JP5832477B2 - 不織布の嵩回復方法 - Google Patents
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Description
ここで、製造した不織布をロール状に巻き付けて不織布原反とする場合、該不織布原反をできるだけコンパクトにするために不織布に大きな圧力を加えながら巻き付けることから、不織布は厚さ方向に圧縮され、嵩が減少するという問題がある。不織布の嵩が減少すると、体液等の液体を吸収する能力が著しく低下し、また柔軟性も減少するという不都合がある。
この場合、前記加熱装置は、前記不織布を鉛直上向きに流通させながら加熱する上方向け加熱室と、前記不織布を鉛直下向きに流通させながら加熱する下方向け加熱室とを有し、これらの上方向け加熱室又は下方向け加熱室のいずれか一方の加熱室の内部空間から送出された不織布を、他方の加熱室の内部空間に送入して該不織布を連続的に加熱するようにしてもよい。
また、本発明においては、嵩が回復した不織布を、吸収性物品の製造工程に直接的に供給することができる。
図1〜図3は、本発明に係る不織布の嵩回復方法を第1の実施の形態を実施するための嵩回復装置を示すもので、この嵩回復装置1は、嵩回復させる対象となる搬送中の不織布2を加熱する加熱装置3と、該加熱装置3によって加熱された不織布2を冷却する冷却装置4とを備えている。
なお、前記嵩回復装置1は、ロール状に巻き付けられた不織布原反から繰り出された不織布2を、搬送方向(MD方向)の上流側及び下流側にそれぞれ配設された上下一対の搬送ロール6,6・7,7によって、前記加熱装置3及び冷却装置4を含めた搬送ライン上を搬送することができるようになっている。また、搬送される不織布2には、長さ方向(搬送方向)に張力がかけられていて、可及的にたわみを抑えることができるようになっている。
前記加熱室8は、不織布2を内部空間9に送入させる、不織布2の搬送方向の上流側に位置する入口9aと、不織布2を内部空間9の外に送出する、搬送方向の下流側に位置する出口9bとを有している。そして、前記不織布2を入口9aから出口9bに向けて内部空間9を略直線的に流通させることにより、該不織布2を搬送しながら加熱することができようになっている。
ここで、前記加熱室8の内部空間9の幅(不織布2の幅方向に沿う方向の大きさ)及び高さ(不織布2の厚さ方向に沿う方向の大きさ)は、収容する不織布2の効率的な加熱を考慮すると、該不織布2と接触しない範囲内において可及的に小さいことが好ましい。
また、加熱室8の内部空間9の高さについては、不織布2の厚さよりも2〜10mm程度大きくすることが好ましく、3〜5mm程度大きくすることがさらに好ましい。
また、前記加熱室8の内部空間9の長さ(不織布の搬送方向に沿う長さ)については、不織布2の搬送速度及び該不織布の加熱時間との関係で決定され、搬送中の不織布2を、後で詳述する時間について確実に加熱することできる程度の大きさに設定される。
また、前記加熱用ノズル11の噴射孔11aの近傍には、該噴射孔11aから噴射される流体の温度を検出する温度センサが取付けられていて、加熱用の流体の温度を管理することができるようにしている。
さらに、前記加熱用ノズル11の噴射方向は、前記不織布2の搬送方向、即ち水平方向に対する角度θ1を0〜30度程度とすることが好ましく、さらに好ましくは0〜10度であり、0度、即ち、不織布2の搬送方向と平行に噴射することが最も好ましい。
前記冷却室17は、該不織布2を内部空間18に送入させる、搬送方向の上流側に位置する入口18aと、不織布2を内部空間18の外に送出する、搬送方向の下流側に位置する出口18bとを有している。そして、前記不織布2を入口18aから出口18bに向けて内部空間18内を略直線的に流通させることにより、該不織布2を搬送しながら冷却することができようになっている。
なお、前記冷却用ノズル20の構成や噴射方向については、基本的に前記加熱装置3の加熱用ノズル11とほぼ同じである。
