JP5428196B2 - 焼結鉱の製造方法および焼結機 - Google Patents

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Description

本発明は、下方吸引式のドワイトロイド(DL)焼結機を用いて、高炉原料用焼結鉱を製造する方法、およびこの方法に用いる焼結機に関するものである。
高炉製銑法の主原料である焼結鉱は、一般に、図1に示すような工程を経て製造される。即ち、製造に当っては、まず、図1に示すように、鉄鉱石粉や製鉄所内回収粉、焼結鉱篩下粉、石灰石、ドロマイトなどの含CaO系副原料、生石灰等の造粒助剤、およびコークス粉、無煙炭などからなる原料等を、これらを収容した各ホッパー1・・・から、コンベヤ上に所定の割合で切り出し、これらをドラムミキサー2等により混合しながら適量の水を加えて調湿したのち造粒(平均径:3.0〜6.0mmの擬似粒子)して焼結原料とする。次いで、このようにして得られた焼結原料を、焼結機上に配置されているサージホッパー4、5からドラムフィーダー6と切り出しシュート7を介して、無端移動式の焼結機パレット8上に、400〜800mm前後の厚さ(高さ)になるように装入堆積して装入層(焼結ベッドともいう)を形成し後、その装入層9の上方に設置した点火炉10により、この装入層中にある炭材に点火する。そして、前記パレット8下に配設されているウインドボックス11を介して下方に向かう吸引により、該装入層中の炭材を順次に燃焼させ、このときに発生する燃焼熱によって、前記焼結原料を燃焼、溶融させて、焼結ケーキを生成させる。その後、得られた焼結ケーキは、破砕し、整粒して、5.0mm以上の塊成物を得て成品焼結鉱として回収する。
前記製造プロセスにおいては、まず、点火炉10により装入層(焼結原料が堆積している部分)の表面に点火が行われる。これによって、装入層中の炭材は、ウインドボックスにより装入層の上層部から下層部方向へ吸引される吸引ガスの作用により燃焼するとともに、その燃焼がパレット8の移動と相俟って次第に下層にかつ前方に進む。それと同時に、該装入層の焼結原料粒子に含まれる水分は、炭材の燃焼で発生する熱によって蒸発して下方に吸引され、まだ温度が上昇していない下層の焼結原料中に濃縮し湿潤帯を形成する。その濃度がある程度以上に大きくなると、吸引ガスの流路となる原料粒子間の空隙を水分が埋めるようになるため、通気抵抗が増大する。なお、焼結化反応に必要な燃焼・溶融帯の溶融部分も通気抵抗増大の要因となる。
焼結鉱の生産量(t/hr)は、一般に、焼結生産率(t/hr・m)×焼結機面積(m)で決定される。即ち、生産量は、焼結機の機幅や機長、原料堆積層の厚さ(装入層厚さ)、焼結原料の嵩密度、焼結(燃焼)時間、歩留などにより変化する。そして、焼結鉱の生産量を増加させるには、装入層の通気性(圧損)を改善して焼結時間を短縮する、あるいは破砕前の焼結ケーキの冷間強度を向上させて歩留を向上することなどが有効であると考えられている。
図2は、厚さが600mmの装入層中を移動する燃焼(火炎)前線が、該装入層のパレット上約400mm(装入層表面から200mm)の位置にあるときにおける装入層内の圧損と温度の分布を示したものである。このときの圧損分布は、湿潤帯におけるものが約60%、燃焼・溶融帯におけるものが約40%である。
図3は、焼結鉱の高生産時と低生産時の装入層内の温度分布を示したものである。この図からわかるように、焼結鉱の製造に当たり、生産性を重視(高生産)する場合、パレットの移動速度を上げるため、原料粒子が溶融し始める1200℃以上の温度に保持される時間t(以降、「高温域保持時間」とも言う)が、低生産時の高温域保持時間tと比べて短くなり、そのために焼成不足を招いて焼結鉱の冷間強度が低下し、歩留が低下する傾向となる。したがって、高強度焼結鉱の生産量を高めるには、何らかの方法により、焼結ケーキの強度、即ち焼結鉱の冷間強度を上げて歩留の維持、向上を図ることが有効となる。なお、焼結鉱冷間強度にはSI(シャッターインデックス)、TI(タンブラーインデックス)が一般に用いられている。
図4(a)は焼結機パレット上の装入層における焼結の進行過程を、図4(b)は装入層内の上層部、中層部、下層部の焼結過程における温度分布(ヒートパターン)を、図4(c)は焼結ケーキの歩留分布を示したものである。図4(b)からわかるように、装入層の上層部は下層部に比べて温度が上昇し難く、高温域保持時間も短くなる。そのため、この装入層上部では、燃焼溶融反応(焼結化反応)が不十分となって焼結ケーキの強度が低くなるため、図4(c)に示すように、歩留が低く、生産性の低下を招く要因となっている。
