JP5827499B2 - 装置の表面処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、イオンドーピング装置及びそれを用いたイオンドーピング方法に係り、開示される発明の一形態は、特にイオンドーピング装置内部においてパーティクルの発生を抑制し高歩留まりの、メンテナンス頻度の低い、イオンドーピング装置およびイオンドーピング装置の低塵化方法に関する。
半導体の価電子制御用の不純物元素をイオン化し、電界で加速して添加する技術はイオン注入法として知られている。近年、液晶表示装置、発光装置などの作製工程において、大面積の基板上に形成された半導体層に不純物元素を添加することを目的とし、イオンをシャワー状に照射してドーピングすることが行われている。
イオンドーピング装置(ドーピング装置とも呼ばれる)は、イオン源に連接するドーピング室を有する。ドーピング装置は、真空状態としたドーピング室に基板を設置し、イオン源で発生させたイオンを電界で加速し、基板に添加するものである。イオン源はプラズマ室と、プラズマ室で生成したイオンを引き出す引き出し加速電極系(引き出し電極と加速電極)と、二次電子の流入を制御する減速電極系(抑制電極と設置電極)とから成っている。電極には一般に多孔電極が使用され、イオンはこの孔を通過してドーピング室へ到達する。このようなイオンの流れをイオン流と称する。
イオン源のプラズマ発生方法には、直流放電方式、高周波放電方式、マイクロ波放電方式等がある。また、磁場を印加することによりプラズマをイオン源内部に閉じこめておくことも可能であり、プラズマ室の周囲に永久磁石を配置することによりカスプ磁場を形成する場合もある。
ドーピング装置では、多くの場合、質量分離を行わない為、プラズマ室で形成されたイオン種(正電荷)は全て引き出し電極による電場で加速され、半導体層などに添加されることになる。イオンは、たとえば水素、または水素などで希釈させたジボラン(B)やホスフィン(PH)などをプラズマ化して得る。これらのイオンは通常1kVから100kV程度の電圧が印加されることで加速され、半導体層などに添加される。なお、イオン流はその外側ほどイオン濃度が低くなる傾向にあるため、半導体層などにおいて一様なドーピング処理を行うには、処理対象物のみでなく、周辺のドーピング室を構成する内壁や処理対象物を搭載するためのステージなどにもイオンを照射されてしまう。これにより、イオン流におけるイオン濃度の低い部分が処理対象物に照射されないようにできる。
しかしながら、このときドーピング室を構成する部材にも高エネルギーのイオンが照射されるため、その部分における部材の劣化が問題となっている。この処理においてよく用いられる水素イオンは、特に部材の劣化を引き起こしやすい性質を有しており、この現象は水素脆化(特許文献2、特許文献5、特許文献6参照)と呼ばれている。水素脆化とは水素によって材料の強度の低下や割れの発生、破断が生じる現象をいう。当該劣化の抑制のため、イオンの照射される部分に高耐性の金属、たとえばモリブデン(Mo)などを配置する対策がなされている。あるいは、表面を強化する処理(特許文献1参照)を施したステンレス鋼を部材に使用し、ドーピング室を構成する部材の劣化を抑える工夫がなされている。これらの工夫により、ドーピング室内の水素脆化は幾分抑えられている。水素脆化に限らず、部材の劣化を抑えるために、クロム酸化物などを金属表面に形成し不動態とする技術が提示されている(特許文献4、特許文献7、特許文献8参照)。しかしながら、比較的短時間で部材が劣化し、一部が剥がれパーティクルとなるため、頻繁にドーピング室を大気開放し部材の洗浄や交換など(これらを総称して、メンテナンスと称することとする)を行う必要があった。ドーピング装置のメンテナンスに関しては、例えば特許文献3に開示されている。ドーピング室で発生するパーティクルはイオン流を妨げることがあるため、製品の歩留まりを大きく低下させる原因となる。
特開2005−179741号公報 特開2009−174657号公報 特開平8−162433号公報 特開平11−345772号公報 特開平02−190615号公報 特開2006−266314号公報 特開平2−85358号公報 特開平9−217166号公報
そこで、本発明は、パーティクルを取り除くためのドーピング室の大気開放処理、および洗浄処理の頻度を大幅に下げるため、水素脆化などの部材の劣化を抑制する表面処理を当該装置の内部にて行い低塵化するドーピング装置を提供することを目的の一とする。また、当該処理を行う方法を提供することを目的の一とする。
