図1に示すように、第一実施形態の材料試験装置12は、試験槽14を有する。図1に示す例では、試験槽14は直方体の箱状である。図面において、試験槽14の上側を矢印Uで、奥側を矢印Dで、幅方向右側を矢印Rでそれぞれ示す。
図2〜図4に示すように、試験槽14は、内側の金属ケース19を有する。金属ケース19の外側には断熱材18が配置される。金属ケース19を構成する金属としては、特に限定されない。金属ケース19として、たとえばアルミニウム製の箔を用いれば、アルミニウムは熱伝導率が高いので、試験槽14内の高い均熱性を軽量な構造で実現できる。また、アルミニウムは、酸化しにくいため、耐久性も高い。金属ケース19を構成する金属として銅を(たとえば銅箔として)用いれば、銅は熱伝導率が高いので、試験槽14内の高い均熱性を実現できる。金属ケース19の厚みは、熱容量を小さくするために、2mm以下が好ましく、0.3mm以下がより好ましい。
図2に示すように、試験槽14の上部14U及び下部14Sには、負荷部材20が貫通している。負荷部材20は、上下一対の力学負荷軸22A、22Bを有する。力学負荷軸22A、22Bの対向部分には保持部24が備えられている。この保持部24に、試験片26の上部および下部をそれぞれ保持できる。力学負荷軸22A、22Bの熱容量は、試験片26の熱容量より大きい。
本実施形態では、試験片26の一例として、長手方向の中央において、断面で両側の外形線が平行に現れる中央部26Cと、この中央部26Cの長手方向両端において、中央部26Cよりも太い被保持部26Hとを有する。被保持部26H及びその近傍部分において、試験片26は保持部24に保持される。なお、図2に示す例では、中央部26Cの長手方向の中央がさらに細い形状であるが、中央部26Cは長手方向に一定の幅(あるいは径)を有する形状でもよい。
さらに、力学負荷軸22A、22Bには、アクチュエータ等の力学負荷機構(図示省略)が備えられている。そして、保持部24の間で試験片26を挟みこんで保持した状態で、この力学負荷機構により、力学負荷を試験片26に作用せることができる。この力学負荷は、引張、圧縮(押込み)、回転、捻り等、特に限定されない。
図2及び図3から分かるように、力学負荷軸22A、22Bは、保持部24側の一部が試験槽14の内部に収容されているが、他の部分(保持部24の反対側の部分)は、試験槽14の外部に位置している。
力学負荷軸22A、22Bには、力学負荷量検出器(図示省略)が取り付けられている。この力学負荷量検出器により、試験片26の変形量や変位量を検出できる。力学負荷検出器の例としては、ロードセルや変位計等を挙げることができる。
試験槽14内の対向する内壁の一方(図2及び図3に示す例では上部14U)には、さらにパイプ28が貫通している。パイプ28の先端は、試験槽14の対向する壁の他方(図2に示す例では下部14S)に向けて延在されている。パイプ28の先端(下端)は閉じられており、試験槽14内の下部14Sに固定されている。パイプ28は、力学負荷軸22A、22Bと平行である。
図1〜図3に示すように、パイプ28において、試験槽14の外部に位置する部分には、温調ガスヒータ30が備えられている。この温調ガスヒータ30は、矢印F1で示すように、外部から流入された空気(圧縮ガス)を所定の温度でパイプ28内に送り込む部材である。以下、温度調整されたガスを「温調ガス」という。なお、パイプ28内に送り込むガスの風量を必要に応じて調整する風量調整器を、たとえば温調ガスヒータ30の上流側に設けてもよい。
図6A及び図6Bに示すように、パイプ28には、長手方向に沿って一定間隔をあけて、複数のノズル32が形成されている。パイプ28内の温調ガスは、ノズル32を通って試験槽14内に導入される。ノズル32が形成されたパイプ28は、本発明の導入部材(吹付部材)の一例である。
図7に示すように、ノズル32の向きは、試験片26と、試験槽14の内面との間に向かう向きである。換言すれば、矢印F2で示すように、パイプ28内の温調ガスが、試験片26と試験槽14の内面との間に導入されるように、ノズル32の向きが設定されている。
特に、本実施形態では、図3からわかるように、パイプ28が試験槽14の中央より後部14K側に近い位置に配置されている。そして、温調ガスが排気口34から出る方向(矢印F5方向)は、ノズル32からのガス導入方向F2と直交している。
温調ガスの流速を均一化する観点から、たとえばノズル32の内径が4mmの場合であれば、ノズル32の直径は2mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましい。
パイプ28の内径はノズル32の直径の2倍以上が好ましく、4倍以上がより好ましい。これは、パイプ内径/ノズル直径の比が大きいほど、ノズル32のそれぞれから流出する温調ガスの流速の均一化を図ることができるからである。
試験片26の周囲では、図4に矢印F3で示すように、試験片26の近傍を回る温調ガスの流れが生じる。また、温調ガスの一部は、矢印F4で示すように試験片26の近傍から離れ、試験槽14の排気口34を設けた位置に向かう。
図1、図3〜図5に示すように、試験槽14には、複数の排気口34が形成されている。本実施形態では、排気口34のそれぞれはスリット状(細長い形状)である。図1及び図2から分かるように、排気口34は、試験槽14の上部14U、下部14S、前部14Z及び後部14Kにおいて、左側部14Hに近い位置(右側部14Mからは遠い位置)に形成されている。
図3に示すように、排気口34は、パイプ28の排気口34から試験槽14への温調ガスの導入方向(図2の矢印F2方向)で見て、パイプ28(導入部材)を囲んでいる。
複数の排気口34は、試験槽14内へ温調ガスが導入されると、すでに試験槽内に存在していたガスが排出されるのに十分な開口断面積を全体として有している。しかし、排気口34のそれぞれはスリット状であり、たとえば開口断面が円形の排気口(断面積は同じ)と比較して幅狭であるため、気体が排出される際の抵抗は大きい。
図8に示すように、排気口34が形成された位置L1における温調ガスの流れ方向を考える。温調ガスの導入方向(矢印F2方向)に対する、排気口34の角度θ1(試験槽14の内部から外部にガスが排出される方向、矢印F5方向)は、本実施形態では、90度である。
図2に示すように、試験槽14内には、この試験槽14内の空気の温度(槽内温度)を検出する温度センサ36が設けられる。温度センサ36で検出された温度データは、制御装置38に送られる、制御装置38は、この温度データに基いて、温調ガスヒータ30を制御する。
次に、本実施形態の作用を説明する。
材料試験装置12を用いて、試験片26の試験を行う場合、図2及び図3に示すように、試験槽14内において、力学負荷軸22A、22Bの保持部24により試験片26を保持する。
