JP5825478B2 - 焼結機 - Google Patents

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Description

本発明は、酸素を富化し、気体燃料を供給することで、高品質の高炉原料用焼結鉱を製造する下方吸引式のドワイトロイド焼結機関するものである。
高炉製銑法の主原料である焼結鉱は、一般に、図1に示すような工程を経て製造される。焼結鉱の原料は、鉄鉱石粉や焼結鉱篩下粉、製鉄所内で発生した回収粉、石灰石およびドロマイトなどの含CaO系副原料、生石灰等の造粒助剤、コークス粉や無煙炭などであり、これらの原料は、ホッパー1・・・の各々から、コンベヤ上に所定の割合で切り出される。切り出された原料は、ドラムミキサー2および3等によって適量の水が加えられ、混合、造粒されて、平均径が3〜6mmの擬似粒子である焼結原料とされる。この焼結原料は、その後、焼結機上に配設されているサージホッパー4、5からドラムフィーダー6と切り出しシュート7を介して、無端移動式の焼結機パレット8上に400〜800mmの厚さで装入され、焼結ベッドともいわれる装入層9を形成する。その後、装入層9の上方に設置された点火炉10で装入層表層の炭材に点火するとともに、パレット8の直下に配設されたウインドボックス11を介して装入層上方の空気を下方に吸引することにより、装入層内の炭材を順次燃焼させ、このときに発生する燃焼熱で前記焼結原料を溶融して焼結ケーキを得る。このようにして得た焼結ケーキは、その後、破砕、整粒され、約5mm以上の塊成物が、成品焼結鉱として回収され、高炉に供給される。
上記製造プロセスにおいて、点火炉10によって点火された装入層内の炭材は、その後、装入層内を上層から下層に向かって吸引される空気によって燃焼を続け、厚さ方向に幅をもった燃焼・溶融帯(以降、単に「燃焼帯」ともいう。)を形成する。この燃焼帯の溶融部分は、上記吸引される空気の流れを阻害するため、焼結時間が延長して生産性が低下する要因となる。また、この燃焼帯は、パレット8が下流側に移動するのに伴って次第に装入層の上層から下層に移行し、燃焼帯が通過した後には、焼結反応が完了した焼結ケーキ層(以降、単に「焼結層」ともいう。)が生成される。また、燃焼帯が上層から下層に移行するのにともない、焼結原料中に含まれる水分は、炭材の燃焼熱で気化して、まだ温度が上昇していない下層の焼結原料中に濃縮し、湿潤帯を形成する。この水分濃度がある程度以上になると、吸引ガスの流路となる焼結原料の粒子間の空隙が水分で埋まり、溶融帯と同様、通気抵抗を増大させる要因となる。
図2は、厚さが600mmの装入層中を移動する燃焼帯が、装入層内のパレット上約400mmの位置(装入層表面から200mm下)にあるときの、装入層内の圧損と温度の分布を示したものであり、このときの圧損分布は、湿潤帯におけるものが約60%、燃焼帯におけるものが約40%であることを示している。
ところで、焼結機の生産量(t/hr)は、一般に、生産率(t/hr・m)×焼結機面積(m)により決定される。即ち、焼結機の生産量は、焼結機の機幅や機長、原料装入層の厚さ、焼結原料の嵩密度、焼結(燃焼)時間、歩留りなどにより変化する。したがって、焼結鉱の生産量を増加するには、装入層の通気性(圧損)を改善して焼結時間を短縮する、あるいは、破砕前の焼結ケーキの冷間強度を高めて歩留りを向上することなどが有効であると考えられている。
図3は、焼結鉱の生産性が高い時と低い時、即ち、焼結機のパレット移動速度が速い時と遅い時の装入層内のある点における温度と時間の推移を示したものである。焼結原料の粒子が溶融し始める1200℃以上の温度に保持される時間は、生産性が低い場合はT、生産性が高い場合はTで表されている。生産性が高い時はパレットの移動速度が速いため、高温域保持時間Tが、生産性が低い時のTと比べて短くなる。しかし、1200℃以上の高温での保持時間が短くなると焼成不足となり、焼結鉱の冷間強度が低下し、歩留りが低下してしまう。したがって、高強度の焼結鉱を、短時間でかつ高歩留りで、生産性よく製造するためには、何らかの手段を講じて、1200℃以上の高温で保持される時間を延長し、焼結鉱の冷間強度を高めてやる必要がある。
