以下に、本願発明を具体化した実施形態を、8条植え式の乗用型田植機1(以下、単に田植機1という)に適用した場合の図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、走行機体2の進行方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく進行方向に向かって右側を単に右側と称する。
(1).田植機の概要
まず、図1及び図2を参照しながら、田植機1の概要について説明する。実施形態の田植機1は、走行部としての左右一対の前車輪3及び同じく左右一対の後車輪4によって支持された走行機体2を備えている。走行機体2の前部にはエンジン5が搭載され、エンジン5からの動力をこの後方のミッションケース6に伝達して、前車輪3及び後車輪4を駆動させることにより、前後進走行するように構成されている。ミッションケース6の左右側方にフロントアクスルケース7を突出させ、フロントアクスルケース7から左右外向きに延びる前車軸に前車輪3が舵取り可能に取り付けられている。ミッションケース6の後方に筒状フレーム8を突出させ、筒状フレーム8の後端側にリヤアクスルケース9を固設し、リヤアクスルケース9から左右外向きに延びる後車軸に後車輪4が取り付けられている。
図1及び図2に示されるように、走行機体2の前部及び中央部の上面側には、オペレータ搭乗用の作業ステップ(車体カバー)10が設けられている。作業ステップ10の前部の上方にはフロントボンネット11が配置され、フロントボンネット11の内部にエンジン5を設置している。作業ステップ10の上面のうちフロントボンネット11の後部側方に、足踏み操作用の走行変速ペダル12が配置されている。詳細は省略するが、実施形態の田植機1は、走行変速ペダル12の踏み込み量に応じた変速電動モータの駆動にて、ミッションケース6の油圧無段変速機から出力される変速動力を調節するように構成されている。
また、フロントボンネット11の後部上面側にある運転操作部13には、操縦ハンドル14と走行主変速レバー15と作業レバー16とが設けられている。作業ステップ10の上面のうちフロントボンネット11の後方には、シートフレーム17を介して操縦座席18が配置されている。なお、フロントボンネット11の左右側方には、作業ステップ10を挟んで左右の予備苗載台24が設けられている。
走行機体2の後端部にリンクフレーム19を立設する。リンクフレーム19には、ロワーリンク20及びトップリンク21からなる平行リンク機構22を介して、8条植え用の苗植付装置23が昇降可能に連結されている。オペレータは、作業ステップ10の側方にある乗降ステップ25から作業ステップ10上に搭乗し、運転操作にて圃場内を移動しながら、苗植付装置23を駆動させて圃場に苗を植え付ける苗植え作業(田植え作業)を実行する。なお、苗植え作業中において、苗植付装置23には、予備苗載台24上の苗マットをオペレータが随時補給する。
図3及び図4に示すように、苗植付装置23は、エンジン5からミッションケース6を経由した動力が伝達される植付入力ケース26と、植付入力ケース26に連結する8条用4組(2条で1組)の植付伝動ケース27と、各植付伝動ケース27の後端側に設けられた苗植機構28と、8条植え用の苗載台29と、各植付伝動ケース27の下面側に配置された田面均平用のフロート32とを備えている。苗植機構28には、1条分2本の植付爪30を有するロータリケース31が設けられている。植付伝動ケース27に2条分のロータリケース31が配置されている。ロータリケース31の1回転によって、2本の植付爪30が各々1株ずつの苗を切り取ってつかみ、フロート32にて整地された田面に植え付けることになる。
図示は省略するが、エンジン5からミッションケース6を経由した動力は、前車輪3及び後車輪4に伝達されるだけでなく、苗植付装置23の植付入力ケース26にも伝達される。この場合、ミッションケース6から苗植付装置23に向かう動力は、リヤアクスルケース9の右側上部に設けられた株間変速ケース(図示省略)に一旦伝達され、株間変速ケースから植付入力ケース26に動力伝達される。当該伝達された動力にて、各苗植機構28や苗載台29が駆動する。詳細は省略するが、株間変速ケースには、植え付けられる苗の株間を例えば疎植、標準植又は密植等に切り換える株間変速機構と、苗植付装置23への動力伝達を継断するPTOクラッチとが内蔵されている。
なお、苗植付装置23の左右外側にはサイドマーカ33を備えている。サイドマーカ33は、筋引き用のマーカ輪体34と、マーカ輪体34を回転可能に軸支するマーカアーム35とを有している。各マーカアーム35の基端側が苗植付装置23の左右外側に左右回動可能に軸支されている。サイドマーカ33は、運転操作部13にある作業レバー16の操作に基づき、次工程での基準となる軌跡を田面に着地して形成する作業姿勢と、マーカ輪体34を上昇させて田面から離間させた非作業姿勢とに回動可能に構成されている。
