以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1〜図3を用いて第1の実施の形態の説明を行う。
<第1の実施の形態>
図1は、本発明に係る冷熱装置の構成を模式的に示している。図1に示す本実施の形態の冷熱装置100は、配管10,20,30、本発明に係る加熱手段としてのヒータ4、開閉バルブ6,7(以下、第1開閉バルブ6、第2開閉バルブ7ともいう)、ドライヤ8、冷凍機9、及び、温調器12からなり、被処理物としての供試体5に高温ガスと低温ガスを供給して、当該供試体5に対する冷熱負荷試験を行うものである。
なお、ドライヤ8は、圧縮ガスの水分を除去するものであり、冷凍機9は、水分が除去された圧縮ガスを冷却するものである。
配管10には、日本工業規格(JISZ8703)において20℃±15℃(5−35℃)の範囲として規定された特別に加熱も冷却を行わない常温相当の圧縮ガス(以下、第1ガスともいう)が流れる第1ガス流路1が形成され、配管20には、ドライヤ8により水分が除去され冷凍機9により冷却された、第1ガスより低温の第2ガスが流れる第2ガス流路2が形成され、配管30には、第1ガス流路1と第2ガス流路2とが合流した第3ガス流路3が形成されている。
第1開閉バルブ6は、配管10に設けられ、開閉により、配管10で形成された第1ガス流路1から配管30で形成された第3ガス流路3への第1ガスの流れを制御し、第2開閉バルブ7は、配管20に設けられ、開閉により、配管20で形成された第2ガス流路2から配管30で形成された第3ガス流路3への第2ガスの流れを制御するためのものである。
温調器12は、プログラム温度コントローラ等で構成され、プログラムされた処理を実行する機能として、目標のプログラム温度に応じてヒータ4の出力(発熱量)を制御する本発明に係る加熱制御手段としてのヒータ制御部13、及び、目標の温度波形に応じて第1,第2開閉バルブ6,7の開閉を制御するバルブ制御部14を備えている。
ヒータ4は、第3ガス流路3を形成する配管30内に設けられ、ヒータ制御部13の制御に基づいて、第1ガス流路1又は第2ガス流路2から流入された第1ガス又は第2ガスを瞬時に加熱する。
ヒータ制御部13は、供試体5の加熱時に、第3ガス流路3に流れるガスの温度、供試体5の温度、または供試体5の周囲の雰囲気温度が目標の温度(以下、高温度ともいう)となるようにヒータ4でガスを加熱させ、供試体5の冷却時に、第3ガス流路に流れるガスの温度、供試体5の温度、または供試体5の周囲の雰囲気温度が目標の温度(以下、低温度ともいう)となるようにヒータ4でガスを補助加熱させるように制御する。
バルブ制御部14は、供試体5の加熱時または供試体5の冷却時に第1開閉バルブ6と第2開閉バルブ7の少なくとも一方を開放するように制御する。開放するバルブは、加熱時または冷却時における目標とする温度(以下、加熱時における目標温度を目標高温度、冷却時における目標温度を目標低温度ともいう)と冷熱速度(以下、昇温時における冷熱速度を昇温速度、降温時における冷熱速度を降温速度ともいう)により選択される。
すなわち、本冷熱装置100では、第1、第2開閉バルブ6,7の開閉選択により、目標とする冷熱速度と温度域に応じた最適なガス経路を、プログラム温度コントローラなどを用いた単純な接点の切り替え動作により選択することができる。また、ヒータ4は1系列の制御に1本であり、全てのガスがこのヒータ4のみにより温度制御することができるので、1本のヒータ4の出力制御をするだけで温度制御が可能になる。ただし、その際に制御可能な冷熱速度と温度域は、供給ガスの種類に依存するので、多様な温度域と冷熱速度との組み合わせに応じて最適な制御を行うには、第1、第2開閉バルブ6,7の開閉選択による供給ガスの選択が必要となる。従って、第1、第2開閉バルブ6,7の開閉選択によるガスの選択と、1本のヒータ4の出力制御とを組み合わせることにより、多様な冷熱条件下の最適な温度制御を行うことが可能となる。
このように、本冷熱装置100では、目標とする冷熱速度と温度域に応じた第1、第2開閉バルブ6,7の開閉選択とヒータ4の制御の組み合わせという簡易な構成だけで、広範囲の冷熱条件が実現できるとの、従来技術の組み合わせからは到底予測できない顕著な効果が得られる。
具体的には、本冷熱装置100では、常温の第1ガスをヒータ4で加熱することにより、例えば600℃の高温ガスを速く生成すると共に、冷凍機9で例えばマイナス80℃に冷却された第2ガスをヒータ4で加熱することにより、マイナス50℃の低温ガス(冷温ガス)を速く生成することができる。
そして、例えば、低温域で緩やかに温度を上昇(昇温)させる場合は、第2開閉バルブ7を開き、第1開閉バルブ6を閉じる。また、低温域から常温付近で緩やかに昇温させる場合は、第2開閉バルブ7を開き、第1開閉バルブ6は閉じるもしくは開く。また、高温域で緩やかに昇温させる場合、あるいは、高温域から常温付近で緩やかに温度を降下(降温)させる場合は、第1開閉バルブ6を開き、第2開閉バルブ7は閉じるもしくは開く。
また、低温域から高温域で速く昇温させる場合、あるいは、高温域で温度を一定に保持させる場合、第1開閉バルブ6を開き、第2開閉バルブ7は閉じる。また、高温域から低温域で速く降温させる場合、低温域で緩やかに降温させる場合、あるいは、低温域で温度を一定に保持させる場合は、第1開閉バルブ6を閉じ、第2開閉バルブ7は開く。また、速く降温する前の温度制御過程においては、第2開閉バルブ7を開き、第1開閉バルブ6は閉じるもしくは開く。
このように、本冷熱装置100は、1組の制御系統について1本のヒータ4の出力調整のみで温度を制御するといった単純な制御であるにも関わらず、第1、第2開閉バルブ6,7の開閉選択との組み合わせにより、上述した多様な温度域と温調速度との組み合わせに応じて高効率、高精度且つ高応答な最適温度制御を実現することができるという、従来技術からは予測できない極めて高性能な効果が得られる。
