以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
まず、図1を参照して、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
図1に示す画像形成装置は、カラーレーザープリンタであり、その装置本体100には、画像形成ユニットとしての4つのプロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkが着脱可能に装着されている。各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の異なる色のトナーを収容している以外は同様の構成となっている。
具体的には、各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkは、像担持体としてのドラム状の感光体2と、感光体2の表面を帯電させる帯電ローラ3等を備えた帯電装置と、感光体2の表面にトナー(現像剤)を供給する現像装置4と、感光体2の表面をクリーニングするための感光体クリーニングブレード5等を備えたクリーニング装置などで構成されている。なお、図1では、イエローのプロセスユニット1Yが備える感光体2、帯電ローラ3、現像装置4、クリーニングブレード5のみに符号を付しており、その他のプロセスユニット1M,1C,1Bkにおいては符号を省略している。
図1において、各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkの上方には、感光体2の表面を露光する露光手段としての露光装置6が配設されている。露光装置6は、光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を有し、画像データに基づいて各感光体2の表面へレーザー光を照射するようになっている。
また、各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkの下方には、転写装置7が配設されている。転写装置7は、転写体としての無端状のベルトから構成される中間転写ベルト8を有する。中間転写ベルト8は、支持部材としての駆動ローラ9と従動ローラ10に張架されており、駆動ローラ9が図の反時計回りに回転することによって、中間転写ベルト8は図の矢印に示す方向に周回走行(回転)するように構成されている。
4つの感光体2に対向した位置に、一次転写手段としての4つの一次転写ローラ11が配設されている。各一次転写ローラ11はそれぞれの位置で中間転写ベルト8の内周面を押圧しており、中間転写ベルト8の押圧された部分と各感光体2とが接触する箇所に一次転写ニップが形成されている。各一次転写ローラ11は、図示しない電源に接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が一次転写ローラ11に印加されるようになっている。
また、駆動ローラ9に対向した位置に、二次転写手段としての二次転写ローラ12が配設されている。この二次転写ローラ12は中間転写ベルト8の外周面を押圧しており、二次転写ローラ12と中間転写ベルト8とが接触する箇所に二次転写ニップが形成されている。二次転写ローラ12は、一次転写ローラ11と同様に、図示しない電源に接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が二次転写ローラ12に印加されるようになっている。
また、中間転写ベルト8の図の右端側の外周面には、中間転写ベルト8の表面をクリーニングするベルトクリーニング装置13が配設されている。このベルトクリーニング装置13から伸びた図示しない廃トナー移送ホースは、転写装置7の下方に配設された廃トナー収容器14の入り口部に接続されている。
装置本体100の下部には、紙やOHPシート等の記録媒体Pを収容した給紙カセット15が配設されている。給紙カセット15には、収容されている記録媒体Pを送り出す給紙ローラ16が設けてある。一方、装置本体100の上部には、記録媒体を外部へ排出するための一対の排紙ローラ17と、排出された記録媒体をストックするための排紙トレイ18とが配設されている。
装置本体100内には、記録媒体Pを給紙カセット15から二次転写ニップを通って排紙トレイ18へ搬送するための搬送路Rが配設されている。搬送路Rにおいて、二次転写ローラ12の位置よりも記録媒体搬送方向上流側には一対のレジストローラ19が配設されている。また、二次転写ローラ12の位置よりも記録媒体搬送方向下流側には、定着装置20が配設されている。
以下、図1を参照して上記画像形成装置の基本的動作について説明する。
作像動作が開始されると、各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkの感光体2が図の時計回りに回転駆動され、帯電ローラ3によって各感光体2の表面が所定の極性に一様に帯電される。図示しない読取装置によって読み取られた原稿の画像情報に基づいて、露光装置6から各感光体2の帯電面にレーザー光が照射されて、各感光体2の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体2に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。このように感光体2上に形成された静電潜像に、各現像装置4によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像として顕像化(可視像化)される。
中間転写ベルト8を張架する駆動ローラ9が回転駆動し、中間転写ベルト8を図の矢印の方向に周回走行させる。また、各一次転写ローラ11に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加されることによって、各一次転写ローラ11と各感光体2との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。そして、各感光体2上の各色のトナー画像が、上記一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、中間転写ベルト8上に順次重ね合わせて転写される。かくして中間転写ベルト8はその表面にフルカラーのトナー画像を担持する。また、中間転写ベルト8に転写しきれなかった各感光体2上のトナーは、クリーニングブレード5によって除去される。
また、作像動作が開始されると、給紙ローラ16が回転して、給紙カセット15から記録媒体Pが搬出される。搬出された記録媒体Pは、レジストローラ19によってタイミングを計られて、二次転写ローラ12と中間転写ベルト8との間の二次転写ニップに送られる。このとき二次転写ローラ12には、中間転写ベルト8上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、これにより、二次転写ニップに転写電界が形成されている。そして、二次転写ニップに形成された転写電界によって、中間転写ベルト8上のトナー画像が記録媒体P上に一括して転写される。その後、記録媒体Pは定着装置20に送り込まれトナー画像が記録媒体P上に定着される。そして、記録媒体Pは一対の排出ローラ17によって排紙トレイ18に排出される。
以上の説明は、記録媒体にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つのプロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つのプロセスユニットを使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
次に、図2を参照して、上記定着装置の構成及び動作について説明する。
定着装置20は、記録媒体P上の未定着画像Tを定着する定着部材としての定着スリーブ22と、その定着スリーブ22を保持する保持部材としての定着ローラ21と、定着スリーブ22を加熱する加熱部材としての誘導加熱部30と、定着スリーブ22を加圧する加圧部材としての加圧ローラ23等で構成される。
ここで、定着スリーブ22は、厚さが30〜50μmの金属材料からなる基材上に弾性層、離型層を順次形成したものであって、外径が40mmになっている。定着スリーブ22の基材を形成する材料としては、鉄、コバルト、ニッケル、又は、これらの合金等の磁性金属材料を用いることができる。定着スリーブ22の弾性層は、シリコーンゴム等の弾性材料からなり、その厚さは150μmになっている。これにより、熱容量がそれ程大きくなく、定着ムラのない良好な定着画像を得ることができる。また、定着スリーブ22の離型層は、PFA等のフッ素化合物をチューブ状に被覆したものであって、その厚さは50μmになっている。離型層は、トナー像(トナー)Tが直接的に接する定着スリーブ22表面のトナー離型性を高めるためのものである。
定着ローラ21は、ステンレス鋼等の金属材料からなる円筒状の芯金21a上に、シリコーン発泡体からなる耐熱弾性層21bが形成されたものであって、外径が約40mmになっている。定着ローラ21の弾性層21bは、肉厚が9mmで、軸上におけるアスカー硬度が30〜50度となるように形成されている。定着ローラ21は、定着スリーブ22の内周面に当接して、薄肉の定着スリーブ22をローラ状に保持している。
加圧ローラ23は、アルミニウム、銅等の高熱伝導性金属材料からなる芯金23a上に、シリコーンゴム等の耐熱性弾性層23b、離型層(不図示である)が順次形成されたものであって、外径が40mmになっている。弾性層23bは、肉厚が2mmとなるように形成されている。離型層は、PFAチューブを被覆したものであって、厚さが50μmになるように形成されている。加圧ローラ23は、定着スリーブ22を介して定着ローラ21に圧接していて、その圧接部にニップ部を形成している。そして、このニップ部に、記録媒体Pが搬送されることになる。
誘導加熱部30は、励磁コイル31、コア部32、消磁コイル部33等で構成される。励磁コイル31は、定着スリーブ22の外周の一部を覆うように配設されたコイルガイド上に細線を束ねたリッツ線を巻回して幅方向(図2の紙面垂直方向である)に延設したものである。消磁コイル部33は、記録媒体幅方向に相当する位置関係で対称に配置され、励磁コイル31上に重なって配置されている。コア部32は、フェライト等の強磁性体(比透磁率が2500程度である)からなり、定着スリーブ22に向けて効率のよい磁束を形成するためにセンターコア32bやサイドコア32aが設けられている。コア部32は、幅方向に延設された励磁コイル31に対向するように設置されている。
このように構成された定着装置20は、次のように動作する。
不図示の駆動モータによって、加圧ローラ23が図2の時計方向に回転駆動されると、これに伴い定着スリーブ22が反時計方向に従動回転する。このとき、定着スリーブ22を保持する定着ローラ21は、積極的に回転駆動されないことになる。そして、発熱部材及び定着部材としての定着スリーブ22は、誘導加熱部30との対向位置で、誘導加熱部30から発生される磁束によって加熱される。
