以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。なお、特に明示しない限り、「接続する」という場合には電気的な接続を意味する。各図は、本発明を説明するために必要な要素を図示し、実際の全要素を図示してはいない。乗員検知センサの断面図について呼び方を簡単にするため、幅方向に切断した断面の図を「横断面図」と呼び(例えば図1(B)や図1(C)等)、長手方向に切断した断面の図を「縦断面図」と呼ぶことにする(例えば図9や図14(B)等)。屈曲する部位(すなわち屈曲部)には、一目で分かり易くするため、便宜的にクロスハッチを付す。上下左右等の方向を言う場合には、図面の記載を基準とする。
〔実施の形態1〕
実施の形態1は、蛇腹状に形成した応力吸収部を有する乗員検知センサの一例であって、図1〜図4を参照しながら説明する。図1には乗員検知センサの構成例を模式的に示す。具体的には、平面図を図1(A)に示し、図1(A)に示すIB−IB線矢視の横断面図を図1(B)に示し、車両用シートへの装着例を図1(C)と図1(E)に示し、図1(A)に示すID−ID線矢視の横断面図を図1(D)に示す。図2には、スイッチ回路の一例を回路図で示す。図3には車両用シートへの装着例を示す。具体的には、平面図を図3(A)に示し、図3(A)に示すIIIB−IIIB線矢視の断面図を図3(B)に示す。図4には蛇腹状に形成する応力吸収部の一例を示す。具体的には、平面図を図4(A)および図4(D)に示し、一部破断の側面図を図4(B)に示し、比較平面図を図4(C)に示す。
まず、図1(A)に実線および二点鎖線で示す乗員検知センサ10は、それぞれ一以上のセンサ部材11、一以上の応力吸収部12、一以上の屈曲部13、コネクタ14、一以上の連結部15、一以上の配線部材16などを有する。これらの各要素は、コネクタ14を除いて、車両用シートの形状や検知箇所等に応じて、要素数は個別かつ任意に備えることができる。なお本形態では、一以上のセンサ部材11a,11b,11c,11dと、一以上の屈曲部13とを同一線上に配置する。
センサ部材11は「センサセル(あるいは単にセル)」とも呼ばれ、乗員の着座に伴う荷重を受けるか否かでオン(導通)/オフ(非導通)を検知する機能を担う。図1(A)の例では、一の乗員検知センサ10について、複数(4つ)のセンサ部材11a,11b,11c,11dを直線状に配置した構造である。なお、以下の説明において単に「センサ部材11」という場合には、特に明示しない限り、センサ部材11a,11b,11c,11dのそれぞれを意味する。センサ部材の平面形状は、図1(A)の例では円形で形成しているが、任意の形状(例えば多角形状の幾何学形状)で形成してもよい。
図1(B)に示すセンサ部材11は、銀層S1,S5、カーボン層S2,S4、スペーサ層S3、空間層S6などを有する。これらの各層は、図示するように板状部材を積層して形成される。センサ部材11の表面は被覆部材F1,F2によって覆われる。被覆部材F1,F2はセンサ部材11や配線部材16等を覆う部材であれば任意の部材や形状で形成可能であり、例えばフィルム状や板状に形成する。図1(B)の例では、センサ部材11(具体的には銀層S1)の上面を被覆部材F1で覆い、センサ部材11(具体的には銀層S5)の下面を被覆部材F2で覆っている。よって、被覆部材F1は「第1フィルム部材」に相当し、被覆部材F2は「第2フィルム部材」に相当する。なお、被覆部材F1,F2の材質は絶縁性であれば任意の樹脂を適用可能である。後述するように、上面側の被覆部材F1には、他の部位よりも剛性が低い軟質樹脂(例えばPVC樹脂等)を適用するのが望ましい。
銀層S1,S5およびカーボン層S2,S4の組み合わせは一対の電極を構成する。例えば、銀層S1とカーボン層S2とを接合(例えば溶接やハンダ付け等)して第1電極とし、銀層S5とカーボン層S4とを接合して第2電極とする。銀層S1,S5は銀を含む金属板である。カーボン層S2,S4はカーボンを含む導電板である。
スペーサ層S3は「中間フィルム部材」に相当し、絶縁性の硬質樹脂(例えばPET樹脂等)で形成される。このスペーサ層S3は、センサ部材11では一対の電極(第1電極および第2電極)相互間に介在される。被覆部材F1と、被覆部材F2と、スペーサ層S3の貫通穴S3aとで囲まれて中心部(中央部)に形成されるのが空間層S6である。
空間層S6は、上述した一対の電極が接触可能な領域である。この空間層S6には図示しない貫通穴を通じて空気が流通し、外部から荷重を受けて一方または双方の電極が撓み、基準値以上の荷重を受けると電極同士が接触する。こうして乗員の着座に伴う一定以上の荷重を受けるか否かで一対の電極が接触/非接触するので、オン/オフを検知できる。なお図示しないが、銀層S1およびカーボン層S2(第1電極)と、銀層S5およびカーボン層S4(第2電極)とは、個別に配線部材16と接続される。
応力吸収部12は、一以上の屈曲(屈曲部13)で発生する応力を吸収する機能を担い、具体的な構成や内容等については後述する(図4を参照)。ここにいう「応力」は、センサ部材11が表皮32によって押さえ付けられるため(図3(B)を参照)、被覆部材(特に表皮32と接する外側部材にあたる被覆部材F1)に生じる引張力を意味する。もし応力を吸収できない場合には、被覆部材によって被覆される部材(特に端部側)が反るように持ち上がる(変形する)。
一以上の屈曲部13は、「第1屈曲部」および「第2屈曲部」のうちで一方または双方に相当する。第1屈曲部に相当する屈曲部13は、図1(C)に示すように乗員検知センサ10をクッションパッド31の吊り溝31aに沿って装着する場合、その一部分(特に連結部15)が吊り溝31aに入るに伴って屈曲する部位である。図1(C)の例では、2箇所の屈曲部13が生じる。
第2屈曲部に相当する屈曲部13は、図1(E)に示すように乗員検知センサ10をクッションパッド31の貫通穴31bに沿って装着する場合、クッションパッド31の表面(上面)と貫通穴31bとに沿って屈曲する部位である。これらの屈曲に伴って、乗員検知センサ10の表面(特に外側面の被覆部材F1)には応力が発生する。
