Na2SO4(=142.04;≧99%):17.22g
NaHCO3(=84.01;≧99.5%):17.73g
NaH2PO4・2H2O(=155.99;≧99%):37.82g)
ここで、「擬似尿電解質溶液」とは、本願発明者等がペットの尿に対するペット用排尿処理材の挙動を観察するために文献に記載されたネコやイヌの尿のデータに基づいて発案したものであり、ペットの尿の日常的変動範囲内の電解質濃度を有するものである。参考とした文献等については後述する。
また、「固化強度保持率」とは、ペット用排尿処理材が吸尿乃至吸水して得られた固化塊状物について、固化塊状物生成直後の固化強度と所定時間経過後の固化強度とを比較し、固化強度がどの程度保持されているかを示す指標である。この例では、固化塊状物を45℃の雰囲気下に6時間静置した場合に、初期固化強度がどの程度保持されているかを示している。
そして、このような構成によれば、吸尿した固化塊状物が長時間放置された場合でもその固化強度が低下しにくく、除去や移動の際に崩れたりし難く、扱いやすいペット用排尿処理材となる。
また、本願発明は、ペット用排尿処理材の製造方法としても捉えることができる。本発明に係るペット用排尿処理材の製造方法は、低結晶性シリカ成分を含有し、含有水分を25〜40重量%に調整したジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土を5〜20mm程度の塊となるよう粗砕する粗砕工程と、前記粗砕した粘土を、該粘土100重量%(乾燥重量)に対してNa2O換算で0.8〜2.7重量%の粉末状乃至水溶液状のナトリウム化合物と混合・捏和する混練工程と、前記混練された混合物を長径:4〜7mm、短径:2〜4mmの粒状物となるよう造粒する造粒工程と、前記造粒物を、150〜250℃の雰囲気下で3〜5時間、又は、250℃以上の雰囲気下で0.3〜3時間、のいずれかの条件で含有水分5%以下となるまで乾燥する乾燥工程と、を含み、前記ナトリウム化合物は、前記式(2)において係数(n)が0.4〜4である水溶性ケイ酸ナトリウムを含有し、最終生成物である活性ベントナイト造粒物は、前記式(1)で表される水浸出性ケイ酸ナトリウム成分を、造粒物100重量%(乾燥重量)当たり、酸化ケイ素(SiO2)換算で0.1〜1.0重量%の範囲で含有していることを特徴とするものである。
このような構成によれば、固化吸尿能と固化強度が共に高く、脱臭性能も高く維持された活性ベントナイト造粒物を製造することができる。特に固化強度については、水溶性ケイ酸ナトリウム成分ならびに水浸出性ケイ酸ナトリウム成分が含まれていることにより長時間経過した後でも低下しにくく、外出時間の長い飼育者が除去する際にも崩れにくいものとなる。
以上述べたように、本発明によれば、排尿直後の吸尿固化速度と吸尿量が維持乃至向上され、しかも吸尿後の固化塊状物の強度を長時間保持できるペット用排尿処理材が得られる。
加えて、本発明のペット用排尿処理材は、固化塊状物中に固定された尿が分解されることで発生するアンモニアやエチルメルカプタン等の悪臭ガスに対する脱臭性能も向上されたものである。
擬似尿電解質溶液の組成を示す図である。 活性ベントナイト粒状成型物の吸水後の接触域における変化を示す図である。 実施例1〜7によるペット用排尿処理材の物性を示す図表である。 実施例8〜10,及び比較例1〜3によるペット用排尿処理材の物性を示す図表である。 実施例1〜7によるペット用排尿処理材の評価結果を示す図表である。 実施例8〜10,及び比較例1〜3によるペット用排尿処理材の評価結果を示す図表である。
以下に、本発明に係るペット用排尿処理材及びその製造方法の好適な実施形態を添付図面を参照しながら詳細に説明する。
先にも述べたように、本発明は、排尿直後の吸尿固化速度と吸尿量が維持乃至向上され、しかも吸尿後の固化塊状物の強度を長時間保持できるペット用排尿処理材を提供することを目的としたものであり、このような課題を解決するために本発明のペット用排尿処理材は、天然のジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土粒子にアルカリ剤を添加混合して製した活性ベントナイト造粒物からなり、前記活性ベントナイト造粒物は、粉末X線回折法による測定で、[111]面由来のX線回折ピークの頂点を回折角(2θ)=21.5〜22.5°の領域に有する結晶性シリカ成分を含有し、相対湿度(RH):65%の雰囲気下で120時間吸湿したときに、前記粉末X線回折法による測定で、スメクタイト成分の[001]面の底面反射によるピーク位置が、回折角(2θ)=5.2〜6.8°の領域にあり、下記の式(1)で表される水浸出性ケイ酸ナトリウム成分を、前記活性ベントナイト造粒物100重量%(乾燥重量)に対して、酸化ケイ素(SiO2)換算で0.1〜1.0重量%の範囲で含有している、という構成を採用したものである。
Na2O・xSiO2 ・・・式(1)
(式中、xはSiO2成分のモル数を表す係数で、0.3〜3の数である)
[原料粘土及び活性ベントナイトについて]
本発明の原料粘土である酸性白土やサブベントナイトを主要に構成している粘土鉱物はジオクタヘドラル型スメクタイトに属するものであり、AlO八面体層が二つのSiO四面体層でサンドイッチされた三層構造を単位基本層とし、この単位基本層がc軸方向に積層された積層構造を有している。
また、同スメクタイトに属するモンモリロナイトにおいては前記AlO八面体層のAlの一部がMgやFe(II)で同形置換され、同じくバイデライトにおいてはSiO四面体層のSiの一部はAlで同形置換されている。
さらに、c軸方向に積層されている単位基本層の層間には、同形置換による陽電荷の不足を補うように、換言すれば陰電荷の発生を中和する形で金属イオンや水素イオンの陽イオンが対座している。
このようなジオクタヘドラル型スメクタイトは、火山灰や溶岩等が海水の影響下に変性されることにより生成したものと考えられており、粘土鉱物分類上、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイトなどがあり、天然に産する所謂酸性白土やサブベントナイト乃至ベントナイトは、これらのジオクタヘドラル型スメクタイトを主要成分として含有している粘土である。
酸性白土やサブベントナイトおいて、その主成分鉱物である前記スメクタイトの層間には、少量のNa+イオンの他に、通常 H+、K+、Mg2+、Ca2+ の4種のイオンがあり、これら陽イオンの該層間に対する侵入能は Na+<H+<K+<Mg2+<Ca2+ の順に高いことが知られている。
したがって、原料粘土の酸性白土やサブベントナイトを活性ベントナイト化、すなわちNa型ベントナイト化するためのアルカリ処理においては、Na+イオンをのぞく前記4種の陽イオンの総当量よりやや多い量のナトリウム化合物が使用される。
ただし、このようなナトリウム化合物によるアルカリ処理においては、原料粘土のスメクタイト層間に存在する前記4種の全ての陽イオンがNa+イオンよりもイオン侵入能が高いことから、Na+イオンとそれら他の陽イオンとを入れ換わらせるためには該イオンのキャリアーとしての多量の水が必要であり、また、イオン交換反応をほぼ完結させるためにはある程度の熱エネルギーも要する。
したがって、土木用、ボーリング用、鋳物砂用、製紙用、さらにはペットのトイレ砂(猫砂)用などに用いる活性ベントナイトの通常の製造法においては、低コスト製造の観点からも、以下の(1)、(2)のいずれかが採用される。
(1)原料粘土の含水塊状物乃至粒状物とナトリウム化合物の粉末乃至顆粒との固−固反応、または、
(2)原料粘土の含水塊状物乃至粒状物とナトリウム化合物の水溶液との固−液反応、
これらはいずれも、スメクタイトのNa型化をそれぞれの用途に適した程度に進行させたものである。
例えば、ペット用排尿処理材としての活性ベントナイト造粒物は、前述したようにジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土(カチオン交換容量:50meq/100g以上)を原料とし、該原料粘土100重量%(乾燥重量)当たり2〜4重量%、特に2.5〜3.5重量%の炭酸ナトリウムの固体粉末または水溶液を添加し、混練することで緊密且つ均質に分散し、適量のナトリウムイオンをスメクタイトの層間に侵入させて、一部をNa型スメクタイトに転化できる条件で製造することが多い。このように製した活性ベントナイト造粒乾燥物は、その後の単なる時間経過によってNa型ベントナイト化が進行することはないが、使用時においては、尿の吸収によって部分的にNa型化したスメクタイト粒子の部位が水和膨潤し、吸尿が起こると同時に尿水により溶かされて運ばれた適量のNaイオンが該膨潤部位から侵入し、吸尿開始から数分〜数時間後にはNa型化がほぼ完結して、最大膨潤の状態に近づくのである。
ただし、この活性ベントナイト造粒物のNa型化が製造時に必要以上に進行して使用前の時点で完全なNa型ベントナイトに近いものである場合には、トイレ砂としての使用時に、最初に尿水と接触し吸水を開始する活性ベントナイト造粒物の外層において吸尿と同時に即座にNa型スメクタイト粒子の層間膨張が起こり、該外層に以下に述べるような膨潤・ゲル化層を形成し、それが実質的な止水層となってしまう。このような状態になると、水分の侵入が外層で遮られてしまうため、後続の尿水が粘土粒内部に吸収されないか、著しく吸水乃至吸液速度を抑制してしまうことになり好ましくない。
活性ベントナイト粒状成型物のNa型化の進行度合いは、粉末X線回折法により測定されるスメクタイト成分の底面間隔(d001)により把握することができるものであり、本発明のペット用排尿処理材においては、ジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土は、相対湿度(RH):65%の雰囲気下で120時間吸湿させたときに、粉末X線回折法により測定されるスメクタイト成分の底面間隔(d001)が、1.3〜1.7nm(2θ=5.2〜6.8°)の範囲となるように調整することが好ましく、この範囲となるようにすることで活性ベントナイト造粒物のNa型化を好適な進行度合いとすることができる。
