JP6722739B2 - 電池外装用積層体の製造方法 - Google Patents
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Description
ところで、リチウムイオン電池の電解液は水分や光に弱いという性質を有している。そのため、リチウムイオン電池用の外装材料には、ポリアミド樹脂やポリエステル樹脂からなる基材層とアルミ箔とが積層され、更に内側にはヒートシール性の高いポリオレフィン樹脂フィルムが、熱接着性樹脂を利用した熱ラミネート方式で積層されている。これにより、従来のフィルム積層体の方式であるウレタン系接着剤によるドライラミネート方式に比べて、防水性や遮光性に優れた電池外装用積層体となり、使用されている。
また、リチウムイオン電池の内部に水分が侵入した場合、電解液が水分で分解して、強酸が発生する。この場合、電池外装用の積層体の内側から発生した強酸が浸透し、その結果としてアルミ箔が強酸で腐食して劣化してしまい、電解液の液漏れが発生し、電池性能が低下するだけでなく、リチウムイオン電池が発火する恐れがあるという問題があった。
更に、従来のアルミラミネートフィルムで深絞りに成形すると、アルミラミネートフィルムを折り重ねた際に、コーナ部が引き伸ばされ、ついには伸びの限界に達し、破断してピンホールや破れが発生することがあった。よって、アルミ箔と基材層との接着力が引き延ばしの際の応力に屈して層間剥離することがあった。このような成形時の不良が発生するため、リチウムイオン電池などの収納容器の生産効率が低かった。
また、本発明の電池外装用積層体は、絞り成形や張出成形によりトレーを成形した際に、ピンホールの発生が防止されると共に、基材層とアルミ箔との剥離を防止できる。そのため、電池収納容器を成形する際に、不良品の発生が減少する。
また、同様の理由により、本発明の電池外装用積層体は、耐圧強度が高いので、多層のシーラントフィルムの厚みを薄くしても耐圧強度が保持できるため、エッジ部分からリチウムイオン電池内部への水分の浸入が少なくなり、リチウムイオン電池の電解液の経時劣化が減少するので電池の製品寿命が長くなる。
また、アルミ箔と、基材層として少なくともポリアミド樹脂フィルムとを、ウレタン系接着剤を用いてドライラミネート工法でラミネートすることにより、厚みが10〜50μmのポリアミド樹脂フィルムを使用すると、電池外装用積層体を絞り成形した場合においても、ピンホールや層間剥離の発生を防止できる。
図1に示すように、本発明の電池外装用積層体を用いて作製した電池用外装容器20は、電池外装用積層体10を折り重ねてリチウムイオン電池21および電極18を内包し、さらに電池用外装容器20の三方の側縁部19をヒートシールして袋状に製袋されたものである。なお、本発明の電池外装用積層体を用いて製造した、電池用収納容器におけるリチウムイオン電池の収納方法は、図3に示した。
この耐食性コーティング層14の上に、金属との熱接着性樹脂層16を接着するのは、熱ラミネート工法により施されている。
また、電池外装用積層体10において、金属との熱接着性樹脂層16の融解熱量は、25mJ/mg以下である。
また、アルミ箔12の少なくとも片面には、耐電解液用の表面処理液をコーティング工法によって塗布して、耐食性コーティング層14が形成されている。
また、この電池外装用積層体10は、JIS K7127に規定された測定方法により測定し、前記積層体の引張破断伸度が50%以上である。
ここで、引張破断伸度とは、JIS K7127に準拠し、引張速度50mm/分で測定した際に求められた引張破断伸度である。電池外装用積層体10の引張破断伸度がMD方向、TD方向のいずれも50%以上であると、電池外装用積層体10を折り重ねてもコーナ部が十分に引き伸ばされ、破断することがないので、ピンホールが発生しない。
また、基材層11とアルミ箔12とは、ウレタン系接着剤層15を介して接着されている。
アルミ箔12と、多層のシーラントフィルム17とは、酸変性ポリオレフィン樹脂、エポキシ変性ポリオレフィン樹脂、酸変性ポリオレフィン樹脂と2官能以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物とを混合したエポキシ基含有の酸変性ポリオレフィン樹脂からなる金属との熱接着性樹脂群の中から選択したいずれか1つの金属との熱接着性樹脂である金属との熱接着性樹脂層16を介して、熱ラミネート工法により接着されている。