センサ部材11の中には、図1(C)に示す屈曲部13(第1屈曲部)と、図1(E)に示す屈曲部13(第2屈曲部)との間に配置されるセンサ部材11(例えばセンサ部材11c,11d)がある。この場合のセンサ部材11は、双方の屈曲部13で生じる応力を受けると内外屈曲差が大きくなり、許容値を超えると剪断応力による損傷が発生する可能性がある。この損傷には、例えば被覆部材F1,F2、銀層S1,S5、スペーサ層S3のうち一以上で生じ得る剥離,割れ(断裂),ヒビ(亀裂)等が該当する。しかし、屈曲で生じた応力(剪断応力を含む。)は応力吸収部12によって吸収されるので、センサ部材11が損傷するのを防止することができる。
コネクタ14は、センサ部材11による検知の有無を伝達するために外部装置20との電気的な接続を行う部材である。外部装置20はセンサ部材11による検知の有無を処理可能な任意の装置を適用することができ、例えばECUやコンピュータ(パソコンを含む)等が該当する。
連結部15は、センサ部材11の相互間や、センサ部材11とコネクタ14との間を連結する部位である。連結部15の一構成例は、図1(D)に示す通りである。すなわち、配線部材16(16a,16b)およびスペーサ層S3の双方を挟むように被覆部材F1,F2で覆う。図1(D)の例では二本の配線部材16a,16b(例えばプラス側配線とマイナス側配線)を示すが、スイッチ回路の構成によっては三本以上の配線部材が断面に現れる。配線部材16は導電体(例えば銅板や銅線等)で形成され、配線できれば板状や線状等の形態を問わない。
センサ部材11(11a,11b,11c,11d)と配線部材16との接続形態によって異なるスイッチ回路が構成され、一例を図2に示す。図2(A)に示すスイッチ回路17aは、センサ部材11a,11bが並列接続され、センサ部材11c,11dが並列接続されている。さらに、センサ部材11a,11bとセンサ部材11c,11dとが直列接続されている。センサ部材11a,11bとコネクタ14との間は配線部材16aで接続され、センサ部材11c,11dとコネクタ14との間は配線部材16bで接続されている。このスイッチ回路17aによれば、センサ部材11a,11bのいずれかと、センサ部材11c,11dのいずれかがオンになれば、全体としてオンが検知される。
一方、図2(B)に示すスイッチ回路17bは、センサ部材11a,11b,11c,11dが全て並列接続される。各センサ部材の一端とコネクタ14との間は配線部材16aで接続され、各センサ部材の他端とコネクタ14との間は配線部材16bで接続されている。このスイッチ回路17bによれば、センサ部材11a,11b,11c,11dのいずれかがオンになれば、全体としてオンが検知される。このように、スイッチ回路の構成によって全体として検知されるオン/オフが異なってくる。したがって、検知目的や、座席の種類(運転席,助手席,後部座席等)などに応じて適切なスイッチ回路を構成する必要があり、その回路構成は上述したスイッチ回路17a,17bに限られない。
上述した乗員検知センサ10を車両用シートに装着した例を図3に示す。図3(A)および図3(B)に示す車両用シート30は、実線で示すクッションパッド31,33や、二点鎖線で示す表皮32などを有する。クッションパッド31は主に乗員の臀部や大腿部が収まる座面部として用いられ、クッションパッド33は主に乗員の背中が収まる背面部(背もたれ,シートバック)として用いられる。これらのクッションパッド31,33にはデザイン等の観点から表皮32で覆うが、図3(B)ではクッションパッド33を覆う表皮32の図示を省略している。
クッションパッド31には、一以上の吊り溝31aや、一以上の貫通穴31bなどを有する。吊り溝31aは、クッションパッド31の表面側(乗員が座る側)に形成され、所定の幅および深さからなる長溝である。図3(A)の例では直線状に形成しているが、曲線状に形成する場合もあり、直線と曲線とを混在して形成する場合もある。貫通穴31bはクッションパッド31の上面から下面に貫通する穴であり、通常はクッションパッド33に近い位置に設けられる。
上述した車両用シート30において、一または二以上の乗員検知センサ10はそれぞれクッションパッド31の上面に沿って装着され、貫通穴31bを通って下面にコネクタ14が固定手段によって固定される。固定手段は任意であり、ボルトやネジ等の締結部材を用いた固定や、接着剤を用いた固定などが該当する。乗員検知センサ10(特に連結部15)の一部分は、図3(B)に示すように吊り溝31aの断面形状(凹状)に沿って屈曲される。この屈曲状態は、乗員検知センサ10の上側を覆うように表皮32が装着されるため、常に維持される。そのため、吊り溝31aの角部に当たる連結部15が屈曲され、さらにはセンサ部材11が表皮32によって押さえ付けられるために応力が生じる。その応力は被覆部材(特に上面側の被覆部材F1)を通じてセンサ部材11に及ぶ。応力を吸収する応力吸収部12について、図4を参照しながら説明する。
図4(A)および図4(B)に示す蛇腹状形成部位12aは、応力吸収部12に相当する。この蛇腹状形成部位12aはセンサ部材11bと屈曲部13(もしくは吊り溝31a)との間に形成され、連結部15の一部を幅方向に蛇腹状に形成する。すなわち、図4(A)に示すように平面で見ると連結部15の一部が蛇行し、図4(B)に示すように側面で見ると板状のまま維持するような形状に形成する。蛇行の最大幅W1は、センサ部材11bの直径W2以下(すなわちW1≦W2)で設定するのが望ましい。
上述のように形成する際には、被覆部材F1,F2と配線部材16(16a,16b)との関係において、二通りの形態で形成できる。第1の形態は、図1(D)に示す連結部15の断面構成を維持し、被覆部材F1,F2および配線部材16の双方を蛇腹状に曲げて形成する。第2の形態は、被覆部材F1,F2を蛇腹状に曲げて形成し、1本以上の配線部材16を直線状に形成する。
屈曲部13の屈曲で発生する応力に伴う蛇腹状形成部位12aの変化について、図4(C)を参照しながら説明する。蛇腹状形成部位12aについて、応力発生前の状態を上段に示し、応力発生後の状態を下段に示す。屈曲部13で発生する応力は連結部15(具体的には被覆部材F1)を矢印D1方向(右方向)に引っ張ろうとする引張力であるので、蛇腹状形成部位12aが延伸長L1だけ伸びて(変形して)応力を吸収する。