(2).エンジンの支持構造並びにエンジン周辺構造
次に、図3〜図12を参照しながら、走行機体2に対するエンジン5の支持構造並びにエンジン5周辺構造について説明する。図3及び図4に示すように、走行機体2は前後に延びる左右一対の機体フレーム50を備えている。各機体フレーム50は前部フレーム51と後部フレーム52とに二分割されている。前部フレーム51の後端部と後部フレーム52の前端部とが左右横長の中間連結フレーム53に溶接固定されている。左右一対の前部フレーム51の前端部は前フレーム54に溶接固定されている。左右一対の後部フレーム52の後端側は後フレーム55に溶接固定されている。前フレーム54、左右両前部フレーム51及び中間連結フレーム53は平面視四角枠状に構成されている。同様に、中間連結フレーム53、左右両後部フレーム52及び後フレーム55も平面視四角枠状に構成されている。
図5〜図7に示すように、左右両前部フレーム51の前寄り部位は、前後二本のベースフレーム56によって連結されている。当該各ベースフレーム56は、その中間部が左右両前部フレーム51よりも低く位置するようにU字形に折り曲げられた形状に形成されている。各ベースフレーム56の左右端部がそれぞれ対応する前部フレーム51に溶接固定されている。略平板状のエンジン台57及び防振部材としての複数の防振ゴム58を介して、前後両ベースフレーム56にエンジン5が搭載され防振支持されている。前側のベースフレーム56は、これに溶接固定された前中継フレーム59を介して前フレーム54に連結されている。後側のベースフレーム56は、後中継ブラケット60を介してミッションケース6の前部に連結されている。なお、実施形態のエンジン5は、4ストロークV型2気筒のガソリンエンジンである。
図4から分かるように、左右両前部フレーム51の後寄り部位は、ミッションケース6の左右両側に突出したフロントアクスルケース7に連結されている。中間連結フレーム53の中央側には、側面視で後斜め下向きに延びるU字状フレーム61の左右両端部が溶接固定されている。U字状フレーム61の中間部がミッションケース6とリヤアクスルケース9とをつなぐ筒状フレーム8の中途部に連結されている(図3及び図4参照)。後フレーム55の中間部には、左右二本の縦フレーム62の上端側が溶接固定されている。左右両縦フレーム62の下端側には左右横長のリヤアクスル支持フレーム63の中間部が溶接固定されている。リヤアクスル支持ケース63の左右両端部がリヤアクスルケース9に連結されている。なお、左側の前部フレーム51に外向き突設されたステップ支持台64の下方に、エンジン5の排気音を低減させるマフラー65が配置されている。
図4〜図6に示すように、エンジン5の後方に配置されたミッションケース6の前部には、パワーステアリングユニット66が設けられている。パワーステアリングユニット66の上面に立設されたハンドルポスト67の内部にハンドル軸(図示省略)が回動可能に配置されている。ハンドル軸の上端側に操縦ハンドル14が固定されている。パワーステアリングユニット66の下面側には操舵出力軸(図示省略)が下向きに突出している。当該操舵出力軸には、左右の前車輪6を操舵する操舵杆68(図4参照)がそれぞれ連結されている。
実施形態のエンジン5は、出力軸70(クランク軸)を左右方向に向けて前後両ベースフレーム56の中間部上に配置されている。エンジン5及びエンジン台57の左右幅は左右両前部フレーム51間の内法寸法よりも小さく、エンジン5の下部側及びエンジン台57は、前後両ベースフレーム56の中間部上に配置された状態で、左右両前部フレーム51よりも下側に露出している。この場合、エンジン5の出力軸70(軸線)は、側面視で左右両前部フレーム51と重なる位置にある。
エンジン5の出力軸70はエンジン5の左右両側面から外向きに突出している。出力軸70の一方の突端部(実施形態では右突端部)にはエンジン空冷用の吸引ファン71が設けられている(図5参照)。吸引ファン71は出力軸70と一体回転するように構成されている。吸引ファン71はファンカバー72にて覆われている。ファンカバー72の中央部に形成された冷却風取込口73には防塵網74が設けられている。吸引ファン71の回転にて冷却風取込口73から取り込まれた冷却風によって、エンジン5自体が強制的に冷却される。
実施形態の田植機1では、吸引ファン71の回転によって、フロントボンネット11(エンジンルームとも言える)内の左右一方から他方(実施形態では右側から左側)に向けて、エンジン5を冷やす冷却風(外気)が流通するように構成されている。すなわち、フロントボンネット11の左右両側面の下部側に、フロントボンネット11内外に冷却風を流通させる流通口75が形成されている。実施形態では、フロントボンネット11の左右両側面に、複数本のスリット状の貫通穴が上下に適宜間隔を空けて並ぶように形成されている。これら貫通穴群が流通口75に構成されている。