また、前記不織布を構成する繊維として、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、変性ポリプロピレン、変性ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアミド等の熱可塑性樹脂からなる、熱可塑性の単独繊維又は複合繊維が用いられる。
この場合、例えば、肌に残るような少量な経血や汗などをも吸収するために、不織布を構成する繊維に、パルプ、化学パルプ、レーヨン、アセテート、天然コットンなどのセルロース系の親水性繊維が含まれていてもよい。ただし、セルロース系繊維は、一度吸収した液体を排出しにくいので、全体に対し0.1〜5質量%の範囲で含まれるのが好ましい。さらに、液体の入り込み性やリウェットバックを考慮して、疎水性合成繊維に、親水剤や撥水剤などが練り込まれ又はコーティングされていてもよい。また、コロナ処理やプラズマ処理によって繊維に親水性が付与されてもよい。
図1に示すように、所定の方法で形成された不織布をロール状に巻き付けた不織布原反5から不織布2を繰り出し、その不織布2を上流側の搬送ロール6,6及び下流側の搬送ロール7,7との間に配設されている加熱装置3の加熱室8、及び冷却装置4の冷却室17を通して搬送する。
その際、前記加熱用の流体を、前記不織布2が含んでいる熱可塑性繊維の融点よりも50°C低い温度以上、該融点の温度未満の温度で、0.2〜4秒、前記不織布2の搬送速度よりも早い流速で加熱室8の内部空間9内に吹付けることにより、前記不織布2を加熱する。
なお、前記加熱用の流体を吹付ける際の流速は、1000〜4000m/min程度が好ましく、1000m/min未満であると搬送されている不織布に随伴している空気により流体の温度が低下する場合があり、嵩回復が阻害される可能性があり、4000m/min超となると流体によって不織布が搬送方向に過度に引っ張られ、幅入りや切断が生じる可能性がある。
例えば、前記不織布2の熱可塑性繊維が、ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレートの芯鞘構造の複合繊維である場合、融点の低いポリエチレンの融点である130℃を基準に、その融点よりも50℃低い温度以上、130℃未満の温度で加熱する。
逆に、加熱時間が4秒超となると、不織布の嵩が所定の大きさまでほぼ回復することから、加熱の効果が著しく低下するが、不織布の搬送速度と加熱時間との関係から算出される加熱室の長さが増加するため、設置スペースの関係から嵩回復装置の設置自体が困難になる可能性がある。さらに、不織布の搬送距離も増加することから、不織布の幅、長さ等の寸法が安定しにくくなる。
なお、前記不織布の加熱時間については、0.3〜3秒がより好ましく、0.4〜2秒がさらに好ましい。
その際、前記冷却装置4において、冷却用の流体吹付け装置19の冷却用ノズル20から内部空間18に冷却用流体を噴射して、該内部空間18内に該冷却用流体を供給することにより、その冷却用流体を内部空間18内に位置する不織布2に接触させ、該不織布2を冷却する。このように不織布を冷却することにより、吸収性物品、特に紙オムツの製造工程等の、嵩回復を行った後の工程において、その工程中に該不織布が厚さ方向に圧縮されても、嵩回復装置によって回復した厚さを維持するという効果が得られる。即ち、加熱された不織布を構成する熱可塑性繊維は塑性変形しやすい状態になっているが、冷却することにより繊維の温度が低下し、弾性変形する温度領域になるため、不織布が圧縮されたとしても、弾性変形により元の厚さに回復することができる。
なお、前記冷却装置4による冷却は、加熱後の不織布が30℃以下、さらに好ましくは20〜25℃程度の室温にまで冷却することができればよいが、例えば、温度10〜30℃で0.2〜4秒程度冷却することが好ましい。
