図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
本発明に係る実施形態は、複数の対象設備が協働して、一定の出力値を外部に出力するシステムにおける対象設備の劣化を評価する評価装置に関する。対象設備の稼動を停止させないために、対象設備の何れかが故障により停止した場合であってもすぐに代わりの対象設備を稼動できるように予備の対象設備を少なくとも1つ用意されている。すなわち、M(M≧3を満たす整数)台の対象設備のうちN(2≦N≦M−1を満たす整数)台が協働して、一定の出力値を出力する。
ところで、対象設備には、劣化により消費電力が増加するタイプと、劣化により消費電力が増加しない(変化しない、もしくは減少する)タイプとが含まれる。なお、いずれのタイプにおいて劣化により処理能力が低下する。対象設備の劣化により消費電力が増加するのは、性能の低下によって内部抵抗が増加することと等、供給されるエネルギーが本来目的の仕事に変換されないエネルギーとして消費されるため、エネルギーの消費が増大することが原因である。劣化により消費電力が増加しないのは、性能の低下により、仕事量が減ることで供給されるエネルギーが仕事へ変換される量が減ることが原因である。
劣化により消費電力が増加するタイプの対象設備としては、例えば斜板式アキシアルピストンポンプ、冷凍機、ベルトコンベアなどがある。また、劣化により消費電力が増加しない(変化しない、もしくは減少する)タイプの対象設備としては、例えばコンプレッサー、油圧ポンプに代表されるギアポンプ、水ポンプに代表される渦巻きポンプ、換気ファン、ターボファン、融雪ポンプなどがある。コンプレッサーの使用例としては、工場に圧縮空気を流すための圧縮空気発生用である。換気ファンの使用例として、例えばトンネル内の空気清浄度、酸素濃度を保つために複数のファンを必要に応じて運転台数を切り換えることが想定される。融雪ポンプの使用例として、道路の凍結を防止するために、複数の融雪ポンプを必要に応じて運転台数を切り換えて常時温水を道路に散布することが想定される。
以下では、劣化により消費電力が増加するタイプの対象設備を用いた第1の実施形態と、劣化により消費電力が増加しないタイプの対象設備を用いた第2の実施形態とについて説明する。
<第1の実施形態>
(稼動設備評価システムの構成)
図1は、第1の実施形態における稼動設備評価システムの一例を示す図である。図1に示されるように、稼動設備評価システム1は、複数の対象設備10と、複数の電力量計30と、評価装置100とを含む。上述したように、対象設備10は、劣化により消費電力が増加するタイプである。
評価装置100は、複数の電力量計30と接続され、互いに通信が可能である。なお、接続形態は、有線または無線を問わないが、ここでは有線としている。また、複数の電力量計30それぞれには、対象設備10が接続される。
対象設備10は、上述したように、例えば斜板式アキシアルピストンポンプ、冷凍機などである。電力量計30は、対象設備10の稼動により消費される消費電力量を計測し、計測した消費電力量を示す計測データを評価装置100に出力する。
第1の実施形態における稼動設備評価システム1においては、M(M≧3を満たす整数)台の対象設備10からN(2≦N≦M−1を満たす整数)台を選ぶすべての組合せのいずれかが稼動用の対象設備に設定され、残りの(M−N)台が予備用の対象設備として機能する。稼動設備評価システム1においては、稼動時間、稼動回数等の増加により、特に対象設備10に劣化が生じる。このため、M台の対象設備10からN台を選ぶすべての組合せのうち劣化後の対象設備を含まないものを稼動用の対象設備として適宣設定の変更が可能である。
稼動用の対象設備の設定変更は、対象設備の停止期間(メンテナンス期間)が対象となり、メンテナンス期間は、例えば2週間〜1ヶ月の周期である。メンテナンス期間においては、対象設備の稼動開始に備えた作業が行われる。具体的には、メンテナンス期間において、ユーザは、M台の対象設備10からN台を選ぶ組合せすべてを順に設定し、実際に稼動させる(テスト稼動)。そして、評価装置100は、テスト稼動において、設定された稼動用の対象設備に対応する電力量計30から計測データを収集する。評価装置100は、M台の対象設備10からN台を選ぶ組合せすべてについての計測データを基に、最小の消費電力で稼動できるN台の対象設備10の組合せを選択するとともに、劣化している対象設備10を特定し、メンテナンスが必要であることを通知する。
また、評価装置100は、メンテナンス期間以外の期間、つまり、メンテナンス期間において設定された最小電力で稼動可能なN台の対象設備の組合せにより協働して稼動する通常動作の期間において、対象設備10の異常を検知し、警報を通知する機能も有している。
(評価装置の構成)
図2は、第1の実施形態における評価装置の構成の一例を示すブロック図である。図2に示されるように、評価装置100は、制御部101と、制御部101が実行するプログラム等を記憶するための記憶部111と、データ通信制御部113と操作部115とを備える。
制御部101は、記憶部111と、データ通信制御部113とそれぞれ接続され、評価装置100全体を制御する。
データ通信制御部113は、複数の電力量計30それぞれから所定時間単位で生成される計測データを受信する。また、データ通信制御部113は、シリアル通信のためのシリアルインターフェース端子117を有する。データ通信制御部113は、制御部101からの指示に従って、シリアルインターフェース端子117に接続された外部の機器との間でデータを送受信する。
なお、シリアルインターフェース端子117には、フラッシュメモリを内蔵したメモリカードが接続可能である。制御部101は、データ通信制御部113を制御して、メモリカードから制御部101が実行するためのプログラムを読み出し、記憶部111に記憶することにより、プログラムを更新することが可能である。
制御部101は、計測データ取得部(データ取得手段)121と、最小電力判定データ生成部123と、劣化判定データ生成部(評価処理手段)127と、最小電力設備特定部125と、劣化設備特定部(評価処理手段)129と、閾値設定部131と、警報部133とを含む。
計測データ取得部121は、稼動用の対象設備に対応する電力量計30から所定の時間単位で計測データを取得する。計測データ取得部121は、メンテナンス期間か否かにかかわらず、電力量計30から取得された計測データを警報部133に出力する。また、計測データ取得部121は、メンテナンス期間において、電力量計30に対応する対象設備10の装置識別情報と電力量計30から入力された計測データで示される消費電力量とを含む消費電力量データを生成する。計測データ取得部121は、稼動用の対象設備すべての組合せについて生成された所定の計測期間における消費電力量データを記憶部111に記憶する。なお、所定時間単位とは、例えば、最短10分から最長60分単位である。