そして、温調ガスを温調ガスヒータ30により生成し、矢印F2で示すように、パイプ28内から試験槽14内に導入する。温調ガスの一部は、たとえば、矢印F3で示すように試験片26の周囲(近傍)を流れる。そして、試験片26が所定の温度(目標温度T0)となる。この状態で、力学負荷軸22A、22Bにより、試験片26に力学負荷を作用させる。試験槽14内のガスは、排気口34から排出される。
本実施形態では、図2及び図3から分かるように、試験槽14内において、力学負荷軸22A、22B(負荷部材20)の保持部24側の一部が試験槽14の内部に収容されているが、他の部分(保持部24の反対側の部分)は、試験槽14の外部に位置している。力学負荷軸22A、22Bの全体を試験槽内に収容する構造と比較して、試験槽14が小さい。このため、短時間で効率的に、試験片26を加熱あるいは冷却できる。
第一施形態では、図2に示すように、温度センサ36で検出された槽内温度に基いて、制御装置38が、温調ガスヒータ30を制御する。
ここで、図9には、第一実施形態の材料試験装置12における、槽内温度と試験片26の温度の時間変化が示されている。また、図10には、第一比較例の材料試験装置における。試験槽内の温度と試験片の温度の時間変化が示されている。第一比較例の材料試験装置は、恒温槽内に負荷部材(第一実施形態の力学負荷軸に相当)の全体が収容された構造であり、さらに、恒温槽内には、内部の温度を調整するための加熱機器、冷却機器、及び、空気を循環させるファンが設けられている。第一比較例の材料試験装置の恒温槽と比較して、第一実施形態の材料試験装置12の試験槽14は小型であり、熱容量も小さい。
図9と図10の比較から分かるように、第一比較例の材料試験装置では、槽内温度の上昇が遅いため、槽内温度が目標温度T0に達するのに、長い時間を要している。試験片の温度の変化は、槽内温度の温度変化よりも遅れるため、試験片が目標温度T0に達するには、さらに長い時間を要している。
これに対し、第一実施形態の材料試験装置12では、第一比較例の材料試験装置よりも槽内温度の応答性が良いため、早く目標温度T0に到達している。また、第一実施形態の材料試験装置12では、槽内温度の温度変化が早い分、試験片26の温度変化も早いため、第一比較例の材料試験装置よりも短時間で、目標温度T0に到達している。特に、材料試験装置12においては、力学負荷軸22A、22Bの熱容量は、試験片26の熱容量より大きいが、このような材料試験装置12においても、試験片26の温度を迅速に目標温度に到達させることができる。
しかも、本実施形態の材料試験装置12では、試験槽14の内部に温調ガスを導入する構造であり、試験槽14内に加熱機器や冷却機器を配置する必要がない。すなわち、本実施形態の材料試験装置12では、試験槽14内に加熱機器や冷却機器を配置した構造と比較して試験槽14の内部の熱容量が小さいので、試験片26を迅速に加熱あるいは冷却できる。
このように、本実施形態の材料試験装置12では、試験槽14自体が小型化されること、及び試験槽14内の熱容量が小さいこと、の相乗的な作用により、試験片26の迅速な加熱あるいは冷却が可能である。
加えて、本実施形態の材料試験装置12では、試験槽14の外部から温調ガスを導入し、力学負荷軸22A、22Bと比較して熱容量が小さい試験片26に集中して熱を作用させる。すなわち、力学負荷軸22A、22Bの全体まで含めて加熱あるいは冷却する(目標温度にする)必要がない。このように、試験片26を集中して加熱あるいは冷却するので、試験片26を迅速に加熱あるいは冷却できる。
本実施形態では、図7から分かるように、パイプ28のノズル32の向きは、試験片26と、試験槽14の内面との間に向かう向きである。これにより、パイプ28内の温調ガスが、図4に矢印F2及びF3で示すように試験片26と試験槽14の内面との間に導入され、試験片26を囲む温調ガスの流れが生成される。したがって、試験片を高周波で局所的に加熱する構造と比較して、試験片26の温度ムラを少なくし、温度の均一化を図ることができる。
なお、このように、温調ガスを試験片26と試験槽14の内面との間に導入する構造は、上記した導入部材、すなわち、パイプ28と、このパイプ28に形成されたノズル32を有する構造に限定されない。たとえば、試験槽14の槽壁を複数のチューブが貫通し、チューブのそれぞれの先端のノズルが、試験片26と試験槽14の内面との間に向かう構造でもよい。
上記した第一実施形態のように、パイプ28にノズル32を形成した構造では、ノズル32をパイプ28に形成する簡単な構造で、導入部材を構成できる。
そして、パイプ28に形成したノズル32を、試験片26と試験槽14の内面との間に向かうようにする簡単な構造で、温調ガスを、試験片26と試験槽14の内面との間に導入できる。
なお、1本のパイプ28につき1つのノズル32を形成しても、温調ガスを、試験片26と試験槽14の内面との間に導入することは可能である。上記した第一実施形態のように、複数のノズル32が形成された構造では、複数のノズル32から温調ガスを試験槽14内に導入するので、試験槽14内の温度ムラを抑制する効果が高く、試験片26の温度の均一化を図ることができる。
パイプ28は力学負荷軸22A、22B(試験片26)と平行であるので、力学負荷軸22A、22Bの軸方向に沿って温調ガスを試験槽14内に導入できる。これにより、試験槽14内の温度ムラを少なくして、試験片26の広い範囲で温度の均一化を図ることができる。
第一実施形態の材料試験装置12では、排気口34が、パイプ28の排気口34からの温調ガスの導入方向(矢印F2方向)で見て、図3に示すようにパイプ28(導入部材)を囲んでいる。したがって、ノズル32から試験槽14内に導入され、排気口34に向かう温調ガスが特定の方向に流れることを抑制でき、試験槽14内に温調ガスを効果的に行き渡らせることができる。そしてこれにより、槽内温度の均一化を図り、さらには、試験片26の温度の均一化を図ることができる。
排気口34は、第一実施形態ではスリット状、すなわち細長い形状であり、このような形状の排気口34が、試験槽14を取り囲むように、上部14U、下部14S、前部14Z及び後部14Kに形成されている。したがって、試験槽14の内側から外側へ排出されるガスの偏りを少なくし、試験槽14の全体で排出量の均一化を図ることができる。これにより、試験槽14内で試験片26の周囲を温調ガスが均一可されて循環した後、試験槽14の外部に排出される。
また、排気口34はスリット状であることから、ガスが排気口34を流れる際の抵抗は、たとえば断面が円形の開口と比較して大きい。
