以下、添付の図面に基づき、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明の実施形態を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
まず、図1に基づいて、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
図1において、符号1は、本実施形態に係る画像形成装置であるインクジェットプリンタの装置本体である。当該装置本体1には、画像読取部2と、画像形成部3と、給紙部4等が配設されている。
画像読取部2は、原稿台上に置かれた原稿を、密着イメージセンサー(図示せず)を配した読み取り位置に給紙し、当該密着イメージセンサーによる画像読み取り後に、原稿排出トレイ(図示せず)に原稿を排紙するように構成されている。画像形成部3は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色のライン型インクジェットヘッド10K、10C,10M,10Yを有する画像形成ヘッドユニット11を備えている。給紙部4には、シート材としての用紙Pを収容した複数の給紙カセット12が配設されている。各給紙カセット12には、収容されている用紙Pを送り出すための供給ローラ13が設けてある。各供給ローラ13の用紙搬送方向下流側には、用紙Pを一枚ずつ分離するためのフィードリバースローラ対50a,50b,51a,51bが配設されている。
また、本実施形態では、装置本体1の図の右側に、別の給紙部としての給紙装置6が配設されている。この給紙装置6又は上記給紙カセット12から供給された用紙は、画像形成部3で画像が形成された後、最終的に装置本体1の図の左側に設けられた排紙トレイ20に排出されるようになっている。また、画像形成後の用紙に、ステイプル処理、折り処理、穿孔処理及び製本処理等のいわゆる後処理を施す後処理装置(フィニッシャ)を設けてもよい。
図1において、二点鎖線は用紙が搬送される搬送経路である。また、その二点鎖線に付された矢印の方向は、用紙の搬送方向を示す。本実施形態では、搬送経路は、第1〜第5搬送経路A〜Eによって構成されている。
第1搬送経路Aは、上記給紙カセット12又は給紙装置6から供給された用紙を画像形成部3へ案内するための搬送経路である。詳しくは、第1搬送経路Aは、給紙カセット12から給紙された用紙を画像形成部3へ案内するための横方向及び縦方向の搬送経路と、給紙装置6から給紙された用紙を画像形成部3へ案内するための横方向の搬送経路とが、途中で合流して構成されている。また、第1搬送経路Aにおいて、合流位置の搬送方向下流側には、用紙のスキュー補正と搬送タイミングの調整を行うレジストローラ対25a,25bが配設されている。
第2搬送経路Bは、画像形成後の用紙を装置外へ排出するための搬送経路であり、第1搬送経路Aから水平方向に直進するように配設されている。第2搬送経路Bの搬送方向下流端側には、用紙を装置外に排出するための排出ローラ対26a,26bが配設されている。また、排出ローラ対26a,26bよりも、搬送方向上流側には、用紙のカールを除去するためのデカーラ部90が設けられている。デカーラ部90としては、例えば、3つのコロを対向させてそれらの間にカール矯正のための湾曲経路を形成するものや、ソフトローラにハードローラを当接させてその当接部にカール矯正のための湾曲経路を形成するものなど、既存の技術を採用可能である。
第3搬送経路Cは、第1搬送経路Aの搬送方向下流側から下方へ伸び、装置本体1の下部で上方へ引き返して、第2搬送経路Bのデカーラ部90の上流側で合流している。また、第3搬送経路Cの搬送方向上流側で、第2搬送経路Bと分かれている箇所には、用紙を第2搬送経路Bと第3搬送経路Cのいずれかに選択して案内するための搬送経路切換手段としての切換爪28が配設されている。また、第3搬送経路Cの途中には、正逆回転可能な反転搬送ローラ対27a,27bが配設されている。反転搬送ローラ対27a,27bが正回転する場合は、用紙は図の下方の排出方向へと搬送され、反転搬送ローラ対27a,27bが逆回転する場合は、用紙は前記排出方向とは逆方向(図の上方)へ搬送されるようになっている。
第4搬送経路Dは、第3搬送経路Cの途中で分岐し、第1搬送経路Aに合流するように配設されている。詳しくは、第4搬送経路Dは、第3搬送経路Cの反転搬送ローラ対27a,27bよりも正回転時の搬送方向(排出方向)の上流側で分岐している。
第5搬送経路Eは、上記第4搬送経路Dが第3搬送経路Cから分岐する位置とほぼ同じ位置(近傍)で、第4搬送経路Dとは反対側に分岐し、第3搬送経路Cの下流側で合流している。
また、第4搬送経路Dと第5搬送経路Eとが第3搬送経路Cから分岐する分岐部には、第3搬送経路Cから逆送される用紙を第4搬送経路D又は第5搬送経路Eへ案内するための搬送経路切換手段としての切換爪29が配設されている。さらに、その分岐部に対して、反転搬送ローラ対27a,27bの正回転時の搬送方向(排出方向)の上流側と下流側には、用紙を検知する検知手段としての第1用紙センサ95と第2用紙センサ96とが配設されている。本実施形態では、第1及び第2用紙センサ95,96として、光を照射する発光部とその照射された光を受光する受光部とを有する透過型の光学センサを用いている。この場合、発光部と受光部との間を用紙が通過することにより、その用紙によって発光部から受光部への光が遮断されることで、用紙が検知される。
また、装置本体1には、上記搬送経路に沿って用紙を搬送するための各種搬送手段を備えたシート搬送装置が搭載されている。このシート搬送装置は、搬送手段の1つとして、画像形成部3の下方に配設された搬送ベルト18を備える。搬送ベルト18は、無端状のベルトで構成されており、1つの駆動ローラ14と3つの従動ローラ15,16,17によって張架されている。また、搬送ベルト18には、テンションローラ19によって所定の張力が付与されている。駆動ローラ14は図示しない駆動装置によって回転駆動可能となっており、駆動ローラ14が回転することによって、搬送ベルト18は図の矢印方向に回転するようになっている。