このような高性能な効果は、第1、第2開閉バルブ6,7からなる2種類のガス系統のバルブの開放選択制御と1本のヒータ4の出力調整の組み合わせにより初めて創出されるものであり、単なる従来技術の組み合わせからは到底予測されない重要な意義を持つ効果である。また、第1、第2開閉バルブ6,7は、単純な開閉機構であるため、液体窒素温度程度の極低温から常温までの広範囲な温度域で安定して作動できる。これにより、例えば、長期間安定して冷熱サイクルの繰り返しが必要な熱疲労試験用の冷熱装置として、長期間安定して使用できるという重要な意義を持つ効果が得られる。従来の分流器等を使用した技術では、分流板が極低温で凍結してしまい動作が不安定になる問題があり、使用下限温度を余り低くすることができないという制約が生じる。これに対して、本実施の形態の冷熱装置では、簡易な構成で、冷熱条件化での最適制御が可能となるとの、従来技術からは予測できない画期的な効果が得られる。
なお、本冷熱装置100では、このようにして、ヒータ4で加熱され供試体5に供給された第1ガスまたは第2ガスは、後述する供試体5を収容する冷熱槽内に設けられた排気手段により、槽外に排出される構成としている。
このように、冷熱装置100では、常温の第1ガスが流れる第1ガス流路1と第1ガスより低温の第2ガスが流れる第2ガス流路2とが合流した後の第3ガス流路3に設けたヒータ4の出力調整と、バルブ制御部14による第1,2開閉バルブ6,7の開閉制御とにより、ヒータ4と近距離に置かれた供試体5に対して供給するガスの高温と低温の双方の温度調整を行っている。
このことにより、第1ガス流路1において常に高温ガスを生成して循環させる設備も、第2ガス流路2において常に低温ガスを循環させて予備的に温度調整する設備も不要となると共に、供試体5に近距離にあるヒータ4の出力調整とバルブ制御開閉制御のみによる簡単な制御で、供試体5に対する加熱処理及び冷却処理を迅速に且つ効率的に行うことが可能となる。
なお、本冷熱装置100では、ドライヤ8及び冷凍機9への圧縮ガスのガス供給圧は0.1MPa以上とすると共に、冷凍機9へ供給するガスの圧力下露点はマイナス60℃以下とし、さらに、低温ガスが流れる第2ガス流路2は、結露や凍結がなく、外気との接触がない、十分な保温が確保されたものとする。この条件を満たすことにより、低温ガスを連続的に生成して供給することが可能となる。
また、詳細は後述するが、供試体5を速く冷却することが必要な場合には、供試体5に対する冷却処理を開始する前、予め定められた時間だけ早めに第2開閉バルブ7を開放して、ヒータ4により第2ガスを加熱して目標の温度に制御させても良い。このように、バルブ制御部14により、供試体5の冷却を開始する前に、第2開閉バルブ7を開放して第2ガスを第3ガス流路3に流入させるよう制御することにより、第2開閉バルブ7及び第2ガス流路2を予備冷却しておくことができ、供試体5に対する第2ガスによる冷却処理時の冷却速度を速めることが可能となる。
また、詳細は後述するが、第1,第2開閉バルブ6,7の各々は、各々流量の異なる複数の開閉バルブを備えた構成とし、バルブ制御部14により、供試体5の目標とする冷熱速度と目標温度とに応じて、第1開閉バルブ6と第2開閉バルブの各々の開閉バルブの開閉を選択するよう制御しても良い。高温や低温ではガスの流量を高精度に制御することが難しいが、このような構成及び制御により、バルブの開閉のみで流量を制御することができる。
このように、供試体5の温度制御時に、目標の冷熱速度と目標の温度とに応じて、第1開閉バルブと第2開閉バルブの複数の開閉バルブの開閉を選択することにより、さらに高精度に効率良くガス温調制御を行うことができる。
なお、本実施の形態の冷熱装置では、第3ガス経路に設置した1系統の1本のヒータ4のみで加熱用ガス及び冷却用ガスの各々の温度制御を瞬時に行っており、この温度制御を高精度に且つ高応答に行うためには、高効率ヒータの選択が望ましい。従来技術で用いられているヒータは、加熱室や太い配管の中に発熱部が配置されており、ヒータ部をガスが循環することによって徐々に目標温度への加熱が実現されるものが一般的である。このような一般的なヒータを用いた場合、ガスが順次に且つ均一に加熱されず、加熱が不十分で不均一なガスが供試体に供給されるため、高精度且つ高応答な加熱が要求される場合には望ましくない。
そのため、本実施の形態の冷熱装置では、ガスを瞬時に目的とする温度まで均一に加熱することができる高熱変換効率のヒータを用いることが望ましい。例えば、本実施の形態の冷熱装置では、ヒータ4の熱変換効率は、少なくとも50%以上であることが望ましく、80%以上であることがより望ましい。これにより、ヒータ4の出力調整が瞬時にヒータの発熱量に反映されるため、高精度且つ高応答な温度制御が可能になる。
次に、図2A,Bに示す冷熱装置の説明を行う。なお、本図2A,Bを含む以降の各図においては、説明を簡単にするために、図1で示した配管10,20,30等の配管に関しては図示しない。また、温調器12も図示していない。
図2Aに示す冷熱装置100aは、図1における冷熱装置100に、供試体5を収容する冷熱槽10を設けた構成となっている。そして、冷熱槽10内の雰囲気温度を温度センサ11により測定し、ヒータ制御部13は、温度センサ11の測定結果に応じて、目標温度となるようヒータ4の出力調整を行う。なお、温度センサ11により、冷熱槽10内の供試体5の温度を測定することも可能である。また、温度センサにより、ヒータ4で加熱され第3ガス流路3に流れるガスの温度を測定する構成とすることも可能である。
また、冷熱槽10は、後述するように、迅速且つ均一に槽内温度を制御できると共に、供試体と槽内温度の差が極めて小さいので、槽内の雰囲気温度を温度センサで検知してヒータの出力制御を行うだけで、供試体の温度を制御できる特徴を持つ。
冷熱槽10には、ヒータ4で加熱して温度調節された温調ガスを冷熱槽10内に導入(給気)させるためのガス導入手段と、冷熱槽10内に導入された温調ガスを排出するためのガス排気手段とが設けられ、冷熱槽10は、閉構造となっている。また、冷熱槽10は断熱容器で構成し、内壁に高熱伝導箔を設けた構成とすることが望ましい。