図3は、消費電力量データの一例を示す図である。ここでは、4台の対象設備10から2台を選ぶ組合せすべてを稼動用の対象設備に設定することにより記憶部111に記憶された消費電力量データを例に説明する。図3に示されるように、消費電力量データ141は、稼動用の対象設備すべての組合せごとの消費電力レコードを含む。消費電力レコードは、装置識別情報の項目と、消費電力量の項目と、日時の項目とを含む。
上述したように、メンテナンス期間において、ユーザは、M台の対象設備10からN台を選ぶ組合せすべてを順に設定し、実際に稼動させる(テスト稼動)。そのため、メンテナンス期間において、計測データ取得部121は、N台の対象設備の組合せすべてについて、消費電力量データを生成し記憶部111に記憶することとなる。
装置識別情報の項目は、第1装置識別情報の項目と第2装置識別情報の項目とを含み、稼動用の対象設備2台それぞれの装置識別情報が設定される。ここでは、対象設備10に割り当てられた装置番号を装置識別情報としている。消費電力量の項目は、第1装置識別情報の項目に対応する第1消費電力量の項目と、第2装置識別情報の項目に対応する第2消費電力量の項目とを含み、稼動用の対象設備2台それぞれに対応する2台の電力量計30で計測された消費電力量が設定される。日時の項目には、消費電力量の計測日時が所定時間単位ごとに設定され、消費電力量の項目には、日時の項目に設定されている日時ごとに、所定時間単位ごとの消費電力量が設定される。
このように、N台(図4では2台)の対象設備10の組合せごとの消費電力レコードは、当該組合せで稼動される対象設備10を識別する装置識別情報と、当該組合せで稼動したときの所定時間単位ごとに計測された消費電力量および計測日時とを含んでいる。
最小電力判定データ生成部123は、ユーザが操作部115に入力する最小電力特定指示に従って、最小の電力で稼動するN台の対象設備10の組合せを判定するための最小電力判定データを、記憶部111に記憶された消費電力量データ141に基づいて生成する。最小電力判定データ生成部123は、N台の対象設備10の組合せごとに、最小電力判定データを生成する。最小電力判定データは、対応する組合せにおいて稼動する対象設備N台それぞれの装置識別情報と、所定期間における、当該対象設備N台の積算消費電力量を合計した第1積算消費電力量とを含む。ここでは、最小電力判定データ生成部123は、N台の対象設備の組合せごとの消費電力レコードから、最新の所定期間(例えば、3時間や1日)の消費電力量(第1消費電力量および第2消費電力量)を抽出し、それらを合計することで第1積算消費電力量を算出することができる。最小電力判定データ生成部123は、稼動用の対象設備すべての組合せについて生成された最小電力判定データを最小電力設備特定部125に出力する。
最小電力設備特定部125は、最小電力判定データ生成部123により生成されたすべての最小電力判定データのうち第1積算消費電力量が最小のものを最小電力の組合せに対応する最小電力判定データとして特定する。最小電力設備特定部125は、最小電力と特定された最小電力判定データに含まれる装置識別情報を最小電力で稼動可能な設備の組合せとして記憶部111に記憶する。
劣化判定データ生成部127は、ユーザが操作部115に入力する劣化設備判定指示に従って、劣化後の対象設備を判定するための劣化判定データを、記憶部111に記憶された消費電力量データ141に基づいて生成する。劣化判定データ生成部127は、M台の対象設備10のそれぞれについて、劣化判定データを生成する。劣化判定データは、対応する対象設備10の装置識別情報と、所定期間における、当該対象設備10の積算消費電力量(以下、「第2積算消費電力量」という)とを含む。
まず、劣化判定データ生成部127は、稼動用の対象設備すべての組合せそれぞれを対象に、当該組合せで稼動された対象設備10の各々について、当該対象設備10の装置識別情報と、所定期間における当該対象設備10の積算消費電力量である第2積算消費電力量とを含む劣化判定データ候補を生成する。劣化判定データ生成部127は、N台の対象設備10の組合せごとの消費電力レコードから、最新の所定期間(例えば、3時間や1日)の第1消費電力量または第2消費電力量を抽出し、それらを合計することで第2積算消費電力量を算出することができる。ここでは、すべての組合せのそれぞれについて、当該組合せで稼動された対象設備10ごとに劣化判定データ候補を生成するため、M台の対象設備10からN台を選択する組合せ(MCN個)のN倍分の劣化判定データ候補が生成される。
劣化判定データ生成部127は、M台の対象設備10のそれぞれについて、(MCN×N)個の劣化判定データ候補の中から当該対象設備10を示す装置識別情報を含む劣化判定データ候補を抽出し、抽出した劣化判定データ候補の中で第2積算消費電力量が最小の候補を特定する。そして、劣化判定データ生成部127は、M台の対象設備10のそれぞれについて、第2積算消費電力量が最小として特定された劣化判定データ候補を劣化判定データとして採用し、第2積算消費電力量が最小として特定されなかった劣化判定データ候補を削除する。これにより、劣化判定データは、M台の対象設備10と同数生成される。
劣化判定データ生成部127は、最終的に残ったM個の劣化判定データ候補を劣化判定データとして劣化設備特定部129に出力する。
劣化設備特定部129は、劣化判定データ生成部127から入力される劣化判定データと記憶部111に記憶された閾値データ143とに基づいて、劣化後の設備を特定する。具体的には、劣化判定データから入力された劣化判定データのうち閾値データ143で示される閾値T1以上の第2積算消費電力量を含む劣化判定データで特定される対象設備10を劣化後の対象設備として特定し、そうでない対象設備10を劣化前の対象設備として特定する。劣化設備特定部129は、劣化後の対象設備を特定した場合、劣化判定データに含まれる対象設備10の装置識別情報を記憶部111に記憶する。
劣化設備特定部129は、メンテナンス要請情報の表示指示が操作部115に入力された場合、記憶部111からメンテナンス要請情報を読み出し、メンテナンス要請情報の出力処理を行う。なお、本明細書において、出力処理としては、例えば、図示しない表示部にメンテナンス要請情報を表示する処理、図示しないスピーカからメンテナンス要請情報で示される対象設備10を音声で通知する処理、外部の装置にメンテナンス要請情報を送信する処理などがある。
なお、劣化設備特定部129は、記憶部111に記憶された消費電力量データ141に基づいて生成されるグラフ(図4参照)と閾値データ143を、定期間隔または任意のタイミングで記憶部111に記憶してもよいし、外部に出力するようにしてもよい。
図4は、第1の実施形態における消費電力量データの一例をグラフで示す図である。グラフの縦軸は、消費電力量を示す。ここでは、No1〜No4の4台の対象設備10のうち2台を稼動用の対象設備として設定する場合を例に説明する。
組合せ1に示す棒グラフは、稼動用の対象設備No1とNo2の組合せに対応する。下部にNo1に対応する第2積算消費電力量が示され、上部にNo2に対応する第2積算消費電力量が示される。このため、下部と上部でNo1の対象設備10に対応する第2積算消費電力量とNo2の対象設備10に対応する第2積算消費電力量とを合計した第1積算消費電力量が示される。