図4は、前記嵩回復装置1を吸収性物品としての生理用ナプキンの製造装置100に組み込み、この嵩回復装置1において嵩が回復した不織布2を、吸収性物品としての生理用ナプキンの製造工程において直接的且つ連続的に使用する例を示している。
この製造工程で製造される吸収性物品101は、液透過性シート(いわゆるトップシート)と、液不透過性シート(いわゆるバックシート)と、これらの液透過性シートと液不透性シートとの間に設けられた吸収体とを備えたものである。
具体的に、この吸収性物品101の製造は、吸収体102を形成する第1の工程と、吸収体102に液透過性シートを積層して積層体103を形成する第2の工程と、該積層体103にエンボス加工を施す第3の工程と、前記積層体103に液不透過性シートを積層する第4の工程と、生理用ナプキンとしての形状に切り出す第5の工程とを含んでいて、前記製造装置100により実施される。
そして、前記凹部105a内に形成された吸収体102は、サクションドラム105の回転により、機械方向MDに向かって進むキャリアシート106上に搬送され、該キャリアシート106に転写される。その後、製造ライン上を搬送されて次工程に送られる。
吸水性繊維としては、例えば、針葉樹又は広葉樹を原料として得られる木材パルプ(例えば、砕木パルプ、リファイナーグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ等の機械パルプ;クラフトパルプ、サルファイドパルプ、アルカリパルプ等の化学パルプ;半化学パルプ等);木材パルプに化学処理を施して得られるマーセル化パルプ又は架橋パルプ;バガス、ケナフ、竹、麻、綿(例えばコットンリンター)等の非木材パルプ;レーヨン、フィブリルレーヨン等の再生セルロース;アセテート、トリアセテート等の半合成セルロース等が挙げられるが、コストが低く、成形しやすいこと点から、粉砕パルプが好ましい。
高吸水性材料としては、例えば、デンプン系、セルロース系、合成ポリマー系の高吸水性材料が挙げられる。デンプン系又はセルロース系の高吸水性材料としては、例えば、デンプン−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、デンプン−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物等が挙げられ、合成ポリマー系の高吸水性材料としては、例えば、ポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系、ポリアクリルアミド系、ポリビニルアルコール系、ポリエチレンオキシド系、ポリアスパラギン酸塩系、ポリグルタミン酸塩系、ポリアルギン酸塩系、デンプン系、セルロース系等の高吸水性樹脂(Superabsorbent Polymer:SAP)等が挙げられるが、これらのうちポリアクリル酸塩系(特に、ポリアクリル酸ナトリウム系)の高吸水性樹脂が好ましい。
この第2の工程では、前記嵩回復装置1での嵩回復方法の実施により嵩が回復した不織布2を直接的且つ連続的に供給して、その嵩が回復した不織布2をそのまま使用する。そして、この不織布2を、生理用ナプキンにおいて使用者の肌に接して該使用者からの体液を吸収体に透過させる液透過性シート107としている。
なお、前記液不透過性シート110は、使用者から排泄される体液が透過し得ないシートであり、使用時には、前記液透過性シート側とは反対側の面が使用者の着衣(下着)と接触するようになっている。この液透過性シート110としては、例えば、防水処理を施した不織布、合成樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等)フィルム、不織布と合成樹脂フィルムとの複合シート(例えば、スパンボンド、スパンレース等の不織布に通気性の合成樹脂フィルムが接合された複合フィルム)、耐水性の高いメルトブローン不織布を強度の強いスパンボンド不織布で挟んだSMS不織布等が挙げられる。