また、多層のシーラントフィルム17は、金属との熱接着性樹脂層16とポリオレフィン樹脂層13とが積層されて形成されている。
また、多層のシーラントフィルム17のポリオレフィン樹脂層13は、ポリプロピレン樹脂層又はポリエチレン樹脂層からなる。
更に本発明では、アルミ箔12と、多層のシーラントフィルム17とを、熱ラミネート工法により接着して積層体を形成した後、引き続いて、該積層体の温度を10℃/秒以上の冷却速度で急速降下させ、金属との熱接着性樹脂層が結晶化するのを抑えることにより、金属との熱接着性樹脂層の融解熱量を25mJ/mg以下とするのが好ましい。
また、アルミ箔12と多層のシーラントフィルム17との間の接着強度が、JIS C6471に規定された測定方法(引き剥がし測定方法A)により測定し、10N/inch以上である。
基材層11の厚みは、全体で18〜60μmであることが好ましく、ポリアミド樹脂フィルムの厚みが10〜50μmであること、及び更にポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムの厚みが3〜16μmであることがさらに好ましい。
また、本発明の電池外装用積層体は、最外層にポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムを使用することで、耐熱性や耐水性、及びヒートシール時の生産性が高く、仮に生産時に最外層のポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムに電解液が付着しても白化現象が起こらず、拭き取れば製品品質に影響が無いなどの優れた効果がある。
また、本発明の電池外装用積層体は、最外層として厚みが3〜16μmのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムを使用すると、絞り成形性が良く、製袋時のヒートシール工程において、基材とアルミ箔との間が層間剥離するのを防止できる。
また、アルミ箔12の片面又は両面に、耐電解液用の表面処理液を塗布して薄膜コーティング層を積層した後、この薄膜コーティング層を耐水化させて耐食性コーティング層14を形成することが好ましい。
また、耐食性コーティング層14が、架橋または非晶化することにより耐水性化されていることが好ましい。
前記耐電解液用の表面処理液は、水溶性樹脂又はその共重合樹脂からなる塗布型の処理液であることが好ましく、さらに、三価のクロム化合物を含有することが好ましい。三価のクロム化合物として、フッ化クロム(III)を用いた場合、後述するフッ素系の不動態化剤を兼ねることができ、最も好ましい。水溶性の三価のクロム化合物は、アルミニウムの表面処理剤としても知られている。フッ化クロム(III)の他に、硝酸クロム(III)、硫酸クロム(III)、塩化クロム(III)、ギ酸クロム(III)、酢酸クロム(III)、カルボン酸クロム(III)等が挙げられる。環境への影響を避けるため、六価のクロム化合物を含まないことが好ましい。
水溶性樹脂とは、水酸基を含有した樹脂であって、具体的には、ビニルエステル系モノマーの重合体又はその共重合体をケン化して得られる樹脂である。ビニルエステル系モノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、酪酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステルや、安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステルが挙げられる。共重合させる他のモノマーとしては、エチレン、プロピレン、α−オレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和酸類、塩化ビニルや塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類などが挙げられる。水溶性樹脂の市販品としては、日本合成化学(株)製のGポリマー樹脂(商品名)が挙げられる。