詳しくは、不図示の電源部から励磁コイル31に10kHz〜1MHz(好ましくは、20kHz〜800kHzである)の高周波交番電流を流すことで、励磁コイル31に対向する定着スリーブ22の近傍に磁力線が双方向に交互に切り替わるように形成される。このように交番磁界が形成されることで、定着スリーブ22の基材(発熱層)に渦電流が生じて、基材はその電気抵抗によってジュール熱が発生して誘導加熱される。
こうして、定着スリーブ22は、自身の基材の誘導加熱によって加熱される。
誘導加熱部30によって加熱された定着スリーブ22の表面は、加圧ローラ23とのニップ部に達する。そして、搬送される記録媒体P上の、未定着トナー像T(トナー)を加熱して溶融する。
詳しくは、先に説明した作像プロセスを経てトナー像Tを担持した記録媒体Pが、ガイド板24に案内されながら定着スリーブ22と加圧ローラ23との間に送入される(矢印Y1の搬送方向の移動である)。そして、定着スリーブ22から受ける熱と加圧ローラ23から受ける圧力とによってトナー像Tが記録媒体Pに定着され、定着分離板25及び加圧分離板26によって定着スリーブ22から分離されながら、記録媒体Pはニップ部から送出される。ニップ部を通過した定着スリーブ22表面は、その後に再び誘導加熱部30との対向位置に達する。
以上が本発明を適用する画像形成装置、定着装置の全体構成および動作である。
以下、上記定着装置の温度制御方法及びその構成について説明する。
図3は、定着装置の温度制御の全体フローを示す図である。
図3に示すように、定着装置の温度制御の工程には、大きく分けて、画像情報の取得工程と、定着目標温度の設定工程と、定着目標温度の変更工程とがある。まず、画像情報の取得工程及び定着目標温度の設定工程について説明する。
図4は、本実施形態の画像形成装置の制御系を示すブロック図である。
上記画像情報の取得工程は、図4に示す画像情報取得手段36で行う。画像情報取得手段36は、同図に示す階調処理手段35によって階調処理された画像に関する情報等を入手する。本実施形態では、階調処理として、ディザ法と誤差拡散法との2種類を用いている。ディザ法とは、濃淡画像を2値(黒と白)で表示する方法である。これは、通常の二値化と類似しており、適当に変化する閾値で行うことにより、遠目から見ると二値であるが、白黒の濃淡があるように見える。一方、誤差拡散法とは、中間階調の処理で画像を滑らかに表現する方法の一種であり、デジタル画像の画素(ピクセル)の処理で生じた誤差を周囲の画素へ割り振り、その後も誤差を割り振った影響を考慮して処理を行うことで全体としての誤差を最小にする方法である。
上記定着目標温度の設定工程は、図4に示す定着目標温度設定手段37によって行われる。ここで、定着目標温度設定手段37によって設定される定着目標温度とは、「定着処理時の定着目標温度」である。また、ここでいう「定着処理時の定着目標温度」は、定着ニップへの記録媒体の供給が開始されたときからその供給が終了するまでの記録媒体の定着ニップ通過中(通紙中又は連続通紙中)の定着目標温度のことであり、定着ニップへの記録媒体の供給を開始する前に定着部材が加熱される立ち上がり温度などは除かれる。
本実施形態では、予め定着目標温度が3段階に設定されており、上記定着目標温度設定手段37によって3段階のいずれかの温度に設定されるようになっている。通常、定着目標温度の設定は、使用する記録媒体の種類が変わらなければ、その記録媒体において最も定着性に不利な画像種類でも定着不良等の不具合が生じないような値に設定されている。ここでは、最も定着性に不利な画像種類の場合に設定する定着目標温度をノーマル温度(第1の定着目標温度)として設定している。また、ノーマル温度から少し下げた定着目標温度をレベル1温度(第2の定着目標温度)とし、ノーマル温度から大幅に下げた定着目標温度をレベル2温度(第3の定着目標温度)として設定している。例えば、レベル1温度はノーマル温度よりも5℃低い温度、レベル2温度はノーマル温度よりも10℃低い温度に設定する。
図5は、定着目標温度の設定フローを示す図である。
以下、図5を参照して、定着目標温度の設定工程について詳しく説明する。
まず、記録媒体が定着装置に送り込まれる前に、その記録媒体に形成される画像の中間調処理(ハーフトーン)の有無を判断する(STEP1)。中間調処理の有無は、上記画像情報取得手段36によってCMYK値により判断される。具体的には、パソコンからプリントする際に、ディスプレイのRGB値(0〜100%)からプリンタ画像処理によりCMYK値(0〜100%)に変換し、1ページごとにエンジンで描画するが、その際のCMYK値によって中間調処理の有無を判断する。その結果、中間調処理が「無し」と判断された場合、例えば、K=100%の場合は、ベタで定着性に有利なため(トナーが剥がれにくいため)低い定着目標温度を選択することが可能である。従って、中間調処理が「無し」と判断された場合は、上記定着目標温度設定手段37によってノーマル温度から大幅に下げたレベル2温度が選択される。
一方、中間調処理が「有り」と判断された場合、すなわちK=0〜99%の場合は、定着性に不利であり大幅に定着目標温度を下げることはできない。この場合、さらに、画像形成に使用された階調処理の種類の判断が行われる(STEP2)。中間調処理手段として誤差拡散法が用いられる場合は、記録媒体上のトナーの多くが孤立した小さな点(ドット)となっており、十分に高い温度で定着しないと印刷後に剥がれる可能性が高い。従って、中間調処理の種類が誤差拡散法であると判断された場合は、定着目標温度を下げることができないため、定着目標温度設定手段37によって通常の定着目標温度であるノーマル温度が選択される。
一方、ディザ法が用いられる場合は、例えば、線を描いて階調を表現するため、誤差拡散法よりも孤立ドットのトナーが少ない。しかし、上記中間調処理が無い場合に比べれば定着性に不利であるため、ディザ法であると判断された場合は、定着目標温度設定手段37によってレベル1温度が選択される。
以上のようにして、本実施形態では定着目標温度の設定が行われるが、複数の記録媒体を連続して印刷する場合は、上記各工程を記録媒体1枚ごとに行い、記録媒体ごとに定着目標温度の設定を行う。
次に、上記定着目標温度の変更工程について説明する。
上述の定着目標温度の設定工程では、複数の記録媒体を連続して印刷する際、記録媒体1枚ごとに、各記録媒体に形成される画像情報に基づいて定着目標温度が設定されるようになっている。従って、連続印刷中に定着温度がノーマル温度、レベル1温度、レベル2温度の間で推移する場合がある。
例えば、図6に示す連続印刷時における定着目標温度推移の一例では、1ページ目から9ページ目までの定着目標温度(ノーマル温度、レベル1温度、レベル2温度)と、目標定着温度の変更によって推移する定着温度の推移イメージを示している。図6において、特に、3ページ目と4ページ目の間では、レベル2温度からノーマル温度への上昇幅が大きいため、定着温度を急激に上昇させる必要がある。しかしながら、単位時間当たりの連続通紙枚数(例えば、1分間当たりの連続通紙可能枚数(CPM))が多い場合、その連続通紙中の紙間の時間だけでは、定着温度が定着目標温度に追従することができず、コールドオフセット等の不具合が生じる可能性がある。一方、定着温度が目標温度に達するまで定着処理を一旦停止すると、ダウンタイムが生じ、生産性が低下してしまう。そこで、このような不具合を防止するため、定着目標温度の変更工程を設けている。
定着目標温度の変更工程を実行するために、画像形成装置は図4に示す各種手段を有している。具体的に、画像形成装置は、最終ページ数記録手段38と、記憶手段39と、定着開始時間演算手段40と、第1比較手段41と、第2比較手段42と、最終ページ数変更手段43と、探索手段44と、探索レベル設定手段45と、定着目標温度可変手段46とを有する。
最終ページ数記録手段38は、上記画像情報取得手段36が取得している画像情報の現時点での最終ページ数を記録する手段である。すなわち、画像情報取得手段36は、これから定着処理される複数枚の記録媒体の画像情報を入手することが可能であり、それらの複数の記録媒体の最終ページ数が最終ページ数記録手段38によって記録される。
記憶手段39は、定着目標温度の変更に必要な情報を予め記憶している手段である。具体的には、記憶手段39は、記録媒体の搬送方向のサイズ、記録媒体の搬送速度(通紙線速)、搬送される記録媒体同士の前後間隔(紙間)、レベル2温度とレベル1温度とノーマル温度の各温度間の温度上昇に要する時間などを記憶している。
定着開始時間演算手段40は、これから定着処理される特定の記録媒体の定着処理時の所定のタイミングからその後に定着処理される所定の記録媒体の定着処理開始時までの時間を演算する手段である。本実施形態では、定着開始時間演算手段40は、これから定着処理される現時点での最初の記録媒体の定着処理開始時から、上記最終ページ数記録手段38によって記録されている最終ページの記録媒体の定着開始時間までの時間を演算する。ここで、「定着処理開始時」とは、記録媒体の搬送方向の先端が定着ニップに到達した時点をいう。
例えば、1枚目の定着処理開始時から3枚目の定着処理開始時までの時間を演算する場合、1枚目の記録媒体の先端が定着ニップに到達してから3枚目の記録媒体が定着ニップに到達するまでには、図7に示すように、2枚分の記録媒体の搬送方向サイズと2つ分の紙間とを加算した距離がある。従って、この1枚目の記録媒体の先端から3枚目の記録媒体の先端までの距離を、通紙線速で除算すれば、1枚目の定着処理開始時から3枚目の定着処理開始時までの時間が得られる(定着開始時間=(記録媒体の搬送方向サイズ×2+紙間×2)/通紙線速)。
また、定着開始時間演算手段40は、演算に必要な情報である、記録媒体の搬送方向サイズと、紙間と、通紙線速を、上記記憶手段39から得ている。また、定着開始時間演算手段40は、上記最終ページ数記録手段38が記録する最終ページ数の情報を得ることで、演算の対象となる最終ページが何ページ目であるかを把握することが可能となっている。
第1比較手段41は、上記記憶手段39と上記定着開始時間演算手段40との両方から得た情報を比較する手段である。具体的には、第1比較手段41は、これから定着処理を行う現時点での最初の記録媒体の定着目標温度(ノーマル温度、レベル1温度、レベル2温度のいずれか)から最大の設定温度であるノーマル温度までの温度上昇に要する時間(Tf)と、前記最初の記録媒体の定着処理開始時から最終ページの定着処理開始時までの時間(Tp)とを比較する手段である。
最終ページ数変更手段43は、上記第1比較手段41での比較結果を受けて最終ページ数を変更する手段である。本実施形態では、第1比較手段41において、上記最初の記録媒体の定着処理開始時から最終ページの定着処理開始時までの時間(Tp)が、上記最初の記録媒体の定着目標温度からノーマル温度までの温度上昇に要する時間(Tf)以下という結果になった場合、最終ページ数変更手段43によって最終ページ数がそれまでの数より1ページ多い数に変更されるようになっている。
探索手段44は、これから定着処理を行う記録媒体に対して設定された定着目標温度の中に、対象となる定着目標温度があるか否かを探索する手段である。この探索手段44によって探索される対象となるレベル、すなわち探索される定着目標温度は、探索レベル設定手段45によって予め設定された条件の下で設定されるようになっている。
