以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図1に示すように、本実施の形態における放射性セシウム含有水の吸着装置は、n(nは2以上の整数)個の吸着塔10−1〜10−5を備え、吸着塔10−1〜10−5は、上流側から順に1〜n番目まで直列に配置されている。なお、本実施の形態では、nを5としているが、nは2以上であれば特に限定されない。
吸着塔10−1〜10−5の各々は、内部に吸着材が収容されている。吸着材は、放射性セシウム含有水A中の放射線セシウムを吸着する。このような吸着材は特に限定されないが、紺青を含むことが好ましい。なお、紺青とは、フェロシアン化鉄(C18Fe7N18)やプルシアンブルーとも呼ばれ、紺青の担持物、紺青の造粒物などの紺青に由来した物を含む。また、吸着材としてゼオライトを用いても良い。吸着塔10−1〜10−5の各々に収容されている吸着材は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
続いて、本実施の形態における吸着塔の交換方法について説明する。本実施の形態では、図1に示す吸着装置10を用いて、放射性セシウム含有水A中から放射性セシウムを吸着することで、放射性セシウム含有水Aを処理することができる。
まず、図1に示すように、放射性セシウム含有水Aを、上流側から順に1〜n番目に直列に配置されている吸着塔10−1〜10−5に通水する。これにより、放射性セシウム含有水A中の放射性セシウムは、吸着塔10−1〜10−5内の吸着材に吸着され、放射性セシウムが低減された処理水Bを生成できる。
図2は、吸着塔10−1〜10−5内の吸着材において、放射性セシウムが吸着された領域をドットで示した模式図である。この工程を実施すると、図2に示すように、吸着塔10−1〜10−5に収容された吸着材に吸着される放射性セシウムの濃度は、上流側から下流側(吸着塔10−1から吸着塔10−5)に向けて低くなるような勾配が形成される。
次に、1番目の吸着塔(図1及び図2における吸着塔10−1)における放射性セシウム含有水の入口側及び出口側の表面の放射線量率を測定し、それぞれの放射線量率の経時変化が一定となった時に、1番目の吸着塔(図1及び図2における吸着塔10−1)を新しい吸着塔に交換して、k(2≦k≦n)番目の吸着塔(図1及び図2における吸着塔10−2〜10−5)を(k−1)番目(図3における吸着塔10−1〜10−4)とし、かつ新しい吸着塔をn番目(図3における吸着塔10−5)になるように直列に配置して、放射性セシウム含有水を1〜n番目の吸着塔(図3における吸着塔10−1〜10−5)に順に通水する。言い換えると、1番目の吸着塔における放射性セシウム含有水の入口側及び出口側の表面の放射線量率の経時変化が一定となった時に、最上流の吸着塔(図1及び図2における吸着塔10−1)を取り外して、上流側から順に2〜n番目に配置された吸着塔(図1及び図2における吸着塔10−2〜10−5)を、上流側に1番繰り上げて、新しい吸着塔をn番目(最下流)に配置する。さらに言い換えると、1番目の吸着塔における放射性セシウム含有水の入口側及び出口側の表面の放射線量率の経時変化が一定となった時に、1番目の吸着塔(図1及び図2における吸着塔10−1)を新しい吸着塔に交換して、2番目に位置する吸着塔(図1及び図2における吸着塔10−2)を最上流(図3における吸着塔10−1)として、新しい吸着塔をn番目(図3における吸着塔10−5)になるように直列に配置して、放射性セシウム含有水Aを1〜n番目の吸着塔(図3における吸着塔10−1〜10−5)に順に通水する。
1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の入口側及び出口側の表面の放射線量率の経時変化が一定となった時は、1番目の吸着塔10−1内の吸着材が飽和に達したと判断できる。
ここで、新しい吸着塔とは、内部に収容される吸着材の放射性セシウムの吸着可能な量が、最下流の吸着塔(図2における吸着塔10−5)内の吸着材の放射性セシウムの吸着可能な量よりも多い(吸着能力が高い)ことを意味する。つまり、新しい吸着塔の内部に収容された吸着材は、放射性セシウムを吸着していない吸着材のみであってもよく、放射性セシウムを吸着した吸着材を含んでいてもよい。
また、1番目の吸着塔10−1において放射線量率を測定する放射性セシウム含有水の入口側及び出口側の表面とは、吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の入口部及び出口部に相対的に近い表面であり、吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の入口部近傍及び出口部近傍の表面であることが好ましい。
また、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の入口側及び出口側の表面の放射線量率(放射線濃度)の経時変化が一定となった時とは、一定時間、入口側及び出口側において放射線量率に変化がない時を意味する。「一定時間」とは、例えば、1〜72時間を採用するが、この限りではなく、この範囲よりも短くても長くても良い。「放射線量率に変化がない時」とは、吸着塔10−1の入口側及び出口側のそれぞれに全く変化がない時を含むほか、一般的に測定値はばらつくため、入口側及び出口側のそれぞれの放射線量率が±15%の変化までを含む。これにより、1番目の吸着塔10−1内の吸着材に吸着された放射性セシウム量が飽和に達したと判断することができる。
ここで、吸着塔の表面の放射線量率を測定することにより、吸着塔の破過を検出する方法について、図4を参照して、詳細に説明する。
図4に示すように、吸着塔101の表面の放射線量率を測定する方法は、放射性物質を含む被検体である吸着塔101の表面の一部分におけるγ線量をγ線検出部103を備えた放射線測定器によって測定し、該γ線量の測定値から吸着塔101に含まれる放射性セシウムの量を推定する方法であって、
γ線を放射する複数のγ線放射単位体102が、吸着塔101内の収容物(吸着材等)の表面の一部分から吸着塔101を貫通するように直線的に並んで吸着塔101内に存在すると仮定する仮定工程と、
γ線放射単位体102のそれぞれから放射され、γ線検出部103の検出位置103aに届くγ線の量を定めるべく、吸着塔101に含まれる放射性物質の濃度を算出用係数として設定し、吸着塔101に含まれる放射性物質の濃度と各γ線放射単位体102に含まれる放射性物質の濃度とが同じであるとの仮定に基づいて各γ線放射単位体102から放射されるγ線を該算出用係数を用いて定め、各γ線放射単位体102から放射されるγ線がランベルト・ベールの法則に従い減衰して検出位置103aに届くことに基づいて、各γ線放射単位体102から検出位置103aに届くγ線の量を該算出用係数を用いて定める各γ線量決定工程と、
上記各γ線量決定工程で定めたγ線の量の総計とγ線量の測定値とが同じであるとの仮定に基づいて該算出用係数を算出する算出工程とを備える。
上記放射性セシウムの測定方法においては、図4に示すように、吸着塔101の表面の一部分におけるγ線量をγ線検出部103を備えた放射線測定器によって測定する。具体的には、図4に示すように、例えば、γ線検出部103において吸着塔101に最も近い位置にある検出位置103aにてγ線を検出することにより、γ線量を測定する。
上記放射線測定器としては、一般的なものを用いることができ、例えば、γ線検出部103としてのガイガーミュラー計数管(GM管)を備えたもの、γ線検出部103としてのシンチレータを備えたNaI(TI)シンチレーション検出器、または、γ線検出部103としての半導体を備えたゲルマニウム半導体検出器などを用いることができる。
上記放射線測定器は、放射性セシウムに特有のγ線エネルギーを特定し、そのγ線エネルギー量を量るように構成されている。
放射線測定器は、通常、γ線検出部103で検出したγ線の量を数値で表示する測定値表示部をさらに備える。
該測定値表示部は、γ線検出部103とつながっており、γ線検出部103で検出したγ線の量を数値に変換して表示するように構成されている。変換された数値の単位としては、具体的には例えば、μSv/h(マイクロシーベルト/時間)などが挙げられる。
上述したγ線の測定においては、より正確に放射性物質の量を推定できるという点で、図4に示すように、γ線放射単位体102の並び方向の延長線上にγ線検出部103の検出位置103aを配することにより、γ線を測定することが好ましい。
さらに正確に放射性セシウムの量を推定するためには、γ線の検出方向が定まっているγ線検出部103を備えた放射線測定器を用いて、直線的に並んだγ線放射単位体102が、γ線検出部103のγ線検出方向の先に存在するようにγ線検出部103を配置して、γ線を測定することが好ましい。
また、上述したγ線の測定においては、吸着塔101の表面の一部分以外から放射されるγ線がγ線検出部103の検出位置103aに届くことを抑えるようにγ線検出部103をγ線減衰用材料104で覆った状態で、γ線を測定することが好ましい。