ガスの流れの抵抗が小さい排気口が形成されていると、試験槽14の外部の空気が、排気口34を通じて試験槽14の内部に流入するおそれがある。また、ノズル32から導入された温調ガスの多くが、試験片26の周囲を循環する前に排気口から排出されてしまう事態が想定される。
これに対し、第一実施形態では、試験槽14の外部から内部への空気の流入が抑制される。さらに、排気口34を通じて試験槽14に外部へ温調ガスが流出する際に抵抗となり、温調ガスが排気口34内に温調ガスが入りづらくなる。これにより、試験槽14内で温調ガスが循環しやすい構造を実現している。このように、試験槽14内で温調ガスの循環を促進することで、試験片26の温度の均一化を図ることができる。
なお、排気口34の全体では、試験槽14内への温調ガスの導入時に、試験槽内に存在していたガスが排出されるのに十分な開口断面積を有している。したがって、ノズル32からの温調ガスの導入に大きな抵抗が生じることはなく、試験槽14内のガスは速やかに排気口34から試験槽14の外部へ排出される。
なお、このように、試験槽14からのガスの排出に所定の抵抗を生じさせて温調ガスの循環を促進することができれば、排気口34の形状は上記したスリット状に限定されない。たとえば、排気口が、それぞれは微小な開口断面積を有する孔(微小孔)の集合体であっても、試験槽14からのガスの排出に、これら微小孔によって所定の抵抗を生じさせることが可能である。
図8に示すように、第一実施形態では、温調ガスの導入方向(矢印F2方向)に対し、排気口34の角度θ1(ガスの排出方向、矢印F5方向)は90度である。ここで、図11には、第二比較例として、この角度θ1が鋭角の構造が示されている。第二比較例では、排気口34内でのガスの流れ方向(矢印F5方向)が、温調ガスの流れ方向(矢印F2方向)に沿っている。すなわち、ノズル32から噴出された温調ガスが、排気口34内に直接的に入りやすい。
これに対し、排気口34の角度θ1を90度にすれば、第二比較例の構造よりも、ノズル32から噴出された温調ガスが直接的には排気口34内に入りづらいので、試験槽14内での温調ガスの循環を促進でき、試験片26の温度の均一化を図ることができる。
なお、第一実施形態の材料試験装置12において、このようにノズル32から噴出された温調ガスを直接的に排気口34内に入ることを抑制するには、図12に示すように、排気口34の角度θ1が鈍角の構造であってもよい。すなわち、排気口34の角度θ1は、90度以上180度以下の範囲であればよい。たとえば、試験槽14の左側部14Hにおいて、壁面の法線方向に排気口を形成すれば、この排気口の角度θ1は180度である。
次に、第二実施形態について説明する。第二実施形態において、第一実施形態と同様の要素、部材等については、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
図13に示すように、第二実施形態の材料試験装置42では、試験槽14内で、第一実施形態の温度センサ36に代えて、試験片26の温度を直接検出する温度センサ46が設けられる。温度センサ46で検出された温度データは、制御装置38に送られる。制御装置38は、この温度データに基いて、温調ガスヒータ30を制御する。
このように、第二実施形態では、温度センサ36により、試験片26の温度を直接検出し、この検出結果に基いて、制御装置38が温調ガスヒータ30を制御する構成である。
図14には、第二実施形態における槽内温度と試験片26の温度の時間変化が示されている。上記したように、本実施形態では試験槽14の容積が小さいので、槽内温度の応答性が早く、迅速に(短時間で)槽内温度を変化させることができる。
特に、槽内温度の応答性が低い場合は、槽内温度の過度の上昇(いわゆる「オーバーシュート」)を回避するために、試験片の温度が所定の目標温度T0に達する前段階で槽内温度の上昇を緩やかにすることがある。これに対し、第二実施形態では、槽内温度を一時的に目標温度T0よりも高くした後、速やかに低下させることで、試験片26の温度変化の度合い(グラフ上での曲線の傾き)を目標温度T0付近まで維持する。これにより、試験片26の温度をさらに短時間で、目標温度T0に到達させることができる。
次に、第三実施形態について説明する。第三実施形態において、第一実施形態と同様の要素、部材等については、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
図15〜図17に示すように、第三実施形態の材料試験装置52では、被覆部材の一例としての熱伝導体54を有する。熱伝導体54は、力学負荷軸22A、22Bよりも熱伝導率が高い(たとえば100W/m・k以上)の材料で形成されており、力学負荷軸22A、22Bの外周部分を覆っている。
第三実施形態では、このように力学負荷軸22A、22Bの外周部分を熱伝導体54で覆っており、試験槽14内の温調ガスの熱が熱伝導体54に作用すると、熱伝導体54のより、力学負荷軸22A、22Bの外周部分に伝熱される。この熱伝導体54は、力学負荷軸22A、22Bよりも熱伝導率が高いので、熱伝導体54で力学負荷軸22A、22Bの外周部分を覆わない構造と比較して、力学負荷軸22A、22Bの外周部分の温度の均一化を図ることができる。これにより、力学負荷軸22A、22Bで力学負荷を試験片26に作用させたときの力学負荷軸22A、22Bの曲げ変形を抑制することができるので、試験片26に対する材料試験の信頼性や精度が高くなる。
次に、第四実施形態について説明する。第四実施形態において、第一実施形態と同様の要素、部材等については、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
図18に示すように、第四実施形態の材料試験装置62では、試験槽64が上部64U、下部64S、左側部64H、右側部64M、前部(図示省略)及び後部(図示省略)を有する。そして、第一実施形態の材料試験装置12と比較して、試験槽64の上部64Uの下面が、力学負荷軸22Aの保持部24の近傍に位置し、試験槽64の下部64Sの上面が、力学負荷軸22Bの保持部24の近傍に位置している。したがって、第四実施形態の材料試験装置62では、第一実施形態の材料試験装置12の試験槽14と比較して、試験槽64の上下寸法が短く、小型化されている。試験槽64の内容積が小さいので、試験槽64の内部を所望の温度にするための時間が短くて済む。
そして、力学負荷軸22A、22Bの保持部24側のごく一部が試験槽64内に収容されているが、他の大部分(保持部24の反対側の部分)は、試験槽64の外部に位置している。したがって、力学負荷軸22A、22Bの多くを試験槽内に収容する構造と比較して、力学負荷軸22A、22Bに移動する熱量が少ないので、より短時間で効率的に試験片26を加熱あるいは冷却できる。