こうした問題点に鑑み、装入層上層部に高温保持を付与するための方法が従来から提案されている。例えば、特許文献1は、装入層に点火後、装入層上に気体燃料を噴射する技術を開示している。しかし、上記技術は、気体燃料(可燃性ガス)の種類が不明であるが、プロパンガス(LPG)や天然ガス(LNG)であるとしても、高濃度のガスを使用している。しかも、可燃性ガスの吹き込みに際し、炭材量を削減していないため、焼結層内が、1380℃を超える高温となる。そのため、この技術では、十分な冷間強度の向上や歩留の改善効果を享受できていない。しかも、点火炉直後に可燃性ガスを噴射した場合には、可燃性ガスの燃焼により焼結ベッド上部空間で火災を起こす危険が高く、現実性に乏しい技術であって、実用化には至っていない。
また、特許文献2も、装入層に点火後、装入層に吸引される空気中に可燃性ガスを添加する技術を開示している。点火後、約1〜10分程度の供給が好ましいとされているが、点火炉での点火直後の表層部は、赤熱状態の焼結鉱が残存しており、供給の仕方によっては可燃性ガスの燃焼により火災を起こす危険が高く、また、具体的記述は少ないが、焼結済みの焼結帯で可燃ガスを燃焼させても効果は無く、焼結帯で燃焼すると、燃焼ガスによる温度上昇と熱膨張により通気性を悪化させるため、生産性を低減させてしまう傾向にあるので、これまで実用化には至っていない。
また、特許文献3は、焼結原料の装入層内を高温にするため、装入層の上にフードを配設し、そのフードを通じて空気やコークス炉ガスとの混合ガスを点火炉直後の位置で吹き込むことを開示している。しかし、この技術も、焼結層内の燃焼溶融帯の温度が1380℃を超える高温となるため、コークス炉ガス吹き込みの効果を享受できないとともに、可燃性混合ガスが焼結ベッド上部空間で発火し、火災を起こす危険性があり、実用化されていない。
さらに、特許文献4は、低融点溶剤と炭材や可燃性ガスを同時に、点火炉直後の位置で吹き込む方法を開示している。しかし、この方法もまた、表面に火炎が残留した状態で可燃性ガスを吹き込むため、焼結ベッド上部空間で火災になる危険性が高く、また、焼結帯の幅を十分に厚くできない(約15mm未満)ため、可燃性ガス吹き込みの効果を十分に発現することができない。さらに、低融点溶剤が多く存在するため、上層部において過剰な溶融現象を引き起こして、空気の流路となる気孔を閉塞してしまい、通気性を悪化させて、生産性の低下を招くことから、この技術もまた、現在に至るまで実用化されていない。
以上説明したように、これまで提案された従来技術は、いずれも実用化されておらず、実施可能な可燃性ガス吹込み技術の開発が切望されていた。
特開昭48−18102号公報 特公昭46−27126号公報 特開昭55−18585号公報 特開平5−311257号公報
ところで、焼結鉱の品質は、燃焼時の最高到達温度や高温域保持時間などによって決定されることから、これら最高到達温度や高温域保持時間の制御が重要である。この点について、特許文献1に記載の方法は、気体燃料を装入層の表面で燃焼させることにより、焼結手段の前半部分の該装入層上部温度を高める技術である。しかし、この方法では、気体燃料の濃度が高く、そのために燃焼を支える空気(酸素)量が不足し、焼結原料の炭材(コークス)の燃焼低下を招くおそれがあり、焼結鉱の品質改善が果せないという問題がある。
また、特許文献2にしても具体性に乏しく、供給の仕方によっては、火災を起こす危険が高く、また、焼結済みの焼結帯位置では可燃性ガスを燃焼させても効果は無く、これまで実用化されていない。
さらに、特許文献3に記載の方法は、焼結原料の装入層内を高温にするために、この装入層の上にフードを配設し、そのフードを通じて空気とコークス炉ガスとの混合ガスを点火炉直後の位置で吹き込む技術である。しかし、コークス比をそのままにして、混合ガスを吹き込むと、高温保持時間の延長と共に、最高到達温度も上昇するため、ガラス質の低強度鉱物が多く生成し、混合ガス吹き込みの効果を享受できなくなる。また、可燃性混合ガスが発火し、火災を起こす危険性があり、実用化されていない。
また、特許文献4に記載された方法は、空気(酸素)量を増加させると共に、低融点溶材や炭材を混合しているため、可燃性ガスおよびコークスの燃焼速度は大きくなるものの、低融点溶材や粉体を一緒に吹き込むため、燃焼用空気の通気性が低下するという問題点がある。
本発明の目的は、下方吸引式焼結機の操業において、気体燃料を供給し、これを焼結中の装入層(焼結層)中で燃焼させることで、装入層全体の通気性を悪化させることなく、高強度の焼結鉱を高歩留で製造する方法、および、この方法の実施に当たって用いられる焼結機を提供することにある。
上記目的の実現に向けた研究の中で、発明者らは、以下に述べるような焼結鉱の製造方法を開発した。この方法の基本的な考え方は、気体燃料を装入層上方の空気存在下で吐出して燃焼下限濃度以下の適切な濃度に希釈し、その適切な濃度に希釈された希釈気体燃料を装入層の下方から吸引して装入層中に導入し、装入層中の焼結進行過程の領域でその希釈気体燃料を燃焼させること、その際に、希釈気体燃料の供給位置を調整したり、焼結鉱の品質を決定する上で有効な最高到達温度や高温域保持時間などを調整したりして焼結することにあり、望ましくは、このときに該焼結原料中の炭材量を併せて考慮することにある。