なお、図4(A)に示す蛇腹状形成部位12aは蛇行の最大幅W1がセンサ部材11bの直径W2以下となるように設定した。この形態に代えて、蛇行幅が問題とならない場合には、図4(D)で示すように蛇行の最大幅W3がセンサ部材11bの直径W2を超える(すなわちW3>W2)ように設定した蛇腹状形成部位12bを形成してもよい。蛇腹状形成部位12bは応力吸収部12に相当し、蛇腹状形成部位12aよりも延伸長L1を伸ばせるので、より大きな応力を吸収できる。
次に、上述した乗員検知センサ10の製造方法について簡単に説明する。乗員検知センサ10の製造方法は、センサ形成工程、コネクタ形成工程、配線接続工程、被覆工程などを有する。以下では、各工程の具体的な内容について説明する。
〔センサ形成工程およびコネクタ形成工程〕
センサ形成工程では、センサ部材11を形成する。具体的には、銀層S1とカーボン層S2とを接合して第1電極とし、銀層S5とカーボン層S4とを接合して第2電極とする。スペーサ層S3とカーボン層S2,S4が接着するように、スペーサ層S3の両面側から第1電極と第2電極とで挟んで接着する。なお、被覆部材F1,F2がフィルム状部材である場合には、被覆部材F1,F2の各片面に銀層とカーボン層とを印刷・蒸着・接着等によって固定してもよい。コネクタ形成工程ではコネクタ14を形成するが、形成方法自体は周知であるので図示および説明を省略する。
〔配線接続工程〕
センサ形成工程によって形成された一以上のセンサ部材11(具体的には上述した第1電極および第2電極)と、コネクタ形成工程によって形成された一のコネクタ14との間を、配線部材16(16a,16b)で配線(接続)する。接続方法は導通すればよく、例えば接合,溶接,ハンダ付けなどが該当する。なお被覆部材F1,F2がフィルム状部材である場合には、第1電極および第2電極と配線部材16(16a,16b)とを一体として、各片面に印刷・蒸着・接着等によって固定してもよい。
〔被覆工程〕
被覆部材F1,F2は、連結部15のうちでセンサ部材11bと屈曲部13との間に蛇腹状形成部位12aが形成されるように、予め形状を整えておく。そして、配線接続工程によって接続された一以上のセンサ部材11と配線部材16とを、断面が図1(B)や図1(D)となるように被覆部材F1,F2で覆う。なお被覆部材F1,F2がフィルム状部材である場合には、銀層およびカーボン層を固定した面を対向させて、スペーサ層S3の両面側から被覆部材F1と被覆部材F2とを接着してもよい。
上述した実施の形態1によれば、以下に示す各効果を得ることができる。
(1)センサ部材11、コネクタ14、配線部材16、被覆部材F1,F2を少なくとも備える乗員検知センサ10において、連結部15は車両用シート30の表面に沿って配置され、吊り溝31aの角部に当たる屈曲部13(第1屈曲部)によって発生する応力を吸収する蛇腹状形成部位12a,12b(応力吸収部12)を有する構成とした(図4(A),図4(D)を参照)。この構成によれば、連結部15が屈曲されて応力が発生しても、その応力を蛇腹状形成部位12a,12bが吸収する。そのため、屈曲で発生した応力がセンサ部材11に影響を及ぼさない。したがって、センサ部材11の精度(感度)を維持するとともに、センサ部材11が損傷するのを防止できる。なお、他の部材(例えばセンサ部材11b,11c,11dやコネクタ14)に対する応力の影響を少なくするため、蛇腹状形成部位12a,12bは屈曲部13に近い位置が望ましい。
(2)蛇腹状形成部位12a,12bは、連結部15を所定方向に蛇腹状(波状)に曲げて形成する構成とした(図4(A),図4(D)を参照)。この構成によれば、蛇腹状形成部位12a,12bが伸びて、屈曲で発生した応力を吸収する。簡単な構造で実現できるので、製造コストを低く抑えることができる。
(3)蛇腹状形成部位12aは、蛇腹状に曲げる部位の最大幅W1をセンサ部材11の直径W2(最大幅)以下で形成する構成とした(図4(A)を参照)。この構成によれば、乗員検知センサ10全体の幅を一定値(最大幅W1)以下に抑えることができるので、製造が簡単になり、配置が行い易くなる。
(4)複数のセンサ部材11a,11b,11c,11d(センサ部材11)を直線状に配置する構成とした(図1(A),図2を参照)。この構成によれば、複数のセンサ部材11a,11b,11c,11dが直線状に並ぶので、乗員検知センサ10全体の幅を小さく抑えることができ、製造も簡単に行えるのでコストを低減できる。また、臀部だけでなく大腿部の着座も検知可能になり、乗員の着座にかかる検知精度を向上させることができる。
(5)連結部15は車両用シート30の表面側に形成された吊り溝31aに沿って配置される構成とした(図3を参照)。この構成によれば、吊り溝31aの凹凸形状に沿う配置に伴う屈曲で応力が発生しても、それらの応力を応力吸収部12が吸収する。したがって、センサ部材11の精度(感度)を維持するとともに、センサ部材11が損傷するのを防止することができる。
(6)センサ部材11は、乗員の着座による荷重を受けて、乗員の着座を検知する構成とした(図1等を参照)。この構成によれば、乗員の着座で荷重を受けるに伴う屈曲で応力が発生しても、それらの応力を応力吸収部12が吸収する。したがって、センサ部材11の精度(感度)を維持するとともに、センサ部材11が損傷するのを防止することができる。
〔実施の形態2〕
実施の形態2は、スリット状に形成した応力吸収部を有する乗員検知センサの一例であって、図5を参照しながら説明する。図5にはスリット状に形成する応力吸収部の一例を示す。具体的には、平面図を図5(A)および図5(D)に示し、一部破断の側面図を図5(B)に示し、比較平面図を図5(C)に示す。なお、図示および説明を簡単にするために実施の形態2では実施の形態1と異なる点について説明する。よって実施の形態1で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
図5(A)および図5(B)に示すスリット状形成部位12cは、連結部15の一部にスリット(切り欠き)を形成した点で、図4(A)および図4(B)に示す蛇腹状形成部位12aと相違する。スリット状形成部位12cは応力吸収部12に相当する。スリットの数や向き等は任意に設定可能であり、図5(A)の例では四角状のスリットを対辺の交互に形成している。スリットにかかる幅方向の長さは、連結部15の半幅以上の長さとするのが望ましい。