なお、第四実施形態において、図18に示す例では、第一実施形態と同様に、温度センサ36で槽内温度を検出する構成を挙げているが、第二実施形態や第三実施形態のように、試験片26の温度を検出してもよい。
第四実施形態において、上部64U及び下部64Sの間隔をさらに短くし、実質的に保持部24の一部又は全部が試験槽64の外部に位置する構造としてもよい。
次に、第五実施形態について説明する。第五実施形態において、第一実施形態〜第四実施形態と同様の要素、部材等については、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
図19に示すように、第五実施形態の材料試験装置72では、試験槽64を有する。試験槽74は、第四実施形態と同様に、第一実施形態の試験槽14よりも上下寸法が短い形状であり、小型化されている。
図20〜図22に示すように、第五実施形態に係る試験槽64の内部には、流路壁76が設けられている。流路壁76は、ノズル32(吹付部材)から試験片26の周囲を経て排気口34に至る温調ガスの流路が、試験槽64の容積より小さくなるように設けられている。
具体的には、金属ケース19における右側部分(右側部64Mに近い部分)が、力学負荷軸22A、22B及び試験片26の近傍で力学負荷軸22A、22B及び試験片26に対向する対向壁76Aを形成している。そして、前部分及び後部分(前部64Z及び後部64Kに近い部分)が、対向壁76Aから傾斜する傾斜壁76B、76Cを構成している。
図21及び図22に示すように、後側の傾斜壁76Cは、前側の傾斜壁76Cよりもパイプ28に近い。換言すれば、傾斜壁76Cは、ノズル32から噴出した温調ガスの流れ方向(矢印F6方向)の上流側にある。そして、傾斜壁76Cは、後部64Kに近い位置では、温調ガスの実質的な流路幅を試験片26に接近するに従って漸減させている。
これに対し、前側の傾斜壁76Bは、後側の傾斜壁76Cよりもノズル32から遠く、ノズル32から噴出した温調ガスの流れ方向(矢印F6方向)の下流側にある。そして、傾斜壁76Bは、前部64Zに近い位置では、試験片26の近傍から排気口34に向かう温調ガスの流れ方向で、温調ガスの実質的な流路幅を排気口34に向かって漸増させている。
対向壁76Aは、ノズル32から噴出した温調ガスの流れ方向の中流位置にある。対向壁76Aの位置では、温調ガスの流路幅が、傾斜壁76B、76Cの位置よりも狭い部分を構成している。
第五実施形態において、流路壁76は、このように対向壁76Aと傾斜壁76B、74Cとを有しており、この流路壁76は、金属ケース19の一部により構成される(金属ケース19が流路壁76の一部を兼ねている)。
第五実施形態の材料試験装置72では、このような流路壁76を有しているので、ノズル32から試験片26の周囲を経て排気口34に至る温調ガスの流れ(矢印F6で示す)が、試験片26の周囲に沿うように案内される。
図20〜図21においては、流路壁76が形成されていない場合の、試験槽64の内面位置を二点鎖線79で示している。この二点鎖線79で示す範囲の体積(容積)と比較して、第五実施形態の材料試験装置72では、実質的な温調ガスの流路の体積(容積)が小さい。
このように、第五実施形態の材料試験装置72では、試験槽64内の実質的な容積を小さくしていると言える。これにより、試験片26の周囲を流れる温調ガスの流速が速くなり、単位時間当たりの流量が増加する。このため、より迅速に試験片26を加熱及び冷却できる。
また、第五実施形態の材料試験装置72では、試験片26を加熱及び冷却する効率が高い。このため、流路壁76を有さない構造材料試験装置と同じ加熱・冷却速度を得るための温調ガスの流量を減らすことも可能である。
次に、第六実施形態について説明する。第六実施形態において、第一実施形態〜第五実施形態と同様の要素、部材等については、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
図23〜図25に示すように、第六実施形態の材料試験装置112の試験槽114は、第四実施形態及び第五実施形態の試験槽64と同様に、第一実施形態の材料試験装置12の試験槽14と比較して、試験槽114の上下寸法が短く、小型化されている。試験槽114の内容積が小さいので、試験槽114の内部を所望の温度にするための時間が短くて済む。
第六実施形態の試験槽114では、パイプ28は複数本(図23及び図24に示す例では2本)である。そして、温調ガスヒータ30には、温調ガスが流れ出る合流管31が接続されており、合流管31から、2本のパイプ28が分岐する。すなわち、2本のパイプ28で温調ガスヒータ30が共用されている。
図28A及び図28Bに示すように、第六実施形態のパイプ28においても、長手方向に沿って一定間隔をあけて、複数のノズル32が形成されている。パイプ28内の温調ガスは、ノズル32を通って試験槽114内に導入される。ノズル32が形成されたパイプ28は、本発明の吹付部材の一例である。
図26及び図29に示すように、第六実施形態において、ノズル32の向きは、試験片26と対向する向きである。換言すれば、矢印F2で示すように、パイプ28内の温調ガスがノズル32から吹出されると、試験片26に吹付けられるように、ノズル32の向きが設定されている。特に第六実施形態では、試験片26の中心CTの位置に温調ガスが向かうように、ノズル32が試験片26と対向している。ノズル32から吹出される温調ガスの中心線(流れ中心線FC−1)は、試験片26の中心CTに向かう。したがって、試験片26が存在しない場合を想定すると、中心CTの位置が、2つの温調ガスの衝突点である。
図24、図26及び図29に示すように、第六実施形態では、2本のパイプ28は、試験片26を中心として対称の位置である。換言すれば、2本のパイプ28は、試験片26の周囲において、中心角θ2を180度として分散配置されている。
このように、パイプ28を、試験片26を中心として対称に配置したことで、パイプ28に形成された複数のノズル32も、試験片26を中心として対称に位置している。換言すれば、複数のノズル32は、パイプ28ごとに、試験片26の周囲において中心角180度で分散配置されている。
また、第六実施形態では、図24及び図26に示すように、パイプ28が試験槽114の奥行方向では中央で、且つ左右方向では、右側部114M又は左側部114Hに近い位置に配置されている。
第六実施形態において、温調ガスの流速を均一化する観点から、たとえばパイプ28の内径が4mmの場合であれば、ノズル32の直径は2mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましい。
第六実施形態において、パイプ28の内径はノズル32の直径の2倍以上が好ましく、4倍以上がより好ましい。これは、パイプ内径/ノズル直径の比が大きいほど、ノズル32のそれぞれから流出する温調ガスの流速の均一化を図ることができるからである。
