以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
(第1実施形態)
図1(A)〜図1(F)は、物理量センサーの構造と動作の一例を示す図である。物理量センサーは慣性センサーとして使用することができ、具体的には、例えば、鉛直方向(水平面に垂直な方向)の加速度(例えば重力加速度)を測定するための加速度センサー(静電容量型加速度センサー、静電容量型MEMS加速度センサー)として利用可能である。
図1(A)は、物理量センサー(パッケージを含む)の断面構造を示し、図1(B)は、加速度等の物理量の検出するための可変容量(静電容量,検出容量,容量素子)の平面視における構造の一例(可動電極として、揺動体を構成するシーソープレート自体を使用する例)を示す平面図であり、図1(B)は、図1(A)に対応する。図1(C)は、可変容量の平面視における構造の他の例(可動電極として、多層構造体上に形成される導体層を使用する例)を示す平面図である。図1(D)〜図1(F)は、揺動体のシーソー動作に伴う可変容量の容量値の変化を示す図である。
図1(C)の例は変形例であることから、まず、図1(A)および図1(B)に示される基本例について説明する。
(図1(A),図1(B)に示される例の構造について)
図1(A)に示されるように、物理量センサー(ここでは、静電容量型加速度センサーであるとする)は、支持体100および蓋体200によって構成される封止体250と、封止体250の内部の空間に設けられる揺動体300と、揺動体300を、支持軸Q1を支点としてシーソー揺動可能に両持ち支持する第1支持部40a(図1(A)では不図示、図1(B),図1(C)参照)および第2支持部40bと、揺動体300のシーソー揺動に応じて位置が変化する可動電極(第1可動電極109a,第2可動電極109b)ならびに、ベース102上の、可動電極に対向する位置に設けられる固定電極(第1固定電極208a,第2固定電極208b)を有する可変容量(第1可変容量c1,第2可変容量c2)と、を含む。
なお、蓋体200を設けずに、例えば、揺動体300が大気に露出している状態で使用する場合もあり得る。気密封止パッケージが必要な場合には、蓋体200が設けられる。
また、第1支持部40aは第1トーションバネ(捻りバネ)として機能し、第2支持部40bは第2トーションバネ(捻りバネ)として機能する。
第1支持部40aと第2支持部40bをトーションバネにすることにより、揺動体300がシーソー揺動することによりバネに生じるねじり変形に対し強い復元力を有し、支持部が破損するのを防止できる。
第1支持部(第1トーションバネ)40aおよび第2支持部(第2トーションバネ)40bは、揺動体300の回転中心となる支持軸Q1の位置を決定する部材である。揺動体300は、例えば、第1支持部(第1トーションバネ)40aおよび第2支持部(第2トーションバネ)40bの各々を介して、支持体100(例えば支持体100を構成する基板106の枠状の部分)あるいは蓋体200に固定されることができる。
図1(A)に示されるように、本実施例では、揺動体300の重心線GLを、重心線GLに平行に所定距離d1だけシフトして得られる線分SL上に支持軸Q1が設けられる。なお、重心線GLは、揺動体300の重心G1を通る鉛直線であり、図1(A)では、太い一点鎖線で示されている。線分SLは太い点線で示されている。図1(B)に示されるように、第1支持部(第1トーションバネ)40aおよび第2支持部(第2トーションバネ)40bは、支持軸Q1に重なっている。第1支持部(第1トーションバネ)40aおよび第2支持部(第2トーションバネ)40bの延在方向は、支持軸Q1の延在方向に一致する。
支持体100として、例えば、SOI(Silicon on Insulator)基板を利用することができる(図1(A)および図1(B)の例)。また、蓋体200として、シリコン、ガラス等の基板を利用することができる。なお、図1(C)に示される変形例では、支持体100(および蓋体200)として、CMOSIC等の半導体製造技術によって製造される多層構造体を使用している。
図1(A),図1(B)に示される例では、支持体100は、ベース102(SOI基板の下地基板であり、例えばSiからなる)と、ベース102上の絶縁層104(この絶縁層は不要である場合がある)と、絶縁層104上に形成される基板106と、を有する。この基板106は、具体的には、導電性が付与された活性層とすることができる。以下の説明では、活性層106と記載する場合がある。
ベース102と基板106との間には空隙95が設けられている。また、基板106の一部が除去されて開口部97が設けられており、この開口部97に、揺動体300が配置されている。揺動体300の周囲に開口部97(ならびに空隙95)が存在することによって、揺動体300は、シーソー揺動することができる。
揺動体300ならびに揺動体300を両持ち支持する第1支持部40aおよび第2支持部40b(トーションバネ)は、絶縁層104が露出するまで活性層106(基板106)をドライエッチング等でエッチングし、次に絶縁層104をHFベーパー等で選択的に等方性エッチングすることによって形成される。
第1支持部40aおよび第2支持部40bは、例えば、活性層106(基板106)の周囲の枠状部分(図1では不図示:例えば図6参照)に連結される。したがって、揺動体300は、支持軸Q1に配置された第1支持部40aと第2支持部40bとによって、基板(活性層)106(例えば周囲の枠状の部分)に支持される。
揺動体300は可動電極109a,109bとして機能する。揺動体300が導電性材料(不純物がドープされたシリコン等)で構成されることによって可動電極(109a,109b)が形成されてもよく、また、揺動体300上に金属等の導体層からなる可動電極(109a,109b)を形成することもできる。図1の例では、揺動体300が導電性材料(不純物がドープされたシリコン)で構成されることによって可動電極109a,109bが形成されている。
また、ベース102の、可動電極109aに対向する位置に固定電極208aが設けられ、また、可動電極109bに対向する位置に固定電極208bが設けられる。なお、蓋体200が設けられる場合には、蓋体200の、可動電極109aに対向する位置に固定電極208aを設け、可動電極109bに対向する位置に固定電極208bを設けることもできる。
また、揺動体300は、第1シーソー片(第1の領域)PT1と、第2シーソー片(第2の領域)PT2と、を有する。第1シーソー片(第1の領域)PT1は、平面視で支持軸Q1によって区画される2つの部分のうちの一方(図1(B)では左側に位置する部分)に対応する。第2シーソー片(第2の領域)PT2は、平面視で支持軸Q1によって区画される2つの部分のうちの他方(図1(B)では右側に位置する部分)に対応する。
なお、第1領域、第2領域という用語は、主として、揺動体300の平面視における形状(支持軸Q1で2分される、シーソー片PT1,PT2の各々に対応する領域)という意味で使用される。以下の説明では、第1シーソー片(第1の領域)PT1、第2シーソー片(第2の領域)PT2と記載する場合がある。
図1(B)の例では、第1シーソー片(第1の領域)PT1の厚み、ならびに第2シーソー片(第2の領域)PT2の厚みは、共にDTである(但し、これに限定されるものではなく、回転モーメントの調整のために、各シーソー片の厚みを異ならせることもできる)。また、第1シーソー片(第1の領域)と第2シーソー片(第2の領域)の並び方向は、揺動体の長辺方向と水平(平行)な方向となっている。
例えば、鉛直方向の加速度(例えば重力加速度)が揺動体300に加わったときに、第1シーソー片(第1の領域)PT1と第2シーソー片(第2の領域)PT2の各々に回転モーメント(力のモーメント)が生じる。ここで、第1シーソー片(第1の領域)PT1の回転モーメント(例えば反時計回りの回転モーメント)と第2シーソー片(第2の領域)PT2の回転モーメント(例えば時計回りの回転モーメント)が均衡した場合には、揺動体300の傾きに変化が生じず、加速度の変化を検出することができない。したがって、例えば鉛直方向の加速度が加わったときの第1シーソー片(第1の領域)PT1の回転モーメントと、第2シーソー片(第2の領域)PT2の回転モーメントとが均衡せず、揺動体300に所定の傾き(許容範囲内の傾き)が生じるように、揺動体300が設計される。例えば、支持軸Q1を、揺動体300の中心から外れた位置に配置する方法(支持軸Q1から各シーソー片PT1,PT2の先端までの距離を異ならせる方法)を採用することができ、また、支持軸Q1を揺動体300の中心に配置し、かつ各シーソー片PT1,PT2の厚みを異ならせる等の方法によって、各シーソー片PT1,PT2の質量に差を設ける方法を採用することもできるが、本実施形態では、前者の方法(支持軸Q1を揺動体300の中心から外れた位置に配置することによって、支持軸Q1から各シーソー片PT1,PT2の先端までの距離を異ならせる方法)が採用される。