組合せ2に示す棒グラフは、稼動用の対象設備No1とNo3の組合せに対応する。下部にNo1に対応する第2積算消費電力量が示され、上部にNo3に対応する第2積算消費電力量が示される。このため、下部と上部でNo1の対象設備10に対応する第2積算消費電力量とNo3の対象設備10に対応する第2積算消費電力量とを合計した第1積算消費電力量が示される。
組合せ3に示す棒グラフは、稼動用の対象設備No1とNo4の組合せに対応する。下部にNo1に対応する第2積算消費電力量が示され、上部にNo4に対応する第2積算消費電力量が示される。このため、下部と上部でNo1の対象設備10に対応する第2積算消費電力量とNo4の対象設備10に対応する第2積算消費電力量とを合計した第1積算消費電力量が示される。
組合せ4に示す棒グラフは、稼動用の対象設備No2とNo3の組合せに対応する。下部にNo3に対応する第2積算消費電力量が示され、上部にNo2に対応する第2積算消費電力量が示される。このため、下部と上部でNo2の対象設備10に対応する第2積算消費電力量とNo3の対象設備10に対応する第2積算消費電力量とを合計した第1積算消費電力量が示される。
組合せ5に示す棒グラフは、稼動用の対象設備No2とNo4の組合せに対応する。下部にNo2に対応する第2積算消費電力量が示され、上部にNo4に対応する計測期間における第2積算消費電力量が示される。このため、下部と上部でNo2の対象設備10に対応する第2積算消費電力量とNo4の対象設備10に対応する第2積算消費電力量とを合計した第1積算消費電力量が示される。
組合せ6に示す棒グラフは、稼動用の対象設備No3とNo4の組合せに対応する。下部にNo3に対応する第2積算消費電力量が示され、上部にNo4に対応する第2積算消費電力量が示される。このため、下部と上部でNo3の対象設備10に対応する第2積算消費電力量とNo4の対象設備10に対応する第2積算消費電力量とを合計した第1積算消費電力量が示される。
最小電力判定データは、4台の対象設備10のうち2台が稼動用の対象設備10として設定されるので、6つの組合せについて生成される。図4に示されるように、No2とNo3の対象設備10の組合せに対応するグラフは、他のグラフと比較して、第1積算消費電力量が小さい。このため、6つの組合せの最小電力判定データのうちNo2およびNo3の対象設備10に対応する最小電力判定データが最小電力で稼動可能な設備の組合せとして特定される。したがって、No2とNo3の対象設備10の組合せが最小電力で稼動することが可能な設備の組合せとして記憶部111に記憶される。
また、劣化判定データは、対象設備10が4台存在するので、同数生成される。具体的には、No1の対象設備10に対応する第2積算消費電力量は、図4の組合せ1,2,3において示され、このうち組合せ1に示される第2積算消費電力量が最小である。そのため、装置識別情報「No1」とNo1の対象設備10に対して算出された最小の第2積算消費電力量とを含む劣化判定データが生成される。
No2の対象設備10に対応する第2積算消費電力量は、図4の組合せ1,4,5において示され、このうち組合せ4に示される第2積算消費電力量が最小である。そのため、装置識別情報「No2」とNo2の対象設備10に対して算出された最小の第2積算消費電力量とを含む劣化判定データが生成される。
No3の対象設備10に対応する第2積算消費電力量は、図4の組合せ2,4,6において示され、このうち組合せ4に示される第2積算消費電力量が最小である。そのため、装置識別情報「No3」とNo3の対象設備10に対して算出された最小の第2積算消費電力量とを含む劣化判定データが生成される。
No4の対象設備10に対応する第2積算消費電力量は、図4の組合せ3,5,6において示され、このうち組合せ5に示される第2積算消費電力量が最小である。そのため、装置識別情報「No4」とNo4の対象設備10に対して算出された最小の第2積算消費電力量とを含む劣化判定データが生成される。
図4で示されるように、No.1の対象設備10は、いずれの組合せにおいても、第2積算消費電力量が大きい。これは、No.1の対象設備10自体が劣化しているためである。
一方、No.2の対象設備10の第2積算消費電力量は、No.3の対象設備10との組合せの際には小さいが、No.1の対象設備10との組合せの際には大きくなる。これは、組合せにおける相方の対象設備10の劣化に起因するためである。つまり、No.1の対象設備10が劣化し、No.1の対象設備10の出力が小さいため、それを補うように出力を高めるためにNo.2の対象設備10の第2積算消費電力量が大きくなる。また、No.3の対象設備10は劣化していないため、No.3との組合せの際には、No.2の対象設備10は出力を高める必要がなく、第2積算消費電力量は小さくなる。このように、劣化していない対象設備10の第2積算消費電力量は、組合せの相方となる対象設備10の劣化の程度によって変化することとなる。
そのため、上述したように、最小の第2積算消費電力量を含む劣化判定データ候補を劣化判定データとする。これにより、組合せの相方となる対象設備10の劣化の影響をなるべく受けていない第2積算消費電力量を含む劣化判定データを生成することとなる。その結果、劣化判定データに含まれる第2積算消費電力量は、対象設備10の本来の劣化の程度を示す値となり、劣化しているほど大きな値をとることとなる。
No1〜No4の対象設備10それぞれに対して生成された劣化判定データに対して、第2積算消費電力量と記憶部111に記憶された閾値データ143で示される閾値T1と比較される。そして、第2積算消費電力量が閾値T1以上である劣化判定データで特定される対象設備10が劣化後の対象設備として分類され、第2積算消費電力量が閾値T1未満である劣化判定データで特定される対象設備10が劣化前の対象設備として分類される。劣化後の対象設備として分類された対象設備10は、メンテナンスの必要がある設備として記憶部111に記憶される。
閾値設定部131は、ユーザの入力に応じて閾値データを生成し、記憶部111に閾値データ143を記憶することにより閾値を設定する。例えば、ユーザは、N台の新品の対象設備を稼動させた初期状態において、所定期間における各対象設備の積算消費電力量の平均値(または最大値)の1.1倍(10%増加させた値)を閾値データとして設定させる。もしくは、ユーザは、長期間の使用により劣化した対象設備と新品の対象設備との組合せでテスト稼動させ、そのときの劣化した対象設備の所定期間における積算消費電力量を閾値データとして設定してもよい。
警報部133は、予め定められた警報設定レベルと、計測データ取得部121により取得された、最新の所定期間における稼動用の対象設備N台の消費電力量の合計値とに基づいて、稼動用の対象設備の異常を警報するレベルに達したか否かを判断する。稼動用の対象設備N台の消費電力量の合計値が予め定められた警報設定レベルより大きいならば警報するが、そうでなければ警報しない。なお、所定期間は、例えば10分間や1時間である。また、警報の方法は、ブザー、表示灯、電子メールなどを利用すればよい。図1では、評価装置100と表示灯40とを接続することが示されている。