上記のごとくγ線検出部103をγ線減衰用材料104で覆った状態でγ線を測定することにより、測定すべきγ線の入射方向以外の方向からのγ線の影響を抑制することができ、吸着塔101の表面の一部分から放射されるγ線をγ線検出部103の検出位置103aにてより確実に検出できることから、より正確に放射性物質の量を推定することができるという利点がある。
γ線減衰用材料104は、γ線を減衰させることができる材料である。γ線減衰用材料104は、通常、γ線を減衰させる厚みを有している。γ線減衰用材料104としては、通常、鉛、鉄、又は、コンクリートなどが用いられる。
なお、γ線減衰用材料104は、γ線を減衰させるものであれば特に限定されず、例えば、液体状のもの又は粉末状のものであってもよく、γ線を減衰させる厚みを有するようにこれらが容器等に入れられたものであってもよい。
γ線の測定においては、より正確に放射性物質の量を推定できるという点で、吸着塔101の表面の一部分における形状及び大きさと、該表面の一部分と対向するγ線検出部103の検出位置103aにおける形状及び大きさとが同じであることが好ましい。
また、γ線の測定においては、吸着塔101の表面の一部分と、放射線測定器のγ線検出部103とが離れていてもよく、離れていなくてもよい。空気中におけるγ線の減衰を防止するという点で、吸着塔101の表面の一部分と、放射線測定器のγ線検出部103とは、離れていないことが好ましい。
γ線の測定においては、空気中におけるγ線の減衰をより抑制できるという点で、吸着塔101の表面の一部分と、放射線測定器のγ線検出部103との距離が、10cm以下であることが好ましい。
上記仮定工程においては、図4に示すように、γ線を放射する複数のγ線放射単位体102が、吸着塔101内の収容物(吸着材等)の表面の一部分から吸着塔を貫通するように直線的に並んで吸着塔101内に存在すると仮定する。
上記仮定工程においては、より正確に放射性物質の量を推定できるという点で、図4に示すように、γ線放射単位体102が同じ形状で且つ同じ大きさで互いに接していると仮定することが好ましい。
γ線放射単位体102の数は、特に限定されるものでなく、吸着塔101の大きさや形状によって適宜設定される。γ線放射単位体102の形状は、特に限定されるものでなく、例えば、直方体状、円柱体状などが挙げられる。γ線放射単位体102の大きさは、特に限定されるものでなく、吸着塔101の大きさや形状によって適宜設定される。γ線放射単位体102は、全て同じ体積を有するように設定されることが好ましい。
γ線放射単位体102としては、放射線物質量の推定精度をより優れたものにできるという点で、直径1〜5cmの底面と1〜5cm長さの円柱軸とを有する円柱体状のものを設定することが好ましい。円柱体状のγ線放射単位体102は、円柱軸方向に沿って連続して並び、隣り合うγ線放射単位体102の底面が互いに重なり合うように吸着塔101内に存在すると仮定されることが好ましい。
上記各γ線量決定工程においては、まず、γ線放射単位体102のそれぞれから放射されγ線検出部103の検出位置103aに届くγ線の量を定めるべく、吸着塔101に含まれる放射性セシウムの濃度を算出用係数として設定し、吸着塔101に含まれる放射性セシウムの濃度と各γ線放射単位体102に含まれる放射性セシウムの濃度とが同じであるとの仮定に基づいて各γ線放射単位体102から放射されるγ線を算出用係数を用いて定める。
上記各γ線量決定工程においては、例えば、吸着塔に含まれる放射性セシウムの濃度を算出用係数(Q)として設定し、該算出用係数(Q)と、γ線放射単位体102の体積又は重量(M)と、γ線の放出率(η)とを掛け合わせることにより、各γ線放射単位体102から放射されるγ線量を算出用係数を用いて定めることができる。算出用係数を用いて定めたγ線量は、数式によって表すことができる。
具体的には、各γ線量決定工程においては、下記式(1)のように、各γ線放射単位体102から放射されるγ線量を表すことができる。
算出用係数Q × M × η ・・・式(1)
上記各γ線量決定工程においては、次に、各γ線放射単位体102から放射されるγ線がランベルト・ベールの法則に従い減衰して検出位置103aに届くことに基づいて、各γ線放射単位体102から検出位置103aに届くγ線の量を該算出用係数を用いて定める。
一般的に、厚さxの物質にI0個の放射線が一定方向から入射したとき、厚さxの物質を通過して現れる放射線の数Iは、ランベルト・ベールの法則に従って、下記式(2)で表される。
I=B I0 e−Px ・・・式(2)
(式中、eは、ネイピア数であり、Pは減衰係数であり、Bは、ビルドアップ係数と称されるγ線の散乱効果などに関する補正係数である。)
上記各γ線量決定工程においては、上記式(2)におけるI0が、上記式(1)で表した各γ線放射単位体102から放射されるγ線量のうちの、検出位置103aの方向へ放射されるものに相当する。
なお、γ線の測定において、吸着塔とγ線検出部103とが離れている場合には、γ線が検出器に届く間に、空気によっても減衰するため、吸着塔を構成する材料によるγ線の減衰だけでなく、空気によるγ線の減衰も考慮して、γ線検出部103に届くγ線の量を上記算出用係数を用いて定める。
以下、上記各γ線量決定工程について、具体例を示しつつさらに詳しく説明する。
上記各γ線量決定工程においては、放射性セシウムから放射されるγ線のγ線エネルギーとその放出率とを設定することが好ましい。
具体的には、各γ線量決定工程においては、例えば、放射性物質をセシウム134とセシウム137とに設定することができる。
また、各γ線量決定工程においては、例えば、セシウム134及びセシウム137のγ線エネルギーと、それに対応するγ線エネルギーの放出率を下記のように設定することができる。
セシウム134(3種を設定)
γ線エネルギー 放出率
A.0.569MeV(メガエレクトロンボルト) 0.154
B.0.605MeV 0.976
C.0.796MeV 0.855
セシウム137
γ線エネルギー 放出率
D.0.662MeV 0.851
より具体的には、上記各γ線量決定工程においては、例えば放射性セシウムをセシウム134とセシウム137とに設定した場合、上述したセシウム134の3種及びセシウム137それぞれのγ線エネルギーの放出率と、上記算出用係数Qと、上記γ線放射単位体102の体積又は重量(M)と、さらに各セシウムの存在割合(h1:セシウム134の存在割合、h2:セシウム137の存在割合)とを掛け合わせることにより、各γ線放射単位体102から放射されるそれぞれのγ線エネルギーの量を算出用係数を用いて定めて数式により表し、さらに算出用係数を用いて表したそれぞれのγ線エネルギー量を合計することにより、各γ線放射単位体102から放射されるγ線量を算出用係数を用いて定め数式により表すことができる。
例えば、上記各γ線量決定工程においては、上記式(1)をより具体化した下記式(3)〜(6)に従って、各γ線放射単位体102から放射されるそれぞれのγ線エネルギー量を算出用係数を用いて表し、さらに、算出用係数を用いて表したそれぞれのγ線エネルギー量を合計することにより、各γ線放射単位体102から放射されるγ線量を算出用係数を用いて表すことができる。
セシウム134(γ線エネルギー 0.569MeV、 放出率ηA 0.154)
A.算出用係数Q × M × h1 × ηA ・・・式(3)
セシウム134(γ線エネルギー 0.605MeV、 放出率ηB 0.976)
B.算出用係数Q × M × h1 × ηB ・・・式(4)
セシウム134(γ線エネルギー 0.796MeV、 放出率ηC 0.855)
C.算出用係数Q × M × h1 × ηC ・・・式(5)
セシウム137(γ線エネルギー 0.662MeV、 放出率ηD 0.851)
D.算出用係数Q × M × h2 × ηD ・・・式(6)
なお、上記式(3)〜(6)において、セシウムの存在割合(h1,h2)は、予め放射線測定器によって測定したγ線のエネルギーを解析することにより、設定することができる。
さらに、上記各γ線量決定工程においては、例えば式(3)〜(6)のごとく表した各γ線放射単位体102におけるそれぞれのγ線エネルギー量を基にして、ランベルト・ベールの法則に従って減衰して上記γ線検出部103に届くそれぞれのγ線エネルギー量を算出用係数を用いて表し、これらγ線エネルギー量をたし合わせ、各γ線放射単位体102からγ線検出部103に届く減衰後のγ線量を算出用係数を含む数式で表すことができる。
ランベルト・ベールの法則に従う上記の式(2)においては、該式(2)からもわかるように、少なくとも減衰係数と、γ線が通過する距離と、ビルドアップ係数とを用いる。
上記減衰係数、及び、上記ビルドアップ係数は、通常、材料毎に、又は、γ線エネルギー毎に知られている。
具体的には、例えば、セシウム134及びセシウム137のγ線エネルギーにおける水の減衰係数、コンクリートの減衰係数、及び、空気の減衰係数は、それぞれ下記の表1に示す通りである。