第六実施形態では、上記したように、ノズル32から吹出される温調ガスの流れの中心線(流れ中心線FC−1)は、試験片26の中心CTに向かう。これにより、試験片26の中心CTに向かって温調ガスが当たるので、試験片26の周囲では、試験片26の近傍を温ガスが流れる。そして、温調ガスは、矢印F4で示すように試験片26の近傍から離れ、試験槽14の内面に向かう。試験片26の周囲に分散して複数本(2本)のパイプ28が位置し、これらのパイプ28にノズル32が形成されているので、ノズル32も試験片26の周囲に分散して配置されている。このように、複数のノズル32が試験片26の周囲に分散して配置されることで、試験片26を囲んで、温調ガスの流れが生じる構造が実現されている。
図23、図25〜図27に示すように、第六実施形態では、排気口34は、試験槽114の上部114U、下部114S、前部114Z及び後部114Kにおいて、左側部114Hに近い位置及び右側部114Mに近い位置に形成されている。
図25に示すように、排気口34は、パイプ28の排気口34から試験槽114への温調ガスの導入方向(図2の矢印F2方向)で見て、パイプ28(吹付部材)を囲んでいる。
複数の排気口34は、第一実施形態と同様に、試験槽114内へ温調ガスが導入されると、すでに試験槽114内に存在していたガスが排出されるのに十分な開口断面積を全体として有している。しかし、排気口34のそれぞれはスリット状であり、たとえば同一の開口断面で、開口断面形状が円形の排気口と比較して幅狭であるため、気体が排出される際の抵抗は大きい。
図30に示すように、試験槽114を水平方向の断面で見た場合、排気口34のそれぞれに対し、複数のノズル32のいずれか一方が、排気口34の近傍に位置する。たとえば、図4において左側に現れる排気口34Hに対しては、ノズル32Hが相対的に近くに位置しており、右側に現れる排気口34Mに対しては、ノズル32Mが相対的に近くに位置している。
ここで、排気口34と、その近傍のノズル32(たとえば図30では排気口34Hとノズル32Hを示している)とを考える。ノズル32からの温調ガスの吹付方向(矢印F2方向)に対し、排気口34の角度θ1(試験槽114の内部から外部にガスが排出される方向、矢印F5方向)は、本実施形態では90度である。
なお、試験槽114の上部114U及び下部114Sにも排気口34が形成される。たとえば、上部114Uの排気口34については、相対的に近くにあるパイプ28において最も上にあるノズル32が「近傍」に位置するノズルであると言える。同様に、下部114Sの排気口34については、相対的に近くにあるパイプ28において最も下にあるノズルが「近傍」に位置するノズルであると言える。
図24に示すように、試験槽114内には、試験片26の温度を検出する温度センサ36が設けられる。温度センサ36で検出された温度データは、制御装置38に送られる、制御装置38は、この温度データに基いて、温調ガスヒータ30を制御する。
このような構成とされた第六実施形態の材料試験装置112においても、試験片26の試験を行う場合、図24に示すように、試験槽114内において、力学負荷軸22A、22Bの保持部24により試験片26を保持する。
そして、温調ガスヒータ30により温調ガスを生成し、矢印F2で示すように、パイプ28内から試験槽114内に導入する。
第六実施形態では、パイプ28のノズル32が試験片26と対向しており、ノズル32からの温調ガスが、試験片26に直接的に吹付けられる。このため、温調ガスが、試験片26に直接的に吹付けられない構造と比較して、試験片26の温度を迅速に変化させることができる。温調ガスは、試験片26に吹付けられた後、試験片26を囲む流れが生じる。なお、試験片26を保持部24に保持していない状態では、ノズル32からの温調ガスが、試験片26の中心CTの位置で衝突するため、中心CTは温調ガスの衝突点でもある。
その後、試験槽114内のガスは、排気口34から排出される。
第六実施形態においても、試験槽114内で、力学負荷軸22A、22B(負荷部材20)の保持部24側の一部が試験槽114の内部に収容されているが、他の部分(保持部24の反対側の部分)は試験槽114の外部に位置している。力学負荷軸22A、22Bの全体を試験槽内に収容する構造と比較して、試験槽114が小さい。このため、短時間で効率的に、試験片26を加熱あるいは冷却できる。
第六施形態では、図2に示すように、温度センサ36で検出された試験片26の温度に基いて、制御装置38が、温調ガスヒータ30を制御する。
第六実施形態の材料試験装置112では、試験槽114の内部に温調ガスを導入する構造であり、試験槽114内に加熱機器や冷却機器を配置する必要がない。すなわち、第六実施形態の材料試験装置112では、試験槽114内に加熱機器や冷却機器を配置した構造と比較して試験槽114の内部の熱容量が小さいので、試験片26を迅速に加熱あるいは冷却できる。
このように、第六実施形態の材料試験装置112では、試験片26に直接的に温調ガスを吹き付けるだけでなく、試験槽114自体の小型化や、試験槽114内の熱容量が小さいこと、の相乗的な作用により、試験片26の迅速な加熱あるいは冷却が可能である。
加えて、第六実施形態の材料試験装置112では、試験槽114の外部から温調ガスを導入し、力学負荷軸22A、22Bと比較して熱容量が小さい試験片26に集中して熱を作用させる。すなわち、力学負荷軸22A、22Bまで含めて加熱あるいは冷却する(目標温度にする)必要がない。このように、試験片26を集中して加熱あるいは冷却するので、試験片26を迅速に加熱あるいは冷却できる。
第六実施形態では、図24及び図26に示すように、複数本(2本)のパイプ28を有している。図29にも示すように、これら2本のパイプ28は、試験片26を中心として対称の位置で分散配置されている。ここで、たとえば、パイプが試験片26に対し狭い範囲に偏在して配置される構成を想定する。たとえば、1本のパイプのみが配置された構成や、複数のパイプが狭い範囲に集中して配置された構成等である。このようにパイプが偏在している構成では、水平方向の断面で見てノズルの位置も偏在するため、温調ガスが試験片に当たったときに、試験片の温度分布の対称性が低くなり、試験片に温度のムラが生じやすいという課題がある。このようにノズルの位置が偏在した例と比較して、第六実施形態の材料試験装置112では、温調ガスが当たったときの試験片26の温度分布の均一化及び対称化を図ることができる。たとえば、第六実施形態では、図29の断面における試験片26の温度分布は、図29において左右対称に近い分布となる。
そして、試験片26の温度分布の対称化を図ることで、試験片26の熱膨張差に起因する曲げ歪が生じにくくなるため、材料試験の信頼性を高めることができる。