また、耐食性コーティング層14にはフッ化金属又はその誘導体からなるアルミニウムの不動態化剤を含有することが好ましい。フッ化金属又はその誘導体は、不動態であるアルミニウムのフッ化物を形成するF−イオンを含む物質であり、例えばフッ化クロム、フッ化鉄、フッ化ジルコニウム、フッ化ジルコニウム酸化合物、フッ化ハフニウム、フッ化チタン酸化合物、等のフッ化物が挙げられる。
耐食性コーティング層14は、アルミ箔12の両面に形成してもよい。この場合は、アルミ箔12の一方の耐食性コーティング層14上に多層のシーラントフィルム17を貼り合せ、アルミ箔12の他方の耐食性コーティング層14上に基材層11を積層することができる。
また、本発明の電池外装用積層体によれば、アルミ箔12の少なくとも片面に水溶性樹脂又はその共重合樹脂からなる耐食性コーティング層14を積層しているため、アルミ箔12と多層のシーラントフィルム17とを熱ラミネートした後、冷却ロールにより急冷された際には、層間接着強度が非常に強く、ヒートシール強度も高いので、電池外装用積層体を用いて絞り成形や張出成形によりトレーを成形した際に、ピンホールの発生が防止されると共に、基材層11とアルミ箔12との剥離を防止できる。そのため、収納容器の成形の際の不良発生が減少する。
また、アルミ箔12と多層のシーラントフィルム17とを熱ラミネートした直後に、急冷する際の冷却条件としては、例えば、冷却ロールの表面温度を水冷等で10〜40℃程度に保ち、熱ラミネートを施した後の積層体を冷却ロールに接触させ、加熱圧着が完了してから、好ましくは1分以内、より好ましくは30秒以内、更に好ましくはより短時間で、積層体の温度を常温付近まで、10℃/秒以上の冷却速度で急速降下させて冷却することが挙げられる。
更に、微量の水分が、電池内部に浸入し、電解液が分解することによりフッ酸が発生したとしても、水酸基が含有したポリビニルアルコールの骨格を有する樹脂又はその共重合樹脂は、空隙が少ないので、ガスバリヤ性が高く、ヒートシール層となるポリオレフィン樹脂層13に沿って、外部へ拡散することがなく、及び微量のフッ酸がアルミ面に接触しても、不動態化されていることによりアルミ箔が腐食されず、アルミ箔12と多層のシーラントフィルム17との層間接着強度が保たれ、耐圧強度保持が高くなり、電池性能も劣化しない。
水溶性樹脂又はその共重合樹脂からなる耐食性コーティング層14の厚みは、0.1〜5μmが望ましく、更に望ましくは0.5〜1μmの厚みであると防湿性や接着強度の性能が増加するのでより好ましい。
ポリオレフィン樹脂層13がポリプロピレン樹脂層の場合、少なくともアルミ箔側の金属との熱接着性樹脂層16に使用されるポリプロピレン樹脂層としては、少なくともプロピレンの分子の一部を酸変性した重合体層(酸変性ポリプロピレン樹脂層)及び、エポキシ基含有の酸変性ポリプロピレン樹脂層などが挙げられる。後者について、具体的には、酸変性ポリプロピレン樹脂と2官能以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物とを混合することにより、ポリプロピレン樹脂の酸変性部分と2官能エポキシ化合物とが反応し、ポリプロピレン樹脂にエポキシ基が導入されるため、酸変性タイプより、アルミ箔との熱接着反応速度を速めることができ、更に接着強度も上昇する効果がある。またそのポリプロピレン樹脂は、ホモポリマーでも、エチレンとの共重合体でも良く、共重合タイプとしては、ランダム共重合体でもよいし、ブロック共重合体でもよい。
ポリオレフィン樹脂層13がポリエチレン樹脂層の場合、少なくともアルミ箔側の金属との熱接着性樹脂層16に使用されるポリエチレン樹脂層としては、酸変性ポリエチレンに2官能以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物とを混合することにより、ポリエチレン樹脂にエポキシ官能基を導入することが望ましい。