表示灯で警報する場合、警報するレベルに達したならば赤色を点灯し、そうでないならば緑色を点灯する。電子メールで警報する場合、警報するレベルに達したことを条件に、予め登録された対象設備を管理する設備管理装置に、例えば警報メッセージを含む電子メールを送信する。警報メッセージは、例えば、警報対象の稼動用設備が異常であることを示すメッセージである。
(最小電力の組合せを特定する処理の流れ)
図5は、最小電力設備特定処理の流れの一例を示すフローチャートである。最小電力設備特定処理は、制御部101が記憶部111に記憶された最小電力設備特定プログラムを実行することにより制御部101により実行される処理である。図5に示されるように、最小電力判定データ生成部123は、記憶部111に記憶された消費電力量データ141を読み出す(ステップS01)。
上述したように、本実施の形態においては、メンテナンス期間において、ユーザはM台の対象設備10からN台を選ぶ組合せすべてを順に設定する。そして、評価装置100は、設定された稼動用の対象設備に対応する電力量計30から計測データを収集する。このため、記憶部111が記憶する消費電力量データ141は、稼動用の対象設備N台すべての組合せについて消費電力レコードを含む。ここでは、4台の対象設備10のうち2台を稼動用の対象設備に設定する場合を例に説明する。
次のステップS02においては、最小電力判定データ生成部123は、ステップS01において読み出された消費電力量データ141から、1つの組合せに対応する消費電力レコードを選択し、処理をステップS03に進める。
ステップS03においては、最小電力判定データ生成部123は、ステップS02において選択された消費電力レコードの第1および第2装置識別情報の項目それぞれに設定された装置識別情報と、第1および第2消費電力量の項目それぞれに設定されたすべての消費電力量とを抽出し、処理をステップS04に進める。
ステップS04においては、最小電力判定データ生成部123は、ステップS03において抽出された消費電力量(第1消費電力量および第2消費電力量の項目で示される消費電力量)の中から、日時の項目を基に、最新の所定期間(例えば、10分や1時間)に計測された消費電力量を特定する。そして、特定した消費電力量を合計した第1積算消費電力量を算出し、処理をステップS05に進める。
ステップS05においては、最小電力判定データ生成部123は、ステップS03において抽出された装置識別情報と、ステップS04において算出された第1積算消費電力量とを含む最小電力判定データを生成し、処理をステップS06に進める。
ステップS06においては、最小電力判定データ生成部123は、未選択の組合せに対応する消費電力量レコードがあるか否かを判断する。未選択の消費電力量レコードがあるならば処理をステップS02に戻すが、そうでなければ処理をステップS07に進める。
ステップS07においては、最小電力設備特定部125は、ステップS05において生成された最小電力判定データのうち第1積算消費電力量が最小のデータを特定する。そして、特定した最小電力判定データに含まれる装置識別情報で示される2台の対象設備の組合せが最小電力の組合せであると判断し、最小電力設備特定処理を終了する。
なお、ステップS07においては、特定された最小電力判定データに含まれる装置識別情報を、最小電力で稼動することが可能な設備の組合せであることを示す最小電力特定情報に含めて記憶部111に記憶する。
(劣化設備特定処理の流れ)
図6は、第1の実施形態における劣化設備特定処理の流れの一例を示すフローチャートである。劣化設備特定処理は、制御部101が記憶部111に記憶された劣化設備特定プログラムを実行することにより制御部101により実行される処理である。図6に示されるように、劣化判定データ生成部127は、記憶部111に記憶された消費電力量データ141を読み出す(ステップS11)。
上述したように、本実施の形態においては、メンテナンス期間において、ユーザはM台の対象設備10からN台を選ぶ組合せすべてを順に設定する。そして、評価装置100は、設定された稼動用の対象設備に対応する電力量計30から計測データを収集する。このため、記憶部111が記憶する消費電力データ141は、稼動用の対象設備N台すべての組合せについて消費電力レコードを含む。ここでは、4台の対象設備10のうち2台を稼動用の対象設備に設定する場合を例に説明する。
次のステップS12においては、劣化判定データ生成部127は、ステップS11において読み出された消費電力量データ141から、1つの組合せに対応する消費電力レコードを選択し、処理をステップS13に進める。
次のステップS13においては、劣化判定データ生成部127は、第1消費電力量の項目に設定されていた消費電力量のうち、日時の項目を基に、最新の所定期間(例えば10分や1時間)に計測された消費電力量を特定する。そして、特定した消費電力量を合計した第2積算消費電力量と、第1装置識別情報の項目に設定されている装置識別情報とを含む劣化判定データ候補を生成する。同様に、第2消費電力量の項目に設定されていた消費電力量のうち、日時の項目を基に、最新の所定期間(例えば10分や1時間)に計測された消費電力量を特定する。そして、特定した消費電力量を合計した第2積算消費電力量と、第2装置識別情報の項目に設定されている装置識別情報とを含む劣化判定データ候補を生成する。このようにして、劣化判定データ生成部127は、1つの組合せに対応する消費電力レコードから、2個の劣化判定レコードを生成する。
次に未選択の組合せに対応する消費電力レコードがあるか否かを判断する(ステップS14)。未選択の消費電力レコードがあるならば処理をステップ12に戻すが、そうでなければ処理をステップS15に進める。
なお、ステップS12〜S13の処理は、ステップS14において全ての組合せの消費電力レコードが選択されるまで繰り返される。また、消費電力量データ141は、4台の対象設備10から2台を選択する組合せすべてについての消費電力レコードを含む。このため、12個の劣化判定データ候補が生成される。12個の劣化判定データ候補には、装置識別情報が重複する劣化判定データが含まれる。
次のステップS15において、劣化判定データ生成部127は、対象設備10ごとに、当該対象設備10を示す装置識別情報が含まれる劣化判定データ候補の中から、最小の第2積算消費電力量を示す劣化判定データ候補を劣化判定データとして決定する。これにより、対象設備10の台数と同数の4個の劣化判定データが生成される。
ステップS16においては、劣化設備特定部129は、第2積算消費電力量が小さい順に劣化判定データをソートする。そして、記憶部111に記憶された閾値データ143を読み出す(ステップS17)。