従って、吸引ファン71が回転すると、フロントボンネット11内の空気が右側から左側に流れてフロントボンネット11内の圧力が低下し、フロントボンネット11内外の圧力に差が生ずる。そうすると、右側の流通口75や、右側の前部フレーム51及び作業ステップ10の下方から冷却風が取り込まれ、当該取り込まれた冷却風によってエンジン5等が空冷される。フロントボンネット11内を流通して暖められた冷却風(排風)は、左側の流通口75や、左側の前部フレーム51及び作業ステップ10の下方から、フロントボンネット11外に排出される(図7参照)。
エンジン5の上面には、エアクリーナ(図示省略)を収容するクリーナケース76が上下に適宜間隔を空けて配置されている。クリーナケース76とエンジン5との間に形成された隙間は左右に突き抜けていて、吸引ファン71の回転にて取り込まれた冷却風が通過可能な上部通風路77(図7参照)に構成されている。図示は省略するが、クリーナケース76の下面側のうち吸引ファン71寄りの箇所には、クリーナケース76の内外を連通させる連通穴が形成されている。吸引ファン71の回転にて上部通風路77を通過する冷却風が連通穴を経由してクリーナケース76内に導入される。また、クリーナケース76はエンジン5の吸気系に接続されている。クリーナケース76内のエアクリーナにてろ過された冷却風がエンジン5の吸気系(キャブレータ等)に送られる。吸引ファン71の回転にて冷たい冷却風をクリーナケース76内に取り込むことによって、クリーナケース76内の温度上昇が抑制され、エンジン5の吸気系(キャブレータ等)に冷気が供給される。その結果、エンジン5の駆動効率の向上を図れる。
エンジン5の後面側には、エンジンオイル冷却用の第1オイルクーラ78が設けられている。また、ファンカバー72の外側には、冷却風取込口73に対峙するエンジンオイル冷却用の第2オイルクーラ79が配置されている。第2オイルクーラ79は第1オイルクーラ78に連通接続されていて、第1オイルクーラ78の冷却能力を補填する役割を担っている。吸引ファン71の回転によってフロントボンネット11内に取り込まれる冷却風が第1及び第2オイルクーラ78,79に吹き付けられ、第1及び第2オイルクーラ78,79(内部のエンジンオイル)が強制冷却される。実施形態の第2オイルクーラ79は右前部フレーム51とエンジン5右側面(ファンカバー72側)との間に位置していて、側面視で右側の前部フレーム51と重なるように配置されている。換言すると、第2オイルクーラ79は、エンジン5を上方から覆うフロントボンネット11よりも下側で、吸引ファン71に対峙させて配置されている。
図5〜図7に示すように、フロントボンネット11内では、エンジン5を取り囲む略箱枠状のボンネットフレーム80が、前フレーム54とハンドルポスト67とに連結されている。ボンネットフレーム80の一側部(実施形態では右側部)に溶接固定された枝フレーム81には、上下に跨るように取付ブラケット82が設けられている。当該取付ブラケット82の下部側に第2オイルクーラ79が連結され、ファンカバー72の冷却風取込口73に臨ませている。このため、第2オイルクーラ79は、吸引ファン71の回転で、主に右側の前部フレーム51及び作業ステップ10の下方から取り込まれた冷却風によって、エンジン5よりも先に冷却されることになる。従って、第2オイルクーラ79専用の冷却ファンを用いることなく、第2オイルクーラ79の冷却効率を向上でき、第2オイルクーラ79の小型化にも貢献する。
取付ブラケット82の上部側には、エンジン5に関係するコントローラ等の電装部品83が取り付けられている。電装部品83は右側の流通口75にフロントボンネット11の内側から臨ませている。吸引ファン71の回転によって右側の流通口75を通り抜けた冷却風は電装部品83に吹き付けられ、電装部品83が冷却されることになる。右側の流通口75からの冷却風によって、エンジン5の周囲に配置された電装部品83の温度上昇を抑制できる。エンジン5の熱による電装部品83への悪影響を回避できる。なお、電装部品83を挟んで右側の流通口75の反対側に、クリーナケース76とエンジン5との間の上部通風路77の入口側が位置している(図7参照)。
図6及び図7に示すように、エンジン5のうち吸引ファン71と反対側の他側面(実施形態では左側面)の上部側には、上部通風路77の出口側が開口している。そして、エンジン5左側面の上部側には、上部通風路77の出口側を取り囲むように、側面視門形の通風ダクト84が取り付けられている。通風ダクト84は、左側の前部フレーム51よりも高い位置におかれていて、左側の流通口75にフロントボンネット11の内側から臨ませている。通風ダクト84によってエンジン5の上部排風路85が形成されている。つまり、上部通風路77を通過してエンジン5の熱を奪って暖められた排風は、通風ダクト84を介して左側の流通口75からフロントボンネット11外に排出される。通風ダクト84の存在によって、暖められた排風がフロントボンネット11内に戻ってとどまるのを防止して左側の流通口75からスムーズに排出でき、排風の排出効率を向上できる。