第2比較手段42は、上記定着目標温度設定手段37と上記探索レベル設定手段45との両方から得た情報を比較する手段である。具体的には、第2比較手段42は、これから定着処理を行う現時点での最初の記録媒体の定着目標温度と、探索レベル設定手段45によって設定されたレベルの定着目標温度とを比較する。
定着目標温度可変手段46は、上記探索手段44の探索結果を受けて、現時点での最初の記録媒体の定着目標温度を変更する手段である。以下、定着目標温度の変更工程のフローについて詳しく説明する。
図8は、定着目標温度の変更工程のフローを示す図である。
図8に示すように、この定着目標温度の変更工程は、これから定着処理が行われる記録媒体に対して定着目標温度が設定された状態で開始される。ここでは、これから連続して定着処理が行われる複数枚の記録媒体のうち、現時点で1ページ目から3ページ目までの定着目標温度が、レベル2温度(1ページ目)、レベル2温度(2ページ目)、ノーマル温度(3ページ目)である場合を例に挙げて説明する。
まず、上記最終ページ数記録手段38によって、最終ページ数が記録される(STEP11)。この場合、最終ページ数は3ページ目となる。次に、上記定着開始時間演算手段40によって、1ページ目(現時点での最初)の記録媒体の定着処理開始時から3ページ目(最終ページ)の記録媒体の定着開始時間までの時間(Tp)を演算する(STEP12)。この1ページ目の記録媒体の定着処理開始時から3ページ目の定着処理開始までの時間(Tp)の演算方法は、上記説明した通りである(図7参照)。
そして、次の工程で、上記算出された3ページ目の定着開始までの時間(Tp)と、1ページ目の設定された定着目標温度からノーマル温度までの温度上昇に要する時間(Tf)とを、上記第1比較手段41において比較する(STEP13)。この場合、1ページ目の設定された定着目標温度はレベル2温度であるので、ノーマル温度までの温度上昇に要する時間(Tf)は、レベル2温度からノーマル温度までの昇温時間となる。
比較した結果、定着開始までの時間(Tp)がノーマル温度までの昇温時間(Tf)よりも大きい場合(Tp>Tf)は、次の探索レベルを設定する工程(STEP14)へ移行する。一方、3ページの定着開始までの時間(Tp)がノーマル温度までの昇温時間(Tf)以下の場合(Tp≦Tf)は、上記最終ページ数変更手段43によって、最終ページ数が1ページ増やされる(STEP15)。すなわち、最終ページ数は3ページ目であったので、そのページ数から1ページ増えて4ページ目が最終ページ数とされる。さらに、最終ページ数を増やした後、最終ページである4ページ目の定着目標温度をノーマル温度と仮定し(STEP16)、次の探索レベルを設定する工程(STEP14)へと移行する。
探索レベルを設定する工程(STEP16)では、上記探索レベル設定手段45によって探索レベルとなる定着目標温度(Ts)が設定される。最初は、探索レベルをノーマル温度とする。
そして、次の工程で、検索レベルとしてのノーマル温度と、1ページ目の設定された定着目標温度(T1)であるレベル2温度とを、上記第2比較手段42において比較する(STEP17)。この場合、1ページ目の定着目標温度(T1)であるレベル2温度は、検索レベルの定着目標温度(Ts)であるノーマル温度よりも小さいので(T1<Ts)、次の昇温時間(Tf´)の設定工程(STEP19)へ移行する。なお、仮に、1ページ目の定着目標温度(T1)がノーマル温度であった場合は、現時点において定着温度上昇が間に合わないといった不具合は生じないので、1ページ目の定着目標温度を(T1)をそのまま維持し(STEP18)、この温度が1ページ目の定着目標温度として決定される。
一方、上記昇温時間(Tf´)の設定工程(STEP19)へ移行した場合は、1ページ目の定着目標温度(T1)から探索レベルの定着目標温度(Ts)までの温度上昇に要する時間(Tf´)が設定される。この場合、探索レベルの定着目標温度までの昇温時間(Tf´)は、レベル2温度からノーマル温度までの昇温時間となる。そして、次の工程(STEP20)で、この昇温時間(Tf´)と、上記工程(STEP12)で算出された3ページ目の定着開始までの時間(Tp)のうち、短い方(Min(Tp,Tf´))を選択する。なお、上記工程(STEP15)において、最終ページ数を増やした場合は、4ページ目の定着開始までの時間が用いられる。そして、選択された短い方(Min(Tp,Tf´))の時間の中で、探索レベルの定着目標温度(この場合ノーマル温度)が設定されているか否かを、上記探索手段44によって探索される(STEP21)。
その結果、上記時間中に探索レベルの定着目標温度(ノーマル温度)が設定されている場合は、昇温に間に合わないタイミングでノーマル温度が設定されていると判断し、上記定着目標温度可変手段によって、1ページ目の定着目標温度(T1)を1段階上げて、レベル2温度からレベル1温度に変更する(STEP22)。そして、1ページ目の定着目標温度(T1)が変更された状態で、その温度を用いて、再度、上記検索レベルの定着目標温度(Ts)との比較工程(STEP17)を行う。
一方、上記時間中に探索レベルの定着目標温度(ノーマル温度)が設定されていなかった場合は、現時点では、昇温が間に合いそうにないタイミングでのノーマル温度の設定は無いと判断して、1ページ目の定着目標温度(T1)を上げることはしない。この場合は、探索レベルの定着目標温度(Ts)を、ノーマル温度から1段階下げてレベル2温度に設定する(STEP23)。そして、この場合も、検索レベルの定着目標温度(Ts)が変更された状態で、その温度を用いて、再度、上記1ページ目の定着目標温度(T1)との比較工程(STEP17)を行う。
その後、変更後の1ページ目の定着目標温度(T1)又は変更後の探索レベルの定着目標温度(Ts)を用いた上記比較工程(STEP17)において、1ページ目の定着目標温度(T1)が探索レベルの定着目標温度(Ts)以上である(T1≧Ts)と判断されるまで、その比較工程(STEP17)及びそれ以降の工程が繰り返し行われる。そして、1ページ目の定着目標温度(T1)が探索レベルの定着目標温度(Ts)以上である(T1≧Ts)と判断された時点で、1ページ目の定着目標温度が最終的に決定される(STEP18)。
また、それ以降同様に、連続印刷中の記録媒体において、以上説明した工程を記録媒体1枚ごとに行うことで、各記録媒体の定着目標温度が最適な温度に決定される。
図9に、本実施形態に係る定着目標温度の変更工程を経て設定された定着目標温度の推移の一例を示す。
図9に示すように、1ページ目では、当初設定された定着目標温度はレベル2温度であったが、本実施形態に係る工程を経ることにより、1ページ目の定着目標温度が図の矢印Q1に示すタイミングでレベル1温度に上げられている。また、2ページ目では、当初設定された定着目標温度は1ページ目と同様のレベル2温度であったが、本実施形態に係る工程を経ることにより、レベル1温度に上げられ、さらに図の矢印Q2に示すタイミングでノーマル温度に上げられている。その結果、1ページ目から3ページ目までの定着目標温度が段階的に上げられている。
このように定着目標温度を段階的に上げることで、図9に示す例のように、2ページ目から3ページ目において当初設定された定着目標温度がレベル2温度からノーマル温度まで急激に変化している場合でも、定着温度の上昇を3ページ目の定着処理が開始されるまでに間に合わせることが可能となる。これにより、ダウンタイムを生じさせることなく、コールドオフセット等の不具合の発生を防止して良好な定着処理を行うことができる。
以下、本実施形態における上記ディザを判別する方法について説明する。
図10はPDLソフトについての図である。
PDLソフトは、PSやPCL、RICOHのRPCSなどPDLの種類ごとに構文解析を行うパーサ部301と、PDLの画像形成を行う描画コア部302から成る。描画コア部302は、テキスト、イメージ、ベクターグラフィックス、描画設定情報を受け取るためのI/Fである描画モジュールI/F部303と、テキスト、イメージ、ベクターグラフィックスなどの描画データと色や透過設定などを持つ描画設定情報を保存する中間データ保存部304と、保存先のメモリ305と、描画データに基づいて出力イメージデータとしてレンダリングする複数の描画処理部500で構成される。使用されるディザ情報はPDLパーサ部301が起動時にROM領域など環境から取得し、描画コア部302に提供する。
ここで、あるページの定着温度を制御する手法を説明する。
ホストPC上のドライバからコントローラへ送られてくる印刷データは、ジョブを単位とし、一つのジョブは一つ以上のページから構成され、1ページは一つ以上のバンドから構成されているとする。ジョブ中には描画コマンドや設定のための情報が含まれている。代表的な描画コマンドには文字、図形、イメージがある。また、描画色を設定するためのコマンド、ページの解像度などを設定するためのコマンドも含まれている。印刷データを受け取ったPDLパーサ301は描画コマンドなどに切り分けて描画モジュールI/F303へ伝達する。描画モジュールI/F303から情報を受け取れる使用ディザ判定部306は、ページの解像度や深さ、その他の設定をもとに、先に渡されていたこの環境で使用されるディザ情報の中からこのページで使用するディザIDを選択する。次に描画色が設定され、描画モジュールI/F303の中の描画コマンドI/Fが呼ばれると、その描画コマンドの描画先座標で使用されるディザがプレーンと濃度値まで確定する。使用ディザ判定部306は描画モジュールI/F303に含まれている場合もある。ディザID、プレーン、濃度値まで確定すると、定着温度情報も決まるので、その描画コマンドでの定着温度情報が求まることになる。
また、以下において、上記説明した定着目標温度の設定フロー(図5参照)以外のフローについて説明する。
図11に示すフローは、図5に示す上記フローに対してさらに判断要素を追加したものである。具体的には、使用する階調処理の種類がディザ法である場合に、さらにディザ法の種類や線数に基づいて定着目標温度を設定するようにしている。
ここでは、パソコン等の外部装置から受け取った画像情報を出力するプリンタ出力を行う場合と、複写機能により原稿から読み取った画像情報を出力するコピー出力を行う場合とで、使用する階調処理を変更するようにしている。具体的には、プリンタ出力の場合はディザ法を用い、コピー出力の場合は誤差拡散法を使用する。さらに、プリンタ出力の場合は、目的に応じて定着画像の解像度と、画像ドット径の大きさの段階数と、の少なくとも1つを可変可能な複数の画像形成モードが設定されている。具体的には、定着画像の解像度の変更は、単位面積当たりのドット数を変更することによって行う。例えば、600dpi、1200dpiなど、1インチ当たりのドット数(ドット密度)を変更する。また、画像ドット径の大きさの段階数の変更は、ビット数を変更することによって行う。この場合、プリンタ出力における画像形成モードとして、速度優先の一般文書モードと、画質優先の一般文書モードと、写真(画質優先)モードと、高解像度モードとを設定している。各モードにおける解像度と画像ドット径の大きさの段階数は、速度優先の一般文書モードの場合は600dpi、1bit、画質優先の一般文書モードの場合は600dpi、2bit、写真(画質優先)モードの場合は600dpi、4bit、高解像度モードの場合は1200dpi、1bitに設定されている。