なお、表1においては、各減衰係数の値がcm2/gの単位で表されている。この値をcm−1の単位で表すためには、cm2/gの単位で表された各減衰係数の値に、各物質のg/cm3単位での密度を乗じればよい。
上記ビルドアップ係数(B)の値は、式(2)においてPx<1の場合にB=1とすることができる。
一方、上記ビルドアップ係数(B)の値は、式(2)においてPx>1の場合にPxとすることができる。ただし、放射性物質から放出されるγ線のエネルギーが2MeVより高ければ、ビルドアップ係数(B)の値は、1+Pxとする。または、上記厚さxの物質が鉛のように原子番号が高ければ、ビルドアップ係数(B)の値は、1+Pxとする。
上記減衰係数は、吸着塔を構成する材料に応じて、既知の減衰係数を基にして適宜適当な数値に設定することができる。
具体的には例えば、ゼオライトの主成分は、シリカ及びアルミナであることから、ゼオライトの減衰係数としては、コンクリートの減衰係数と同じ数値を採用することができる。
また、例えば、水と、吸着材としてのゼオライトとが混合している状態のものが吸着塔の内部に収容された場合には、該混合物の減衰係数としては、水の減衰係数とコンクリートの減衰係数との平均値を採用することができる。
上記各γ線量決定工程において、ランベルト・ベールの法則におけるγ線が通過する距離は、各γ線放射単位体102の中心点と、γ線検出部103の検出位置との距離であることが好ましい。
なお、各γ線放射単位体102の中心点は、γ線放射単位体102が均質であるときの重心である。
具体的には、図4に示すように、円柱体状のD個の等しいγ線放射単位体102が、吸着塔101の一端から他端まで、γ線放射単位体102の円柱軸に垂直な方向に沿って連続して並び、隣り合うγ線放射単位体102の底面が互いに重なり合うようにγ線放射単位体102が吸着塔101に存在し、γ線放射単位体102の円柱軸方向長さが1cmであると仮定した場合、吸着塔101とγ線検出部103とがrcm離れていれば、検出部に最も近い1番目のγ線放射単位体102から放射されるγ線が通過する距離は、r+0.5cmと表すことができる。
上記各γ線量決定工程においては、必要に応じて、吸着塔101の密度の値または空気の密度の値を使うことができる。吸着塔101の密度は、吸着塔101を構成する材料に応じて、既知材料の密度を基にして適宜適当な数値に設定することができる。
具体的には、例えば、吸着塔101が放射性セシウム含有水とゼオライトとが混合している状態のものであり、吸着塔101の内部において放射性セシウム含有水とゼオライトとの体積比がほぼ等しい場合には、吸着塔101の密度としては、放射性セシウム含有水の密度とゼオライトの密度との平均値を設定することができる。
上記算出工程においては、上記各γ線量決定工程で定めたγ線の量の総計と上記γ線量の測定値とが同じであるとの仮定に基づいて上記算出用係数を算出する。
具体的には、上記算出工程においては、例えば下記の式(7)によって、各γ線量決定工程で求めたγ線の量の総計を表すことができる。
下記式(7)は、吸着塔101がゼオライトと水との混合物であり、図4に示すように、D個の等しい円柱状のγ線放射単位体102が、吸着塔101内の一端から他端までγ線放射単位体102の円柱軸方向に沿って連続して並び、隣り合うγ線放射単位体102の底面が互いに重なり合うようにγ線放射単位体102が吸着塔101に存在すると仮定し、γ線放射単位体102における円柱軸方向長さが1cmである場合に用いることができる。
ここで、吸着塔101本体部の材質が放射線を遮蔽する物質の場合で、例えば鉄を用いた場合には、鉄の影響を考慮する必要が出てくる。吸着塔101の材質による影響を考慮する場合には、鉄の減衰係数をPb、鉄の密度をρb、鉄の厚みをrb、鉄のビルドアップ係数をBbとすると、上記式(7)に鉄の項Bb×exp(-Pb*ρb*rb)を追加すればよい。すなわち、下記式(8)で表される。
なお、吸着塔の材質として鉄以外の材質を用いるときは、その材質の減衰係数と密度と厚みとをそれぞれ置き換えて代入すればよい。また、空気の幅(r)を考慮しない場合は、r=0となるので、exp(-Pa*ρa*r)=1として、exp(-Pa*ρa*r)の項を無視することができる。
また、空気についても本来はビルドアップ係数を考慮する必要があるが、1に近似できるため、ここでは記載を省略している。
詳しくは、上記の式(7)及び(8)におけるdは、図4に示すように、γ線放射単位体102の底面の直径を示す。ηjは、上述したように各γ線エネルギーの放出率を示す。ρmは、吸着材の密度(g/cm3)を示す。ρaは、空気の密度(g/cm3)を示す。rは、吸着塔101とγ線検出部103との距離(cm)を示す。hjは、放射性物質中における各γ線を放出する放射性元素(134Cs又は137Cs)の存在割合(具体的には、放射性元素がセシウムであれば、j=1,2,3が134Csの存在割合、j=4が137Csの存在割合)である。iは、γ線検出部103に最も近いγ線放射単位体102から遠ざかる方向へ向けて並ぶγ線放射単位体102の順序を示す。Biはi番目のγ線放射単位体102に対するビルドアップ係数を示す。Pmは、吸着材の減衰係数(cm2/g)を示す。Paは、空気の減衰係数(cm2/g)を示す。expは、底がeの指数関数を示す。πd2/4/(4*π(r+i-0.5)2)の項は、各γ線放射単位体102から放射されるγ線のうち、検出位置103aに入射するγ線量の割合の近似値である。そして、Qは上述した算出用係数(Bq/kg)を示す。
より具体的には、上記算出工程においては、下記の式(9)に示すように、式(7)で表される値と、測定したγ線量φとが同じ値になると仮定することにより、算出用係数Qを算出することができる。
例えば、算出用係数Qは、式(9)が成り立つような仮値をQに代入して、繰り返し計算により適当な仮値を決めることによって算出することができる。
また、例えば、算出用係数Qは、下記式(9)における既知の数値を式(9)に代入したうえで、コンピュータによる演算によって算出することができる。
なお、演算によって得られた算出用係数Qを用いて式(7)を計算すると、計算したγ線量(総実効線量率)φ’が求められる。
吸着塔の材質を考慮する場合も同様にして、下記の式(10)に示すように、式(8)で表される値と、測定したγ線量φとが同じ値になると仮定することにより、算出用係数Qを算出することができる。
例えば、算出用係数Qは、式(10)が成り立つような仮値をQに代入して、繰り返し計算により適当な仮値を決めることによって算出することができる。
また、例えば、算出用係数Qは、下記式(10)における既知の数値を式(10)に代入したうえで、コンピュータによる演算によって算出することができる。
なお、演算によって得られた算出用係数Qを用いて式(8)を計算すると、計算したγ線量(総実効線量率)φ’が求められる。
上記放射性セシウム量の推定方法においては、吸着塔101に対して表面の一部分におけるγ線量を測定し、上記仮定工程と、上記各γ線量決定工程と、上記算出工程とを実施することにより、吸着塔101内から吸着材の一部を取り出さなくとも、吸着塔101内に含まれる放射性セシウム量を把握することができる。
詳しくは、上記放射性セシウム量の推定方法においては、少なくともγ線放射単位体102が存在すると仮定した部分の放射性セシウム量を把握することができる。
上記放射性セシウム量の推定方法においては、γ線量を測定する吸着塔101の表面部分を複数箇所設定し、γ線放射単位体102が互いに重ならないように上記仮定工程を実施することにより、吸着塔101の複数箇所に含まれる放射性セシウム量を推定することができる。
上記放射性セシウム量の推定方法においては、吸着塔101を構成する材料として放射性セシウムを吸着する紺青などの吸着材を用いた場合、放射性セシウム含有水を吸着材に通水し、所定通水量ごとに吸着塔101の表面において放射性セシウムの量を推定することができる。したがって、経時的に放射性セシウムの量を推定することができ、時間を追って吸着塔101内の放射性セシウムの量の変化を知ることもできる。
続いて、本実施の形態における吸着塔の交換方法の効果について、図5に示す比較例と比較して説明する。
図5に示すように、比較例の吸着装置は、1個の吸着塔210を備えており、比較例の吸着塔の交換方法は、吸着塔210の出口の処理水中の放射性セシウム濃度を測定し、吸着塔210が破過した時に、新しい吸着塔に交換する。しかし、図5において、放射性セシウムが吸着された領域をドットで示しているように、吸着塔210の入口から出口に向けて、吸着材に吸着された放射性セシウムの吸着量が少なくなるように勾配が形成される。このため、吸着塔210が破過しても、吸着塔210内の吸着材において放射性セシウムを吸着可能な領域はかなり残っているが、吸着塔210自体を交換することになる。したがって、吸着塔210内の吸着材を有効に使用することができない。