第1シーソー片(第1の領域)PT1および第2シーソー片(第2の領域)PT2の、断面形状における厚みを同じにする(つまり、共に厚みDTに設定する)ことによって、第1シーソー片PT1と第2シーソー片PT2とを同一の製造工程で製造することができる。つまり、各シーソー片の厚みに差を設けるための工程(エッチングプロセス等)が不要となり、製造工程が簡素化されるという利点がある。
第1シーソー片PT1と第2シーソー片PT2の平面視における形状の寸法(縦寸法、横寸法等)は、例えば、フォトリソグラフィ用のマスク形状を変更することによって、自由に設定することができる。図1(B)の例では、揺動体300は、平面視で長方形になるように加工されている。以下の説明では、揺動体300の長手方向を第1方向(X軸方向)とし、水平面内で第1方向に直交する方向(支持軸Q1の方向ということもできる)を第2方向(Y軸方向)とし、第1方向および第2方向に直交する方向(水平面に直交する方向)を第3方向(Z軸方向)とする。
また、揺動体300に設けられる可動電極109(第1可動電極109a,第2可動電極109b)は、揺動体300のシーソー揺動に応じて位置が変化する。例えば、導電性を有する揺動体300自体を可動電極とすることができ、また、揺動体300上や揺動体中に、導電材料(金属等)からなる電極を選択的に形成し、その電極を、可動電極(第1可動電極109a,第2可動電極109b)とすることもできる。
図1(B)の例では、可変容量c1,c2の構成要素である可動電極109(第1可動電極109aおよび第2可動電極109b)は、導電性を有する揺動体300自体によって構成される。具体的には、導電性の活性層をパターニングして形成されるシーソープレート(不純物が導入されたシリコンプレート)311によって、可動電極109((第1可動電極109a,第2可動電極109b)が構成(形成)される。つまり、図1(B)の例では、可動電極109(第1可動電極109a,第2可動電極109b)は、共通電極によって構成されており、その共通電極は、共通電位(基準電位VCOM(例えばGND))に接続される。電極の共通化によって、電極に接続される配線の数を減らすことができ、配線パターンを簡素化することができる。また、揺動体300が電極を兼ねるため、電極を別途、形成する必要がなく、製造工程が簡素化される。
なお、蓋体200も、支持体100と同様に、SOI基板で構成しても良い。
上述のとおり、ベース(パッケージの土台となる基板あるいは基体等)100と蓋体200とによって封止体が構成される。支持体100と蓋体200とによって気密封止パッケージを構成するために、支持体100と蓋体200との境界付近にはシーリング部材(例えばスペーサー)90が用いられる。
また、ベース102上の表面には、可変容量(容量素子)c1,c2の構成要素である固定電極208(第1固定電極208a,第2固定電極208b)が設けられる。ベース102の表面に絶縁膜(図示省略)を設け、その絶縁膜上に第1固定電極208a,第2固定電極208bを設けるのが好ましい。この第1固定電極208a,第2固定電極208bは、揺動体300に設けられる可動電極109(第1可動電極109aおよび第2可動電極109b)に対応する位置(対向する位置)に設けられている。なお、第1固定電極208a,第2固定電極208bは、蓋体200の内表面の、第1可動電極109aおよび第2可動電極109b)に対応する位置(対向する位置)上に設けることもできる。また、可動電極109を共通化する(つまり、第1の領域PT1と第2の領域PT2とに跨って設ける)ことによって、電極に接続される配線の数を減らすことができ、配線パターンを簡素化することができる。
図1(A),図1(B)の例では、第1可動電極109aと第2可動電極109bを共通化していたが、固定電極208(第1固定電極208aと2固定電極208b)を同一電位の共通電極とすることもできる(この場合は、第1可動電極109aと第2可動電極109bは、互いに電気的に独立した電極として形成される)。上述のとおり、電極の共通化によって、電極に接続される配線の数を減らすことができ、配線パターンを簡素化することができる。
また、第1可動電極109aおよび第2可動電極109bに対向するように個別に固定電極を設けることで、差動容量の値を精度よく検出することができる。
次に、図1(C)に示される変形例について説明する。図1(C)の例では、多層配線構造を有する半導体基板(これらを総称して多層構造体ということができる)によって揺動体300を構成している。つまり、半導体基板(図1(A)の参照符号102に相当する)上に、CMOSICプロセスによって、複数層の絶縁層(層間絶縁層を含む)が積層形成された多層構造体が形成される。図1(C)の例では、最上層の絶縁層107上に、共通電位(VCOM:ここではGND)用の電極となる金属層111が形成されている。図1(C)の例では、半導体製造技術(多層配線基板技術等)によって、可動電極109(第1可動電極109a,第2可動電極109b)を、無理なく形成することができる。
以上の例の他、種々の変形例が考えられる。変形例の一例が、図14に示される。図14は、物理量センサーの構造の他の例を示す図である。
図14に示される例では、第1支持部40aの位置と第2支持部40bの位置とが異なっている(揺動体の長手方向に所定距離ずれている)。この場合、第1支持部40aと第2支持部40bを結ぶ支持軸Q1(図中、2点鎖線で示される)は斜めになり、揺動体300は、平面視で、支持軸Q1によって第1の領域(第1シーソー片)PT1と第2の領域(第2シーソー片)PT2に区画される。なお、この場合において、第1の領域PT1と第2の領域PT2の並び方向は、揺動体の長辺方向と水平(平行)な方向となる。
ここで、図1に戻って説明を続ける。次に、揺動体300の揺動動作と、その揺動動作に伴う可変容量の容量値の変化について説明する。以下、図1(D)〜図1(F)を参照する。なお、図1(D)〜図1(F)では、第1固定電極208a,第2固定電極208bは、説明の便宜上、揺動体300の上側に記載されている。
図1(D)では、揺動体300は、水平状態を維持している(この状態は、重力加速度がない状態(無重力状態)に対応する)。図1(D)に示されるように、可変容量として、第1可変容量c1および第2可変容量c2が設けられている。第1可変容量c1は、第1シーソー片PT1のシーソー揺動に応じて位置が変化する第1可動電極109aと、蓋体200の、第1可動電極109aに対向する位置に設けられる第1固定電極208aと、を有する。また、第2可変容量c2は、第2シーソー片PT2のシーソー揺動に応じて位置が変化する第2可動電極109bと、蓋体200の、第2可動電極109bに対向する位置に設けられる第2固定電極208bと、を有する。
可変容量(検出容量)として、第1可変容量c1および第2可変容量c2を使用すると、加速度の大きさのみならず、加速度の方向も検出できるという利点がある(但し、これに限定されるものではない)。
図1(D)において、支持軸Q1から、第1シーソー片PT1の先端までの距離はT10であり、支持軸Q1から、第2シーソー片PT2の先端までの距離はT20(>T10)である。よって、図1(D)の例では、例えば、鉛直下向きに加速度が生じたとき、第1シーソー片PT1に生じる回転モーメントよりも、第2シーソー片PT2に生じる回転モーメントの方が大きく、揺動体300は、時計回りに回転することになる。以下、図1(E)および図1(F)を参照して、具体的に説明する。
図1(E)の状態では、揺動体300に、例えば、重力加速度G1(=1G)が加わる。これに伴い、揺動体300(第1シーソー片PT1および第2シーソー片PT2)は時計回りに回転し、揺動体300に傾きが生じる。揺動体300のシーソー揺動によって、第1可変容量c1の電極間距離が縮小し、その結果、第1可変容量c1の容量値(C1)が増大する。一方、第2可変容量c2の容量値(C2)は、電極間距離の拡大によって減少する。このように、図1(E)の例では、差動検出出力を得ることができる。2つの出力信号の各々の変化の程度によって、重力加速度G1の値(=1G)を検出することができる。さらに、2つの出力信号の各々の変化の方向によって、加速度の方向(鉛直下向き)を特定することができる。
図1(F)の状態では、重力加速度(=1G)が揺動体300に加わっている状態で、揺動体300に、さらに、鉛直上向きの加速度G2が加わる。この場合は、揺動体300(第1シーソー片PT1および第2シーソー片PT2)は半時計回りに回転し、揺動体300に、図1(E)の場合とは逆の傾きが生じる。揺動体300のシーソー揺動によって、第1可変容量c1の電極間距離が拡大し、その結果、第1可変容量c1の容量値(C1)は減少する。一方、第2可変容量c2の容量値(C2)は、電極間距離の縮小によって増大する。
図1(E)の状態にて得られる検出信号(つまり、重力加速度の大きさと向き)を基準として、図1(F)の状態における検出信号を判定することによって、図1(F)の状態で、どの方向にどの程度の加速度が作用しているかを検出することができる。つまり、図1(F)の状態で得られる2つの出力信号(差動信号)に基づいて、2つの出力信号の各々の変化の程度によって、加わった加速度G2の値を検出することができる。さらに、2つの出力信号の各々の変化の方向を検出することによって、加速度G2の方向(鉛直上向き)を特定することができる。