本発明の一形態に係るドーピング装置は、イオン源およびドーピング室内部において、それらの内壁の表皮に三酸化二クロム(Cr)を形成する機構を有することを特徴とする。具体的には、当該ドーピング装置は、水素元素と酸素元素をイオン源およびドーピング室に供給する水素酸素供給装置を有し、少なくともイオン流の衝突する部分に配置される、ステンレス鋼を含む部材を600℃以上、好ましくは700℃以上に加熱する加熱装置を有している。当該部材を600℃以上とすることで、その表面に三酸化二クロム(Cr)を形成することができる。600℃以下の温度帯では、同時に四酸化二鉄(Fe)や四酸化二クロム(Cr)も形成されるため、表面の耐性が低下する。また、1000℃を超える温度では、エネルギー効率が悪く本発明には適さない。
なお、本発明の一形態において上述の加熱はヒーター、ランプまたは600℃以上1000℃以下の高温の気体を供給する高温気体供給装置により行う。当該加熱装置は、加熱対象を5分以内好ましくは3分以内に室温から600℃以上に加熱し、10分間以上保持できることが好ましい。これにより四酸化二鉄(Fe)や四酸化二クロム(Cr)の形成を抑えることができる。
また、上述のステンレス鋼はクロムを10重量%以上26重量%以下含んでいれば良質な三酸化二クロム(Cr)をその表皮に形成可能であるが、さらにその割合を15重量%以上20重量%以下とすると高い靭性が得られるため好ましい。
また、上述の内壁には、電界研磨処理または鏡面仕上げ処理が成されていると、高耐性の三酸化二クロム(Cr)を得ることができるので好ましい。
本発明は、上述したドーピング装置に加え、当該ドーピング装置の低塵化方法も包含している。すなわち、本発明の一形態に係るドーピング装置の低塵化方法は、イオン源およびドーピング室内部を構成するステンレス鋼を含む部材の少なくとも一部の温度を600℃以上、好ましくは700℃以上とし、イオン源およびドーピング室に水素元素と酸素元素を供給し、10分間以上保持することを特徴とする。
室温から600℃以上とするまでに要する昇温時間は、5分以内、好ましくは3分以内とすると、四酸化二鉄(Fe)や四酸化二クロム(Cr)の形成が抑えられるため好ましい。
また、当該温度を1000℃以下とすることで、エネルギーの利用効率を高くすることができる。
酸素元素と水素元素の供給を水素と水蒸気により行う場合、供給される水蒸気の流量を1としたとき、水素の流量を10以上1500以下の範囲とすると好ましい。これにより高耐性の三酸化二クロム(Cr)を部材の表皮に形成できる。
本発明の一形態において上述の加熱はヒーター、ランプまたは600℃以上1000℃以下の高温の気体を供給する高温気体供給装置により行う。
上述の加熱は当該ドーピング装置により加速されたイオンを利用してもよい。イオンは、水素、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、窒素などの不活性気体のいずれか一、または二種類以上の混合気体をプラズマ化して用いる。推奨するドーピングの処理条件は、ガス流量0.1sccm以上1000sccm以下、加速電圧1kV以上100kV以下、電流密度1μA/cm以上100μA/cm以下、ドーズ1015ions/cm以上1018ions/cm以下の範囲とする。これらの範囲のうち適切な条件を選択することで、水素脆化する部材の温度を600℃以上とすることができる。
なお、上述の発明において、昇温と水素元素および酸素元素導入の前後は問わない。どちらが先でもよいし、同時に行ってもよい。
これにより、水素脆化の進む前にイオン源およびドーピング室内部を構成する部材の補修、補強ができるため、ドーピング装置を大気開放する頻度が大幅に低下する。大気開放から真空状態への復帰には、数時間から数日の期間を要するため、本発明の一形態による装置のダウンタイムの大幅な短縮は、産業上極めて有益なものである。また、イオン源やドーピング室を構成する部材の耐久性も大きく向上するため、省資源化を促進できる。
本発明の一実施形態に係るドーピング装置を説明する図面。 本発明の一実施形態に係るドーピング装置を説明する図面。 本発明の一実施形態に係るドーピング装置を説明する図面。 本発明の一実施形態に係るドーピング装置を説明する図面。 半導体装置の作製方法の一例を示す図。 半導体装置の作製方法の一例を示す図。 表示装置の一例を示す図。 表示装置の一例を示す図。
以下、実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定されず、本明細書等において開示する発明の趣旨から逸脱することなく形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者にとって自明である。また、異なる実施の形態に係る構成は、適宜組み合わせて実施することが可能である。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を用い、その繰り返しの説明は省略する。また、本明細書中においてドーピング装置とは、イオンを加速して対象物に原子を添加する装置全般を指し、質量分離するものとしないものを含むものとする。