図4は、点火炉で点火された装入層表層の炭材が、吸引される空気によって燃焼を続けて燃焼帯を形成し、これが装入層の上層から下層に順次移動し、焼結ケーキが形成されていく過程を模式的に示した図である。また、図5(a)は、上記燃焼帯が、図4に示した太枠内に示した装入層の上層部、中層部および下層部の各層内に存在しているときの温度分布を模式的に示したものである。焼結鉱の強度は、1200℃以上の温度に保持される温度と時間の積に影響され、その値が大きいほど焼結鉱の強度は高くなる。そのため、装入層内の中層部および下層部は、装入層上層部の炭材の燃焼熱が吸引される空気によって運ばれて予熱されるため、高温度に長時間にわたって保持されるのに対して、装入層上層部は、予熱されない分、燃焼熱が不足し、焼結に必要な燃焼溶融反応(焼結反応)が不十分となりやすい。その結果、装入層の幅方向断面内における焼結鉱の歩留り分布は、図5(b)に示したように、装入層上層部ほど歩留りが低くなる。また、パレット両幅端部も、パレット側壁からの放熱や、通過する空気量が多いことによる過冷却によって、焼結に必要な高温域での保持時間が十分に確保できず、やはり歩留りが低くなる。
これらの問題に対して、従来は、焼結原料中に添加している炭材(粉コークス)量を増量することが行われてきた。しかし、コークスの添加量を増やすことによって、図6に示したように、焼結層内の温度を高め、1200℃以上に保持される時間を延長することができるものの、それと同時に、焼結時の最高到達温度が1400℃を超えるようになり、以下に説明する理由によって、焼結鉱の被還元性や冷間強度の低下を招くことになる。
非特許文献1には、焼結過程で焼結鉱中に生成する各種鉱物の引張強度(冷間強度)と被還元性について、表1のように示されている。そして、焼結過程では、図7に示したように、1200℃で融液が生成し始め、焼結鉱の構成鉱物の中で最も高強度で、被還元性も比較的高いカルシウムフェライトが生成する。これが、焼結温度として1200℃以上を必要とする理由である。しかし、さらに昇温が進んで1400℃を超え、正確には1380℃を超えるようになると、カルシウムフェライトは、冷間強度と被還元性が最も低い非晶質珪酸塩(カルシウムシリケート)と、還元粉化しやすい骸晶状二次ヘマタイトとに分解し始める。また、焼結鉱の還元粉化の起点となる二次ヘマタイトは、鉱物合成試験の結果から、図8の状態図に示したように、Mag.ss+Liq.域まで昇温し、冷却したときに析出するので、状態図上に示した(1)の経路でなく、(2)の経路を介して焼結鉱を製造することが、還元粉化を抑制する上で重要であるとしている。
Figure 0005825478
すなわち、非特許文献1には、焼結鉱の品質を確保する上で、燃焼時の最高到達温度や高温域保持時間などの制御が非常に重要な管理項目であり、これらの制御如何によって焼結鉱の品質がほぼ決定されることが開示されている。したがって、還元粉化性(RDI)に優れかつ高強度で被還元性に優れる焼結鉱を得るためには、1200℃以上の温度で生成したカルシウムフェライトを、カルシウムシリケートと二次ヘマタイトとに分解させないことが重要であり、そのためには、焼結時における装入層内の最高到達温度を1400℃超え、好ましくは1380℃超えとすることなく、装入層内の温度を1200℃(カルシウムフェライトの固相線温度)以上に長時間保持することが必要となる。以降、本発明では、上記1200℃以上1400℃以下の温度域に保持される時間を、「高温域保持時間」と称することとする。
なお、前述した装入層上層部の歩留低下を改善し、生産性を向上しようとする技術については、従来から幾つか提案されている。例えば、特許文献1には、焼結鉱を製造するに際して、焼結原料中に添加したコークスに加えて、焼結原料に吸引される空気中に発熱性ガスを添加し、これを焼結帯で燃焼させることによって、焼結鉱の強度や生産率、成品歩留りの向上を図る技術が提案されている。しかし、この特許文献1の技術は、コークスと気体燃料を燃焼させることによって焼結時の最高到達温度を高め、焼結鉱の強度や生産率、歩留りの向上を図っているため、成品焼結鉱の被還元性(RI)の悪化をきたすという問題がある。