例えば、鉛直方向の加速度を測定する場合には、物理量センサーの封止体(パッケージ)を構成する支持体100の主面(底面)は、例えば、パッケージが取り付けられる電子部品等に備わる水平面上に固定される。例えば、重力加速度が加わると、回転モーメントによって揺動体300の傾きが変化し、これに伴って可変容量(c1,c2)の容量値が変化する。よって、例えば重力加速度を、可変容量(静電容量素子)の容量値の変化を示す電気信号として検出することができる。
上述のとおり、物理量センサーは、加速度センサーやジャイロセンサー等の慣性センサーとして使用することができ、具体的には、例えば、鉛直方向(水平面に垂直な方向)の加速度(例えば重力加速度)を測定するための静電容量型加速度センサーとして使用することができる。鉛直方向の加速度を測定する場合には、物理量センサーの封止体(パッケージ)を構成するベースの主面(底面)は、例えば、パッケージが取り付けられる電子部品等に備わる水平面上に固定される。例えば、重力加速度が加わると、回転モーメントによって揺動体300の傾きが変化し、これに伴って可変容量c1,c2の容量値が変化する。よって、例えば重力加速度の大きさと方向を、可変容量c1,c2の容量値の変化を示す電気信号によって検出することができる。
図1(A)〜図1(F)に示される例によれば、例えば、支持体100上に、第1支持部(第1トーションバネ)40aおよび第2支持部(第2トーションバネ)40bによってシーソー揺動自在に支持される揺動体300を設け、所定位置に蓋体200を載置し、支持体100と蓋体200とを例えば封止材(接着材等)によって封止することによって、封止体(例えば気密封止パッケージ)を効率的に形成することができる。このとき、蓋体200が支持体100上に固定されることによって、可変容量c1,c2の構成要素である固定電極208a,208bの位置も自動的に位置決めされ、シーソー式の物理量センサーが自動的に形成される。
また、蓋体200の主面が水平になるように固定することによって、支持体100の表面と蓋体200の主面(内表面を含む)との平行性も確保されることから、平行平板コンデンサー(可変容量)c1,c2の電極間の距離(揺動体300が水平状態のときの距離)も精度よく決定される。よって、封止体(パッケージ)を含めた物理量センサーの組み立て性を向上することができる。
(封止体の封止構造の例)
図2(A),図2(B)は、封止体の構造の一例を示す図である。図2(A)は封止体の全体構成を示す斜視図であり、図2(B)は、ベースと蓋体との接続部の断面構造の一例を示す図である。
図2(A)に示すように、支持体100上に蓋体200が固定されて、封止体(ここでは気密封止パッケージ)250が形成される。ベースBS1の表面にはパッド(外部接続端子)PAと、検出回路13と、配線ELならびに配線ILが設けられている。封止体内部に設けられる可変容量(c1,c2等)と検出回路13は配線ILを介して接続される。また、検出回路13とパッドPAは、配線ELによって接続される。また、封止体内部に、複数のセンサーが搭載される場合には、各センサーの出力信号が、配線ILを経由して検出回路13に導出される。また、図2(A)の例では、第1基板BS1上に、検出回路(信号処理回路を含む)13が搭載されている(但し、これは一例であり、この例に限定されるものではない)。ベースBS1上に検出回路13を搭載することによって、例えば、信号処理機能を備えた、高機能な慣性センサー(MEMS慣性センサー)を実現することができる。
次に、図2(B)を参照して、ベースと蓋体との接続部の断面構造例について説明する。先に説明したように、支持体100は、シリコン基板(下地基板)102と、絶縁層104と、活性層106と、を有している。活性層106は、例えば、不純物がドープされたシリコン層121と、2層の絶縁層123,125とを含む。
一方、蓋体200は、例えば、ガラス基板(単層)により構成することができ、また、例えば、表面に絶縁膜が形成されたシリコン基板(単層)によって形成することもできる。また、蓋体側にも別のセンサー素子を構成したり、あるいは、別の回路を形成するときには、蓋体200を構成するために、支持体100と同様の構成をもつSOI基板を使用することもできる。
封止体内部に設けられている可変容量から引き出された配線ME1(1層目配線)は、コンタクトプラグME2、2層目配線ME3、コンタクトプラグME4、3層目配線ME5、山状に盛り上がった形状を有する配線ME6を介して、支持体100上に設けられる配線ME7に接続される。また、図2(B)において、参照符号191は、スペーサー部材(例えば、樹脂材料)である。スペーサー部材191が設けられることによって、支持体100と、支持体100上にマウントされる蓋体200との平行度を、より精度よく保つことができる。また、参照符号193は接着フィルムである。スペーサー191および接着フィルム193は、封止材90としての役割を果たす。
(封止体の製造方法の一例)
図3(A)〜図3(D)は、封止体の製造方法の一例を示す図である。この例では、2枚のSOI基板を貼り合わせて封止体を製造する。
図3(A)に示すように、支持体100となるSOI基板を用意する。なお、ベース102上には、固定電極208a,208bとしての金属層が形成されている(図3(D)参照,図3(A)〜図3(D)では図示省略)。
活性層(基板)106は、図3(A)の下側に一点鎖線で囲んで示されるように、シリコン単結晶121と、シリコン単結晶121上に形成される多層構造(複数層の絶縁層123,125を有し、さらに導体層Me1〜Me6等を有する場合もある)を含む。シリコン単結晶121には、不純物(例えばN型不純物であるAs等)が高濃度にドープされている。よって、シリコン単結晶121(第1シーソー片PT1,第2シーソー片PT2)自体を、可動電極(図1に示される参照符号109a,109b)として使用することができる。
次に、図3(B)に示すように、活性層(基板)106をフォトリソグラフィによってパターニングして、揺動体300(第1シーソー片PT1と第2シーソー片PT2)、ならびに、第1支持部40a,第2支持部40bを形成する。
次に、図3(C)に示すように、HFベーパーあるいはウェットエッチングによって犠牲層である絶縁層104bを除去する。これによって、揺動体300の周囲に空洞部350(図1に示した空隙95ならびに開口部97を含む)が形成される。揺動体300は、空洞部350上において、第1支持部40a(第1トーションバネ)および第2支持部40b(第2トーションバネ)によってシーソー揺動可能に支持される。
次に、図3(D)に示すように、蓋体200を、支持体100としてのSOI基板上に、封止材90を介してマウントする。なお、ベース102上には、第1固定電極208aならびに第2固定電極208b(共に、Al等の金属層からなる)が形成されている。第1固定電極208aならびに第2固定電極208bは、活性層206上(最上層の絶縁層上)の、可動電極としての第1シーソー片PT1および第2シーソー片PT2の各々に対向する位置に設けられている。
なお、図3(D)に示すように、可動電極としての第1シーソー片PT1および第2シーソー片PT2は、例えば、図3(D)の下型に示されるように、電極材としてのSi単結晶121と、Si単結晶上に形成される2層の絶縁層(例えばCVDSiO2層)123,125と、を含む。絶縁層123,125は、コンデンサーの誘電体膜として機能し、また、可動電極の保護膜(可動電極と固定電極とが万一接触したときに、各電極の破損を防止する等の役目を果たす)としても機能する。
(第2実施形態)
本実施形態では、検出回路の構成例について説明する。図4(A)〜図4(C)は、検出回路の構成例を示す図である。検出回路13は、先に図2(A)を用いて説明したように、例えば支持体100上の空きスペースに設けられ、かつ、信号処理回路10を内蔵する。図4(A)の例では、物理量センサー(ここでは静電容量型加速度センサーとする)に含まれる第1可変容量c1,第2可変容量c2は、共通の接地電極である固定電極208と、第1可動電極109aおよび第2可動電極109bと、を有している。
検出回路13は、信号処理回路10と、CPU28と、インターフェース回路30と、を有する。信号処理回路10は、C/V変換回路(容量値/電圧変換回路)24と、アナログ校正&A/D変換回路26と、を有する。但し、この例は一例であり、信号処理回路10は、さらに、CPU28やインターフェース回路(I/F)30を含むことも可能である。
図4(B)の例では、第1可変容量c1,第2可変容量c2は、第1固定電極208aおよび第2固定電極208bと、共通の接地電極である可動電極109と、を有している。検出回路13の構成は、図4(A)の例と同じである。また、図4(C)の例では、第1可変容量c1および第2可変容量c2は、接地電位である第1固定電極208aおよび第2固定電極208bと、第1可動電極109aおよび第2可動電極109bと、を有している。検出回路13の構成は、図4(A)の例と同じである。
(C/V変換回路の構成例)