また、図2Bにおいて「A−A 断面図」として示すように、冷熱槽10において、ガス導入手段は、導入されたガスが、冷熱槽10の内壁と冷熱槽10内に置かれた供試体との間を流れるように、ガスを導入させ、ガス排気手段は、ガス導入手段によるガスの導入方向とガスの排出方向との角度が90°となる排気口を備え、この排気口を、ガス導入手段によるガスの導入方向から見て、ガス導入手段を囲むように、冷熱槽10の内壁に分散させて配置している。
このような構成とすることにより、ガス導入手段により槽内に導入され、冷熱槽10の左側面の内壁と供試体との間を流れてきたガスは、槽内の上面の内壁で反転し、槽内を循環して冷熱槽の上下左右側の内壁と、供試体との間を流れて排気口から排出される。これにより、ガス導入手段により槽内に導入されたガスは供試体の全体を包むようにして流れることとなる。
このように、本実施の形態の冷熱槽10によれば、加熱または冷却用のガスが、槽内を循環して供試体の全体を包むようにして流れることとなり、槽内に配置された供試体の全体を均一に加熱・冷却することができ、これにより、装置構成を単純にした簡易な構成で、供試体に対する均一な加熱と冷却を行うことが可能となる。
なお、ガス排気手段は、ガス導入手段によるガスの導入方向とガスの排出方向との角度が90°〜180°となる排気口を備える構成とすることが望ましい。ガスの導入方向と排出方向との角度が90°より小さい場合には、ガスの導入方向と排出方向が近いため、導入したガスが槽内を巡回せずに、直ぐに排出されてしまうので、ガスを槽内に巡回させることができない。その結果、槽内に置かれた被処理物を包み込むようにガスを流すことができず、被処理物全体を、均一かつ迅速に加熱及び冷却することができない。
ここでは、ガス導入手段は、冷熱槽10の一方の内壁から対面する内壁に向けて配されたパイプを備え、パイプには、ガスを導入させる複数の給気孔が並べて設けられている。また、パイプは冷熱槽10の端部に配置され、パイプの各給気孔からのガス吹き込み方向は冷熱槽10の中央に向かう方向となっている。なお、ここでは、パイプは対面する内壁に達するように設けられている。
また、ここでは、図2Bにおいて示すように、ガス排気手段は、ガス導入手段によるガスの噴出方向とガスの排出方向との角度が90°となる排気口が、冷熱槽10におけるガス導入手段と同じ一端部側に、分散して配置されている。
このようにガス排気手段とガス導入手段を配置することにより、ガス導入手段のパイプにおける複数の給気孔から噴出されたガスは、供試体に直接遮られることなく、冷熱槽10の内壁と供試体との間を循環して冷熱槽10内を略一巡してガス排気手段の排気口から排出される。
例えば、ガス導入手段のパイプの高さ位置を上部とし、高さ方向の中央に配置した供試体の上方に、ガスを、パイプの各給気孔からシャワー状に押し流し、冷熱槽10の内面で反転させて供試体の下方にガスを反対方向に流して、排気口から排出するようにすることにより、ガスシャワーにより供試体を包み込むようにガスを流すことができ、供試体全体を均一かつ迅速に加熱・冷却することができる。
このような本実施の形態の冷熱装置が備える冷熱槽の詳細を、図3を用いて説明する。
図3に示す冷熱槽10’は、収容した供試体65を均一に加熱または冷却する構成となっている。供試体65としては電子基板等が例示されるが、このような電子基板等の供試体65は、熱伝導率が各々異なる部品で構成されており、従来の高温ガスまたは低温ガスを供試体に直接吹き付ける技術では、全体を効率的に均一加熱または均一冷却することが困難であった。例えば、電子基板の全体を均一加熱または均一冷却するために、電子基板を高熱伝導の箔でその表面を覆い、一部に高温ガスまたは低温ガスを吹き付ける従来技術があるが、電子基板のサイズが大きい場合には、ガスが直接吹き付けられる個所と当該個所から離れた個所では温度差が生じてしまう。
本実施の形態の冷熱装置が備える冷熱槽10’は、例えば、従来技術のように、高熱伝導の箔で供試体の表面を覆う必要はなく、冷熱槽10’内に供試体をそのまま配置するだけで良い。
図3において、図3(A)では冷熱槽10’の側面側からの内部構成を示し、図3(B)では冷熱槽10’の正面側からの内部構成を示している。
図3(A)に示すように、本冷熱槽10’は、断熱材61からなる容器で構成され、内壁の全面には、槽外に連通しない銅箔等の高熱伝導箔62が設けられている。なお、高熱伝導箔62が槽外に連通している場合には、高熱伝導箔62を介して熱が槽外に逃げてしまい、槽内の均熱性が低下する上、迅速な加熱ができない。
また、図3(B)においてはガス導入手段の詳細を示しており、上述したように、ガス導入手段は、冷熱槽10’の一方の内壁から対面する内壁に向けて配されたガス吹込みパイプ63を備え、ガス吹込みパイプ63には、ガスを流入させる複数の給気孔が並べて設けられている。
また、図3(A)に示すように、ガス吹込みパイプ63は冷熱槽10a内の一端部に配置され、ガス吹込みパイプ63の各給気孔からのガス吹き込み方向は冷熱槽10’の他端部に向かう方向となっている。なお、ここでは、ガス吹込みパイプ63は対面する内壁に達するように設けられている。
そして、ガス導入手段としてのガス吹き込みパイプ63とガス排気手段としての排気口64とが設けられ、供試体65に対して高温ガスまたは低温ガスを供給し、供試体65を加熱または冷却して熱負荷をかける。なお、高熱伝導箔62の厚みは2mm以下が好適であり、0.05mm以下がより好適である。また、高熱伝導箔62としてアルミ箔を用いることでも良く、銅やアルミを主成分とした金属を用いることでも良い。銅箔は熱伝導率が高いため均熱性を高める効果がある。また、アルミ箔は熱伝導率が高い上、酸化しにくいため、より高温まで使用できる利点がある。
また、図3(B)に示すように、本冷熱槽10’においては、ガス吹き込みパイプ63はヒータ4が配置された配管に接続されており、温度センサ11の冷熱槽10’内の温度測定結果に応じてヒータ制御部13により出力調整されたヒータ4で温調されたガスが、ガス吹き込みパイプ63に設けられた複数の細孔63aから吹き込まれる。
なお、細孔63aの直径は3mm以下が好適であり、2mm以下がより好適である。また、ガス吹き込みパイプ63の内径は細孔63aの直径の2倍以上が好ましく、4倍以上がより好ましい。パイプ内径/細孔径の比が大きいほど、各細孔から噴出されるガスの流量が均一になり、槽内も均熱化する効果が生じる。