一方、本実施の形態における吸着塔の交換方法は、n(nは2以上の整数、本実施の形態ではn=5)個の吸着塔10−1〜10−5を上流側から順に1〜n番目まで直列に配置して、放射性セシウムを含有する放射性セシウム含有水を1〜n番目の吸着塔に順に通水する工程と、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の入口側及び出口側の表面の放射線量率を測定し、それぞれの放射線量率の経時変化が一定となった時に、1番目の吸着塔10−1を新しい吸着塔に交換して、k(2≦k≦n)番目の吸着塔(図1及び図2における吸着塔10−2〜10−5)を(k−1)番目(図3における吸着塔10−1〜10−4)とし、かつ新しい吸着塔をn番目(図3における吸着塔10−5)となるように直列に配置して、放射性セシウム含有水を1〜n番目の吸着塔10−1〜10−5に順に通水する工程とを備える。
本実施の形態の吸着塔の交換方法によれば、吸着材の放射性セシウムに対する吸着速度が遅いため、吸着塔に収容された吸着材において、放射性セシウムの吸着濃度に勾配が発生するので、吸着塔10−1〜10−5を3つ以上直列に配置すると、吸着塔10−1〜10−5に収容された吸着材に吸着される放射性セシウムの濃度は、上流側から下流側(1番目からn番目)に向けて低くなる。本発明者は吸着塔10−1の表面の放射線量率を測定することに着目し、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の入口側及び出口側の表面の放射線量率の経時変化が一定となった時には、吸着塔10−1〜10−5に収容された吸着材のうち、最上流(1番目)の吸着塔10−1に収容された吸着材に吸着された放射性セシウムの濃度が最も高く、吸着材は最も有効利用されている。この最上流(1番目)の吸着塔10−1を、新しい吸着塔に交換し、かつ新しい吸着塔を最下流に配置して、放射性セシウム含有水を通水することにより、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の入口側及び出口側の表面の放射線量率の経時変化が一定となった時には、最上流(1番目)に配置された吸着塔10−1に収容された吸着材に吸着された放射性セシウムの濃度が最も高い。このように、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の入口側及び出口側の表面の放射線量率の経時変化が一定となった時に、放射性セシウムを最も吸着している吸着塔を交換することができるので、本実施の形態において交換する吸着塔内の吸着材の未使用領域は、図5に示す吸着材の未使用領域に比べて小さく、吸着材を有効に使用することができる
吸着塔の長さは、吸着塔出口の放射線量率あるいは放射能濃度が基準値以下となるように決定し、吸着塔本数は1本毎の吸着能力を完全に満たしてから交換する程度の長さとすればよい。
ここで、放射性セシウムの吸着速度は遅いため、放射性セシウム含有水を吸着させる吸着塔が長くなることに本発明者は着目した。放射性セシウムを吸着するために要する長さを有する吸着塔が、図5に示す吸着塔210の長さとすると、その長さの1/nを図1に示された吸着塔10−1〜10−5の1塔当たりの長さとすれば、図1に示す吸着装置10において放射性セシウムを吸着することができ、さらに上述した効果を有する。
また、n個の吸着塔10−1〜10−5の各々を小さくすることができるので、廃棄処分する最上流の吸着塔に吸着された放射性セシウムの濃度は、図5に示す吸着塔210に比べて低い。このように吸着材の放射線量が低いため、吸着塔10−1の廃棄処分において、取り扱いが容易になる。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2における吸着塔の交換方法について、図1及び図6を参照して説明する。本実施の形態では、放射性セシウム含有水A中の放射性セシウムを吸着塔10−1〜10−4で吸着し、最下流に配置されたn番目の吸着塔10−5は、バックアップ用として機能させる。
まず、実施の形態1とほぼ同様に、図1に示すように、n(nは3以上の整数、本実施の形態ではn=5)個の吸着塔10−1〜10−5を上流側から順に1〜n番目まで直列に配置して、放射性セシウム含有水を1〜n番目の吸着塔10−1〜10−5に順に通水する工程を実施する。
次に、1番目の吸着塔(図1における吸着塔10−1)における放射性セシウム含有水の入口側及び出口側の表面の放射線量率を測定し、それぞれの放射線量率の経時変化が一定となった時に、1番目の吸着塔10−1を新しい吸着塔に交換して、図6に示すように、k(2≦k≦n−1)番目の吸着塔を(k−1)番目(図6における吸着塔10−1〜10−3)とし、かつ新しい吸着塔を(n−1)番目(図6における吸着塔10−4)となるように直列に配置して、放射性セシウム含有水を1〜n番目の吸着塔10−1〜10−5に順に通水する。言い換えると、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の入口側及び出口側の表面の放射線量率の経時変化が一定となった時に、最上流の吸着塔(吸着塔10−1)を外して、上流側から順に2〜(n−1)番目に配置された吸着塔(図1における吸着塔10−2〜10−4)を、上流側に1番繰り上げて、新しい吸着塔をn番目に配置する。さらに言い換えると、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の入口側及び出口側の表面の放射線量率の経時変化が一定となった時に、1番目の吸着塔10−1を新しい吸着塔に交換して、図6に示すように、2番目に位置する吸着塔を最上流とし、かつ新しい吸着塔を最下流から2番目である(n−1)番目になるように直列に配置して、放射性セシウム含有水を1〜n番目の吸着塔10−1〜10−5に順に通水する。
図1においてn番目に配置された吸着塔10−5は、1番目の吸着塔10−1を交換した後であっても、図6に示すように、n番目に配置されたままである。
n番目に配置された吸着塔10−5は、バックアップ用として設置されているので、吸着塔10−4の出口で放射性セシウムの濃度または放射線量率の測定を行っても良い。仮に、吸着塔10−4から排出される処理水に放射性セシウムがリークしたとしても、バックアップ用の吸着塔10−5が最後に設置されているので、処理水Bへ放射性セシウムがリークすることを効果的に防ぐことができる。
また、吸着塔10−5の入口または出口にも放射性セシウムの濃度または放射線量率の測定器を取り付けることで、処理水Bの放射性セシウムの監視を行うことが可能である。処理水Bへ放射性セシウムがリークしないように、例えば吸着塔10−5の長さの中間地点以降で放射性セシウムが検出された時に、吸着塔10−5を新しい吸着塔に交換してもよい。交換前に使用していた吸着塔は、まだ吸着能力が残っているため、再利用可能である。再利用する場合は、次に交換(飽和に達する)予定の吸着塔と交換すれば、吸着材の使用効率を高めることができる。
なお、この工程における(n−1)番目に配置された吸着塔(図1における吸着塔10−4)の破過の検出方法は、実施の形態1と同様である。
以上説明したように、本実施の形態における吸着塔の交換方法は、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の入口側及び出口側の表面の放射線量率を測定し、それぞれの放射線量率の経時変化が一定となった時に、1番目の吸着塔10−1を新しい吸着塔に交換して、k(2≦k≦n−1)番目の吸着塔を(k−1)番目とし、かつ新しい吸着塔を(n−1)番目となるように直列に配置して、放射性セシウム含有水を1〜n番目の吸着塔に順に通水する工程とを備えている。
本実施の形態における吸着塔の交換方法によれば、吸着塔10−1〜10−5を3つ以上直列に配置すると、吸着塔10−1〜10−4に収容された吸着材に吸着される放射性セシウムの濃度は、上流側から下流側(1番目からn番目)に向けて低くなる。本発明者は、吸着塔10−1の表面の放射線量率を測定することに着目し、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の入口側及び出口側の表面の放射線量率の経時変化が一定となった時には、最上流(1番目)の吸着塔(図1における吸着塔10−1)に収容された吸着材に吸着された放射性セシウムの濃度が最も高く、吸着材は最も有効利用されている。この最上流の吸着塔10−1を、新しい吸着塔に交換し、かつ新しい吸着塔を最下流から2番目(n−1番目)に配置し、かつ放射性セシウム含有水を通水することにより、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の入口側及び出口側の表面の放射線量率の経時変化が一定となった時には、吸着塔10−1〜10−5に収容された吸着材のうち、最上流(1番目)に配置された吸着塔に収容された吸着材に吸着された放射性セシウムの濃度が最も高い。このように、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の入口側及び出口側の表面の放射線量率の経時変化が一定となった時に、放射性セシウムを最も吸着している吸着塔(図1における吸着塔10−1)を交換することができるので、吸着材を有効に使用することができる。