ポリプロピレン樹脂層もしくはポリエチレン樹脂層からなるポリオレフィン樹脂層13を最内層とした多層のシーラントフィルム17の厚みとしては、20〜150μmであることが好ましい。ポリプロピレン樹脂層もしくはポリエチレン樹脂層からなるポリオレフィン樹脂層13であると、多層のシーラントフィルム17の厚みを150μm以上とするなどの過剰に厚くしなくても、電解液に対する耐食性およびヒートシール性、さらに十分な耐圧強度を保つことができるので、好ましい。特に、ヒートシールした断面からの水分の浸入を防止することにより、非水系電池やキャパシタの劣化を防止できるため、非常に有効な方法である。
また、ポリオレフィン系接着性樹脂の市販品としては、三菱化学製の無極性のポリオレフィンに極性基を導入し、異種材料との接着性を付与した材料(商品名:MODIC,モデッィク(登録商標))があり、ポリアミド、EVOH、ポリエステル、金属、ポリオレフィン等と接着できる。
また、酸変性ポリオレフィン樹脂と複合化するエポキシ樹脂としては、エポキシ基を2官能基以上有するエポキシ樹脂が望ましく、市販品としては、例えば、新日鉄住金化学(株)製のエポキシ化合物(商品名:YP55U)が挙げられる。
接着剤層15の厚みは、3〜16μmであることが好ましい。接着剤層15の厚みが2〜10μmであると、基材層11とアルミ箔12とを十分高い接着力で接着させるのでさらに好ましく、電池外装用積層体10を絞り成形または張出成形しても、稜線部や変形部での接着が維持され、基材層11とアルミ箔12とが層間剥離することがない。
また、アルミ箔12の、多層のシーラントフィルム17と貼り合せる側の面に積層された耐食性コーティング層14は、水酸基を含有する水溶性樹脂を使用するのが好ましい。この場合、エポキシ基を含有するポリオレフィンは特に接着強度が高く、しかも熱量が少なくて良いので、押出ラミネートや熱ラミネートにより、アルミ箔12の耐食性コーティング層14と多層のシーラントフィルム17とを接着させることができる。
・積層体の引張破断伸度の測定方法:JIS K7127「プラスチック−引張特性の試験方法−第3部:フィルム及びシートの試験条件」に規定された測定方法により測定した。
・アルミ箔と多層のシーラントフィルムとの接着強度の測定方法:JIS C6471「フレキシブルプリント配線板用銅張積層板試験方法」に規定された引き剥がし測定方法A(90°方向引き剥がし)により測定した。ただし、JIS C6471では、引き剥がし強さを、銅箔の幅(mm)に基づき、(N/mm)の単位で結果を報告することを規定しているが、本測定では、アルミ箔の幅に基づき、(N/inch)の単位で結果を記載した。ここで、1inch=25.4mmである。
・ピンホール破断発生率の測定方法:電池外装用積層体を50×50mmサイズで深さ8mmの冷間成形による絞り成形品を50個成形し、目視によりピンホールの有無を確認した。
・ヒートシール時の層間剥離発生数:電池外装用積層体を50×50mmサイズで深さ8mmの冷間成形による絞り成形品を50個成形し、ヒートシール後に、60℃×90RH%の恒温恒湿度オーブンに48時間放置して、その後、目視により、基材層とアルミ箔との層間剥離の有無を確認した。
・電解液強度保持率の測定方法:作製した電池外装用積層体を用いて、50×50mm(ヒートシール幅が5mm)の4方袋に製袋して、その中にLiPF6を1mol/リットル添加したプロピレンカーボネート(PC)/ジエチルカーボネート(DEC)電解液に純水を0.5wt%添加して、それを2cc計量し、充填して包装した。この4方袋を60℃のオーブンに100時間保管後、アルミ箔とポリプロピレン(PP)樹脂フィルムとの層間接着強度(k2)を測定する。
ここで、事前に測定しておいた、電解液に暴露する前のアルミ箔とポリプロピレン(PP)樹脂フィルムとの層間接着強度(k1)と、電解液に暴露した後の層間接着強度(k2)との比率を電解液強度保持率K=(k2/k1)×100(%)とした。
・ラミネートフィルムの、金属との熱接着性樹脂層の結晶化エネルギー(金属との熱接着性樹脂層の融解熱量)の測定方法:DSC(示差熱測定装置)にて、ラミネートフィルムを10mgサンプリングして、10℃/分の昇温速度で、室温から200℃まで測定し、金属との熱接着性樹脂の厚み比率で重量を割って、金属との熱接着性樹脂層の重量を算出して、吸熱量を測定し、これを結晶化エネルギー(金属との熱接着性樹脂層の融解熱量)として、比較した。
(測定装置)
・引張破断伸度の測定装置:メーカ名:島津製作所、型式:AUTOGRAPH AGS‐100A引張試験装置