スメクタイト成分の底面間隔(d001)が上述の範囲であることは、Na型化の進行度合いが小さく、スメクタイト層間の陽イオンはCaやMgの2価金属イオンが支配的であることを意味し、粒状物の吸水速度や吸水量を阻害しないばかりか、寧ろ促進する丁度よい程度に起こっているものと考えられる。Na型化が必要以上に進みすぎていると、相対湿度(RH)が65%の雰囲気下では層間に多く存在するNaイオンを中心とする四角形の4つの各頂点に1個ずつの水分子(H2O)が、層面に対して水平に単分子層を形成するように配位して安定化するので、底面間隔(d001)は1.20〜1.25nmの範囲にとどまる。一方、Na型化が適度に進行してはいるが、まだCaやMgといった2価金属イオンの割合が多い場合、同じ相対湿度下では、CaまたはMgイオンを中心とする八面体の6つの各頂点に1個ずつの水分子(H2O)が、層面に対して水平に2分子層を形成するように配位して安定化する。それに対応して層間も拡がり、前記測定条件下での底面間隔(d001)が1.3〜1.7nm(2θ=5.2〜6.8°)の範囲となるものである。
ペット用排尿処理材としては、吸尿開始から最大膨潤に近づく迄の時間の許容範囲はそれ程厳密ではなく数分〜数時間程度であればよいが、吸尿後の放置による水分の粒内層への更なる吸収や粘土粒外層からの水分蒸散により粘土粒が半乾き状態となる前に、ペット用排尿処理材の粘土粒を構成しているスメクタイト粒子が充分に膨潤した上で分散して濃縮泥状(ヒドロゾル状態)となることが重要である。
このような吸水時におけるスメクタイト粒子の分散状態が図2に模式的に示されている。尿という水性媒体中で三次元方向にばら撒かれカード状(不定形)に単分散したスメクタイト粒子が(図2(a)参照)、水分の吸収や蒸散により半乾き状となる凝縮過程で所謂カードハウス構造を形成し(図2(b)参照)、ヒドロゾル状態からヒドロゲル状態へと変化し、半乾燥ゲルとなってやや弾性のある含水固化塊状物となり、さらに長時間の放置によってはキセロゲル(乾燥ゲル)の状態となって、非弾性である乾燥固化塊状物となると考えられる。すなわち、ヒドロゾル状態である段階でスメクタイト粒子を十分に分散させてカードハウス構造を形成させることで、乾燥固化塊状物となった際にも十分な固化性能が得られるものと考えられる。
また、本発明において用いる原料粘土としては、2θ=21.5〜22.5の領域に頂点を有し且つ半値幅(°/2θ)が0.4以上であるX線回折ピークを有するアルカリ可溶性シリカ成分を、SiO2換算で活性ベントナイト造粒物100重量%に対して20〜35重量%の範囲で含むものが望ましい。先にも述べたように、これらのアルカリ可溶性シリカ成分により形成された細孔は吸水時に水分が流れ込む流路となり、吸水能の向上に寄与するものである。ここで、SiO2の含有率が20重量%未満では細孔が少なく十分な流路が得られない虞があり、逆に含有率が35重量%を超えると結着を阻害する成分の割合が多くなるため十分な凝集固化性が得られない虞があり、また活性ベントナイト造粒物自体の強度も低下する虞がある。
また、このアルカリ可溶性シリカ成分が、低結晶性オパール乃至非晶質シリカ(含水シリカ)からなる低結晶性シリカ成分であれば、天然のCa型乃至Mg型ベントナイトをアルカリ処理して活性ベントナイト造粒物を製造する過程においても、前記低結晶性シリカは大部分がアルカリ可溶性シリカ成分として活性ベントナイト造粒物のマトリックス固相の中に残って含有され、主成分スメクタイトの連続相を多くの箇所で寸断することによりマクロ孔と流路を形成し、該造粒物の吸水性を著しく高める効果がある。
該アルカリ可溶性シリカ成分が、前記半値幅(°/2θ)が0.4以上のより低結晶性のオパール乃至非晶質シリカからなる粒子であると、該粒子はより多孔質となっているため上記吸水効果がより強化され、また、このようなシリカは無水の高結晶質シリカではなく、適度の水酸基(≡Si−OH)を有する謂わば含水シリカ(ケイ酸)であるため、後述するように、通常のアルカリ処理によっても一部ケイ酸ナトリウム化して少量の水溶性ケイ酸ナトリウムを生じたりして、前記固化性能の向上にも寄与する。
また、水溶性ケイ酸ナトリウムは生成しないまでも、該含水シリカ(ケイ酸)がアルカリで中和され、表面にNa原子がイオン結合した[≡Si−O・Na]のごとき構造が生成すると、それも後述するように、本発明でアルカリ剤として添加するケイ酸ナトリウムと同様に、活性ベントナイト造粒物が吸水した時にほぼ同時に起こる主成分スメクタイトの層間のCaイオンまたはMgイオンとNaイオンとの交換反応を促進する効果が生じる。このことによって、吸水した該造粒物中のスメクタイト成分はNa型化が一挙に進み、急速な膨潤・粘着・固化を経て、優れた固化性能を発揮することとなる。
ここで、前記シリカ粒子が回折角(2θ)=21.5〜22.5°の領域に有する[111]面由来のピークの半値幅が0.4以上であることは、該シリカ粒子がより低結晶質乃至非晶質であることを意味し、より大きな細孔の繋がった孔路を形成できるため、より優れた吸尿性乃至吸水性を保有できることとなる。
本発明において、ペット用排尿処理材の原材料となる天然のジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土としては、スメクタイト成分の底面間隔(d001)と、X線解析ピークの半値幅と、アルカリ可溶性シリカ成分の含有量が上述の範囲であること以外は特に限定せず、ベントナイトや酸性白土等を適宜用いることができる。
天然の原料ベントナイトには、方解石のような炭酸カルシウム由来のカルシウム成分をCaO換算で10%以上も含むものがあるが、このカルシウム成分はスメクタイトの層間にあるカルシウムイオンと添加したナトリウム化合物由来のナトリウムイオンとの交換反応に影響を与える可能性は小さいと思われるが、この含有量が多くなるにつけスメクタイト成分が少なくなるので、全カルシウム成分の含有率はCaO換算で5重量%以下に抑えることが好ましい。
また、活性ベントナイト造粒物が相対湿度(RH):65%の雰囲気下で120時間吸湿したときに、粉末X線回折法による測定で、スメクタイト成分の[001]面の底面反射によるピーク位置が、回折角(2θ)=5.2〜6.8°の領域にあることは、該活性ベントナイトのNa型化の進行度合いがあまり高くなく、所謂Ca型乃至Mg型のベントナイトの適度な範囲内に留まっていることを意味している。先にも述べたように、吸尿開始前の時点で活性ベントナイト造粒物のNa型化の進行度合いが過度に高いと、活性ベントナイト造粒物外表面が水分と接触した際に活性ベントナイト造粒物外表面が即座に凝集固化して遮水層のようなものを形成することがあるが、前記ピーク位置が上述の条件を満たすものであれば活性ベントナイト造粒物のNa型化の進行度合いは適切な範囲であり、吸尿によって遮水層は生じにくく、その点からもより高い吸尿性乃至吸水性を保持できるのである。
発明者等の知見によれば、活性ベントナイト造粒物中に分子レベルに分散しているポリケイ酸は、該活性ベントナイト造粒物を構成しているスメクタイト粒子塊や低結晶質乃至非晶質シリカの粒子塊を繋ぎ合せる、謂わば無機接着剤(バインダー)的な役割を担っていると考えられる。すなわち本発明によれば、活性ベントナイト造粒物中に分散している多量のポリケイ酸が活性ベントナイト造粒物自体の強度をより高めることとなる。
更に、該造粒物が敷き詰められた部分に一定量の水が注加されて吸水したとき、造粒物同士の泥状接触域が形成されるが、そこに水浸出性ケイ酸ナトリウム成分が適当量存在していると、同接触域が泥状(ヒドロゾル状態)から風乾状(ヒドロゲル状態)への変化につれて、水相に溶解していたポリケイ酸イオンは更に縮合が進んで、より高分子なポリケイ酸の3次元の網状骨格を形成して固まり、半乾燥状態の沢山の造粒物が集まった強固な固化塊状物を生じるのである。
したがって、本発明のペット用排尿処理材としての活性ベントナイト造粒物は、その内部に一定量の水溶性ケイ酸ナトリウムを含有しているのみならず、所定の試験法によって測定される水浸出性ケイ酸ナトリウムとして、活性ベントナイト造粒物100重量%(乾燥重量)当たりに酸化ケイ素(SiO)換算で0.1〜1.0重量%の範囲で浸出し得るように、水溶性ケイ酸ナトリウム含有のナトリウム化合物が添加されている必要がある。
後述の実施例からも判るように、発明者等は本発明の効果において、式(1)で表される水浸出性ケイ酸ナトリウムが活性ベントナイト造粒物100重量%(乾燥重量)当たり、酸化ケイ素(SiO2)換算で0.1〜1.0重量%の範囲にあることが固化塊状物の強度を向上させるために好ましいことを見出したのである。
Na2O・xSiO2 ・・・式(1)
(式中、xはSiO2成分のモル数を表す係数である)
発明者等の知見によれば、水浸出性ケイ酸ナトリウム成分中のSiO2成分のモル数を表す係数(x)は、アルカリ処理に用いた水溶性ケイ酸ナトリウム成分の添加量と前記係数(n)にも関係して0.3〜3の範囲で変動することが判った。
逆に言えば、前記係数(x)が0.3〜3の範囲にある水浸出性ケイ酸ナトリウム成分を、酸化ケイ素(SiO2)換算で0.1〜1.0重量%の範囲で含有している活性ベントナイト造粒物を調製することによって、特に固化性能に優れた本発明のペット用排尿処理材が得られるのである。
このように、本発明で重視している活性ベントナイト造粒物の吸水・固化性能の向上に最も寄与する因子は水浸出性ケイ酸ナトリウム成分であり、該成分が該造粒物100重量%(乾燥重量)当たり、酸化ケイ素(SiO2)換算で0.1重量%よりも少ないと上述の効果は小さく、逆に1重量%よりも多いと、何故かその効果も薄れていくばかりか、前記水溶性ケイ酸ナトリウム成分の添加量が多すぎてアルカリ過剰となり、吸水性や脱臭性を阻害する傾向も出てくる。
[アルカリ剤について]
先にも述べたように、本発明においては、原材料となる天然のジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土にアルカリ剤を添加して混合・混練することで原料粘土のスメクタイト層間にナトリウムイオンを適度に導入する所謂活性化処理を行うものである。本発明において用いるアルカリ剤としては、天然のジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土に該アルカリ剤を添加混合して得られる活性ベントナイト造粒物が、活性ベントナイト造粒物100重量%(乾燥重量)当たりに式(1)で表される水浸出性ケイ酸ナトリウム成分を酸化ケイ素換算で0.1〜1.0重量%の範囲で含有するようにできるものであれば特に限定しないが、式(2)で表される水溶性ケイ酸ナトリウムを含むものであることがより好ましい。
Na2O・xSiO2 ・・・式(1)
(式中、xはSiO2成分のモル数を表す係数で、0.3〜3の数である)