屈曲部13の屈曲で発生する応力に伴うスリット状形成部位12cの変化について、図5(C)を参照しながら説明する。スリット状形成部位12cについて、応力発生前の状態を上段に示し、応力発生後の状態を下段に示す。屈曲部13で発生する応力は連結部15(具体的には被覆部材F1)を矢印D2方向(右方向)に引っ張ろうとする引張力であるので、スリット状形成部位12cが延伸長L2だけ伸びて(変形して)、応力を吸収する。スリット状形成部位12cが引っ張られる際には浮き上がるように反るが、その反りは図3に示す表皮32によって押さえ付けられる。
なお、図5(A)に示すスリット状形成部位12cは四角状のスリットを形成した。この形態に代えて、他形状のスリットを形成してもよい。例えば図5(D)に示すスリット状形成部位12dは三角状のスリットで形成している。他には、半円形や、五角形以上の多角形などが該当する。いずれの形状でスリットを形成するにせよ、スリット状形成部位12dが伸びることで応力を吸収できる。
次に、上述した乗員検知センサ10の製造方法について簡単に説明する。乗員検知センサ10の製造方法は、センサ形成工程、コネクタ形成工程、配線接続工程、被覆工程などを有する点で実施の形態1と同じである。ただし、被覆工程の内容が相違する。
被覆工程は、二通りの手順で行うことが可能である。第1の手順は、連結部15のうちでセンサ部材11bと屈曲部13との間にスリット状形成部位12c,12dを被覆部材F1,F2に予め形成しておく。そして、配線接続工程によって接続された一以上のセンサ部材11と配線部材16とを、断面が図1(B)や図1(D)となるように被覆部材F1,F2で覆う。第2の手順は、配線接続工程によって接続された一以上のセンサ部材11と配線部材16とを被覆部材F1,F2で覆った後、連結部15のうちでセンサ部材11bと屈曲部13との間に図5(A)や図5(D)に示すスリットを形成してスリット状形成部位12c,12dを構成する。
上述した実施の形態2によれば、スリット状形成部位12c,12d(応力吸収部12)は、連結部15の一部にスリット(切り込み)を形成する構成とした(図5を参照)。この構成によれば、スリットを形成したスリット状形成部位12c,12dが屈曲で発生した応力を吸収する。簡単な構造で実現できるので、製造コストを低く抑えることができる。
その他の点については、実施の形態1に示す乗員検知センサ10と同様の構成であるので、実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。
〔実施の形態3〕
実施の形態3は、非直線状に形成した応力吸収部を有する乗員検知センサの一例であって、図6を参照しながら説明する。図6には非直線状に形成する応力吸収部の一例を示す。具体的には、平面図を図6(A)および図6(D)に示し、一部破断の側面図を図6(B)に示し、比較平面図を図6(C)に示す。なお、図示および説明を簡単にするために実施の形態3では実施の形態1と異なる点について説明する。よって実施の形態1で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
実施の形態3は、次の二点で実施の形態1と相違する。図6(A)および図6(B)に示すように、第1に、本形態では、一以上のセンサ部材11a,11b,11c,11dと、一以上の屈曲部13とを同一線上に配置する。第2に、非直線状形成部位12eは、連結部15の一部を非直線状に形成する。当該非直線状に形成した部位である非直線状形成部位12eは応力吸収部12に相当する。
図6(A)の例では、「非直線状」をクランク状に形成している。屈曲部13aの屈曲に伴って発生する応力は、連結部15(具体的には被覆部材F1)を矢印D4a方向(右方向)に引っ張ろうとする引張力である。同様に、屈曲部13bの屈曲に伴って発生する応力は、連結部15を矢印D4b方向(左方向)に引っ張ろうとする引張力である。よって、非直線状形成部位12eのうちで屈曲部13a,13bに近い曲折部位(L字状部位)が矢印D3a,D3bで示すように反って浮き上がり、各屈曲部で発生した応力を吸収する。実際には、上記L字状部位が図3に示す表皮32によって押さえ付けられるため、L字状部位およびその近傍の連結部15が厚み方向に波状になって応力を吸収する。なお、乗員検知センサ10本体の中心線と屈曲部13を通る中心線との距離L4は、連結部15の幅W4以上になる(すなわちL4≧W4)ように設定するのが望ましい。各中心線は一点鎖線で図示している。
連結部15の一部に形成する非直線状の形状は、図6(A)に示すクランク形状に限られない。例えば、図6(C)に示す非直線状形成部位12fのL字状や、図6(D)に実線で示す非直線状形成部位12gの曲折状、図6(D)に二点鎖線で示す非直線状形成部位12gの曲線状(S字状)などで形成してもよい。要するに、センサ部材11bと屈曲部13とについて一定条件下で配置されていればよい。この一定条件は、図6(A),図6(C)および図6(D)を代表して図6(C)に示す。すなわち、センサ部材11bと屈曲部13とを結ぶ線分(ベクトルV1)と、応力の発生方向を示す線分(ベクトルV2)とが交差するように配置して形成する。言い換えれば、双方の線分が角度θ(360°>θ>0°)をなす配置である。
上述した実施の形態3によれば、センサ部材11、コネクタ14、配線部材16、被覆部材F1,F2とを少なくとも備える乗員検知センサ10において、連結部15は車両用シート30の表面に沿って配置され、吊り溝31aの角部に当たる屈曲部13(第1屈曲部)によって発生する応力を吸収する非直線状形成部位12e,12f,12g(応力吸収部)を有する構成とした(図4(A),図4(D)を参照)。この構成によれば、連結部15が屈曲されて応力が発生しても、その応力を非直線状形成部位12e,12f,12gが吸収する。そのため、屈曲で発生した応力がセンサ部材11に影響を及ぼすことは無い。したがって、センサ部材11の精度(感度)を維持するとともに、センサ部材11が損傷するのを防止することができる。また、非直線状形成部位12e,12f,12gが非直線状に形成すればよいので、T字状やY字状等のように先端または途中で一以上に連結部15が分岐して分岐部分にもセンサ部材11を備える乗員検知センサ10を形成することも可能である。なお、乗員検知センサ10の製造方法は実施の形態1に示す乗員検知センサ10と同様であるので、実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。