次のステップS18においては、劣化設備特定部129は、1つの劣化判定データを選択する。そして、選択された劣化判定データに含まれる第2積算消費電力量がステップS21において読み出された閾値データ143で示される閾値T1以上であるか否かを判断する(ステップS19)。第2積算消費電力量が閾値T1以上であるならば処理をステップS20に進めるが、そうでなければ処理をステップS21に進める。
ステップS20においては、劣化設備特定部129は、ステップS18において選択された劣化判定データに含まれる装置識別情報で特定される対象設備10を劣化後の対象設備として特定し、処理をステップS22に進める。
なお、ステップS20においては、劣化設備特定部129は、ステップS20において特定された対象設備10の装置識別情報を、メンテナンスを要請するメンテナンス要請情報に含めて記憶部111に記憶する。
ステップS21においては、劣化設備特定部129は、ステップS18において選択された劣化判定データに含まれる装置識別情報で特定される対象設備10を劣化前の対象設備として特定し、処理をステップS22に進める。
ステップS22においては、劣化設備特定部129は、次の劣化判定データがあるか否かを判断する。次の劣化判定データがあるならば処理をステップS18に戻すが、そうでなければ劣化設備特定処理を終了する。
なお、S16の処理でソートした順に装置識別情報をならべた情報を記憶部111に格納し、ユーザの要求に応じて、当該情報の出力処理を行ってもよい。これにより、劣化の程度に応じた順にソートされた装置識別情報を確認することができる。なお、上記の説明では、第2積算消費電力の小さい順のソートしたが大きい順にソートしてもよい。
(まとめ)
上述したように、メンテナンス期間において、ユーザは、4台の対象設備10のうち2台を選択する組合せすべてについて稼動用の対象設備を設定し、テスト稼動を実行させる。そのため、評価装置100は、全ての組合せについて、設定された稼動用の対象設備に対応する電力量計30から計測データを収集し、消費電力量データ141を記憶部111に格納する。
最小電力設備特定部125は、記憶部111に記憶された消費電力量データ141に基づいて生成された最小電力判定データのうち、最小の第1積算消費電力量を含む最小電力判定データを選択する。そして、最小電力設備特定部125は、選択した最小電力判定データに含まれる2つの装置識別情報で示される対象設備10の組合せが最小電力の組合せであると判断する。このとき、最小電力設備特定部125は、最小電力の組合せに属する対象設備10の装置識別情報を含む最小電力特定情報を記憶部111に記憶する。このため、ユーザは、記憶部111に記憶された最小電力特定情報を見ることにより、容易に最小電力で稼動可能な対象設備10の組合せを知ることができる。これにより、ユーザは最小電力特定情報で特定される対象設備10の組合せを稼動用の対象設備として稼動設備の停止日が来るごとに設定することで、省エネルギーで対象設備を稼動させることができる。
また、劣化判定データ生成部127は、記憶部111に記憶された消費電力量データ141に基づいて、対象設備10ごとに、当該対象設備10を含む組合せのそれぞれの稼動において所定期間での積算消費電力量(第2積算消費電力量)を含む劣化判定データ候補を生成する。そして、劣化判定データ生成部127は、対象設備10ごとに、生成した劣化判定データ候補の中から最小の第2積算消費電力量を含む候補を劣化判定データとして生成する。劣化設備特定部129は、対象設備10ごとに生成された劣化判定データで示される第2積算消費電力量が閾値データ143で示される閾値T1以上である場合に当該対象設備10が劣化後の対象設備として特定し、閾値T1未満の場合に当該対象設備10を劣化前の対象設備として特定する。そして、劣化後の対象設備として特定された対象設備10の装置識別情報を含むメンテナンス要請情報を記憶部111に記憶する。このため、記憶部111に記憶されたメンテナンス要請情報を見るユーザは、容易に劣化後の対象設備10、つまりメンテナンスすべき対象設備10を知ることができる。これにより、劣化した対象設備10が故障する前にメンテナンスすることができるので、対象設備10を最大限利用することができるとともに、メンテナンスの回数をできる限り少なくすることができる。これにより、メンテナンスの費用を低減することができる。
図7は、劣化の設備を特定することによる省エネの効果をグラフ化した図である。グラフの横軸は、初期状態(対象設備10が新品の状態)からの経過時間(日)を示す。グラフの縦軸は、消費電力量を示す。図7に示されるように、消費電力量は、経過時間が大きくなるにつれて、増加する。具体的には、消費電力量は、初期状態においてA(kW)であり、対象設備10が劣化と判定されるX日目におけるB(kW)まで増加し、対象設備10の故障時に該当するY日目にはC(kW)まで増加することを示している。ユーザが、故障時の対象設備停止による損失に加え、X日目に対象設備10をメンテナンスしたとすると、領域401に相当するエネルギーが省エネ効果として下記の式(1)のように計算することができる。
省エネ効果(kWh)=(Y−X)日×24時間×(B−A)kW・・・・・・(1)
図8は、最小電力の設備を特定することによる省エネ効果を示すデータの一部を示す図である。図8にしめされるように、No1とNo2の対象設備の組合せ、No1とNo3の対象設備の組合せ、No3とNo4の対象設備の組合せ、No2とNo3の対象設備の組合せそれぞれの稼動用の対象設備について、合計の消費電力量を示している。なお、図8では、最小電力となるNo2とNo3の対象設備の組合せの消費電力量を100としたときの値を示している。本実施形態によれば、最小電力となる組合せを選択することにより、省エネを実現できる。また、劣化後の対象設備10を適切なタイミングで早期に発見することができ、メンテナンスや交換などの処理を早期に行うことができる。そのため、できるだけ多くの組合せが図8に示すNo.2とNo.3の組合せのような消費電力の小さい組合せにすることができる。
<第2の実施形態>
第1の実施形態における稼動設備は、劣化により消費電力量が増加するタイプの対象設備10を備えるものであった。第2の実施形態における稼動設備は、劣化しても消費電力量が増大しないタイプの対象設備10Aを備えるものとした。劣化しても消費電力量が増大しないタイプの対象設備10Aは、上述したように、例えばコンプレッサー、油圧ポンプに代表されるギアポンプ、水ポンプに代表される渦巻きポンプ、換気ファン、ターボファン、融雪ポンプである。
(評価装置の構成)
図9は、第2の実施形態における評価装置の構成の一例を示すブロック図である。図9に示す評価装置100が備える制御部101Aが図2に示す評価装置100が備える制御部101と異なる点は、劣化判定データ生成部127が劣化判定データ生成部127Aに変更された点および劣化設備特定部129が劣化設備特定部129Aに変更された点である。その他の構成および機能は、制御部101と同じであるので、ここでは説明を繰り返さない。