即ち、本発明は、循環移動するパレット下にウインドボックスを配設してなる下方吸引式焼結機により、そのパレット上に堆積させた焼結原料装入層の上から気体燃料を供給して焼結鉱を製造する方法において、前記気体燃料を複数の気体燃料供給パイプから装入層上方の空気中に高速で吐出して燃焼下限濃度の25%以下にした希釈気体燃料を装入層中に導入し、400〜800℃の温度で燃焼させることにより焼結原料を焼成する焼結原料中の炭材量、前記希釈気体燃料の濃度および装入層中への導入位置のいずれか1以上を変えることによって、焼結層内の最高到達温度を1200℃超え1380℃未満に制御する、および/または、高温域保持時間の延長を図ることを特徴とする焼結鉱の製造方法である。
また、本発明方法において、前記希釈気体燃料の導入位置は、該装入層中の炭材への点火後であること、前記希釈気体燃料の導入位置は、パレット移動方向における点火炉出側で、装入層表層に焼結ケーキが生成しかつ燃焼前線が装入層表層下に進行した段階から焼結が完了するまでの間の1ヶ所以上であることを、前記希釈気体燃料の装入層中への導入は、燃焼・溶融帯の厚さが15mm以上となる領域において行うこと、前記希釈気体燃料の装入層中への導入は、燃焼前線が装入層表層下100mm(好ましくは200mm)に達した位置以降で行うこと、前記希釈気体燃料の装入層中への導入は、該装入層の両サイドウォール近傍における低歩留まり部で多く行うこと、装入層中に導入する前記希釈気体燃料は、少なくともその一部が未燃焼のまま、前記装入層中の燃焼・溶融帯まで到達するようにすること、装入層中の燃焼・溶融帯への気体燃料の導入は、該燃焼・溶融帯の高さ方向の厚みおよび/またはパレット移動方向の幅を拡大し、および/または、高温域保持時間を延長することによって、装入層内の所定の領域の成品焼結鉱の冷間強度を向上するために行こと、前記気体燃料は、高炉ガス、コークス炉ガス、高炉・コークス炉混合ガス、都市ガス、天然ガス、メタン、エタン、プロパンあるいはブタンガス、またはこれらの混合ガスのいずれかであること、が有効である。なお、本発明において、装入層とは、焼結原料充填層ともいい、また、希釈気体燃料を燃焼させる領域は、焼結ケーキが生成されつつあるあるいは生成された、いわゆる、焼結層領域を指す。
以下、さらに詳しく説明する。本発明に係る製造方法の特徴の1つは、焼結原料装入層中に可燃性ガスを希釈した前記希釈気体燃料を導入するに当たり、その希釈気体燃料に含まれる燃焼成分の濃度を、大気中の常温における燃焼下限濃度の75%以下、より好ましくは60%以下、さらに好ましくは25%以下の濃度にまで希釈することにある。それは、前記気体燃料そのものの装入層上部への供給は、時として、爆発的燃焼を招くおそれがあるので、少なくとも常温では、火種があっても燃焼しない状態にするため、さらに、焼結機上(装入層中)で完全に燃焼することなく、未燃焼のままで焼結機の下流側にある電気集塵器に達したとしても、電気集塵器の放電下で燃焼を起こすおそれがない状態にするためである。なお、後述するように、この気体燃料の濃度は、焼結原料中の総炭材(固体燃料+気体燃料)の燃焼に必要な空気(酸素)の不足を招いて、燃焼不足とならない程度に希釈されたものを用いる必要がある。また、気体燃料は、その濃度を炭材量(固体燃料)に応じて調節する。さらに、後述するように、気体燃料は、これを希釈することにより、装入層中の所定位置で燃焼するよう制御することができる。
本発明の上記製造方法では、装入層への前記希釈気体燃料の供給(導入)は、該装入層中の炭材への点火後、とくに装入層上部に、焼結原料が焼成されて焼結層(焼結ケーキの層)が生成する位置以降の任意の位置で行う。その理由は、たとえば、点火直後の位置では、表層上で単に燃焼が起こるだけであり、焼結層に何ら影響を与えることがないからである。従って、表層下に燃焼・溶融帯が下がった(移動した)段階で前記気体燃料の供給を開始する。そして、燃焼・溶融帯の領域でこの気体燃料が燃焼するように、気体燃料の濃度を燃焼下限濃度以下に希釈した可燃性ガスを供給するようにしたのである。
装入層最高到達温度または高温域保持時間のいずれかを調整するためには、前記燃焼・溶融帯の厚みが少なくとも15mm以上、好ましくは20mm以上、より好ましくは30mm以上になる条件下で希釈気体燃料の導入を行うことが好ましい。15mm未満ないし20mm未満では、ウインドボックスにより焼結層(焼結ケーキ)を通して吸引される大気(大気と気体燃料の混合気体)による冷却によって、気体燃料を供給し、燃焼させても燃焼・溶融帯の厚みの拡大を伴わず、気体燃料供給の効果が不十分となる。前記燃焼・溶融帯の厚みが15mm以上、好ましくは20mm以上、より好ましくは30mm以上となる段階で気体燃料を希釈して供給すると、燃焼・溶融帯の厚みが大きく拡大し、その結果、高温域保持時間を延長することができる。
なお、前記燃焼・溶融帯の厚みの確認は、例えば、透明石英製窓付き竪型管状試験鍋を用いて行うことができ、前記希釈気体燃料の供給位置の決定等に役立つ。