(実施の形態1)
本実施の形態においては、本発明の一実施形態に係るドーピング装置を、図1を用いて説明する。なお、ここでは、イオン源701やドーピング室702の加熱にヒーターを使用する例を示す。
本発明の一実施形態に係るドーピング装置は、図1に示すようにイオン源701にて生成されるイオンをドーピング室702にて基板720に照射する仕組みを有している。当該イオンは、供給装置723よりイオン源701に導入された気体を、プラズマ発生用フィラメント711の放電に曝すことにより生成される。供給装置723からは、例えば、半導体中の価電子制御を目的とした不純物元素を含む気体などが供給される。生成されたイオンは、貫通穴を複数有する複数の電極を介し、ステージ707上の基板720に照射される。具体的には、当該イオンは引き出し電極712により加速電極713に導入され、当該加速電極713により所望の速度まで加速される。つづいて抑制電極714、設置電極715を経てイオンの分布が調整され、基板720に一様に添加される。基板720は、例えば、半導体層の形成されたガラス基板やシリコンウエハなどである。このとき、イオン流の外側のイオン濃度の低い領域に位置するイオンは、基板720以外の部分に添加される。これらがイオン源701やドーピング室702の内壁の水素脆化の原因の一つとなる。イオン源701およびドーピング室702内部は排気装置708aにより高真空に保持される。
また、当該ドーピング装置は基板を搬送するための搬送系を有している。基板720を設置しドーピング処理を行うドーピング室702は、基板の搬送室705にゲートバルブ710aを介して接続されている。搬送室705内部には、ダブルアームを有する搬送ロボット706が設置され、これにより基板720の出し入れが可能となる。搬送室705は、排気装置708bにより減圧することができる。搬送室705とドーピング室702の真空度を同程度とすることで、ゲートバルブ710aの開閉が可能となる。搬送室705の容積をできるだけ小さくすることにより、真空引きの時間を短縮することができる。搬送室705はゲートバルブ710bを介し、待機室704に接続されている。待機室704は、排気装置708cに接続されており、これにより減圧することができる。排気装置708cはなくてもよいが、待機室704の容積をできるだけ小さくした状態で真空引きを行うと、比較的短時間で待機室704を高真空とすることができるため、基板720の搬送時間を短縮できる。待機室704は、ゲートバルブ710cを介し、他のチャンバー703と接続してもよい。また、待機室704は、搬送室705に含まれていてもよく、複数の基板をストックするものであってもよい。各室の配置や役割は実施者が適宜最適なものを選択する。
排気装置708a、708b、708cは、ドライポンプ、メカニカルブースターポンプ、ターボ分子ポンプなどを適宜組み合わせて用いるとよい。
ドーピング室702は基板にイオンを添加する、いわゆるドーピング処理を行う場所である。イオン流の断面積よりも大面積の基板を処理する場合は、ステージ707を走査させることにより基板の全面へのドーピング処理を可能とする。このような場合、イオン流の断面形状を長方形又は線形として、基板に照射する形態とすれば装置が大型化するのを防ぐことができる。なお、図1においては、基板を水平に配置し、イオン流を基板に対して垂直方向に照射する構成を示しているが、基板上のパーティクルを減らすために、基板を地面に対して垂直に配置し、イオン流を基板に対して垂直方向に照射する構造としてもよい。
ここでは図示しないが、イオン源701にはカソードであるフィラメントに対応したアノードも設置されている。図1の構成はフィラメントを用いた直流放電型のアンテナを示しているが、容量結合型のアンテナや、誘導結合型のアンテナや、高周波型のアンテナを採用しても良い。
半導体中の価電子制御を目的とした不純物元素を含む気体としてよく用いられるのは、ホスフィン(PH)、ジボラン(B)などであり、水素や不活性気体で0.1%以上20%以下程度に希釈したものを用いる。当該気体には水素が多量に含まれるため、質量分離をしない場合は大量の水素イオンが電極により加速され基板が設置されたドーピング室702に引き出される。水素イオンは4枚の電極によりほぼ直線的に引き出され、基板720、イオン源701の内壁、ドーピング室702の内壁、などに照射される。これにより水素脆化が促進される。水素以外、例えば不活性気体や不純物元素を含む気体によっても、同様の脆化が促進されるため、これらに対しても本発明の一実施の形態は有効である。