ここで、搬送ベルト18上で用紙を担持して搬送する搬送面(搬送経路)は、水平状に配設された第1ストレート搬送部S1と、その搬送方向下流側に連設された円弧状の第1曲げ搬送部M1と、その搬送方向下流側に傾斜して連設された第2ストレート搬送部S2と、その搬送方向下流側に連設された円弧状の第2曲げ搬送部M2と、その搬送方向下流側に傾斜して連設された第3ストレート搬送部S3とによって構成されている。
また、シート搬送装置は、搬送ベルト18の裏面側からエアを吸引して用紙を搬送ベルト18に吸着させるエア吸着手段を備えている。このエア吸着手段は、搬送ベルト18の裏面側に配設された導風路としての第1〜第4吸引ダクト21〜24と、各吸引ダクト21〜24からそれぞれ独立してエア吸引するエア吸引手段としての吸引用ファン(図示省略)を有している。上記搬送ベルト18には、エアを吸引するための多数の小孔が形成されており、これら小孔から各吸引ダクト21,22,23,24を介してエアを吸引することにより、搬送ベルト18上に用紙を吸着させる仕組みとなっている。
各吸引ダクトの配設位置について詳しく説明すると、第1吸引ダクト21は、画像形成部3の下方で第1ストレート搬送部S1に対向して配設されている。第2吸引ダクト22は、第1曲げ搬送部M1の用紙搬送方向上流側近傍で第1ストレート搬送部S1に対向して配設されている。第3吸引ダクト23は、第2ストレート搬送部S2に対向した位置に配設されている。また、第4吸引ダクト24は、第3ストレート搬送部S3に対向した位置に配設されている。
また、シート搬送装置は、搬送ベルト18に用紙を静電吸着させる静電吸着手段を備える。静電吸着手段は、搬送ベルト18上で用紙を帯電させる帯電手段としての帯電器33によって構成されている。図1に示すように、帯電器33は、画像形成部3よりも用紙搬送方向の下流側に配設されている。一方、搬送ベルト18は、その表面に絶縁層、裏面に導電層を有する多層構造となっている。また、搬送ベルト18を張架する駆動ローラ14、従動ローラ15,16,17、テンションローラ19のうちの少なくとも1つが、表面を導電性の金属で構成したローラで構成され、それが図示しないアースに接続されている。帯電器33によって用紙を帯電させると、用紙の表面に蓄えられた電荷と、アース接続された搬送ベルト18の逆極性の電荷とによって発生する電気的な引力で、用紙が搬送ベルト18に吸着される仕組みとなっている。
上記帯電器33としては、非接触型のコロナ帯電器、特に用紙表面電位を制御しやすいスコロトロン型帯電器を採用することが望ましい。接触型の帯電器を適用することも可能であるが、帯電器が用紙の画像形成面と接触することで汚れると、その汚れが次に通過する用紙に付着して画質が低下する虞がある。
また、搬送ベルト18上の用紙担持領域の下流側、つまり第3ストレート搬送部S3の用紙搬送方向下流側には、用紙に溜まった電荷を除電する除電手段としての除電器34が配設されている。除電器34としては、例えば、除電ブラシ等の接触型のものを使用することができるが、除電ブロア等の非接触型のものを使用した方が、用紙上の画像を乱す虞がないため望ましい。
また、搬送ベルト18の外周側には、搬送ベルト18で搬送される用紙にエアを吹き付けるエア吹き付け手段としての第1エア吹き付け装置31と第2エア吹き付け装置32が設けてある。第1エア吹き付け装置31は、第1曲げ搬送部M1(又は従動ローラ16の位置)よりも用紙搬送方向の下流側に配設され、第2エア吹き付け装置32は、第2曲げ搬送部M2(又は従動ローラ17の位置)よりも用紙搬送方向の下流側に配設されている。
また、別の搬送手段としての搬送ベルト39が、第2搬送経路Bに配設されている。この搬送ベルト39も、多数の小孔が形成された無端状のベルトで構成され、駆動ローラ37及び従動ローラ38によって張架されている。また、その搬送ベルト39の下方には、搬送ベルト39に形成された小孔からエアを吸引するための吸引ダクト40が配設されている。この吸引ダクト40にも、図示しない吸引用ファンが設けられている。そして、その吸引用ファンを駆動させることによって、搬送ベルト39の小孔からエアを吸引して、用紙を搬送ベルト39上に吸着できるようになっている。
また、その他の搬送手段として、複数の搬送ローラ52a,52b〜61a,61bが配設されている。各搬送ローラの中で、用紙の画像形成面側に接触する方のローラ(図1の符号56a,57a,58a,59a,60a,61a,61bで示すローラ)には、画像形成面との接触面積が小さいローラを採用している。具体的には、それらのローラは、プラスチック製又はゴム製のローラ部材の表面にセラミック等の砥粒を多数接着して構成されている。これにより、ローラは画像形成面に対して点接触することができ、画像形成面の乱れが生じにくくなる。また、用紙の画像形成面側に接触するローラを、薄肉の金属等で形成した拍車ローラで構成してもよい。この場合も、ローラが画像形成面に対して点接触となるため、同様に画像形成面の乱れが生じにくくなる。また、同様に、上記排出ローラ対26a,26bの両方のローラと、上記反転搬送ローラ対27a,27bの用紙の画像形成面側に接触する方のローラ27aも、画像形成面との接触面積が小さいローラで構成されおり、画像形成面の乱れを生じにくくしている。
さらに、本実施形態では、用紙の画像形成面の乱れを防止するために、上流側と下流側のローラ間の線速差を極力無くすようにしている。これにより、上流側と下流側のローラ間で、用紙が撓むことによって画像形成面が搬送ガイド板に当接したり、反対に用紙が引っ張られることによって画像形成面がローラと擦れたりするのを防止することが可能となる。上流側と下流側のローラ間の線速をほぼ一定にするには、例えば、上流側のローラにワンウェイクラッチを設けたり、上流側と下流側のローラを同じ駆動モータで駆動させたりすることによって可能となる。
以下、図1を参照しつつ、本実施形態に係るインクジェットプリンタの基本動作について説明する。