Na2O・nSiO2 ・・・(2)
(式中、nはSiO2成分のモル数を表す係数である)
上記式(2)で表される水溶性ケイ酸ナトリウムの水溶液においては、Na2O成分はナトリウムイオンとして、SiO2成分は係数(n)の大きさに応じてモノ乃至ポリケイ酸イオンとして溶解している。本発明において、式(2)で表される水溶性ケイ酸ナトリウムをアルカリ剤として使用する際の使用量は、活性ベントナイト造粒物100重量%(乾燥重量)あたり酸化ナトリウム(Na2O)換算で0.8〜2.7重量%の範囲で用いることが好ましい。発明者等がアルカリ剤の変量実験等を行ったところ、アルカリ剤をこの範囲で用いることにより、固化性能に優れた活性ベントナイト造粒物を容易に製造できることがわかった。ここで、酸化ナトリウム(Na2O)の配合量が0.8重量%を下回ると、吸尿後にスメクタイト粒子の層間に十分なナトリウムイオンが導入されず、十分な膨潤性が発現されない虞がある。一方、2.7重量%を上回ると、それ以上に膨潤性が上がらないばかりか、脱臭性能が低下する虞がある。
式(2)で表される水溶性ケイ酸ナトリウムの酸化ケイ素(SiO2)としての配合量は、酸化ナトリウム(Na2O)としての配合量の好ましい範囲(0.8〜2.7重量%)と使用する水溶性ケイ酸ナトリウムの式(2)におけるSiO2成分のモル数を表す係数(n)の範囲によって決まり、係数(n)の範囲は0.4〜4であることが好ましい。係数(n)が0.4〜4付近までの場合には、ケイ酸イオンの殆どはポリマーとして溶解しており、酸化ケイ素(SiO2)としての配合量も相対的に多くなるため、ポリケイ酸の3次元網状骨格を形成し易く、強固な活性ベントナイト造粒物が出来易くなる。これに対して、係数(n)が0.4を下回ると、ケイ酸イオンの殆どはモノマーとして溶解しているため、酸化ナトリウム(Na2O)としての同じ配合量に対して酸化ケイ素(SiO2)としての配合量が相対的に少なくなり、より高分子なポリケイ酸の3次元網状骨格を形成し難く、強固な活性ベントナイト造粒物が出来なくなる虞がある。また、係数(n)が4を上回ると、ポリケイ酸イオンとして溶解しきれないためか工業的にも生産されていない。
また、先にも述べたように、アルカリ剤として使用する水溶性ケイ酸ナトリウムの添加部数や式(2)におけるSiO2成分のモル数を表す係数(n)の範囲から、水浸出性ケイ酸ナトリウム成分中のSiO2成分とNa2O成分の含有モル比は殆ど0.3〜3の範囲に入ってくるが、0.5〜3の範囲であればより好ましい。吸水後の造粒物同士の泥状接触域の水相により高分子のポリケイ酸イオンが浸出して存在していると、より強固な固化塊状物を生じることは前述のとおりである。ここで、SiO2成分とNa2O成分の含有モル比が0.3を下回ると、ケイ酸イオンの殆どはモノマーであり、ポリケイ酸の3次元網状骨格を形成し難く、強固な固化塊状物が出来なくなる虞がある。また、含有モル比が3を上回るように調製するためには、使用する水溶性ケイ酸ナトリウムの式(2)における係数(n)が4を超えるようなものを選ぶ必要があると考えられ、現実的ではない。
また、本発明において用いるアルカリ剤としては、一般的なケイ酸ナトリウムに限定されず、水酸化ナトリウム、水酸化ナトリウム水溶液、水溶性ケイ酸ナトリウム含有粘土等を用いても良い。
水酸化ナトリウムまたは水酸化ナトリウム水溶液をアルカリ剤として用いる場合には、原料粘土に添加する工程において、60℃以上の温度下における水熱反応乃至蒸熱反応を伴うようにすることが好ましい。このような条件下で添加が行われることにより、原料粘土中の粉末X線回折法による測定で、回折角(2θ)=21.5〜22.5°の領域に[111]面由来のピークを有し、特に前記ピークの半値幅(°/2θ)が0.4以上である低結晶性のシリカ成分が水酸化ナトリウムと一部反応し、水溶性ケイ酸ナトリウムと、ケイ酸粒子の表面が中和された不溶性の酸性ケイ酸ナトリウムのごときものが通常の処理よりも多く生じる。すなわち、先にも述べたように、表面にNa原子がイオン結合した[≡Si−O・Na]のごとき構造が生成されることにより、吸水時に一部のシリカ成分がケイ酸ナトリウムのような役割を果たすことで、水溶性ケイ酸ナトリウムを添加した場合と同様に固化性能の向上に寄与するのである。
また、ここで水溶性ケイ酸ナトリウム含有粘土とは、所定の成分を含む原料粘土にアルカリ剤を添加して水熱反応乃至蒸熱反応を行うことで得られるものである。具体的には、低結晶性シリカから成るアルカリ可溶性シリカ成分(SiO2)を20重量%以上(乾燥重量)含有している天然のジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土に対して、必要に応じて加水、混練、造粒を1回以上実施して粗砕したのち、原料粘土中のアルカリ可溶性シリカ成分(SiO2)の2モル倍(Na2O換算)以下の量の水酸化ナトリウム水溶液を添加した上で、オパール性シリカ等のアルカリ可溶性シリカ成分が溶解する条件下で混練、捏和を行いながら水熱反応乃至蒸熱反応を起こさせる。これを造粒することで水溶性ケイ酸ナトリウム含有粘土とすることができる。水熱反応乃至蒸熱反応はアルカリ可溶性シリカ成分が溶解する条件下で行われることが必要であり、例えば80〜130℃の温度下で1〜16時間の範囲で行われる。このようにして得られた水溶性ケイ酸ナトリウム含有粘土は、前記式(2)における係数(n)が0.5以上となる。
このように水溶性ケイ酸ナトリウム含有粘土をアルカリ剤として用いることにより、水溶性ケイ酸ナトリウムを単味で用いた場合と同程度乃至それ以上の固化性と脱臭性の向上が認められた。
次に、本発明の活性化処理における本アルカリ剤の役割について、固化性能と脱臭性能の向上の面から以下に述べる。
[固化性能について]
従来の活性ベントナイト造粒物からなるペット用トイレ砂基材の使用時においては、粒状物同士が、吸尿によってその接触域に形成された高濃度のスメクタイト粒子の集合乃至結合組織によって繋がり合い、ある一定の強度をもった塊状物となって固化すると考えられている。
すなわち、これらの固化塊状物は、活性ベントナイト造粒物同士が自らの構成成分粒子が繋がり合うことによって結合組織を形成し、該結合組織は主にスメクタイト粒子が三次元に連なったマトリックス(カードハウス構造)から成っていると考えられる。吸尿直後から半乾燥状態までの含水固化塊状物においては、多量の水が該マトリックスの多孔空間を埋めているため、固化塊状物は膨満状態を保ったまま弾力性も維持しておりある程度の強度を有している。
一方、長時間経過により半乾燥状態からさらに乾燥して乾燥状態に近づいている乾燥固化塊状物においては、含有水分が失われていくにつれ膨満状態も失われ、該塊状物は体積も縮小して弾力性も失われ、ときにはヒビワレも生じるなどして外力に対して脆くなり、固化強度も低下していく。
上述の主にスメクタイト粒子が三次元に連なったマトリックス(カードハウス構造)から成る結合組織においては、それを構成しているカードの一枚一枚がそれぞれ不揃いの大きさ(縦横:数十〜数百Å、厚さ:10〜20Å)のスメクタイト単位基本層(アルミノシリケート層)からなり、それらの層面(−:マイナスに帯電)と端面(δ+)が交互且つ相互に静電結合して、所謂カードハウス構造を形成しているというイメージが想像される(図2参照)。
しかしながら、このフレームワークを成しているのは厚さ10Å余の不揃いな大きさの二次元シート(アルミノシリケート層)であるため、シート同士の層面と端面はあまり緊密に接合しているとは言えず、その結合も静電気的な引力によるものである故にあまり強い接着状態とも言えない。また、このフレームワークは内部に大量の水を含んでいる状態では柔軟性も弾力性もあるが、乾燥状態では柔軟性も弾力性も失われ、振動や衝撃などの外力に対してはやや脆い面もある。これは、二次元シートと仮称しているアルミノシリケート層が厚さ方向も加えた三次元方向に立体的に広がる共有結合によって構築されているため、それ自体は柔軟性も弾力性も小さい構造のシートとなっているためとも言える。
以上において縷々説明したように、従来法による活性ベントナイト系ペット用トイレ砂は、前述の作用機序により固結した塊状物が、内部が粘土質の弾力を残した半乾燥ゲル化状態となっている排尿吸収後数十分〜数時間の間においては、人の手掴みや除去用スコップ等による外力で壊れずに除去・廃棄できるものであり、活性ベントナイトの製法や原料粘土により多少は異なるが、従来の通常の使用上は満足ではないが許容できる優劣差であった。
本発明においては、アルカリ剤として使用される水溶性ケイ酸ナトリウムのNa2O成分が、従来の炭酸ナトリウム等による処理と同様に、適量のNaイオンをスメクタイトの層間に侵入させて一部をNa型スメクタイトに転化でき、使用時においては、尿の吸収によって部分的にNa型化したスメクタイト粒子の部位が水和膨潤し、引き続き起こるNa型化と膨潤の更なる進行により、ベントナイト粒状物の外層に膨潤・ゲル化層を形成し、スメクタイト粒子が三次元に連なったカードハウス構造のマトリックスから成る結合組織とともに固化塊状物を形成するのである。
一方、溶解性SiO2成分は、やはり使用時においては、上述のスメクタイト粒子が三次元に連なったカードハウス構造のマトリックスから成る結合組織のフレームワークの中に、ポリケイ酸イオンが三次元に分散・溶解し、線状分子イオンによる不規則な網目構造を形成し、本結合組織を更に強化するという、固化補強剤の役割を果たしていると考えられる。
吸尿直後の固化塊状物の中には水溶性ケイ酸ナトリウム分が尿液中に一部は溶解しており一部は未溶解のまま分散している。その後、ポリケイ酸イオンは水分の蒸散にともなって固化塊状物を形成している活性ベントナイト造粒物の表面近くに濃縮され、一部は表面に滲み出ていると考えられる。このことによって、ある程度水分が残っている間は固化塊状物の柔軟性と弾力性が維持され、長時間経過により殆どの水分が蒸散し、風乾・乾固した後においても、固体状態でのポリケイ酸からなるフレームワークが、スメクタイト粒子同士の結合によるフレームワークと相絡み合うような構造で形成され、より強固な結着性を有するベントナイト造粒物となる。すなわち、このポリケイ酸からなるフレームワークは造粒物の表面乃至表面により近い外層部分(膨潤・ゲル化層=泥状・凝縮・結着部分)でより緻密により強固となり、より頑丈な固化塊状物が形成され、固化性に優れた活性ベントナイト粒状物が提供されるのである。
固化性能は、上述の固化性に関する諸性能であり、本発明においては、後述の試験法で定義した吸液固化速度[SS]、固化吸液能[CA]及び固化強度[RS]等を測定することによって総合的に評価できる。
[脱臭性能について]
ペット用排尿処理材に求められるもう一つの重要な性能は、ペットの尿や糞から発生する臭気成分を吸収・吸着する能力を増強し、基材そのものの脱臭性能を高めることである。
本発明において、水溶性ケイ酸ナトリウムを含有するアルカリ剤で活性化処理することのもう一つの利点は、脱臭性能の向上にある。
すなわち、活性ベントナイト粒状物の内外面に分散されて存在するポリケイ酸の有するシラノール基(≡Si−OH)由来のプロトン酸(H+)は、一部はNa+で中和・置換されているが、一部は中和されずに存在しており、同じ活性ベントナイト粒状物の原料であるジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土由来の個体酸と相俟って、該粒状物の固体酸性がより強化されていると考えられる。
また、後述の実施例からも解るように、本アルカリ剤の使用によれば、前述のようにより固化性に優れた活性ベントナイト粒状物が提供されるので、従来の炭酸ナトリウムによる活性化処理よりも原料粘土自体のNa型化が低い場合であっても同等以上の固化性が得られる。したがって、水溶性ケイ酸ナトリウムとして添加されるNa2O分を減じてもよく、その分、該造粒物全体の固体酸性が中和されずに残存し、脱臭性能、特にアンモニア(やエチルメルカプタン)等の塩基性悪臭ガスに対する脱臭性能の向上に寄与するものである。
尿から最も多く発生する臭気成分はアンモニアであり、尿の主成分である尿素に種々の細菌や酵母由来の加水分解酵素であるウレアーゼが作用して発生するものである。また、最近発見され、オスネコの尿中に特に多く含まれる一種のフェロモン用物質である3−メルカプト−3−メチル−1−ブタノール(3MMB)の特異臭は人間にとって著しい悪臭となっている。一方、糞から発生する悪臭物質には、エチルメルカプタン、硫化水素、インドール、スカトールなどが知られている。
前述したように、活性ベントナイト系トイレ砂用基材の原料粘土である天然のジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土である酸性白土やサブベントナイトは、その内表面や外表面に固体酸(ブレンステッド酸)の素となるHイオン(H+)がその酸性度に応じて保持されている。したがって原料粘土自身は尿から発生するアンモニア等の塩基性臭気成分に対しては優れた脱臭性能を有しているものである。一方、一般には酸性臭気に分類されるエチルメルカプタン等に対してもある程度の脱臭能を有していることについては、同個体酸がエチルメルカプタン等のメルカプト基のS原子が有する孤立電子対の受容体となって吸着する為とも考えられる。
ところが、本発明に係るペット用排尿処理材は、このような固体酸を有する原料粘土に高い固化性能を付与する目的でアルカリ処理したものである為、元来保有している固体酸の多くは中和されるが、本発明のアルカリ処理の方法によっては或る程度の固体酸を残すことができる一方、ポリケイ酸ナトリウムが中和のために放したNaイオンと引き換えにHイオンと結合して新たにシラノール基を生成せしめることができる。また、添加された水溶性ケイ酸ナトリウムを含有するアルカリ剤は、中和に及ばなかったナトリウム分だけ固体塩基として残存していると考えられる。
すなわち、本発明のペット用排尿処理材は、固体酸と固体塩基の両性質を併せ持つものであり、上述の一般に酸性臭気に分類されてはいるが、酸性質(―S-+)と塩基性質(―(H)S:孤立電子対)を併せ持つエチルメルカプタン等に対しての脱臭性能はこの両性質によるものと考えられる。
このような固体酸由来の脱臭性能を示す指標として、発明者等は先に「置換性水素指数IH」という指標を提案している。置換性水素指数IHとは、置換性水素イオン量の大小の指標を表したものであり、この置換性水素指数IHが高い程その活性ベントナイト乃至原料粘土の脱臭性能は高くなると言える。本発明者等の知見によれば、スメクタイト層間または表面に保持される水素イオンが多いほど、各種悪臭ガスに対する脱臭能も高いものとなる。
ペットの糞尿に由来する種々の悪臭ガスのうち、尿から最も多く発生する臭気成分はアンモニアであり、尿の主成分である尿素に種々の細菌や酵母由来のウレアーゼ(加水分解酵素)が作用して発生するものである。また、尿に起因する臭気成分の一つであり、オスネコの尿中に特に多く含まれる一種のフェロモン様物質である3−メルカプト−3−メチル−1−ブタノール(3MMB)が最近発見されており、この3MMBの特異臭は人間にとって著しい悪臭となっている。更に、糞から発生する悪臭ガスとしては、エチルメルカプタン、硫化水素、インドール、スカトールなどが知られている。
なお、脱臭性能は、窒素(N)系悪臭ガスであるアンモニア、インドール、スカトールの代表としてはアンモニア、硫黄(S)系悪臭ガスである3−メルカプト−3−メチル−1−ブタノール、エチルメルカプタン、硫化水素の代表としてはエチルメルカプタンを選び、後述のアンモニア脱臭能[DODN]とメルカプタン脱臭能[DODS]を測定することによって総合的に評価される。
したがって、本願においてペット用排尿処理材の脱臭性能は、窒素(N)系悪臭ガスであるアンモニア、インドール、スカトールの代表としてはアンモニアを選んでこれに対する脱臭能力を示すアンモニア脱臭能DODNを測定し、また、硫黄(S)系悪臭ガスである3−メルカプト−3−メチル−1−ブタノール、エチルメルカプタン、硫化水素の代表としてはエチルメルカプタンを選んでこれに対する脱臭能力を示すメルカプタン脱臭能DODSを測定することによって総合的に評価する。
[製造工程]
本発明に係るペット用排尿処理材の製造は、例えば次のように行われる。酸性白土やベントナイト等の天然のジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土を原料粘土として用い、該原料粘土の含有水分がを40重量%以下になるように調整した後、ジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土を5〜20mm程度の塊となるよう粗砕し、必要に応じて1回乃至複数回の混練、造粒を行う。次いで、該原料粘土100重量%(乾燥重量)に対して、アルカリ剤を酸化ナトリウム(Na2O)換算で0.8〜2.7重量%の範囲で添加・混練して、長径:4〜7mm、短径:2〜4mmの粒状物が得られるように造粒を行い、