・接着強度の測定装置:メーカ名:島津製作所、型式:AUTOGRAPH AGS‐100A引張試験装置
・DSC:メーカ名:エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)、型式:EXSTAR DSC7020
厚みが40μmのアルミ箔の、多層のシーラントフィルムと貼り合せる側の面に、水酸基を有するポリビニルアルコールの骨格を持つ非結晶ポリマー(日本合成化学(株)製、商品名:Gポリマー樹脂)を1重量%と、フッ化クロム(III)を2重量%とを溶かした水溶液をグラビアコーターにて乾燥後の厚みが0.6μmとなるように塗布し、耐食性コーティング層を積層した後、更に200℃のオーブンにて加熱し架橋反応させアルミ箔に焼き付けた。
さらに、アルミ箔に積層した耐食性コーティング層の上に、インラインで多層のシーラントフィルムを、加熱ロールを用いて熱ラミネートした。引き続いて、前記熱ラミネートした積層体を冷却ロールに通して、前記熱ラミネートした積層体の温度を、10℃/秒以上の冷却速度で急速降下させて急冷した。
ここで用いた、多層のシーラントフィルムは、エポキシ樹脂配合の酸変性ポリオレフィン樹脂層とポリプロピレン樹脂層との厚み比率が1:3であり、かつ、全体の厚みが80μmとなるように、多層キャスト工法にて製膜したものである。
また、エポキシ樹脂配合の酸変性ポリオレフィン樹脂は、酸変性ポリプロピレン樹脂に2官能以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(新日鉄住金化学(株)製、品名:YP55U)を8%ブレンドコンパウンドして得た、エポキシ基含有の酸変性ポリオレフィン樹脂のマスターバッチ樹脂ペレットと、酸変性ポリオレフィン樹脂とをブレンドして、エポキシ樹脂量が1%になるように配合したものである。
次に、アルミ箔の、多層のシーラントフィルムと貼り合せる側とは反対側の面に、基材層(厚みが12μmの延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムと、厚みが25μmの延伸ポリアミド樹脂フィルムとを、厚みが3μmのウレタン系接着剤層を用いてドライラミネートにより積層させた基材層)を対向させ、この基材層と、このアルミ箔とをウレタン系接着剤からなる接着剤層(厚み4μm)を介してドライラミネートにより積層した。
更に、アルミ箔と、金属との熱接着性樹脂層との接着強度を上げるために、この電池外装用積層体を80℃の熱風オーブンに48時間保管し、実施例1の電池外装用積層体を得た。
この実施例1の電池外装用積層体から試験片を採取し、MD方向およびTD方向の引張破断伸度を測定した。また、この電池外装用積層体10で8mm深さの絞り成形を50回行って、ヒートシール時の層間剥離発生数を測定した。また、この実施例1の電池外装用積層体からアルミ箔と多層のシーラントフィルムとの接着強度の測定用の試験片を採取し、アルミ箔と多層のシーラントフィルムとの接着強度を測定した。それらの結果を表1に示す。
厚みが40μmのアルミ箔の、多層のシーラントフィルムと貼り合せる側の面に、水酸基を有するポリビニルアルコールの骨格を持つ非結晶ポリマー(日本合成化学(株)製、商品名:Gポリマー樹脂)を1重量%と、フッ化クロム(III)を2重量%とを溶かした水溶液を、乾燥後の厚みが0.6μmとなるように塗布し、耐食性コーティング層を積層し、更に200℃のオーブンにて加熱し架橋反応させてアルミ箔に焼き付けた。
さらに、アルミ箔に積層した耐食性コーティング層の上に、インラインで多層のシーラントフィルムを、加熱ロールを用いて熱ラミネートで貼り合せた後、前記熱ラミネートした積層体を冷却ロールに通して、前記熱ラミネートした積層体の温度を、10℃/秒以上の冷却速度で急速降下させて急冷した。
引き続いて、厚みが25μmの延伸ポリアミド樹脂フィルムと、前記積層体のアルミ箔とを(エポキシ系接着剤を含有する)ウレタン系接着剤からなる接着剤層(厚み3μm)を介して積層した以外は実施例1と同様にして、実施例2の電池外装用積層体を得た。実施例2の電池外装用積層体について、引張破断伸度、ヒートシール時の層間剥離の発生数およびアルミ箔と多層のシーラントフィルムとの接着強度を測定した。それらの結果を表1に示す。