なお、本実施の形態の場合、最下流(n番目)の吸着塔(図1及び図6における吸着塔10−5)をバックアップ用の吸着塔として利用することができる。このため、n番目の吸着塔(図1及び図6における吸着塔10−5)を、他の吸着塔(図1及び図6における吸着塔10−1〜10−4)よりも小型にすることもできる。
本実施の形態における吸着塔の交換方法において好ましくは、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の入口側及び出口側の表面の放射線量率の経時変化が一定となった時は、上記放射線量率の経時変化により判断される。これにより、吸着塔における吸着材に吸着した放射性セシウムの経時変化がわかるので、上記放射線量率の経時変化が一定となった時をより正確性を高めて判断することができる。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3における吸着塔の交換方法について、図7を参照して説明する。本実施の形態における吸着塔の交換方法は、基本的には実施の形態2と同様であるが、吸着塔が2つである点において異なる。つまり、本実施の形態の吸着塔の交換方法では、放射性セシウム含有水A中の放射性セシウムを吸着塔10−1で吸着し、最下流に配置された2番目の吸着塔10−2は、バックアップ用として機能させる。
具体的には、まず、図7に示すように、2つの吸着塔10−1〜10−2を上流側から順に直列に配置して、放射性セシウムを含有する放射性セシウム含有水を吸着塔10−1〜10−2に順に通水する。
次に、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の入口側及び出口側の表面の放射線量率を測定し、それぞれの放射線量率の経時変化が一定となった時に、1番目の吸着塔10−1を新しい吸着塔に交換して、新しい吸着塔を1番目となるように直列に配置して、放射性セシウム含有水を吸着塔に順に通水する。つまり、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の入口側及び出口側の表面の放射線量率の経時変化が一定となった時に、最上流の吸着塔10−1を新しい吸着塔に交換し、2番目の吸着塔10−2をバックアップ用の吸着塔とする。
この工程では、図7に示すように、2番目に配置された吸着塔10−2は、1番目の吸着塔10−1を交換した後であっても、2番目に配置されたままである。
以上説明したように、本実施の形態における吸着塔の交換方法は、2つの吸着塔10−1〜10−2を上流側から順に直列に配置して、放射性セシウムを含有する放射性セシウム含有水を吸着塔10−1〜10−2に順に通水する工程と、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の入口側及び出口側の表面の放射線量率を測定し、それぞれの放射線量率の経時変化が一定となった時に、1番目の吸着塔10−1を新しい吸着塔に交換して、新しい吸着塔10−1を1番目となるように直列に配置して、放射性セシウム含有水を吸着塔に順に通水する工程とを備えている。
本実施の形態における吸着塔の交換方法によれば、吸着塔10−1〜10−2を2つ直列に配置すると、吸着塔に収容された吸着材に吸着される放射性セシウムの濃度は、上流側から下流側(1番目から2番目)に向けて低くなる。本発明者は、吸着塔10−1の表面の放射線量率を測定することに着目し、最上流である1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の入口側及び出口側の表面の放射線量率の経時変化が一定となった時には、この吸着塔10−1に収容された吸着材に吸着された放射性セシウムの濃度が最も高く、吸着材は最も有効利用されている。この最上流の吸着塔10−1を、新しい吸着塔に交換して、放射性セシウム含有水を通水することにより、再び1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の入口側及び出口側の表面の放射線量率の経時変化が一定となった時には、最上流(1番目)に配置された吸着塔10−1に収容された吸着材に放射性セシウムが十分に吸着されたことがわかる。このように、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の入口側及び出口側の表面の放射線量率の経時変化が一定となった時に、放射性セシウムを最も吸着している吸着塔を交換することができるので、吸着材を有効に使用することができる。
なお、この場合、2番目の吸着塔10−2は、バックアップ用の吸着塔として利用することができる。このため、バックアップ用の吸着塔10−2を、1番目の吸着塔10−1よりも小型にすることもできる。
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4における吸着塔の交換方法について、図1を参照して説明する。本実施の形態における吸着塔の交換方法は、基本的には実施の形態1と同様であるが、放射線量率を測定する方法が異なる。
具体的には、本実施の形態の放射線量率を測定する方法は、図1において、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の出口側と、2番目の吸着塔10−2における放射性セシウム含有水の入口側との表面の放射線量率を測定する。
1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の出口側と、2番目の吸着塔10−2における放射性セシウム含有水の入口側との表面の放射線量率の経時変化が一定となった時は、1番目の吸着塔10−1内の吸着材が飽和に達したと判断できる。
また、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の出口側とは、吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の出口部に相対的に近い表面であり、吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の出口部近傍の表面であることが好ましい。2番目の吸着塔10−2における放射性セシウム含有水の入口側との表面とは、吸着塔10−2における放射性セシウム含有水の入口部に相対的に近い表面であり、吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の入口部近傍の表面であることが好ましい。
また、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の出口側と、2番目の吸着塔10−2における放射性セシウム含有水の入口側との表面の放射線量率の経時変化が一定となった時とは、一定時間、1番目の吸着塔10−1の出口側と、2番目の吸着塔10−2の入口側において放射線量率に変化がない時を意味する。「一定時間」とは、例えば、1〜72時間を採用するが、この限りではなく、この範囲よりも短くても長くても良い。「放射線量率に変化がない時」とは、1番目の吸着塔10−1の出口側及び2番目の吸着塔10−2の入口側のそれぞれに全く変化がない時を含むほか、一般的に測定値はばらつくため、1番目の吸着塔10−1の出口側及び2番目の吸着塔10−2の入口側のそれぞれの放射線量率が±15%の変化までを含む。これにより、1番目の吸着塔10−1内の吸着材に吸着された放射性セシウム量が飽和に達したと判断することができる。
以上説明したように、本実施の形態における吸着塔の交換方法は、n(nは2以上の整数)個の吸着塔(本実施の形態では、図1における吸着塔10−1〜10−5)を上流側から順に1〜n番目まで直列に配置して、放射性セシウムを含有する放射性セシウム含有水を1〜n番目の吸着塔10−1〜10−5に順に通水する工程と、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の出口側と、2番目の吸着塔10−2における放射性セシウム含有水の入口側との表面の放射線量率を測定し、それぞれの放射線量率の経時変化が一定となった時に、1番目の吸着塔10−1を新しい吸着塔に交換して、k(2≦k≦n)番目の吸着塔を(k−1)番目とし、かつ新しい吸着塔をn番目となるように直列に配置して、放射性セシウム含有水を1〜n番目の吸着塔10−1〜10−5に順に通水する工程とを備えている。