以上説明したとおり、前記希釈気体燃料の供給(導入)は、燃焼前線が装入層の表層下に下がり、燃焼・溶融帯が表層から100mm以上、好ましくは200mm以上下がった中・下層部領域で行うことが好ましい。すなわち、前記希釈気体燃料の供給は、前記装入層中に焼結ケーキが生成した後で、燃焼前線が表層から100mm下がった段階(未燃焼のままそこの領域に到達するように)で初めて燃焼するように行うことが好ましい。その理由は、100mm以上下がった位置であれば、焼結層を通して吸引される大気による冷却の悪影響が軽減されて、燃焼・溶融帯の厚み拡大が得られ、さらに200mm以上下がった位置であれば、大気による冷却の悪影響はほぼ解消されて、燃焼・溶融帯の厚みは30mm以上に拡大することができる。また、希釈気体燃料の供給は、焼成不足による歩留り低下の著しいサイドウォール近傍の幅方向(パレット進行方向に直行する方向)両端部で行うことが好ましい。
なお、本発明においては、気体燃料の供給を燃焼前線が装入層表層下に下がった段階で行う理由は、装入層の上部に未だ焼結ケーキが生成していない状態で気体燃料の供給を行うと、該装入層上で爆発的な燃焼が起こる危険があること、および、歩留りを向上させたい部分を対象に供給すること、即ち、焼結鉱強度を上昇させたい部分を対象に気体燃料を供給することが有効だからである。なお、気体燃料供給装置の設置位置は、焼結機の規模によっても異なるが、例えば、気体燃料供給量1000〜5000m(標準)/hr、生産量が約1.5〜2万t/日、機長が90mの規模の焼結機であれば、点火炉の下流側約5m以降の位置に配置することが好ましい。
本発明に係る製造方法では、前記希釈気体燃料の供給位置、即ち、装入層中への導入位置は、パレット移動方向における点火炉出側でかつ焼結ケーキが生成した後の、いわゆる燃焼前線が表層下に進行した位置(例えば、表層下100mm以上、好ましくは200mm程度以下で気体燃料の燃焼が起こる位置)から焼結が完了するまでの間の、1ヶ所以上の任意の位置で行うことが好ましい。このことは、上述したように、燃焼前線が装入層の表層下に移った段階で該気体燃料の導入を開始することを意味しており、その結果、気体燃料の燃焼が装入層の内部で起り、そして次第により下層に移るので、爆発のおそれがなく、安全な焼結操業が可能になることを意味している。
本発明に係る製造方法では、装入層中への希釈気体燃料の導入(供給)は、また、生成した焼結ケーキを再加熱することになることも意味している。即ち、希釈気体燃料の供給は、もともと高温域保持時間が短く熱不足になりやすいために、焼結鉱(焼結ケーキ)の冷間強度が低くなる部分に対して、固体燃料の供給に比べて反応性の高い気体燃料を供給することによって、燃焼・溶融帯の再生−拡大を図り、不足しやすいこの部分の燃焼熱を補填するという意義を担うものだからである。
上述したことから判るように、本発明に係る製造方法では、点火後の装入層上部から導入した前記気体燃料の少なくとも一部を、未燃焼のまま、燃焼・溶融帯まで導入して、ターゲット位置で燃焼するようにすることが好ましい構成となる。それは、気体燃料の供給、即ち装入層中への導入の効果を単に装入層上部のみならず、厚み方向の中央部である燃焼・溶融帯にまで波及させることがより効果的と考えられるからである。それは、気体燃料の供給が、熱不足(高温域保持時間の不足)になりやすい装入層の上層部で行われると、十分な燃焼熱を提供することになり、この部分の焼結ケーキの品質を改善することができ、さらに、気体燃料供給作用が、中層部以下の帯域にまで波及するようにすると、本来の燃焼・溶融帯の上に再燃焼・溶融帯を形成するのに等しい結果となり、この帯域の上下方向の厚み拡大ができ、その結果、最高到達温度を上げることなく、高温域保持時間の延長を果すことが可能になり、パレットの移動速度を落すことなく十分な焼結を実現することができるからである。その結果、装入層全体の焼結ケーキの品質が改善され、ひいては成品焼結鉱の品質(冷間強度)の向上と生産性の向上につながることになる。
本発明は、前記希釈気体燃料の供給を、その供給の作用・効果を装入層中のどこに及ぼすかという観点から、その供給位置を決定する点に第1の特徴があり、またこの燃料の供給とともに、装入層内における最高到達温度や高温域保持時間を、熱量一定基準の下で固体燃料の量に応じてどの程度に制御するかという点に第2の特徴がある。
従って、本発明において、希釈気体燃料を装入層中へ導入(供給)するに当っては、その供給位置を調整するだけでなく、燃焼・溶融帯自体の形態を制御し、ひいては、燃焼・溶融帯における最高到達温度および/または高温域保持時間をも制御するようにすることが好ましい構成である。