ここで用いた多層のシーラントフィルムは、エポキシ樹脂配合の酸変性ポリオレフィン樹脂層とLLDPE樹脂層との厚み比率が1:3であり、かつ、全体の厚みが80μmとなるように、多層キャスト工法にて製膜したものである。
また、エポキシ樹脂配合の酸変性ポリオレフィン樹脂は、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂(品名/三井化学(株)製、アドマー樹脂)に水酸基含有エポキシ化合物(品名/三菱化学(株)製、エピコート1001)を1.0wt%ブレンドコンパウンドした樹脂(すなわち、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂の無水マレイン酸官能基に反応させてエポキシ基を導入したポリエチレン樹脂)を使用した。
厚みが12μmの延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムと、厚みが25μmの延伸ポリアミド樹脂フィルムとを、厚みが4μmのウレタン系接着剤でドライラミネートした基材層を用意し、この基材層の延伸ポリアミド樹脂フィルム側の面に、厚みが40μmのアルミ箔を、ウレタン系接着剤からなる接着剤層(厚み4μm)を介して積層した。それを実施例1と同様に処理して、前記アルミ箔の多層のシーラントフィルムと貼り合せる側の面に、耐食性コーティング層を積層した。
次に、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を20μmの厚みで溶融押出し、ポリプロピレン樹脂のシーラントフィルム(厚み60μm)と50m/分の加工速度でサンドイッチラミネート加工して、順に積層して多層のシーラントフィルムを形成して、比較例1の電池外装用積層体を作製した。
作製後は、実施例1と同様にして、比較例1の電池外装用積層体について、引張破断伸度、ヒートシール時の層間剥離発生数およびアルミ箔と多層のシーラントフィルムとの接着強度を測定した。それらの結果を表1に示す。
厚みが40μmのアルミ箔の、多層のシーラントフィルムと貼り合せる側の面に、水酸基を有するポリビニルアルコールの骨格を持つ非結晶ポリマー(日本合成化学(株)製、商品名:Gポリマー樹脂)を1重量%と、フッ化クロム(III)を2重量%とを溶かした水溶液を、グラビアコーターにて乾燥後の厚みが0.6μmとなるように塗布し、耐食性コーティング層を積層し、更に200℃のオーブンにて加熱し架橋反応させアルミ箔に焼き付けた。
さらに、アルミ箔に積層した耐食性コーティング層の上に、インラインで多層のシーラントフィルムを、加熱ロールを用いて熱ラミネートで貼り合せた以外は実施例1と同様にして、実施例3の電池外装用積層体を得て、引張破断伸度、ヒートシール時の層間剥離の発生数およびアルミ箔と多層のシーラントフィルムとの接着強度を測定した。それらの結果を表1に示す。
ここで用いた多層のシーラントフィルムは、エポキシ樹脂配合の酸変性ポリオレフィン樹脂層とポリプロピレン樹脂層との厚み比率が1:3であり、かつ、全体の厚みが80μmとなるように、多層キャスト工法にて製膜したものである。
なお、このエポキシ樹脂配合の酸変性ポリオレフィン樹脂は、酸変性ポリプロピレン樹脂に2官能以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(新日鉄住金化学(株)製、品名:YP55U)を1%ブレンドコンパウンドして得たエポキシ基含有の酸変性ポリオレフィン樹脂の樹脂ペレットを使用した。
厚みが12μmの延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムと、厚みが25μmの延伸ポリアミド樹脂フィルムとを、ウレタン系接着剤でドライラミネート工法で貼り合せた基材層を用意し、この基材層の延伸ポリアミド樹脂フィルム側の面に、厚みが40μmのアルミ箔を、(エポキシ系接着剤を含有する)ウレタン系接着剤からなる接着剤層(厚み4μm)を介して積層した。それに無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂を押出し50m/分の加工速度で押出ラミネートし、ボイル用ポリエチレンシーラントを、上記無水マレイン酸変性ポリオレフィンでの熱ラミネートによりサンドラミした以外は、実施例1と同様にして、比較例2の電池外装用積層体を得て、引張破断伸度、ヒートシール時の層間剥離発生数およびアルミ箔と多層のシーラントフィルムとの接着強度を測定した。それらの結果を表1に示す。