本実施の形態における吸着塔の交換方法によれば、吸着塔10−1〜10−5を2つ以上直列に配置すると、吸着塔に収容された吸着材に吸着される放射性セシウムの濃度は、上流側から下流側(1番目からn番目)に向けて低くなる。本発明者は、吸着塔10−1、10−2の表面の放射線量率を測定することに着目し、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の出口側の放射線量率と、2番目の吸着塔10−2における放射性セシウム含有水の入口側との表面の放射線量率との経時変化が一定となった時には、最上流(1番目)の吸着塔10−1に収容された吸着材に吸着された放射性セシウムの濃度が最も高く、吸着材は最も有効利用されている。この最上流(1番目)の吸着塔10−1を、新しい吸着塔に交換し、かつ新しい吸着塔を最下流に配置して、放射性セシウム含有水を通水することにより、再び、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の出口側の放射線量率と、2番目の吸着塔10−2における放射性セシウム含有水の入口側との表面の放射線量率との経時変化が一定となった時には、最上流(1番目)に配置された吸着塔10−1に収容された吸着材に吸着された放射性セシウムの濃度が最も高くなる。このように、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の出口側の放射線量率と、2番目の吸着塔10−2における放射性セシウム含有水の入口側との表面の放射線量率との経時変化が一定となった時に、放射性セシウムを最も吸着している最上流に位置する1番目の吸着塔10−1を交換することができるので、吸着材を有効に使用することができる。
本実施の形態における吸着塔の交換方法において好ましくは、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の出口側の放射線量率と、2番目の吸着塔10−2における放射性セシウム含有水の入口側との表面の放射線量率との経時変化が一定となった時は、上記放射線量率の経時変化により判断される。これにより、吸着塔10−1における吸着材に吸着した放射性セシウムの経時変化がわかるので、上記放射線量率の経時変化が一定となった時をより正確性を高めて判断することができる。
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5における吸着塔の交換方法について、図1及び図6を参照して説明する。本実施の形態における吸着塔の交換方法は、基本的には実施の形態2と同様であるが、放射線量率を測定する方法が異なる。
具体的には、本実施の形態の放射線量率を測定する方法は、実施の形態4と同様に、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の出口側と、2番目の吸着塔10−2における放射性セシウム含有水の入口側との表面の放射線量率を測定する。
以上説明したように、本実施の形態における吸着塔の交換方法は、n(nは3以上の整数)個の吸着塔(本実施の形態では、図1における吸着塔10−1〜10−5)を上流側から順に1〜n番目まで直列に配置して、図1に示すように、放射性セシウムを含有する放射性セシウム含有水を1〜n番目の吸着塔10−1〜10−5に順に通水する工程と、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の出口側と、2番目の吸着塔における放射性セシウム含有水の入口側の表面の放射線量率を測定し、それぞれの放射線量率の経時変化が一定となった時に、1番目の吸着塔10−1を新しい吸着塔に交換して、図6に示すように、k(2≦k≦n−1)番目の吸着塔を(k−1)番目とし、かつ新しい吸着塔を(n−1)番目になるように直列に配置して、放射性セシウム含有水を1〜n番目の吸着塔10−1〜10−5に順に通水する工程とを備える。
本実施の形態における吸着塔の交換方法によれば、吸着塔を3つ以上直列に配置すると、吸着塔に収容された吸着材に吸着される放射性セシウムの濃度は、上流側から下流側(1番目からn番目)に向けて低くなる。本発明者は、吸着塔10−1、10−2の表面の放射線量率を測定することに着目し、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の出口側の放射線量率と、2番目の吸着塔10−2における放射性セシウム含有水の入口側との表面の放射線量率との経時変化が一定となった時には、最上流(1番目)の吸着塔10−1に収容された吸着材に吸着された放射性セシウムの濃度が最も高く、吸着材は最も有効利用されている。この最上流の吸着塔10−1を、新しい吸着塔に交換し、かつ新しい吸着塔を最下流から2番目(n−1番目)に配置して、放射性セシウム含有水を通水することにより、再び、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の出口側の放射線量率と、2番目の吸着塔における放射性セシウム含有水の入口側との表面の放射線量率との経時変化が一定となった時には、最上流(1番目)に配置された吸着塔10−1に収容された吸着材に吸着された放射性セシウムの濃度が最も高くなる。このように、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の出口側の放射線量率と、2番目の吸着塔10−2における放射性セシウム含有水の入口側との表面の放射線量率との経時変化が一定となった時に、放射性セシウムを最も吸着している吸着塔を交換することができるので、吸着材を有効に使用することができる。
なお、この場合、最下流(n番目)の吸着塔は、バックアップ用の吸着塔として利用することができる。このため、バックアップ用の吸着塔を、他の吸着塔よりも小型にすることもできる。
本実施の形態における吸着塔の交換方法において好ましくは、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の出口側の放射線量率と、2番目の吸着塔10−2における放射性セシウム含有水の入口側との表面の放射線量率との経時変化が一定となった時は、上記放射線量率の経時変化により判断される。これにより、吸着塔10−1における吸着材に吸着した放射性セシウムの経時変化がわかるので、上記放射線量率の経時変化が一定となった時をより正確性を高めて判断することができる。
(実施の形態6)
本発明の実施の形態6における吸着塔の交換方法について、図7を参照して説明する。本実施の形態における吸着塔の交換方法は、基本的には実施の形態3と同様であるが、放射線量率を測定する方法が異なる。
具体的には、本実施の形態の放射線量率を測定する方法は、実施の形態4と同様に、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の出口側と、2番目の吸着塔10−2における放射性セシウム含有水の入口側との表面の放射線量率を測定する。
以上説明したように、本実施の形態における吸着塔の交換方法は、2つの吸着塔10−1〜10−2を上流側から順に直列に配置して、放射性セシウムを含有する放射性セシウム含有水を吸着塔10−1〜10−2に順に通水する工程と、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の出口側と、2番目の吸着塔10−2における放射性セシウム含有水の入口側との表面の放射線量率を測定し、それぞれの放射線量率の経時変化が一定となった時に、1番目の吸着塔10−1を新しい吸着塔に交換して、新しい吸着塔を1番目となるように直列に配置して、放射性セシウム含有水を吸着塔10−1〜10−2に順に通水する工程とを備える。
本実施の形態における吸着塔の交換方法によれば、吸着塔10−1〜10−2を2つ直列に配置すると、吸着塔10−1〜10−2に収容された吸着材に吸着される放射性セシウムの濃度は、上流側から下流側(1番目から2番目)に向けて低くなる。本発明者は、吸着塔10−1、10−2の表面の放射線量率を測定することに着目し、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の出口側の放射線量率と、2番目の吸着塔10−2における放射性セシウム含有水の入口側との表面の放射線量率との経時変化が一定となった時には、1番目の吸着塔10−1に収容された吸着材に吸着された放射性セシウムの濃度が最も高く、吸着材は最も有効利用されている。この最上流の吸着塔10−1を、新しい吸着塔に交換して、放射性セシウム含有水を通水することにより、再び、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の出口側の放射線量率と、2番目の吸着塔10−2における放射性セシウム含有水の入口側との表面の放射線量率との経時変化が一定となった時には、最上流(1番目)に配置された吸着塔10−1に収容された吸着材に放射性セシウムが十分に吸着されたことがわかる。このように、1番目の吸着塔10−1における放射性セシウム含有水の出口側の放射線量率と、2番目の吸着塔10−2における放射性セシウム含有水の入口側との表面の放射線量率との経時変化が一定となった時に、放射性セシウムを最も吸着している吸着塔を交換することができるので、吸着材を有効に使用することができる。