速度優先の一般文書モードは、生産性に有利なモードであり、低線数のため文字や線のギザギザが目立ちやすいが、画像処理に要する時間が短い。
画質優先の一般文書モードは、文字領域が分散ディザであり、速度優先の一般文書モードよりも高線数となる。このモードでは、速度優先の一般文書モードに比べて文字のギザギザが改善され、写真領域も万線ディザで色ムラに強い。しかし、画質を優先するため、速度優先の一般文書モードに比べて生産性(例えば、ある画像をデータ入力してからプリント完了までの時間)が低下する。
写真(画質優先)モードは、画質優先の一般文書モードよりも写真領域がさらに高線数となり、より高解像度の画像となり粒状性が向上する。
また、高解像度モードは、写真領域と文字領域のいずれも写真(画質優先)モードよりもさらに高線数となり、本実施形態において最も解像度が高いモードであって、文字や線画の鮮鋭性が高い。
各モードの切り換えは、ユーザーが装置本体に設けたコントロールパネルによって切換可能となっている。また、紙種を検知する紙種検知手段を設け、その検知情報により紙種に基づいてモードを変更可能にしてもよい。
また、画像形成装置は、画像の文字領域と写真領域を検知する領域検知手段を備えており、この領域検知手段の検知結果(文字領域か写真領域か)に基づいて、上記4つの画像形成モードごとにディザ法の種類と線数が変更されるようになっている。図12に、上記各モードにおける写真領域と文字領域で使用するディザ法の種類と線数の具体例を示す。
ところで、孤立ドットが多い中間調画像(ハーフトーン)などでは定着性が良くないことは従来から知られているが、中間調画像の定着性は、書き込むディザ法の種類によって大きく異なる。以下、これについて説明する。
図13は、各種類のディザに対して中間調画像(ハーフトーン)の定着性を示した図である。
評価方法としては、各種の階調処理方法を用いてハーフトーン画像を出力する。このとき、ハーフトーンの画像濃度は、エックスライト社のX-rite 938を用いて測定した画像濃度(ID)の値にして、0.5から1.0までの濃度にて0.05刻みで11サンプルを用意する。また、このサンプルの定着温度として、130℃、140℃、150℃の3条件を用意する。
そして、各サンプルのスミア定着性を評価する。ここで、スミア定着性とは、コピー/プリンタ画像の定着性判定方法の1つであり、ハーフトーン画像におけるトナーの剥がれやすさを評価するものである。その測定方法を以下に述べる。
ベース濃度(ID)がエックスライト社製の分光濃度計にて0.75±0.1であるハーフトーンのサンプルを白綿布で所定の荷重をかけて5往復させて擦り、トナーが付着した部分の白綿布の濃度を分光濃度計で測定する。擦った後の白綿布の濃度が高いほど、紙からトナーが剥がれやすいことになり、定着性が悪いと判断する。このとき、同一定着温度、同一画像処理情報のサンプルで最もスミアID値が高い値を、その階調処理における定着性のスミアID値とする。これを各種階調処理別に、縦軸をスミアID値、横軸を定着温度としてプロットする。図13のグラフでは、スミアIDが大きいほど定着性が悪いことを示している。
図13のグラフを見ると、プリンタ出力でのほとんどのディザ種類では、コピー出力での誤差拡散に比べて定着性が良い。しかし、プリンタ出力で文字などによく使用される分散ディザの場合は、コピー出力の場合よりも定着性に劣っている。このように、定着性の良否は、単純にプリンタ出力かコピー出力かなどの一つの要因によって決定できるものではない。従って、定着温度の制御は、各出力画像の定着性に合わせて行うことが望ましい。
そこで、図11に示すフローでは、図5に示すフローに加え、さらに、階調処理としてディザ法を使用する場合は、そのディザの種類と線数に基づき定着目標温度を変更するようにしている。
図14は、上記図13のグラフでの検討結果を基に、階調処理方法としてディザ法を用いた場合のディザ種類と線数によって選択する定着目標温度を示す図である。
ここで、ノーマル温度とレベル1温度は上記と同様の定着目標温度である。図14に示す例では、集中ディザと万線ディザの場合、線数が200[lpi]までであれば定着目標温度をレベル1温度に下げるように設定している。また、分散ディザを用いた場合は、200[lpi]以上の線数では、常にノーマル温度よりも下げないように設定されている。
また、図15は、上記図12と図14に基づいて、画像形成モードごとの定着目標温度を、写真領域と文字領域、中間調画像の有無によって表示したものである。
なお、図15では、中間調画像が無い場合を「100%画像のみ」(ベタ画像のみ)と表示し、中間調画像がある場合を「100%未満画像あり」と表示している。
以下、図11を参照して、この定着目標温度の設定フローについて詳しく説明する。
図11において、STEP1とSTEP2は、図5のフローに示すSTEP1及びSTEP2と同様の工程である。従って、これらについての説明は省略し、図5に示すフローと異なる点についてのみ説明する。
図11のSTEP2において階調処理種類がディザ法であると判断された場合は、次の工程で、そのディザ法の種類の判断を行う(STEP3)。その結果、ディザ法として分散ディザを使用していると判断された場合は、分散ディザは他のディザ(集中ディザ、万線ディザ)に比べて同じ線数でも定着性が不利であり、定着目標温度を下げることはできないため、ノーマル温度を選択する。なお、図11に示すフローにおいて、ノーマル温度、レベル1温度、レベル2温度は、図5に示すフローにおいて説明した温度と同様に設定されている。
一方、分散ディザ以外のディザ(集中ディザ、万線ディザ)を使用していると判断された場合は、さらに線数を判断する(STEP4)。その結果、線数が200[lpi]未満であると判断された場合は、比較的定着性が有利なため、ノーマル温度から少し下げたレベル1温度を選択する。これに対し、線数が200[lpi]以上であると判断された場合は、定着性が不利であるため、ノーマル温度を選択する。
また、複数の記録媒体を連続して印刷する場合は、上記工程を記録媒体1枚ごとに行い、記録媒体ごとに定着目標温度の設定を行う。このように、使用する階調処理の種類がディザ法である場合は、さらにディザ法の種類や線数に基づいて定着目標温度を設定することにより、良好な定着性を確保しつつ、より一層の省エネ化を図ることが可能となる。
続いて、図16〜図18に示す別のフローについて説明する。
このフローでは、形成された画像がモノクロ画像又はフルカラー画像であるか、画像中に文字領域や写真領域の有無について判断することにより、定着目標温度を設定するようにしている。
まず、図16に示すように、入力画像情報からプリンタ出力かコピー出力かを判断する(STEP1)。この場合も、上記と同様に、プリンタ出力の場合はディザ法を用い、コピー出力の場合は誤差拡散法を使用するようにしている。すなわち、ここではプリンタ出力かコピー出力かを判断することにより、階調処理種類の判断を行っている。その結果、コピー出力と判断された場合は、誤差拡散法を使用しているので、上記と同様に定着目標温度を下げることができずノーマル温度を選択する。なお、階調処理法として誤差拡散法を使用する場合であっても、ドットの大きさやハーフトーンの有無などにより定着目標温度を制御するようにしても構わない。また、このフローにおいて、ノーマル温度、レベル1温度、レベル2温度は、上記と同様の温度に設定されている。
一方、プリンタ出力と判断された場合は、さらに、画像がモノクロ画像かフルカラー画像かを判断する(STEP2)。その結果、モノクロ画像の場合は、階調処理手段としてディザ法を使用しているため、そのディザ種類及び線数に応じて定着目標温度をノーマル温度よりも下げることができるか否か、次の画像処理情報1を取得して判断する。これは、モノクロ画像の定着下限温度はスミア定着性で決まっているからである。すなわち、モノクロ画像には、万線ディザや集中ディザなどのディザ種類に応じて孤立トナーが少ないものが存在するため、孤立トナーが少なくハーフトーンのスミア定着性が有利な場合は、定着目標温度の低下を実行できる可能性があるためである。
また、フルカラー画像の場合でも階調処理方法としてディザ法を使用しているが、フルカラー画像は、単色のモノクロ画像に比べて2色以上のトナーが重なる可能性があり、トナー付着量が多い。このため、フルカラー画像では、スミア定着性よりもベタ描画定着性やコールドオフセットが律速になる。よって、ここでは、フルカラー画像と判断された場合は、定着目標温度下げを行わず、ノーマル温度を選択するようにする。なお、フルカラー画像の場合でも、トナー付着量などによって定着目標温度を変更する制御を追加してもよい。
次に、上記判断結果がモノクロ画像であった場合に、さらに画像処理情報1を取得して定着目標温度をノーマル温度から下げることができるか否かを判断する工程について説明する。
図17に示すように、この工程では、画像処理情報1から画像が通常モードか高解像度モードかを判断する(STEP3)。ここでいう高解像度モードとは、上述の高解像度モードと同様であり、通常モードとは、高解像度モード以外の上記各モード(速度優先の一般文書モード、画質優先の一般文書モード、写真モード)のことである(図12参照)。
高解像度モードであると判断された場合は、線数が高いため、定着目標温度を下げずノーマル温度を選択する。なお、高解像度モードであっても、ハーフトーンの有無などを判断して、ハーフトーンが無い場合は定着目標温度を下げるように制御してもよい。
一方、通常モードの場合は、定着目標温度下げを行える可能性があり、次の画像処理情報2を取得して判断する。
図18において、画像処理情報2を取得して定着目標温度をノーマル温度よりも下げることができるか否かを判断する工程について説明する。
図18に示すように、この工程では、まず、文字領域の有無を判断する(STEP4)。文字領域が「有り」と判断された場合は、次に、画像が100%未満画像(中間調処理)の有無を判断する(STEP5)。これにより、100%未満画像が「有り」と判断された場合は、さらに、速度優先の一般文書モードであるか否かを判断する(STEP6)。
ここで、速度優先の一般文書モードの場合は、上記と同様に集中ディザを使用し、それ以外の画質優先の一般文書モードと写真モードの場合は、分散ディザを使用している(図12参照)。従って、画像が文字領域を有し、その文字領域が100%未満画像を有し、速度優先の一般文書モードである場合は、孤立トナーが少ない集中ディザを使用しているので、多少の定着目標温度下げが可能であり、レベル1温度を選択する。
一方、画像が文字領域を有し、その文字領域が100%未満画像を有するが、速度優先の一般文書モード以外のモードである場合は、定着性に不利な分散ディザを使用しているので、定着目標温度下げを行わずにノーマル温度を選択する。