劣化判定データ生成部127Aは、劣化判定データ生成部127と比較して、劣化判定データ候補の中で第2積算消費電力量が最大の候補を劣化判定データとして決定する点でのみ相違し、他の機能は劣化判定データ生成部127と同様である。このようにして、劣化判定データは、M台の対象設備10Aと同数生成される。
劣化設備特定部129Aは、劣化判定データ生成部127Aから入力される劣化判定データと記憶部111に記憶された閾値データ143Aとに基づいて、劣化後の設備を特定する。具体的には、劣化設備特定部129Aは、劣化判定データ生成部127Aから入力されたM個の劣化判定データのうちの最大の第2積算消費電力量を基準値とし、当該基準値との差が閾値データ143Aで示される閾値T2以上である第2積算消費電力量を含む劣化判定データで特定される対象設備10Aを劣化後の対象設備として特定する。
劣化設備特定部129Aは、メンテナンス要請情報の表示指示が操作部115に入力された場合、記憶部111からメンテナンス要請情報を読み出し、メンテナンス要請情報の出力処理を行う。なお、本明細書において、出力処理としては、例えば、図示しない表示部にメンテナンス要請情報を表示する処理、図示しないスピーカからメンテナンス要請情報で示される対象設備10Aを音声で通知する処理、外部の装置にメンテナンス要請情報を送信する処理などがある。
なお、劣化設備特定部129Aは、記憶部111に記憶された消費電力量データ141Aに基づいて生成されるグラフ(図10参照)と閾値データ143Aを、定期間隔または任意のタイミングで記憶部111に記憶するようにしてもよいし、外部に出力するようにしてもよい。
図10は、コンプレッサーを対象設備10としたときの消費電力量データの一例をグラフで示す図である。グラフの横軸は、計測期間を示す。グラフの縦軸は、所定時間単位ごとの消費電力量を示す。ここでは、3台の対象設備10Aのうち2台を稼動用の対象設備として設定する場合を例に説明する。
図10は、稼動用の対象設備すべての組合せのうち劣化後の対象設備を含む組合せに対して得られた結果を示す。線グラフ301が劣化していない対象設備に対応し、線グラフ303が劣化している対象設備に対応する。ただし、時刻20:00付近で線グラフ303に対応する3対象設備に対してメンテナンスが実行されている。
一方の対象設備10Aが劣化している状態の時刻12:00から時刻18:00までの部分における線グラフ301と線グラフ303とから、線グラフ303に対応する対象設備10Aが劣化し、消費電力量が減少していることがわかる。図10では、劣化している対象設備10A(線グラフ303に対応する設備)と劣化していない対象設備10A(線グラフ301に対応する設備)とでは消費電力量において約4%の差があることが結果として得られた。
一方、いずれも劣化していない状態の時刻22:00以降の線グラフ301と線グラフ303とから、2台の対象設備10Aに消費電力量の差がほとんどないことが確認される。
図10に示される例では、対象設備10Aは、劣化すると消費電力量が減少する。一方、劣化していない対象設備10Aは、組合せの相方の対象設備10Aの劣化の有無によらず、消費電力量が変化しない。
図11は、図10に示した、対象設備10Aがコンプレッサーであるときの、1つの対象設備10Aが劣化する前後における、各組合せの積算消費電力量を示す図であり、(a)が劣化前、(b)が劣化後を示している。なお、図11は、3台(No.5〜7)の対象設備10Aのうち2台を稼動用の対象設備として設定し、No.6が劣化する場合を示している。
図11(a)で示されるように、No.6の対象設備10Aの劣化前、つまり、全ての対象設備10Aが劣化していない状態では、各対象設備10Aの積算電力量はいずれの組合せでも同等となる。
一方、図11(b)で示されるように、No.6の対象設備10Aが劣化すると、当該No.6の対象設備10Aの第2積算消費電力量のみが減少し、残りの対象設備10Aについてはほとんど変化がない。
上述したように、劣化判定データは、対象設備10Aが3台存在するので、同数生成される。具体的には、装置識別情報と装置識別情報に対応する第2積算消費電力量とを含む劣化判定データが3つ生成される。なお、3個の劣化判定データそれぞれに含まれる第2積算消費電力量は、同一の装置識別情報で特定される対象設備10Aそれぞれに対して算出された第2積算消費電力量のうち最大値である。
そして、劣化設備特定部129Aは、3個の劣化判定データのうち最大の第2積算消費電力量を基準値とし、当該基準値と各劣化判定データの第2積算消費電力量との差を求める。
図11(a)で示されるように、全ての対象設備10Aが劣化していない場合、各対象設備10Aに対応する劣化判定データの第2積算消費電力量は略同等の値となる。そのため、全ての対象設備10Aにおいて、対応する劣化判定データの第2積算消費電力量と基準値との差は相対的に小さい値となる。
一方、図11(b)で示されるように、No.6の対象設備10Aが劣化している場合、基準値としては、No.5またはNo.7に対応する劣化判定データの第2積算消費電力量が設定される。そのため、No.6の対象設備10Aについては、対応する劣化判定データの第2積算消費電力量と基準値との差が相対的に大きな値となり、No.5、7の対象設備10Aについては、対応する劣化判定データの第2積算消費電力量と基準値との差が相対的に小さい値となる。
このように、劣化判定データの第2積算消費電力量と基準値との差は、劣化するにつれて増大する。そのため、この差と閾値データ143Aで示される閾値T2とを比較し、この差が閾値T2以上である劣化判定データで特定される対象設備10Aを劣化後の対象設備として分類し、この差が閾値T2未満である劣化判定データで特定される対象設備10Aを劣化前の対象設備として分類することができる。劣化後の対象設備として分類された対象設備10Aは、メンテナンスの必要がある設備として記憶部111に記憶される。
また、対象設備10Aの種類によっては、組合せの相方である対象設備10Aの劣化による出力低下を補うために、もう一方の対象設備10Aの消費電力量が増大する場合もある。図12は、このような場合の劣化前後の積算消費電力量を示す図である。なお、図12も、3台(No.5〜7)の対象設備10Aのうち2台を稼動用の対象設備として設定し、No.6が劣化する場合を示している。図12においても、(a)が劣化前、(b)が劣化後を示している。
図12(a)で示されるように、No.6の対象設備10Aの劣化前、つまり、全ての対象設備10Aが劣化していない状態では、各対象設備10Aの積算電力量はいずれの組合せでも同等となる。
一方、図12(b)で示されるように、No.6の対象設備10Aが劣化すると、No6の対象設備10Aが出力できない分をまだ劣化していない相方の対象設備10Aが補うため、相方の対象設備10Aの消費電力量が増大する。
上述したように、劣化判定データは、対象設備10Aが3台存在するので、同数生成される。具体的には、装置識別情報と装置識別情報に対応する第2積算消費電力量とを含む劣化判定データが3つ生成される。なお、3個の劣化判定データそれぞれに含まれる第2積算消費電力量は、同一の装置識別情報で特定される対象設備10Aそれぞれに対して算出された第2積算消費電力量のうち最大値である。