なお、この場合、最下流である2番目の吸着塔10−2は、バックアップ用の吸着塔として利用することができる。このため、バックアップ用の吸着塔10−2を、1番目の吸着塔10−1よりも小型にすることもできる。
(実施の形態7)
本実施の形態では、実施の形態1〜6のいずれかの吸着装置及び吸着塔の交換方法を用いて、飛灰を処理する際に排出される放射性セシウム含有水を処理する方法及び装置について説明する。
図8に示すように、本実施の形態における処理装置は、混合槽7と、固液分離装置8と、調整槽11と、沈殿槽12と、除濁装置13と、加圧部14と、逆浸透(RO)膜装置15と、吸着装置10と、捕獲部17と、遮蔽部18と、処理水槽19と、固化装置20とを備えている。
混合槽7は、放射性セシウムを含有する飛灰Cと、水Dとが供給され、飛灰Cと水Dとを混合してスラリーを形成する。混合槽7は、飛灰C中の放射性セシウムを水Dに溶解する。なお、水Dは、特に限定されないが、例えば、水道水、工水、純水、地下水、各種排水の再処理水などを利用できる。
混合槽7は、供給される飛灰Cと水Dとを混合及び撹拌するための撹拌部材を有していてもよい。また、混合槽7は、複数の槽を含んでいてもよい。
固液分離装置8は混合槽7と接続され、混合槽7で得られるスラリーを固液分離する。固液分離装置8は、スラリーを、洗浄された飛灰(洗浄飛灰E)と、放射性セシウムを含む分離水とに分離するように構成されている。固液分離装置8は、例えば、フィルタープレスまたはベルトプレスを含む。
混合槽7と固液分離装置8との間には、洗浄装置、分級装置などの機器が配置されていてもよい(図示せず)。
調整槽11は、固液分離装置8の分離水排出部と接続され、固液分離装置8で生成される放射性セシウムを含有する分離水を貯留する。調整槽11は、複数の槽を含んでいてもよい。
沈殿槽12は、調整槽11と接続され、分離水に固形物が混じっている場合に、分離水中の粗い固形物(除濁装置13で分離するよりも粗い固形物)を凝集沈殿させる。沈殿槽12により、分離水中の粗い固形物が低減される。沈殿槽12は、複数の槽を含んでいてもよい。
除濁装置13は、沈殿槽12と接続され、粗い固形物が低減された分離水をろ過するためのものであり、RO膜よりも粗いろ過、即ち、RO膜で分離するよりも粗い不純物(例えば沈殿槽12で除去できなかった固形物等)を除去するためのものであり、RO膜装置15の前処理装置である。除濁装置13は、例えば、砂ろ過である。
加圧部14は、除濁装置13と接続され、除濁装置13から排出される粗い不純物が除去された分離水を浸透圧以上に加圧する。加圧部14は、例えば高圧ポンプである。
RO膜装置15は、加圧部14と接続され、加圧された分離水が供給され、RO膜処理により透過水F及び濃縮水を生成する。透過水Fは、RO膜を透過した水であり、濃縮水は、RO膜を透過せず、放射性セシウムを含有する水である。このRO膜装置15において、RO膜によるろ過処理により、放射性セシウムが除去された透過水Fと、飛灰に含有されていた放射性セシウムが残留する濃縮水とが得られる。
RO膜装置15は、例えば、RO膜と、このRO膜を収容する圧力容器とを有している。RO膜は、放射性セシウムを透過させないように構成されている。
なお、処理装置は、1組の加圧部14及びRO膜装置15を備えていてもよく、複数組の加圧部14及びRO膜装置15を備えていてもよい。処理装置が複数組の加圧部14及びRO膜装置15を備えている場合には、並列に配置されていても直列に配置されていてもよいが、直列に配置されることが好ましい。
RO膜装置15により得られる透過水Fの用途は特に限定されないが、固液分離装置8に供給されるように構成されることが好ましい。例えば、図8において透過水Fと固液分離装置8とを結ぶ点線で示されるように、RO膜装置15の透過水排出部と固液分離装置8とを配管等で接続する。固液分離装置8がフィルタープレスまたはベルトプレスを含む場合、透過水Fは飛灰Cの洗浄に用いられる。また、透過水Fは、例えば飛灰Cを洗浄する水Dとして用いてもよい。このように、処理装置は、処理装置で発生する水を処理装置内で循環させるように構成されていることが好ましい。
吸着装置10は、上述した実施の形態1〜6のいずれかであり、RO膜装置15の濃縮水排出部と接続されている。吸着装置10は、3個以上の吸着塔が直列に配置されている。吸着装置10により、濃縮水中の放射性セシウムが吸着材に吸着されるので、処理水(図1〜3、図6及び図7における処理水B)を生成する。
捕獲部17は、吸着装置10の出口側に配置され、吸着装置10から漏出される紺青などの吸着材を捕獲する。捕獲部17は、特に限定されないが、例えば、UF膜装置、MF膜装置などのフィルタを有する装置、沈殿装置などを用いることができ、捕獲性が高い観点からUF膜装置及びMF膜装置の少なくともいずれか一方を用いることが好ましい。UF膜装置またはMF膜装置は、例えば、吸着材を捕獲可能なUF膜またはMF膜と、このUF膜またはMF膜を収容する圧力容器とを有している。
また、処理装置は、捕獲部17において捕獲された非透過水を排出する排出部と、調整槽11とを接続する配管が配置されていることが好ましい。この配管により、捕獲部17により得られた非透過水を調整槽11へ返送することができるので、放射性セシウムを吸着した吸着材を処理装置の外部に流出することを防止できる。
遮蔽部18は、吸着装置10及び捕獲部17を取り囲む。遮蔽部18は、例えばコンクリートであり、内部から外部へ放射性セシウムが漏れ出ないように構成されている。より具体的には、遮蔽部18により、放射性セシウムが濃縮された吸着装置10及び捕獲部17から放出される放射線を遮断するとともに、万が一、放射性セシウムを含有する濃縮水が流出した場合でも、処理装置の外部に放射線が漏れ出ることを防止する。
処理水槽19は、捕獲部17と接続され、捕獲部17で吸着材が除去された処理水を収容する。処理水槽19に収容された処理水は、放射性セシウムが低減されているが、塩分を有している。
固化装置20は、処理水槽19と接続され、塩分が低減された処理水Gと、塩分Hとに分離する。固化装置20は、例えば蒸発装置である。得られた処理水Gは、透過水Fと同様に、飛灰Cの洗浄として、固液分離装置8に供給してもよく、水Dとして利用してもよい。
続いて、本実施の形態における飛灰の処理方法について説明する。本実施の形態における飛灰の洗浄方法及び処理方法は、図8に示す飛灰の処理装置を用いて行う。
まず、放射性セシウムを含有する飛灰Cと、水Dとを混合槽7に供給し、混合槽7において飛灰Cと水Dとを混合してスラリーを形成する。この工程では、飛灰C中の放射性セシウムを水Dに溶解する。
次に、固液分離装置8において、スラリーを固液分離して、分離水を形成する。この工程では、フィルタープレスまたはベルトプレスを用いて、スラリーを固液分離することが好ましい。この工程により、固形分としての洗浄された飛灰(洗浄飛灰E)と、液体分としての放射性セシウムを含む分離水とに分離される。
なお、スラリーを形成する工程と分離水を形成する工程との間に、分級工程、脱水工程などの他の工程を実施してもよい。
以上の工程を実施することにより、飛灰C中の放射性セシウムを低減することができるので、飛灰Cを洗浄することができる。
次に、固液分離により得られた放射性セシウムを含有する分離水を、調整槽11に移送する。
次に、調整槽11に貯留された分離水を沈殿槽12に移送して、分離水中に固形分が含まれている場合には、分離水中の固形物を凝集沈殿する。
次に、沈殿槽12で沈殿処理された分離水を除濁装置13でろ過する。このろ過により、沈殿槽12で取り除かれなかった分離水中の固形物質等の粗い不純物を除去することができる。
なお、沈殿槽12及び除濁装置13は省略されてもよい。この場合には、固液分離装置8で得られた分離水をそのまま加圧部14を介してRO膜装置15に供給する。
次に、除濁装置13で粗い不純物が除去された分離水を加圧部14で加圧する。分離水に加える圧力は特に限定されないが、RO膜装置15で放射性セシウムを除去した透過水Fを得るために必要な圧力を加える。
次に、加圧部14で加圧した分離水を、RO膜装置15に供給して、RO膜を用いたRO膜処理により透過水Fと濃縮水とに分離する。この工程により、放射性セシウムが除去された透過水Fと、飛灰Cに含有されていた放射性セシウムが残留する濃縮水とを生成する。
なお、加圧部14及びRO膜装置15は、1段であってもよく、複数段であってもよい。2段の場合には、1段目の加圧部14で加圧された分離水を1段目のRO膜装置15でろ過処理し、得られる透過水を2段目の加圧部で加圧し、加圧された透過水を2段目のRO膜装置でろ過処理し、2段目のRO膜装置を透過した水を透過水Fとすることが好ましい。
透過水Fは処理装置の外部に放流してもよいが、処理装置で発生する水を処理装置内に循環させるクローズドシステムを採用することが好ましい。クローズドシステムでは、固液分離装置8がフィルタープレスまたはベルトプレスの場合、透過水Fを、洗浄液としてフィルタープレスまたはベルトプレスに供給してもよく、水Dとして利用してもよい。