また、特許文献2には、装入層上層部を十分に焼成した時点で、装入層に供給する酸素含有ガスの質量流量を、装入層上層部を焼成する範囲において供給する酸素含有ガスの質量流量の1.01〜2.6倍とし、装入層内の差圧を増加させて、燃焼溶融帯の移行速度を極端に加速し、生産率を増大するとともに製品歩留りおよび品質の優れた製品を得る方法が提案されている。しかし、この特許文献2の技術は、装入層の層厚の増加やパレット移動速度の増加が可能となり、焼結機の生産率を向上させることができるが、それは、燃焼溶融帯の移動速度と最高到達温度を高めることにもなるため、やはり、成品焼結鉱の被還元性の悪化を来たすという問題がある。
また、特許文献3には、パレット上の装入層の上層部が焼結する間に、装入層に吸引される燃焼用空気中の酸素濃度を35%以上に富化して焼結することにより、生産性および成品歩留りを向上させる酸素富化操業方法が提案されている。しかしながら、この特許文献3の技術は、燃焼空気中の酸素濃度を35%以上に富化することで、コークスの燃焼性を向上し、最高到達温度の上昇を図っているものの、燃焼性が向上する分、焼結に必要な1200℃以上の高温域保持時間が不足するようになるという問題がある。
そこで、発明者らは、上記問題点を解決する技術として、焼結原料中への炭材添加量を削減した上で、焼結機の点火炉の下流において、燃焼下限濃度以下に希釈した各種気体燃料を、パレット上方から装入層内に導入し、その気体燃料を装入層内で燃焼させることによって、装入層内の最高到達温度および高温域保持時間の両方を適正範囲に制御する技術を特許文献4〜6等に提案している。
上記特許文献4〜6の技術を適用し、焼結原料中への炭材添加量を削減した上で、燃焼下限濃度以下に希釈した気体燃料を装入層内に導入し、気体燃料を装入層内で燃焼させた場合には、図9に示したように、上記気体燃料は、炭材が燃焼した後の装入層内(焼結層内)で燃焼するので、燃焼・溶融帯の最高到達温度を1400℃超えとすることなく、燃焼・溶融帯の幅を厚さ方向に拡大させることができ、効果的に高温域保持時間の延長を図ることができる。
特公昭46−027126号公報 WO98/07891号公報 特開平02−073924号公報 特開2008−095170号公報 特開2010−047801号公報 特開2008−291354号公報
「鉱物工学」;今井秀喜、武内寿久禰,藤木良規編、(1976)、p.175、朝倉書店
しかしながら、上記特許文献4〜6の従来技術においては、高強度かつ被還元性に優れる、高品質の焼結鉱を得るためには、1200℃以上1400℃以下の高温域にどの程度の時間保持する必要があるのか、また、そのためには希釈した気体燃料をどの領域に供給すればよいのか、十分に明らかにされてはいなかった。
また、上記特許文献4〜6の技術で注意しなければならないことは、焼結にとって好ましい最高到達温度や高温域保持時間の範囲を決定するに際して、炭材や気体燃料を燃焼させる支燃性ガスとして酸素を21vol%含有する空気をそのまま用いていることである。というのは、実際の焼結中の装入層内は、炭材や気体燃料の燃焼反応によって、大気とは異なった雰囲気となっているはずであり、また、支燃性ガスの成分や組成が変われば、装入層内のガス雰囲気も変化し、焼結時の最高到達温度や高温域保持時間も、当然、変化するはずである。したがって、支燃性ガスの特性に応じて、焼結機の操業条件を変えてやる必要がある。しかしながら、従来技術では、支燃性ガスの特性、特に空気中に含まれる酸素量が、焼結性や焼結鉱の品質に及ぼす影響については、ほとんど検討がなされていない。
そこで、発明者らは、焼結に必要な高温域保持時間を明らかにし、気体燃料を供給すべき適正領域を決定すると共に、焼結時の最高到達温度や高温域保持時間に対する支燃性ガスの影響を調査し、炭材の燃焼熱で焼結するときの高温域保持時間が150秒未満となる領域に気体燃料を供給して高温域保持時間を延長すると共に、上記気体燃料供給領域で空気中の酸素濃度を21vol%超35vol%未満に富化することで、高強度で被還元性に優れる焼結鉱を製造する方法を開発し、特願2011−058651として出願した。
上記特願2011−058651に提案した技術では、気体燃料を供給する領域の装入層上方に設置されたフード内に酸素供給配管を配設し、酸素を大気中に噴出させることで酸素を富化しているが、上記酸素供給配管については特段の制限はなされていない。そのため、酸素供給配管として、例えば、一般の都市ガス配管として用いられている一般構造用圧延鋼材(SS鋼)からなる配管を用いた場合、何らかの原因で酸素供給配管の酸素噴出口(ノズルあるいは開口部)に着火したときには、その配管は、配管内を流れる高純度の酸素によって瞬く間に焼損し、重大な操業トラブルを引き起こすおそれがある。