このように、前記嵩回復装置を各種吸収性物品の製造装置に組み込んで、本発明に係る不織布の嵩回復方法によって嵩を回復した不織布を直接的に吸収性物品の製造工程に供給することにより、嵩が回復した不織布を、その嵩が維持されたまま安定的に各種吸収性物品に使用することが可能となる。
したがって、前記不織布2の嵩を確実且つ安定的に回復させることが可能となる。
しかしながら、前記嵩回復装置31は、加熱装置33及び冷却装置34の構造が前記第1の実施の形態で使用されている嵩回復装置1と異なっている。
前記第1及び第2の上方向け加熱室35,37は、下端側に内部空間39,41の入口39a,41a、上端側に出口39b,41bがそれぞれ配設され、前記第1及び第2の下方向け加熱室36,38は、上端側に内部空間40,42の入口40a,42a、下端側に出口40b,42bがそれぞれ配設されていて、いずれもほぼ同じ軸線方向(延設方向)長さに形成されている。また、これらの第1及び第2の上方向け加熱室35,37、第1及び第2の下方向け加熱室36,38は、図5に示すように、第1の上方向け加熱室35、第1の下方向け加熱室36、第2の上方向け加熱室37、第2の下方向け加熱室38の順(図5中の加熱装置の右側から)に並設されていて、それぞれの加熱室35〜38の上端側及び下端側がいずれもほぼ同じ高さに位置し、且つ各加熱室35〜38の軸線方向が相互に略平行となるように位置固定されている。
これにより、第1の上方向け加熱室35の出口39bから鉛直上方向きに送出された不織布2は、前記第1の転向ロール47によって、鉛直下方向きに搬送方向が転向され、第1の下方向け加熱室36の入口40aに向けて搬送される。また、第1の下方向け加熱室36の出口40bから鉛直下方向きに送出された不織布は、前記第2の転向ロール48によって、鉛直上方向きに搬送方向が転向され、第2の上方向け加熱室37の入口41aに向けて搬送される。さらに、第2の上方向け加熱室37の出口41bから鉛直上方向きに送出された不織布2は、前記第3の転向ロール49によって、鉛直下方向きに搬送方向が転向され、第2の下方向け加熱室38の入口42aに向けて搬送される。
前記各加熱室35〜38のそれぞれの内部空間39〜42における不織布2の幅方向に沿う方向の大きさ、及び不織布の厚さ方向に沿う方向の大きさについては、収容する前記不織布の効率的な加熱を考慮すると、該不織布と接触しない範囲内において可及的に小さいことが好ましい。
ただし、前記第1の実施の形態の場合と同様に、不織布が搬送時において幅方向に蛇行したり、厚さ方向にばたついたりする可能性があるため、加熱室の幅及び高さがあまりに小さすぎると不織布が接触してしまう可能性がある。また、加熱室の幅方向の断面積、即ち、流体の流路面積が過度に小さいと加熱室における圧力損失が大きくなる。
2mm未満では、流体の流速と不織布の搬送速度との差により該不織布のばたつきが大きくなる可能性がある。10mm超となると、加熱室の内部空間の断面積が大きくなり、流体の供給量が増大し、ランニングコストが増加する。
さらに、前記各加熱室35〜38の長さ(不織布の搬送方向に沿う長さ)については、不織布2の搬送速度及び該不織布の加熱時間との関係で決定されるが、すべての加熱室35〜38の長さの合計が、搬送中の不織布2を後で詳述する時間だけ確実に加熱することできる程度の大きさに設定される。ただし、あまりに長すぎると不織布のたるみを抑えるために張力を大きくする必要があり、場合によってはいわゆる幅入りとよばれる現象が生じるため、1〜10m程度の長さとすることが好ましく、さらに好ましくは3〜5mとすることである。なお、1つの加熱室の長さは、設定されたすべての加熱室35〜38の長さの合計の1/4の長さとなる。
前記第1及び第2の上方向け加熱室35,37の内部空間39,41の入口39a,41a側に配設された流体吹付け装置43,45は、加熱用の流体を、対応する上方向け加熱室35,37の内部空間39,41内に向けて、不織布2の搬送方向に沿うように上方向きに吹き付けるようになっている。