次に、RO膜装置15で形成された濃縮水を、吸着装置10に供給して、濃縮水中の放射性セシウムを吸着材に吸着する。つまり、放射性セシウムを含有する濃縮水を、図1に示す3個以上の吸着塔が直列に配置された吸着装置10に供給して、吸着塔内に収容された吸着材に放射性セシウムを吸着させる。この工程により、飛灰Cに含有されていた放射性セシウムを吸着材に吸着させることができる。
この工程において、実施の形態1〜6のいずれかの吸着塔の交換方法を適用する。
具体的には、実施の形態1の吸着塔の交換方法を適用する場合には、n(nは2以上の整数)個の吸着塔を上流側から順に1〜n番目まで直列に配置して、放射性セシウムを含有する放射性セシウム含有水を1〜n番目の吸着塔に順に通水する工程と、1番目の吸着塔における放射性セシウム含有水の入口側及び出口側の表面の放射線量率を測定し、それぞれの放射線量率の経時変化が一定となった時に、1番目の吸着塔を新しい吸着塔に交換して、k(2≦k≦n)番目の吸着塔を(k−1)番目とし、かつ新しい吸着塔をn番目となるように直列に配置して、放射性セシウム含有水を1〜n番目の吸着塔に順に通水する工程とを実施する。
実施の形態2の吸着塔の交換方法を適用する場合には、n(nは3以上の整数)個の吸着塔を上流側から順に1〜n番目まで直列に配置して、放射性セシウムを含有する放射性セシウム含有水を1〜n番目の吸着塔に順に通水する工程と、1番目の吸着塔における放射性セシウム含有水の入口側及び出口側の表面の放射線量率を測定し、それぞれの放射線量率の経時変化が一定となった時に、1番目の吸着塔を新しい吸着塔に交換して、k(2≦k≦n−1)番目の吸着塔を(k−1)番目とし、かつ新しい吸着塔を(n−1)番目となるように直列に配置して、放射性セシウム含有水を1〜n番目の吸着塔に順に通水する工程とを実施する。
実施の形態3の吸着塔の交換方法を適用する場合には、2つの吸着塔を上流側から順に直列に配置して、放射性セシウムを含有する放射性セシウム含有水を吸着塔に順に通水する工程と、1番目の吸着塔における放射性セシウム含有水の入口側及び出口側の表面の放射線量率を測定し、それぞれの放射線量率の経時変化が一定となった時に、1番目の吸着塔を新しい吸着塔に交換して、新しい吸着塔を1番目となるように直列に配置して、放射性セシウム含有水を吸着塔に順に通水する工程とを実施する。
実施の形態4の吸着塔の交換方法を適用する場合には、n(nは2以上の整数)個の吸着塔を上流側から順に1〜n番目まで直列に配置して、放射性セシウムを含有する放射性セシウム含有水を1〜n番目の吸着塔に順に通水する工程と、1番目の吸着塔における放射性セシウム含有水の出口側と、2番目の吸着塔における放射性セシウム含有水の入口側との表面の放射線量率を測定し、それぞれの放射線量率の経時変化が一定となった時に、1番目の吸着塔を新しい吸着塔に交換して、k(2≦k≦n)番目の吸着塔を(k−1)番目とし、かつ新しい吸着塔をn番目となるように直列に配置して、放射性セシウム含有水を1〜n番目の吸着塔に順に通水する工程とを実施する。
実施の形態5の吸着塔の交換方法を適用する場合には、n(nは3以上の整数)個の吸着塔を上流側から順に1〜n番目まで直列に配置して、放射性セシウムを含有する放射性セシウム含有水を1〜n番目の吸着塔に順に通水する工程と、1番目の吸着塔における放射性セシウム含有水の出口側と、2番目の吸着塔における放射性セシウム含有水の入口側の表面の放射線量率を測定し、それぞれの放射線量率の経時変化が一定となった時に、1番目の吸着塔を新しい吸着塔に交換して、k(2≦k≦n−1)番目の吸着塔を(k−1)番目とし、かつ新しい吸着塔を(n−1)番目になるように直列に配置して、放射性セシウム含有水を1〜n番目の吸着塔に順に通水する工程とを実施する。
実施の形態6における吸着塔の交換方法を適用する場合には、2つの吸着塔を上流側から順に直列に配置して、放射性セシウムを含有する放射性セシウム含有水を吸着塔に順に通水する工程と、1番目の吸着塔における放射性セシウム含有水の出口側と、2番目の吸着塔における放射性セシウム含有水の入口側との表面の放射線量率を測定し、それぞれの放射線量率の経時変化が一定となった時に、1番目の吸着塔を新しい吸着塔に交換して、新しい吸着塔を1番目となるように直列に配置して、放射性セシウム含有水を吸着塔に順に通水する工程とを実施する。
なお、この工程において交換される1番目の吸着塔(図1及び図7における吸着塔10−1)は、吸着材に吸着された放射性セシウムの量に応じて、所定の廃棄物処理(予め想定していた最終処分)が行われる。
次に、吸着装置10から漏出した紺青などの吸着材を捕獲する。この工程では、紺青などの吸着材は、粒子径が小さい微粉あるいは粒子となって吸着装置10から漏出する場合があるが、放射性セシウムを吸着した吸着材が吸着装置10から漏出された場合には、捕獲部17で吸着材を捕獲する。捕獲部17で捕獲された放射性セシウムを吸着した吸着材は、所定の廃棄物処理が行われる。
この捕獲する工程では、捕獲部17としてUF膜装置及びMF膜装置の少なくともいずれか一方を用いて吸着材を捕獲することが好ましい。この場合、UF膜及びMF膜は、例えばクロスフロー方式で使用される。
この工程において捕獲部17としてUF膜装置及びMF膜装置の少なくともいずれか一方を用いる場合、UF膜及びMF膜は、耐圧付近まで使用し、使用後のUF膜及びMF膜は再生(洗浄)せずに、焼却処理、産業廃棄物処理、中間貯蔵施設への受入れ等によって処分をすることが好ましい。
捕獲部17で捕獲された非透過水は、調整槽11へ返送することが好ましい。これにより、放射性セシウムを吸着した吸着材を処理装置の外部に流出することを防止できる。
上記吸着材に吸着する工程及び吸着材を捕獲する工程は、放射線を内部に遮蔽する遮蔽部18内で実施する。これにより、上記工程の実施中に、外部へ放射性セシウムが漏れることを抑制できる。
以上の工程を実施することにより、飛灰Cに含有されていた放射性セシウムを洗浄して得られる濃縮水(放射性セシウム含有水)を処理することができる。
次に、捕獲部17で吸着材が除去された処理水を処理水槽19に収容する。処理水槽19に収容された処理水は、放射性セシウムが低減されているが、塩分を有している。
次に、処理水中の塩分を蒸発装置などの固化装置20で分離する。これにより、塩分が低減された処理水Gと、塩分Hとを生成することができる。なお、処理水Gを、固液分離装置8に供給してもよく、水Dとして利用してもよい。
以上説明したように、本実施の形態における放射性セシウム含有水の処理方法は、放射性セシウムを含有する飛灰Cと水Dとを混合して、スラリーを形成する工程と、このスラリーを固液分離して、分離水を形成する工程と、この分離水をRO膜装置15に供給して、RO膜処理により透過水F及び濃縮水を生成する工程と、この濃縮水を放射性セシウム含有水として、直列に配置された複数の吸着塔に通水して、放射性セシウムを吸着材に吸着する工程とを備え、実施の形態1〜6の少なくともいずれかの吸着塔の交換方法により吸着塔を交換することを特徴とする。
本実施の形態における放射性セシウム含有水の処理方法によれば、放射性セシウム含有水として、飛灰Cに付着していた放射性セシウムを洗浄した水を処理する際においても、吸着塔に収容された吸着材を有効に使用できる。このように、実施の形態1〜6の吸着塔の交換方法は、放射性セシウムを含有する飛灰の処理方法にも適用することができる。
なお、本実施の形態では、加圧部14及びRO膜装置15は、吸着装置10の前段に配置されているが、捕獲部17の後段に配置されていてもよい(図示せず)。この場合、捕獲部17で吸着材を捕獲する工程を実施した後に、加圧部14で処理水を加圧する工程を実施し、その後に、RO膜装置15において、RO膜を用いたRO膜処理により透過水と濃縮水とに分離する。なお、RO膜装置15から排出される濃縮水は、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなどが濃縮された水である。この工程順の場合、加圧部14及びRO膜装置15は放射性セシウムに汚染されないため、汚染機器を低減することができる。
ここで、本実施の形態では、放射性セシウム含有水として、飛灰Cを洗浄した濃縮水を例に挙げて説明したが、本発明の放射性セシウム含有水の吸着塔の交換方法で適用可能な放射性セシウム含有水は、飛灰Cの洗浄水に特に限定されない。本発明の放射性セシウム含有水として、例えば、ごみ処理場、ごみ埋立地等から発生する放射性セシウムを含有する浸出水や、放射性セシウムを含有する土壌の処理によって得られる排水などを用いることができる。この場合、図9に示すように、調整槽11を受け槽として用い、調整槽11に浸出水が供給される。また、透過水Fは、調整槽11に返送されてもよい。
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、各実施の形態の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される