JP5831796B2 - ダイヤモンド複合体およびそれから分離した単結晶ダイヤモンド、及びダイヤモンド複合体の製造方法 - Google Patents
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成長パラメータを大きくすることで、(100)面の成長速度がその他の方向の成長速度より速くなり、(100)面上から(100)面以外の面方位の微小結晶粒子を消失させることができる。
成長パラメータの大きい条件は(100)面方位に適している方法であり、(110)面方位や(111)面方位の成長をこの条件で実現することは難しい。また、この方法によって微細な異常粒子の成長を防ぎ、最終的に多結晶となってしまうことを防ぐことはできるが、転移などの欠陥は引継ぎ成長してしまう。この問題は下地の結晶を引き継ぐエピタキシャル成長の原理から十分に理解できる(図8参照)。
そしてこの場合において、単純にバルクの単結晶ダイヤモンドを形成するのではなく、各々異なる基板を準備し、その上にダイヤモンドを成長させたり、同一の単結晶基板上に成長する場合は、平行な線状の溝を形成して、それぞれを分離した状態でダイヤモンドの成長を開始したりすることを特徴としている。
(1)少なくとも、板状の2つ以上の単結晶ダイヤモンドより構成されており、それぞれの単結晶ダイヤモンドが、それぞれの主面間に介在する接合層によって接合されてなることを特徴とするダイヤモンド複合体。
(2)前記接合層が多結晶ダイヤモンドを含むことを特徴とする上記(1)に記載のダイヤモンド複合体。
(3)前記接合層の50%以上が非ダイヤモンドのカーボン層であることを特徴とする上記(1)に記載のダイヤモンド複合体。
(4)前記接合層が、溝あるいは20%以上の空孔を有していることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のダイヤモンド複合体。
(5)前記単結晶ダイヤモンドの主面に平行な方向に単結晶ダイヤモンドを切断した断面における走査型電子顕微鏡像、カソードルミネッセンス像、又はフォトルミネッセンス像に縞模様が確認されることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のダイヤモンド複合体。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載のダイヤモンド複合体から接合層を境にして分離されたことを特徴とする単結晶ダイヤモンド。
(7)前記単結晶ダイヤモンドが、放電加工、電気化学的エッチング、あるいは物理的振動により分離されたものであることを特徴とする上記(6)に記載の単結晶ダイヤモンド。
(8)前記単結晶ダイヤモンドの主面がオフ角10°以内の(100)面方位であることを特徴とする上記(6)又は(7)に記載の単結晶ダイヤモンド。
(9)前記単結晶ダイヤモンドの主面がオフ角10°以内の(110)面方位であることを特徴とする上記(6)又は(7)に記載の単結晶ダイヤモンド。
(10)少なくとも2以上の四角柱状の単結晶ダイヤモンド基板を、長手方向の側面同士が向かい合うように並べる工程と、
該基板上に気相合成法によりダイヤモンドをエピタキシャル成長させる工程と、
を含み、
前記並べた単結晶ダイヤモンド基板の表面の短い辺の長さよりも厚くダイヤモンドを形成することを特徴とする上記(1)に記載のダイヤモンド複合体を製造する方法。
(11)前記四角柱状の単結晶ダイヤモンド基板が、平板状の単結晶ダイヤモンド表面に厚み方向に気相成長させることによって得られた単結晶ダイヤモンド基板であることを特徴とする上記(10)に記載のダイヤモンド複合体の製造する方法。
(12)平板状の単結晶ダイヤモンド基板の主面に、少なくとも2以上の平行な線状の溝を形成する工程と、
該基板上に気相合成法によってダイヤモンドをエピタキシャル成長させる工程と、
前記単結晶ダイヤモンド基板を切り離す工程と、
を含むことを特徴とする上記(1)に記載のダイヤモンド複合体を製造する方法。
(13)前記平板状の単結晶ダイヤモンド基板が、単結晶ダイヤモンドの主面にイオンを注入して内部にイオン注入層を形成し、該主面上に気相合成法により単結晶ダイヤモンドをエピタキシャル成長させることにより得られた単結晶ダイヤモンド基板であることを特徴とする上記(12)に記載のダイヤモンド複合体の製造する方法。