また、上記STEP4と5において、文字領域が「無し」、100%未満画像が「無し」と判断された場合は、写真領域の有無を判断する(STEP7)。その結果、写真領域が「有り」と判断された場合は、さらに、100%未満画像の有無を判断する(STEP8)。その結果、写真領域が100%未満画像を有する場合は、上記と同様に万線ディザを使用しているので(図12参照)、孤立トナーが少なく、多少の定着目標温度下げが可能であり、レベル1温度を選択する。これに対し、STEP7と8において写真領域が「無し」、100%未満画像が「無し」と判断された場合は、レベル2温度を選択する。この場合は、中間調画像がなく100%のベタ画像であるため、定着性の余裕度が大きく、温度を大幅に下げることができるからである。なお、100%のベタ画像であるか否かは上記説明した通り、画像のCMYK値によって判断する。
また、複数の記録媒体を連続して印刷する場合は、上記工程を記録媒体1枚ごとに行い、記録媒体ごとに定着目標温度の設定を行う。このように、形成された画像がモノクロ画像又はフルカラー画像であるか、画像中に文字領域や写真領域の有無について判断することによっても、記録媒体の定着目標温度を1枚ごとに適切な温度に設定することが可能である。
また、図19に示すのは、ブラックトナーとして低温定着トナーを用いた場合のフローである。
以下、低温定着のブラックトナーを用いた場合の定着目標温度の設定フローについて説明する。なお、ここで使用するトナーの詳細については後述する。
ここでは、定着目標温度が4段階に設定されており、上記と同様の定着目標温度設定手段37によって4段階のいずれかの温度に選択されるようになっている。具体的には、最も定着性に不利なフルカラー画像の場合の定着目標温度をノーマル温度(第1の定着目標温度)として設定している。一方、モノクロ画像の場合は、フルカラー画像の場合に比べて、定着目標温度を低く設定することが可能である。このため、モノクロ画像の場合は、上記フルカラー画像の場合のノーマル温度から少し下げたレベル1温度(第2の定着目標温度)と、レベル1温度から少し下げたレベル2温度(第3の定着目標温度)と、レベル1温度から大幅に下げたレベル3温度(第4の定着目標温度)を設定している。例えば、レベル1温度はノーマル温度よりも10℃低い温度、レベル2温度はノーマル温度よりも15℃低い温度、レベル3温度はノーマル温度よりも25℃低い温度に設定する。
図19に示すフローでは、まず、STEP1において、記録媒体に形成される画像がモノクロ画像であるかフルカラー画像であるかを判別する。フルカラー画像であれば、上記の通りノーマル温度を選択する。一方、モノクロ画像である場合は、定着目標温度下げが可能であるので、次のSTEP2以降の判断を行う。
次のSTEP2では画像の中間調処理の有無を判断する。また、その判断結果によっては、その後のSTEP3で画像形成に使用された階調処理の種類の判断を行う。なお、これらのSTEP2及びSTEP3の工程は、図5に示すフローのSTEP1及びSTEP2と同様の工程であるので説明を省略する。ただし、図19に示すフローでは、STEP2及びSTEP3の工程を経て設定される定着目標温度を、図5に示すフローの場合よりも1段階ずつ下げている。
また、複数の記録媒体を連続して印刷する場合は、上記工程を記録媒体1枚ごとに行い、記録媒体ごとに定着目標温度の設定を行う。このように、低温定着のブラックトナーを用いた構成においては、図19に示す定着目標温度の設定工程を使用することで、モノクロ画像の場合に、フルカラー画像の場合よりも定着目標温度を低く設定することができ、良好な定着性を確保しつつ、省エネ化を図れる。
また、図20に示すフローは、ブラックトナーとして低温定着トナーを用いた場合の別のフローである。
このフローでは、図19に示す上記フローに加え、使用する階調処理の種類がディザ法である場合は、さらにディザ法の種類や線数に基づいて定着目標温度を設定するようにしている。
図21は、フルカラー印刷時とモノクロ印刷時のそれぞれにおいて、画像形成モードごとの定着目標温度を、写真領域と文字領域、中間調画像の有無によって表示したものである。なお、図21におけるノーマル温度、レベル1温度、レベル2温度、レベル3温度は上記と同様の定着目標温度である。また、図21の表は、上記図12と図14に基づいて作成しており、図21での各画像形成モードにおけるディザ種類や解像度、画像ドット径の大きさの段階数などの設定は、上記と同様である。
以下、図20を参照して、この定着目標温度の設定フローについて詳しく説明する。
図20において、まず、STEP1で、記録媒体に形成される画像がモノクロ画像であるかフルカラー画像であるかを判別する。フルカラー画像であれば、上記の通りノーマル温度を選択する。一方、モノクロ画像である場合は、定着目標温度下げが可能であるので、次のSTEP2以降の判断を行う。
なお、図20に示すSTEP2〜STEP5の工程は、図11に示すSTEP1〜STEP4のフローと同様であるので説明を省略する。ただし、図20に示すフローでは、STEP2〜STEP5の工程を経て設定する定着目標温度を、図11に示すフローの場合よりも1段階ずつ下げている。
また、複数の記録媒体を連続して印刷する場合は、上記工程を記録媒体1枚ごとに行い、記録媒体ごとに定着目標温度の設定を行う。以上のように、この場合は、使用する階調処理の種類がディザ法である場合に、さらにディザ法の種類や線数に基づいて定着目標温度を設定することで、良好な定着性を確保しつつ、より一層の省エネ化を図ることが可能となる。
さらに、図22〜図24に示すフローは、ブラックトナーとして低温定着トナーを用いた場合の、図19及び図20の各フローとは異なるフローである。
まず、図22に示すように、STEP1において、記録媒体に形成される画像がモノクロ画像であるかフルカラー画像であるかを判別する。フルカラー画像であれば、上記の通りノーマル温度を選択する。一方、モノクロ画像である場合は、定着目標温度下げが可能であるので、次のSTEP2以降の判断を行う。なお、図22〜図24に示すフローにおいて、ノーマル温度、レベル1温度、レベル2温度、レベル3温度は、上記と同様の温度に設定されている。
STEP2では、入力画像情報からプリンタ出力かコピー出力かを判断する。その結果、コピー出力と判断された場合は、誤差拡散法を使用しているので、モノクロ画像形成時の定着目標温度を下げることができずレベル1温度を選択する。なお、階調処理法として誤差拡散法を使用する場合であっても、ドットの大きさやハーフトーンの有無などにより定着目標温度を制御するようにしても構わない。一方、プリンタ出力と判断された場合は、さらに画像処理情報1を取得して定着目標温度をレベル1温度よりも下げることができるか否かを判断する工程に移行する。
図23は、画像処理情報1を取得して定着目標温度を選択する工程のフローを示している。また、図24は、図23に示す工程を経た後、さらに画像処理情報2を取得して定着目標温度を選択する工程のフローを示す。これら図23と図24に示す工程は、図17及び図18に示す工程と同様であるので説明を省略する。ただし、図23及び図24に示すフローでは、設定される定着目標温度を、図17及び図18に示すフローの場合よりも1段階ずつ下げている。
また、この場合も同様に、複数の記録媒体を連続して印刷する場合は、上記工程を記録媒体1枚ごとに行い、記録媒体ごとに定着目標温度の設定を行う。これにより、記録媒体の定着目標温度を1枚ごとに適切な温度に設定することが可能である。
以下、上記低温定着のブラックトナーについて詳しく説明する。
低温定着のブラックトナーは、その必要定着温度が、カラートナーの必要定着温度に比べて10℃以上低く、少なくとも熱可塑性樹脂が含まれており、熱可塑性樹脂として少なくとも結晶性ポリエステル樹脂と非結晶性ポリエステル樹脂、ワックス、着色剤を含んでいることを特徴とする。前記トナーのDSC消音における示差熱量曲線において、50〜100℃に明確な吸熱ピークを有し、前記結晶性ポリエステルの融点としては60℃〜80℃、前記ワックスの融点として70〜90℃であることを特徴とする。前記結晶性ポリエステルの融点が60℃未満の場合、耐熱保存性の悪化が見られ、80℃より高い場合は低温定着性の悪化が見られる。前記ワックスの融点が70℃未満の場合、耐熱保存性の悪化が見られ、90℃より高い場合は低温定着性の悪化が見られる。一般的に結晶性ポリエステルとワックスは低温定着のために融点が低いほうが好ましいが、低すぎると耐熱保存性が悪化する。また、ワックスは結晶性ポリエステルより耐熱保存性に対して悪化する傾向があるため、融点としては結晶性ポリエステルより高いことが好ましい。
[有機溶媒]
有機溶媒としては、高温で結晶性ポリエステル樹脂を完全に溶解して均一溶液を形成し、その反面、低温に冷却すると結晶性ポリエステル樹脂と相分離し、不透明な不均一溶液を形成するものが好ましい。具体例としてトルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。
[結晶性ポリエステル樹脂の効果]
トナー中の結晶性ポリエステル樹脂は、高い結晶性をもつがゆえに定着開始温度付近において、急激な粘度低下を示す熱溶融特性を示す。つまり、溶融開始温度直前までは結晶性による耐熱保存性が良く、溶融開始温度では急激な粘度低下(シャープメルト性)を起こし、定着することから、良好な耐熱保存性と低温定着性を兼ね備えたトナーを設計することが出来る。また、離型幅(定着下限温度とホットオフセット発生温度の差)についても、良好な結果を示すことが判った。
[結晶性ポリエステル樹脂]
結晶性ポリエステル樹脂は、例として、アルコール成分として炭素数2〜12の飽和脂肪族ジオール化合物、例えば1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール及びこれらの誘導体と、少なくとも酸性分として二重結合(C=C結合)を有する炭素数2〜12のジカルボン酸、もしくは、炭素数2〜12の飽和ジカルボン酸、特にフマル酸、1,4−ブタン二酸、1,6−ヘキサン二酸、1,8−オクタン二酸、1,10−デカン二酸、1,12−ドデカン二酸およびこれらの誘導体を用いて合成される。
中でも、結晶性ポリエステルの結晶性が高く、融点付近で急激な粘度変化を示す観点から、特に1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールのいずれかの炭素数4〜12の飽和ジオール成分と、1,4−ブタン二酸、1,6−ヘキサン二酸、1,8−オクタン二酸、1,10−デカン二酸、1,12−ドデカン二酸のいずれかの炭素数4〜12の飽和ジカルボン酸成分のみで構成されることが好ましい。
また、結晶性ポリエステルは、低温定着性と耐熱保存性を両立させるために鋭意検討を行った結果、60℃以、80℃未満である場合、低温定着性、耐熱保存性の両立が達成されることを見出した。60℃未満の場合は耐熱保存性が悪化し、80℃以上の場合は低温定着性が悪化する。