つづいて、イオン源701やドーピング室702内部において、それらの内壁の表皮に三酸化二クロム(Cr)を形成する方法を説明する。まず、水素酸素供給装置719より酸素元素と水素元素をイオン源701およびドーピング室702に導入する。このとき酸素元素よりも水素元素の供給量が多いほうが好ましい。例えば、供給される水蒸気の流量を1とするとき水素の流量を10以上1500以下の範囲とすると、高耐性の三酸化二クロム(Cr)を部材の表皮に形成できる。また、水蒸気、水素、または酸素をプラズマ化して当該内壁にドーピング処理を行ってもよい。イオン源701およびドーピング室702内壁に水素と酸素を付着させた状態で、加熱装置721aによりイオン源701およびドーピング室702の内壁を外側から加熱し、600℃以上好ましくは700℃以上1000℃以下の温度で10分間以上保持する。もしくは、昇温を先に行ってから水素元素と酸素元素を導入してもよいし、同時に行ってもよい。本実施の形態においては、加熱装置721aには、抵抗加熱方式や電磁誘導加熱方式を利用したヒーターを用いる。抵抗加熱方式には、被加熱物に直接電流を流して行う直接抵抗加熱方式と、被加熱物を発熱体により加熱する間接抵抗加熱方式があるが、どちらを利用してもよいし、併用も可能である。このとき、昇温時間が5分以内好ましくは3分以内であると、四酸化二鉄(Fe)や四酸化二クロム(Cr)の形成を抑制できるため好ましい。このような時間で昇温するためには、高いエネルギーを短時間に発することが可能なものを利用しなくてはならない。ヒーターに対し短時間に大電流を流すことで急速加熱は可能であるから、その方式を採用すると好ましい。その後の冷却に関しては、冷却ファンなどにより急冷してもよいし、自然に冷えるのに任せてもよい。
以上の工程により、イオン源701やドーピング室702内部において、それらの内壁の表皮に三酸化二クロム(Cr)を形成することができる。これにより、水素脆化の進む前に当該内壁の補修、補強ができるので、メンテナンスのためイオン源701やドーピング室702を大気開放する頻度が大幅に低下する。大気開放から真空状態への復帰には、数時間から数日の期間を要するため、本発明の一形態による装置のダウンタイムの大幅な短縮は、産業上極めて有益なものである。また、当該内壁を構成する部材の耐久性も大きく向上するため、省資源化を促進できる。
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態においては、本発明の一実施形態に係るドーピング装置を、図2を用いて説明する。なお、ここでは、イオン源701やドーピング室702の加熱にランプを用いる例を示す。
図2の構成において、加熱装置721b以外はすべて図1に示したものと同様のものであるので、ここでは加熱装置721bについて説明する。
加熱装置721bは強光を発するランプである。ランプには比較的短い時間に高いエネルギーを発するのに好適なものがある。そのようなものの例として、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、低圧水銀ランプなどがある。ランプのエネルギーを高めるために、楕円ミラーや放物面ミラーなどと組み合わせて使用してもよい。楕円ミラーや放物面ミラーの焦点にランプを配置することにより、四方に発散する光を一方向にそろえることができるため、光のエネルギーを効率よく利用できる。
当該ランプを利用して、実施の形態1に示した工程と同様の工程を経ることにより、イオン源701やドーピング室702内部において、それらの内壁の表皮に三酸化二クロム(Cr)を形成することができる。これにより、水素脆化の進む前に当該内壁の補修、補強ができるので、メンテナンスのためイオン源701やドーピング室702を大気開放する頻度が大幅に低下する。大気開放から真空状態への復帰には、数時間から数日の期間を要するため、本発明の一形態による装置のダウンタイムの大幅な短縮は、産業上極めて有益なものである。また、当該内壁を構成する部材の耐久性も大きく向上するため、省資源化を促進できる。
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態においては、本発明の一実施形態に係るドーピング装置を、図3を用いて説明する。なお、ここでは、イオン源701やドーピング室702の加熱に600℃以上1000℃以下の高温の気体を供給する高温気体供給装置を使用する例を示す。
図3の構成において、高温気体供給装置である加熱装置721c以外はすべて図1に示したものと同様のものであるので、ここでは加熱装置721cについて説明する。なお、図3においてイオン源701の内部は図の煩雑さを解消するため省略した。
加熱装置721cは高温の気体を流す配管を有している。当該配管は、イオン源701およびドーピング室702の外壁に接している。図中の矢印の方向に高温の気体を流し、熱をイオン源701およびドーピング室702の内壁に伝達させる。これにより、当該内壁を600℃以上好ましくは700℃以上1000℃以下とすることができる。高温の気体には、例えば、ヘリウム、アルゴン、キセノン、窒素、クリプトンなどが反応性の低さなどの理由で適している。