また、平板状の単結晶ダイヤモンド基板の主面に、少なくとも2以上の平行な線状の溝を形成する工程と、該基板上に気相合成法によってダイヤモンドをエピタキシャル成長させる工程と、前記単結晶ダイヤモンド基板を切り離す工程と、を含むことを特徴とするダイヤモンド複合体の製造方法によっても作製することができる。
なお、単結晶ダイヤモンド基板の主面に、少なくとも2以上の平行な線状の溝を形成する場合において、線状の溝は厳密に平行である必要はなく、巨視的に観て略平行であればよい。例えば、レーザー加工により溝を形成する場合には、ミクロにみると、線の直線性は揺らいでいる。また、フォトリソグラフィーを使って溝を形成することもでき、この場合には、マスクの精度にもよるが、かなり高精度の直線性を有する溝を形成することができる。
また、なるべく早く、隣り合う単結晶ダイヤモンド同士が接合層を介して接合されなければならない。このためには、基板同士を500μm以下、更に好ましくは300μm以下の間隔で並べることが好ましい。すなわち、並べる基板同士の間隔は、50μm〜500μmであることが好ましく、100μm〜300μmであることが更に好ましい。
また、隣り合う基板同士の高さの差が30μm以上ある場合には、基板同士を近づけて間隔をより小さくすることができ、上記のように50μm以上とすればよく、更には、隙間がなくとも、本発明の複合体を製造することができる合成条件がある。具体的には、隙間が存在するときは、好ましくは成長パラメータ(α)が2〜3の範囲で成長させ、ある一定の成長の後、成長パラメータを2.8以上で成長させることがうまくいく条件となり、隙間が存在せず、隣り合う基板同士の高さも30μm以上と揃っていない場合は成長パラメータが2.8以上の条件で成長させれば、本発明のダイヤモンド複合体が得られる確率が高い。
本発明に係るダイヤモンド複合体において接合層は、多結晶ダイヤモンド、50%以上の非ダイヤモンドのカーボン層の場合と、それぞれにランダムに空孔を含む場合もある。空孔は20%以上の場合もあり、溝になっている場合もある。そして、多結晶ダイヤモンド及び/又は非ダイヤモンド炭素(グラファイトを含む)を含む接合層を介して接合した単結晶ダイヤモンド同士は、いずれもが、ゆるい接合であるため、単結晶ダイヤモンド同士を物理的に容易に切り離すことができる。
実施形態1として、本発明の複合体ダイヤモンド及び単結晶ダイヤモンドを作製した。図4にその手順の概略を示す。
まず、基板として単結晶ダイヤモンドを準備する。単結晶ダイヤモンドは、天然ダイヤモンド、あるいは高圧合成法により形成されたダイヤモンド、あるいは気相合成法により形成されたダイヤモンドのいずれの単結晶ダイヤモンドであっても良い。
四角柱状の基板は複数個用意され、それぞれほぼ柱状あるいは板状の形状をしていることが好ましい。基板の表面は平坦研磨されている。基板の表面は(100)面である。
この隙間は非常に重要で、100μm未満又は50μm未満になるように近づけると、本発明のダイヤモンド複合体の作製がうまくいかないことが多い。100μm未満又は50μm未満になるとダイヤモンドの合成中にそれぞれの基板から成長したダイヤモンドが単結晶のまま接合し、ダイヤモンド複合体ではなく、一つの単結晶ダイヤモンドとなってしまうからであり、本発明の主旨に沿わなくなるからである。
このような形状はレーザーカットを垂直に行うと、自然に発生するので、特に難しいことではないが、基板の上辺同士の隙間を最適値に設定する場合は、レーザー切断の条件や基板の厚みなどを調整する必要があるので、予め設計しておくことが好ましい。
この際には、初期(2h〜10hまで)には成長パラメータが2.8以上の条件で成長させること、その後(2h〜10h以降)は成長パラメータが3以上の条件で成長させることが肝要である。このようにして成長したダイヤモンドは、隣の基板から成長した単結晶ダイヤモンドとの間にわずかな隙間が生じたまま成長し、その隙間が埋まることがなかった。
サンドイッチ構造のダイヤモンド複合体は、その単結晶ダイヤモンド同士の境界(接合層部分)で分離することができる。ほとんどsp2結合を含む非ダイヤモンド炭素が支配的な接合層を介して接合している場合は、機械的に力を加えることにより接合部分で分離することができる。また、sp2結合を含む非ダイヤモンド炭素が支配的な層であるならば、他にも電気化学的にエッチングする方法で剥離することも可能である。接合層に多結晶ダイヤモンド成分が多い場合は、レーザー切断が有効である。
接合層部分は一般的に黒い色をしているが、これはsp2結合を含む層を少なからず含んでいることを示している。
このようにCVD法による単結晶ダイヤモンドの合成で種々の面を主面とするような単結晶ダイヤモンドの合成を可能にすることはこれまでの方法ではありえないことであった。