本冷熱槽10’では、ガス吹き込みパイプ63は、図3(B)に示すように、冷熱槽10’の一方の内壁から対面する内壁に向けて配され、ガスを導入させる複数の細孔(給気孔)63aが並べて設けられ、図3(A)に示すように、冷熱槽10’内の一端部に配置されており、このガス吹き込みパイプ63の各細孔(給気孔)63aからのガス吹き込み方向は冷熱槽10’内の他端部に向かう方向となっている。また、ガス吹き込みパイプ63は、ヒータ4が接続された内壁に対面する内壁に達するように設けられている。
そして、ガス排気手段としての排気口64は、ガス吹き込みパイプ63によるガスの噴出方向とガスの排出方向との角度が90°となるよう、ガスの噴出方向に沿って延びる冷熱槽10’の各内壁に、分散して配置されている。
このようにガス吹き込みパイプ63と排気口64とを配置することにより、ガス吹き込みパイプ63における複数の細孔63aから噴出されたガスは、供試体65に直接遮られることなく、冷熱槽10’の内壁と供試体65との間に、供試体65と平行に噴出され、冷熱槽10’の高熱伝導箔62が設けられた内壁と供試体65との間を循環して冷熱槽10’内を略一巡して排気口64から排出される。このようにガスを供試体65に直接吹き付けない構成とすることにより、ガスを供試体65に直接吹き付けることによりガスを供試体65に発生する温度分布の増大を防ぐことができる。
また、ガス吹き込みパイプ63の高さ位置は、図3における上部とし、高さ方向の中央に配置した供試体65の上方に、ガスを、ガス吹き込みパイプ63の各細孔63からシャワー状に押し流し、冷熱槽10の内面で反転させて供試体65の下方にガスを反対方向に流して、排気口64から排出するようにする。なお、ガス吹き込みパイプ63の高さ位置は、図3における下部としても良い。
このように本実施の形態では、排気口64の位置と形状により、槽内のガスの流れを制御している。そのため、排気口の配置は極めて重要な技術的特徴である。上述した排気口64の位置と形状とすることにより、ガスは槽内を速やかにかつ均一に巡回した後、速やかに排出される、との顕著な効果が得られる。
また、本冷熱槽10’では、断熱材61からなる内壁に高熱伝導箔62が設けられており、ガス吹き込みパイプ63の各細孔63から本冷熱槽10’の内壁に向かうガスにより、内壁全体を均一な温度に加熱・冷却できる。これは、高熱伝導箔62により、内壁の場所による温度差が自動的に解消されるためである。また、断熱材61は、高熱伝導箔62から槽外に熱が逃げることを防止するので、高熱伝導箔62を少量の熱量で迅速に加熱・冷却することができる、との顕著な効果が得られる。さらに、内壁の温度の均一化に伴い、槽内を流れるガスの温度も均一になる。このことにより、供試体65を均一温度のガス流で包み込むように加熱・冷却することができ、供試体65全体を均一に加熱・冷却することができる。
このように、本冷熱槽10’では、槽の内壁面に銅箔等の高熱伝導箔62を設け、外側に断熱材を配し、ヒータ4により一定の温度に昇温したガスを、ヒータ4の先端に取り付けたガス吹き込みパイプ63の各細孔63から槽内にシャワー状に噴出させ、供試体65をガスシャワーで包み込むようにガスを流したのち、速やかに排気口64からガスを槽外へ排出する。
このように、均一温度のガスシャワーで供試体65を包み込むようにガスを流すことにより、供試体65全体に迅速且つ均一にガスの熱が伝達され、供試体65全体を迅速且つ均一に加熱または冷却することができる。また、熱交換により温度が変化したガスは排気口64から速やかに排出されるので、常に温調されたばかりの導入ガスによる熱交換が連続して行われることとなり、供試体65への熱伝達を効率よく迅速に行うことができる。
また、排気口64を、槽内のガス吹き込みパイプ63と同じ側に、スリット状または複数の微小孔の集合体の形状として、槽の外周部に設置することにより、ガス吹き込みパイプ63の各細孔63から噴出されたガスが槽内を反転して供試体65を包むように流れたのちに排気口64から速やかに排出させることができる。
なお、スリットとは細長い隙間という意味であり、スリット幅が大きすぎると、外気が入り込んで、槽内の均熱性が保たれない。そのため、排気口64のスリットの幅は3mm以下とする。より好適には、排気口64のスリットの幅は2mm以下であることが望まれる。
また、ガス吹き込みパイプ63の各細孔63から噴出されたガスは放射状に広がりながら流れるので、槽壁や供試体65に衝突して熱交換しながら流れる。特に、凹凸がある供試体65の周辺では、局所的に乱れた渦状の流れが発生するため、ガスと供試体65との間で円滑に熱交換が行われる。
また、槽の内壁面付近では、ガスと銅箔等の高熱伝導箔62との間で熱交換が生じるが、高熱伝導箔62により槽内全体の温度分布が補正されて均一化されるため、流れるガスの温度分布が均一になるように槽内壁面での熱交換が生じる。
また、高熱伝導箔62は熱容量が小さいうえに、槽外への放熱が断熱材61により遮断されているので、高熱伝導箔62の温度を均熱化させるのに必要な熱量は小さく、速やかに均熱化させることができる。
また、本冷熱槽10’では、排気口64は、槽内のガスを速やか且つ均一に排出させるために槽の外周部全体に均等に配置している。排気口64を槽の外周部の一部に偏って配置した場合、排気口64に向かうガスの流れが強く生じ、ガスの流れに偏りができてしまうが、本冷熱槽10’では、このような問題を回避することができる。
また、排気口64の面積が大きすぎると、排気口64から外気が導入されて、槽内におけるガス温度の均熱性が阻害される恐れがある。そのため、通常の1つに集約した排気口では十分な均熱性が保たれない。本冷熱槽10’では、排気口64は、幅の細いスリット状で槽の外周部全体に均等に配置しており、このような問題を回避している。
なお、スリットの幅は、排気口64から適度な圧力でガスの排気がなされることで外気の侵入を防ぐように設定することが望ましい。また、スリットは、その幅や配置を調整することで、容易に外気の侵入を防ぐことができるメリットがある。ただし、外気の侵入を防ぐ他の構成として、微細な穴を多数分散させて排気孔とすることもできる。