図7に示すように、エンジン5の熱を奪って暖められた排風は、上部排風路85経由でフロントボンネット11外に排出されるだけでなく、左側の前部フレーム51及び作業ステップ10の下方を経由しても排出される。すなわち、左側の前部フレーム51及び作業ステップ10の下方は、エンジン5の下部排風路86に構成されている。
エンジン5のうち吸引ファン71と反対側の他側面(実施形態では左側面)には、エンジンの排気系に連通する排気管87が配置されている。排気管87は、通風ダクト84と出力軸70の他方の突端部(実施形態では左突端部)との間を横切ってから、出力軸70を挟んだ一方(実施形態では前側)で縦向きに延長したL字状に形成されている。実施形態の排気管87は、通風ダクト84と出力軸70との間を横切って延びる横管部87aと、出力軸70よりも前側で下向きに延長した縦管部87bと、縦管部87bの下端側からマフラー65に向けて延びる連結管部87cとにより構成されている。横管部87aの基端側がエンジン5の一方の気筒に接続されている。横管部87aのうち縦管部87b寄りの部位から分岐した部分はエンジン5の他方の気筒に接続されている。従って、両気筒からの排気ガスは、横管部87aにおける縦管部87bの手前で合流する。連結管部87cの先端側がマフラー65の排気入口側に接続されている。
エンジン5の左側面には、排気管87の横管部87a及び縦管部87bを囲う遮蔽カバー88が設けられている。実施形態の遮蔽カバー88は、横管部87aを覆う横カバー体89と、縦管部87bを覆う縦カバー体90とを備えている。横カバー体89は、上面板、後面板及び左側面板を有する金属板製のものである。また、縦カバー体90は、上面板、下面板、左右側面板及び前面板を有する金属板製のものである。すなわち、横カバー体89及び縦カバー体90は、出力軸70の他方の突端部(実施形態では左突端部)に設けられた排出ファン91側を開口させた略箱状に形成されている。横カバー体89と縦カバー体90とは、排気管87の横管部87aと縦管部87bとを囲う関係上、側面視で略L字状に並んでいる。遮蔽カバー88で排気管87の横管部87a及び縦管部87bを囲うことによって、排気管87から発生する熱がフロントボンネット11内で拡散するのを抑制している。なお、実施形態の通風ダクト84及び遮蔽カバー88は、左前部フレーム51とエンジン5左側面との間に位置していて、フロントボンネット11内に収まっていることは言うまでもない(図7参照)。
図6及び図9に示すように、エンジン5左側面のうち遮蔽カバー88の内側(横カバー体89と縦カバー体90とで仕切られた内側)には、出力軸70の他方の突端部(実施形態では左突端部)が突出している。出力軸70の左突端部には、吸引ファン71とは別個に、排出ファン91が設けられている。排出ファン91は、吸引ファン71と同様に、出力軸70と一体回転するように構成されている。排出ファン91の回転によって周囲の排風が取り込まれ、主に下部排風路86(左側の前部フレーム51及び作業ステップ10の下方)からフロントボンネット11外に排出される。従って、エンジン5右側面側の吸引ファン71の回転にてエンジン5に冷却風を吹き付けて、エンジン5を強制冷却するだけでなく、エンジン5左側面側の排出ファン91の回転にて、エンジン5の熱を奪って暖められた排風をフロントボンネット11外に排出することになり、吸引ファン71の冷却風取込効果と排出ファン91の排風排出効果とがあいまって、エンジン5の冷却効率を格段に向上できる。
また、前述の通り、横カバー体89及び縦カバー体90は排出ファン91側を開口させた略箱状に形成されているため、排気管87から発生する熱は、フロントボンネット11内で拡散せず、排出ファン91の回転によって下部排風路86経由でフロントボンネット11外に積極的に排出される。従って、排気管87のあるエンジン5左側面側の熱環境、ひいてはフロントボンネット11内の熱環境を改善できる。
図6、図8、図9及び図11に示すように、出力軸70の左突端部には、排出ファン91だけでなく、回転力伝達用の出力プーリ92,93が複数個(実施形態では2つ)設けられている。出力プーリ92,93は、出力軸70の回転によって排出ファン91と共に回転するように構成されている。各出力プーリ92,93は、排出ファン91を挟んで出力軸70の軸線方向前後に振り分けて配置されている。エンジン5に近い方の出力プーリ92は、後述するジェネレータ94(詳細は後述する)への回転力伝達用の第1出力プーリ92であり、エンジンから遠い方の出力プーリ93は、ミッションケース6から左外側に突出したミッション入力軸97(詳細は後述する)への回転力伝達用の第2出力プーリ93である。
