JP5830585B2 - 電池外装用積層体 - Google Patents
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Description
ところで、リチウムイオン電池の電解液は水分や光に弱いという性質を有している。そのため、リチウムイオン電池用の外装材料には、ポリアミドやポリエステルからなる基材層とアルミ箔とが積層された、防水性や遮光性に優れた電池外装用積層体が使用されている。
また、リチウムイオン電池の内部に水分が侵入した場合、電解液が水分で分解して、強酸が発生する。この場合、電池外装用の積層体の内側から発生した強酸が浸透し、その結果としてアルミ箔が強酸で腐食して劣化してしまい、電解液の液漏れが発生し、電池性能が低下するだけでなく、リチウムイオン電池が発火する恐れがあるという問題があった。
また、前記基材層と前記アルミ箔とは、ウレタン系接着剤を介して接着されてなることが好ましい。
また、同様の理由で、電池外装用積層体の耐圧強度が高いので、最内層であるポリプロピレン層又はポリエチレン層の厚みを薄くしても耐圧強度が保持できる為、エッジ部分からリチウムイオン電池内部への水分の浸入が少なくなり、リチウムイオン電池の電解液の経時劣化が減少するので電池の製品寿命が長くなる。
図1に示すように、本発明の電池外装用積層体を用いて作成した電池外装用容器20は、電池外装用積層体10を折り重ねてリチウムイオン電池17および電極18を内包し、さらに電池外装用容器20の三方の側縁部19をヒートシールして袋状に製袋されたものである。なお、本発明に係わる電池外装用積層体を用いて製造した電池用収納容器におけるリチウムイオン電池の収納方法は、図3に示した。
また、アルミ箔12の少なくとも片面は、水酸基を含有するポリビニルアルコールの骨格を有する樹脂又はその共重合樹脂からなる薄膜コーティング層14が積層されてなる。また、薄膜コーティング層14にはフッ化金属又はその誘導体からなり、水酸基を含有するポリビニルアルコールの骨格を有する樹脂又はその共重合樹脂からなる薄膜コーティング層を架橋させ、且つ、アルミ箔の表面を不動態化する物質が含まれている。
また、この電池外装用積層体10は、JIS K7127に規定された測定方法により測定し、前記積層体の引張破断伸度が50%以上である。
ここで、引張破断伸度とは、JIS K7127に準拠し、引張速度50mm/分で測定した際に求められた引張破断伸度である。電池外装用積層体10の引張破断伸度がMD方向、TD方向のいずれも50%以上であると、電池外装用積層体10を折り重ねてもコーナ部が十分に引き伸ばされ、破断することがないので、ピンホールが発生しない。
また、基材層11とアルミ箔12とは、ウレタン系接着剤を介して接着され、アルミ箔12とポリプロピレン又はポリエチレンとからなる最内層13とは、ウレタン系接着剤又は酸変性ポリオレフィンを介して接着されてなる。
また、アルミ箔12と前記ポリプロピレン又はポリエチレン層からなる最内層13との接着強度が、JIS C6471に規定された測定方法により測定し、20N/inch以上である。
基材層11の厚さは、全体で18〜60μmであることが好ましく、ポリアミドフィルムの厚みが15〜50μmであること、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの厚みが3〜11μmであることがさらに好ましい。
また電池外装用積層体の最外層にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用することで、耐熱性、及びヒートシール時の生産性が高く、仮に生産時に最外層のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに電解液が付着しても白化現象が起こらず、拭き取れば製品品質に影響が無いなどの優れた効果がある。