そこで、本発明の目的は、酸素を富化する焼結操業を行う際、酸素による焼損のおそれのない酸素供給配管を有する焼結機を提供することにある。
発明者らは、上記課題の解決に向けて鋭意研究を重ねた。その結果、焼結機に酸素を供給する酸素供給配管の焼損のおそれのある部分を、銅合金製またはNi合金製の配管で構成してやることで、酸素による焼損を防止することに想到し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、循環移動するパレット上に粉鉱石と炭材を含む焼結原料を装入して装入層を形成し、点火炉でその装入層表面の炭材に点火すると共に、点火炉下流の装入層上方に設けられたフード内の大気中に酸素供給配管から酸素を噴出して富化し、さらに、燃焼下限濃度以下に希釈した気体燃料を含ませてなる空気をパレット下に配設したウインドボックスで吸引して装入層内に導入し、装入層内において上記気体燃料と炭材を燃焼させて焼結鉱を製造する焼結機において上記酸素供給配管の少なくともフード内に配設されてなる部分は、銅合金製および/またはNi合金製であることを特徴とする焼結機である。
本発明の焼結機は、上記酸素供給配管の少なくともフード内に配設されてなる部分は、銅を60mass%以上含有する銅合金製および/またはNiを60mass%以上含有するNi合金製であることを特徴とする。
また、本発明の焼結機は、上記酸素供給配管フード外かつフードの近傍に逆火防止器を設置してなることを特徴とする。
本発明によれば、下方吸引式のドワイトロイド焼結機における焼結鉱に製造において、酸素を安全に供給し富化することができる。したがって、本発明によれば、気体燃料と共に酸素を富化する焼結操業を安全に行うことができるので、高強度で被還元性に優れる、高品質の高炉原料用焼結鉱を安定して製造することが可能となる。
焼結プロセスを説明する概要図である。 焼結層内における温度分布と圧損分布を説明するグラフである。 高生産時と低生産時における装入層内の温度分布を説明する図である。 焼結進行に伴う装入層内の変化を説明する模式図である。 燃焼帯が装入層の上層部、中層部および下層部の各位置に存在しているときの温度分布と、装入層の幅方向断面内における焼結鉱の歩留り分布を説明する図である。 炭材量の変化(増量)による装入層内の温度変化を説明する図である。 焼結反応を説明する図である。 骸晶状二次ヘマタイトが生成する過程を説明する図である。 気体燃料供給による焼結層内の温度分布の変化を説明する図である。 気体燃料と酸素を供給する気体燃料供給装置の一例を説明する図である。 酸素濃度と流速が焼損に及ぼす影響を定性的に説明する図である。 気体燃料と酸素を供給する気体燃料供給装置の配管系統を説明する図である。
本発明の技術を適用する焼結機は、下方吸引式の焼結機を用いて、循環移動するパレット上に粉鉱石と炭材を含む焼結原料を装入して装入層を形成し、点火炉でその装入層表面の炭材に点火すると共に、点火炉下流の装入層上方に設けられたフード内の、燃焼下限濃度以下に希釈した気体燃料を含む空気を、パレット下に配設されたウインドボックスで吸引して装入層内に導入し、その装入層内において上記気体燃料と炭材を燃焼させて焼結鉱を製造する焼結機である。したがって、上記の点においては、特許文献4〜6に開示された技術と同じである。
したがって、気体燃料を供給する場合には、炭材の燃焼熱で焼結するときに1200℃以上に保持される高温域保持時間が不足する領域において供給すると共に、最高到達温度が1400℃を超えないよう、供給する気体燃料の量に応じて、焼結原料中に添加する炭材量を削減しておくことが好ましい。