印刷開始の指示があると、給紙カセット12又は給紙装置6から用紙Pが送り出される。送り出された用紙Pは、レジストローラ対25a,25bに突き当たって一時停止される。これにより、用紙のスキューが補正される。その後、所定のタイミングでレジストローラ対25a,25bの回転を開始し、用紙Pが搬送ベルト18上へ搬送される。用紙Pは、第1吸引ダクト21のエア吸引によって搬送ベルト18上に吸着され、その状態で搬送ベルト18が回転することにより、用紙Pは画像形成ヘッドユニット11の下方へ搬送される。また、このとき、図示しないセンサによって用紙Pの先端が検知される。このセンサの検知に基づいて、画像形成ヘッドユニット11が所定のタイミングで駆動され、画像読取部2で読み取った原稿の画像情報に基づいて、各色のインクジェットヘッド10K、10C,10M,10Yのノズルから用紙Pにインクが吐出される。かくして、用紙P上にフルカラー画像が形成される。
また、4つのインクジェットヘッド10K、10C,10M,10Yのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つのインクジェットヘッドを使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。なお、この間の搬送ベルト18の速度は極力変動しないように制御されているが、実際はその速度変動を図示しない検知装置によって検知することにより、用紙位置に合わせた正確なタイミングでインクの吐出が行われる。
上記画像形成部3で画像が形成された用紙Pをそのまま装置外に排出する場合は、切換爪28を図の点線で示す位置に配設して、用紙Pを水平方向に直進させる。そして、用紙Pは第2搬送経路Bに配設した搬送ベルト39上へと搬送され、吸引ダクト40のエア吸引によって用紙Pは搬送ベルト39上に吸着される。その状態で搬送ベルト39が回転することにより、用紙Pは下流へと搬送され、デカーラ部90で用紙のカールが除去された後、排出ローラ対26a,26bによって用紙Pは装置外へと排出される。
次に、上記画像形成後の用紙Pを、第3搬送経路Cを通過させてから装置外に排出する場合について説明する。
この場合は、切換爪28を図の実線で示す位置に配設し、用紙Pを第1搬送経路Aから第3搬送経路Cへと案内できるようにする。この状態で搬送ベルト18が回転することにより、用紙Pは第1〜第4吸引ダクト21〜24のエア吸引によって搬送ベルト18に吸着されつつ第3搬送経路Cへと搬送される。このとき、搬送ベルト18上の第1曲げ搬送部M1と第2曲げ搬送部M2の位置ではそれぞれ従動ローラ16,17が存在するため、その箇所においてエア吸着力を発揮することができない。そのため、本実施形態では、帯電器33によって用紙Pを帯電させることにより、用紙Pと搬送ベルト18との間に静電吸着力を発生させて、第1曲げ搬送部M1と第2曲げ搬送部M2の位置においても吸着力が発揮されるようにしている。
しかし、本実施形態の構成においては、第1曲げ搬送部M1と第2曲げ搬送部M2とでは搬送経路(又は搬送ベルト18)が曲がっているため、用紙の厚さや剛性、その他の条件によっては、上記のようにエア吸着力や静電吸着力を作用させても、用紙Pの前端が第1曲げ搬送部M1や第2曲げ搬送部M2の搬送方向下流側において浮き上がって、画像形成面が切換爪28等の周辺部材に強く当接する可能性がある。
そこで、用紙Pの前端の浮き上がりを防止するため、各曲げ搬送部M1,M2の搬送方向下流側に配設している第1及び第2エア吹き付け装置31,32によって、用紙Pにエアを吹き付けて、用紙Pの前端側を搬送ベルト18(又は搬送経路)に沿う方向へ曲げるようにしている。これにより、エアによって曲げられた用紙Pは、搬送ベルト18に吸着され、用紙Pの前端を切換爪28等に強く当接させることなく搬送することができる。
このとき、特に用紙Pの剛性が大きい場合は、第1エア吹き付け装置31によって用紙Pの前端を曲げると、反対に用紙Pの後端が第1曲げ搬送部M1の搬送方向上流側で搬送ベルト18から浮き上がることがあるので、このような場合は、第2吸引ダクト22によってエア吸引を行う。これにより、用紙Pの後端が浮き上がらないようにすることができる。なお、上述のように、各吸引ダクトは独立して吸引可能に構成されているため、第2吸引ダクト22のエア吸引動作は、他の吸引ダクトの動作の影響を受けずに制御することができる。
その後、搬送ベルト18の回転に伴って用紙Pが除電器34を通過するとき、用紙Pに溜まった電荷が除電され、静電吸着力が解除される。そして、用紙Pは、駆動ローラ14の位置で搬送ベルト18から離脱して、反転搬送ローラ対27a,27bへと搬送される。また、このとき、切換爪29は、用紙Pの通過を妨げないように、図の実線に示す位置に配設されている。反転搬送ローラ対27a,27bへ到達した用紙Pは、正回転する反転搬送ローラ対27a,27bと、その搬送方向下流側に配設した複数の搬送ローラによって第2搬送経路Bへと搬送される。そして、用紙Pは、デカーラ部90でカールが除去された後、排出ローラ対26a,26bによって装置外へと排出される。
以上のように、第3搬送経路Cを介して用紙Pを排出する場合は、用紙Pを画像形成装置の上部から下部へ迂回させてから排出するため、用紙Pを排出するまでの搬送経路を長くすることができる。すなわち、第3搬送経路Cを介して用紙Pを排出する場合は、十分にインクを乾かしてから用紙Pを排出することができ、排出後の用紙のインクが十分に乾いてないことによる用紙の汚れの発生を防止することが可能である。
続いて、両面印刷を行う場合について説明する。
両面印刷を行う場合は、画像形成部3において片面に画像が形成された用紙Pを、第1搬送経路Aから第3搬送経路Cへ搬送する。この場合も、用紙Pは、上記と同様に、搬送ベルト18に吸着されつつ斜め下方へと搬送される。その後、搬送ベルト18上の用紙Pは、搬送ベルト18から離脱して、正回転する反転搬送ローラ対27a,27bによって搬送される。そして、用紙Pの後端が反転搬送ローラ対27a,27bのニップ近傍に近づいたタイミングで反転搬送ローラ対27a,27bの正回転を停止し、用紙Pを一旦静止させる。また、用紙Pの後端が切換爪29を通過した後、切換爪29を図の点線で示す位置に切り換え、用紙Pを第4搬送経路Dへ案内できる状態にする。なお、このときの切換爪29を切り換えるタイミングと、反転搬送ローラ対27a,27bの正回転を停止させるタイミングについては、後で詳しく述べる。