<第2の実施の形態>
次に、図4を用いて、図2における冷熱装置を複数設けた本発明の第2の実施の形態としての冷熱装置の説明を行う。図4に示す冷熱装置100bは、図2に示す冷熱装置100aにおけるドライヤ8と冷凍機9以外の構成要素を複数設けている。
すなわち、冷熱装置100bは、図2における第1ガス流路1、第2ガス流路2、第3ガス流路3、第1開閉バルブ6、第2開閉バルブ7、ヒータ4、ヒータ制御部13、バルブ制御部14、冷熱槽10、及び温度センサ11からなる冷熱ユニットを複数備えたマルチ冷熱システムの構成となっている。
このようなマルチ冷熱システムでは、各冷熱ユニットにおける複数の制御が互いに独立して且つ同時並行で行われる。すなわち、ある1台の冷熱ユニットが処理を完了して、冷熱槽10a,10bのいずれか一方へのガスの供給を全停止し、供試体を交換して再度別の温度波形条件を設定して試験を再開する動作を、他の冷熱ユニットの動作を妨げることなく行う必要がある。
また、各冷熱ユニットを個別の温度波形で独立運転させるため、全体としてのガスの消費量が変化することになる。しかしながら、各冷熱ユニットにおいて特定のガス供給用の開閉バルブを開いたときに供給されるガス量は一定でなければ処理の再現性を得ることができない。
本冷熱装置100bでは、全体のガスの消費量が変化しても各冷熱ユニットに供給されるガス量を一定に保つために、以下に説明するように、各冷熱ユニットに分岐するガス配管の分岐直前の圧力を一定に制御するための制御機構を設けている。
図4に示す冷熱装置100bでは、第1ガス流路1a、第2ガス流路2a、第3ガス流路3a、第1開閉バルブ6a、第2開閉バルブ7a、ヒータ4a、ヒータ制御部13a、バルブ制御部14a、冷熱槽10a、及び温度センサ11aからなる冷熱ユニット101と、第1ガス流路1b、第2ガス流路2b、第3ガス流路3b、第1開閉バルブ6b、第2開閉バルブ7b、ヒータ4b、ヒータ制御部13b、バルブ制御部14b、冷熱槽10b、及び温度センサ11bからなる冷熱ユニット102と、を含む構成となっている。
さらに、冷熱装置100bでは、第1ガスを冷熱ユニット101,102各々の第1ガス流路1a,1bに分岐して流入させる第1分岐流路31と、第1分岐流路31の分岐前における第1ガスの圧力を予め定められた値に保つよう制御する圧力制御バルブ部16と、冷凍機9で冷却された第2ガスを冷熱ユニット101,102各々の第2ガス流路2a,2bに分岐して流入させる第2分岐流路32と、第2分岐流路32における第2ガスの圧力を測定する圧力センサ17と、第2ガスの分岐前の圧力を予め定められた値に保つよう制御する流量制御バルブ部15と、を備えた構成となっている。
このような構成により、本冷熱装置100bは、1台の冷凍機9から供給される低温ガス(第2ガス)を2つの第2ガス流路2a,2bに分岐させ、第2開閉バルブ7a,7bとヒータ4a,4bを介して複数の冷熱槽10a,10bに供給する。
この際、分岐前の第2ガスの圧力が一定になるように、冷凍機9への供給ガス量を制御する。ここでは、圧力センサ17による第2分岐流路32における測定値が予め定められた一定の値となるよう、流量制御バルブ部15による制御を行う。なお、この制御は、例えば専用の独立したコントローラを設けて制御する。
このような流量制御バルブ部15の制御により、各冷熱槽10a,10bを独立して運転した場合にも、第2開閉バルブ7a,7bの開放時の第2ガスの流量を一定に保つことが可能となる。
冷却用の第2ガスの流路については、冷凍機9により冷却されたガスが各冷熱ユニット101,102に分岐される直前の第2分岐流路32に設置された圧力センサ17で計測された圧力値に基づいて、流量制御バルブ部15により、冷凍機9に供給するガスの流量をフィードバック制御することで、分岐前の低温ガスの圧力を一定に制御しているが、これは以下の理由によるものである。
極低温に冷却されたガスの流量をバルブの開閉量の制御により直接制御すると、バルブの凍結等により、誤動作する懸念が高いため望ましくない。本冷熱装置100bの構成では、冷却された低温ガスの配管部分には圧力センサ17の配置だけでよく、この圧力センサ17には低温ガスは流れ込まないので、センサ部分が冷やされず圧力センサ17の計測動作には影響はなく、また、流量制御バルブ部15は、冷凍機9で冷却される前の配管部分に設定されているため冷やされて誤動作することがない。これにより、全体として安定した確実な温調制御を行うことが可能となる。
また、冷凍機9で冷却された後のガスが流入する配管に配置された第2開閉バルブ7a,7bは単に開閉のみの単純な制御を行うバルブであり、極低温での使用を保証された市販のものを使用することができる。
また、常温の第1ガス側の流路については、各冷熱ユニット101,102への分岐直前の流路に圧力制御バルブ部16を設置し、圧力制御バルブ部16でこの部分のガス圧力を一定に制御することにより、全体のガス消費量が変化しても各冷熱ユニット101,102へのガスの供給量を一定に制御することができる。
ただし、一般的な圧力制御バルブでは、ガス流量変化に伴い圧力が変動する場合があるので、流量が変化しても圧力を一定に保つことができる高精度なバルブを用いることが望ましい。
これにより、各冷熱槽10a,10bを独立して運転した場合にも、第1開閉バルブ6a,6bの開放時の第1ガスの流量を一定に保つことが可能となる。なお、低温ガス用の流路を形成する配管と同様に、圧力センサと流量制御バルブ部との組み合わせ等で、常温ガス側のガス流路の圧力を一定に制御することでも良い。
このように、第1ガス流路1a,1b、第2ガス流路2a,2b、第3ガス流路3a,3b、第1開閉バルブ6a,6b、第2開閉バルブ7a,7b、ヒータ4a,4b、バルブ制御部14a,14b、及び排気部を含む冷熱槽10a,10bを各々備えた複数の冷熱ユニット101、l02における低温ガス側及び常温ガス側の各々のガス供給流路の分岐前のそれぞれの個所に、各冷熱ユニット101,102に分岐する前の配管のガス圧力を予め定められた値に保つように制御する機構を設けることにより、マルチ冷熱システムにおいて、各冷熱ユニット101,102が独立に動作して全体のガス消費量が変化しても、各冷熱ユニット101,102に供給されるガス量を一定に保つことができるので、試験の再現性及び安定性を確保することが可能となる。