実施例1〜3の電池外装用積層体は、金属との熱接着性樹脂層の融解熱量が25mJ/mg以下であり、アルミ箔と多層のシーラントフィルムとの接着強度が高いため、ヒートシール時の層間剥離発生する頻度が低下した。
また、実施例1〜3の電池外装用積層体を用いて、電解液強度保持率を測定した。試験結果は、実施例1の電池外装用積層体における電解液強度保持率が86%であり、実施例2の電池外装用積層体における電解液強度保持率が88%であり、実施例3の電池外装用積層体における電解液強度保持率が84%であった。つまり、実施例1〜3の電池外装用積層体は、リチウム電池の電解液に対して耐食性があった。
一方、比較例1の電池外装用積層体では、アルミ箔と多層のシーラントフィルムとの接着方法が押出ラミネートであるため、加熱量が足らないことから、接着強度は十分でなく、層間強度が10N/inch以下(6N/inch)であったため、電解液処理後において、層間剥離が発生した。
また、比較例2の電池外装用積層体では、アルミ箔と多層のシーラントフィルムとの接着強度が、加工速度を30m/分以上で加工すると、層間接着強度が10N/inch以下であり、接着強度が足らず、加工速度を下げなければならず、コスト的にメリットが無いことがわかった。また、無水マレイン酸変性ポリオレフィンでの熱ラミネートであるため、加工速度が低い条件で、接着強度を10N/inchにしたサンプルは、絞り成形時及び電解液処理後でも品質上の問題は無い。
比較例1,2の電池外装用積層体は、金属との熱接着性樹脂層の融解熱量が25mJ/mg以下でないために、アルミ箔と多層のシーラントフィルムとの接着強度が低く、ヒートシール時の層間剥離発生の頻度が増大した。
厚みが40μmのアルミ箔の、多層のシーラントフィルムと貼り合せる側の面に、水酸基を有するポリビニルアルコールの骨格を持つ非結晶ポリマー(日本合成化学(株)製、商品名:Gポリマー樹脂)を1重量%と、フッ化クロム(III)を2重量%とを溶かした水溶液を、乾燥後の厚みが0.5μmとなるように塗布し、耐食性コーティング層を積層し、更に200℃のオーブンにて加熱し架橋反応させてアルミ箔に焼き付けた。
さらに、アルミ箔に積層した耐食性コーティング層の上に、インラインで多層のシーラントフィルムを、加熱ロールを用いて熱ラミネートした。ここで用いた多層のシーラントフィルムは、エポキシ樹脂配合の酸変性ポリオレフィン樹脂層とランダムコーポリマーポリプロピレン樹脂層との厚み比率が1:3であり、かつ、全体の厚みが80μmとなるように、多層キャスト工法にて製膜したものである。なお、エポキシ樹脂配合の酸変性ポリオレフィン樹脂は、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂に2官能エポキシ基含有化合物を6%ブレンドコンパウンドして樹脂化したものである。前記アルミ箔の耐食性コーティング層の面と、得られた多層のシーラントフィルムとを、熱ラミネート工法にて貼り合せて積層体を作製した直後に、前記積層体を冷却ロールに通して、前記積層体の温度を10℃/秒以上の冷却速度で急速降下させて急冷することにより結晶化を抑えた。
次に、厚みが25μmの延伸ポリアミド樹脂フィルムを、3g/m2で塗布されたウレタン系接着剤層を介してドライラミネートにより、前記積層体のアルミ箔側の面を積層し、電池外装用積層体を作製した後、更に、アルミ箔と、金属との熱接着性樹脂層との接着強度を上げるために、この電池外装用積層体を80℃の熱風オーブンに48時間保管し、実施例4の電池外装用積層体を得た。
この実施例4の電池外装用積層体から試験片を採取し、アルミ箔と多層のシーラントフィルムとの接着強度を測定した。また、この実施例4の電池外装用積層体で8mm深さの絞り成形を50回行って、ピンホール破断の発生数を計測し、ピンホール破断発生率を求めた。また、この実施例4の電池外装用積層体で8mm深さの絞り成形を50回行って、ヒートシール時の層間剥離発生数を測定した。それらの結果を表2に示す。