その後、反転搬送ローラ対27a,27bを逆回転させて用紙Pを前後逆に搬送し、切換爪29によって用紙Pを第4搬送経路Dへ案内する。そして、用紙Pは、第4搬送経路Dを通って第1搬送経路Aへ案内され、さらに、第1搬送経路Aを通って再び画像形成部3へと搬送される。その結果、用紙Pは、表裏が反転された状態で画像形成部3に供給される。
そして、画像形成部3において、上記用紙Pの片面に画像を形成した場合と同様の工程を経て、用紙Pの裏面に画像が形成され、用紙Pは第2搬送経路Bを通って装置外へと排出される。なお、ここでの第2搬送経路Bを介した用紙Pの搬送動作は、上記と同様であるので説明を省略する。
続いて、片面印刷でページ順積載を行う場合、いわゆるフェースダウン排紙を行う場合について説明する。
この場合は、画像形成部3において画像が形成された用紙Pを、第1搬送経路Aから第3搬送経路Cへ搬送する。ここでの搬送ベルト18による用紙Pの搬送動作も、上記と同様である。そして、この場合、所定のタイミングで反転搬送ローラ対27a,27bの正回転を停止し、用紙Pを一旦静止させる。また、切換爪29を切り換え、用紙Pを第5搬送経路Eへ案内できる状態にする。なお、このときの切換爪29の切換位置や切換タイミング、及び反転搬送ローラ対27a,27bの正回転を停止させるタイミングについては、後で詳しく述べる。
その後、反転搬送ローラ対27a,27bを逆回転させて用紙Pを前後逆に搬送し、切換爪29によって用紙Pを第5搬送経路Eへ案内する。そして、用紙Pは、第2搬送経路Bへ案内され、デカーラ部90でカールが除去された後、排出ローラ対26a,26bによって装置外へと排出される。その結果、用紙Pは、前後及び表裏が反転された状態で排出され、ページ順に揃えた状態で排紙トレイ20上に積載される。
なお、この場合において、第3搬送経路Cと第5搬送経路Eの経路長を、用紙Pを排出するまでに用紙P上のインクが乾燥するような長さに設定しておくことで、排出後の用紙のインクが十分に乾いてないことによる用紙の汚れの発生を防止することが可能となる。
また、本実施形態において、第1搬送経路Aから第3搬送経路Cへ用紙Pを搬送する場合、上述のように、第1曲げ搬送部M1で用紙Pを曲げなければならないため、用紙Pの剛性が大きい場合は、用紙Pが第1曲げ搬送部M1を通過しにくいことも考えられる。そのため、例えば、キロ連量210kg紙以上の特に剛性の大きな用紙に対しては、両面印刷や反転処理は行わず、水平に配設された第2搬送経路Bを通過させて排出するように構成してもよい。一方、キロ連量210kg紙未満の用紙は、第1曲げ搬送部M1を通過することができるので、第3搬送経路Cを通して用紙を搬送することで、両面印刷や反転処理、及び用紙上のインクを十分に乾燥させることが可能である。
また、第3搬送経路C内で用紙を前後逆にしないで排出する場合は、反転搬送ローラ対27a,27bの正回転を一旦停止しないように制御することにより、用紙を排出する時間を短縮することができ、生産性(ファーストコピ−タイムやPPM:Print Per Minute=1分間あたりの印刷枚数)を向上させることができる。また、反転搬送ローラ対27a,27bの正回転時の線速よりも逆回転時の線速を大きく設定することにより、両面印刷時又は反転排出時における生産性を向上させることも可能である。
以下、上記切換爪29の切換位置や切換タイミング、及び反転搬送ローラ対27a,27bの正回転を停止させるタイミングなどについて詳しく説明する。
図2は、第3搬送経路における分岐部の拡大図である。
上述のように、第3搬送経路Cを構成する搬送経路のうち、特に分岐部Zよりも排出方向(反転搬送ローラ対27a,27b正回転時の搬送方向)の下流側の搬送経路C2は、用紙を長い搬送経路を経て排出する機能と、表裏反転するために用紙を前後逆に搬送する機能とを有している。ここでは、分岐部Zよりも排出方向の下流側の搬送経路C2が、後者の機能を発揮する場合について説明するので、以下、便宜的に、当該搬送経路C2を、表裏反転するために用紙を前後逆に搬送する反転経路C2と呼ぶことにする。一方、第3搬送経路Cのうち、分岐部Zよりも排出方向の上流側の搬送経路C1は、画像形成部で画像が形成された用紙を上記反転経路C2へ導入するため搬送経路として機能するので、以下、当該搬送経路C1を導入経路C1と呼ぶことにする。
また、上記説明したように、第4搬送経路Dは、上記反転経路C2で前後逆に搬送された用紙を表裏反転させて再び画像形成部へと搬送するための搬送経路であるので、以下、これを両面搬送経路Dと呼ぶことにする。また、第5搬送経路Eは、上記反転経路C2で前後逆に搬送された用紙を表裏反転させて画像形成部を経由せずに装置外へ排出するための搬送経路であるので、以下、これを反転後排出経路Eと呼ぶことにする。
すなわち、分岐部Zは、導入経路C1と反転経路C2とが連結された連結部において両面搬送経路Dと反転後排出経路Eとが分岐して形成されている。また、本実施形態における両面搬送経路Dと反転後排出経路Eは、導入経路C1を挟んでそれぞれ反対側に分岐していると言える。
また、図2に示すように、反転搬送ローラ対27a,27bのうち、図の右側の反転搬送ローラ27bは、図示しないタイミングベルトを介して駆動源としてのステッピングモータ62の駆動力が伝達可能に構成されている。これにより、図の右側の反転搬送ローラ27bは正方向又は逆方向に回転し、これに伴い図の左側の反転搬送ローラ27aが従動回転するようになっている。なお、本実施形態では、反転搬送ローラ27bのステッピングモータ62として、1パルス当たりの回転角度が0.9°に設定されているものを用いているが、1パルス当たりの回転角度はこれに限定されず適宜変更可能である。
また、上記ステッピングモータ62の駆動、すなわち、反転搬送ローラ対27a,27bの駆動は、画像形成装置本体に搭載されたCPU(中央処理装置)が有する搬送制御手段63によって制御される。なお、この搬送制御手段63は、反転搬送ローラ対27a,27b以外の搬送手段(上記搬送ベルト18,39、複数の搬送ローラ対52a,52b〜61a,61b)の駆動も制御するように構成されている。
図3は、分岐部に設けられた搬送経路切換手段の概略構成図である。