<第3の実施の形態>
次に、図5を用いて、本発明の第3の実施の形態として、冷熱ユニットを3台備えたマルチ冷熱システムについて説明する。図5においては、冷熱ユニットを3台備えた冷熱装置100cの構成を示しており、各ヒータ4a〜4cにより各冷熱槽10a〜10cに導入する温調ガスを、各冷熱ユニットで独立して生成することができる。
特に、本冷熱装置100cでは、複数の第1開閉バルブ6a〜6cの各々が2つの電磁弁6a1,6a2,6b1,6b2,6c1,6c2を備えており、また、複数の第2開閉バルブ7a〜7cの各々も2つの電磁弁7a1,7a2,7b1,7b2,7c1,7c2を備えている。なお、第1開閉バルブ6a〜6cの電磁弁6a1,6a2,6b1,6b2,6c1,6c2の接続点A1〜A3は、第2開閉バルブ7a〜7cの各電磁弁7a1,7a2,7b1,7b2,7c1,7c2と各々ヒータ4a〜4cとの間にある接続点A1〜A3で接続されている。
このように、本冷熱装置100cでは、複数の第1開閉バルブ6a〜6c及び複数の第2開閉バルブ7a〜7cの各々が2つの電磁弁を備え、各々の電磁弁の開閉をバルブ制御部14a,14bにより個別に制御することにより、冷熱槽10a〜10cの各々に提供するガスの温調制御をさらに効率的に行うことが可能となる。
例えば、第1開閉バルブ6a〜6c及び第2開閉バルブ7a〜7cの各々の電磁弁のオリフィス径や配管径を変えることによりバルブ毎の流路の流量を変えることができ、一方は他方の電磁弁よりも流量が多いものとすることにより、ガスの流量を大流量と小流量に切り替えることができる。
以下、第1開閉バルブの流量の多い電磁弁をR1、少ない電磁弁をR2、同じく、第2開閉バルブの流量の多い電磁弁をC1、少ない電磁弁をC2として、図6に基づいて、冷熱槽10c〜10eの各々に提供するガスの温調制御とバルブ制御の動作を説明する。
図6において、R1は常温ガス大流量供給用バルブで、R2は常温ガス小流量供給用バルブであり、C1は低温ガス大流量供給用バルブで、C2は常温ガス小流量供給用バルブである。
この例では、常温ガスと低温ガスの供給切り替えを繰り返して行う際の、常温ガスを冷熱槽に供給して供試体を温めた後に、低温ガスを冷熱槽に供給して供試体を冷却する冷熱サイクルにおける制御を示している。
目標温度波形に従ってガス温度を上昇させる昇温時から高温保持初期までの間は、常温ガスの大流量供給用バルブR1を開いて(ON)大流量の常温ガスをヒータに供給し、冷熱槽内の温度が目標の高温度になるよう加熱制御したガスを冷熱槽内に供給して冷熱槽内及び供試体を急速に加熱する。
その後、高温保持中期には、大流量供給用バルブR1を閉じ(OFF)、常温ガスの小流量供給用バルブR2を開いて(ON)小流量の常温ガスをヒータに供給し、冷熱槽内の温度が目標の高温度になるよう加熱制御したガスを冷熱槽内に供給して、冷熱槽内の温度を一定に保持するための補助的な加熱を行う。
このように、高温保持中期において、大流量供給用バルブR1を閉じ(OFF)、常温ガスの小流量供給用バルブR2を開いて(ON)補助的な加熱を行うことにより、常温ガスの消費を抑えることが可能となる。
その後、高温保持終了前(冷却開始前)の所定時間だけ早めに、常温ガスの小流量供給用バルブR2を閉じる(OFF)と共に、低温ガスの大流量供給用バルブC1を開いて(ON)大流量の低温ガスをヒータに供給し、冷熱槽内の温度が高温での保持温度に保つように当該低温ガスをヒータで加熱して温度調節したガスを冷熱槽内に供給する。
このことにより、冷熱槽内の温度を保持温度に維持しつつ、ヒータに達するまでの低温ガスの供給流路を次の冷却工程のために予備冷却しておくことができ、次の冷却工程における降温速度を早くすることが可能となる。
さらに、その後、冷熱槽内の温度を目標温度波形に従って降下させる冷却工程、及び、低温に保持させる低温保持工程の初期においても、低温ガスの大流量供給用バルブC1を開放(ON)しておくことにより温度制御を維持する。
そして、冷却保持工程の中期においては、低温ガスの大流量供給用バルブC1を閉じて(OFF)、低温ガスの小流量供給用バルブC2を開いて(ON)小流量の低温ガスをヒータに供給し、冷熱槽内の温度が低温側の目標の低温度になるよう加熱制御したガスを冷熱槽内に供給して、冷熱槽内の温度を低温側に保持するための補助的な加熱を行う。
このように、低温保持中期において、大流量供給用バルブC1を閉じ(OFF)、小流量供給用バルブC2を開いて(ON)補助的な加熱を行うことにより、低温ガスの消費を抑えることが可能となる。
以上の工程を繰り返して、冷熱槽内の温度を任意の目標温度波形に制御する温調サイクル制御を行う。
なお、図6で示したバルブ選択の組み合わせは一例であり、目的に応じて適宜変更することができる。例えば、高温保持工程や低温保持工程の時間が短ければ、小流量のバルブR2またはC2への切り替えは省略しても良い。また、昇温速度または降温速度が遅くても良い場合には、昇温初期または降温初期に小流量のバルブR2またはC2を選択しても良い。また、降温初期に大流量の常温ガス用バルブR1を開いて冷却することも可能である。さらに、昇温初期にバルブR1とR2の双方を開き、降温初期にバルブC1とC2の双方を開くよう制御しても良い。
このように、必要に応じて開閉するバルブを選択することによって、温度制御に用いるガスの消費量を節約することができると共に、同じ流量のガスを、マルチ配管により、効率よく複数の冷熱槽に分配することにより、より多くの冷熱槽を同時に動作させることが可能となる。
また、図5及び図6で示したバルブ選択の組み合わせでは、大流量と小流量との2つのバルブの構成を示しているが、第1開閉バルブ6a〜6cが、各々流量の異なる3以上の開閉バルブを備え、第2開閉バルブ7a〜7cも、各々流量の異なる3以上の開閉バルブを備えた構成としても良い。この場合にも、バルブ制御部14a,14bが、ガス昇温時には、目標とする温調速度と目標温度とに応じて、開放する第1開閉バルブ6a〜6cの各々の開閉バルブを選択して開閉すると共に、ガス降温時には、目標とする温調速度と目標温度とに応じて、開放する第2開閉バルブ7a〜7cの各々の開閉バルブを選択する。