一般に、点火後の装入層では、パレットの移動に伴って燃焼(火炎)前線が次第に下方にかつ前方(下流側)に拡大していく中で、燃焼・溶融帯の位置が図4(a)に示すように変化する。そして、図4(b)に示すように、焼結層内の焼結過程で受ける熱履歴は、上層、中層、下層で異なり、上層〜下層間では、高温域保持時間(約1200℃以上となる時間)は大きく異なる。その結果、パレット内の位置別焼結鉱の歩留まりは、図4(c)に示すような分布を示す。即ち、表層部(上層部)の歩留は低く、中層、下層部で高い歩留分布となる。そこで、本発明方法に従って、前記気体燃料を供給すると、燃焼・溶融帯は、上下方向の厚みやパレット進行方向の幅などが拡大し、これが成品焼結鉱の品質向上に反映されるのである。そして、高い歩留分布となる中層部や下層部は、さらに高温域保持時間を制御できるため、歩留をより上昇させることができる。
前記気体燃料の供給(導入)位置を調整することにより、燃焼・溶融帯の形態、即ち、燃焼・溶融帯の高さ方向の厚さおよび/またはパレット移動方向の幅を制御できると共に、最高到達温度や高温域保持時間を制御することができる。これらの制御は、本発明の効果をより一層際立たせて、燃焼・溶融帯の上下方向の厚さやパレット移動方向の幅の拡大や、最高到達温度、高温域保持時間の制御を通じて、常に十分な焼成を果し、成品焼結鉱の冷間強度の向上に有効に寄与する。
また、本発明において、装入層中への前記気体燃料の供給(導入)は、成品焼結鉱全体の冷間強度を制御するためであると言うこともできる。すなわち、希釈気体燃料を供給するそもそもの目的は、焼結ケーキ、ひいては焼結鉱の冷間強度を向上させることにあり、とくに、気体燃料の供給位置制御や、焼結原料が燃焼・溶融帯に滞在する時間である高温域保持時間の制御、最高到達温度の制御を通じて、焼結鉱の冷間強度(シャッターインデックスSI)を75〜85%程度、好ましくは80%以上、より好ましく90%以上にすることである。
この強度レベルは、本発明では、とくに前記希釈気体燃料の濃度、供給量、供給位置および供給範囲を、好ましく焼結原料中の炭材量を考慮した(投入熱量を一定にする条件下で)上で調整することによって、安価に達成することができる。なお、焼結鉱の冷間強度の向上は、一方で、通気抵抗の増大と生産性の低下を招くことがあるが、本発明では、そうした問題を最高到達温度や高温域保持時間をも制御することによって解消した上で、焼結鉱の冷間強度を向上させる。なお、実機焼結機によって製造された焼結鉱の冷間強度SI値は、鍋試験で得られる値よりもさらに10〜15%高い値を示す。
本発明の製造方法において、パレット移動方向における前記希釈気体燃料の装入層中への導入位置は、装入層中に生成した焼結ケーキから湿潤帯までの間の任意の帯域における焼結鉱の冷間強度をどのようにするかということを基準とする。この制御のために、本発明では、気体燃料供給装置の規模(大きさ)、数、位置(点火炉からの距離)、ガス濃度を、好ましくは焼結原料中の炭材量(固体燃料)に応じて調整することにより、主として燃焼・溶融帯の大きさ(上下方向の厚さおよびパレット移動方向の幅)のみならず、高温到達温度、高温域保持時間をも制御し、このことによって、装入層中に生成する焼結ケーキの強度を制御する。
本発明の上記製造方法において、装入層中に供給する気体燃料としては、高炉ガス、コークス炉ガス、高炉−コークス混合ガス、都市ガス、天然ガスあるいはメタン、エタン、プロパン、ブタンガス、またはこれらの混合ガスのいずれかを用いることが好ましい。これらは、いずれも燃焼成分を含有しており、これらの気体燃料のいずれかを空気中に高速で吐出させて空気と混合して希釈し、燃焼下限濃度の75%程度以下の希釈気体燃料として装入層中に供給(導入)する。
また、本発明の製造方法の実施に当っては、焼結原料の装入層を載せて循環移動するパレット下に吸引用ウインドボックスを配設し、そのパレット上には原料供給装置とこの装置のパレット進行方向下流側には点火炉を備えてなる下方吸引式DL焼結機において、前記点火炉の下流側に、複数の気体燃料供給パイプから気体燃料を装入層上方の空気中に高速で吐出して燃焼下限濃度の25%以下に希釈した希釈気体燃料を該装入層中に導入し、400〜800℃の温度で燃焼させるための気体燃料供給装置を配設してなる焼結機を用いる。
本発明の焼結機における前記気体燃料供給装置は、点火炉の下流側かつ燃焼・溶融帯が装入層中を進行する過程におけるパレット進行方向のいずれかの位置に1以上配設してなること、または、前記気体燃料供給装置は、パレット移動方向における点火炉出側での燃焼前線が装入層表層下に進行した段階から焼結が完了するまでの間の1以上の位置に配設してなること、前記気体燃料供給装置は、両サイドウォール近傍における低歩留り部に重点的に配設してなるとが好ましい。
また、本発明において、前記気体燃料供給装置は、希釈気体燃料を装入層内に導入する位置に、気体燃料の供給パイプを、焼結機の幅方向に沿って平行に、パレットの両サイドウォールを跨がるように複数配設するか、あるいは、パレット移動方向に沿って、パレットの全幅に亘って平行に複数列設し、この供給パイプに設けられた複数の気体燃料吐出用スリットや噴出穴から、あるいは、この供給パイプに複数配設された複数のノズルから、気体燃料を大気中に高速で噴き出すことにより空気と気体燃料とを混合させ希釈気体燃料とするものにて構成されることが好ましい。