当該加熱装置721cを利用して、実施の形態1に示した工程と同様の工程を経ることにより、イオン源701やドーピング室702内部において、それらの内壁の表皮に三酸化二クロム(Cr)を形成することができる。これにより、水素脆化の進む前に当該内壁の補修、補強ができるので、メンテナンスのためイオン源701やドーピング室702を大気開放する頻度が大幅に低下する。大気開放から真空状態への復帰には、数時間から数日の期間を要するため、本発明の一形態による装置のダウンタイムの大幅な短縮は、産業上極めて有益なものである。また、当該内壁を構成する部材の耐久性も大きく向上するため、省資源化を促進できる。
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態においては、本発明の一実施形態に係る、ドーピング装置の低塵化方法を図4に沿って説明する。なお、ここでは、イオン源701やドーピング室702の加熱に加速したイオンを使用する例を示す。
まず、ドーピング装置に水素酸素供給装置719より水素元素や酸素元素を導入する。導入方法や導入量は実施の形態1に示したものとする。これにより、酸素元素と水素元素が、イオン源701やドーピング室702の内壁に付着する。次に、加熱用気体供給装置722よりイオン源701に所望の気体を導入する。当該気体は、水素、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、窒素などの不活性気体のいずれか一、または二種類以上の混合気体とする。イオン源701に導入された気体は、プラズマ発生用フィラメントの放電に曝すことによりイオンを含むプラズマとなる。当該イオンを加速してドーピング装置のイオン源701やドーピング室702の内壁に添加する。推奨するドーピングの処理条件は、ガス流量0.1sccm以上1000sccm以下、加速電圧1kV以上100kV以下、電流密度1μA/cm以上100μA/cm以下、ドーズ1015ions/cm以上1018ions/cm以下の範囲とする。これらの範囲のうち適切な条件を選択することで、水素脆化する部材の温度を600℃以上または700℃以上とし、10分間以上保持することができる。本実施の形態では、先に水素元素と酸素元素をイオン源701やドーピング室702に導入してから昇温する例を示したが、先に昇温を行ってから水素元素と酸素元素を導入してもよいし、同時に行ってもよい。
室温から600℃以上とするまでに要する昇温時間は、5分以内、好ましくは3分以内とすると、四酸化二鉄(Fe)や四酸化二クロム(Cr)の形成が抑えられるため好ましい。
また、当該温度を1000℃以下とすることで、エネルギーの利用効率を高くすることができる。
本実施の形態に示した工程を経ることにより、イオン源701やドーピング室702内部において、それらの内壁の表皮に三酸化二クロム(Cr)を形成することができる。これにより、水素脆化の進む前に当該内壁の補修、補強ができるので、メンテナンスのためイオン源701やドーピング室702を大気開放する頻度が大幅に低下する。大気開放から真空状態への復帰には、数時間から数日の期間を要するため、本発明の一形態による装置のダウンタイムの大幅な短縮は、産業上極めて有益なものである。また、当該内壁を構成する部材の耐久性も大きく向上するため、省資源化を促進できる。
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。例えば、イオン源701やドーピング室702の加熱方法として、先に示したヒーターやランプや高温の気体などを用いる方法を、本実施の形態で示した方法と併用することができる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一実施の形態に係るドーピング装置を利用して、半導体装置を作製する方法を説明する。
まず、図5および図6を参照して、nチャネル型薄膜トランジスタ、およびpチャネル型薄膜トランジスタを作製する方法を説明する。複数の薄膜トランジスタを組み合わせることで、各種の半導体装置を形成することができる。
まず、基板120上に半導体層124を形成する。基板120が半導体層124に直接接していると半導体素子の特性に影響する場合は、下地層102をそれらの間に形成するとよい(図5(A)参照)。
基板120は、例えば、ガラス基板とすることができる。ガラス基板は無アルカリガラス基板であることが好ましい。無アルカリガラス基板には、例えば、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス等のガラス材料が用いられる。他にも、基板120として、絶縁性セラミック基板、石英基板やサファイア基板等の絶縁体でなる絶縁性基板、半導体セラミック基板やシリコン等の半導体材料でなる半導体基板の表面を絶縁材料で被覆したもの、金属やステンレス等の導電体でなる導電性基板の表面を絶縁材料で被覆したものを用いることができる。また、作製工程の熱処理に耐えられるのであれば、プラスチック基板を用いることもできる。