図3に示すように、切換爪29は、その基端に設けられた回転軸29aを介して、画像形成装置本体の図示しない側板に回転可能に取り付けられている。また、切換爪29の回転軸29aにはセクターギヤ41が固定され、セクターギヤ41はステッピングモータ43に取り付けられたピニオンギヤ42と噛み合っている。これにより、ステッピングモータ43が駆動してピニオンギヤ42が回転すると、その駆動力がセクターギヤ41を介して切換爪29に伝わり、切換爪29が回転するようになっている。本実施形態では、切換爪29のステッピングモータ43として、1パルス当たりの回転角度が7.5°に設定されているものを用いているが、上記反転搬送ローラ27bのステッピングモータ62と同様に、1パルス当たりの回転角度はこれに限定されるものではない。
また、ステッピングモータ43の駆動、すなわち、切換爪29の回転は、切換制御手段46によって制御されるようになっている。この切換制御手段46は、上記搬送制御手段63と同様、画像形成装置本体に搭載されたCPU(中央処理装置)に含まれる。
また、切換爪29の近傍には、切換爪29の初期位置を検知する手段としてのホームポジションセンサ44が配設されている。本実施形態では、ホームポジションセンサ44として、発光部と受光部とを有する透過型の光学センサを用いている。切換爪29が図3の実線で示す初期位置にある場合は、切換爪29の回転軸29aに設けられたフィラー45がホームポジションセンサ44の発光部から発する光を遮断することによって、切換爪29が初期位置に配置されたことが検知されるようになっている。
以下、図4、図5、及び図6のフローチャートを参照しつつ、フェースダウン排紙を行う場合の用紙搬送動作について説明する。
まず、図4(a)に示すように、1枚目の用紙P1が導入経路C1内を搬送され、第1用紙センサ95によって用紙P1の前端が検知されると(図6のSTEP1)、反転搬送ローラ対27a,27bが正回転を開始する(図6のSTEP2)。反転搬送ローラ対27a,27bが回転している状態で、用紙P1の前端が反転経路C2内へ進行して反転搬送ローラ対27a,27bに挟持さると、用紙P1は回転する搬送ローラ対27a,27bによってさらに下流へと搬送される。また、このとき、切換爪29は、図4(a)に示す初期位置に配置されており、用紙P1を反転経路C2へ案内する機能を果たす。
図4(b)に示すように、用紙P1が反転経路C2内を進行し、第1用紙センサ95によって用紙P1の後端が検知されると(図6のSTEP3)、この検知タイミングを基準として、その後に反転搬送ローラ対27a,27bの回転を停止するタイミングが設定される(図6のSTEP4)。また、同時に、その後に切換爪29の切換(回転)を開始するタイミングも設定される(図6のSTEP4)。
上記反転搬送ローラ対27a,27bの回転停止のタイミングは、上記搬送制御手段63によって設定される。具体的には、第1用紙センサ95が用紙P1の後端を検知したタイミングから、反転搬送ローラ27bが予め決定されているパルス数だけ回転したときに、反転搬送ローラ27bの回転駆動を停止するように設定される。
また、上記切換爪29の切換開始のタイミングは、上記切換制御手段46によって設定される。具体的には、上記反転搬送ローラ対27a,27bの回転停止タイミングと同様に、第1用紙センサ95が用紙P1の後端を検知したタイミングから、反転搬送ローラ27bが予め決定されているパルス数だけ回転したときに、切換爪29の切換を開始するように設定される。ここでは、切換爪29の切換開始タイミングは、上記反転搬送ローラ対27a,27bの回転を停止するタイミングよりも、早いタイミングで設定される。
その後、図4(c)に示すように、用紙P1の後端側が、切換爪29の先端近傍に近づいた時点で、切換爪29の切換(回転)を開始する(図6のSTEP5)。すなわち、上記設定された所定のタイミングとなったときに、切換爪29の切換を開始する。これにより、用紙P1の後端側は、図4(c)の矢印の方向に揺動する切換爪29の先端によって押される。
続いて、図5(a)に示すように、用紙P1の後端側がさらに切換爪29の先端近傍に近づいた時点、詳しくは、用紙P1の後端が切換爪29の先端に対して搬送方向上流側に約5〜10mmの距離にある時点で、反転搬送ローラ対27a,27bの回転を一旦停止する(図6のSTEP6)。すなわち、上記設定された所定のタイミングとなったときに、反転搬送ローラ対27a,27bの回転を停止する。これにより、用紙P1の後端側が切換爪29の先端近傍に静止される。
また、反転搬送ローラ対27a,27bの回転を停止した際、上記切換爪29の切換(回転)も完了している。このように、用紙P1の後端側を切換爪29の先端近傍に静止した状態で、当該用紙P1の後端側が切換爪29の先端で押された状態となることで、図5(a)に示すように、用紙P1の後端が反転後排出経路Eの入口に向けられる。
上記反転搬送ローラ対27a,27bの回転を停止した後、所定時間経過した後に、反転搬送ローラ対27a,27bを逆回転させる(図6のSTEP7)。ここで、反転搬送ローラ対27a,27bの逆回転の開始を、回転停止後に所定時間経過してから行うのは、回転停止から逆回転させるまでの制御上の安定時間を確保するためである。反転搬送ローラ対27a,27bの逆回転を開始すると、用紙P1が逆送される。このとき、停止後の搬送方向、すなわち逆送時における用紙P1の前端は、反転後排出経路Eの入口に向けられるので、用紙P1が逆送されることによって、図5(b)に示すように、用紙P1は反転後排出経路Eへ案内される。
また、上記反転搬送ローラ対27a,27bの逆回転の開始と同時に、反転後排出経路Eの搬送方向下流側に配設されている搬送ローラ対61a,61bの回転も開始される(図6のSTEP7)。これにより、反転後排出経路Eを通過した用紙P1の前端が、回転する搬送ローラ対61a,61bのニップに供給されると、この搬送ローラ対61a,61bによって用紙P1が下流へと搬送される。この搬送ローラ対61a,61bの回転は、指定された枚数の用紙の印刷が終了するまで継続される。