ここで、装入層内に供給する気体燃料は、その気体燃料の燃焼下限濃度以下に希釈したものであることが好ましい。希釈気体燃料の濃度が燃焼下限濃度より高いと、装入層上方で燃焼してしまい、気体燃料を供給する効果が失われてしまったり、爆発を起こしたりするおそれがある。また、希釈気体燃料が高濃度であると、低温度域で燃焼してしまうため、高温域保持時間の延長に有効に寄与し得ないおそれがあるからである。したがって、希釈した気体燃料の濃度は、好ましくは大気中の常温における燃焼下限濃度の3/4以下、より好ましくは燃焼下限濃度の1/5以下、さらに好ましくは燃焼下限濃度の1/10以下である。ただし、希釈気体燃料の濃度が、燃焼下限濃度の1/100未満では、燃焼による発熱量が不足し、焼結鉱の強度向上と歩留りの改善効果が得られないため、下限は燃焼下限濃度の1%とする。これを、天然ガス(LNG)についてみると、LNGの室温における燃焼下限濃度は4.8vol%であるから、希釈気体燃料の濃度は0.05〜3.6vol%の範囲が好ましく、0.05〜1.0vol%の範囲がより好ましく、0.05〜0.5vol%の範囲がさらに好ましいことになる。
また、本発明の技術を適用する焼結鉱の製造方法は、特願2011−058651と同様、気体燃料を供給すると共に酸素を富化するところに特徴がある。その理由は、酸素を富化することによって、焼結時のガス雰囲気が酸化方向に移行する結果、焼結によって焼結鉱中の生成するカルシウムフェライトの生成割合が増大し、カルシウムシリケートの生成割合が低減するので、高強度でかつ還元性に優れる焼結鉱を得ることができること、また、気体燃料と酸素富化を同時に行うことで、焼結反応を高めて焼結時間を短縮できるだけでなく、気体燃料と焼結原料中の炭材の燃焼位置をより低温度側に移行させて装入層内の温度分布曲線を裾野の広いものとし、高温域保持時間を延長することができるので、生産率を上昇させた上で、焼結鉱の品質改善を図ることができるからである。
上記酸素富化による効果は、装入層内の吸引する空気中に含まれる酸素濃度を、大気中の酸素濃度(21vol%)超えとしてやれば少量でも得ることができるが、24.5vol%以上に富化してやるのが好ましい。一方、空気中の酸素濃度が35vol%以上となると、酸素富化に要するコストが、享受する利益を上回るようになる。よって、富化する酸素量は、空気中の酸素濃度が21vol%超35vol%未満の範囲となるよう添加するのが好ましい。より好ましくは24.5〜30vol%、さらに好ましくは、24.5〜28vol%の範囲である。
上記酸素を富化する方法(装置)については、特に制限はないが、例えば、発明者らが先に出願した特願2011−058651には、図10に示したように、気体燃料として高濃度の生ガスを用いる気体燃料供給装置に、酸素供給配管を設けて酸素富化する装置図が例示されている。この装置は、気体燃料を供給する領域の装入層上方に設置されたフードの高さ方向中間部に、間隙を有して1段以上の邪魔板を配設し、その邪魔板の下方に気体燃料供給配管を配設して、生の気体燃料を吹き消え現象が起こる高速で水平方法に噴出して瞬時に燃焼下限濃度以下の希釈気体燃料とするとともに、上記邪魔板の上方に酸素供給配管を配設し、酸素を邪魔板の方向に向けて供給するものである。
そしてこの装置では、酸素供給配管から供給される酸素は、邪魔板の間隙を通過する間に、富化する目標濃度まで均一に希釈された後、気体燃料と合流するため、高濃度の酸素と気体燃料とが直接接触するのを防止できるように設計されている。なお、上記配管から供給する酸素は純酸素でなくてもよい。
ここで、気体燃料供給パイプの上方に配設してある邪魔板は、LNG等の気体燃料は空気より軽いため、フード上方に漏洩散失するのを防止するためである。なお、酸素は、気体燃料より比重が大きいため、強風が吹かない限り、フード外へ拡散する虞は少ない。
しかしながら、上記酸素富化装置において懸念される点は、焼結機はコークスと気体燃料を燃焼させた燃焼熱で焼結原料を焼結するものであるため、火種は常に存在しているということである。そのため、例えば、酸素供給配管が、一般に都市ガスの配管に用いられている一般構造用圧延鋼材(SS鋼)等であった場合には、例え、禁油処理が施されていたとしても、何らかの原因で酸素供給配管の酸素噴出口(ノズルあるいは開口部)に着火したときには、鉄と酸素との反応熱によって、瞬く間にバルブスタンドまでの酸素供給配管が焼損してしまうおそれがある。
なお、気体燃料供給配管から噴出される気体燃料は、噴出口から吹き消え現象が起こる高速で噴出させるため、着火を防止することができる。また、着火したとしても、そこで燃焼するだけであり、配管自体が焼損してしまうことはない。また、酸素は、気体燃料と比較して供給量が多量であるため、高濃度の酸素を大きな噴出口から10m/秒以上の高速で噴出させている。しかし、酸素による焼損は、一般に、図11に示すように、酸素濃度が高いほど、また、流速が大きいほど起こり易いとされているので、配管の焼損対策が重要となる。