水溶性樹脂とは、水酸基が含有したポリビニルアルコールの骨格を有する樹脂で、ビニルエステル系モノマーの重合体又はその共重合体をケン化して得られる樹脂である。ビニルエステル系モノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、酪酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステルや、安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステルが挙げられる。共重合させる他のモノマーとしては、エチレン、プロピレン、α−オレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和酸類、塩化ビニルや塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類などが挙げられる。市販品としては、日本合成化学(株)製のGポリマー樹脂(商品名)が挙げられる。
また、薄膜コーティング層14にはフッ化金属又はその誘導体からなり、水酸基を含有するポリビニルアルコールの骨格を有する樹脂又はその共重合樹脂からなる薄膜コーティング層を架橋させ、且つ、アルミ箔の表面を不動態化する物質を含有することが好ましい。フッ化金属又はその誘導体は、不動態であるアルミニウムのフッ化物を形成するF−イオンを含む物質であり、例えばフッ化クロム、フッ化鉄、フッ化ジルコニウム、フッ化チタン、フッ化ハフニウム、ジルコンフッ化水素酸およびそれらの塩、チタンフッ化水素酸およびそれらの塩、等のフッ化物が挙げられる。
このアルミ箔の最内層面に、薄膜コーティング層を形成するには、例えば、水酸基を有するポリビニルアルコールの骨格を持つ非結晶ポリマー(日本合成化学(株)製、商品名:Gポリマー樹脂)を0.2〜6wt%、及びフッ化クロム(III)を0.1〜3wt%溶解した水溶液を用いて、乾燥後の厚みが0.1〜5μm程度のとなるように塗布した後、更にオーブンにて加熱乾燥を行なうことにより、薄膜コーティング層を形成することができる。
その際、水酸基を有するポリビニルアルコールの骨格を有する樹脂又はその共重合樹脂の融点である180℃以上で熱処理するとポリマーが架橋化し耐水性が向上する。これは、融点以上に熱処理する前後で、示差熱分析装置で融点を測定することで、架橋化しているかどうかで判定されるが、融点以上で熱処理した薄膜コーティング層は、融点のピークが無いことから架橋していることが解った。また、熱水に浸漬しても、この熱処理した薄膜コーティング層に変化は認められない。
また、本発明によれば、アルミ箔12の少なくとも片面に薄膜コーティング層14を積層しているため、アルミ箔12と最内層13との接着強度が非常に強いので、電池外装用積層体を用いて絞り成形や張出成形によりトレーを成形した際に、ピンホールの発生が防止されると共に、基材層11とアルミ箔12との剥離を防止できる。そのため、収納容器の成形の際の不良発生が減少する。
更に、微量の水分が、電池内部に浸入し、電解液が分解することによりフッ酸が発生したとしても、水酸基が含有したポリビニルアルコールの骨格を有する樹脂又はその共重合樹脂は、フリーボリュームが少ないので、ガスバリヤ性が高く、シーラント層ともなる最内層13に沿って、外部へ拡散する事及び微量のフッ酸がアルミ面に接触しても、不動態化によりアルミ箔が犯されず、アルミ箔とシーラント層との層間接着強度が保たれ、耐圧強度保持が高くなり、電池性能も劣化しない。
最内層13がポリプロピレンの場合、最内層13に使用されるポリプロピレンとしては、プロピレン単独重合体であってもよいし、エチレンとの共重合体であってもよく、さらに、エチレンとの共重合体としては、ランダム共重合体でもよいし、ブロック共重合体でもよい。最内層13がポリエチレンの場合、最内層13に使用されるポリエチレンとしては、LLDPEが望ましく、HDPEやLDPE及び無水マレイン酸やアクリル酸の共重合体などであっても構わない。
ポリプロピレンからなる最内層13の厚みとしては、20〜100μmであることが好ましい。ポリプロピレンからなる最内層13であると、厚みを100μm以上とするなどの過剰に厚くしなくても、電解液に対する耐食性およびヒートシール性、さらに十分な耐圧強度を保つことができるので、好ましい。特に、ヒートシールした断面からの水分の浸入を防止することにより、非水系電池やキャパシタの劣化を防止できるため、非常に有効な方法である。
接着剤層15の厚みは3〜10μmである。接着剤層15の厚みが3〜10μmであると、基材層11とアルミ箔12とを十分高い接着力で接着させるので、電池外装用積層体10を絞り成形または張出成形しても、稜線部や変形部での接着が維持され、基材層11とアルミ箔12とが層間剥離することがない。