一方、前記第1及び第2の下方向け加熱室36,38の内部空間40,42の入口40a,42a側に配設された流体吹付け装置44,46は、加熱用の流体を、対応する下方向け加熱室36,38の内部空間40,42内に向けて、不織布2の搬送方向に沿うように下方向きに吹き付けるようになっている。
そして、前記加熱用ノズル50〜53から噴射された流体は、吹付けられた各加熱室35〜38の内部空間39〜42内を流通して前記出口39b〜42bからそれぞれ排出されるようになっている。これにより、各内部空間39〜42内全体を、後述する所定の温度に保ち、この内部空間39〜42内に位置する不織2布に対してはそれぞれ確実に加熱を行うことが可能となっている。
また、各流体吹付け装置43〜46における、加熱用のノズルの噴射方向50〜53については、前記不織布2の搬送方向に対する角度θ2を0〜30度程度で入射する角度とすることが好ましく、さらに好ましくは0〜10度であり、0度、即ち、不織布2の搬送方向と平行(つまり鉛直)に噴射することが最も好ましい。
また、これらの上方向け冷却室74及び下方向け冷却室75は、それぞれの冷却室74,75の上端側及び下端側がいずれもほぼ同じ高さに位置し、且つ各冷却室の軸線方向が相互に略平行(この場合略鉛直方向)となるように並設されている。なお、この実施の形態の場合、これらの上方向け冷却室74及び下方向け冷却室75は、前記加熱室35〜38と、上端側及び下端側がいずれもほぼ同じ高さに位置し、且つ各冷却室74,75の軸線方向と各加熱室35〜38の軸線方向が相互に略平行(この場合略鉛直方向)となるように配設されている。
これにより、第2の下方向け加熱室38の出口42bから鉛直下方向きに送出されて、補助ロール92によって略水平に転向された不織布2は、前記第4の転向ロール80によって鉛直上方向きに搬送方向が転向され、上方向け冷却室74の入口76aに向けて搬送される。また、上方向け冷却室74の出口76bから鉛直上方向きに送出された不織布2は、前記第5の転向ロール81によって鉛直下方向きに搬送方向が転向され、下方向け冷却室75の入口77bに向けて搬送される。
したがって、第2の下方向け加熱室38の出口42bから送出された加熱された不織布2は、上方向け冷却室74、下方向け冷却室75の順に送入され、それぞれの冷却室74,75を通して連続的に冷却されることとなる。
また、各冷却用の流体吹付け装置78,79における、冷却用ノズル82,83の噴射方向については、基本的に前記加熱用の流体吹付け装置43〜46の加熱用ノズル50〜53の角度と同様の角度とすることが好ましい。
基本的に、図5に示すように、所定の方法で形成された不織布をロール状に巻き付けた不織布原反5から不織布2を繰り出し、その不織布2を前記加熱装置33の加熱室35〜38、及び前記冷却装置34の冷却室74,75を通して搬送することにより、該不織布2の嵩回復を行う。
そして、すべての加熱室での不織布の加熱時間の合計が0.2〜4秒となるように、前記不織布を加熱する(即ち、各加熱室での加熱時間は0.05〜1秒程度)。
なお、前記加熱用の流体を吹付ける際の流速は、第1の実施の形態の場合と同様に、1000〜4000m/min程度が好ましい。
また、前記加熱室35〜38の内部空間39〜42内に吹付けられた加熱用の流体は、不織布2の表面を該不織布の搬送方向に沿うように進行するため、流体の流れが不織布2の嵩の回復を阻害することがほとんどない。
また、前記不織布2の加熱を、すべの加熱室35〜38での合計で0.2〜4秒行う理由についても、前記第1の実施の形態と同様である。
前記冷却装置34による冷却は、加熱後の不織布が30℃以下、さらに好ましくは20〜25℃程度の室温にまで冷却することができればよく、例えば、上方向け冷却室及び下方向け冷却室における冷却温度を共に10〜30℃として、これらの2つの冷却室での冷却時間の合計が0.2〜4秒程度となるように冷却することが好ましい。