そして、劣化設備特定部129Aは、3個の劣化判定データのうち最大の第2積算消費電力量を基準値とし、当該基準値と各劣化判定データの第2積算消費電力量との差を求める。
図12(a)で示されるように、全ての対象設備10Aが劣化していない場合、対象設備10Aに対応する劣化判定データの第2積算消費電力量は略同等の値となる。そのため、全ての対象設備10Aにおいて、対応する劣化判定データの第2積算消費電力量と基準値との差は相対的に小さい値となる。
一方、図12(b)で示されるように、No.6の対象設備10Aが劣化している場合、基準値としては、No.5またはNo.7に対応する劣化判定データの第2積算消費電力量が設定される。そのため、No.6の対象設備10Aについては、対応する劣化判定データの第2積算消費電力量と基準値との差が相対的に大きな値となり、No.5、7の対象設備10Aについては、対応する劣化判定データの第2積算消費電力量と基準値との差が相対的に小さい値となる。
このように、劣化判定データの第2積算消費電力量と基準値との差は、劣化するにつれて増大する。そのため、この差と閾値データ143Aで示される閾値T2とを比較し、この差が閾値T2以上である劣化判定データで特定される対象設備10Aを劣化後の油圧ポンプとして分類し、この差が閾値T2未満である劣化判定データで特定される対象設備10Aを劣化前の油圧ポンプとして分類することができる。
(劣化設備特定処理の流れ)
図13は、第2の実施形態における劣化設備特定処理の流れの一例を示す図である。第2の実施形態における劣化設備特定処理が、図6に示す第1の実施形態における劣化設備特定処理と異なる点は、ステップS15,S16,S19がステップS15A,16A,19Aに変更された点、および、ステップS15Bが追加された点である。その他の処理は、図6に示す第1の実施形態における劣化設備特定処理と同じであるので、ここでは説明を繰り返さない。
ステップS15Aにおいて、劣化判定データ生成部127Aは、対象設備10Aごとに、当該対象設備10Aを示す装置識別情報が含まれる劣化判定データ候補の中から、最大の第2積算消費電力量を示す劣化判定データ候補を劣化判定データとして決定する。これにより、対象設備10Aの台数と同数(M個)の劣化判定データが生成される。
次のステップS15Bにおいて、劣化設備特定部129Aは、S15Aにおいて生成されたM個の劣化判定データのうち最大の第2積算消費電力量を基準値として設定する。そして、各劣化判定データについて、設定した基準値と、当該劣化判定データの第2積算消費電力量との差を算出する。
ステップS16Aにおいては、劣化設備特定部129Aは、基準値と第2積算消費電力量との差が小さい順に劣化判定データをソートする。
ステップS19Aにおいては、劣化設備特定部129Aは、ステップS18において選択された劣化判定データに含まれる第2積算消費電力量と基準値との差がステップS17において読み出された閾値データ143で示される閾値T2以上であるか否かを判断する。第2積算消費電力量と基準値との差が閾値T2以上であるならば処理をステップS20に進めるが、そうでなければ処理をステップS21に進める。
以上のように、第1の実施形態における評価装置100は、M(M≧3を満たす整数)台の対象設備10のうちN(2≦N≦M−1を満たす整数)台が協働して稼動するシステムにおける対象設備10の劣化を評価する評価装置であって、M台の対象設備10のうちN台が協働する全ての組合せのそれぞれについて、対象設備10ごとの消費電力量を示すデータを取得する計測データ取得部121と、対象設備10の劣化を評価する評価処理部(劣化判定データ生成部127、劣化設備特定部129)とを備え、評価処理部は、(a)M台の対象設備10それぞれについて、当該対象設備10が含まれる全ての組合せそれぞれにおける当該対象設備10の消費電力量を計測データ取得部121が取得した計測データの中から抽出し、抽出した複数の消費電力量の中から最小の消費電力量を当該対象設備10に対する劣化評価用値として特定し、(b)特定した劣化評価用値に基づいて対象設備10の劣化を評価し、その評価結果を出力する。
これにより、M台の対象設備10のうちN台が協働する全ての組合せのそれぞれについて、対象設備10ごとの消費電力量を示すデータが取得され、(a)M台の対象設備10それぞれについて、当該対象設備10が含まれる全ての組合せそれぞれにおける当該対象設備10の消費電力量が計測データの中から抽出され、抽出した複数の消費電力量の中から最小の消費電力量が当該対象設備10に対する劣化評価用値として特定され、(b)特定した劣化評価用値に基づいて対象設備10の劣化が評価され、その評価結果が出力される。このため、M台の対象設備10の中に劣化後の対象設備が含まれる場合、M台からN台の対象設備10を選ぶすべての組合せには、劣化前の対象設備と劣化後の対象設備との組合せが含まれる。この場合、劣化後の対象設備が劣化前の対象設備に対して影響を及ぼすため、それぞれの対象設備の消費電力量は、対象設備が劣化前であっても適切な値を示さなくなる。つまり、対象設備10は、劣化により消費電力量が増加するタイプの設備であるので、劣化前の対象設備が劣化後の対象設備の出力を補って消費電力量が増大する。したがって、M台の対象設備10それぞれについて算出される最小の消費電力量を劣化評価用値とすることで、劣化評価用値を組合せの相方の対象設備10の劣化の影響をなるべく受けていない値とすることができる。つまり、M台の対象設備10それぞれについて、正確な消費電力量を劣化判定用値とすることができる。これにより、劣化評価用値に基づいて、M台の対象設備10を劣化後の対象設備と、劣化後の対象設備とに正確に分類することができる。したがって、複数の対象設備10が協働して稼動するシステムにおいて、各対象設備10の劣化を評価することができる。
第2の実施形態における評価装置100は、M(M≧3を満たす整数)台の対象設備10AのうちN(2≦N≦M−1を満たす整数)台が協働して稼動するシステムにおける対象設備10Aの劣化を評価する評価装置であって、M台の対象設備10AのうちN台が協働する全ての組合せのそれぞれについて、対象設備10Aごとの消費電力量を示すデータを取得する計測データ取得部121と、対象設備10の劣化を評価する評価処理部(劣化判定データ生成部127A、劣化設備特定部129A)とを備え、評価処理部は、(a)M台の対象設備10Aそれぞれについて、当該対象設備10Aが含まれる全ての組合せそれぞれにおける当該対象設備10Aの消費電力量を計測データ取得部121が取得した計測データの中から抽出し、抽出した複数の消費電力量の中から最大の消費電力量を当該対象設備10Aに対する劣化評価用値として特定し、(b)特定した劣化評価用値に基づいて対象設備10Aの劣化を評価し、その評価結果を出力する。