その後、図5(c)に示すように、用紙P1のほとんどが反転後排出経路E内へ進行し、用紙P1の後端が第2用紙センサ96によって検知されると(図6のSTEP8)、切換爪29を初期位置に戻すための復帰動作を開始する(図6のSTEP9)。そして、切換爪29が図5(c)に示す初期位置に戻されることで、2枚目の用紙P2の反転経路C2への進入を切換爪29によって妨げられないようにする。また、切換爪29の復帰動作を開始したとき、反転搬送ローラ対27a,27bの回転も停止し(図6のSTEP9)、2枚目の用紙P2の進行に備える。
その後、1枚目の用紙P1は、回転する搬送ローラ対61a,61bによってさらに下流へ搬送され、装置外に排出される。これにより、1枚目の用紙P1のフェースダウン排紙が完了する。また、2枚目以降の用紙のフェースダウン排紙は、1枚目の用紙と同様に行われる。
次に、図7〜図9、及び図10のフローチャートを参照しつつ、両面印刷を行う場合の用紙搬送動作について説明する。
まず、図7(a)に示すように、1枚目の用紙P1が導入経路C1内を搬送され、第1用紙センサ95によって用紙P1の前端が検知されると(図10のSTEP1)、反転搬送ローラ対27a,27bが正回転を開始する(図10のSTEP2)。反転搬送ローラ対27a,27bが回転している状態で、用紙P1の前端が反転経路C2内へ進行して反転搬送ローラ対27a,27bに挟持さると、用紙P1は回転する搬送ローラ対27a,27bによってさらに下流へと搬送される。また、このとき、切換爪29は、図7(a)に示す初期位置に配置されており、用紙P1を反転経路C2へ案内する機能を果たす。
図7(b)に示すように、用紙P1が反転経路C2内を進行し、第1用紙センサ95によって用紙P1の後端が検知されると(図10のSTEP3)、この検知タイミングを基準として、その後に反転搬送ローラ対27a,27bの回転を停止するタイミングが設定される(図10のSTEP4)。また、同時に、その後に切換爪29の切換(回転)を開始するタイミングも設定される(図10のSTEP4)。
上記反転搬送ローラ対27a,27bの回転停止のタイミングは、上記フェースダウン排紙の場合と同様に、搬送制御手段63によって設定される。ただし、この場合は、反転搬送ローラ27bが、フェースダウン排紙の場合よりも多いパルス数だけ回転したときに、その回転駆動を停止するように設定される。
また、上記切換爪29の切換開始のタイミングは、上記フェースダウン排紙の場合と同様に、切換制御手段46によって設定される。
その後、図7(c)に示すように、用紙P1の後端側が、切換爪29の先端の位置をほぼ通過したら、切換爪29の切換(回転)を開始する(図10のSTEP5)。すなわち、上記設定された所定のタイミングとなったときに、切換爪29の切換を開始する。
そして、図8(a)に示すように、用紙P1の後端が、第2用紙センサ96を通過した後(第2用紙センサ96が遮断状態から透過状態に切り換わった後)、反転搬送ローラ対27a,27bの回転を一旦停止する(図10のSTEP6)。すなわち、上記設定された所定のタイミングとなったときに、反転搬送ローラ対27a,27bの回転を停止する。これにより、用紙P1の後端は切換爪29から下流へ離れた位置に静止される。
なお、ここで、反転搬送ローラ対27a,27bの回転停止タイミングを、上記のように予めパルス数に基づいて設定しているにもかかわらず(図10のSTEP4)、第2用紙センサ96が用紙P1の後端通過を検知した後で反転搬送ローラ対27a,27bの回転を停止するようにしているのは、搬送性をより確実なものにするためである。仮に、パルス数のみで回転停止を決定すると、万が一、用紙P1がスリップして、単位時間当たりの用紙搬送距離が予定より短くなった場合に、用紙P1の後端が切換爪29上に残る可能性がある。そして、この状態で、切換爪29が切り換えられると、用紙P1の後端が上記フェースダウン排紙時と同様に反転後排出経路Eの入口に向けられてしまい、両面搬送経路Dへ搬送できなくなるからである。そのため、ここでは、反転搬送ローラ対27a,27bの回転停止のタイミングを、パルス数に加え、第2用紙センサ96による用紙後端通過の検知に基づいて計ることで、搬送の確実性を向上させている。
また、上記反転搬送ローラ対27a,27bの回転を停止した状態では、上記切換爪29の切換(回転)は完了している。これで、用紙P1を両面搬送経路Dへ搬送できる状態が整ったことになる。
上記反転搬送ローラ対27a,27bの回転を停止した後、上記フェースダウン排紙時と同様に、所定時間経過してから、反転搬送ローラ対27a,27bの逆回転を開始する(図10のSTEP7)。反転搬送ローラ対27a,27bの逆回転を開始すると、用紙P1が逆送される。
そして、図8(b)に示すように、逆送する用紙P1の前端が、第2用紙センサ96によって検知されると(図10のSTEP8)、両面搬送経路Dに配設されている搬送ローラ対56a,56bの回転を開始する(図10のSTEP9)。続いて、用紙P1の前端が、所定の向きに配置された切換爪29に当接し、その切換爪29に沿って案内されることで、図8(c)に示すように、用紙P1は両面搬送経路Dへと搬送される。
その後、図9(a)に示すように、用紙P1のほとんどが両面搬送経路D内に進行し、用紙P1の後端が第2用紙センサ96によって検知されると(図10のSTEP10)、切換爪29を初期位置に戻すための復帰動作を開始する(図10のSTEP11)。また、切換爪29の復帰動作を開始したとき、反転搬送ローラ対27a,27bの回転も停止する(図10のSTEP11)。
そして、図9(b)に示すように、切換爪29の復帰動作が完了し、切換爪29が初期位置に戻されることで、2枚目の用紙P2の反転経路C2への進入が切換爪29によって妨げられないようになる。
その後、1枚目の用紙P1は、上述のように、両面搬送経路Dを介して再び画像形成部へと送られ、裏面側に画像が形成された後、装置外に排出される。その後、2枚目以降の用紙の搬送も1枚目の用紙と同様に行われる。
以上のように、本実施形態では、フェースダウン排紙を行う場合と両面印刷を行う場合とで、用紙の後端の静止位置を異ならせている。すなわち、フェースダウン排紙を行う場合は、用紙の後端を切換爪29の先端近傍位置に静止させ(図5(a)参照)、両面印刷を行う場合は、用紙の後端を切換爪29の先端から搬送方向下流側に離れた位置に静止させている(図8(a)参照)。これにより、本実施形態では、1つの切換爪29によって、反転後排出経路Eと両面搬送経路Dのいずれかを選択して用紙を案内することを可能にしている。