また、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性及び軟化点を制御する方法として、ポリエステル合成時にアルコール成分にグリセリン等の3価以上の多価アルコールや、酸成分に無水トリメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸を追加して縮重合を行った非線状ポリエステルなどを設計、使用するなどの方法が挙げられる。
結晶性ポリエステル樹脂の分子構造は、溶液や固体によるNMR測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、IR測定などにより確認することができるが、簡便には赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm-1もしくは990±10cm-1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有するものを例としてあげることができる。
結晶性ポリエステルの分子量については、上記の分子量分布がシャープで低分子量のものが低温定着性に優れ、分子量が低い成分が多いと耐熱保存性が悪化するという観点から、鋭意検討した結果、o−ジクロロベンゼンの可溶分のGPCによる分子量分布で、重量平均分子量が5,000以上20,000以下であり、かつ数平均分子量の500以下の割合が0%以上、2.5%以下であり、かつ前記結晶性ポリエステルMnの1000以下の割合が0%以上、5.0%以下である場合、低温定着性、耐熱保存性の両立が達成されることを見出した。更に好ましくはかつ数平均分子量の500以下の割合が0%以上、2.0%以下であり、かつ前記結晶性ポリエステルMnの1000以下の割合が0%以上、4.0%以下であることが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の酸価、水酸基価は、酸価をA、水酸基価をBとした際に、以下の関係式を満たすことが好ましい。
10mgKOH/g<A<40mgKOH/g
0mgKOH/g<B<20mgKOH/g
20mgKOH/g<A+B<40mgKOH/g
酸価が10mgKOH/g以下である場合、記録媒体である紙との親和性が悪化し、耐熱保存性が悪化する場合がある。
また酸価が40mgKOH/g以上、もしくは、水酸基価が20mgKOH/g以下の場合、高温高湿下でのトナーの帯電能力が低下する恐れがある。
また酸価と水酸基価の合計が20mgKOH/g以下の場合、非晶質ポリエステルとの相溶性が低下し、低温定着性が充分得られない場合がある。また酸価と水酸基価の合計が40mgKOH/g以上の場合、結晶性ポリエステルが非晶質ポリステルとの相溶性が上がりすぎるため、耐熱保存性が悪化する場合がある。
結晶性ポリエステルの有機溶剤に対する70℃における溶解度は10質量部以上であることが好ましい。10質量部未満の場合、有機溶剤と結晶性ポリエステルの親和性が乏しいため、有機溶剤中で結晶性ポリエステルをサブミクロンサイズまで分散させることが困難であり、トナー中に存在する結晶性ポリエステルが不均一になり、帯電性の悪化、長期使用での画質の悪化を生じることがある。
結晶性ポリエステルの有機溶剤に対する20℃における溶解度は3.0質量部未満であることが好ましい。3.0質量部以上の場合、有機溶剤中に溶解している結晶性ポリエステルが、加熱前から非晶質ポリエステルと相溶しやすくなり、耐熱保存性の悪化、現像器の汚染、画像の劣化を生じる虞がある。
前記結着樹脂成分は、結着樹脂前駆体を含有することが好ましい。
また、トナーは、有機溶媒中に、少なくとも着色剤、離型剤、結晶性ポリエステル樹脂、変性ポリエステル系樹脂から成る結着樹脂前駆体、及びこれら以外の結着樹脂成分を溶解・分散させて得られる油相に、前記結着樹脂前駆体と伸長または架橋する化合物を溶解させた後、前記油相を微粒子分散剤の存在する水系媒体中に分散させて乳化分散液を得、前記乳化分散液中で前記結着樹脂前駆体を架橋反応及び/又は伸長反応させ、有機溶剤を除去して得られるトナーであることが好ましい。
[結着樹脂前駆体]
結着樹脂前駆体としては、変性ポリエステル系樹脂からなる結着樹脂前駆体が好ましく、イソシアネートやエポキシなどにより変性されたポリエステルプレポリマーを挙げることができる。これは、活性水素基を持つ化合物(アミン類など)と伸長反応し、離型幅(定着下限温度とホットオフセット発生温度の差)の向上に効果をおよぼす。このポリエステルプレポリマーの合成方法としては、ベースとなるポリエステル樹脂に、従来公知のイソシアネート化剤やエポキシ化剤などを反応させることで容易に合成することが出来る。イソシアネート化剤としては、脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α',α'−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアヌレート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;及びこれら2種以上の併用が挙げられる。また、エポキシ化剤としては、エピクロロヒドリンなどをその代表例としてあげることが出来る。
イソシアネート化剤の比率は、イソシアネート基[NCO]と、ベースとなるポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1未満では、このポリエステルプレポリマーのウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
このポリエステルプレポリマー中のイソシアネート化剤の含有量は、通常0.5〜40重量%、好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは2〜20重量%である。0.5重量%未満では、耐ホットオフセット性が悪化すると共に、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40重量%を超えると低温定着性が悪化する。
また、このポリエステルプレポリマー中の1分子当たりに含有するイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、伸長反応後のウレア変性ポリエステル樹脂の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
前記結着樹脂前駆体は、重量平均分子量が1×104以上3×105以下であることが好ましい。
[結着樹脂前駆体と伸長又は架橋する化合物]
結着樹脂前駆体と伸長又は架橋する化合物としては、活性水素基を有する化合物が挙げられ、その代表として、アミン類をあげることができる。アミン類としては、ジアミン化合物、3価以上のポリアミン化合物、アミノアルコール化合物、アミノメルカプタン化合物、アミノ酸化合物、及び、これらのアミノ基をブロックした化合物などが挙げられる。ジアミン化合物としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4'ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(4,4'−ジアミノ−3,3'ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);及び脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。3価以上のポリアミン化合物としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコール化合物としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタン化合物としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。
アミノ酸化合物としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。これらのアミノ基をブロックした化合物としては、前記アミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。これらアミン類のうち好ましいものは、ジアミン化合物およびジアミン化合物と少量のポリアミン化合物の混合物である。
[着色剤]
着色剤としては公知の染料及び顔料が全て使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びそれらの混合物が使用できる。着色剤の含有量はトナーに対して通常1〜15重量%、好ましくは3〜10重量%である。
着色剤は樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造又はマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、先にあげた変性、未変性ポリエステル樹脂の他にポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族叉は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられ、単独あるいは混合して使用できる。
本マスターバッチはマスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合、混練してマスターバッチを得る事ができる。この際着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いる事ができる。また、いわゆるフラッシング法と呼ばれる着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶剤とともに混合混練し、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いる事ができるため乾燥する必要がなく、好ましく用いられる。混合混練するには3本ロールミル等の高せん断分散装置が好ましく用いられる。
[離型剤]
離型剤は、融点が50〜120℃のワックスであることが好ましい。
このようなワックスは、定着ローラとトナー界面の間で離型剤として効果的に作用することができるため、定着ローラにオイル等の離型剤を塗布しなくても高温耐オフセット性を向上させることができる。
なお、ワックスの融点は、示差走査熱量計であるTG−DSCシステムTAS−100(理学電機社製)を用いて、最大吸熱ピークを測定することにより求められる。
離型剤としては、以下に示す材料を用いることができる。
ロウ類及びワックス類としては、カルナバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス;オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックス等が挙げられる。また、これらの天然ワックス以外の離型剤としては、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス;エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス等が挙げられる。