乾燥させることでペット用排尿処理材として用いることができる活性ベントナイト粒状成型物が得られる。
ここで用いるアルカリ剤としては、ケイ酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、もしくはそれらの水溶液等を用いることが出来るが、式(2)で表される係数(n)が0.4以上である水溶性ケイ酸ナトリウムであればより好ましい。また、前述の水溶性ケイ酸ナトリウム含有粘土をアルカリ剤として用いても良い。いずれにせよ、得られる活性ベントナイト粒状成型物中に式(1)で表される水浸出性ケイ酸ナトリウム成分が、活性ベントナイト粒状成型物100重量%(乾燥重量)当たり、酸化ケイ素(SiO2)換算で0.1〜1.0重量%の範囲で含有され、且つ、水浸出性ケイ酸ナトリウム成分中のSiO2成分とNa2O成分の含有モル比(x)が0.3〜3の範囲となることが重要である。

Na2O・xSiO2 ・・・式(1)
(式中、x はSiO2成分のモル数を表す係数である)

Na2O・nSiO2 ・・・式(2)
(式中、n はSiO2成分のモル数を表す係数である)
混合、混練処理に用いる装置としては、一軸または二軸の押出型混練装置、スクリュー式押出機、ロール型混練装置、バンバリーミキサー、土練機、コンクリートミキサー、ディスクペレッターなどを用いることができる。
また、活性ベントナイト粒状成型物の乾燥条件は、150〜250℃の雰囲気下で3〜5時間、又は、250℃以上の雰囲気下で0.3〜3時間のいずれかの条件であることが好ましく、造粒物の含有水分が5重量%以下となるまで行われることが望ましい。
すなわち、本発明に係るペット用排尿処理材の製造工程の一例としては、低結晶性シリカ成分を含有し、含有水分を25〜40重量%に調整したジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土を5〜20mm程度の塊となるよう粗砕する粗砕工程と、前記粗砕した粘土を、該粘土100重量%(乾燥重量)に対してNa2O換算で0.8〜2.7重量%の粉末状乃至水溶液状のナトリウム化合物と混合・捏和する混練工程と、前記混練された混合物を長径:4〜7mm、短径:2〜4mmの粒状物となるよう造粒する造粒工程と、前記造粒物を、150〜250℃の雰囲気下で3〜5時間、又は、250℃以上の雰囲気下で0.3〜3時間、のいずれかの条件で含有水分5%以下となるまで乾燥する乾燥工程、という工程を含むものである。
先にも述べたように、本発明に係るペット用排尿処理材は、吸尿後の固化塊状物の強度を長時間維持できること、吸尿後の固化塊状物の脱臭性能を向上させること、排尿直後における吸尿固化速度と吸尿量を維持乃至向上させること、などが目的である。本願においては、これらの目的が達成されているか否かを判断するための基準として、以下に示す各パラメータを用いる。
<吸液固化速度:SS(mL/g/sec)>
ペット用排尿処理材に尿が接触したときに、尿がどの程度の時間で吸収されるかを示す指標として用いることができるのが、下記の式(4)で表される吸液固化速度SSである。発明者等の知見によれば、吸液固化速度:SS(mL/g/sec)が0.07以上であれば排尿された尿がペット用排尿処理材表面に溜まったりせずに速やかに吸収され、好ましい。