なお、このように、温調ガスを試験片26に直接的に吹付ける構造は、上記したパイプ28と、このパイプ28に形成されたノズル32を有する構造に限定されない。たとえば、試験槽114の槽壁を複数のチューブが貫通し、チューブのそれぞれの先端のノズルが、試験片26と対向する構造でもよい。上記した第六実施形態のように、パイプ28にノズル32を形成した構造では、ノズル32をパイプ28に形成する簡単且つ熱容量が小さい構造で、吹付部材を構成できる。
そして、パイプ28に形成したノズル32を、試験片26に対向させる簡単な構造で、温調ガスを、試験片26に効率的に吹き付けることができる。
なお、1本のパイプ28あたり1つのノズル32を形成しても、試験片26の周囲に複数本のパイプ28を散配置すれば、温調ガスを試験片26に対し直接的に吹付けることは可能である。上記した第六実施形態のように、1本のパイプ28に複数のノズル32が形成された構造では、試験槽114の上下方向で複数のノズル32から温調ガスを試験槽114内に導入する構造が実現される。このため、試験槽114内の温度ムラを抑制する効果が高く、試験片26の温度の均一化を図ることができる。
パイプ28は力学負荷軸22A、22B(試験片26)と平行であるので、力学負荷軸22A、22Bの軸方向に沿って温調ガスを試験片26に吹付けることができる。これにより、試験片26に対してもその軸方向に沿って温調ガスを吹き付けるので、試験片26の軸方向での温度ムラを少なくして、試験片26の広い範囲で温度の均一化を図ることができる。
第六実施形態の材料試験装置112では、排気口34が、パイプ28の排気口34からの温調ガスの導入方向(矢印F2方向)で見て、図25に示すようにパイプ28(吹付部材)を囲んでいる。したがって、ノズル32から試験槽114内に導入され、排気口34に向かう温調ガスが特定の方向に流れることを抑制でき、試験槽114内に温調ガスを効果的に行き渡らせることができる。そしてこれにより、槽内温度の均一化を図り、さらには、試験片26の温度の均一化を図ることができる。
排気口34は、第六実施形態ではスリット状、すなわち細長い形状であり、このような形状の排気口34が、試験槽114を取り囲むように、上部114U、下部114S、前部114Z及び後部114Kに形成されている。したがって、試験槽114の内側から外側へ排出されるガスの偏りを少なくし、試験槽114の全体で排出量の均一化を図ることができる。これにより、試験槽114内で試験片26の周囲を温調ガスが均一されて循環した後、試験槽114の外部に排出される。
また、排気口34はスリット状であることから、ガスが排気口34を流れる際の抵抗は、同一の断面積でたとえば断面が円形の排気口と比較して大きい。
ここで、ガスの流れの抵抗が小さい排気口が形成されている構成を想定すると、試験槽114の外部の空気が、排気口34を通じて試験槽114の内部に流入するおそれがある。また、ノズル32から導入された温調ガスの多くが、試験片26の周囲を循環する前に排気口から排出されてしまう事態が想定される。
これに対し、第六実施形態では、試験槽114の外部から内部への空気の流入が抑制される。さらに、排気口34を通じて試験槽114に外部へ温調ガスが流出する際に抵抗となり、温調ガスが排気口34内に入りづらくなる。これにより、試験槽114内で温調ガスが循環しやすい構造を実現している。このように、試験槽114内で温調ガスの循環を促進することで、試験片26の温度の均一化を図ることができる。
複数の排気口34の全体では、試験槽114内への温調ガスの導入時に、試験槽114内に存在していたガスが排出されるのに十分な開口断面積を有している。したがって、ノズル32からの温調ガスの導入に大きな抵抗が生じることはなく、試験槽114内のガスは速やかに排気口34から試験槽14の外部へ排出される。
第六実施形態では、このように、試験槽114からのガスの排出に所定の抵抗を生じさせて温調ガスの循環を促進するので、試験槽114としては、小型化を図ることができる。試験槽114を小型化することで、試験槽114の熱容量が小さくなるので、さらに効率的に、試験片26を加熱あるいは冷却できる。
なお、試験槽114からのガスの排出に所定の抵抗を生じさせて温調ガスの循環を促進することができれば、排気口34の形状は上記したスリット状に限定されない。たとえば、排気口が、それぞれは微小な開口断面積を有する孔(微小孔)の集合体であっても、試験槽114からのガスの排出に、これら微小孔によって所定の抵抗を生じさせることが可能である。
図30に示すように、第六実施形態では、排気口34の角度θ1、すなわち、排気口34(試験槽14の内部)から外部にガスが排出される方向(矢印F5方向)は、近傍のノズル32からのガスの吹付方向(矢印F2方向)に対し90度である。
このため、排気口34が形成された位置L1において、矢印F3方向に流れる温調ガスが、排気口34からスムーズに試験槽14の外部に排出される。この矢印F3で示す方向の温調ガスは、排気口34の近傍のノズル32から吹出されて試験槽114内を循環し排気口34の位置で矢印F3方向に流れる温調ガスである。
このように、排気口34の角度θ1を90度にすれば、試験槽114内での温調ガスの循環を促進しつつ、スムーズにこの温調が図を排気口34から試験槽114の外部に排出でき、試験片26の温度の均一化を図ることができる。
なお、このように、試験槽114内を流れる温調ガスの循環を促進しつつ排気口34からスムーズに排出させるには、図31に示すように、排気口34の角度θ1が鈍角の構造であってもよい。すなわち、排気口34の角度θ1は、90度以上180度未満の範囲であればよい。
次に、第七実施形態について説明する。第七実施形態において、第一〜第六実施形態と同様の要素、部材等については、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
図32及び図33に示すように、第七実施形態の材料試験装置152では、被覆部材の一例としての熱伝導体154を有する。熱伝導体154は、力学負荷軸22A、22Bよりも熱伝導率が高い(たとえば100W/m・k以上)の材料で形成されており、力学負荷軸22A、22Bの外周部分を覆っている。
第七実施形態では、このように力学負荷軸22A、22Bの外周部分を熱伝導体154で覆っており、試験槽114内の温調ガスの熱が熱伝導体154に作用すると、熱伝導体154より、力学負荷軸22A、22Bの外周部分に伝熱される。この熱伝導体154は、力学負荷軸22A、22Bよりも熱伝導率が高いので、熱伝導体154で力学負荷軸22A、22Bの外周部分を覆わない構造と比較して、力学負荷軸22A、22Bの外周部分の温度の均一化を図ることができる。これにより、力学負荷軸22A、22Bで力学負荷を試験片26に作用させたときの力学負荷軸22A、22Bの曲げ変形を抑制することができるので、試験片26に対する材料試験の信頼性や精度が高くなる。