接着剤を使用しない場合には、アルミ箔の薄膜コーティング層14である水酸基を含有するポリビニルアルコールの骨格を有する樹脂又はその共重合樹脂を使用するのが好ましい。この場合、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂やエポキシ基を含有するポリオレフィン樹脂などと熱接着性が高いので、押出ラミネートや熱ラミネートにより、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂やエポキシ基含有ポリオレフィン樹脂などのヒートシール剤を介して、アルミ箔12の薄膜コーティング層14と最内層13とを接着させることができる。
・積層体の引張破断伸度の測定方法:JIS K7127「プラスチック−引張特性の試験方法−第3部:フィルム及びシートの試験条件」に規定された測定方法により測定した。
・アルミ箔と最内層との接着強度の測定方法:JIS C6471「フレキシブルプリント配線板用銅張積層板試験方法」に規定された引き剥がし測定方法A(90°方向引き剥がし)により測定した。
・ピンホール破断発生率の測定方法:電池外装用積層体を50×50mmサイズで深さ6ないし10mmの範囲内の所定の深さの冷間成形による絞り成形品を50個成形し、目視によりピンホールの有無を確認した。
・電解液強度保持率の測定方法:作製した電池外装用積層体を用いて、50×50mm(ヒートシール幅が5mm)の4方袋に製袋して、その中にLiPF6を1mol/リットル添加したプロピレンカーボネート(PC)/ジエチルカーボネート(DEC)電解液に純水を0.5wt%添加して、それを2cc計量し、充填して包装した。この4方袋を60℃のオーブンに100時間保管後、アルミ箔とポリプロピレン(PP)フィルムとの層間接着強度(k2)を測定する。
ここで、事前に測定しておいた、電解液に暴露する前のアルミ箔とポリプロピレン(PP)フィルムとの層間接着強度(k1)と、電解液に暴露した後の層間接着強度(k2)との比率を電解液強度保持率K=(k2/k1)×100(%)とした。
(測定装置)
・引張破断伸度の測定装置:メーカ名:島津製作所、型式:AUTOGRAPH AGS‐100A引張試験装置
・接着強度の測定装置:メーカ名:島津製作所、型式:AUTOGRAPH AGS‐100A引張試験装置
厚みが6μmの延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムと、厚みが25μmの延伸ポリアミドフィルムとを、ウレタン系接着剤でドライラミネートした基材層と、厚みが40μmのアルミ箔とを(エポキシ系接着剤を含有する)ウレタン系接着剤からなる接着剤層(厚み7μm)を介して積層した。
このアルミ箔の最内層面に、水酸基を有するポリビニルアルコールの骨格を持つ非結晶ポリマー(日本合成化学(株)製、商品名:Gポリマー樹脂)を3重量%と、フッ化クロム(III)を1重量%とを溶かした水溶液を、乾燥後の厚みが1μmとなるように塗布し、薄膜コーティング層を積層し、更に200℃のオーブンにて加熱し架橋反応させた。
さらに、アルミ箔の薄膜コーティング層の上に、酸変性ポリプロピレン系ヒートシール剤を3g/m2で塗布し、その上にポリプロピレン層30μmをラミネート加工して、実施例1の電池外装用積層体10を作製した。
この実施例1の電池外装用積層体10から試験片を採取し、MD方向およびTD方向の引張破断伸度を測定した。また、この実施例1の電池外装用積層体10からアルミ箔と最内層との接着強度の測定用の試験片を採取し、アルミ箔と最内層との接着強度を測定した。それらの結果を表1に示す。
厚みが3μmの延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの品と、厚みが25μmの延伸ポリアミドフィルムとを、ウレタン系接着剤でドライラミネートした基材層と、厚みが40μmのアルミ箔とを(エポキシ系接着剤を含有する)ウレタン系接着剤からなる接着剤層(厚み7μm)を介して積層した。また、アルミ箔の最内層面に、水酸基を有するポリビニルアルコールの骨格を持つ非結晶ポリマー(日本合成化学(株)製、商品名:Gポリマー樹脂)を3重量%と、フッ化クロム(III)を1重量%とを溶かした水溶液を、乾燥後の厚みが3μmとなるように塗布し、薄膜コーティング層を積層し、更に200℃のオーブンにて加熱乾燥の処理をした。