なお、本実施形態では、切換爪29によって用紙の後端を押し始めるタイミングを、用紙を静止させるタイミングよりも前に開始するようにしているが(図4(c)参照)、用紙を静止させた後で、切換爪29が用紙を押すように制御してもよい。
また、本実施形態では、フェースダウン排紙を行う場合と両面印刷を行う場合における用紙の静止タイミングを、反転搬送ローラ27bのステッピングモータ62のパルス数に基づいて決定しているが、この場合、用紙の進み量は、1パルス当たりの回転角度、減速比、搬送ローラ径等を考慮して決定される。なお、各場合における用紙の後端の静止位置は、ユーザー等が操作パネルなどでフェースダウン排紙又は両面印刷の指示を行った際に決定されるようになっている。
また、単位時間当たりの用紙搬送速度が分かれば、用紙搬送時間に基づいて用紙の静止タイミングを決定することも可能である。ただし、用紙搬送時間に基づいて用紙の静止タイミングを決定する場合、用紙搬送速度が変化すると、変化する速度ごとに反転搬送ローラ対27a,27bを停止するタイミングを変更する必要が生じる。この点、前記パルス数に基づいて用紙の静止タイミングを決定する場合は、変化する用紙搬送速度の影響を受けることがないので、用紙搬送の品質が安定化すると共に、搬送制御が容易となる利点がある。
ところで、用紙はその種類によって剛性が異なるため、複数種類の用紙を搬送する場合、切換爪29で用紙を押した際に、剛性の違いによる不具合が生じる場合がある。
例えば、厚紙は、それより薄い標準紙や薄紙と比べて剛性が大きいため、切換爪29の先端を大きく揺動させて押すと、折れ跡や押し跡が付いたり、搬送抵抗が大きくなったりする可能性がある。一方で、厚紙は、その剛性により、押す量が少なくても用紙の後端を所望の搬送経路の入口へ向けることが可能である。
反対に、標準紙や薄紙は、剛性が小さく変形しやすいため、切換爪29の先端を大きく揺動させて押しても折れ跡や押し跡は付きにくいが、押す量が少ないと、用紙の後端を所望の搬送経路の入口へ向けることができない可能性がある。そのため、好ましくは、用紙の種類に応じて、切換爪29が用紙を押す際の先端の揺動角度を変更可能に構成するのがよい。
図11に、紙種によって切換爪の揺動角度を変更可能に構成した実施形態の要部を示す。
この場合、画像形成装置は、図11に示すように、用紙の種類を判別する用紙種類判別手段(シート種類判別手段)48と、その用紙種類判別手段48の判別結果に応じて、切換爪29の先端で用紙を押す際の当該先端の揺動角度を変更する揺動角度変更手段47とを備える。それ以外の構成は、上記実施形態と同様である。
図11に示す実施形態の場合、揺動角度変更手段47による揺動角度の変更は、切換爪29のステッピングモータ43のパルス数を変更することで可能である。また、切換爪29の駆動源にDCモータを用いた場合は、切換爪29の揺動角度をエンコーダや読み取りセンサによって検知することにより、揺動角度を変更できる。
例えば、用紙種類判別手段48によって、搬送される用紙の種類が厚紙であると判断された場合は、図12(a)に示すように、切換爪29を、点線で示す初期位置から角度θだけ揺動させて用紙Pを押す。一方、搬送される用紙の種類が標準紙又は薄紙であると判断された場合は、図12(b)に示すように、切換爪29を、前記厚紙の場合の揺動角度θよりも角度Δだけ大きく揺動させて用紙Pを押すようにする。
このように、厚紙などの剛性の大きい用紙を搬送する場合は、切換爪29の揺動角度を小さくすることで、用紙に折れ跡や押し跡が付いたり、搬送抵抗が大きくなったりするのを防止することができる。一方、標準紙や薄紙などのように剛性の小さい用紙を搬送する場合は、切換爪29の揺動角度を大きくすることで、用紙の後端(逆送時の前端)を所望の搬送経路の入口へ確実に向けることが可能となる。これにより、用紙の種類(剛性の違い)による不具合の発生を回避することができ、用紙搬送品質を向上させることが可能となる。
また、同様に、標準紙と薄紙との間での剛性の違いに応じて、あるいはその他の紙種に応じて、切換爪29の揺動角度を変更することも可能である。
上述の実施形態では、フェースダウン排紙や両面印刷を行う際の用紙搬送動作において、反転搬送ローラ対27a,27bの回転開始、切換爪29の復帰動作などの制御を、第2用紙センサ96を用いて行っている。具体的には、フェースダウン排紙を行う際、図5(c)に示すように、切換爪29の復帰動作の開始の動作などを、第2用紙センサ96による用紙後端の検知に基づいて行うようにしている(図6のSTEP8、9を参照)。また、両面印刷を行う際は、図8(b)に示すように、搬送ローラ対56a,56bの回転開始を、第2用紙センサ96による用紙前端の検知に基づいて行うようにしている(図10のSTEP8、9を参照)。さらに、両面印刷を行う際、図9(a)に示すように、切換爪29の復帰動作の開始の動作などを、第2用紙センサ96による用紙後端の検知に基づいて行うようにしている(図10のSTEP10、11を参照)。
ただし、必ずしも第2用紙センサ96を用いなくても、同様の制御を行うことは可能である。以下、第2用紙センサ96を用いなくても同様の制御が可能な実施形態について説明する。
この実施形態では、上記第2用紙センサ96を省略し、代わりに、図13に示す反転後排出用紙センサ97と両面印刷用紙センサ98とを用いる。反転後排出用紙センサ97は、反転後排出経路Eとその搬送方向下流側に配設されている搬送ローラ対61a,61との間に配設されている。また、両面印刷用紙センサ98は、両面搬送経路Dに配設されている搬送ローラ対56a,56bの搬送方向下流側に配設されている。さらに、この実施形態では、反転搬送ローラ対27a,27bのうち、従動回転する側のローラ27aが駆動する側のローラ27bに対して接離可能に構成されている。その他の構成は、基本的に図1や図2等で説明した上記実施形態と同様である。
続いて、図13に示す実施形態の制御について説明する。