ここで、出力軸70の左突端部を挟んで排気管87の縦管部87bの反対側(実施形態では後側)に、ジェネレータ94が配置されている。ジェネレータ94は、エンジン5左側面のうち出力軸70の左突端部よりも左後方で且つ横カバー体89の下方にボルト締結された固定ブラケット95に取り付けられている。図示は省略するが、エンジン5左側面とジェネレータ94との間には左右に適宜間隔を空けている。ジェネレータ94のうちエンジン5左側面と対峙する側に、補機入力プーリ94aが設けられている。出力軸70側の第1出力プーリ92とジェネレータ94側の補機入力プーリ94aとに伝達ベルト96が巻き掛けられている。プーリ92及びベルト96伝動系を介して、エンジン5からジェネレータ94に回転力が伝達され、ジェネレータ94が発電する。ジェネレータ94は固定ブラケット95を介してエンジン5の左側面に取り付けられているから、エンジン5と同じ振動系に含まれることになる。このため、ジェネレータ94自体にかかる負荷を低減でき、ジェネレータ94の変形や破損のおそれを抑制できる。
一方、ミッションケース6から左外側に突出したミッション入力軸97には、ミッション入力プーリ98が設けられている。出力軸70側の第2出力プーリ93とミッションケース6側のミッション入力プーリ98とに伝達ベルト99が巻き掛けられている。プーリ93,98及びベルト99伝動系を介して、エンジン5からミッションケース6に回転力が伝達される。ミッション出力軸97のうちミッション入力プーリ98よりも左外側に、ミッションケース6空冷用のミッション冷却ファン100が設けられている。ミッション冷却ファン100は、プーリ93,98及びベルト99伝動系を介して伝達される回転力によってミッション入力プーリ98と共に回転するように構成されている。
図6及び図9に示すように、エンジン5左側面のうち遮蔽カバー88の内側に、排出ファン91、第1及び第2出力プーリ92,93、ジェネレータ94及び伝達ベルト96,99が配置される。このため、エンジン5左側面のうち遮蔽カバー88の内側に、プーリ92,93及びベルト96,99伝動系やジェネレータ94をコンパクトに配置したものでありながら、排出ファン91の回転によって、エンジン5左側面周辺の熱を下部排風路86経由でスムーズに排出できる。また、プーリ92,93及びベルト96,99伝動系やジェネレータ94に排風を吹き付けて冷やせるので、プーリ92,93及びベルト96,99伝動系やジェネレータ94の熱劣化を抑制でき、これらの耐久性向上を図れる。
図11から分かるように、排出ファン91の外径は各出力プーリ92,93よりも大径に構成されている。このため、排出ファン91の回転にて排風を下部排風路86経由で排出する際に、各出力プーリ92,93の存在が邪魔になるおそれが少なく、排出ファン91の回転による排風の排出効率を良好に維持できる。また、各出力プーリ92,93はエンジン5に近いものほど小径に構成されている。このため、排出ファン91の回転にてエンジン5左側面側の熱を奪う際に、エンジン5に近い方の第1出力プーリ92が存在する影響を少なくできる。その上、プーリ92,93及びベルト96,99伝動系の熱劣化を抑制しながら、出力軸70の左突端部に各出力プーリ92,93と排出ファン91とをコンパクトに配置でき、エンジン5ひいてはこれを覆うフロントボンネット11の左右幅の拡大を抑制できる。
図3、図6及び図11に示すように、出力軸70側の第2出力プーリ93とミッション出力プーリ98との間には、伝達ベルト99を緊張させる張力付与部材101が配置されている。張力付与部材101は、伝達ベルト99に下方から当接するテンションプーリ102を備えている。テンションプーリ102は、エンジン台57の左側部に上下回動可能に連結されたテンションアーム103の自由端側に軸支されている。テンションアーム103は、付勢ばね104によって上向き回動方向に引っ張られていて、テンションプーリ102を常時伝達ベルト99に下方から押圧当接させている。付勢ばね104は、テンションアーム103基端側のボス部105に立設された揺動アーム106と、エンジン台57の左側部に突設された支持板107との間に装架されている。
このように、エンジン5が搭載されるエンジン台57に張力付与部材101を設けると、張力付与部材101がエンジン5と同じ振動系に含まれることになるから、張力付与部材101自体にかかる負荷を低減できる。その結果、張力付与部材101の変形や破損のおそれを抑制できる。また、張力付与部材101の振動がエンジン5の振動に追従することになり、伝達ベルト99を適正なテンションがかかった状態に維持し易いという利点もある。実施形態では、エンジン5とミッションケース6とを前後に並べた状態で、第2出力プーリ93とミッション出力プーリ98との間に、張力付与部材101だけでなくジェネレータ94も一緒に位置させていて、エンジン5とミッションケース6との間のスペースの有効利用も図っている。