これにより、M台の対象設備10AのうちN台が協働する全ての組合せのそれぞれについて、対象設備10Aごとの消費電力量を示すデータが取得され、(a)M台の対象設備10Aそれぞれについて、当該対象設備10Aが含まれる全ての組合せそれぞれにおける当該対象設備10Aの消費電力量が計測データの中から抽出され、抽出した複数の消費電力量の中から最大の消費電力量が当該対象設備10Aに対する劣化評価用値として特定され、(b)特定した劣化評価用値に基づいて対象設備10Aの劣化が評価され、その評価結果が出力される。このため、M台の対象設備10Aの中に劣化後の対象設備が含まれる場合、M台からN台の対象設備10Aを選ぶすべての組合せには、劣化前の対象設備と劣化後の対象設備との組合せが含まれる。この場合、劣化後の対象設備が劣化前の対象設備に対して影響を及ぼすため、それぞれの対象設備10Aの消費電力量は、対象設備10Aが劣化前であっても適切な値を示さなくなる。つまり、対象設備10Aは、劣化により消費電力量が増加しない(変化しない、または減少する)タイプの設備であるので、劣化前の対象設備が劣化後の対象設備の出力を補って消費電力量が増大する。このため、劣化後の対象設備の消費電力量と劣化前の対象設備の消費電力量とに差が生じる。したがって、M台の対象設備10Aそれぞれについて算出される最大の消費電力量を劣化評価用値とすることで、劣化後の対象設備の特定が正確になるので、劣化評価用値に基づいて、M台の対象設備10Aを劣化後の対象設備と、劣化後の対象設備とに正確に分類することができる。したがって、複数の対象設備10Aが協働して稼動するシステムにおいて、各対象設備10Aの劣化を評価することができる。
また、第1の実施形態における対象設備10は、劣化により消費電力が増加するタイプを例に説明したが、そのタイプとしては例えば対象設備に代表される斜板式アキシアルピストンポンプ、冷凍機、ベルトコンベアが好適である。第2の実施形態における対象設備10Aは、劣化により消費電力が減少するタイプを例に説明したが、そのタイプとしては例えばコンプレッサー、油圧ポンプに代表されるギアポンプ、水ポンプに代表される渦巻きポンプ、換気ファン、ターボファン、融雪ポンプが好適である。換気ファンの使用例として、例えばトンネル内の空気清浄度、酸素濃度を保つために複数のファンを必要に応じて運転台数を切り換えることが想定される。融雪ポンプの使用例として、道路の凍結を防止するために、複数の融雪ポンプを必要に応じて運転台数を切り換えて常時温水を道路に散布することが想定される。
図14は、対象設備が渦巻きポンプである場合に想定される使用例を示す図である。図14に示されるように、トンネル内に浸入した水を溜める湧水ピットに、3つの渦巻きポンプが接続されている。3台の渦巻きポンプから2台または1台を選ぶすべての組合せのいずれかが稼動用の渦巻きポンプに設定され、残りが予備用の渦巻きポンプとして機能する。
湧水ピットの水位が所定の高さ以上のときには、3台のうち2台が稼動用の渦巻きポンプとして設定され、湧水ピットの水位が所定の高さ未満のときには、3台のうち1台が稼動用の渦巻きポンプとして設定される。これにより、湧水ピットの水位が所定の高さ以上のときには外部に排出される水の量を多くすることができ、湧水ピットの水位が所定の高さ未満のときには外部に排出される水の量を少なくすることができるので、湧水ピット内の水位を一定に保つことができる。ここで、湧水ピットの水位が所定の高さになったか否かは、液位計等によって水位を測定することにより検出すればよい。
また、逆に、複数の水ポンプを必要に応じて運転台数を切り換えて、マンションのようにこれから使う水を高架タンクに貯めるような使用例も想定される。
ベルトコンベアの使用例として、2台のベルトコンベアが協働することにより、物体を運搬することが想定される。図15は、対象設備がベルトコンベアである場合に計測されたデータの一例をグラフ化した図である。ベルトコンベアは、基本的には2台が交互に稼動し、片方のベルトコンベアだけでの稼動も可能である。また、消費電力が小さいベルトコンベアが優先して稼動する構成である。なお、グラフの縦軸は、消費電力量を示す。図15に示されるように、グラフには、No8のベルトコンベアに対応する第1積算消費電力量(縦線領域)と、No9のベルトコンベアに対応する第1積算消費電力量(斜線領域)とが基本的に交互に示されている。ここでは、No9のベルトコンベアは劣化しており、No8のベルトコンベアより消費電力が大きいことを示している。
No8のベルトコンベアの第1積算消費電力量は、No8のベルトコンベアの劣化により、稼動設備の目標レベルより2倍近く高くなっている。No8のベルトコンベアをメンテナンスした場合、No8のベルトコンベアの消費電力は劣化後と比べて低くすることができる。これにより、No8のベルトコンベアに対応する第1積算消費電力量を小さくすることができ、稼動設備の目標レベルまで抑えることができる。
なお、第1の実施形態においては、評価装置100が制御部101と記憶部111とを備える場合を例に説明し、第2の実施形態においては、評価装置100が制御部101Aと記憶部111とを備える場合を例に説明したが、制御部101,101Aと記憶部111とは分離させてもよい。この場合、第1の実施形態においては制御部101を評価装置100に備える構成とし、記憶部111を情報処理装置に備える構成とし、情報処理装置において収集された消費電力量データ141と閾値データ143とに基づいて、評価装置100において劣化後の対象設備および最小電力の対象設備の組合せを特定させればよい。第2の実施形態においては制御部101Aを評価装置100に備える構成とし、記憶部111を情報処理装置に備える構成とし、情報処理装置において収集された消費電力量データ141Aと閾値データ143Aとに基づいて、評価装置100において劣化後の対象設備および最小電力の対象設備の組合せを特定させればよい。
また、制御部101,101Aと記憶部111とを分離させた場合において、第1の実施形態においては制御部101が閾値データ143を記憶する構成とし、第2の実施形態においては制御部101Aが閾値データ143Aを記憶する構成であってもよい。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
最後に、評価装置100の各ブロック、特に制御部101,101Aは、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
すなわち、評価装置100は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記録媒体などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである評価装置100の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記評価装置100に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
また、評価装置100を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。