さらに、1,2−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド;低分子量の結晶性高分子である、ポリメタクリル酸n−ステアリル、ポリメタクリル酸n−ラウリル等のポリアクリレートのホモポリマー又はコポリマー(例えば、アクリル酸n−ステアリルーメタクリル酸エチル共重合体等)等の側鎖に長鎖アルキル基を有する結晶性高分子も離型剤として用いることができる。
[帯電制御剤]
トナーは、必要に応じて帯電制御剤を含有してもよい。帯電制御剤としては公知のものが全て使用でき、例えばニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。
具体的にはニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。
帯電制御剤の使用量は、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくはバインダー樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲で用いられる。好ましくは、0.2〜5重量部の範囲がよい。10重量部を越える場合にはトナーの帯電性が大きすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招く。これらの帯電制御剤はマスターバッチ、樹脂とともに溶融混練した後溶解分散させる事もできるし、もちろん有機溶剤に直接溶解、分散する際に加えても良いし、トナー表面にトナー粒子作成後固定化させてもよい。
[非結晶性ポリエステル樹脂]
前記結着樹脂成分としては、非結晶性の未変性ポリエステル樹脂を用いる。変性ポリエステル系樹脂からなる結着樹脂前駆体を架橋及び/又は伸長反応させて得られる変性ポリエステル樹脂と未変性のポリエステル樹脂は、少なくとも一部が相溶していることが好ましい。これにより、低温定着性及び耐ホットオフセット性を向上させることができる。このため、変性ポリエステル樹脂と未変性のポリエステル樹脂のポリオールとポリカルボン酸は、類似の組成であることが好ましい。また、未変性ポリエステル樹脂として、結晶性ポリエステル分散液に用いた非結晶性ポリエステル樹脂も未変性であれば、用いることができる。
結晶性ポリエステルの酸価をA、未変性のポリエステル樹脂の酸価をCとした際に、以下の関係式を満たすことが好ましい。
−10mgKOH/g<A−C<10mgKOH/g
結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステルと酸価と水酸基価の差が10以上である場合、結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステルの相溶性、親和性が乏しく、低温定着性に劣る場合がある。また結晶性ポリエステルがトナー表面に露出しやすくなり、現像部への汚染、フィルミングが生じやすくなる場合がある。
なお、ウレア変性ポリエステル樹脂は、未変性のポリエステル樹脂以外に、ウレア結合以外の化学結合で変性されているポリエステル樹脂、例えば、ウレタン結合で変性されているポリエステル樹脂と併用することができる。
トナー組成物がウレア変性ポリエステル樹脂等の変性ポリエステル樹脂を含有する場合、変性ポリエステル樹脂は、ワンショット法等により製造することができる。
一例として、ウレア変性ポリエステル樹脂を製造方法について説明する。
まず、ポリオールとポリカルボン酸を、テトラブトキシチタネート、ジブチルスズオキサイド等の触媒の存在下で、150〜280℃に加熱し、必要に応じて、減圧しながら生成する水を除去して、水酸基を有するポリエステル樹脂を得る。次に、水酸基を有するポリエステル樹脂とポリイソシアネートを40〜140℃で反応させ、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーを得る。さらに、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーとアミン類を0〜140℃で反応させ、ウレア変性ポリエステル樹脂を得る。
ウレア変性ポリエステル樹脂の数平均分子量は、通常、1000〜10000であり、1500〜6000が好ましい。
なお、水酸基を有するポリエステル樹脂とポリイソシアネートを反応させる場合及びイソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーとアミン類を反応させる場合には、必要に応じて、溶剤を用いることもできる。
溶剤としては、芳香族溶剤(トルエン、キシレン等);ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等);エステル類(酢酸エチル等);アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等);エーテル類(テトラヒドロフラン等)等のイソシアネート基に対して不活性なものが挙げられる。
なお、未変性のポリエステル樹脂を併用する場合は、水酸基を有するポリエステル樹脂と同様に製造したものを、ウレア変性ポリエステル樹脂の反応後の溶液に混合してもよい。
油相に含有される結着樹脂成分として、結晶性ポリエステル樹脂、非結晶性ポリエステル樹脂、結着樹脂前駆体、未変性樹脂を併用してもよいが、更にこれらの樹脂以外の結着樹脂成分を含有してもよい。結着樹脂成分としては、ポリエステル樹脂を含有することが好ましく、ポリエステル樹脂を50重量%以上含有することがさらに好ましい。ポリエステル樹脂の含有量が50重量%未満であると、低温定着性が低下することがある。結着樹脂成分のいずれもがポリエステル樹脂であることが特に好ましい。
なお、ポリエステル樹脂以外の結着樹脂成分としては、ポリスチレン、ポリ(p−クロロスチレン)、ポリビニルトルエン等のスチレン又はスチレン置換体の重合体;スチレン‐p‐クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタレン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロロメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス等が挙げられる。
[水系媒体中でのトナー製造法]
水系媒体としては、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。混和可能な溶剤としては、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などが挙げられる。
トナー粒子を形成する、結着樹脂前駆体、着色剤、離型剤、結晶性ポリエステル分散液、帯電制御剤、未変性ポリエステル樹脂などは、水系媒体中で分散体を形成させる際に混合してもよいが、あらかじめ、これらのトナー原料を混合した後、水系媒体中にその混合物を加えて分散させたほうがより好ましい。また、着色剤、離型剤、帯電制御剤などの他のトナー原料は、必ずしも、水系媒体中で粒子を形成させる時に混合しておく必要はなく、粒子を形成せしめた後、添加してもよい。たとえば、着色剤を含まない粒子を形成させた後、公知の染着の方法で着色剤を添加することもできる。
分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。分散体の粒径を2〜20μmにするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜60分である。分散時の温度としては、通常、0〜80℃(加圧下)、好ましくは10〜40℃である。
トナー組成物100重量部に対する水系媒体の使用量は、通常100〜1000重量部である。100重量部未満ではトナー組成物の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られない。1000重量部を超えると経済的でない。また、必要に応じて、分散剤を用いることもできる。分散剤を用いた方が、粒度分布がシャープになるとともに分散が安定である点で好ましい。
ポリエステルプレポリマーと活性水素基を有する化合物を反応させる方法としては、水系媒体中でトナー組成物を分散する前に活性水素基を有する化合物を加えて反応させても良いし、水系媒体中に分散した後に活性水素基を有する化合物を加えて粒子界面から反応を起こしても良い。この場合、製造されるトナー表面に優先的にポリエステルプレポリマーによる変性したポリエステルが生成し、粒子内部で濃度勾配を設けることもできる。
トナー組成物が分散された油相を水が含まれる液体に乳化、分散するための分散剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
またフルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及びその金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる。
商品名としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−l29(住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−l02、(ダイキン工業社製)、メガファックF−ll0、F−l20、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製)、エクトップEF−102、l03、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204、(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F150(ネオス社製)などが挙げられる。
また、カチオン界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有する脂肪族一級、二級もしくは三級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族四級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、商品名としてはサーフロンS−l21(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDS−202(ダイキン工業社製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEF−l32(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−300(ネオス社製)などが挙げられる。
また、水に難溶の無機化合物分散剤としてリン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイトなども用いることができる。