次に、図7〜図10を用いて、第1〜第3の本実施の形態の冷熱装置が備える冷熱槽の他の構成例について説明する。
ここで示す各冷熱槽も、図3で示した冷熱槽と同様に、収容した供試体を均一に加熱または冷却する構成となっており、従来技術のように、高熱伝導の箔で供試体の表面を覆う必要はなく、冷熱槽内に供試体をそのまま配置するだけで良い。
図7において、図7(A)では冷熱槽10dの上面側から見た構成を示し、図7(B)では冷熱槽10dの側面側からの内部構成を示している。
図7(A)及び図7(B)に示すように、ガスの噴出方向に沿って延びる冷熱槽10dの上面を含む各面(上下、左右)には、スリット状の排気口としての図3における冷熱槽10と同様の排気スリット64aが均等に配置されている。
また、図7(B)に示すように、本冷熱槽10dは、図3における冷熱槽10’と同様のガス吹き込みパイプ63によるガスの噴出方向の先に存在する内壁に、図3における冷熱槽10’と同様の高熱伝導箔62が設けられ、供試体65aに対して温調ガスを供給し、供試体65aを加熱または冷却する。
ガス導入方向に対向する壁面にはガスが直接当たり、最も温度差が生じ易いので、少なくとも、この面の内壁には高熱伝導箔62の設置が望ましい。これにより、必要最小限の構成で、効率良く槽内の均熱性を向上させることができる。
本図7における冷熱槽10dでは、排気スリット64aは、ガスの噴出方向に沿って延びる各面(上下、左右)に均等に分散して配置されている。このような構成により、図3における冷熱槽10’と同様にして、ガス吹き込みパイプ63から供試体65aに直接吹き付けることなく噴出されたガスを、槽内壁に沿って槽内を略一巡するように循環させることができ、供試体65aを包み込むようにガスを供給することができる。
次に、図8に示す冷熱槽10eの説明を行う。図8においては、図3の冷熱槽10’における排気口を構成する排気スリットと同様の排気スリット64bが、ガス吹き込みパイプ63によるガスの噴出方向と反対方向に存在する壁面に、ガスの噴出方向から見てガス吹き込みパイプ63を囲むように、均等に分散して配置された構成となっている。これにより、排気スリット64bからのガスの排出方向は、ガス吹き込みパイプ63からのガスの噴射方向と180度の方向となる。
このような構成により、図3及び図7における冷熱槽10’,10dと同様にして、ガス吹き込みパイプ63(給気パイプ)の給気穴(細孔)から、供試体65aに直接吹き付けることなく噴出された温調ガスを、槽の内壁と供試体65aとの間に、槽内を略一巡するように循環させることにより、供試体65aを包み込むようにガスを供給することができる。
次に、図9に示す冷熱槽10fの説明を行う。図9において、図9(A)では冷熱槽10fの上面側から見た構成を示し、図9(B)では冷熱槽10fの側面側からの内部構成を示している。
図9においては、対向する内壁の各々に向かってガスを噴出するように、一方向に並んだ複数の給気口(細孔)を両側に備えたガス吹き込みパイプ63bが、槽内の下部におけるガス噴出方向の中央部分に設けられ、また、図3の冷熱槽10’における排気口を構成する排気スリットと同様の排気スリット64cが、ガス吹き込みパイプ63bが設けられた位置に合わせて、ガス吹き込みパイプ63bを囲むように、ガスの噴出方向に沿って延びる各壁面に均等に分散して配置された構成となっている。
このような配置とすることにより、排気スリット64cからのガスの排出方向は、ガス吹き込みパイプ63bからのガスの噴射方向と90度の方向となる。なお、ガス吹き込みパイプ63bの両側の細孔からのガスの噴射方向に対向する槽の内壁の各々には、図3の冷熱槽10’と同様の高熱伝導箔62が設けられている。
このような構成により、図3,図7,図8における冷熱槽10’,10d,10eと同様にして、ガス吹き込みパイプ63bの両側の細孔から噴出(給気)されたガスを、供試体65aに直接吹き付けることなく、槽の内壁と供試体65aとの間に、槽内を略一巡するように循環させることにより、供試体65aを包み込むようにガスを供給することができる。
なお、パイプ63bの冷熱槽10f内における上下方向の位置は、供試体65aと下の内壁との中間付近が望ましい。もしパイプ63bを内壁に近い位置に配置した場合には内壁近くに多くガスが流れるため、供試体65a付近のガスが少なくなり、迅速な加熱・冷却ができない。また、供試体65aに凹凸がある場合には、最も出張った部位の付近にガス流の中心がくるようにパイプ63bを配置することにより、供試体65aをより迅速に加熱・冷却できる効果が得られる。
また、ガス吹き込みパイプ63bを、槽内の下部ではなく、上部におけるガス噴出方向の中央部分に設けることも可能である。しかしながら、ガス吹き込みパイプ63bを槽内の下部に設けた構成とすることにより、例えば、槽の上蓋を外して上部から容易に供試体65aを交換することができるとの効果が得られる。
このように、ガス導入手段により、槽内に収容した供試体を加熱もしくは冷却するためのガスを、冷熱槽の内壁と被処理物との間を流れるように導入し、導入されたガスを排出するガス排気手段に、ガス導入手段によるガスの導入方向とガスの排出方向との角度が90°〜180°となる排気口を、ガス導入手段によるガスの導入方向から見て、ガス導入手段を囲むように、槽の内壁に分散配置した構成とすることにより、導入されたガスが、冷熱槽の内壁と被処理物との間を流れて排気口から排出されるので、ガスは、槽内を循環して被処理物の全体を包むようにして流れることとなり、槽内に配置された被処理物の全体を均一に加熱・冷却することができる。
これに対して、図10(a)〜(f)の各々に示すように、ガス吹き込みパイプの配置位置に対して、排気口が不適切な位置に配置された場合、すなわち、排気口によるガスの排出方向が、ガス吹き込むパイプによるガス導入方向と90°〜180°となるように分散配置しておらず、また、排気口を、ガス吹き込むパイプによるガス導入方向から見て、ガス吹き込むパイプを囲むように分散配置していない場合には、ガス吹き込みパイプから導入されたガスを、供試体を包み込みように槽内を循環させることができない。