さて、実施形態のエンジン5は、前後両ベースフレーム56に複数の防振ゴム58を介して支持されたエンジン台57にボルト締結されている。図8、図9及び図12に示すように、エンジン台57には、エンジン5の底面に臨む上下貫通状の抜き穴108が形成されている。エンジン5の底面に形成されたリブ溝109をエンジン台57の抜き穴108に臨ませている。この場合、抜き穴108からエンジン左側面側の排出ファン91に向けて冷却風が流通するように、エンジン台57上にエンジン5が抜き穴108から(右側に)ずらして配置されている。換言すると、エンジン5の底面でエンジン台57の抜き穴108全体を覆い隠さずに抜き穴108の一部を上下に開口させている。エンジン台57の下側から抜き穴108を覗いた場合、抜き穴108の一部には、エンジン5の左側面側にある第1出力プーリ92や伝達ベルト96が見えることになる。
このように、エンジン5の底面に臨む上下貫通状の抜き穴108をエンジン台57に形成すると、吸引ファン71の回転にて取り込まれた冷却風をエンジン5の底面に吹き付けできるから、エンジン5内部のエンジンオイルを積極的に冷却して、エンジンオイル温度の過度の上昇を抑制できる。第1及び第2オイルクーラ78,79の冷却効率とあいまって、エンジンオイルの冷却を効果的に行い、エンジン5のヒートバランスを良好に保持できる。また、抜き穴108から排出ファン91に向けて冷却風が流通するように、エンジン台57上にエンジン5が抜き穴108からずらして配置されているから、排出ファン91の回転によって、エンジン5の底面側から左側面側に向けて抜き穴108経由で冷却風を送り込める。このため、エンジン5左側面周囲の排風に、比較的低温の冷却風を混合させて、排風自体の温度を低くでき、エンジン5左側面側の熱環境を大幅に改善できる。
(3).まとめ
上記の実施形態によると、走行機体2に搭載されたエンジン5と、前記エンジン5の動力を変速して前記走行機体2の走行部3,4に伝達するミッションケース6と、前記走行機体2に装着された苗植付装置23とを備えており、前記エンジン5の一側面にエンジン空冷用の吸引ファン71が設けられている田植機1であって、前記エンジン5のうち前記吸引ファン71と反対側の他側面には、前記他側面から突出した出力軸70を挟んで一方に、前記エンジン5の排気系に連通する排気管87(87b)を延長させ、他方にはジェネレータ94が配置されているから、前記出力軸70を挟んだ両側に前記排気管87(87b)と前記ジェネレータ94とを振り分けて、前記排気管87(87b)の熱による前記ジェネレータ94への悪影響を抑制しながら、前記エンジン5の他側面側に前記排気管87(87b)と前記ジェネレータ94とをコンパクトにまとめて配置できる。
また、前記出力軸70に固定された出力プーリ93と、前記ミッションケース6のミッション入力軸97に固定されたミッション入力プーリ98とに巻き掛けられた伝達ベルト99と、前記伝達ベルト99を緊張させる張力付与部材101とを更に備えており、前記出力プーリ93と前記ミッション入力プーリ98との間に、前記張力付与部材101及び前記ジェネレータ94を位置させているから、前記エンジン5と前記ミッションケース6との間のスペースを有効利用して、前記ミッションケース6へのプーリ93,98及びベルト99伝動系の配置のコンパクト化を図れる。
更に、前記走行機体2に防振部材58を介して取り付けられたエンジン台57に前記エンジン5が搭載されており、前記張力付与部材101が前記エンジン台57に取り付けられており、前記ジェネレータ94が前記エンジン5の前記他側面に締結された固定ブラケット95に取り付けられているから、前記張力付与部材101及び前記ジェネレータ94が前記エンジン5と同じ振動系に含まれることになる。このため、前記張力付与部材101及び前記ジェネレータ94自体にかかる負荷を低減でき、前記張力付与部材101及び前記ジェネレータ94の変形や破損のおそれを抑制できる。