S=2.5×N-1・・・式(4)
(式中、Nは疑似尿電解質溶液5mLが粒状物試料2gに吸収される迄の
時間(sec)である。)
<固化吸液能:CA
ペット用排尿処理材が、どの程度の量の尿を吸収できるかの指標として用いることができるのが、下記の式(5)で表される固化吸液能CAである。発明者等の知見によれば、固化吸液能:CAが85以上であれば、ペット用排尿処理材として十分な吸尿能乃至吸液能を有すると考えられる。なお、ここで固化吸液能CAは、単位は無次元であるが、擬似尿電解質溶液に対する固化塊状物を構成している粒状品試料の100g当たりの吸液量(g)を意味している。

A=[8/(MO−8)]×102・・・式(5)
(式中、MOは、疑似尿電解質溶液8gを吸収した固化塊状物の重量(g)で
ある。)
<固化強度:RS
ペット用排尿処理材を吸収した後の固化塊状物に振動等の外力を与えたときに、どの程度崩れにくいかを示す指標として用いることができるのが、下記の式(6)で表される固化強度RSである。発明者等の知見によれば、固化強度:RSが65以上であれば、固化塊状物が除去や廃棄のために外力を受けた際にも崩れにくく、好適なペット用排尿処理材だと言える。

S=(MX/MO)×102・・・式(6)
(式中、MOは、疑似尿電解質溶液8gを吸収した固化塊状物の重量(g)、
Xは、該塊状物を所定の条件下にふるい振とう器にかけて部分的に崩壊した後
にふるい面上に残存する全塊状物の重量(g)である。)
<アンモニア脱臭能:DODN、メルカプタン脱臭能:DODS
本願においては、窒素系悪臭ガスに対する脱臭能力については下記の式(7)で表されるアンモニア脱臭能DODN用い、硫黄系悪臭ガスに対する脱臭能力については下記の式(8)で表されるメルカプタン脱臭能DODSを用いて脱臭能の評価を行う。発明者等の知見によれば、窒素系悪臭ガスについてはアンモニア脱臭能DODNが98.5以上であれば十分な脱臭能が認められ、また、メルカプタン脱臭能DODSが96.5以上であれば硫黄系悪臭ガスに対する十分な脱臭能が認められる。

DODN={([AMCB]−[AMCR])/[AMCB]}×100・・・式(7)
(式中、AMCBは、試料が存在せず、所定濃度のアンモニア水溶液のみが存在
する密閉容器内気相部分のアンモニアのブランク濃度(ppm)、
AMCRは、所定濃度のアンモニアの水溶液が底部に敷き詰められた粒状物試料の
一部(中央部)に吸収された状態にある密閉容器内気相部分のアンモニアの濃度
(ppm)である。)

DODS={([EMCB]−[EMCR])/[EMCB]}×100・・・式(8)
(式中、EMCBは、試料が存在せず、所定濃度のエチルメルカプタン水溶液のみ
が存在する密閉容器内気相部分のエチルメルカプタンのブランク濃度(ppm)
EMCRは、所定濃度のエチルメルカプタン水溶液が底部に敷き詰められた
ペット用排尿処理材試料の一部(中央部)に吸収された状態にある密閉容器内気
相部分のエチルメルカプタンの濃度(ppm)である。)
[試験法]
以下に、本発明で用いられる各種試験法について説明する。
<水浸出性ケイ酸ナトリウム成分のモル比(x)>
ペット用排尿処理材試料100g(150℃乾燥物換算)当たりに含有される、下記式(1)で表される水浸出性ケイ酸ナトリウム成分を、酸化ケイ素(SiO2)換算または酸化ナトリウム(Na2O)換算のミリモル量で求め、且つ、該水浸出性ケイ酸ナトリウム成分中のSiO2成分とNa2O成分の含有モル比(x)を求める。
Na2O・xSiO2 ・・・式(1)
(式中、x はSiO2成分のモル数を表す係数である。)
<水浸出性ケイ酸ナトリウム成分の測定法>
500mLのビーカーに、予めペット用排尿処理材試料を乳鉢で粉砕し100メッシュの篩を全通させた試料20.0g(150℃乾燥物換算)を秤取り、純水を加えて全量を400gとなし、マグネチックスターラーにより2時間撹拌した。撹拌終了後、試料と水の合量が正確に400gになるように必要に応じて水を加え、再度撹拌して全体を均質にし、その一部を遠心分離機にかけて透明な上澄液が得られるように遠心沈降させた。得られた上澄液を、測定に適した濃度となるように希釈し、該希釈液(希釈倍率:r1)をICP質量分析装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、iCAP6000シリーズを使用)にかけてSi原子とNa原子の濃度(A1,B1,単位:ppm)を測定した。このとき、試料100g当たりの溶解性ケイ酸ナトリウム成分の含有量等が次のように算出される。
SiO2換算量(aミリモル)=A1×r1×19×10-6/28
Na2O換算量(bミリモル)=B1×r1×19×10-6/46
成分モル比(x)=SiO2/Na2O=a/b
<アルカリ可溶性シリカ成分のSiO2含有量(g)>
大部分の[111]面由来のX線回折ピークの頂点を回折角(2θ)=21.5〜22.5°の領域に有する低結晶性シリカ成分と、アルカリ剤処理により生じた種々のモル比のケイ酸塩中のシリカ成分から成るアルカリ可溶性シリカ成分の合量であり、ペット用排尿処理材試料100g(150℃乾燥物換算)当たりの酸化ケイ素(SiO2)換算の重量(g)で表す。
<アルカリ可溶性シリカ成分の測定法>
500mLのステンレス鋼製ビーカー中、予め粒状物試料を乳鉢で粉砕し100メッシュの篩を全通させた試料10g(150℃乾燥物換算)を0.5モル濃度のNaOH水溶液200mlに分散させてスラリー状となし、90℃で8時間加熱撹拌して溶解反応を行い、冷却後、このアルカリ溶解スラリーを遠心分離機にかけて無色透明な清澄液を得た。この無色透明なNa塩水溶液を蒸発乾固させて得られた粉末試料について蛍光X線分析と150℃基準での強熱減量(/1050℃)分析を行い、求められたSiO2成分とNa2O成分のモル比と溶解に関与したNaOHのモル量から、NaOH水溶液に溶解してきたシリカ(SiO2)のモル量を算出した。このとき、試料100g(150℃乾燥物換算)当たりの含有量(g/SiO2換算)が算出される。
<シリカ[111]面由来のX線回折ピークの半値幅(°/2θ)>
予め粒状物試料を乳鉢で粉砕し100メッシュの篩を全通させた試料について、
下記X線回折条件:
X線回折装置:(株)リガク社製、MultiFlex(Cu−Kα)
管電圧 :40kV
管電流 :30mA
発散スリット:1°
散乱スリット:1°
受光スリット:0.3mm
により測定された回折角(2θ)=21.5〜22.5°の領域に頂点を有するシリカ成分の[111]面に基づくXRDピークに対して、同装置内蔵の基本データ処理ソフトウエアを用いて、ピーク位置P°を中心に2θ=P±1°の領域で〔平滑化処理〕、〔バックグランド除去処理〕及び〔Kα2除去処理〕等を行い、当該ピークの半値幅(°/2θ)を求める。
<スメクタイトの底面反射によるピーク位置の適合性>
予めペット用排尿処理材試料を乳鉢で粉砕し100メッシュの篩を全通させた試料約2gを用い、150℃で2時間乾燥する。関係湿度RH=65%に設定したデシケータ中で、前記乾燥試料を当該湿度雰囲気に120時間暴露し、
下記X線回折条件:
X線回折装置:(株)リガク社製、MultiFlex(Cu−Kα)
管電圧 :40kV
管電流 :30mA
発散スリット:1°
散乱スリット:1°
受光スリット:0.3mm
で測定して、試料中主成分スメクタイト粘土鉱物の[001]面由来の底面反射によるピーク位置(最大強度位置)を回折角(°/2θ)で求め、適合性(適合範囲=5.2〜6.8°/2θ)を判定する。
なお、当該測定条件下でスメクタイト底面反射のピーク位置が回折角(2θ)=5.2〜6.8°、すなわち底面間隔が1.7〜1.3nmの範囲にあるということは、本発明によるアルカリ剤処理後のペット用排尿処理材中の主成分スメクタイトの層間陽イオンのNaイオン置換が必要以上には進行していず、適正な度合にあることを表している。