本発明によれば、下方吸引式焼結機の操業において、装入層の上方で気体燃料を大気中に吐出して所定の濃度に希釈調整された希釈気体燃料を、装入層中に供給(導入)し、装入層内の目標とする位置で燃焼させることができる。しかもこの場合において、希釈気体燃料の供給位置や燃焼時の最高到達温度、高温域保持時間を制御することにより、燃焼不足から、焼結鉱の冷間強度が低くなりやすい装入層上部のみならず、装入層中層以下の任意の部分における焼結鉱強度を高めるような操業を行うことができる。しかも、本発明では、装入層全体の通気性を悪化させることなく、とくに燃焼・溶融帯での反応、例えば、この帯域の上下方向の厚みやパレット移動方向における幅の制御を通じて、任意の位置における焼結ケーキの強度を制御することができるので、焼結鉱全体として冷間強度の高い成品焼結鉱を歩留りよくかつ高い生産性を確保しつつ製造することができる。そして、本発明の焼結機を用いれば、こうした焼結機の操業を安定して行うことができる。
図5は、本発明に係る焼結鉱の製造装置の一実施形態を示したものであるが、本発明は、この例示の形態に限定されるものではない。この図5に示した例は、点火炉10のパレット移動方向の下流側に当たる装入層の上辺に、都市ガス、天然ガス、メタンガス、エタンガス、プロパンガス等の気体燃料を大気中に吐出し、所望の濃度の希釈気体燃料とするための気体燃料供給装置12を1基だけ配設したものである。その気体燃料供給装置12は、パレットの幅方向に沿って複数の気体燃料供給パイプ12aを配設し、そのパイプには、気体燃料を高速で大気中に吐出するノズル12bを下向きにかつパレット幅方向に複数個配列させたものを、装入層を覆うように配設したものである。この気体燃料供給装置12から供給された前記気体燃料は、周辺の空気と混合して希釈気体燃料となり、その後、パレット8下のウインドボックス(図示されていない)の吸引力を利用して、装入層の上から表層に生成した焼結ケーキを経て、装入層の深部(下層)にまで導入される。なお、この気体燃料供給装置12は、特に、パレット両側端(図4(c)の歩留り60%の領域)の歩留り向上を図りたいときは、パレットの両サイドウォール近傍に気体燃料を多く供給できるよう、前記ノズル12aを重点的に配置することが好ましい。
この気体燃料供給装置12から供給する気体燃料としては、例えば、高炉ガス(Bガス)、コークス炉ガス(Cガス)、高炉ガスとコークス炉ガスとの混合ガス(Mガス)、都市ガス、天然ガス(LNG)またはメタン、エタン、プロパン、ブタンガス、あるいはこれらの混合ガスなどが用いられる。これらの気体燃料は、点火炉10とは別途に独立した配管系の下で供給してもよく、また、点火炉用燃料配管と同じ種類として、点火炉10へのガス供給管(図示せず)の延長上に接続するように構成してもよい。
下記の表1は、本発明で使用する各種気体燃料の燃焼下限濃度と、その気体燃料の吹き込み上限濃度(燃焼下限濃度の75%、60%、25%)を示したものである。
例えば、プロパンガスは、燃焼下限濃度は2.2vol%であるから、75%に希釈したガス濃度上限は1.7vol%、25%に希釈したガス濃度は0.55vol%のものを用いるということである。なお、希釈したガス濃度の下限、即ち、気体燃料供給の効果が顕れる下限濃度は、プロパンガスの場合は0.05vol%であり、また、Cガスの場合は、0.24vol%である。
Figure 0005428196
次に、表2は、Cガス、LNG、Bガス中に燃焼成分として含まれる水素、CO、メタン、エタン、プロパンの含有量と発熱量を示したものである。
Figure 0005428196
以下、本発明に係る焼結鉱の製造方法を開発する契機となった実験について説明する。
この実験は、図6に示す実験装置、即ち、透明石英製窓付き竪型管状の試験鍋(150mmφ×400mmH)を用い、使用する気体燃料として、高炉ガス・コークス炉ガスの混合ガス(Mガス)を用い、出願人会社の焼結工場で使用しているのと同じ焼結原料、即ち、表3に示す焼結原料を使って、下方吸引圧力11.8kPa一定の条件で焼結鍋試験を行った例である。ここで、前記Mガスの燃焼成分の濃度は、空気で希釈して、0.5vol〜15vol%の範囲内で変動させた。なお、この実験に用いたMガスの燃焼下限濃度は12vol%である。
Figure 0005428196
図6は、また、前記試験鍋の透明石英窓から燃焼溶融帯をビデオ観察した様子、とくに燃焼前線の移動に伴う燃焼帯の下降状況を示している。この図からわかるように、試験鍋内原料堆積層中に、燃焼下限濃度(12vol%)を超える15vol%のMガスを含む気体燃料を吹き込んだ場合、気体燃料は装入層表面ですぐに燃焼を開始し、装入層の下層にまでは届かず吹込みの効果が得られなかった。これに対して、本発明に従い、前記気体燃料の燃焼下限濃度(12vol%)の75%以下である3vol%まで空気で希釈した気体燃料を用いた場合、原料堆積層表面で燃焼することがなく、装入層内深く、即ち、燃焼・溶融帯相当域まで到達し、燃焼した。その結果、空気のみで焼結したときの、燃焼帯(燃焼・溶融帯とも呼ぶ)の厚みは70mmであったのに対し、Mガスを希釈して用いた場合には、燃焼帯の厚み幅を150mm、即ち2倍以上に拡大させることができた。この燃焼帯の厚みの拡大は、高温域保持時間の延長が達成されることをも意味する。