この薄膜コーティング層を示差熱分析装置で、融点を確認したところ、融点のピークが無いことから架橋していることが解った。図4に、薄膜コーティング層を示差熱分析装置で測定した結果を示す。
さらに、アルミ箔の薄膜コーティング層の上に、酸変性ポリプロピレン系ヒートシール剤を3g/m2で塗布した以外は実施例1と同様にして、実施例2の電池外装用積層体10を得て、引張破断伸度およびアルミ箔と最内層との接着強度を測定した。それらの結果を表1に示す。
また、実施例1,2の電池外装用積層体を用いて、電解液強度保持率を測定した。試験結果は、実施例1の電池外装用積層体における電解液強度保持率が85%であり、実施例2の電池外装用積層体における電解液強度保持率が78%であった。つまり、実施例1,2は、リチウム電池の電解液に対しても耐食性があった。
厚みが3μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムと、厚みが25μmのポリアミドフィルム層とが、2g/m2で塗布されたウレタン系接着剤層を介して積層してなる基材層と、アルミ箔とを、エポキシ系接着剤を含有するウレタン系接着剤層7μmを介して積層した。このアルミ箔の最内層面に、水酸基を有するポリビニルアルコールの骨格を持つ非結晶ポリマー(日本合成化学(株)製、商品名:Gポリマー樹脂)を3重量%と、フッ化クロム(III)を1重量%とを溶かした水溶液を、乾燥後の厚みが3μmとなるように塗布し、その上に酸変性ポリプロピレン系ヒートシール剤を3g/m2で塗布し、その後にポリプロピレン層40μmを熱ラミネートされた4層構成からなる、実施例3の電池外装用積層体10を作製した。
この実施例3の電池外装用積層体10から試験片を採取し、アルミ箔と最内層との接着強度を測定した。また、この実施例3の電池外装用積層体10で8mmおよび10mm深さの絞り成形を50回行って、ピンホール破断の発生数を計測し、ピンホール破断発生率を求めた。それらの結果を表2に示す。
最内層のポリプロピレン層の厚みを30μmにした以外は、実施例3と同様にして、実施例4の電池外装用積層体10を得て、アルミ箔と最内層との接着強度およびピンホール破断発生率を測定した。それらの結果を表2に示す。
Claims (5)
- アルミ箔及び樹脂層を順次積層してなる電池外装用の積層体において、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムとポリアミドフィルム層との2層からなる基材層と、アルミ箔と、エポキシ基含有ポリオレフィン樹脂層と、ポリプロピレン又はポリエチレン層からなる最内層とが順に積層され、
前記アルミ箔の少なくとも最内層面には、水酸基を含有するポリビニルアルコールの骨格を有する樹脂又はその共重合樹脂からなる薄膜コーティング層が積層され、
前記薄膜コーティング層には、フッ化金属又はその誘導体からなり、水酸基を含有するポリビニルアルコールの骨格を有する樹脂又はその共重合樹脂からなる薄膜コーティング層を架橋させ、且つ、アルミ箔の表面を不動態化する物質を含んでなり、
前記エポキシ基含有ポリオレフィン樹脂層が、前記薄膜コーティング層と前記最内層とを接着してなることを特徴とする電池外装用積層体。 - 前記薄膜コーティング層が、架橋または非晶化することにより耐水性化されたことを特徴とする請求項1に記載の電池外装用積層体。
- JIS K7127に規定された測定方法により測定し、前記積層体の引張破断伸度がMD方向、TD方向のいずれも50%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電池外装用積層体。
- 前記基材層と、前記アルミ箔とは、ウレタン系接着剤を介して接着されてなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電池外装用積層体。
- 前記最内層の厚みが、20〜50μmであり、かつ、前記アルミ箔と前記最内層との接着強度が、JIS C6471に規定された引き剥がし測定方法Aにより測定し、20N/inch以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電池外装用積層体。
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