<置換性水素指数:IH
下記の式(3)で表される置換性水素指数IHを後段の測定結果を用いて求めた。
H=(BH−AH)×1010 ・・・式(3)
(式中、AHは、粒状品試料が脱イオン水に1重量%濃度で分散された懸濁液での水素
イオン濃度(mol/l)、BHは、該懸濁液100gに1gの塩化ナトリウムを
加えて、70℃で60分間処理したのちの水素イオン濃度(mol/l)である。)
<置換性水素指数の測定法>
100mLのビーカーに、150℃乾燥基準で1gの粒状物試料(固形分:a%、有姿(100/a)g)を秤取し、脱イオン水を加えて全量を100gとして、室温(20℃〜30℃)下、マグネチックスターラ―付ホットプレート上で5分間撹拌し、ガラス電極の底部を水面下約3cmの位置まで差し入れて、その時点でのpHを測定(/20℃〜30℃)した。(A懸濁液、pH:A)
ついで、上記pH測定後のA懸濁液に、そのまま、試薬の塩化ナトリウム(NaCl:58.44,min.99.0%)1.0g(1.0g as NaCl)を加えて、マグネチックスターラ―付ホットプレート上で加熱し、液温を70℃±2℃に保ちながら60分間撹拌し、ついで、冷水浴上冷却して、液温が30℃以下に下がったら、脱イオン水を加えて全量を101gとなし、同様にpHを測定(/20℃〜30℃)した。(B懸濁液、pH:B)
上記のpH測定で求められたpH値[A]とpH値[B]より、それぞれの水性懸濁相における水素イオン濃度[AH]と水素イオン濃度[BH]を求めて前記式(3)に代入し、置換性水素指数IHが算出される。(小数点以下4捨5入)
<擬似尿電解質溶液の所定処方>
5Lのビーカーに2kgの脱イオン水を入れ、撹拌下、各々別々に秤取した7種の試薬、
1_CaCl2・2H2O(=147.01;≧99%):0.22g
2_MgCl2・6H2O(=203.30;≧97%):2.83g
3_KCl(=74.55;≧99%):27.11g
4_NaCl(=58.44;≧99%):3.54g
5_Na2SO4(=142.04;≧99%):17.22g
6_NaHCO3(=84.01;≧99.5%):17.73g
7_NaH2PO4・2H2O(=155.99;≧99%):37.82g
を順次加え入れて溶解する。脱イオン水を加えて全量を3kgとなし、さらに撹拌して均質な溶液となして、擬似尿電解質溶液を得た。pHを測定すると、pH:6.0〜6.5(20〜30℃)でった。
なお、本処方における擬似尿電解質濃度は、文献1,2に示された各種電解質成分のペット(主にネコまたはイヌ)の尿中排泄量の値を参考にして定めたものである。このようにして調製されたペット擬似尿電解質溶液の電解質濃度が図1に示されている。
<吸液固化速度:SS(mL/g/sec)>
S=2.5×N-1・・・式(4)
(式中、Nは疑似尿電解質溶液5mLが粒状物試料2gに吸収される迄の
時間(sec)である。)
<吸液固化速度の測定法>
容量30ml(内経:約28mm)のガラス製サンプル瓶に、あらかじめ150℃で3時間乾燥した後シリカゲルを敷き詰めたデシケータ―中で1時間放冷した粒状物試料2gを秤取し、疑似尿電解質溶液5mL(=2.5mL/g)を静かに加え入れて静置し、5秒間隔の目視観察により、該溶液が吸収されて泥状化し、未吸収の上澄液も略なくなった時点を終点としてその間の時間(N/sec)を計測した。このとき、上記式に当該時間(N)を代入して吸液固化速度:SS(mL/g/sec)が算出される。
<固化吸液能:CA
A=[8/(MO−8)]×102・・・式(5)
(式中、MOは、疑似尿電解質溶液8gを吸収した固化塊状物の重量(g)で
ある。)
<固化吸液能の測定法>
深さが15cm以上である方形または円筒形のトレイに、あらかじめ150℃で3時間乾燥した後シリカゲルを敷き詰めたデシケータ中で1時間放冷した粒状物試料を約15cmの深さに敷き詰め、表面を平らにしてから、擬似尿電解質溶液8gを1cmの高さから10秒間で注下して得られた固化塊状物を10分後に取り出し、重量MO(g)を測定した。得られた固化塊状物の重量MO(g)を上記式に代入して固化吸液能:CAが算出される。
<固化強度:RS
下記の式(6−1)および式(6−2)で表される固化強度RS1およびRS2が後段の測定結果から求められる。
S1=(MX1/MO)×102・・・式(6−1)
(式中、MOは、疑似尿電解質溶液8gを吸収した固化塊状物の重量(g)、
X1は、該塊状物を所定の条件下にふるい振とう器にかけて部分的に崩壊した後
にふるい面上に残存する全塊状物の重量(g)である。)
S2=(MX2/MAD)×102・・・式(6−2)
(式中、MADは、疑似尿電解質溶液8gを吸収した固化塊状物を45℃の雰囲気下
に6時間静置後の重量(g)、
X2は、該塊状物を所定の条件下にふるい振とう器にかけて部分的に崩壊した後
にふるい面上に残存する全塊状物の重量(g)である。)
<平均固化強度:RSA
下記の式(6−3)より、上記経時変化(45℃の雰囲気下に6時間静置)中の平均固化強度:RSAが求められる。
SA=(RS1+RS2)/2・・・式(6−3)
<固化強度保持率:KR
下記の式(6−4)より、上記経時変化(45℃の雰囲気下に6時間静置)後の固化強度保持率:KRが求められる。
R=RS2/RS1・・・式(6−4)
<固化強度の測定法>
前記の固化吸液能[CA]の測定で得られた固化塊状物(重量:MO)と別途同様に得られた固化塊状物を45℃に設定された恒温箱型乾燥器(循環通風なし、上部通気孔からの自然排気あり)に入れ6時間後に得られた固化塊状物(重量:MAD)をそれぞれ所定の振とう条件下に電磁式ふるい振とう器(形式:AS200/Retsch社製)にかけて部分的に崩壊させた後、ふるい面(目開き:8mmφ)上に残存する全塊状物の重量(MX1,MX2/g)を測定した。このとき、上記式に代入して固化強度[RS]のRS1とRS2が算出される。
<振とう条件>
振幅:1.0mm(上下動)×円運動(水平方向)
振とう数:3000回/min(分)
振とう時間:60sec(秒)
<固化性総合評価>
<評価基準>
◎:[SS]≧0.10 ,[CA]≧100 ,[RSA]≧75 and [KR]≧0.80
吸液固化速度、固化吸液能が極めて大きく、固化塊状物は手指で殆ど乃至全く崩壊することなく堅い塊として取り出せ、且つ震とう試験での固化強度にも極めて優れた固化性である。
○:0.10>[SS]≧0.07 ,100>[CA]≧85 ,75>[RSA]≧70
and 0.80>[KR]≧0.75
吸液固化速度、固化吸液能がともに大きく、固化塊状物は手指で殆ど崩壊することなく堅い塊として取り出せ、且つ固化強度にも優れた固化性を示した。
△:0.07>[SS]≧0.05 ,85>[CA]≧80 ,70>[RSA]≧60
and 0.75>[KR]≧0.70
吸液固化速度、固化吸液能がある程度大きく、固化塊状物は手指で一部崩壊するが大部分は塊として取り出せ、且つ固化強度も実用的な固化性を示した。
×:[SS]<0.05 ,[CA]<50 ,[RSA]<60 and [KR]<0.70
吸液固化速度、固化吸液能がともに小さく、固化塊状物は殆ど乃至大半が崩壊して塊としては取り出せないか、手指で静かに扱えば塊として取り出せても、固化強度は実用的にも不十分な固化性である。
<アンモニア脱臭能:DODN
DODN={([AMCB]−[AMCR])/[AMCB]}×100・・・式(7)
(式中、AMCBは、試料が存在せず、所定濃度のアンモニア水溶液のみが存在
する密閉容器内気相部分のアンモニアのブランク濃度(ppm)、
AMCRは、所定濃度のアンモニアの水溶液が底部に敷き詰められた粒状物試料の
一部(中央部)に吸収された状態にある密閉容器内気相部分のアンモニアの濃度
(ppm)である。)
<アンモニア脱臭能の測定法>
450ml容の広口ガラス瓶(口径:58.5mm、ポリエチレン製中蓋・ポリプロピレン製ネジ蓋付、中蓋の中央部には注入口ゴム栓を付設)の底部に、粒状物試料100gを秤取して平らに敷き容れた。臭気源として0.7(W/V)%アンモニア水溶液1mlを試料上に垂直に滴下し、直ちに密封して室温(20−30℃)で20分間静置後、北川式ガス検知管(アンモニアガス検知用)を用いてヘッドスペースのアンモニア濃度[AMCR](ppm)を測定した。比較試料の測定も、同場所でほぼ同時に行った。
ブランク濃度[AMCB]の測定は、試料を容れないブランクサンプルを作成し、別個に同場所でほぼ同時に行う。本実施例等の試験においては、ブランク濃度[AMCB]が4000ppmであった。
得られたアンモニア濃度及びブランク濃度を上記式に代入し、アンモニア脱臭能が算出される。
<メルカプタン脱臭能:DODS
DODS={([EMCB]−[EMCR])/[EMCB]}×100・・・式(8)
(式中、EMCBは、試料が存在せず、所定濃度のエチルメルカプタン水溶液のみ
が存在する密閉容器内気相部分のエチルメルカプタンのブランク濃度(ppm)
EMCRは、所定濃度のエチルメルカプタン水溶液が底部に敷き詰められた
ペット用排尿処理材試料の一部(中央部)に吸収された状態にある密閉容器内気
相部分のエチルメルカプタンの濃度(ppm)である。)
<メルカプタン脱臭能の測定法>
450ml容の広口ガラス瓶(口径:58.5mm、ポリエチレン製中蓋・ポリプロピレン製ネジ蓋付、中蓋の中央部には注入口ゴム栓を付設)の底部に、粒状物試料100gを秤取して平らに敷き容れた。臭気源として0.32(W/V)%エチルメルカプタン水溶液1mlを試料上に垂直に滴下し、直ちに密封して室温(20−30℃)で5分間静置後、北川式ガス検知管(エチルメルカプタンガス検知用)を用いてヘッドスペースのエチルメルカプタン濃度[EMCR](ppm)を測定する。比較試料の測定も、同場所でほぼ同時に行った。
ブランク濃度[EMCB]の測定は、試料を容れないブランクサンプルを作成し、別個に同場所でほぼ同時に行った。本実施例等の試験においては、ブランク濃度[EMCB]が80ppmであった。
得られたエチルメルカプタン濃度及びブランク濃度を上記式に代入し、メルカプタン脱臭能が算出される。
<脱臭性総合評価>
ペットの糞尿から発生する悪臭ガスに対する脱臭性の評価として、塩基性臭気に分類され窒素(N)系悪臭ガスであるアンモニアに対する脱臭能と、酸性臭気に分類され硫黄(S)系悪臭ガスであるエチルメルカプタンに対する脱臭能とを測定し、その結果から、脱臭性について下記評価基準により4段階にて区分評価した。
<評価基準>
◎:DODN≧99.0 and DODS≧98.0
アンモニア脱臭能とメルカプタン脱臭能の両方ともに極めて高く、ペットの尿と糞から発生する窒素系と硫黄系の全ての高濃度悪臭に対する脱臭効果が期待できるので、基材だけでペット用のトイレ砂として使用でき、他の添加剤は不要である。
○:99.0>DODN≧98.5 and 98.0>DODS≧96.5
アンモニア脱臭能とメルカプタン脱臭能の両方ともに高いが、室内の温度や湿度の環境条件により高濃度の悪臭が発生した時などは基材の脱臭作用だけではやや不十分である。
△:98.5>DODN≧98.0 and 96.5>DODS≧96.0