しかも、この試験鍋による実験においては、実機焼結機におけるパレットの移動に伴う燃焼前線の進行速度に相当する燃焼帯の降下速度(この逆数が焼結時間である)は、希釈気体燃料の供給によって速くなり、しかも、コークスを増量したときや高温空気を吹き込んだときと同じように、燃焼帯の上下方向の厚み幅を拡大させることができた。このように、焼結原料の装入層中に適切に希釈された気体燃料を吹き込んだ場合、従来のような固体燃料、液体燃料、希釈しない可燃性ガスを使う場合と比較すると、燃焼帯幅の拡大効果が著しくなり、しかも、コークスを増量したときのような燃焼前線の降下速度の低下を招くことがなく、大気焼結の場合とほとんど変わらず同じ速度で進むことがわかった。
図7(a)〜(d)は、上記焼結鍋試験結果をまとめたものである。この結果によれば、本発明に従って原料装入層中に適切に希釈されたMガスを吹き込んだ場合、焼結時間はほとんど変化しないにも拘らず、歩留が若干向上し(図7(a))、焼結生産性も増加している(図7(b))。しかも、高炉の操業成績に大きく影響する冷間強度の管理指標であるシャッター強度(SI)は10%以上(図7(c))も改善し、還元粉化特性(RDI)は8%も改善している(図7(d))。
本発明では、装入層中に導入する前記気体燃料として、希釈された可燃性ガスを用いるが、以下に、その希釈の程度について説明する。表4は、高炉ガス、コークス炉ガスおよび両者の混合ガス(Mガス)、プロパン、メタン、天然ガスの燃焼下限濃度および燃焼上限濃度を示している。例えば、このような燃焼限界をもつガスが、装入層内で燃焼せずに排風機に向かうと、途中の電気集塵機などで爆発や燃焼の危険が生じる。そこで、発明者らは、試行錯誤の結果、上記危険がない濃度、即ち、燃焼下限以下の濃度に希釈した気体燃料を装入層中に導入することとし、さらに、より安全性を高めるべく、その燃焼下限濃度の75%以下の濃度の希釈気体燃料を用いた実験を数多く行った結果、何の問題も生じないことが確認できた。
例えば、大気中で常温において高炉ガスが燃焼する濃度範囲は、表4に示すとおり、燃焼下限が40vol%(即ち、40vol%未満では燃焼しない)であり、また、その燃焼上限は71vol%である。これは、71vol%を超えると、高炉ガス濃度が濃くなりすぎて、この場合もまた燃焼しない状態となることを意味している。以下に、この数値の根拠について図面に基づき説明する。
Figure 0005428196
図8は、高炉ガスの前記燃焼限界を求める方法の一例を示すものである。図中の高炉ガスに含まれる燃焼成分(可燃性ガス)とその他(イナート:不活性ガス)の割合については、HとCOおよびCOとNとの組み合わせで検討すると以下のとおりである。
(1)「HとCO」部分の組み合わせについての、(イナートガス)/(可燃性ガス)の比は、20.0/3.5=5.7である。
そこで、この燃焼限界図の(イナートガス)/(可燃性ガス)の比を示す横軸の、5.7の軸と交差するH+CO曲線の交わる部分(燃焼限界)を求めた。下限は32vol%、上限は64vol%となる。即ち、H+COの燃焼限界の下限は32vol%、上限は64vol%となる。
(2)一方、残りの燃焼成分である「COとN」の組み合わせの場合における、(イナートガス)/(可燃性ガス)の比は、53.5/23.0=2.3であるから、同様にして、同図から横軸2.3と、CO+Nの曲線と交わる点から下限:44vol%、上限:74vol%が求まる。従って、この場合の燃焼限界の下限は44vol%、上限が74vol%である。
(3)さらに、両燃焼成分を含む高炉ガスの燃焼下限は、図8中左方最下段の式で求めることができる。また、同式で前記(1)、(2)の上限値をあてはめれば燃焼上限が求まる。このようにして高炉ガスの燃焼下限ならびに燃焼上限を求めることができる。
また、本発明において、気体燃料の燃焼下限に着目したもう一つの理由は、燃焼限界には温度依存性がある点である。燃料便覧(社団法人燃料協会編)では、温度の影響として、温度が高いときには、熱の逸散速度が遅くなるので、熱の発生、逸散両速度曲線の交わりは深くなって、爆発範囲(燃焼範囲)は左右に広がってくる、と説明している。すなわち、燃焼限界は、上述のようにして求められるものの、該燃焼限界には温度依存性があって、メタンガスの燃焼範囲の温度による影響として、燃料便覧(社団法人燃料協会編)では、表5に記載の例が示されている。これを燃焼下限濃度の温度依存性として作図すると、おおよそ図9に示すようになる。図中●印は、表5に記載されたメタンガスの例である。
Figure 0005428196