下地層102は、基板120からのアルカリ金属(Li、Cs、Na等)やアルカリ土類金属(Ca、Mg等)、その他の不純物の拡散を防止する機能を有する。つまり、下地層102を設けることにより、半導体装置の信頼性向上という課題を解決することができる。下地層102は、窒化シリコン、酸化シリコンなどの各種絶縁材料を用いて、単層構造または積層構造で形成すればよい。具体的には、例えば、基板120側から窒化シリコンと酸化シリコンを順に積層した構成とすることが好適である。窒化シリコンは、不純物に対するブロッキング効果が高いためである。一方で、窒化シリコンが半導体と接する場合には、半導体素子に不具合が発生する可能性もあるため、半導体と接する材料としては、酸化シリコンを適用するのがよい。
半導体層124は、例えば、シリコンやゲルマニウムなどの第14族元素の半導体や、化合物半導体などから形成することができる。また、半導体層124には、アモルファス状態のもの、結晶性を有するもの、または、単結晶のものを用いてよい。これらは要求される半導体素子の仕様により適宜選択する。単結晶の半導体層124を絶縁体上に形成するには、例えば、以下のようにすればよい。まず、単結晶のウエハに水素イオンなどの不活性なイオンを添加して脆化層を形成し、絶縁表面を有する基板に張り合わせ、200℃以上600℃以下の温度にて加熱すると、脆化層においてウエハが分離して、単結晶の半導体層124が基板上に残る。これにより、単結晶の半導体層124が得られる。当該イオンの添加には、本発明の一実施の形態に係るドーピング装置を用いるとよい。
次に、エッチングにより半導体層124を整形し、図5(B)に示すように半導体層251、252を形成する。半導体層251はnチャネル型のトランジスタを構成し、半導体層252はpチャネル型のトランジスタを構成する。
図5(C)に示すように、半導体層251、252上に絶縁層254aを形成する。次に、絶縁層254aを介して半導体層251上にゲート電極255を形成し、半導体層252上にゲート電極256を形成する。
なお、半導体層124のエッチングを行う前に、トランジスタのしきい値電圧を制御するために、ホウ素、アルミニウム、ガリウムなどの不純物元素、またはリン、ヒ素などの不純物元素を半導体層124に添加してもよい。当該添加処理には、本発明の一実施の形態に係るドーピング装置を用いるとよい。
次に、図5(D)に示すように半導体層251にn型の低濃度不純物領域257aを形成し、半導体層252にp型の高濃度不純物領域259を形成する。具体的には、まず、半導体層251にn型の低濃度不純物領域257aを形成する。このため、pチャネル型トランジスタとなる半導体層252をレジストでマスクし、不純物元素を半導体層251に添加する。例えば、不純物元素はリンまたはヒ素とする。本発明の一実施の形態に係るドーピング装置を用い、イオンドーピング法またはイオン注入法により不純物元素を添加することにより、ゲート電極255がマスクとなり、半導体層251に自己整合的にn型の低濃度不純物領域257aが形成される。半導体層251のゲート電極255と重なる領域はチャネル形成領域258となる。
次に、半導体層252を覆うマスクを除去した後、nチャネル型トランジスタとなる半導体層251をレジストマスクで覆う。次に、本発明の一実施の形態に係るドーピング装置を用い、イオンドーピング法またはイオン注入法により不純物元素を半導体層252に添加する。例えば、不純物元素はボロンとする。不純物元素の添加工程では、ゲート電極256がマスクとして機能して、半導体層252にp型の高濃度不純物領域259が自己整合的に形成される。高濃度不純物領域259はソース領域またはドレイン領域として機能する。半導体層252のゲート電極256と重なる領域はチャネル形成領域260となる。ここでは、n型の低濃度不純物領域257aを形成した後、p型の高濃度不純物領域259を形成する方法を説明したが、先にp型の高濃度不純物領域259を形成することもできる。
次に、半導体層251を覆うレジストを除去した後、プラズマCVD法等によって窒化シリコン等の窒化物や酸化シリコン等の酸化物からなる単層構造または積層構造の絶縁層を形成する。この絶縁層を異方性エッチングすることで、図6(A)に示すように、ゲート電極255、256の側面に接するサイドウォール絶縁層261、262を形成する。この異方性エッチングにより、絶縁層254aもエッチングされ、絶縁層254bとなる。