〔実施の形態4〕
実施の形態4は、実施の形態1と同様に蛇腹状に形成した応力吸収部を有する乗員検知センサの一例であり、図7を参照しながら説明する。図7には蛇腹状に形成する応力吸収部の一例を示す。具体的には、平面図を図7(A)に示し、一部破断の側面図を図7(B)に示し、比較側面図を図7(C)に示す。なお、図示および説明を簡単にするために実施の形態2では実施の形態1と異なる点について説明する。よって実施の形態1で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
図7(A)および図7(B)に示す蛇腹状形成部位12hは、蛇腹状の形態および形成位置について、図4(A)および図4(B)に示す蛇腹状形成部位12aと相違する。具体的には、蛇腹状形成部位12hは連結部15の一部を厚み方向に蛇腹状に形成する。蛇腹状形成部位12aと同様の部位に蛇腹状形成部位12hを形成することも可能であるが、吊り溝31aに入る部位(屈曲部13の相互間)に形成するのが望ましい。この部位に形成するのは、蛇腹状形成部位12aと同様の部位に形成したのでは厚み方向に変化しているために乗員の座り心地が低下してしまうためである。一方、吊り溝31aに入る部位では乗員の座り心地にほとんど影響を及ぼさない。
屈曲部13の屈曲で発生する応力に伴う蛇腹状形成部位12hの変化について、図7(C)を参照しながら説明する。蛇腹状形成部位12hについて、応力発生前の状態を上段に示し、応力発生後の状態を下段に示す。分かり易くするため、平面図の図4(C)とは異なって側面図で示す。屈曲部13で発生する応力は連結部15(具体的には被覆部材F1)を矢印D5方向(左方向)に引っ張ろうとする引張力であるので、蛇腹状形成部位12hが延伸長L3だけ伸びて(言い換えれば平面に近くなって)応力を吸収する。
次に、上述した乗員検知センサ10の製造方法について簡単に説明する。乗員検知センサ10の製造方法は、センサ形成工程、コネクタ形成工程、配線接続工程、被覆工程などを有する点で実施の形態1と同じである。ただし、被覆工程の内容が相違する。
被覆工程は、二通りの手順で行うことが可能である。第1の手順は、連結部15のうちで屈曲部13の相互間に相当する位置に蛇腹状形成部位12hを被覆部材F1,F2に予め形成しておく。また、対応する位置の配線部材16にも蛇腹状に形成しておく。そして、配線接続工程によって接続された一以上のセンサ部材11と配線部材16とを、断面が図1(B)や図1(D)となるように被覆部材F1,F2で覆う。第2の手順は、配線接続工程によって接続された一以上のセンサ部材11と配線部材16とを被覆部材F1,F2で覆った後、連結部15のうちで屈曲部13の相互間に相当する位置(部位)を、プレス機などを用いて蛇腹状に加工して蛇腹状形成部位12hを構成する。
上述した実施の形態4によれば、以下に示す各効果を得ることができる。
(1)センサ部材11、コネクタ14、配線部材16、被覆部材F1,F2とを少なくとも備える乗員検知センサ10において、連結部15は車両用シート30の表面に沿って配置され、吊り溝31aの角部に当たる屈曲部13(第1屈曲部)によって発生する応力を吸収する蛇腹状形成部位12h(応力吸収部)を有する構成とした(図7(A),図7(D)を参照)。この構成によれば、連結部15が屈曲されて応力が発生しても、その応力を蛇腹状形成部位12hが吸収する。そのため、屈曲で発生した応力がセンサ部材11に影響を及ぼすことは無い。したがって、センサ部材11の精度(感度)を維持するとともに、センサ部材11が損傷するのを防止することができる。
(2)蛇腹状形成部位12hは、連結部15を厚み方向に蛇腹状(波状)に曲げて形成する構成とした(図7(A),図7(B)を参照)。この構成によれば、蛇腹状形成部位12hが伸びて、屈曲で発生した応力を吸収する。簡単な構造で実現できるので、製造コストを低く抑えることができる。
〔実施の形態5〕
実施の形態5は、被覆部材の厚みを薄く形成した応力吸収部を有する乗員検知センサの一例であって、図8を参照しながら説明する。図8には被覆部材の厚みを薄く形成する応力吸収部の一例を示す。具体的には、図1(B)に対応する断面図を図8(A)に示し、図1(D)に対応する断面図を図8(B)に示す。なお、図示および説明を簡単にするために実施の形態5では実施の形態1と異なる点について説明する。よって実施の形態1で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
図8(A)はセンサ部材11の断面図であり、図8(B)は連結部15の断面図である。これらの図8(A)および図8(B)に示す構成例は、所要の絶縁抵抗を確保したうえで、被覆部材F1の厚さT1を被覆部材F2の厚さT2よりも薄く(すなわちT1<T2で)形成する。この構成では、厚さT1で形成した部位の被覆部材F1が応力吸収部12に相当する。厚さが薄くなれば伸びやすくなるので、屈曲部13の屈曲で発生する応力を上面側の被覆部材F1が伸びて吸収する。なお、連結部15が所要の強度(剛性)を確保できることを条件として、被覆部材F2を厚さT1で形成してもよい。
上述した実施の形態5によれば、センサ部材11の一面側を覆う被覆部材F1(第1フィルム部材)と、センサ部材11の他面側を覆う被覆部材F2(第2フィルム部材)とを少なくとも有し、応力吸収部12は、被覆部材F1について被覆部材F2よりも厚みを薄く形成する構成とした(図8を参照;T1<T2)。この構成によれば、厚みを薄く形成した被覆部材F1は伸縮し易いので、被覆部材F1が伸縮して屈曲で発生した応力を吸収する。簡単な構造で実現できるので、製造コストを低く抑えることができる。なお乗員検知センサ10の製造方法は、蛇腹状に形成する工程が被覆部材F1を厚さT1で形成する工程に変わる点を除いて、実施の形態1に示す乗員検知センサ10と同様であるので、実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。