また高分子系保護コロイドもしくは、水に不溶な有機微粒子により分散液滴を安定化させても良い。例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなど、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエ一テル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、又はビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなど、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの窒素原子、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。
なお、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解などの操作によっても除去できる。
分散剤を使用した場合には、該分散剤がトナー粒子表面に残存したままとすることもできるが、反応後、洗浄除去するほうがトナーの帯電面から好ましい。
さらに、トナー組成物の粘度を低くするために、ポリエステルプレポリマーが反応し変性したポリエステルが可溶の溶剤を使用することもできる。溶剤を用いた方が粒度分布がシャープになる点で好ましい。該溶剤は沸点が100℃未満の揮発性であることが除去が容易である点から好ましい。該溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。
特に、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒および塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましい。ポリエステルプレポリマー100部に対する溶剤の使用量は、通常0〜300部、好ましくは0〜100部、さらに好ましくは25〜70部である。溶剤を使用した場合は、伸長および/または架橋反応後、常圧または減圧下にて加温し除去する。
伸長および/または架橋反応時間は、ポリエステルプレポリマーと活性水素基を有する化合物の組み合わせによる反応性により選択されるが、通常10分〜40時間、好ましくは30分〜24時間である。反応温度は、通常、0〜100℃、好ましくは10〜50℃である。また、必要に応じて公知の触媒を使用することもできる。具体的にはトリエチルアミンなどの3級アミンやイミダゾールなどをあげることができる。
得られた乳化分散体から有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法を採用することができる。あるいはまた、乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の非水溶性有機溶媒を完全に除去してトナー微粒子を形成し、合せて水系分散剤を蒸発除去することも可能である。乳化分散体が噴霧される乾燥雰囲気としては、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体、特に使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。スプレイドライアー、ベルトドライアー、ロータリーキルンなどの短時間の処理で十分目的とする品質が得られる。
乳化分散時の粒度分布が広く、その粒度分布を保って洗浄、乾燥処理が行われた場合、所望の粒度分布に分級して粒度分布を整えることができる。
分級操作は液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことができる。もちろん乾燥後に粉体として取得した後に分級操作を行っても良いが、液体中で行うことが効率の面で好ましい。得られた不要の微粒子、または粗粒子は再び混練工程に戻して粒子の形成に用いることができる。その際微粒子、または粗粒子はウェットの状態でも構わない。
用いた分散剤は得られた分散液からできるだけ取り除くことが好ましいが、先に述べた分級操作と同時に行うのが好ましい。
得られた乾燥後のトナーの粉体と離型剤微粒子、帯電制御性微粒子、流動化剤微粒子、着色剤微粒子などの異種粒子とともに混合したり、混合粉体に機械的衝撃力を与えたりすることによって表面で固定化、融合化させ、得られる複合体粒子の表面からの異種粒子の脱離を防止することができる。
具体的手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して、粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などがあげられる。
[外添剤]
トナーは、流動性や現像性、帯電性を補助するために外添剤を含有してもよい。
外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。この無機微粒子の一次粒子径は、5nm〜2μmであることが好ましく、特に5nm〜500μmであることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20〜500m2/gであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5重量%であることが好ましく、特に、0.01〜2.0重量%であることが好ましい。無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
この他高分子系微粒子たとえばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
このような流動化剤は表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが好ましい表面処理剤として挙げられる。
感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸など脂肪酸金属塩、例えば、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子などのソープフリー乳化重合などによって製造された、ポリマー微粒子などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01から1μmのものが好ましい。
また、本発明は、図2に示す定着装置以外の定着装置にも適用可能である。
以下、本発明を適用可能な定着装置の構成及び動作について説明する。
図25に示す定着装置50は、定着部材としての定着ベルト51と、支持部材としての金属パイプ52と、加熱部材としてのヒータ53と、加圧部材としての加圧ローラ54と、ニップ形成部材55と、補助ステー56とを備える。
定着ベルト51は、無端状のベルト部材である。具体的に、定着ベルト51は、SUSやニッケルから成る基材と、その上に被覆されたシリコーンゴムとPFAから成る表層とを有する。金属パイプ52は、定着ベルト51の内周面を支持する支持部材である。金属パイプ52は、SUSやニッケルから成る基材を有している。金属パイプ52の定着ベルト51と接触する外周面には、フッ素系の摺動塗装を施すことが望ましい。
加圧ローラ54は、定着ベルト51を外周側から加圧する加圧部材である。加圧ローラ54は、金属製の芯金とその外周を被覆するシリコーンゴムから成る弾性層を有する。ニップ形成部材55は、定着ベルト51の内周側に配設されており、ニップ形成部材55が定着ベルト51を介して加圧ローラ54に当接することにより定着ニップが形成されている。ここでは、ニップ形成部材55として、フッ素ゴム等をPTFEシートで巻いたものを用いている。
上記のように構成されている定着装置50は、以下のように動作する。
ヒータ53が発熱することによって、金属パイプ52が加熱される。これにより、接触している定着ベルト51の温度が上昇する。そして、定着ベルト51の温度が定着目標温度まで達した状態で、未定着のトナー画像Tが担持された記録媒体Pが、回転する定着ベルト51と加圧ローラ54との間の定着ニップを通過することによって、記録媒体P上の未定着画像Tが定着される。また、定着動作によって温度が下がった定着ベルト51は再びヒータ53によって加熱される、という流れを繰り返す。
図26に示す定着装置60は、定着部材としての定着スリーブ61と、加圧部材としての加圧ローラ62と、ニップ形成部材63と、加熱部材としての面状発熱体64と、発熱体支持部材65と、端子台ステー66と、給電線67と、コア保持部材68とを備える。
ニップ形成部材63は、定着ベルト61の内周側に配設されており、ニップ形成部材63が定着ベルト61を介して加圧ローラ62に当接することにより定着ニップが形成されている。
面状発熱体64は、変形可能なフィルム状部材内に抵抗体発熱部を配設したものである。面状発熱体64は、定着スリーブ61の内周面に当接しており、面状発熱体64によって定着スリーブ61が直接加熱されるようになっている。この面状発熱体64を、発熱体支持部材65が所定位置で支持している。なお、面状発熱体64を定着スリーブ61に対して近接して配設してもよい。
この場合、面状発熱体64が発熱することによって定着スリーブ61が加熱される。そして、定着スリーブ61の温度が定着目標温度まで達した状態で、未定着のトナー画像Tが担持された記録媒体Pが、回転する定着スリーブ61と加圧ローラ62との間の定着ニップを通過することによって、記録媒体P上の未定着画像Tが定着される。
なお、本発明を適用可能な定着装置は、上述の定着装置に限らない。例えば、加圧ローラの代わりに加圧ベルト等の加圧部材を用いてもよいし、加圧部材を加熱する加熱部材を設けてもよい。また、本発明に係る画像形成装置も、図1に示すカラーレーザープリンタに限らず、その他のプリンタ、複写機、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等の画像形成装置であってもよい。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
以上のように、上記実施形態では、連続印刷される複数の記録媒体において、1枚ごとに画像情報を取得することにより、各画像の定着性に応じて最適な定着目標温度を設定することができる。しかも、定着目標温度の設定のために取得する情報は、少なくとも、中間調処理の有無と、使用する階調処理の種類の情報を得るだけでよいので、膨大な情報量を必要とせず、特定のモードを選択しなくても、連続印刷中の記録媒体1枚ごとに最適な定着目標温度に設定することが可能である。このため、上記実施形態の構成を採用することで、近年の省エネ化、立ち上がり時間の高速化に対応した画像形成装置を提供することができるようになる。
さらに、その設定された定着目標温度から、これから定着処理が行われる記録媒体の定着目標温度の推移を把握することで、定着処理の開始時までに温度上昇が間に合うかどうかを判断することができる。そして、この判断結果に基づき、温度上昇が定着処理の開始時までに間に合うように定着目標温度を変更することができるので、ダウンタイムを生じさせることなく、コールドオフセット等の不具合の発生を防止できる。すなわち、本発明によれば、1ページごとに定着目標温度を最適な温度に設定することができ、生産性を低下させることなく定着処理を良好に行うことが可能となる。