なお、前記冷却装置34における加熱後の不織布2の冷却の効果については、前記第1の実施の形態と同じである。
しかしながら、前記加熱装置33は、前記不織布2を鉛直方向に向けて流通させる複数の加熱室35〜38を備え、これらの複数の加熱室35〜38によって不織布2を連続的に加熱可能としたことにより、必要な不織布2の加熱時間を比較的容易に確保することができるという利点がある。特に、近年の不織布の嵩回復に係る操業のように、不織布の搬送速度が非常に大きい場合であっても、前述の0.2〜4秒の加熱時間を確実に確保することができるため、不織布の嵩回復をより安定的に且つ確実に行うことができる。
特に、不織布2の搬送速度が大きくなるに従って、隣接する加熱室への転換及び搬送も早くなるため、外気に触れる時間はより少なくなり、嵩回復への影響は一層小さくなる。
また、不織布の冷却を行う必要がない場合には、不織布の嵩回復装置に冷却装置を設ける必要はない。なお、仮に冷却装置を設けた場合でも、不織布の冷却が必要でない場合は、冷却装置を駆動することなく不織布を次の工程に搬送すればよい。
また、前記第2の実施の形態においては、加熱装置33が、上方向け加熱室を2つ、下方向け加熱室2つの計4つの加熱室を備えたものとなっているが、この加熱室の数については、単数であってもよく、あるいは2つ又は3つ、さらには5つ以上であってもよく、不織布の搬送速度との関係で、該不織布を0.2〜4秒加熱することができる加熱室の長さ(すべての加熱室の合計の長さ)に応じて、適宜選択することができる。
ただし、上述のように、すべての加熱室の長さの合計は、1〜10m、より好ましくは3〜7mの範囲とすることが肝要である。また、1つの加熱室の長さとしては、300〜3000mmとすることが好ましく、300mm未満であると流体が内部空間に均一に行き渡らず、温度にばらつきが生じる可能性があり、3000mm超となると長すぎて設置上の問題が生じる可能性がある。
また、この場合には、本発明の嵩回復方法を実施する嵩回復装置を、各種吸収性物品の製造装置に組み込んで、その嵩回復装置によって嵩が回復した不織布を各種吸収性物品の製造に連続的且つ直接的に使用することが好ましい。
具体的に、この実施例においては、前記第2の実施の形態で説明した嵩回復装置を用いて本発明に係る嵩回復方法を実施し、従来の嵩回復方法として、上述の特許文献1に記載のような、搬送されている不織布の面に略垂直に熱風を噴射するエアスルー方式の装置による嵩回復方法を実施した。
そして、本発明に係る嵩回復方法によって嵩回復が行ったサンプル(以下、実施例という。)と、本発明に依らない従来の嵩回復方法によって嵩回復を行ったサンプル(以下、「比較例」という。)との、嵩回復効率を比較して嵩回復効果を評価した。
ここで、「嵩回復効率」とは、嵩回復方法を実施した不織布の厚み(嵩回復前厚み)を、嵩回復方法を実施する前の不織布の厚み(嵩回復後厚み)で割った値(嵩回復前厚み/嵩回復後厚み)である。
また、前記不織布サンプルAについては、繊維密度2.5dtex、坪量25g/m2であり、不織布(不織布原反)の巻長4000m、巻径950mm、嵩回復前厚みは0.44mmである。
前記不織布サンプルBについては、繊維密度2.3dtex、坪量24g/m2であり、不織布(不織布原反)の巻長4000m、巻径870mm、嵩回復前厚みは0.42mmである。
前記不織布サンプルCについては、繊維密度2.3dtex、坪量29g/m2であり、不織布(不織布原反)の巻長4000m、巻径800mm、嵩回復前厚みは0.50mmである。
そして、実施例1〜13、及び比較例における、それぞれの嵩回復前厚み、嵩回復後厚みから前記嵩回復効率を計算した。
なお、不織布の嵩(厚み)は、不織布に3.0gf/cm2荷重を加えた状態で、厚み計((株)大栄科学精器製作所製, THICKNESS GAUGE UF−60)を用いて、不織布の10箇所で行い、その平均値を嵩(厚み)とした。
結果を表1に示す。