上記の実施形態によると、走行機体2に搭載されたエンジン5と、前記エンジン5の動力を変速して前記走行機体2の走行部3,4に伝達するミッションケース6と、前記走行機体2に装着された苗植付装置23とを備えており、前記エンジン5の一側面にエンジン空冷用の吸引ファン71が設けられている田植機1であって、前記走行機体2を構成する左右一対の機体フレーム50の間に、前記エンジン5が前記両機体フレーム50よりも下側に突出するように配置されており、前記エンジン5のうち前記吸引ファン71と反対側の他側面には、前記機体フレーム50よりも上方に、前記吸引ファン71からの冷却風を通過させる通風ダクト84が配置されており、前記通風ダクト84によって前記エンジン5の上部排風路85が形成され、前記エンジン5の前記他側面側にある機体フレーム50の下方が前記エンジン5の下部排風路86に構成されているから、前記通風ダクト84の存在によって、前記エンジン5の熱を奪って暖められた排風がエンジンルーム内で拡散するのを抑制できる。その上、前記排風がエンジンルーム内に戻ってとどまるのを防止して、前記上部排風路85からスムーズに排出でき、排風の排出効率を向上できる。また、前記エンジン5の排風路を前記上部排風路85と前記下部排風路86との二つに分けて、前記排風を効率よく前記エンジンルーム外に排出でき、前記エンジン5の冷却効率を良好な状態に維持できる。
また、前記エンジン5の上面に、エアクリーナを収容するクリーナケース76が上下に適宜間隔を空けて配置されており、前記クリーナケース76と前記エンジン5との間の上部通風路77が前記通風ダクト84に連通しているから、前記吸引ファン71の回転にて前記エンジン5上面周辺に冷却風を取り込み、前記エンジン5上面周辺を冷却できる。そして、前記エンジン5上面周辺の熱を奪って暖められた排風を前記通風ダクト84経由でスムーズに排出できる。従って、前記エンジン5の冷却効率向上の一助になる。
更に、前記エンジン5の前記他側面から突出した出力軸70は、前記エンジン5の前記他側面側にある機体フレーム50と側面視で重なる位置にあり、前記エンジン5の排気系に連通する排気管87は、前記通風ダクト84と前記出力軸70との間を横切ってから、前記出力軸70を挟んで一方で縦向きに延長したL字状に形成されており、前記エンジン5の前記他側面には、前記排気管87を囲う遮蔽カバー88が設けられているから、前記遮蔽カバー88の存在によって、前記排気管87から発生する熱がエンジンルーム内で拡散するのを抑制できる。
上記の実施形態によると、走行機体2に搭載されたエンジン5と、前記エンジン5の動力を変速して前記走行機体2の走行部3,4に伝達するミッションケース6と、前記走行機体2に装着された苗植付装置23とを備えており、前記エンジン5の一側面にエンジン空冷用の吸引ファン71が設けられている田植機1であって、前記エンジン5のうち前記吸引ファン71と反対側の他側面には、前記吸引ファン71とは別個に、排出ファン91が設けられているから、前記エンジン5一側面側の前記吸引ファン71によって前記エンジン5に冷却風を吹き付けて、前記エンジン5を強制冷却するだけでなく、前記エンジン5他側面側の前記排出ファン91の回転にて、前記エンジン5の熱を奪って暖められた排風をエンジンルーム外に排出することになる。従って、前記吸引ファン71の冷却風取込効果と前記排出ファン91の排風排出効果とがあいまって、前記エンジン5の冷却効率を格段に向上できる。
また、前記エンジン5の出力軸70には前記排出ファン91と共に回転力伝達用の出力プーリ92,93が設けられており、前記排出ファン91と前記出力プーリ92,93とは、前記出力軸70の回転によって共に回転するように構成されているから、前記排出ファン91の回転を利用して前記出力プーリ92,93に風を吹き付け、前記出力プーリ92,93を冷却できる。このため、前記排出ファン91及び前記出力プーリ92,93をコンパクトに配置しつつ、前記出力プーリ92,93の熱劣化を抑制でき、これらの耐久性向上を図れる。前記排出ファン91及び前記出力プーリ92,93の配置のコンパクト化を図れるから、前記エンジン5ひいてはエンジンルームの左右幅の拡大を抑制できる。
更に、前記排出ファン91の外径は前記出力プーリ92,93よりも大径に構成されているから、前記排出ファン91の回転にて排風を排出する際に、前記出力プーリ92,93の存在が邪魔になるおそれが少なく、前記排出ファン91の回転による排風の排出効率を良好に維持できる。
しかも、前記出力プーリ92,93を複数個備えており、前記複数の出力プーリ92,93は前記エンジン5に近付くほど小径に構成されているから、前記排出ファン91の回転にて前記エンジン5他側面側の熱を奪う際に、前記エンジン5に近い方の出力プーリ92が存在する影響を少なくできる。
上記の実施形態によると、走行機体2に搭載されたエンジン5と、前記エンジン5の動力を変速して前記走行機体2の走行部3,4に伝達するミッションケース6と、前記走行機体2に装着された苗植付装置23とを備えており、前記エンジン5の一側面にエンジン空冷用の吸引ファン71が設けられている田植機1であって、前記走行機体2に防振部材58を介して取り付けられたエンジン台57に前記エンジン5が搭載されており、前記エンジン台57には、前記エンジン5の底面に臨む抜き穴108が形成されているから、前記吸引ファン71の回転にて取り込まれた冷却風を前記エンジン5の底面に吹き付けできる。従って、前記エンジン5内部のエンジンオイルを積極的に冷却して、エンジンオイル温度の過度の上昇を抑制でき、前記エンジン5のヒートバランスを良好に保持できる。