アンモニア脱臭能とメルカプタン脱臭能の一方または両方がやや低く、現在市販のベントナイト系猫砂の最高レベルまで高める為には、他の防臭剤や消臭剤(芳香剤)の添加も必要である。
×:DODN<98.0 and DODS<96.0
アンモニア脱臭能とメルカプタン脱臭能の両方が低く、現在市販のベントナイト系猫砂の最高レベルまで高める為には、他の防臭剤や消臭剤(芳香剤)の添加が必須である。
[実施例]
以下において、実施例および比較例により、本発明をより詳細に説明する。
原料粘土として、新潟県新発田市小戸地域I鉱区産のジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土(含水物)約10kgを用い、10mm巾の波目形孔を有する造粒板を装着した単軸型押出造粒機で押し出すことにより粗砕した。この粗砕原料粘土100重量%(150℃乾燥物換算)に対して、アルカリ剤としてNa2O換算で1.75重量%となる量のオルソケイ酸ナトリウム粉末(Na2O:44%;SiO2:21%、東洋珪酸曹達株式会社製)をポリエチレン製袋に入れてよく振り混ぜてから、単軸式横型押出造粒機(6mm円形孔、造粒板装着)に3回、次いで回転ロール式縦型押出造粒機(デスクペレッター、2.8mm円形孔、造粒板装着)に1回かけて、混練・捏和・造粒した。得られた含水造粒物をステンレス鋼製の網かごに取り入れ、170℃に温度設定した大型送風乾燥器に入れて約3時間かけて乾燥する。冷後、解砕機と篩分機にかけて、短径:2.0〜2.5mm、長径:4〜7mmの略円柱形状の粒状成型物であるペット用排尿処理材を得た。
実施例1において、アルカリ剤としてNa2O換算で1.75重量%となる量のメタケイ酸ナトリウム粉末(Na2O:21%;SiO2:21%、東洋珪酸曹達株式会社製)を用いる以外は同様の方法によってペット用排尿処理材を得た。
実施例1において、アルカリ剤としてNa2O換算で2.625重量%となる量の1号ケイ酸ナトリウム水溶液(Na2O:14%;SiO2:29%、東洋珪酸曹達株式会社製)を用いる以外は同様の方法によってペット用排尿処理材を得た。
実施例1において、アルカリ剤としてNa2O換算で1.75重量%となる量の1号ケイ酸ナトリウム水溶液を用いる以外は同様の方法によってペット用排尿処理材を得た。
実施例1において、アルカリ剤としてNa2O換算で0.875重量%となる量の1号ケイ酸ナトリウム水溶液を用いる以外は同様の方法によってペット用排尿処理材を得た。
実施例1において、アルカリ剤としてNa2O換算で0.875重量%となる量の3号ケイ酸ナトリウム水溶液(Na2O:7%;SiO2:23%、東洋珪酸曹達株式会社製)を用いる以外は同様の方法によってペット用排尿処理材を得た。
実施例1において、アルカリ剤としてNa2O換算で0.875重量%となる量の3号ケイ酸ナトリウム粉末(Na2O:20%;SiO2:62%、中国メーカー製)を用いる以外は同様の方法によってペット用排尿処理材を得た。
<水溶性ケイ酸ナトリウム含有粘土の調製>
原料粘土として、新潟県新発田市小戸地域I鉱区産のジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土(含水率:約33%;オパール性SiO2:約30%、150℃乾燥物換算)約10kgを用い、10mm巾の波目形孔を有する造粒板を装着した単軸型押出造粒機で押し出すことにより粗砕した。この粗砕原料粘土100重量%(150℃乾燥物換算)対してNa2O換算で31重量%となる量の40%水酸化ナトリウム水溶液(Na2O:31%、和光純薬工業株式会社製試薬により調製)をポリエチレン製袋に入れて、全量(T重量%)をよく振り混ぜてから、単軸式横型押出造粒機(6mm円形孔、造粒板装着)に3回かけて、混練・捏和・造粒する。得られた含水造粒物の0.0565T重量%をステンレス鋼製のビーカー様容器に入れ、開口部をアルミニウム箔とポリ塩化ビニリデン製ラップフィルム(旭化成ホームプロダクツ株式会社製)で覆い被せて密閉し、110℃で16時間蒸熱反応を行ってオパール性SiO2の大部分を溶解し、水溶性ケイ酸ナトリウム含有粘土を得た。
<活性ベントナイト粒状物の調製>
原料粘土として、新潟県新発田市小戸地域II鉱区産のジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土(含水物)約10kgを用い、10mm巾の波目形孔を有する造粒板を装着した単軸型押出造粒機で押し出すことにより粗砕した。この粗砕原料粘土100重量%(150℃乾燥物換算)に対してアルカリ剤として上記調製の水溶性ケイ酸ナトリウム含有粘土の全量(Na2O換算で1.75重量%)をポリエチレン製袋に入れてよく振り混ぜてから、単軸式横型押出造粒機(6mm円形孔、造粒板装着)に3回、次いで回転ロール式縦型押出造粒機(デスクペレッター、2.8mm円形孔、造粒板装着)に1回かけて、混練・捏和・造粒する。得られた含水造粒物をステンレス鋼製の網かごに取り入れ、170℃に温度設定した大型送風乾燥器に入れて約3時間かけて乾燥する。冷後、解砕機と篩分機にかけて、短径:2.0〜2.5mm、長径:4〜7mmの略円柱形状の粒状成型物であるペット用排尿処理材を得た。
実施例2において、原料粘土として新潟県新発田市小戸地域II鉱区産のジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土(含水率:約33%;オパール性SiO2:約30%、150℃乾燥物換算)を用いる以外は同様の方法によってペット用排尿処理材を得た。
原料粘土として、新潟県新発田市小戸地域II鉱区産のジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土(オパール性SiO2:約30%)由来の粗砕原料粘土100重量%(150℃乾燥物換算)を用い、これに対してアルカリ剤としてNa2O換算で1.75重量%となる量の40%水酸化ナトリウム水溶液をポリエチレン製袋に入れて全量をよく振り混ぜてから、単軸式横型押出造粒機(6mm円形孔―造粒板装着)に3回、次いで回転ロール式縦型押出造粒機(デスクペレッター、2.8mm円形孔―造粒板装着)に1回かけて、混練・捏和・造粒する。得られた含水造粒物をステンレス鋼製の円筒状網かごに取り入れ、小型オートクレーブ(形式:KL−300/柴田科学器械工業(株)製)に入れて、110℃で1時間蒸熱反応を行い、水溶性ケイ酸ナトリウムを含有する造粒物を得た。その後、170℃に温度設定した大型送風乾燥器に入れて約3時間かけて乾燥する。冷後、解砕機と篩分機にかけて、短径:2.0〜2.5mm、長径:4〜7mmの略円柱形状の粒状成型物であるペット用排尿処理材を得た。
[比較例1]
実施例1において、アルカリ剤としてNa2O換算で1.75重量%となる量の炭酸ナトリウム粉末(Na2O:58%、和光純薬工業株式会社製)を用いる以外は同様の方法によってペット用排尿処理材を得た。
[比較例2]
実施例1において、アルカリ剤としてNa2O換算で0.875重量%となる量の炭酸ナトリウム粉末を用いる以外は同様の方法によってペット用排尿処理材を得た。
[比較例3]
比較例1において、原料粘土として実施例8と同じに新潟県新発田市小戸地域II鉱区産のジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土を用いる以外は同様の方法によってペット用排尿処理材を得た。
各実施例及び比較例によるペット用排尿処理材の物性が図3,4に、各実施例及び比較例によるペット用排尿処理材の評価結果が図5,6に、それぞれ示されている。ここで、図5,6に示される各評価結果については、前述の試験方法に基づいて評価を行ったものである。また、図3〜6において、「原料粘土鉱区」とは、原料粘土を採掘した新潟県新発田市小戸地域において出願人が鉱区Iと称している地域から採掘した粘土であるか、鉱区IIと称している地域から採掘した粘土であるかを示すものである。また、「アルカリ剤」とは活性化処理に用いたアルカリ剤のことである。なお、スメクタイトの底面反射によるピーク位置については、実施例1〜10、比較例1〜3により得られたペット用排尿処理材の全てにおいて、回折角(2θ)=5.2〜6.8°の範囲に収まっていた。
吸液固化速度、固化吸液能については実施例1〜10で得られたペット用排尿処理材のいずれもが基準を上回っており、排尿直後の吸液能、及び吸液後の固化速度のいずれにおいても優れていることがわかる。特に、アルカリ剤として1号ケイ酸ソーダ水溶液を用いた実施例3,4と、水溶性ケイ酸ナトリウム含有粘土を用いた実施例8は非常に高い値となっている。
これに対して、比較例1〜3によるペット用排尿処理材は、吸液や固化に寄与するナトリウムの存在量自体は十分であるにも拘わらず、各実施例によるペット用排尿処理材よりも吸液固化速度、固化吸液能のいずれの点でも劣るものであった。
また、実施例1〜10によるペット用排尿処理材は、吸液後の固化塊状物の固化強度についても優れており、吸液直後の固化強度RS1が高いことはもとより45℃で6時間経過した後でも固化強度の低下が少なく、いずれの実施例でも吸液直後の固化強度RS1の80%以上の固化強度が保持されていた。
これに対して、比較例1〜3によるペット用排尿処理材は、固化強度においても各実施例によるペット用排尿処理材よりも劣り、特に長時間経過した後の固化強度において著しく劣った。実施例1〜10の中で最も固化強度の低下が少なかったのは実施例8で吸液直後の固化強度の90%、最も固化強度の低下が大きかったのは実施例1で84%まで低下したが、比較例1は74%、比較例2は16%、比較例3は72%と大きな違いが見られた。特に比較例2において経時による固化強度の低下が著しかったのは、添加されたNa分が少なくて吸水時における膨潤が十分でなく単位容積当りの吸液量も少なかったために、固化塊状物中の水分が蒸散して短時間で半乾き状態になったことが理由であると考えられる。
各実施例によるペット用排尿処理材は脱臭性についても優れ、アンモニア脱臭能、メルカプタン脱臭能のいずれもが高かった。特に、実施例4〜10によるペット用排尿処理材は、気候や温度等の条件によらず十分な脱臭能が期待できる非常に優れたものであった。
これに対して、比較例1,3によるペット用排尿処理材は十分な脱臭能が得られず、実際に商品として提供する際にはこのペット用排尿処理材のみでは不十分なため防臭剤や消臭剤等の添加が必須であると考えられる。
すなわち、実施例1〜10によるペット用排尿処理材は固化性、脱臭性のいずれについても優れたものであるのに対して、比較例2によるペット用排尿処理材は固化性について著しく劣り、比較例1,3によるペット用排尿処理材は固化性と脱臭能の双方について劣るものであった。
以上説明したように、本発明に係るペット用排尿処理材は、従来よりペット用排尿処理材に求められてきた排尿直後の吸尿固化速度と吸尿量を維持乃至向上させつつも、吸尿後の固化塊状物の強度が長時間保持され、外出時間が長い飼い主にも固化塊状物の除去時等に崩れやすい等の不満を感じさせない優れたものである。
加えて、アンモニアやエチルメルカプタン等の悪臭ガスに対する脱臭性能においても優れ、吸尿後に長時間放置された場合でも悪臭ガスによる臭気が発生しにくいものである。