次に、図6(B)に示すように、半導体層252をレジスト265で覆う。半導体層251にソース領域またはドレイン領域として機能する高濃度不純物領域を形成するため、本発明の一実施の形態に係るドーピング装置を用い、イオン注入法またはイオンドーピング法により、半導体層251に高ドーズ量で不純物元素を添加する。ゲート電極255およびサイドウォール絶縁層261がマスクとなり、n型の高濃度不純物領域267が形成される。また、サイドウォール絶縁層261の下には、n型の低濃度不純物領域257bが残る。次に、不純物元素の活性化のための加熱処理を行う。
活性化の加熱処理の後、図6(C)に示すように、水素を含んだ絶縁層268を形成する。絶縁層268を形成後、350℃以上450℃以下の温度による加熱処理を行い、絶縁層268中に含まれる水素を半導体層251、252中に拡散させる。絶縁層268は、プロセス温度が350℃以下のプラズマCVD法により窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンを堆積することで形成できる。半導体層251、252に水素を供給することで、半導体層251、252中および絶縁層254bとの界面での捕獲中心となるような欠陥を効果的に補償することができる。
その後、層間絶縁層269を形成する。層間絶縁層269は、酸化シリコン、BPSG(Boron Phosphorus Silicon Glass)などの無機材料でなる絶縁層、または、ポリイミド、アクリル樹脂などの有機樹脂から選ばれた単層構造か積層構造のもので形成することができる。層間絶縁層269にコンタクトホールを形成した後、図6(C)に示すように配線270を形成する。配線270の形成には、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金などの低抵抗金属をバリアメタルで挟んだ3層構造の導電層で形成することができる。バリアメタル層は、モリブデン、クロム、チタンなどの金属層で形成することができる。
以上の工程により、nチャネル型トランジスタとpチャネル型トランジスタを有する半導体装置を作製することができる。
図5及び図6を参照してトランジスタの作製方法を説明したが、トランジスタの他、容量、抵抗などトランジスタと共に各種の半導体素子を形成することで、高付加価値の半導体装置を作製することができる。以下、図面を参照しながら半導体装置の具体的な態様を説明する。
図7、図8を用いて、表示装置について説明する。
図7は液晶表示装置を説明するための図面である。図7(A)は液晶表示装置の画素の平面図であり、図7(B)は、J−K切断線による図7(A)の断面図である。
図7(A)に示すように、画素は、半導体層320、半導体層320と交差している走査線322、走査線322と交差している信号線323、画素電極324、画素電極324と半導体層320を電気的に接続する電極328を有する。半導体層320は、基板120上に設けられた半導体層から形成された層であり、画素のトランジスタ325を構成する。
図7(B)に示すように、基板120上に、下地層102を介して半導体層320が積層されている。基板120としては、ガラス基板を用いることができる。半導体層320には、チャネル形成領域340、不純物元素が添加されたn型の高濃度不純物領域341が形成されている。トランジスタ325のゲート電極は走査線322に含まれ、ソース電極およびドレイン電極の一方は信号線323に含まれている。
層間絶縁層327上には、信号線323、画素電極324および電極328が設けられている。層間絶縁層327上には、スペーサ329が形成されている。信号線323、画素電極324、電極328およびスペーサ329を覆って配向膜330が形成されている。対向基板332には、対向電極333、対向電極を覆う配向膜334が形成されている。スペーサ329は、基板120と対向基板332の隙間を維持するために形成される。スペーサ329によって形成される隙間に液晶層335が形成されている。信号線323および電極328と高濃度不純物領域341との接続部は、コンタクトホールの形成によって層間絶縁層327に段差が生じるので、この接続部では液晶層335の液晶の配向が乱れやすい。そのため、この段差部にスペーサ329を形成して、液晶の配向の乱れを防ぐ。
次に、エレクトロルミネセンス表示装置(以下、EL表示装置という。)について図8を参照して説明する。図8(A)はEL表示装置の画素の平面図であり、図8(B)は、J−K切断線による図8(A)の断面図である。
図8(A)に示すように、画素は、選択用トランジスタ401、表示制御用トランジスタ402、走査線405、信号線406、および電流供給線407、画素電極408を含む。エレクトロルミネセンス材料を含んで形成される層(以下、EL層という。)が一対の電極間に挟んだ構造の発光素子が各画素に設けられている。発光素子の一方の電極が画素電極408である。また、半導体層403には、選択用トランジスタ401のチャネル形成領域、ソース領域およびドレイン領域が形成されている。半導体層404には、表示制御用トランジスタ402のチャネル形成領域、ソース領域およびドレイン領域が形成されている。