この実施形態では、フェースダウン排紙を行う際、切換爪29の復帰動作と、反転搬送ローラ対27a,27bの離間動作を、反転後排出用紙センサ97を用いて行う。具体的には、図14に示すように、反転後排出用紙センサ97が用紙P1の前端を検知してから所定時間経過後に、切換爪29の復帰動作を開始する。すなわち、用紙P1の前端が、反転後排出用紙センサ97の下流側にある搬送ローラ対61a,61bのニップに供給された後に、切換爪29の復帰動作を開始する。また、同時に、従動側の反転搬送ローラ27aを駆動側の反転搬送ローラ27bから離間させることにより、搬送ローラ対27a,27bによる搬送を解除する。このように、切換爪29の復帰動作と、反転搬送ローラ対27a,27bの離間動作を、反転後排出用紙センサ97を用いて制御することで、第2用紙センサ96を用いなくても、同様の制御を行うことができる。
次に、両面印刷を行う際、切換爪29の復帰動作と、反転搬送ローラ対27a,27bの回転停止を、両面印刷用紙センサ98を用いて行う。具体的には、図15に示すように、両面印刷用紙センサ98が用紙P1の前端を検知したときに、切換爪29の復帰動作の開始と、反転搬送ローラ対27a,27bの回転の停止を行う。また、両面搬送経路Dに配設されている搬送ローラ対56a,56bの回転開始は、反転搬送ローラ対27a,27bの逆回転開始と同じタイミングで行うようにする。これにより、第2用紙センサ96を用いなくても、同様の制御を行うことが可能となる。
以上のように、第2用紙センサ96を用いなくても、反転後排出用紙センサ97や両面印刷用紙センサ98等を用いることで、同様の制御を行うことが可能である。ただし、第2用紙センサ96を用いた場合は、用紙の前端と後端を検知することができるため、切換爪29の復帰開始や搬送ローラ対27a,27bの回転停止のタイミングの制御を確実に行うことができる。よって、用紙間距離をできる限り短くして、単位時間当たりに印刷できる枚数を多くしたい(生産性を上げたい)場合は、第2用紙センサ96を用いた方が効果的である。
また、上述の実施形態では、切換爪29で用紙を押すことによって用紙の後端(逆送時の前端)を向ける方向を、反転後排出経路Eの入口としたが、図16に示すように、切換爪29を反転後排出経路E側に設けることで、用紙P1の後端(逆送時の前端)を両面搬送経路Dの入口へ向けるようにすることも可能である。
また、上述の実施形態では、本発明の構成を、用紙の搬送方向を変えて搬送する搬送経路(反転経路C2)の分岐部に適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明の構成は、用紙の搬送方向を変えない搬送経路の分岐部にも適用可能である。
例えば、図17に示すように、用紙Pを図の右から左へ搬送する上流側搬送経路Qの下流側で、第1〜第3の下流側搬送経路H1〜3が分岐しており、その分岐部に切換爪29を設けた搬送経路においても、本発明の構成を適用できる。この場合、図のように、用紙Pの前端を切換爪29の先端近傍に一旦静止させ、その用紙の前端を切換爪29の先端で押すことにより、図の上方へ分岐する第1下流側搬送経路H1の入口に用紙Pの前端を向けることが可能である。
また、図の下方へ分岐する第3下流側搬送経路H3へ用紙Pを案内する場合は、用紙Pの先端が切換爪29に到達する前に切換爪29を図の実線で示す位置に配置することで、用紙Pを切換爪29に沿わせて第3下流側搬送経路H3へ案内することができる。なお、この場合、用紙Pを一旦静止させる必要はない。また、切換爪29を図の点線で示す位置に切り換えて配置した場合は、上流側搬送経路Qから直線的に伸びる第2下流側搬送経路H2へ用紙Pを案内することができる。
このように、本発明の構成を、用紙の搬送方向を変えない搬送経路の分岐部に適用した場合も、上記実施形態と同様に、1つの切換爪29によって、分岐する搬送経路のいずれかを選択して用紙を案内することが可能である。
また、本発明の構成を適用可能な分岐部は、上記各実施形態のように、1つの搬送経路に対してその搬送方向下流側で3つの搬送経路が分岐している構成に限らない。従って、1つの搬送経路の搬送方向下流側で、2つあるいは5つ以上の搬送経路が分岐している分岐部においても本発明の構成を適用可能である。また、分岐する搬送経路の数が多い場合は、分岐部に切換爪29を複数設けてもよい。
図18は、従来の構成を用いた比較例を示す図である。
以下、この比較例と本発明の実施形態とを比較して、本発明の実施形態における作用・効果について説明する。
図18に示す比較例では、本発明の実施形態のように、切換爪によって用紙の端部側を押すようには構成されていない。このため、用紙を図の下方の搬送経路から図の右方向に分岐した搬送経路X、又は図の左方向に分岐した搬送経路Yに案内するには、2つの切換爪71,72を、図の実線又は点線で示す状態に配置しなければならない。
これに対し、本発明の実施形態に係るシート搬送装置は、図5(a)に示すように、切換爪29の先端で用紙の端部側を押すことにより、その端部を特定の搬送経路の入口へ向けることができる。また、用紙を別の搬送経路へ用紙を案内する場合は、図8(c)に示すように、切換爪29の先端で用紙を押さず、所定の向きに配置された切換爪29に向かって用紙を搬送することで、所望の搬送経路に用紙を案内することができる。
このように、本発明の実施形態によれば、1つの切換爪29によって用紙を所望の搬送経路へ案内することができる。これにより、本発明の実施形態に係る構成では、図18に示す比較例と比べて、必要な切換爪の個数を少なくすることができる。従って、本発明の構成を採用することで、部品点数を少なくすることができ、小型化及び低コスト化を実現することができるようになる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。また、本発明に係るシート搬送装置は、図1に示す、インクジェットプリンタ以外に、電子写真方式の画像形成部を備えたプリンタや、それ以外の複写機、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等の画像形成装置にも搭載可能である。また、シート搬送装置が搬送するシート材は、用紙に限らず、OHPシートやその他のシート材であってもよい。