例えば、図10(a)及び図10(b)では、排気口からのガスの排出方向が、ガス吹き込みパイプからのガス導入方向に対して0°となっている。そのため、ガス吹き込みパイプから導入されたガスは、供試体を包み込みように槽内を循環することなく、排気口から排出されてしまい、その結果、供試体及び槽内を均一に加熱・冷却することができない。
また、図10(c)及び図10(d)では、排気口は1個所のみに設けられており、ガス吹き込みパイプから導入されたガスは、1個所の排気口に向かって流れるため、ガスの流れに偏りができる。そのため、槽内にガスが流れない部分ができ、供試体の全体を包むようには流れない。例えば、図10(c)に示す構成では、パイプから導入されたガスは、供試体の左側面側に流れず、また、図10(d)に示す構成では、パイプから導入されたガスは、図面における供試体の手前側と奥側に流れず、供試体の全体を包むように槽内を循環することなく、排気口から排出されてしまう。その結果、供試体及び槽内を均一に加熱・冷却することができない。
また、図10(e)及び図10(f)では、排気口は、ガス吹き込みパイプからのガス導入方向から見て、ガス吹き込みパイプを囲むように配置されていない。そのため、ガス吹き込みパイプから導入されたガスは、供試体を包み込みように槽内を循環することなく、排気口から直ちに排出されてしまい、その結果、供試体及び槽内を均一に加熱・冷却することができない。
図11においては、図2、図3における冷熱槽10,10’内に供試基板を載置した構成を示しており、ガス吹き込みパイプの各細孔から温調エアーを導入することにより、12分のサイクルで高温状態と低温状態を繰り返すことができた。
上述の各実施の形態の冷熱槽10,10’,10a〜10fの各々は、冷熱試験装置に用いることができる。このような本発明に係る冷熱槽を用いた冷熱試験装置では、プリント基板、電子部品、熱疲労試験片などを供試体(以下、試験体ともいう)として収容した冷熱槽10,10’,10a〜10f内において迅速かつ均一に加熱または冷却して試験体の性能を迅速かつ高精度に検査し、あるいは冷熱サイクルにおける試験体の耐久性能を迅速かつ高精度に検査することができる。
また、上述の各実施の形態の冷熱槽10,10’,10a〜10fとして示した各々の槽は、プリント基板のリフロー装置に用いることができる。リフロー装置は、冷熱槽10,10’,10a〜10fと同様の構成とした槽を用い、槽内に収容したプリント基板を加熱してはんだ付けを行う。このような本発明に係る冷熱槽を用いたリフロー装置では、温度を均一かつ迅速に制御できるため、はんだ付けの信頼性を高めることができる上、生産性も向上できる。
以上、各図を用いて説明したように、本実施の形態の冷熱装置では、常温の第1ガスが流れる第1ガス流路と、第1ガスより低温の第2ガスが流れる第2ガス流路と、第1ガス流路と第2ガス流路とが合流した第3ガス流路と、第1ガス流路に設けられ第1ガス流路から第3ガス流路への第1ガスの流れを制御する第1開閉バルブと、第2ガス流路に設けられ第2ガス流路から第3ガス流路への第2ガスの流れを制御する第2開閉バルブと、第3ガス流路に設けられ、第3ガス流路に流れるガスを加熱するヒータと、試供体の温度制御時に第1開閉バルブと第2開閉バルブの少なくとも一方を開放するバルブ制御手段と、を備え、バルブ制御部により、供試体の加熱時または冷却時に設定される温度と速度との組み合わせに応じて、第1開閉バルブ及び第2開閉バルブのいずれかまたは両方を選択して開放する。ガス導入手段は、第3ガス流路に接続され、ヒータで加熱された第1ガス及び第2ガスを冷熱槽内に導入し、ガス排気手段は、ヒータで加熱され供試体に供給されたガスを冷熱槽内外に排出する構成としている。
このような構成により、本実施の形態の冷熱装置では、第1,第2開閉バルブの開閉の選択により、目標とする温度域と冷熱速度に応じた最適なガス経路を選択することができると共に、第1,第2ガス流路とが合流した後の第3ガス流路に供試体に近距離で設けた1本のヒータの出力調整のみで、供試体に対して供給するガスの温度調整を瞬時に行うことができるので、第1ガス流路において常に高温ガスを生成して循環させる設備も、第2ガス流路において常に低温ガスを循環させる設備も不要となると共に、第1,第2開閉バルブの開閉選択による供給ガスの選択と1本のヒータの出力制御を組み合わせることにより、多様な広範囲での温調条件下での最適な温度制御を行うことができる。
すなわち、本実施の形態の冷熱装置では、例えば目標とする冷熱速度(昇温速度、降温速度)と温度域に応じた、バルブの開閉選択制御と、供試体に近距離にある1本のヒータの出力制御との組み合わせという簡易な構成だけで、広範囲の温調条件下での供試体に対する最適な加熱・冷却を迅速且つ効率的に行うことが可能となるとの、従来技術の単なる組み合わせからは到底予測することができない顕著な効果を得ることができる。
そして、このように、低温から高温までの任意の温度に高精度に温調調整したガスを迅速に生成でき、さらに、生成したガスを複数の給気孔からシャワーのようにして冷熱槽内に導入し巡回させることにより、供試体全体を包み、速やかに排出することができる。これにより、冷熱槽内に導入したガスの熱を迅速かつ均一に供試体全体に伝達することができ、簡易な装置構成であるにも関わらず、従来装置に比べて極めて迅速且つ均一に供試体を加熱・冷却することができ、高速且つ高精度に供試体の温度を制御することができる。
特に、断熱容器の内壁に高熱伝導箔を配した冷熱槽内に温調ガス(高温ガス、低温ガス)を導入し、供試体をシャワー状のガス流で包むように熱交換した後、速やかに排気口から熱交換後のガスを排出することにより、供試体全体を均一且つ迅速に加熱または冷却することができる。
なお、本実施の形態の冷熱装置は、上述したプリント基板用のリフロー装置、電子部品の熱疲労試験装置、または、各種温度環境下での性能検査装置等として用いることが可能である。
また、本実施の形態の冷熱装置の冷熱槽内の断面形状は、矩形に構成されているが、楕円形または円形に構成されても良い。