上記第六及び第七実施形態では、複数(2本)のパイプ28が試験片26を中心として点対称の位置(中心角θ2=180度)に配置され、ノズル32が試験片26に対応している例を挙げたが、パイプ28の配置やノズル32の向きは、これに限定されない。以下の第八〜第十の各実施形態において、上記とは異なるパイプ28の配置やノズル32の向きの例を示す。各実施形態において、材料試験装置の全体的構成は、第六実施形態又は第七実施形態と同様の構成を採り得るので、詳細な説明を省略する。
図34に示す第八実施形態では、2本のパイプ28のノズル32が試験片26と対向しているが、パイプ28は、試験片26を中心として非対称であり、ノズル32も非対称である。具体的には、図34における一方の中心角θ3は180度より小さく、他方の中心角θ3’(θ3’=360度−θ3)は180度より大きい。この構造であっても、ノズル32から噴出される温調ガスは、試験片26がない想定における衝突点CTで衝突すると言える。
このように、複数のノズル32が、試験片26を中心として厳密に対称でない配置であっても、複数のノズル32を試験片26の周囲に分散して配置すれば、複数のノズル32が偏在する構成と比較して、試験片26の温度の対称化を図ることができる。
図35に示す第九実施形態では、2本のパイプ28のノズル32が試験片26に対し対称の位置にあるが、ノズル32は試験片26の中心とは対向していない。換言すれば、ノズル32から吹出される温調ガスの中心線(流れ中心線FC−1)は、試験片26を横切るが、試験片26の中心CTとは交わらない。
このように、ノズル32が試験片26の中心に対し厳密には対向していなくても、ノズル32から吹出された温調ガスは広がりつつ流れるので、試験片26に達する。そして、複数のノズル32は、試験片26の周囲に分散して配置されているので、複数のノズル32が偏在する構成と比較して、試験片26の温度の対称化を図ることができる。
さらに、ノズル32から吹出される温調ガスの中心線(流れ中心線FC−1)が、試験片26を横切らない構造であっても、上記したように、ノズル32から吹出された温調ガスは広がりつつ流れることを利用し、試験片26に温調ガスを吹き付けることが可能な構成を実現可能である。
図36に示す第十実施形態では、パイプ28が3本である。それぞれのパイプ28にノズル32が形成されているので、図36に示す断面において、ノズル32は、試験片26に対し中心角θ4=120度で3つ現れる。この構造であっても、ノズル32から噴出される温調ガスは、試験片26がない想定における衝突点CTで衝突すると言える。
このように、パイプ28が3本以上であり、試験片26の軸方向と直交する断面でノズル32が3つ以上現れる構造でも、ノズル32を試験片26の周囲に分散配置すれば、複数のノズル32が偏在する構造と比較し、試験片26の温度の対称化を図ることができる。
試験片26の軸方向と直交する断面で現れるノズル32の数をnとすると、ノズル32を試験片26に対し対称(周方向で等間隔)に配置した場合、中心角は(360度/n)である。ノズル32が厳密には対称でない構成であっても、中心角が(360度/n)±2度程度の範囲となるようにノズル32を位置させれば、試験片26の温度の対称化を図る点で効果的である。
次に、第十一実施形態について説明する。第十一実施形態において、第一実施形態〜第十実施形態と同様の要素、部材等については、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
図37〜図40に示すように、第十一実施形態の材料試験装置212では、排気口34が、試験槽114の前部114Z及び後部114Kに形成されているが、右側部114M及び左側部114Hには形成されていない。
図41にも詳細に示すように、前部114Z及び後部114Kにおける排気口34の位置は、2つのノズル32M、32Hからそれぞれ噴出された温調ガスの2つの流れ(流れ中心線FC−1)の成す角θ2の二等分線HL−1の方向に形成されている。換言すれば、対向する2つの温調ガスが生じている場合の排気口34の位置は、2つの温調ガスの実質的な衝突点CTを通り、2つの温調ガスの流れ(流れ中心線FC−1)と直交する方向である。図41に示す例ではθ2=180度なので、排気口34は、中心CTを通り、流れ中心線FC−1と直交する線上に形成されている。
第十一実施形態の材料試験装置212では、排気口34をこのような位置に形成したので、ノズル32から噴出された温調ガスが、試験片26の周囲を流れる際の対称性が向上する。そして、試験片26の表面に沿ったスムーズな温調ガスの流れが生じやすくなる。このため、より均一かつ迅速に試験片26を加熱および冷却することが可能である。
なお、第十一実施形態において、「直交」とは、厳密に流れ中心線FC−1に対し直交する場合に限らず、実質的に、試験片26の周囲を温調ガスが流れる際の対称性を向上させる範囲であればよい。
また、図42に示す第十一実施形態の変形例の材料試験装置222のように、たとえば、排気口34が複数(図41の例では二股状)に分岐された分岐排気口34Dで構成されていても、分岐された複数の排気口を全体として見たときに、中心線FC−1に対し直交していればよい。
次に、第十二実施形態について説明する。第十二実施形態において、第一実施形態〜第十一実施形態と同様の要素、部材等については、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
また、第十二実施形態の材料試験装置242の全体的構成は、以下に説明する点を除き、第十一実施形態の材料試験装置212と実質的に同様の構成を採りうるので、図示を省略する。
特に、図43及び図44に示すように、第十二実施形態の材料試験装置242では、試験槽214に形成された排気口34の位置は、第十一実施形態の材料試験装置212と同様である。
また、第十二実施形態の材料試験装置242では、試験槽114の内部に、流路壁274が設けられている。
流路壁274は、第五実施形態と同様に、ノズル32(吹付部材)から試験片26の周囲を経て排気口34に至る温調ガスの流路が、試験槽114の容積より小さくなるように設けられている。
具体的には、金属ケース19における前側部分(全部114Zに近い部分)及び後側部分(後部114Kに近い部分)が、パイプ28の近傍から力学負荷軸22A、22B及び試験片26の近傍に延在する平行壁274Aを形成している。そして、この平行壁274Aの端部(力学負荷軸22A、22B及び試験片26に近い部分)からは、力学負荷軸22A、22B及び試験片26を円弧状に取り囲む円弧壁274Bが形成されている。なお、第十二実施形態における排気口34は、この円弧壁274Bから試験槽64の外面まで形成されているので、実質的に、第十一実施形態の排気口34(図40参照)と比較して、排気口34が試験槽64の内側に長くなっている形状であると言える。