〔実施の形態6〕
実施の形態6は、弾性体で形成した応力吸収部を有する乗員検知センサの一例であって、図9を参照しながら説明する。図9には弾性体で形成する応力吸収部の一例を示す。具体的には、平面図を図9(A)に示し、図9(A)に示すIXB−IXB線矢視の縦断面図を図9(B)および図9(C)に示し、図1(B)に対応する断面図を図9(D)に示す。なお、図示および説明を簡単にするために実施の形態6では実施の形態1と異なる点について説明する。よって実施の形態1で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
図9(A)に示す弾性体形成部位12iは、連結部15における被覆部材F1の一部を弾性体(すなわちPVC樹脂やゴム等のような軟質樹脂)で形成した点で、図4(A)および図4(B)に示す蛇腹状形成部位12aと相違する。図9(B)に示す弾性体形成部位12iは厚み方向の全部を弾性体で形成しているが、厚み方向の一部を弾性体で形成する弾性体形成部位12jで構成してもよい。弾性体形成部位12i,12jの構成では、弾性体で形成した部位の被覆部材F1が応力吸収部12に相当する。弾性体は伸びやすい特性があるので、屈曲部13の屈曲で発生する応力を被覆部材F1が伸びて吸収する。
図9(A)から図9(C)には連結部15の被覆部材F1を弾性体で形成したが、図9(D)に示すようにセンサ部材11を覆う被覆部材F1を弾性体で形成してもよく、双方を弾性体で形成してもよい。図9(D)に示す構成の場合には、被覆部材F1が応力吸収部12に相当する。この構成であっても、屈曲部13の屈曲で発生する応力を上面側の被覆部材F1が伸びて吸収する。
上述した実施の形態6によれば、センサ部材11の一面側を覆う被覆部材F1(第1フィルム部材)と、センサ部材11の他面側を覆う被覆部材F2(第2フィルム部材)とを少なくとも有し、応力吸収部12は被覆部材F1について少なくとも一部を他の部位よりも剛性が低い軟質樹脂で形成する構成とした(図9を参照)。この構成によれば、同じ厚みの被覆部材を用いる場合であっても、ゴム等の軟質樹脂で形成された応力吸収部12が低剛性の軟質樹脂で形成されているので、屈曲で発生した応力を吸収する。簡単な構造で実現できるので、製造コストを低く抑えることができる。なお乗員検知センサ10の製造方法は、蛇腹状に形成する工程が被覆部材F1を弾性体で形成する工程に変わる点を除いて、実施の形態1に示す乗員検知センサ10と同様であるので、実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。
〔実施の形態7〕
実施の形態7は、中空部や穴部を含む応力吸収部を有する乗員検知センサの一例であって、図10〜図12を参照しながら説明する。図10には中空部または穴部を含む応力吸収部の一例を示す。具体的には、平面図を図10(A)に示し、横断面図を図10(B)に示す。図11には中空部の構成例を断面図で示す。具体的には、図10(B)に示すXI−XI線矢視の水平断面図を図11(A)〜図11(D)に示す。図12には穴部の構成例を横断面図で示す。具体的には、横断面図を図12(A)〜図12(D)に示す。
図10(A)に示す屈曲部13(第2屈曲部)は、センサ部材11dとコネクタ14との間に位置し、クッションパッド31の表面(上面)と貫通穴31bとに沿って屈曲する部位である(図1(E)を参照)。この屈曲部13で生じる応力を吸収するのが応力吸収部12(すなわち中空部形成部位12nまたは穴部形成部位12p)である。本形態では、中空部形成部位12nを図10(B)および図11に示す中空部Haで構成する。同様に、穴部形成部位12pを図12に示す穴部Hbで構成する。以下では、中空部Haおよび穴部Hbの各構成例を簡単に説明する。
(中空部を含む応力吸収部)
中空部形成部位12nは、連結部15の内部が中空状に形成される中空部Haを含む。すなわち図10(B)に示すように、中空部Haは被覆部材F1,F2と貫通穴S3aとで囲まれた空間である。貫通穴S3aはスペーサ層S3にあけられた穴であり、当該穴の平面形状は多角形状(三角形以上)や円形(楕円形や三日月状等を含む。)等で任意である。平面形状の一例として、円形で形成した例を図11に示す。
図11(A)には、連結部15の幅W4よりも小さい直径R2(R2<W4)の円形で構成した中空部Ha1を示す。図11(B)には、三日月状の形状で構成した中空部Ha2を示す。この中空部Ha2は、開口部が空間層S6と対向する配置になっている。屈曲で生じる応力は、幅方向の端部よりも中央部のほうが大きく影響する。よって、三日月状に構成した中空部Ha2は中央部ほど大きく応力を吸収する。図11(C)と図11(D)には、複数の円形(すなわち円形群)で構成した例を示す。図11(C)には、小さな径で形成される複数の円形で構成した中空部Ha3を示す。この中空部Ha3は9個の円形を三行三列で構成しているが、個数や配置等は任意である。図11(D)には、異なる形状で形成される複数の円形で構成した中空部Ha4を示す。この中空部Ha4は径が異なる3個の円形で構成しているが、形状,個数,配置等は任意である。
(穴部を含む応力吸収部)
穴部形成部位12pは、連結部15の一部に形成される穴部Hbを含む。穴部Hbの形態には、貫通穴と、非貫通穴(見方を変えれば窪み)とがある。貫通穴で形成した穴部Hbの一例を図12(A)と図12(B)とに示す。また、非貫通穴で形成した穴部Hbの一例を図12(C)と図12(D)とに示す。穴部Hbの水平断面にかかる平面形状は、上述した中空部Haと同様に、多角形状(三角形以上)や円形(楕円形や三日月状等を含む。)等で任意である。平面形状の一例として、円形で形成した例を図12に示す。