また、前記エンジン5のうち前記吸引ファン71と反対側の他側面には、前記吸引ファンとは別個に、排出ファンが設けられており、前記抜き穴から前記排出ファンに向けて冷却風が流通するように、前記エンジン台上に前記エンジンが前記抜き穴からずらして配置されているから、前記排出ファン91の回転によって、前記エンジン5の底面側から他側面側に向けて前記抜き穴108経由で冷却風を送り込めることになる。このため、前記エンジン5他側面周囲の排風に、比較的低温の冷却風を混合させて、排風自体の温度を低くでき、前記エンジン5他側面側の熱環境を大幅に改善できる。
更に、前記走行機体2を構成する左右一対の機体フレーム50の間に、前記エンジン5及び前記エンジン台57が前記両機体フレーム50よりも下側に突出するように配置されているから、前記エンジン5の底面側から冷却風をスムーズに取り込める。
上記の実施形態によると、走行機体2に搭載されたエンジン5と、前記エンジン5の動力を変速して前記走行機体2の走行部3,4に伝達するミッションケース6と、前記走行機体2に装着された苗植付装置23とを備えており、前記エンジン5の一側面にエンジン空冷用の吸引ファン71が設けられている田植機1であって、前記走行機体2を構成する左右一対の機体フレーム50の間に、前記エンジン5が前記両機体フレーム50よりも下側に突出するように配置されており、前記エンジン5を上方から覆うフロントボンネット11よりも下側で、前記吸引ファン71に対峙させてオイルクーラ79が配置されているから、前記オイルクーラ79は、前記吸引ファン71の回転で、主に前記機体フレーム50の下方から取り込まれた冷却風によって、前記エンジン5よりも先に冷却されることになる。従って、前記オイルクーラ79専用の冷却ファンを用いることなく、前記オイルクーラ79の冷却効率を向上できる。前記オイルクーラ79の小型化にも貢献する。
また、前記フロントボンネット11の下部側に形成された流通口75に、前記オイルクーラ79の上方に配置された電装部品83を臨ませ、前記エンジン5を取り囲むように前記フロントボンネット11内に設けられたボンネットフレーム80に、前記オイルクーラ79及び前記電装部品83を支持させているから、前記吸引ファン71の回転によって前記流通口75を通り抜けた冷却風が前記電装部品83に吹き付けられ、前記電装部品83が冷却されることになる。前記流通口75からの冷却風によって、前記エンジン5の周囲に配置された前記電装部品83の温度上昇を抑制できる。前記エンジン5の熱による前記電装部品83への悪影響を回避できる。前記ボンネットフレーム80を利用して前記オイルクーラ79と前記電装部品83との支持構造を簡素化できる。
上記の実施形態によると、走行機体2に搭載されたエンジン5と、前記エンジン5の動力を変速して前記走行機体2の走行部3,4に伝達するミッションケース6と、前記走行機体2に装着された苗植付装置23とを備えており、前記エンジン5の一側面にエンジン空冷用の吸引ファン71が設けられている田植機1であって、前記エンジン5は出力軸70を左右方向に向けて前記走行機体2に搭載されており、前記エンジン5のうち前記吸引ファン71と反対側の他側面に、前記吸引ファン71とは別個に、排出ファン91が設けられており、前記排出ファン91を囲う遮蔽カバー88が前記エンジン5の他側面に設けられているから、前記吸引ファン71の冷却風取込効果と前記排出ファン91の排風排出効果とがあいまって、前記エンジン5の冷却効率を格段に向上できることに加えて、前記遮蔽カバー88の存在によって、前記エンジン5左側面周辺の熱がエンジンルーム内で拡散するのを抑制できる。
また、前記エンジン5の出力軸70には前記排出ファン91と共に回転力伝達用の出力プーリ92,93が設けられており、前記エンジン5の他側面のうち前記遮蔽カバー88の内側に、前記排出ファン91、ジェネレータ94及びプーリ92,93及びベルト96,99伝動系が配置されているから、前記プーリ92,93及びベルト96,99伝動系や前記ジェネレータ94をコンパクトに配置しながら、前記排出ファン91の回転によって、前記エンジン5左側面周辺の熱をスムーズに排出できる。また、前記排出ファン91の回転によって、前記プーリ92,93及びベルト96,99伝動系や前記ジェネレータ94に排風を吹き付けて冷やせるから、前記プーリ92,93及びベルト96,99伝動系や前記ジェネレータ94の熱劣化を抑制でき、これらの耐久性向上を図れる。
(4).その他
本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。