JP5825669B2 - 懸垂式客車の振れ制止装置 - Google Patents

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Description

本発明は、懸垂式客車を用いて乗客を輸送する輸送設備において、停留場内に停止した客車の前後方向の振れを制止する装置に関する。
懸垂式客車を用いた輸送設備の代表例としては、空中に張架した索条に客車を懸垂して輸送を行う索道設備がある。また、空中の所定位置に軌条を高架するとともに、この軌条に沿って索条を張り渡し、客車を懸垂した走行装置を索条で牽引することにより走行装置ないし客車を軌条に沿って運行するようにした輸送設備も知られている(例えば特許文献1参照)。さらには、地上に敷設した軌道と、この軌道に沿って走行するシャシーを備え、このシャシーにはハンガーアームを設けて客車を懸垂し、シャシーを索条で牽引して運行する輸送設備も知られている(例えば特許文献2参照)。
上記例示した懸垂式客車を用いた輸送設備の特徴は、客車が進行方向に対して揺動可能に構成されている点にある。すなわち、このように構成することにより、客車が移動する軌条または索条の勾配が変化しても、客車は自重により垂直に垂下した状態に保たれるので、走行中の客車の床面は常時水平に保たれるという特徴がある。一方、客車の発進、停止時や加速、減速時には、客車が進行方向前後に揺れてしまうという特性もある。
また、上記した輸送設備のうち索道設備においては、客車が索条から懸垂されるという構成に起因して、進行方向に対して横方向にも揺れるという特性がある。この特性のために、索道施設においては、停留場のプラットホームを客車の幅よりも広くして設け、この位置へ到着した客車を、客車の両側方から挟み込んで客車の横方向振動を緩衝するようにした装置が提案され、また、実用に供されている(例えば特許文献3参照)。
特開平6−298076号公報 特開昭62−122861号公報 実公平8−2015号公報
このように、懸垂式客車を用いた輸送設備においては、客車が索条又は軌条等に対して進行方向前後へ揺動可能に構成されているために、以下のような問題点がある。一般的に懸垂式客車は複数の乗客が乗車するように構成されており、例えば小型のものでは四人乗り程度の設備から、大型のものでは百数十人乗りの設備が実施されている。このように、客車内には複数の乗客が搭乗するために、乗車した乗客が客車内に均一に分布していれば客車の床面は水平に保たれる。しかしながら、乗客の分布が客車の前後いずれかに偏っていると、客車の床面もこの偏荷重に対応して前後方向に傾斜する。
そして、このように傾斜した状態で客車が停留場に停車した場合には、水平に設けられた停留場のプラットホームに対して客車の床面が傾斜した状態となるために、プラットホームと客車床面との間に段差を生じてしまう。このような段差は、乗客のつまずきを誘発したり、また、車椅子の利用者にとっては乗降に苦慮する等好ましくない。
本発明の課題は、このような問題を解決するためのものであって、停留場内に停止した客車の前後方向の振れを好適に制止することのできる、懸垂式客車の振れ制止装置を提供することにある。
進行方向に対して前後方向へ揺動可能に懸垂した客車を運行する輸送設備において、前記客車の前後方向中央位置の下端部には前記客車の側方へ突出してローラーを備え、前記客車が停車する停留場のプラットホームには、該プラットホーム側に起立した垂直状態と前記客車側へ倒れた水平状態とに回動するとともに前記ローラーを押圧する可動フレームと、該可動フレームを回動駆動するアクチュエータとを備え、前記可動フレームにおける前記ローラーを押圧する部分は、前記可動フレームが前記客車側へ倒れた水平状態において、前後方向中心部から端部へ向けて下方へ傾斜する傾斜部が対向する形状に形成されている。
請求項1に記載の発明によれば、荷重の偏荷重等により客車が前後方向に振れている場合には、可動フレームが水平状態へと回動するとともに、この可動フレームに形成された傾斜部が客車のローラーを押圧し、このローラーが中心方向へ移動することにより客車の姿勢を水平に整えることができる。また、停留場においては対向する傾斜部の頂点位置にローラーが保持されるので、乗客の乗降時にも客車の姿勢が変化することなく安全に乗降することができる。