図12(A)に示す貫通穴Hb1は、一定の直径R2であけた貫通穴である。図12(B)に示す貫通穴Hb2は、被覆部材F1の上面を直径R2とし、被覆部材F2の下面を直径R3(ただしR3<R2)とする、すり鉢状の貫通穴である。斜面部(すり鉢状の部位)の形状は任意である。例えば、断面の線分を図示するような直線状としてもよく、非直線状(曲線状や階段状等)としてもよい。図12(C)に示す非貫通穴Hb3は、被覆部材F1およびスペーサ層S3に穴があき、被覆部材F2には穴がない構成である。図12(D)に示す非貫通穴Hb4は、スペーサ層S3および被覆部材F2に穴があき、被覆部材F1には穴がない構成である。
上述した実施の形態7によれば、以下に示す各効果を得ることができる。
(1)応力吸収部12は、吊り溝31aの角部に当たる屈曲部13(第1屈曲部)とは別個に、車両用シート30の表面と貫通穴31bとに沿って配置されるに伴って屈曲される屈曲部13(第2屈曲部)で発生する応力を吸収する構成とした(図12を参照)。この構成によれば、第1屈曲部だけでなく第2屈曲部でも屈曲されて応力が発生しても、それらの応力を応力吸収部12が吸収する。そのため、複数の屈曲で発生した複数の応力がセンサ部材11に影響を及ぼさない。したがって、センサ部材11の精度(感度)を維持するとともに、センサ部材11が損傷するのを防止することができる。
(2)屈曲部13(第2屈曲部)は、センサ部材11c,11d(センサ部材11)とコネクタ14との間に位置する構成とした(図1(A)を参照)。第1屈曲部と第2屈曲部との間に位置するセンサ部材11は、第1屈曲部および第2屈曲部の双方による屈曲で発生する応力の影響を受ける。この構成によれば、第1屈曲部および第2屈曲部の双方による屈曲で応力が発生しても、それらの応力を応力吸収部12が吸収する。そのため、複数の屈曲で発生した複数の応力がセンサ部材11c,11dに影響を及ぼさない。したがって、センサ部材11の精度(感度)を維持するとともに、センサ部材11c,11dが損傷するのを防止することができる。
(3)応力吸収部12は、被覆部材F1,F2の一部に形成される穴部Hbまたは中空部Haを含む構成とした(図10〜図12を参照)。この構成によれば、穴部Hbまたは中空部Haを含む応力吸収部12が屈曲で発生した応力を吸収する。簡単な構造で実現できるので、製造コストを低く抑えることができる。なお、中空部Haや穴部Hbと、実施の形態2に示すスリット状形成部位12c,12dとのうちで一以上を応力吸収部12に含む構成としても、同様の作用効果が得られる。
(4)連結部15は、センサ部材11の一面側を覆う被覆部材F1(第1フィルム部材)と、センサ部材11の他面側を覆う被覆部材F2(第2フィルム部材)と、被覆部材F1と被覆部材F2との間に介在されるスペーサ層S3(中間フィルム部材)とを備える構成とした(図10(B)を参照)。また中空部Haは、被覆部材F1と、被覆部材F2と、スペーサ層S3にあけた貫通穴S3aとで構成される構成とした(図10(B)を参照)。屈曲されると、被覆部材F1と被覆部材F2とでは異なる変形が生じる。すなわち一方のフィルム部材が伸び、他方のフィルム部材を縮んで、センサ部材11に応力(例えば剪断応力等)が生じる。この構成によれば、屈曲で生じる応力を中空部Haが吸収する。したがって、センサ部材11の精度(感度)を維持するとともに、センサ部材11が損傷するのを防止することができる。
(5)穴部Hbは被覆部材F1,F2を貫通する貫通穴Hb1,Hb2である構成とした(図12(A),図12(B)を参照)。この構成によれば、屈曲で応力が発生しても、それらの応力を貫通穴Hb1,Hb2が変形して吸収する。したがって、センサ部材11の精度(感度)を維持するとともに、センサ部材11が損傷するのを防止することができる。
(6)連結部15は、車両用シート30の表面と貫通穴31bとに沿って配置される構成とした(図3を参照)。この構成によれば、車両用シート30の表面と貫通穴31bとに沿う配置に伴う屈曲で応力が発生しても、それらの応力を応力吸収部12が吸収する。したがって、センサ部材11の精度(感度)を維持するとともに、センサ部材11が損傷するのを防止することができる。
〔他の実施の形態〕
以上では本発明を実施するための形態について実施の形態1〜7に従って説明したが、本発明は当該形態に何ら限定されるものではない。言い換えれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施することもできる。例えば、次に示す各形態を実現してもよい。
一の乗員検知センサ10について、実施の形態1〜3ではセンサ部材11bと屈曲部13との間に応力吸収部12を備え(図4,図5,図6を参照)、実施の形態4では屈曲部13の相互間に応力吸収部12を備え(図7を参照)、実施の形態5,6ではセンサ部材11または連結部15に応力吸収部12を備え(図8,図9を参照)、実施の形態7ではセンサ部材11dとコネクタ14との間に応力吸収部12を備える構成とした(図1(A),図10(A)を参照)。これらの形態に加えて、実施の形態1〜7のうちで二以上の形態を組み合わせて一の乗員検知センサ10に備える構成としてもよい。この構成によれば、組み合わせる各形態について対応する実施の形態と同様に作用するので、当該対応する実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、上記形態および実施の形態1〜7に代えて(あるいは加えて)、センサ部材11の相互間に応力吸収部12を備える構成としてもよい。例えば、平面図で示す図13(A)および一部破断の側面図で示す図13(B)に示すように、センサ部材11aとセンサ部材11bとの間を連結する連結部15の全部または一部に蛇腹状形成部位12aを形成する。屈曲部13の屈曲で発生する応力の影響を受けてセンサ部材11bが反ろうとするが、この反りは蛇腹状形成部位12aが伸びることで抑制される。すなわち、屈曲で発生した応力を直接的に吸収するのではなく、他の部材(本例ではセンサ部材11b)の変位を通じて間接的に吸収する。蛇腹状形成部位12aに代えて、他の応力吸収部12(例えば蛇腹状形成部位12b,12hやスリット状形成部位12c,12dなど)を形成する場合も同様である。よって、実施の形態1〜7と同様の作用効果を得ることができる。