Claims (9)

  1. 天然のジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土粒子にアルカリ剤を添加混合して製した活性ベントナイト造粒物からなり、
    前記活性ベントナイト造粒物は、粉末X線回折法による測定で、[111]面由来のX線回折ピークの頂点を回折角(2θ)=21.5〜22.5°の領域に有する結晶性シリカ成分を含有し、
    相対湿度(RH):65%の雰囲気下で120時間吸湿したときに、前記粉末X線回折法による測定で、スメクタイト成分の[001]面の底面反射によるピーク位置が、回折角(2θ)=5.2〜6.8°の領域にあり、
    下記の式(1)で表される水浸出性ケイ酸ナトリウム成分を、前記活性ベントナイト造粒物100重量%(乾燥重量)に対して、酸化ケイ素(SiO2)換算で0.1〜1.0重量%の範囲で含有していることを特徴とするペット用排尿処理材。
    Na2O・xSiO2 ・・・式(1)
    (式中、xはSiO2成分のモル数を表す係数で、0.3〜3の数である)
  2. 前記アルカリ剤が、下記の式(2)で表される水溶性ケイ酸ナトリウムを含有していることを特徴とする請求項1に記載のペット用排尿処理材。
    Na2O・nSiO2 ・・・式(2)
    (式中、nはSiO2成分のモル数を表す係数で、0.4〜4の数である)
  3. 前記水浸出性ケイ酸ナトリウム成分中のSiO2成分とNa2O成分のモル比(x)が、0.5〜2.8の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のペット用排尿処理材。
  4. 前記活性ベントナイト造粒物が含有する前記結晶性シリカ成分が、回折角(2θ)=21.5〜22.5°の領域に有する[111]面由来のX線回折ピークの半値幅(°/2θ)が0.4以上であるアルカリ可溶性シリカ成分であり、SiO2換算で前記活性ベントナイト造粒物(乾燥重量)100重量%に対して20〜35重量%の範囲で含有されていることを特徴とする請求項1に記載のペット用排尿処理材。
  5. 前記アルカリ可溶性シリカ成分が低結晶性オパール乃至非晶質シリカ(含水シリカ)からなる低結晶性シリカ成分であることを特徴とする請求項1に記載のペット用排尿処理材。
  6. 前記アルカリ剤が水酸化ナトリウムまたは水酸化ナトリウム水溶液であり、該アルカリ剤の添加混合は60℃以上の温度下における水熱反応乃至蒸熱反応の工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のペット用排尿処理材。
  7. 下記の式(3)で定義される置換性水素指数IHが10以上であること、を特徴とする請求項1に記載のペット用排尿処理材。
    H=(BH−AH)×1010 ・・・式(3)
    (式中、AHは、1重量%水性懸濁液での水素イオン濃度(mol/l)、BHは、
    同懸濁液100gに1gの塩化ナトリウムを加えて70℃で60分間処理した
    のちの水素イオン濃度(mol/l)である。)
  8. 当該ペット用排尿処理材に所定の処方による擬似尿電解質溶液を吸収させることで得られた固化塊状物について、下記の式(4)で定義される固化強度保持率KRが、0.8以上であることを特徴とする請求項1に記載のペット用排尿処理材。
    R=RS2/RS1・・・式(4)
    (式中RS1、RS2は、以下の計算により求められたものである。
    S1=(MX1/MO)×102 、RS2=(MX2/MAD)×102
    上記MOは、疑似尿電解質溶液8gを吸収した固化塊状物の重量(g)、
    X1は、該塊状物を所定の条件下にふるい振とう器にかけて部分的に崩壊した後
    にふるい面上に残存する全塊状物の重量(g)、
    ADは、疑似尿電解質溶液8gを吸収した固化塊状物を45℃の雰囲気下に
    6時間静置後の重量(g)、
    X2は、該塊状物を所定の条件下にふるい振とう器にかけて部分的に崩壊した後
    にふるい面上に残存する全塊状物の重量(g)、である。)
    (上記擬似尿電解質溶液は、5Lのビーカーに2kgの脱イオン水を入れ、撹拌
    しながら下記7種の試薬を順次加え入れて溶解し、更に脱イオン水を加えて全量
    を3kgとなした上で撹拌して均質な溶液となすことで得られるものである
    CaCl2・2H2O(=147.01;≧99%):0.22g
    MgCl2・6H2O(=203.30;≧97%):2.83g
    KCl(=74.55;≧99%):27.11g
    NaCl(=58.44;≧99%):3.54g
    Na2SO4(=142.04;≧99%):17.22g
    NaHCO3(=84.01;≧99.5%):17.73g
    NaH2PO4・2H2O(=155.99;≧99%):37.82g)
  9. 低結晶性シリカ成分を含有し、含有水分を25〜40重量%に調整したジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土を5〜20mm程度の塊となるよう粗砕する粗砕工程と、
    前記粗砕した粘土を、該粘土100重量%(乾燥重量)に対してNa2O換算で0.8〜2.7重量%の粉末状乃至水溶液状のアルカリ剤と混合・捏和する混練工程と、
    前記混練された混合物を押出成形機等を用いて適宜の形状とサイズに造粒する造粒工程と、
    前記造粒物を、150〜250℃の雰囲気下で3〜5時間、又は、250℃以上の雰囲気下で0.3〜3時間、のいずれかの条件で含有水分5%以下となるまで乾燥する乾燥工程と、を含み、
    前記アルカリ剤が、前記式(2)において係数(n)が0.4以上である水溶性ケイ酸ナトリウムを含有し、
    且つ前記式(1)で表される水浸出性ケイ酸ナトリウム成分を、造粒物100重量%(乾燥重量)当たり、酸化ケイ素(SiO2)換算で0.1〜1.0重量%の範囲で含有していることを特徴とするペット用排尿処理材の製造方法。
JP2012272075A 2012-12-13 2012-12-13 ペット用排尿処理材及びその製造方法 Active JP5832989B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012272075A JP5832989B2 (ja) 2012-12-13 2012-12-13 ペット用排尿処理材及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012272075A JP5832989B2 (ja) 2012-12-13 2012-12-13 ペット用排尿処理材及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014117169A JP2014117169A (ja) 2014-06-30
JP5832989B2 true JP5832989B2 (ja) 2015-12-16

Family

ID=51172615

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012272075A Active JP5832989B2 (ja) 2012-12-13 2012-12-13 ペット用排尿処理材及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5832989B2 (ja)

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2534538B2 (ja) * 1988-04-20 1996-09-18 ライオン株式会社 ペット用トイレの砂
US6962129B1 (en) * 2004-07-16 2005-11-08 Church & Dwight Co., Inc. Clumping compacted bicarb litter
JP4572108B2 (ja) * 2004-12-15 2010-10-27 黒崎白土工業株式会社 ペット用トイレ砂
JP4878874B2 (ja) * 2006-03-13 2012-02-15 黒崎白土工業株式会社 ペット用トイレ砂
JP2008290923A (ja) * 2007-05-28 2008-12-04 Kurosaki Hakudo Kogyo Kk 水分散性強化型改質ベントナイト及びその製造方法
JP5592105B2 (ja) * 2009-12-25 2014-09-17 黒崎白土工業株式会社 ベントナイト粉体及びその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014117169A (ja) 2014-06-30

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US9861071B2 (en) Composite absorbent particles
US7603964B2 (en) Composite particle animal litter and method thereof
US20170339914A1 (en) Composite absorbent particles
US20050175577A1 (en) Absorbent composition with improved odor control
CN107115550A (zh) 空气净化剂
JP5622667B2 (ja) ペットのトイレ砂用基材
CA2546538C (en) Composition particle animal litter and method thereof
AU2003239133A8 (en) Animal litter and methods of fabricating same
JP4878874B2 (ja) ペット用トイレ砂
JP4649707B2 (ja) 金属化合物担持粒状体の製造方法
JP4175726B2 (ja) ペット用トイレ砂
PL202656B1 (pl) Sposób wytwarzania stałych cząstek strąconej krzemionki, stałe cząstki strąconej krzemionki oraz zastosowanie stałych cząstek strąconej krzemionki
JP5832989B2 (ja) ペット用排尿処理材及びその製造方法
JP2004008518A (ja) 消臭剤
JP4603952B2 (ja) ペット用トイレ砂
JPS63240942A (ja) 排せつ物処理剤
CA3131224C (en) Animal litters with reduced dusting
JP2004073053A (ja) ペット用トイレ砂
JP4354267B2 (ja) ペット用トイレ砂
JP2013236557A (ja) ペット用排尿処理材及びその製造方法
JP7418990B2 (ja) ペット用排尿処理材
JP6913641B2 (ja) ペット用排尿処理材
JP2005102674A (ja) 使用済みイオン交換樹脂を用いた消臭剤と製造方法
JP4856300B2 (ja) 金属化合物担持スメクタイト及び用途
KR20240085585A (ko) 카사바를 함유한 고양이 모래 및 그 제조방법

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20140829

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20150730

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150826

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150908

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20151014

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20151028

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5832989

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250