搬器の正面図 搬器の側面図 図2におけるA−A矢視図 客車下部の拡大正面図 客車とプラットホームとの関係を示す正面図 客車とプラットホームとの関係を示す側面図 客車とプラットホームとの関係を示す平面図 可動ステップ装置の正面図 可動フレームの側面図
以下、本発明の具体的な実施の形態を図面を参照して説明する。図1及び図2は、懸垂式の客車32を備えた搬器10の正面図及び側面図であり、図3は、図2におけるA−A矢視図である。搬器10は、台車30と、懸垂フレーム38と、懸垂機31と、客車32とからなっている。台車30の前後左右の下端部四箇所には、走行輪33、34を回転可能に備えており、これらがレール11に沿って転動する。レール11は図に示されているように、鉄道等で用いられる普通レール37をH形鋼36の上部に固設した構成となっており、線路中にはこのように組み合わされたレール11を二列横方向に平行して敷設している。走行輪33、34のうち左右方向いずれかの列の走行輪33は、外周の中央部が凹状に形成されており、この部分が普通レール37の上部と係合し、搬器10の左右方向の移動を規制する。
台車30には、前後方向の中央部付近において両側方に突出して握索機39を備え、この握索機39により索条12を握索して台車30と索条12が連結される。握索機39は、例えば索道等で採用されているバネ式の握索機39であって、握索機39に内蔵されたバネの変形力を握子に作用又は解除させることにより、握索機39と索条12とを連結又は脱離させることが可能になっている。このような構成により索条12に連結した台車30は、索条12が移動することにより台車30の両側方を牽引されて移動する。
台車30の上部には、懸垂フレーム38が固設されている。この懸垂フレーム38は、左右両側方において門形部材38aを側面視で門形状に形成して立設し、この門形部材38aの下部間を連結部材38bで連結して枠状に形成したものであり、この懸垂フレーム38の内側には客車32を収容する空間を有している。懸垂フレーム38の前端部および後端部の連結部材38bには、両側端部から内側方向へ離れた位置に接続部材38cを下方に突出して形成しており、これを台車30の上部に固着して懸垂フレーム38と台車30が連結されている。懸垂フレーム38の横幅は、台車30の横幅よりも大きく構成されている。
懸垂フレーム38の上部には、両門形部材38aの間に懸垂機31をピン35により進行前後方向へ揺動可能に軸支しており、この懸垂機31にはゴム等の振動吸収材を介して客車32が吊下されている。この構成により、線路中で搬器10の走行傾斜角度が変化した場合には、懸垂機31ないし客車32が台車30ないし懸垂フレーム38に対して回動し、客車32の姿勢は常時水平に保たれる。
図3に示すように、客車32の下部には振れ止めフレーム20を備えている。振れ止めフレーム20は、棒状の部材により平面視において略六角形に枠組みされたものであって、略六角形の対向する一組の頂点が客車32の前後方向における中心線上に位置しており、客車32の両側面付近にある。この両頂点には、図4に示すように客車32の側方へ向けて、やや下降して突出する形状のローラーブラケット21を固着し、このローラーブラケット21の先端部にローラー22を回転自在に軸支している。後述するが、停留場内で搬器10が停止しているときに、このローラー22が下方に押圧されて客車32の姿勢が水平に保持される。
図5、図6及び図7は、停留場における搬器停止位置での客車32とプラットホーム40との関係を示した正面図、平面図及び側面図である。客車32の下端部側方には、客車32の側面に沿って側方へ突出した客車ステップ32aを備えている。客車ステップ32aの上面は、客車32の床面と略面一の高さとなっており、客車32の扉開口部の幅より幅広く形成されている。停留場側には、搬器10の側方にプラットーホーム40が客車32の床面と略同一の高さで形成されており、このプラットホーム40の搬器10停止位置には、搬器10側へ平面視凹状に開口する開口部41が形成され、この開口部41に可動ステップ装置42を備えている。
可動ステップ装置42は、停留場に固設された本体フレーム43と、この本体フレーム43の上端部に回動可能に軸支した可動フレーム44と、この可動フレーム44を回動駆動するアクチュエータ45とを備えている。本体フレーム43は、図5に示したように側面視において、平行して上方へ延出する柱状部材43a、43aの中央部やや下方付近および上端部を連結部材43b、43cで連結した形状であり、上端部にはプラットーホーム40の開口部41を塞ぐ形状で床板46を設けるとともに、連結部材43bの中央部にはブラケット47を介してアクチュエータ45の一端部を枢支している。また、両柱状部材43a、43aの上端部には、客車32側方向に軸支部43d、43dを形成し、ここで可動フレーム44を軸支している。