ここで、図5(A)〜図5(C)を用いて、C/V変換回路(C/V変換アンプ)の構成と動作の一例について説明する。図5(A)〜図5(C)は、C/V変換回路の構成と動作について説明するための図である。
図5(A)は、スイッチトキャパシタを用いたC/V変換アンプ(チャージアンプ)の基本構成を示す図であり、図5(B)は、図5(A)に示されるC/V変換アンプの各部の電圧波形を示す図である。
図5(A)に示すように、基本的なC/V変換回路24は、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2(可変容量c1(またはc2)と共に入力部のスイッチトキャパシタを構成する)と、オペアンプ(OPA)1と、帰還容量(積分容量)Ccと、帰還容量Ccをリセットするための第3スイッチSW3と、オペアンプ(OPA)1の出力電圧Vcをサンプリングするための第4スイッチSW4と、ホールディング容量Chと、を有している。
また、図5(B)に示すように、第1スイッチSW1および第3スイッチSW3は同相の第1クロックでオン/オフが制御され、第2スイッチSW2は、第1クロックとは逆相の第2クロックでオン/オフが制御される。第4スイッチSW4は、第2スイッチSW2がオンしている期間の最後において短くオンする。第1スイッチSW1がオンすると、可変容量c1(c2)の両端には、所定の電圧Vdが印加されて、可変容量c1(c2)に電荷が蓄積される。このとき、帰還容量Ccは、第3スイッチがオン状態であることから、リセット状態(両端がショートされた状態)である。次に、第1スイッチSW1および第3スイッチSW3がオフし、第2スイッチSW2がオンすると、可変容量c1(c2)の両端は共に接地電位となるため、可変容量c1(c2)に蓄積されていた電荷が、オペアンプ(OPA)1に向けて移動する。このとき、電荷量が保存されるため、Vd・C1(C2)=Vc・Ccが成立し、よって、オペアンプ(OPA)1の出力電圧Vcは、(C1/Cc)・Vdとなる。すなわち、チャージアンプのゲインは、可変容量c1(あるいはc2)の容量値(C1またはC2)と、帰還容量Ccの容量値との比によって決定される。次に、第4スイッチ(サンプリングスイッチ)SW4がオンすると、オペアンプ(OPA)1の出力電圧Vcが、ホールディング容量Chによって保持される。保持された電圧がVoであり、このVoがチャージアンプの出力電圧となる。
先に説明したように、C/V変換回路24は、実際は、2つの可変容量(第1可変容量c1,第2可変容量c2)の各々からの差動信号を受ける。この場合には、C/V変換回路24として、例えば、図5(C)に示されるような、差動構成のチャージアンプを使用することができる。図5(C)に示されるチャージアンプでは、入力段において、第1可変容量c1からの信号を増幅するための第1のスイッチトキャパシタアンプ(SW1a,SW2a,OPA1a,Cca,SW3a)と、第2可変容量c2からの信号を増幅するための第2のスイッチトキャパシタアンプ(SW1b,SW2b,OPA1b,Ccb,SW3b)と、が設けられる。そして、オペアンプ(OPA)1aおよび1bの各出力信号(差動信号)は、出力段に設けられた差動アンプ(OPA2,抵抗R1〜R4)に入力される。
この結果、増幅された出力信号Voが、オペアンプ(OPA)2から出力される。差動アンプを用いることによりベースノイズ(同相ノイズ)を除去できるという効果が得られる。なお、以上説明したC/V変換回路24の構成例は一例であり、この構成に限定されるものではない。
(第3実施形態)
本実施形態では、2つの異なる方向の加速度を検出することができる静電容量型センサーの一例について説明する。以下の説明では、静電容量型加速度センサーについて説明する。
本実施形態では、Z軸方向の加速度を、揺動体のシーソー揺動による、Z軸方向の加速度検出用の可変容量の容量値変化に基づいて検出する。また、揺動体には、さらに、X軸方向またはY軸方向の加速度検出用の可変容量が付加されており、このX軸方向またはY軸方向の加速度検出用の可変容量の容量値変化に基づいて、X軸方向またはY軸方向の加速度を検出することができる。
図6は、2つの異なる方向の加速度を検出することができる加速度センサーの構成の一例を示す図である。図6には、支持体100と蓋体200とによって構成される封止体の平面図と、長手方向(横方向)の断面図、長手方向に直交する方向(縦方向)の断面図が示されている。長手方向(横方向)の断面図は、平面図のA−A線に沿う断面図である。長手方向に直交する方向(縦方向)の断面図は、平面図のB−B線に沿う断面図である。
図6の平面図において、蓋体200は、太線の一点鎖線で示されている。また、図6の平面図では、電極、配線ならびにパッド(外部接続端子)の配置例も記載してある。
まず、3次元空間における方向を定義し、加速度センサーにおける各部の延在方向や、可変容量を構成する可動電極の変位の方向を明確化する。すなわち、揺動体300が水平な状態であるときの、水平面(揺動体300の主面が含まれる面ということもできる)内における揺動体の長手方向を第1方向(X軸方向)とする。水平面内における第1方向(X軸方向)に直交する方向(つまり、上記の水平面に直交する方向)を第2方向(Y軸方向)とし、第1方向(X軸方向)および第2方向(Y軸方向)の各々に直交する方向を第3方向(Z軸方向)とする。なお、X軸方向には、正のX軸方向(+X)および負のX軸方向(−X)が含まれる。この点については、Y軸方向ならびにZ軸方向についても同様である。
図6の例では、図1の例と同様に、揺動体300は、第1支持部40aおよび第2支持部40bによって、シーソー揺動自在に両持ち支持される。第1支持部40aは、第2方向(Y軸方向)に延在する第1トーションバネによって構成され、第2支持部40bは、第2方向(Y軸方向)に延在する第2トーションバネによって構成される。第1トーションバネ(第1支持部)40aの一端は揺動体300に連結(固定)され、かつ第1トーションバネ40aの他端は支持体100または蓋体200に連結(固定)される。第2トーションバネ(第2支持部)40bも同様に、その一端は揺動体300に連結(固定)され、かつ第2トーションバネ40bの他端は、支持体100または蓋体200に連結(固定)される。また、第1トーションバネ40aおよび第2トーションバネ40bの各々は、第2方向(Y軸方向)に延在する。例えば、第1トーションバネ40aおよび第2トーションバネ40bの各々は、平面視で、揺動体300の支持軸Q1に重なるように、第2方向(Y軸方向)に延在して設けられる。
揺動体300のシーソー揺動によって、可変容量c1,c2を構成する第1可動電極109aおよび第2可動電極109b(図6の例では、揺動体自体が共通電位の可動電極として機能する)と、第1固定電極208aおよび第2固定電極208bとの間の、第3方向(Z軸方向)の距離(電極間距離)が変化する。つまり、揺動体300のシーソー揺動を利用して、Z軸方向(鉛直方向)の加速度(重力加速度)を検出することができる。
図6の例では、揺動体300には、さらに、第2方向(Y軸方向)の加速度を検出するための静電容量(第3容量c3および第4容量c4)が設けられている。第3容量c3および第4容量c4は、櫛歯電極によって構成される。以下、具体的に説明する。
図6に示されるように、揺動体300は、さらに、第1支持部としての第1トーションバネ40aおよび第2支持部としての第2トーションバネ40bの各々に連結される枠体310と、第2方向(Y軸方向)に変位可能な第2方向変位用バネ(連結部ということもある)1a,1b,1c,1dを介して枠体310に連結されると共に、周囲に空洞部350が形成されている可動錘部313と、枠体310から空洞部350(あるいは可動錘部313)に向けて突出形成された固定電極部(第1腕状電極部ということがある)2a,2b,2c,2dと、可動錘部313から揺動体300(の枠体310)に向けて突出して形成され、可動錘部313と一体的に変位すると共に、固定電極部(第1腕状電極部)2a,2b,2c,2dに対向する可動電極部(第2腕状電極部ということがある)3a,3b,3c,3dと、を有する。固定電極部2a,2b,2c,2dならびに可動電極部3a,3b,3c,3dは、各々が櫛歯電極を構成し、各々の電極は、第1方向(X軸方向)に延在する。
すなわち、揺動体300は開口部99(例えば、エッチングによって基板としての活性層106が除去されて形成される)を有し、その開口部99に、可動錘部313が配置されている。また、可動錘部313と揺動体300とを連結する連結部(第2方向変位用のバネ部あるいは弾性変形部)1a,1b,1c,1dが設けられている。また、揺動体300(の枠体310)から可動錘部313に向けて突出して形成された第1腕状電極部(固定電極部(2a,2b,2c,2d)と、可動錘部313から揺動体300に向けて突出して形成されると共に、第1腕状電極部(固定電極部)2a,2b,2c,2dに対向する第2腕状電極部(可動電極部)3a,3b,3c,3dと、を有する。