そこで、本発明では、上記のような酸素供給配管の焼損を防止するため、酸素供給配管の少なくとも火種が存在するフード内(ヘッダ、分岐管およびノズル等)に配設されている部分を、銅合金製および/またはNi合金製の配管とすることとした。これは、銅合金あるいはNi合金は、鉄よりもイオン化傾向が小さいため、配管内に着火源となる錆が生成し難いこと、また、これらの合金は、表面に酸素を透過させ難い緻密な酸化膜を形成するため、それ以上の酸化の進行を抑制し焼損が起こり難いからである。
上記の観点から、上記銅合金はCuを60mass%以上含有するものが好ましく、例えば、Cuを60〜70%含有するCu−Zn合金(黄銅)、Cuを70〜90%含有するCu−Ni合金(白銅、キュプロニッケル)、Cuを65〜98%含むCu−Sn合金(青銅)、Cu:60mass%−Ni:20mass%−Fe:20mass%のクニフェやCuに2mass%程度のBeを含むBe銅などが挙げられる。また、Ni合金としては、Niを60mass%以上含有するものが好ましく、例えば、インコネル、モネル、ニクロム等が挙げられる。中でも、銅や純Niは、耐酸化性に優れているのでより好ましい。参考として、表2に、各種合金の500℃以上の高温酸化雰囲気における耐酸化性を示した。
Figure 0005825478
図12は、図10の気体燃料供給装置の気体燃料と酸素の供給配管系統を示した模式図であり、例えば、酸素の場合について説明すると、酸素は、酸素供給本管によってヘッダまで供給され、さらに、ヘッダに取り付けられた複数の分岐管に供給されて、分岐管に複数取り付けられたノズルあるいは複数設けられた開口部から噴出されることを示している。本発明では、上記酸素供給配管のすべてを銅合金あるいはNi合金からなるものとする必要はないが、少なくとも火種に近いフード内の配管(分岐管およびノズル等)については、銅合金製あるいはNi合金製とする必要がある。安全性をより高めるためには、ヘッダや酸素供給本管についても、銅合金製あるいはNi合金製とするのが好ましい。
さらに、図12に示したように、酸素供給本管のフード外でかつフード近傍の位置に、逆火防止器(フレームアレスタ)を設けることが好ましい。これにより、さらに安全性を高めることができる。この逆火防止器については、特に制限はないが、例えば、逆火弁や乾式安全器等を好適に用いることができる。また、可燃性ガスに用いられる逆火防止器を用いてもよい。この場合、逆火防止器からヘッダ間も銅合金製あるいはNi合金製とするのが好ましい。
なお、逆火防止器より上流側の酸素供給配管については、通常の鋼製ガス配管を用いることができるが、SUS製でかつ禁油処理を施したものを用いるのが好ましい。
1:原料ホッパー
2:ドラムミキサー
3:ロータリーキルン
4、5:サージホッパー
6:ドラムフィーダー
7:切り出しシュート
8:パレット
9:装入層
10:点火炉
11:ウインドボックス
12:カットオフプレート

Claims (3)

  1. 循環移動するパレット上に粉鉱石と炭材を含む焼結原料を装入して装入層を形成し、点火炉でその装入層表面の炭材に点火すると共に、点火炉下流の装入層上方に設けられたフード内の大気中に酸素供給配管から酸素を噴出して富化し、さらに、燃焼下限濃度以下に希釈した気体燃料を含ませてなる空気をパレット下に配設したウインドボックスで吸引して装入層内に導入し、装入層内において上記気体燃料と炭材を燃焼させて焼結鉱を製造する焼結機において
    上記酸素供給配管の少なくともフード内に配設されてなる部分は、銅合金製および/またはNi合金製であることを特徴とする焼結機。
  2. 上記酸素供給配管の少なくともフード内に配設されてなる部分は、銅を60mass%以上含有する銅合金製および/またはNiを60mass%以上含有するNi合金製であることを特徴とする請求項1に記載の焼結機。
  3. 上記酸素供給配管のフード外かつフードの近傍に逆火防止器を設置してなることを特徴とする請求項1または2に記載の焼結機。
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