可動フレーム44は平面視において略矩形状であって、直立した垂直状態と倒れた水平状態とに回動可能であり、水平状態になったときには、可動フレーム44の上面が客車32の客車ステップ32a及び床板46の上面とほぼ面一となり、客車ステップ32aと床板46との間に通路面を形成する。可動フレーム44の通路面の反対側の面には、アクチュエータ45の端部が枢着されており、このアクチュエータ45の伸縮動作により可動フレーム44が回動する。
図8及び図9は、可動ステップ装置42を拡大した正面図及び側面図であって、可動フレーム44が水平となった状態を示している。図において、可動ステップ装置42の可動フレーム44には、先端部付近の下部にローラーガイド48が形成されている。ローラーガイド48は、図9に示すように側面視において、可動フレーム44の幅と略同一の長さに形成されており、この下面には、中心位置を頂点49として両側へ向けて緩やかに下降傾斜する傾斜部50、51が形成されており、この傾斜部50、51の端部付近においては、傾斜がさらに緩くなるように変化する形状となっている。
このような構成により上記可動ステップ装置42は、以下説明するように客車32の振れ制止装置として動作する。可動ステップ装置42は、搬器10が停留場に位置していないときは、図5において破線で示したように可動フレーム44が直立した状態を保っている。停留場に搬器10が到着し定位置に停止すると、可動ステップ装置42のアクチュエータ45が動作して可動フレーム44が客車32側へ緩やかに回動する。
搬器10において、客車32に搭載した荷重が前後方向に偏っている場合には、図7において破線で示すように客車32は前後方向に傾いており、客車32下部に備えたローラー22の位置は、客車32が水平な状態のときの位置よりも前後いずれかの方向及び上方へ変位している。このような状態で搬器10が停止した場合には、可動フレーム44の回動にともなって、ローラーガイド48下面の傾斜部50又は傾斜部51がローラー22に当接する。さらに可動フレーム44が回動を続けると、ローラー22は、傾斜部50又は傾斜部51に押圧されることによりこれに沿って転動し、頂点49方向へと緩やかに移動する。これにより客車32の姿勢は、除々に水平となるように変移する。
この後、可動フレーム44が水平状態になって可動ステップ装置42が停止すると、ローラー22は頂点49の位置においてその位置を保持され、これにより客車32の水平状態が保たれる。したがって、この後の乗客の乗降に際しては、客車32内で荷重の移動が生じても客車32の水平は維持され、乗客は安全に乗降を行うことができる。
10 搬器
11 レール
12 索条
20 振れ止めフレーム
21 ローラーブラケット
22 ローラー
30 台車
31 懸垂機
32 客車
32a 客車ステップ
33 走行輪
34 走行輪
35 ピン
36 H形鋼
37 普通レール
38 懸垂フレーム
38a 門形部材
38b 連結部材
38c 接続部材
39 握索機
40 プラットホーム
41 開口部
42 可動ステップ装置
43 本体フレーム
43a 柱状部材
43b 連結部材
43c 連結部材
43d 軸支部
44 可動フレーム
45 アクチュエータ
46 床板
47 ブラケット
48 ローラーガイド
49 頂点
50 傾斜部
51 傾斜部

Claims (1)

  1. 進行方向に対して前後方向へ揺動可能に懸垂した客車を運行する輸送設備において、前記客車の前後方向中央位置の下端部には前記客車の側方へ突出してローラーを備え、前記客車が停車する停留場のプラットホームには、該プラットホーム側に起立した垂直状態と前記客車側へ倒れた水平状態とに回動するとともに前記ローラーを押圧する可動フレームと、該可動フレームを回動駆動するアクチュエータとを備え、前記可動フレームにおける前記ローラーを押圧する部分は、前記可動フレームが前記客車側へ倒れた水平状態において、前後方向中心部から端部へ向けて下方へ傾斜する傾斜部が対向する形状に形成されていることを特徴とする懸垂式客車の振れ制止装置。
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