金属との熱接着性樹脂層の2官能エポキシ化合物を、ブレンドコンパウンドしたポリプロピレン樹脂層の厚みを40μmにして、ポリオレフィン樹脂層のランダムコーポリマーポリプロピレン樹脂層の厚みを40μmにし、多層プロピレンフィルムの総厚みを80μmにしたこと以外は、実施例4と同様にして、実施例5の電池外装用積層体を得て、アルミ箔と多層のシーラントフィルムとの接着強度、ヒートシール時の層間剥離発生数およびピンホール破断発生率を測定した。それらの結果を表2に示す。
厚みが12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムと、厚みが25μmのポリアミド樹脂フィルム層とが、3g/m2で塗布されたウレタン系接着剤層を介して積層してなる基材層を用意し、この基材層の延伸ポリアミド樹脂フィルム側の面に、エポキシ系接着剤を含有するウレタン系接着剤層3μmとアルミ箔とを、このアルミ箔の下記ヒートシール剤側の面に、水酸基を有するポリビニルアルコールの骨格を持つ非結晶ポリマー(日本合成化学(株)製、商品名:Gポリマー樹脂)を1重量%と、フッ化クロム(III)を2重量%と、を溶かした水溶液を、乾燥後の厚みが0.6μmとなるように塗布し、その上に酸変性ポリプロピレン系ヒートシール剤を3g/m2で塗布し、その後にポリプロピレン樹脂層40μmが20m/分の加工速度で熱ラミネートした後、冷却ロールに通さず、前記熱ラミネートした積層体の温度を、8℃/秒以下の冷却速度で徐々に降下させ、4層構成(PET樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム層、アルミ箔、多層プロピレン樹脂層)からなる、比較例3の電池外装用積層体を得た。
この比較例3の電池外装用積層体から試験片を採取し、アルミ箔と多層のシーラントフィルムとの接着強度を測定した。また、この比較例3の電池外装用積層体で8mm深さの絞り成形を50回行って、ピンホール破断の発生数を計測し、ピンホール破断発生率を求めた。また、この比較例3の電池外装用積層体で8mm深さの絞り成形を50回行って、ヒートシール時の層間剥離発生数を測定した。それらの結果を表2に示す。
比較例3の電池外装用積層体は、金属との熱接着性樹脂層の融解熱量が25mJ/mg以下でないために、アルミ箔と多層のシーラントフィルムとの接着強度が低く、ピンホールの破断発生の頻度が増大した。
Claims (2)
- 基材層と、金属箔と、金属との熱接着性樹脂層とポリオレフィン樹脂層とが積層された多層のシーラントフィルムと、が順に積層されてなる電池外装用積層体の製造方法であって、
少なくとも前記金属箔の前記多層のシーラントフィルムと貼り合せる側の面に、架橋又は非晶化された水溶性樹脂又はその共重合樹脂の耐水性を有する耐食性コーティング層を形成した後、前記耐食性コーティング層の上に、前記金属との熱接着性樹脂層を介して前記多層のシーラントフィルムを、加熱ロールを用いて熱ラミネートにより接着してなり、
前記金属との熱接着性樹脂層が、酸変性ポリオレフィン樹脂、エポキシ変性ポリオレフィン樹脂、酸変性ポリオレフィン樹脂と2官能以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物とを混合したエポキシ基含有の酸変性ポリオレフィン樹脂からなる群の中から選択したいずれか1つの金属との熱接着性樹脂であり、且つ、前記ポリオレフィン樹脂層が、ポリプロピレン樹脂層であり、
前記耐食性コーティング層が形成された金属箔と前記多層のシーラントフィルムとが熱ラミネートされた積層体の、冷却ロールによる冷却速度が10℃/秒以上であり、
前記金属との熱接着性樹脂層の融解熱量を25mJ/mg以下とすることを特徴とする電池外装用積層体の製造方法。 - 前記耐食性コーティング層が形成された金属箔と前記多層のシーラントフィルムとが熱ラミネートされた積層体の、前記金属箔と前記多層のシーラントフィルムとの接着強度が、JIS C6471に規定された引き剥がし測定方法Aにより測定し、10N/inch以上であることを特徴とする請求項1に記載の電池外装用積層体の製造方法。
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