実施形態2として、実施形態1とは異なる方法により本発明の複合体ダイヤモンド及び単結晶ダイヤモンドを作製した。図5にその手順の概略を示す。
基板として、(100)面方位を主面とする単結晶ダイヤモンドを準備する。単結晶ダイヤモンドは、天然ダイヤモンド、あるいは高圧合成法により形成されたダイヤモンド、あるいは気相合成法により形成されたダイヤモンドのいずれの単結晶ダイヤモンドであっても良い。
大型の単結晶ダイヤモンド基板を1枚用意し、カーボンイオンをイオン注入した。単結晶ダイヤモンド基板はイオン注入の影響で黒くなった。その基板上にCVD法によりダイヤモンドを合成し、その後、合成された単結晶ダイヤモンドの表面にレーザーで複数の平行な線状の溝を形成した。
ダイヤモンド複合体や、分離した単結晶ダイヤモンドの利用の方法は実施形態1と同様であり、特徴なども実施形態1と同様である。
[実施例1]
図6に示す手順により本発明のダイヤモンド複合体、及び単結晶ダイヤモンドを作製した。
基板として、0.6mm×6mm×1mmtおよび0.8mm×5mm×0.6mmtの直方体(6mm長の基板と5mm長の基板と称する)の、高圧合成法により作製された単結晶ダイヤモンドを9枚用意した。0.6×6mmの片面と、0.8×5mmの片面を研磨して平坦面にした。
表面はほぼ(100)面であった。側面はレーザーカットのままの面である。側面は、ほぼ(100)面の基板と、(110)面の基板を用意した。
ダイヤモンドの合成は、メタンガスがメタンガス/水素ガス比で9%となるようにガスを導入し、窒素ガスも窒素/メタンガス比で1000ppmとなるようにし、マイクロ波パワー6kW、全圧力100Torrの条件で行った。それぞれのサイズの種基板に対して、それぞれ厚さが3mmおよび6mmまで合成を行い、いずれも一塊のダイヤモンド複合体を得た。
5mm長の種基板からは、5mm×3mmの主面で0.8mmtの厚さの単結晶ダイヤモンド基板が並んだダイヤモンド複合体と、5mm×6mmの主面で0.8mmtの厚さの単結晶ダイヤモンドが並んだダイヤモンド複合体ができた。
もともとの種結晶基板は、ダイヤモンド複合体から分離した単結晶ダイヤモンドの端面にしっかり接合しており、上記の処理によってこれが外れることはなかったので、レーザーでカットした。カットされた元の種基板は、接合していた面を研磨して再度同じような種基板として再利用できた。
比較として、レーザーで無理やり分離したダイヤモンド基板を研磨し、主面のエッチピットを観察したところ、もとの種基板(105cm-2)よりは少なくなっていた(104cm-2)が、本発明の単結晶ダイヤモンドほどではなかった。
図7に示す手順により本発明のダイヤモンド複合体、及び単結晶ダイヤモンドを作製した。
実施例1とは異なり、6mm角の単結晶ダイヤモンド基板を用意して、該基板にイオン注入を行った。条件はカーボンイオンを250keVあるいは3MeVとした。ドーズ量は1×1016cm-2である。
イオン注入後、気相合成法で基板上にダイヤモンドを合成した。合成条件は実施例1と同じである。ほぼ600μmの厚さに形成した。
次に、気相成長した面にレーザーで、200μm幅、400μm深さの溝を0.8mm間隔で形成した。その後、気相合成法で実施例1と同じ条件でダイヤモンドをエピタキシャルに成長した。厚さは約6mm形成した。
実施例1と同様に複数の単結晶ダイヤモンドが複合体から分離され、主面を研磨することできれいな単結晶ダイヤモンドが形成できた。エッチピットを確認すると、分離された単結晶ダイヤモンド基板は種結晶基板よりも2桁ほど低い値となった。
種基板の側面を(100)面としたり、(110)面としたりすると、作製された単結晶ダイヤモンドの主面が(100)面となったり、(110)面となったりすることも同様であった。
Claims (2)
- 少なくとも、板状の2つ以上の単結晶ダイヤモンドより構成されており、それぞれの単結晶ダイヤモンドが、それぞれの主面間に介在する接合層によって接合されてなり、前記接合層が多結晶ダイヤモンドを含むことを特徴とするダイヤモンド複合体。
- 少なくとも、板状の2つ以上の単結晶ダイヤモンドより構成されており、それぞれの単結晶ダイヤモンドが、それぞれの主面間に介在する接合層によって接合されてなり、前記接合層の50%以上が非ダイヤモンドのカーボン層であることを特徴とするダイヤモンド複合体。
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