また、第2方向変位用バネ1a,1b,1c,1dの各々は、アイソレーション領域ISO1,1SO4,ISO5,ISO8の各々によって、枠体310から電気的に分離されている。同様に、固定電極部2a,2b,2c,2dの各々は、アイソレーション領域ISO2,1SO3,ISO6,ISO7の各々によって、枠体310から電気的に分離されている。アイソレーション領域ISO1〜ISO8の各々は、例えば、シリコン単結晶に部分的に設けられた凹部に、SiO2等の絶縁膜を埋め込むことによって形成されている。
第2方向(X軸方向)の加速度によって、第2方向変位用バネ1a,1b,1c,1dが第2方向(Y軸方向)に変位すると、固定電極部2a,2b,2c,2dならびに可動電極部3a,3b,3c,3dとの間の距離(電極間距離)が変化し、第3容量c3および第4容量c4の容量値が変化する。この容量値の変化を、微小な電気信号(電流信号)の変化として検出することによって、第2方向(Y軸方向)の加速度を検出することができる。
また、第2方向変位用バネ1a,1b,1c,1dは、例えば、第1方向(X軸方向)に直線状に延在する棒状のバネである。第2方向変位用バネ1a,1b,1c,1dは、例えば、SOI基板の活性層を構成するシリコン単結晶(ならびに層間絶縁膜や金属膜等を含む多層構造体)をパターニングして形成することができる。シリコン単結晶や多層構造体は、ある程度の弾性(ならびにある程度の剛性)を有することから、棒状にパターニングすることによって、弾性変形部材(弾性バネ)として使用することができる。揺動体300の製造方法としては、図3(A),図3(B)に示した方法を採用することができる。
このような構造をもつことによって、揺動体300は、第3方向(Z軸方向)の変位を検出するための第3方向検出プレートとしての役割の他、第2方向(Y軸方向)の変位を検出するための第2方向の検出プレートとしての役割も果たす。これによって、一つの揺動体300を用いて、異なる2つの方向の変位の各々に対応した静電容量の変化を検出することができる。これによって、例えば、異なる2つの方向(第3方向と第2方向)の加速度を検出することが可能な、小型かつ高機能な加速度センサーが実現される。
次に、パッドおよび配線の配置について説明する。支持体100の周辺には、第1パッドPA1〜第5パッドPA5が設けられている。第1パッドPA1は、共通電位VCOM(GND)供給するためのパッドである。第2パッドPA2は、第1可変容量c1から得られる、Z軸方向の第1検出出力VZ1を外部に導出するためのパッドである。第2パッドPA2の代わりに、検出回路13(図2(A)参照)を設けて、可変容量c1から得られる、Z軸方向の第1検出出力VZ1を検出回路13に入力する構成としてもよい。この点については、他の検出信号についても同様である。
第3パッドPA3は、第2方向(Y軸方向)の加速度を検出するための第3容量c3から得られる、Y軸方向の第1検出出力VY1を外部に導出するためのパッドである。第4パッドPA4は、第2方向(Y軸方向)の加速度を検出するための第4容量c4から得られる、Y軸方向の第2検出出力VY2を外部に導出するためのパッドである。第5パッドPA5は、第2可変容量c2から得られる、Z軸方向の第2検出出力VZ2を外部に導出するためのパッドである。
また、揺動体300の一部である枠体310には、3本の配線L1(太線の細かな点線),L2(太線の粗い点線)、L3(太線の一点鎖線)が設けられている。配線L1は、揺動体300に、共通電位VCOM(GND)を供給するための配線である。また、配線L2は、第4容量c4から得られる、Y軸方向の第2検出出力VY2を外部に導出するための配線である。配線L3は、第3容量c3から得られる、Y軸方向の第1検出出力VY1を外部に導出するための配線である。また、電子回路を構成するために必要な、その他の配線L4〜L10が設けられている。
図7(A),図7(B)は、図6に示される平面図および長手方向(横方向)の断面図を簡素化して示す図である。図7(A)は加速度センサーの平面図(蓋体は省略)であり、図7(B)は、図7(A)のA−A線に沿う断面図である。
先に説明したように、揺動体300は、第1シーソー片PT1と第2シーソー片PT2とを有する。揺動体300の一部である枠体310には、第1支持部(第1トーションバネ)40aの一端および第2支持部(第2トーションバネ)40bの一端が連結(固定)される。また、第1支持部(第1トーションバネ)40aの他端および第2支持部(第2トーションバネ)40bの他端は、支持体100に接続されている。
揺動体300は、枠体310と、可動錘部313と、第2方向変位バネ(弾性変形部)1a〜1dと、固定電極部2a〜2dと、可動電極3a〜3dと、を有する。固定電極部2aと可動電極部3a、ならびに固定電極部2cと可動電極部3cによって、第3容量c3が構成される。同様に、固定電極部2bと可動電極部3b、ならびに固定電極部2dと可動電極部3dによって、第4容量c4が構成される。
本実施形態では、剛性を有する枠体310に第1トーションバネ40aおよび第2トーションバネ40bに接続される。よって、第1トーションバネ40aおよび第2トーションバネ40bによる第3方向(Z軸方向)の変位と、第2方向変位バネ1a〜1dによる第2方向(Y軸方向)の変位とが互いに干渉することが抑制される(各バネの変位が相互に独立しているとみなすことができる)。したがって、検出精度への悪影響は十分に低減される。これによって、例えば、異なる2つの方向(Y軸方向ならびにZ軸方向)の加速度を検出することが可能な、小型かつ高機能な加速度センサーが実現される。
(第4実施形態)
本実施形態では、第1方向(X軸方向)、第2方向(Y軸方向)および第3方向(Z軸方向)の各々の容量値の変化を検出することができる、3軸感度をもつ物理量センサーについて説明する。図8は、第1方向(X軸方向)、第2方向(Y軸方向)および第3方向(Z軸方向)の各々の容量値の変化を検出することができる、3軸感度をもつ物理量センサーの構成例を示す平面図である。図8において、前掲の実施形態と共通する要素には同じ参照符号を付している。以下の説明では、加速度センサーを例にとって説明する。
図8に示される加速度センサーでは、揺動体300は、第1支持部としての第1トーションバネ40aおよび第2支持部としての第2トーションバネ40bの各々に連結される枠体310と、第1方向(X軸方向)および第2方向(Y軸方向)の各方向に変位可能な、第1方向および第2方向変位用バネ11a〜11dと、第1方向および第2方向変位用バネ11a〜11dの各々を介して枠体310に連結されると共に、周囲に空洞部350が形成されている可動錘部313と、枠体310から空洞部350に向けて突出形成された固定電極部2a,2b,2c,2d,2a’,2b’,2c’,2d’と、可動錘部313と一体的に変位すると共に、固定電極部2a,2b,2c,2d,2a’,2b’,2c’,2d’の各々に対向する可動電極部3a,3b,3c,3d,3a’,3b’,3c’,3d’と、を有する。
主要な構成は、図6および図7に示される実施形態にかかる物理量センサーの構成と同様である。但し、図6および図7の例では、第2方向変位バネを使用していたのに対して、本実施形態では、第1方向(X軸方向)および第2方向(Y軸方向)の各方向に変位可能な、第1方向および第2方向変位用バネ11a〜11dを使用する。第1方向および第2方向変位用バネ11a〜11dの各々は、平面視で、四角形の枠体310の四隅から、枠体310と略45度の角度をなす方向に延在する。
本実施形態では、第3方向(Z軸方向)加速度の検出用の第1可変容量c1,第2可変容量c2と、第2方向(Y軸方向)加速度の検出用の第3容量c3,第4容量c4と、第1方向(X軸方向)加速度の検出用の第5容量c3’,第6容量c4’と、を有する。
本実施形態では、剛性を有する枠体310に第1トーションバネ40aおよび第2トーションバネ40bが接続される。よって、第1トーションバネ40aおよび第2トーションバネ40bによる第3方向(Z軸方向)の変位と、第1方向および第2方向変位バネ11a〜11dによる第1方向(X軸方向)または第2方向(Y軸方向)の変位とが互いに干渉することが抑制される(各変位が相互に独立しているとみなすことができる)。よって、検出精度への悪影響は十分に低減される。これによって、例えば、異なる3つの方向(第1方向〜第3方向の各々)の加速度を検出することが可能な、小型かつ高機能な加速度センサーが実現される。
(第5実施形態)
本実施形態では、2つの異なる方向の加速度を検出することができる静電容量型加速度センサーの他の例について説明する。以下の説明では、静電容量型加速度センサーについて説明する。
図9は、2つの異なる方向の加速度を検出することができる加速度センサーの構成の他の例を示す図である。図9において、前掲の実施形態の例と共通する部分には同じ参照符号を付している。
先に説明した図6ならびに図7の例では、第1トーションバネ40aおよび第2トーションバネ40bを枠体310に連結していたが、本実施形態では、枠体を使用せず、第2方向(Y軸方向)に変位可能な第2方向変位用バネ1e,1fに、第1トーションバネ40aおよび第2トーションバネ40bの各々を直接に連結されている。第3容量c3および第4容量c4が設けられるのは、図6ならびに図7の例と同じである。