また、不織布サンプルAを用いた実施例の中で、加工速度500m/minで、実施例の中で加熱室が最も短い実施例3については、加工時間が0.4秒であったが、比較例よりも嵩回復効率が高かった。これは、比較例に係る嵩回復方法(エアスルー方式)よりも不織布に熱が伝わり易かったためであると考えられる。
一方で、実施例1〜実施例3を比較すると、加工時間が長いほど嵩回復効率が高い。したがって、本発明の加熱時間の範囲においては、加熱時間が長いほど嵩回復の効果があらわれやすいことがわかる。
さらに、不織布サンプルAを用いた実施例の中で、加工速度500m/minで、実施例の中で加熱室が最も長い実施例4については、加工時間が最も長い実施例1に近い嵩回復効率が得られた。これは、総加熱室長さが増加することにより、実施例1で実施している100m/minで加えられた熱量が500m/minでも十分に不織布に与えられたためであると考えられる。
(1)100×100mmの大きさにカットしたろ紙(ADVANTEC FILTER PAPER GRADE2)5枚の上に、100×100mmの大きさにカットした試料を配置し、その上に通電透液プレートを配置する。
(2)ストライクスルー試験機本体に、ろ紙、試料及び通電透液プレートをセットする。
(3)ストライクスルー試験機本体に、生理食塩水5mLを入れる。
(4)ストライクスルー試験機本体から、生理食塩水5mL(室温)を、通電透液プレートの開孔部に落下させる。
(5)通電透液プレートの通電時間を記録する。
(6)計3回の測定を行い、透液時間の平均値を算出する。
なお、試料をセットしない場合、即ち、ろ紙5枚における透液時間は、69.13秒であった。
2 不織布
3,33 加熱装置
4,44 冷却装置
8,35〜38 加熱室
9,39〜42 加熱室の内部空間
10,43〜46 流体吹付け装置
Claims (6)
- 熱可塑性繊維を含む搬送中の不織布を、該不織布を加熱する加熱装置の加熱室の内部空間に収容し、該内部空間内の不織布を、該内部空間における不織布の入口側から流体を吹付けて加熱しつつ、その流体を吸引することなく該内部空間における不織布の出口側から排出する、又は、該内部空間内の不織布を、該内部空間における出口側から流体を吹付けて加熱しつつ、その流体を吸引することなく該内部空間における入口側から排出する不織布の嵩回復方法であって、前記流体を、前記不織布の搬送速度よりも早い流速で加熱室の内部空間内に吹付けて、該内部空間の入口側及び該内部空間の出口側のうちのいずれか一方から他方まで該不織布の表面に沿うように流通させつつ、該不織布を、熱可塑性繊維の融点よりも50°C低い温度以上、該融点の温度未満の温度で、0.2〜4秒加熱する、不織布の嵩回復方法。
- 前記加熱装置において、前記流体を前記加熱室の内部空間の入口側から該内部空間内に吹付けて、その内部空間の出口側から排出する、請求項1に記載の不織布の嵩回復方法。
- 前記加熱室の内部空間は鉛直方向に延設されていて、前記不織布を鉛直方向に向けて流通させる、請求項1又は請求項2に記載の不織布の嵩回復方法。
- 前記加熱装置は、前記不織布を鉛直上向きに流通させながら加熱する上方向け加熱室と、前記不織布を鉛直下向きに流通させながら加熱する下方向け加熱室とを有し、これらの上方向け加熱室又は下方向け加熱室のいずれか一方の加熱室の内部空間から送出された不織布を、他方の加熱室の内部空間に送入して該不織布を連続的に加熱する、請求項3に記載の不織布の嵩回復方法。
- 前記加熱装置による不織布の加熱後、その加熱された不織布を冷却する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の不織布の嵩回復方法。
- 嵩が回復した不織布を、吸収性物品の製造工程に直接的に供給する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の不織布の嵩回復方法。
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