実施の形態1〜7では応力吸収部12は連結部15の一部に形成する構成としたが(図4,図5,図6,図7を参照)、実施の形態1〜7に示す応力吸収部12を連結部15の全部に形成する構成としてもよい。一方、実施の形態5,6ではセンサ部材11または連結部15の全部に応力吸収部12を備える構成としたが(図8,図9を参照)、センサ部材11または連結部15の一部に応力吸収部12を備える構成としてもよい。いずれの形態にせよ、屈曲部13の屈曲で発生した応力を吸収し得る範囲で形成されていればよい。よって、実施の形態1〜7と同様の作用効果を得ることができる。
実施の形態5では、屈曲部13の屈曲に伴って引っ張られる被覆部材F1の厚さT1を被覆部材F2の厚さT2よりも薄く形成する構成とした(図8を参照)。この形態に代えて、例えば図14に示すように、被覆部材F1の一部(表面側)を凹状に形成する構成としてもよい。図14(A)および図14(C)には平面図を示し、図14(B)には図14(A)に示すXIB−XIB線矢視の横断面図を示す。図14(A)および図14(B)に示す凹状形成部位12kは、幅方向に沿って形成された複数の溝である。本例では断面形状が半円状に形成したが、他の断面形状(例えば半楕円状や、三角状や五角形等の多角形状など)で形成してもよい。溝が形成された部分は被覆部材F1の厚みが薄くなるので、他の部位よりも伸び易くなる。よって、屈曲部13の屈曲で生じる応力は溝部分の被覆部材F1が伸びて吸収する。その一方で、凹状形成部位12kには溝が形成されない平坦部分もあるので、強度(剛性)の低下が抑えられる。なお、溝の形成方向は任意であり、図14(C)に示すような斜め方向に形成した複数の溝からなる凹状形成部位12mで構成してもよい。いずれの構成にせよ、屈曲部13の屈曲で生じる応力は溝部分の被覆部材F1が伸びて吸収するので、実施の形態5と同様の作用効果を得ることができる。
実施の形態1,2,4では、乗員検知センサ10に対して一の応力吸収部12を備える構成とした(図4,図5,図7を参照)。この形態に代えて、乗員検知センサ10に対して二以上の応力吸収部12を備える構成としてもよい。特に屈曲部13の数に対応して備える構成が望ましい。個々の屈曲部13の屈曲で生じる応力を複数の応力吸収部12で吸収するので、実施の形態1,2,4と同様の作用効果を得ることができる。
実施の形態1〜7では、応力吸収部12と屈曲部13とを別個の部位に備える構成とした(図1〜図9を参照)。この形態に代えて、応力吸収部12と屈曲部13とが重複するように備える構成としてもよい。応力吸収部12と屈曲部13との重複は一部であってもよく、全部(すなわち同一部位)であってもよく、応力吸収部12が屈曲部13の全部を重複する以上に広範囲であってもよい。この構成によれば、屈曲部13の屈曲で発生した応力は重複する部位の応力吸収部12で吸収するので、他の部位に応力の影響を及ぼさない。したがって、実施の形態1〜7と同様の作用効果を得ることができる。
実施の形態1〜7では、スイッチの役割を担うセンサ部材11として、第1電極(銀層S1およびカーボン層S2)と第2電極(銀層S5およびカーボン層S4)との間にスペーサ層S3を挟む構造の圧力センサを適用した(図1(B),図8(A),図9(D)を参照)。この形態に代えて、スイッチの役割を担う他のセンサ部材を適用してもよい。他のセンサ部材としては、例えば圧電素子(ピエゾ素子),ひずみゲージ(ストレインゲージ),半導体圧力センサなどが該当する。他のセンサ部材を適用する場合でもスイッチの役割を担うので、実施の形態1〜7と同様の作用効果を得ることができる。
実施の形態1〜7では、乗員検知センサ10は、乗員の着座による荷重を受けて、当該乗員の着座を検知する荷重型センサ(重量型センサとも呼ぶ。)を適用した(図1〜図15を参照)。この形態に代えて、静電容量の変化に基づいて乗員の着座や体格等を検知する静電容量型センサを適用することもできる。静電容量型センサが屈曲されて応力が発生しても、その応力を応力吸収部が吸収する。したがって、センサ部材の精度(感度)を維持するとともに、センサ部材が損傷するのを防止することができる。
実施の形態1〜7では、乗員検知センサ10を一の吊り溝31aに沿って装着した(図1(D),図4(B),図5(B)等を参照)。この形態に代えて、例えば図3(A)に二点鎖線で示す乗員検知センサ10のように、乗員検知センサ10を二以上の吊り溝31aに沿って装着することもできる。予め二以上の吊り溝31aがあることが事前に分かっている場合には、個々の吊り溝31aに対応して応力吸収部12を備えるのが望ましい。こうすれば各屈曲部13で発生する応力を確実に吸収することができるので、実施の形態1〜7と同様の作用効果を得ることができる。
実施の形態1〜7では、連結部15は、配線部材16(16a,16b)およびスペーサ層S3の双方を挟むように被覆部材F1,F2で覆い、被覆部材F1とスペーサ層S3との間に配線部材16を介在させる構成とした(図1(D)等を参照)。この形態に代えて(あるいは加えて)、図15に示すような他の構成としてもよい。すなわち図15(A)に示す構成では、スペーサ層S3と被覆部材F2との間に配線部材16を介在させる。図15(B)に示す構成では、スペーサ層S3の内部に配線部材16を備える。図示しないが、被覆部材F1,F2のいずれかの内部に配線部材16を備えてもよい。図15(C)に示す構成では、スペーサ層S3を無くし、被覆部材F1と被覆部材F2との間に配線部材16を介在させる。いずれの構成にせよ、乗員の着座を検知し、配線部材16を通じて信号を伝達できるので、実施の形態1〜7と同様の作用効果を得ることができる。
実施の形態7では、中空部Haは被覆部材F1,F2と貫通穴S3aとで囲まれた空間で構成した(図10,図11を参照)。この形態に代えて(あるいは加えて)、被覆部材F1,F2および貫通穴S3aのうちで一以上の内部に形成する中空(空間)や窪み(凹部)、あるいはこれらの組み合わせで構成してもよい。これらの中空部が応力を吸収するので、実施の形態7と同様の作用効果を得ることができる。
実施の形態1〜7では、乗員検知センサ10を車両用シート30(具体的にはクッションパッド31の表面)に装着した(図2を参照)。この形態に代えて、車両用シート30以外のシートにも同様に装着することができる。例えば、マッサージチェアや、スポーツまたは医療用の身体圧力測定器などが該当する。着座等を検出することができ、意匠性や座り心地の改善が要求される場合に対しても適用することができる。