本実施形態によれば、例えば、異なる2つの方向(第3方向と第2方向)の加速度を検出することが可能な、高機能な加速度センサーが実現される。さらに、枠体を省略することができることから、より一層の小型化(占有面積の削減)が可能である。
(第6実施形態)
図10は、図6および図7に示される構造の揺動体を2個使用して、異なる3つの方向の加速度を検出可能とした物理量加速度センサーの構成を示す平面図である。図10の例では、共通の支持体100に、揺動体300と、揺動体300’とが設けられる。揺動体300および揺動体300’の構成は、図6および図7に示される揺動体300の構成と同じである。なお、揺動体300’の構成要素の参照符号には、ダッシュ記号が付されている。
揺動体300の支持軸Q1は第2方向(Y軸方向)に延在している。揺動体300’の支持軸Q1’は第1方向(X軸方向)に延在している。揺動体300は、先に説明したように、第3方向(Z方向)の加速度を検出するための検出プレートとしての機能と、第2方向(Y方向)の加速度を検出するための検出プレートとしての機能とを併せ持つ。一方、揺動体300’は、第3方向(Z方向)の加速度を検出するための検出プレートとしての機能と、第1方向(X方向)の加速度を検出するための検出プレートとしての機能とを併せ持つ。
本実施形態によれば、第1方向(X軸方向)の加速度、第2方向(Y軸方向)の加速度ならびに第3方向(Z軸方向)の加速度を検出することが可能な、高機能な物理量センサー(加速度センサー)を実現することができる。
(第7実施形態)
本実施形態では、シーソー構造を利用した物理量センサーの検出精度を、より向上させるための信号処理方法と、その信号処理方法を利用した物理量センサーの構成について説明する。
図11(A)〜図11(H)は、シーソー構造を利用した物理量センサーの検出精度を、より向上させるための信号処理方法について説明するための図である。図11(A)は、揺動体300が水平状態を維持している状態(Z軸方向加速度が0Gである状態)を示している。図11(B)では、Z軸方向加速度が1Gであるときの揺動体300の状態を示している。図11(B)における揺動体300は、第1シーソー片PT1の回転モーメントと第2シーソー片PT2の回転モーメントの不均衡によって傾いた状態となっている(重力加速度が加わっているにも関わらず、揺動体300が水平状態を保っていたのでは、重力加速度を検出できないからである)。
この状態で、揺動体300に、揺動体300の延在方向である第1方向(X軸方向)の加速度が作用した場合を想定する(図11(C)参照)。図11(C)に示されるように、傾いている揺動体300に対して第1方向(X軸方向:水平時の揺動体の延在方向)の加速度Gが作用すると、揺動体300には、第1方向(X軸方向)の加速度Gの向きとは逆向きに慣性力F’が働く(慣性力の大きさは、第1方向の加速度Gに比例する)。この慣性力F’は、傾いている揺動体300を回転させる力(つまり、傾いている揺動体300に垂直に働く力)の成分を有することから、揺動体300の傾きが変化する(図11(D)参照)。つまり、実際には第3方向の加速度は変化していないにもかかわらず、第1方向の加速度(検出方向(第3方向)とは異なる方向の加速度)Gによって、見かけ上、第3方向の加速度が変化したことになる。このような検出方向とは異なる方向に検出感度をもつことは、物理量センサーの検出精度の低下の原因となる。
この問題点について具体的に説明する。図11(D)に示されるように、同じ大きさの慣性力F’が、揺動体300の、第1シーソー片(第1の領域)PT1および第2シーソー片(第2の領域)PT2の各々に作用する。第1シーソー片PT1に加わる慣性力F’は、揺動体300の延長線の方向の力成分Fa1と、揺動体300に垂直な方向の力成分Fb1とに分けることができる。同様に、第2シーソー片PT1に作用する慣性力F’は、揺動体300の延長線の方向の力成分Fa2と、揺動体300に垂直な方向の力成分Fb2とに分けることができる。第1シーソー片PT1に作用する揺動体300に垂直な方向の力成分Fb1は、揺動体300の第1シーソー片PT1に対して、反時計回りのモーメントを生じさせる。一方、第2シーソー片PT2に作用する揺動体300に垂直な方向の力成分Fb2は、揺動体300の第2シーソー片PT2に対して、時計回りのモーメントを生じさせる。力成分Fb1と力成分Fb2の大きさは同じである。
但し、図11(D)の例では、第1シーソー片PT1の腕の長さに比べて第2シーソー片PT2の腕の長さの方が長い(つまり、第2シーソー片PT2の質量の方が重い)ことから、回転モーメントに差が生じる。つまり、腕が長い第2シーソー片PT2に作用する時計回りの回転モーメントが優勢となり、その結果、揺動体300全体が、時計回りに回転することになる。この時計回りの回転モーメントは、傾いている揺動体300に対して第1方向(X軸方向:水平時の揺動体の延在方向)の加速度Gが作用することによって生じる、見かけ上の回転モーメントということができる。
また、図11(E)に示すような揺動体300(図11(D)の例とは傾きの方向が逆になっている)に、慣性力F’が作用したときも、同様の理由によって見かけ上の回転モーメントが発生して、揺動体300の傾きが変化する。図11(B)において、第1シーソー片PT1に作用する揺動体300に垂直な方向の力成分Fb1は、揺動体300の第1シーソー片PT1に対して、時計回りのモーメントを生じさせる。一方、第2シーソー片PT2に作用する揺動体300に垂直な方向の力成分Fb2は、揺動体300の第2シーソー片PT2に対して、反時計回りのモーメントを生じさせる。力成分Fb1と力成分Fb2の大きさは同じである。
但し、図11(E)の例では、第1シーソー片PT1の腕の長さの方が、第2シーソー片PT2の腕の長さよりも長い(つまり、第1シーソー片PT1の質量の方が重い)ことから、回転モーメントに差が生じる。つまり、腕が長い第1シーソー片PT1に作用する時計回りの回転モーメントが優勢となり、その結果、揺動体300全体が、時計回りに回転することになる。つまり、図11(D)の例と同様に、見かけ上の時計回りの回転モーメントによって、揺動体300の傾斜が変化する。
ここで、図11(D)の例と、図11(E)の例とを比較する。図11(D)の例では、見かけ上の回転モーメントによって、揺動体300は、その傾斜がより深くなるように回転する。例えば、見かけ上の回転モーメントが生じる前の傾斜角(水平線と揺動体とがなす角度)をθとしたとき、見かけ上の回転モーメントによって傾斜が変化した後の傾斜角は、θ+δθとなる。一方、図11(D)の例では、見かけ上の回転モーメントによって、揺動体300は、傾斜している揺動体が押し戻されて、その傾斜角が浅くなるように回転する。例えば、見かけ上の回転モーメントが生じる前の傾斜角(水平線と揺動体とがなす角度)をθとしたとき、見かけ上の回転モーメントによって傾斜が変化した後の傾斜角は、θ−δθとなる。
つまり、揺動体300が傾斜している方向を基準として考えると、図11(D)の例における見かけ上の回転モーメントの方向と、図11(E)の例における見かけ上の回転モーメントの方向とは互いに逆向きである。例えば、揺動体300が傾斜している方向を正の方向としたとき、図11(D)の例における見かけ上の回転モーメントの方向は正の方向であり、図11(E)の例における見かけ上の回転モーメントの方向は負の方向となる。つまり、図11(D)および図11(E)において、見かけ上の回転モーメントによって、揺動体300は同じ角度だけ回転するが、その方向が逆である。本実施形態では、この点に着目し、図11(D)の構造をもつ揺動体300aと、図11(E)の構造をもつ揺動体300bとを併用し、各揺動体から得られる信号を基礎として所定の演算を実行し、これによって、見かけ上の回転モーメントによって生じる誤差を抑制する。
すなわち、本実施形態では、図11(F)に示すように、2つの揺動体(つまり第1揺動体300aおよび第2揺動体300b)を設ける。そして、先に説明した信号処理回路(図3の参照符号10)が、各揺動体300a,300bから得られる信号に基づいて、検出誤差を補償するための信号処理を実行して検出誤差を抑制する。
ここで、第1揺動体300aは、図11(D)に示される揺動体に対応する。第2揺動体300bは、図11(E)に示される揺動体に対応する。第1揺動体300aは、第1シーソー片(第1の領域)PT1aおよび第2シーソー片(第2の領域)PT2aを有する。第2揺動体300bは、第3シーソー片(第3の領域)PT1bおよび第4シーソー片PT2b(第4の領域)を有する。
すなわち、第1揺動体300aは、平面視で、支持軸Q1(第1軸)によって第1の領域(第1シーソー片)PT1aと第2の領域(第2シーソー片)PT2とに区画される。また、第2揺動体300bは、平面視で支持軸Q2(第2軸)によって第3の領域(第3シーソー片PT1b)と第4の領域(第4シーソー片PT2b)とに区画されている。