選択用トランジスタ401において、ゲート電極は走査線405に含まれ、ソース電極またはドレイン電極の一方は信号線406に含まれ、他方は電極411として形成されている。表示制御用トランジスタ402は、ゲート電極412が電極411と電気的に接続され、ソース電極またはドレイン電極の一方は、画素電極408に電気的に接続される電極413として形成され、他方は、電流供給線407に含まれている。
表示制御用トランジスタ402はpチャネル型である。図8(B)に示すように、半導体層404には、チャネル形成領域451、およびp型の高濃度不純物領域452が形成されている。
表示制御用トランジスタ402のゲート電極412を覆って、層間絶縁層427が形成されている。層間絶縁層427上に、信号線406、電流供給線407、電極411、413などが形成されている。また、層間絶縁層427上には、電極413に電気的に接続されている画素電極408が形成されている。画素電極408は絶縁性の隔壁層428で囲まれている。画素電極408上にはEL層429が形成され、EL層429上には対向電極430が形成されている。補強板として対向基板431が設けられており、対向基板431は樹脂層432により基板120に固定されている。
EL表示装置の階調には、大きく分けてふたつの制御方式がある。ひとつは発光素子の輝度を電流で制御する電流駆動方式で、他のひとつはその輝度を電圧で制御する電圧駆動方式である。画素部を構成するトランジスタの特性値のばらつきが大きい場合、補正回路を付加することにより、電流駆動方式を採用できる。しかしながら、補正回路の付加は発光部の開口率の低下につながるため好ましくない。そのため例えば、半導体層403、404を単結晶半導体材料で形成することにより、画素部を構成する選択用トランジスタ401および表示制御用トランジスタ402の特性値のばらつきが抑えられるため、補正回路を用いずに電流駆動方式を採用することができる。
なお、本実施の形態は、先の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
102 下地層
120 基板
124 半導体層
251 半導体層
252 半導体層
254a 絶縁層
254b 絶縁層
255 ゲート電極
256 ゲート電極
257a 低濃度不純物領域
257b 低濃度不純物領域
258 チャネル形成領域
259 高濃度不純物領域
260 チャネル形成領域
261 サイドウォール絶縁層
262 サイドウォール絶縁層
265 レジスト
267 高濃度不純物領域
268 絶縁層
269 層間絶縁層
270 配線
320 半導体層
322 走査線
323 信号線
324 画素電極
325 トランジスタ
327 層間絶縁層
328 電極
329 スペーサ
330 配向膜
332 対向基板
333 対向電極
334 配向膜
335 液晶層
340 チャネル形成領域
341 高濃度不純物領域
401 選択用トランジスタ
402 表示制御用トランジスタ
403 半導体層
404 半導体層
405 走査線
406 信号線
407 電流供給線
408 画素電極
410 電極
411 電極
412 ゲート電極
413 電極
427 層間絶縁層
428 隔壁層
429 EL層
430 対向電極
431 対向基板
432 樹脂層
451 チャネル形成領域
452 高濃度不純物領域
701 イオン源
702 ドーピング室
703 チャンバー
704 待機室
705 搬送室
706 搬送ロボット
707 ステージ
708a 排気装置
708b 排気装置
708c 排気装置
710a ゲートバルブ
710b ゲートバルブ
710c ゲートバルブ
711 プラズマ発生用フィラメント
712 引き出し電極
713 加速電極
714 抑制電極
715 設置電極
719 水素酸素供給装置
720 基板
721a 加熱装置
721b 加熱装置
721c 加熱装置
722 加熱用気体供給装置
723 供給装置

Claims (1)

  1. 装置の内部における表面処理方法であって、
    前記装置は、加速したイオンを対象物に照射する機能を有し、
    前記装置の内部に、水蒸気と、水素と、を供給した後、
    前記装置の内部にあるステンレス鋼を含む部材の少なくとも一部に加熱処理を行い、
    前記水蒸気の流量に対する前記水素の流量の比は、10以上1500以下であり、
    前記加熱処理の温度は、600℃以上1000℃以下であり、
    前記加熱処理の時間は、10分間以上であり、
    前記加熱処理の昇温時間は、5分以内であることを特徴とする装置の表面処理方法。
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