第十二実施形態において、流路壁274は、平行壁274Aと円弧壁274Bとを有しており、この流路壁274は、金属ケース19の一部により構成される(金属ケース19が流路壁274の一部を兼ねている)。
第十二実施形態の材料試験装置242では、このような流路壁274を有しているので、ノズル32から試験片26の周囲を経て排気口34に至る温調ガスの流れ(矢印F7で示す)が、試験片26の周囲に沿うように案内される。
図43及び図44には、流路壁274が形成されていない場合の試験槽114の内面位置を二点鎖線279で示している。この二点鎖線279で示す範囲の体積(容積)と比較して、第十二実施形態の材料試験装置242では、実質的な温調ガスの流路の体積(容積)が小さい。
このように、第十二実施形態の材料試験装置242では、試験槽114内の実質的な容積を小さくすることで、試験片26の周囲を流れる温調ガスの流速が速くなり、単位時間当たりの流量が増加する。このため、より迅速に試験片26を加熱及び冷却できる。
また、第十二実施形態の材料試験装置242では、試験片26を加熱及び冷却する効率が高い。このため、流路壁274を有さない構造材料試験装置と同じ加熱・冷却速度を得るための温調ガスの流量を減らすことも可能である。
なお、たとえば、パイプ28が3本配置され、水平方向の断面でノズル32が3箇所に現れる例に、第十一実施形態及び第十二実施形態と同様に排気口の位置を設定した構造を適用することも可能である。すなわち、図45に示す第十三実施形態のように、温調ガスの3つの流れ(流れ中心線FC−1)の成す角(図45に示す例ではθ4=120度)の二等分線HL−1の方向に沿って排気口34を形成すればよい。
上記第六〜第十実施形態では、ノズル32から吹出された温調ガスが、試験片26の長手方向(力学負荷軸22A、22Bの軸方向)に対し直交方向で試験片26に当たる例を挙げたが、試験片26に当たる温調ガスの方向はこれに限定されない。たとえば、試験片26に対し、斜め上方あるいは斜め下方から温調ガスが当たる構成でもよい。
以下に、本発明を、比較例と比較しつつ、実施例により、さらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例の具体的構造に限定されるものではない。
表1及び表2には、実施例1〜5及び比較例における、試験片及び試験槽(比較例の場合は恒温槽、以下、これらを総称するときは単に「槽」ということがある)の各種パラメータと、試験片の昇温時間、降温時間における判定が示されている。実施例1〜5は、第一実施形態の材料試験装置12を用いた例である。比較例は、表2から分かるように、槽内に、試験片26を加熱するためのヒータ及び冷却するためのファンを配置した構造であり、第一実施形態に係るパイプ28や排気口34は形成されていない。なお、実施例4では、試験槽14内に力学負荷軸22A、22Bが入り込まず、力学負荷軸22A,22Bの端面のみが試験槽14内に露出する程度に、試験槽14が小型化されている。したがって、表2に示すように、実施例4における力学負荷軸の熱容量はゼロである。
表1において、昇温時間は、25℃から200℃まで槽内温度が上昇するのに要する時間である。昇温時間の測定にあたっては、実施例1〜5では、温調ガスの熱量を最大にし、比較例では、ヒータの能力を最大にした。
図46には、試験片26の体積Vaと槽の内容積Vtpの比(体積比)と、槽内の昇温時間との関係が示されている。表1及び図46から、槽内の昇温時間は、実施例1〜5において、比較例よりも、十分に短いことが分かる。特に、たとえば、試験片26に対しスムーズに試験を行う観点から、1分以下が好ましく、さらに時間が短くなるほど、より好ましい。そして、体積比が1000以下では、体積比の増大に伴う昇温時間の増加の程度が緩やか(曲線が水平に近い)が、体積比が1000を超える辺りから、体積比の増加に伴い昇温時間の増加が急(曲線が立ち上がっている)である。
降温時間は、200℃から50℃まで槽内温度が降下するのに要する時間である。降温時間の測定にあたっては、実施例1〜5では、温調ガスを加熱するヒータの出力をゼロにし、比較例では、ヒータの出力をゼロにした。
図47には、試験片26の体積Vaと槽の内容積Vtpの比(体積比)と、槽内の降温時間との関係が示されている。表1及び図47から、槽内の降温時間は、実施例1〜5において、比較例よりも、十分に短いことが分かる。特に、たとえば、試験片26を降温して次の試験片26に交換する時間を短縮する観点から、10分以下が好ましく、5分以下であればより好ましく、3分以下であればさらに好ましい。
表1では、上記の観点から、昇温時間及び降温時間に関し、各実施例及び比較例を判定した。判定「E」は、昇温時間及び降温時間共に長く、改善の余地があることを示す。これに対し、判定「D」は、判定「E」よりも昇温時間及び降温時間が共に短く、実際に材料試験装置としての適用に問題がないことを示す。そして、判定「C」、「B」、「A」へと順に、昇温時間及び降温時間が共に短くなり、材料試験装置として好ましい結果が得られることを示す。
このように、試験片26の昇温時間及び降温時間をいずれも短くする観点から、体積比については、1000以下(表1の実施例5、判定C)が好ましく、600以下(表1の実施例1及び実施例2、判定B)がより好ましく、300以下(表1の実施例3及び実施例4、判定A)がさらに好ましい。ただし、体積比が実施例5のように大きくても、本発明の構成を採ることで、材料試験装置として実用可能な昇温時間及び降温時間を得られる。これに対し、比較例(表1の判定E)では、体積比は実施例5と同じであるが、槽内にヒータ及びファンを有する構造であり、昇温時間及び降温時間が共に長い。
表2には、試験片26の熱容量Caと槽内部の全体での熱容量Ctpの比(熱容量比)との関係が示されている。図48には、上記した体積比と、この熱容量比との関係が示されている。
この図48から、体積比が1000以下になると熱容量比の低下が顕著(250以下)になることがわかる。さらに、体積比が600以下、300以下になると、熱容量比の低下が顕著になる(150以下、75以下)。これは、体積比が小さくなると、力学負荷軸22A、22Bの熱容量も小さくなり、この力学負荷軸22A、22Bの熱容量低下の影響が大きく作用するためであると考えられる。これに伴い、体積比が小さくなるにつれて、昇温時間及び降温時間の短縮が顕著になる効果が得られる。