本実施例においては、第1揺動体300aと第2揺動体300bとは互いに鏡像に配置している。「鏡像に配置」とは、例えば図12の平面図に示すような配置をいう。ここで、図12を参照する。図12において、第2揺動体300bは、平面視で、第1の領域(第1シーソー片)PT1aと第2の領域(第2シーソー片)PT2aの並び方向に直交する軸LXに対し、第1揺動体300aを反転させた(折り返した)形状である。
図11(F)〜図11(H)に戻って説明を続ける。図11(F)および図11(G)において、第2の領域(第2シーソー片)PT2の質量は、第1の領域(第1シーソー片)PT1aの質量よりも重く(腕の長さが長いため)、また、第4の領域(第4シーソー片PT2b)の質量は、第3の領域(第3シーソー片PT1b)の質量よりも重い(腕の長さが長いため)。
また、第1の領域(第1シーソー片)PT1aと第2の領域(第2シーソー片)PT2の並び方向と、第3の領域(第3シーソー片PT1b)と第4の領域(第4シーソー片PT2b)の並びの方向とは、互いに同じである。また、重力を受けた状態においては、先に、図11(D),図11(E)の例で説明したとおり、第1揺動体300aおよび第2揺動体300bは互いに反対向きに傾斜している(図11(G)参照)。
第1揺動体300a、第2揺動体300bの各々によって、2つの可変容量が形成されるため、合計で4個の可変容量が設けられることになる。図11(F)の状態では、第1揺動体300aおよび第2揺動体300bは水平状態であり、4つの可変容量の各々の容量値はC0である。
ここで、検出信号として、第1揺動体300aの第1シーソー片(第1の領域)PT1aの変位に基づいて変動する第1検出信号と、第1揺動体300aの第2シーソー片(第2の領域)PT2aの変位に基づいて変動する第2検出信号と、第2揺動体300bの第3シーソー片(第3の領域)PT1bの変位に基づいて変動する第3検出信号と、第2揺動体300bの第4シーソー片(第4の領域)PT2bの変位に基づいて変動する第4検出信号と、が出力されるとする。
以下の説明では、第1検出信号および第2検出信号を差動出力1と表現し、また、第3出信号および第4出信号を差動出力2と表現する。図11(F)の状態では、差動出力1は(C0,C0)となり、差動出力2も(C0,C0)となる。
重力加速度(1G)がある状態では、図11(G)に示すように、第1揺動体300aおよび第2揺動体300bの各々は、回転モーメントを受けて傾く。
ここで、第1揺動体300aと第2揺動体300bは共に第1方向(X軸方向)に延在するが、第1揺動体300aの傾きの向きと、第2揺動体300bの傾きの向きは互いに反対向きであり、かつ、水平面を基準とした回転角の絶対値は同じである。例えば、第1揺動体300aは時計回りに、水平面を基準として+θだけ傾いており、一方、第2揺動体300bは反時計回りに、水平面を基準として−θだけ傾いている。
図11(G)の状態では、差動出力1は、(C0+ΔC,C0−ΔC)となる。差動出力2は、(C0−ΔC,C0+ΔC)となる。ΔCは、揺動体300a,300bが傾いたことによる各容量の容量値の変化分を示す。
この状態で、図11(C)の場合と同様に、第1方向(X軸方向)の加速度Gが加わり、その反対方向に慣性力F’が働いた場合を想定する。この場合、第1揺動体300aおよび第2揺動体300bの各々には、図11(H)に示すような傾きが生じる。つまり、第1揺動体300aには、図11(D)に示したように、時計回りの見かけ上の回転モーメントが生じる。一方、第2揺動体300bにも同様に、図11(E)に示したように、見かけ上の時計回りの回転モーメントが生じる。但し、揺動体300a,300bの各々が傾斜している方向を基準として考えると、第1揺動体300aに生じる見かけ上の回転モーメントの方向と、第2揺動体300bに生じる見かけ上の回転モーメントの方向とは、互いに逆向きである(前者は第1揺動体300aの傾きが増大する方向、後者は、第2揺動体300bの傾きが減少する方向である)。第1揺動体300aに生じる見かけ上の回転モーメントと、第2揺動体300bに生じる見かけ上の回転モーメントは、同じ大きさで、かつ、方向が逆である。
したがって、第1揺動体300aおよび第2揺動体300bの各々には、図11(H)に示すような傾きが生じる。ここで、第1検出信号に重畳されている見かけ上の回転力による誤差変位に起因する可変容量(静電容量)の容量値の変動分を例えば「+δC」としたとき、第2検出信号に関する容量値の変動分は「−δC」となり、同様に、第3検出信号に重畳されている見かけ上の回転力による誤差変位に起因する可変容量(静電容量)の容量値の変動分は「+δC」であり、第4検出信号に関する容量値の変動分は「−δC」となる。
つまり、図11(G)の状態では、差動出力1は、(C0+ΔC+δC,C0−ΔC−δC)となる。また、差動出力2は、(C0−ΔC+δC,C0+ΔC−δC)となる。
信号処理回路において、第1差動出力1に基づいて、第1検出信号と第2検出信号との差を示す第1差動信号を生成すると、第1差動信号は2(ΔC+δC)となる。つまり、第1差動信号に重畳する、見かけ上の回転力による誤差変位に起因する可変容量(静電容量)の容量値の変動分は、「2δC(=+δC−(−δC))」となる。
また、第4検出信号と第3検出信号との差を示す第2差動信号が生成されると、第2差動信号は、2(ΔC−δC)となる。つまり、第2差動信号に重畳する、見かけ上の回転力による誤差変位に起因する可変容量(静電容量)の容量値の変動分は、「−2δC(=−δC−(+δC))」となる。
そして、信号処理回路が、第1差動信号と第2差動信号とを加算すると、第1差動信号に重畳する誤差成分「+2δC」と、第2差動信号に重畳する誤差成分「−2δC」とが相殺されて、誤差がキャンセルされる。
なお、第1差動信号と第2差動信号とが加算されると、信号振幅が必要以上に大きくなる場合がある。このことが問題となる場合には、第1差動信号と第2差動信号とを加算して得られる信号の振幅を、例えば半分にする信号処理(つまり、(第1差動信号1+第2差動信号)/2)等を適宜、行うこともできる。
すなわち、信号処理回路が、第1検出信号と第2検出信号との差を示す第1差動信号を生成し、また、第3検出信号と第4検出信号との差を示す第2差動信号を生成し、第1差動信号と第2差動信号を加算して得られる信号に基づいて、第1方向の加速度に基づく誤差が抑制された、第3方向の加速度検出信号を生成することが可能である。
このようにし、本実施形態の信号処理方法によれば、検出方向以外の方向に検出感度をもつことによる誤差を、信号処理によってキャンセルすることができる。よって、シーソー構造を利用した物理量センサーの第3方向の加速度等の検出精度を、より向上させることができる。
図12は、図11に示される信号処理方法を採用した物理量センサーの構成の一例を示す図である。図12の物理量センサーは、第1シーソー構造体ST1と、第2シーソー構造体ST2と、第1シーソー構造体ST1および第2シーソー構造体ST2の各々から出力される検出信号に基づいて、所定の信号処理を実行する信号処理回路10と、を有している。
信号処理回路10は、スイッチトキャパシタキャパシタアンプ(SCA:図5参照)と、差動増幅器25a,25bと、平均演算器(または加算演算器)27と、を有する。スイッチトキャパシタキャパシタアンプSCAならびに差動増幅器25a,25bは、図4に示されるC/V変換回路24に対応する。また、平均演算器(または加算演算器)27は、例えば、図4に示されるアナログ校正&A/D変換回路26に含まれる。
また、第1シーソー構造体ST1は、第1揺動体300aと、第1揺動体300aを、第1支持軸Q1(第1軸)を支点としてシーソー揺動可能に両持ち支持する、第1揺動体用の第1支持部40a1および第1揺動体用の第2支持部40b1と、第1揺動体300aのシーソー揺動に応じて位置が変化する第1揺動体用の第1可動電極109a1,109b1と、第1揺動体用の可動電極109a1,109b1に対向する位置に設けられる第1揺動体用の固定電極(不図示)と、を有する第1可変容量部(不図示)と、を有する。
そして、第1揺動体300aは、平面視で第1支持軸Q1によって区画される2つの部分のうちの一方に対応する第1揺動体の第1シーソー片(第1領域)PT1aと、2つの部分のうちの他方に対応する第1揺動体300aの第2シーソー片(第2領域)PT2aと、を有する。
また、第2シーソー構造体ST2は、第2揺動体300bと、第2揺動体300bを、第2支持軸Q2(第2軸)を支点としてシーソー揺動可能に両持ち支持する、第2揺動体用の第1支持部40a2および第2揺動体用の第2支持部40b2と、第2揺動体300bのシーソー揺動に応じて位置が変化する第2揺動体用の可動電極(不図示)と、第2揺動体用の可動電極に対向する位置に設けられる第2揺動体用の固定電極(不図示)と、を有する第2可変容量部(不図示)と、を有する。
第2揺動体300bは、平面視で第2支持軸Q2(第2軸)によって区画される2つの部分のうちの一方に対応する第3シーソー片(第3領域)PT1bと、2つの部分のうちの他方に対応する第2シーソー片(第4領域)PT2bと、を有し、平面視における第1揺動体300aの長手方向ならびに第2揺動体300bの長手方向を第1方向(例えばX軸方向)とし、平面視における第1方向に直交する方向を第2方向(例えばY軸方向)とし、第1方向および第2方向の各々に直交する方向を第3方向(例えばZ軸方向)としたとき、第3方向の同じ大きさの加速度が第1揺動体300aおよび第2揺動体300bの各々に作用している状態における、第1揺動体300aの傾きの向きと、第2揺動体300bの傾きの向きは互いに反対向きであり、また、第1揺動体300aおよび第2揺動体300bの各々の、水平面を基準とした回転角の絶対値は同じである。
そして、第1シーソー構造体ST1からは、検出信号として、第1揺動体300aの第1シーソー片PT1aの変位に基づいて変動する第1検出信号VZ1と、第1揺動体300aの第2シーソー片PT2aの変位に基づいて変動する第2検出信号VZ2と、が出力される。また、第2シーソー構造体ST2からは、検出信号として、第2揺動体300bの第3シーソー片(第3の領域)PT1bの変位に基づいて変動する第3検出信号VZ3と、第2揺動体300bの第4シーソー片(第4領域)PT2bの変位に基づいて変動する第4検出信号VZ4と、が出力される。
信号処理回路10に含まれる差動増幅器25aは、第1検出信号VZ1と第2検出信号VZ2との差を示す第1差動信号DS1を生成する。また、差動増幅器25bは、第4検出信号VZ4と第3検出信号VZ3との差を示す第2差動信号DS2を生成する。第1差動信号DS1および第2差動信号DS2は、平均演算器(または加算演算器)27に入力される。平均演算器(または加算演算器)27は、第1差動信号DS1と第2差動信号DS2を加算する処理を実行する。例えば、(DS1+DS2)、あるいは、((DS1+DS2)/2)というような信号処理が実行され、この結果として得られる信号に基づいて、第1方向(X軸方向)の加速度に基づく誤差が抑制された、第3方向(Z軸方向)の加速度等の検出信号DS3が生成される。検出信号DS3は、(DS1+DS2)、あるいは、((DS1+DS2)/2)というような信号処理の結果を示す信号そのものであってもよく、さらに、アナログ校正処理が施された後の信号であってもよい。
(第8実施形態)
図13は、物理量加速度センサーの他の例(図12の構成に、さらに、第1方向(X軸方向)の加速度を検出するための構成を追加した例)を示す平面図である。図13の例では、図12の構成に加えて、第1方向(X軸方向)の加速度を検出するための静電容量型物理量センサー370が追加されている。この物理量加速度センサー370は、第1方向(X軸方向)の加速度を検出するための機能のみを有し、シーソー揺動による第3方向(Z軸方向)の加速度を検出する機能は有していない(一対の揺動体300a,300bを用いて、高精度に第3方向の加速度を検出することができるため、それ以上、揺動体を設ける必要がないからである)。
第1方向(X軸方向)の加速度を検出するための加速度センサー370は、可動錘部313と、第1方向に変形可能なバネ1a,1b,1c,1dと、固定電極2a,2b,2a’,2b’と、可動電極3a,3b,3a’,3b’と、を有する。可動錘部313がX軸方向に変位すると、可動電極3a,3b,3a’,3b’も同様に変位し、固定電極2a,2b,2a’,2b’ならびに可動電極3a,3b,3a’,3b’の各々によって構成される可変容量の容量値が変化し、これに対応して電荷が移動し、微小な電気信号(電流信号)が生成される。したがって、その電気信号に基づいて、第1方向(X軸方向)の加速度を検出することができる。
図13の物理量センサーは、第1方向(X軸方向)の加速度ならびに第3方向(Z軸方向)の加速度を検出することができ、かつ、第3方向(Z軸方向)の加速度は、誤差補償処理によって、他軸感度に伴う誤差を抑制することが可能であることから、より高精度な第3方向(Z軸方向)の加速度の検出が可能である。
(第9実施形態)
以上の実施形態においては、揺動体の支持部を揺動体の中心を通る線と平行な位置にずらすことにより揺動体をシーソー揺動可能にしたが、これに限らず、種々、変形や応用が可能である。
図15(A)〜図15(D)は、物理量センサーの構造の他の例を示す図である。図15において、前掲の図面と共通する部分には同じ参照符号を付している。図15(A),図15(B)の例では、揺動体300の一端に質量部900が設けられている。図15(A)は物理量センサー(センサー素子構造体)の断面図であり、図15(B)は、図15(A)に対応する、揺動体300の、平面視における構造を示す。質量部900が設けられることによって、例えば、第1シーソー片PT1と第2シーソー片PT2の長手方向の長さが同じである場合であっても、揺動体300をシーソー揺動させることができる。
つまり、図15(A),図15(B)の例では、支持軸Q1および動体300の中心を通る線(中心線)KLは一致している。つまり、第1支持部40aおよび第2支持部40bは、揺動体300の中心を通る線(中心線)KL上に設けられている。このような構成であっても、質量部900によって回転モーメントを生じさせることができ、よって、揺動体300をシーソー揺動させることが可能となる。
質量部900は、例えば、金属膜や絶縁膜等の膜によって形成することができ、また、揺動体300をエッチング加工して厚膜化する等して形成することができる。質量部900をレーザーによってトリミングしたり、エッチング等で削ったり、スパッタリングや蒸着等で成膜したりすることによって、質量を簡単に増減することができる。よって、シーソー揺動の微調整が簡易にできる。
また、図15(C)、図15(D)に示される例では、支持軸Q1と中心線KLとは不一致である。つまり、第1支持部40aおよび第2支持部40bの各々を、揺動体300の中心を通る線(中心線)KLに対して平行にシフトする。そして、揺動体300の一端に質量部900が設けられている。
例えば、揺動体300の支持軸Q1をずらすことにより、揺動体300の第1シーソー片PT1(第1の領域)の平面視における面積が、第2シーソー片(第2の領域)の平面視における面積よりも狭くなった場合、図15(C)に示すように、第2シーソー片(第2の領域)PT2に質量部900を形成すれば、揺動体300のシーソー揺動がより顕著になり、容量の検出感度を向上できる。
また、図15(D)に示すように、第2シーソー片(第1の領域)PT2に質量部900を形成すれば、揺動体300のシーソー揺動を抑制できる。これに伴って、揺動体300を支持する支持部(第1支持部40a,第2支持部40b)に、過剰なねじれが生じることを抑制できる。よって、支持部(第1支持部40a,第2支持部40b)が破損することを防止できる。
上記以外にも、揺動体の全面に質量部を形成し、質量部の質量を増減させて揺動体の第1の領域と第2の領域の質量バランスを変化させてシーソー揺動可能にしても良い。
(第10実施形態)
図16は、電子機器の構成の一例を示す図である。図16の電子機器には、上記いずれかの実施形態にかかる物理量センサー(例えば静電容量型物理量加速度センサー等)が含まれる。電子機器は、例えば、ゲームコントローラやモーションセンサー等である。
図16に示されるように、電子機器は、センサーデバイス(静電容量型加速度センサー等)410と、画像処理部420と、処理部430と、記憶部440と、操作部450と、表示部460とを含む。なお、電子機器の構成は、図14の構成に限定されず、その構成要素の一部(例えば操作部、表示部等)を省略したり、他の構成要素を追加したりする等の種々の変形実施が可能である。
図17は、電子機器の構成の他の例を示す図である。図17に示される電子機器510は、上記いずれかの実施形態にかかる加速度センサーとしての物理量センサー470と、加速度とは異なる物理量を検出する検出素子(ここでは、角速度を検出するジャイロセンサーとする)480と、を含むセンサーユニット490と、センサーユニット490から出力される検出信号に対して所定の信号処理を施すCPU500と、を有する。センサーユニット490は、それ自体が一個の電子機器とみなすことができる。
すなわち、組み立て性に優れ、かつ、小型かつ高性能な静電容量型物理量加速度センサー470と、異なる種類の物理量を検出する他のセンサー(例えば、物理量構造を利用した振動型ジャイロセンサー)480を併用することによって、小型で高性能な電子機器を実現することができる。つまり、複数のセンサーを含む、電子機器としてのセンサーユニット470や、そのセンサーユニット470を搭載する、より上位の電子機器(例えばFA機器等)510を実現することができる。
このように、本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、例えば、検出軸以外の方向に加速度が生じたとしても検出感度が良好な物理量センサーの検出精度を向上することができる。また、例えば、封止体(パッケージ)を含めた物理量センサーの組み立て性を向上することができる。また、小型で高性能な電子機器を実現することができる。
以上、いくつかの実施形態について説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。本発明は、慣性センサーに適用可能である。例えば、静電容量型加速度センサー、静電容量型ジャイロセンサーとして使用可能である。