また、図10は、大気中常温下における気体燃料の燃焼成分(燃焼ガス)濃度と温度との関係を示すものである。燃焼限界は、上述のようにして求められるものの、該燃焼限界には温度依存性があって、その温度依存傾向を例示すると、常温での燃焼下限値(図中では燃焼ガス濃度に相当)がおおよそ40vol%であっても、200℃領域では26〜27vol%と変化し、1000℃領域では数%、1200℃領域では1vol%未満でも燃焼する。
このことから、装入層に供給する気体燃料の濃度(燃焼成分の含有量)は、常温の燃焼下限よりもさらに低い濃度とすればより安全であり、その希釈ガスの濃度さえ適正範囲に調整しておけば、気体燃料の、装入層内の厚み方向での燃焼位置制御の自由度も高くなることがわかった。
そして、気体燃料の燃焼には、このように、温度依存性があり、例えば、燃焼範囲は雰囲気温度が高温になればなるほど広がり、焼結機の燃焼・溶融帯近傍の温度場ではよく燃焼するものの、焼結機の下流側にある電気集塵機内などの200℃程度の温度場では、本発明の好適実施例で示すような気体燃料の濃度では燃焼しないこともわかった。
ところで、焼結鉱の製造に当たって、焼結原料の装入層中に供給される前記希釈気体燃料は、パレット下のウインドボックスによって吸引され、該装入層中の固体燃料(粉コークス)の燃焼により形成される燃焼・溶融帯の高温域で燃焼する。従って希釈気体燃料の供給は、装入層への投入熱量を一定にするという条件下において、前記希釈気体燃料の濃度や供給量などを制御すれば、焼結原料中の粉コークス量を調整(減少)することができる。また、希釈気体燃料の濃度調整は、この気体燃料の燃焼を装入層中の予期した位置(濃度領域)で起こるように制御することを意味している。
この意味において、従来技術の下での装入層中の燃焼・溶融帯とは、固体燃料(粉コークス)のみが燃焼する帯域であるが、本発明の場合、その粉コークスに加えてさらに気体燃料も並行して燃焼させる帯域ということができる。従って、本発明において、その希釈気体燃料の濃度や供給量、その他の供給条件は、燃料の一部として粉コークスがあることを前提として、これとの関係において好適に変化させると、最高到達温度および/または高温域保持時間の望ましい制御が可能となり、焼結ケーキの強度向上をもたらすことになる。
本発明方法において、希釈された気体燃料を用いるさらにもう一つの理由は、上述した焼結・溶融帯の形態制御を通じて焼結ケーキの強度、歩留りを制御するためである。それは、この焼結ケーキを高温帯域(燃焼・溶融帯域)にどれくらいの時間保持するか、また、どれくらいの温度にまで到達させるかという制御を行う上で、この希釈気体燃料の役割が有効に機能するからである。言い換えると、前記希釈気体燃料の使用は、焼結原料の高温域保持時間が長くかつ最高到達温度が適度に高くなるように制御することを意味している。そして、このような制御は、焼結原料中の固体燃料量(粉コークス量)に応じて、燃焼雰囲気中で支燃性ガス(空気または酸素)の量が過不足を起こさないように希釈調整された前記気体燃料を用いることを意味している。この点、従来技術では、焼結原料の固体燃料量と無関係に、しかも可燃性ガスを濃度調整することなしに吹き込むために、固体燃料や可燃性ガスの量に見合う量の支燃性ガス(酸素)が供給されないため、燃焼不良を起こしたり、逆に部分的に過燃焼を起こしたりして、強度のバラツキを招いていたのである。つまり、本発明は、気体燃料を希釈しかつ濃度調整をすることで、このような問題点を回避しているのである。
次に、気体燃料の種類による希釈気体燃料の影響について示す。図11は、数種類の気体燃料を燃焼下限濃度以下に希釈した希釈気体燃料を使用した本発明焼結法と、気体燃料の吹き込みなしの従来焼結法とを比較した実験結果を示すものである。なお、希釈気体燃料の吹き込みをしない従来焼結例では、粉コークス添加量を5mass%とし、一方、希釈気体燃料を吹き込む本発明例では、粉コークス0.8mass%相当の希釈気体燃料を吹き込むため、総熱量を一定とするために、粉コークス添加量を4.2mass%とした。この図からわかるように、希釈気体燃料を使用した場合は、いずれの例においても、シャッター強度、成品歩留、生産性の向上が認められた。このように、希釈気体燃料使用例において、シャッター強度、成品歩留等が向上した理由は、燃焼状況として示した燃焼・溶融帯の拡大と、それによる高温域保持時間の延長によるものと考えられる。
図12は、気体燃料として、プロパンガスを用いた場合の吹き込みガス濃度の影響を示す図であり、希釈気体燃料の濃度と、シャッター強度(a)、歩留(b)、焼結時間(c)、生産率(d)との関係を示したものである。この図からわかるように、プロパンガスの場合、これを希釈気体燃料として使用する場合は、シャッター強度向上のためには0.05vol%の添加で効果が生じ、歩留りもほぼ同様な改善効果を示す。明確な作用効果が出るのは、プロパンガスでは0.1vol%から、好ましくは0.2vol%である。この結果を、Cガスを吹き込みガスとして用いた場合に換算すると、Cガスでは0.24vol%の添加で効果を生じ、好ましくは0.5vol%以上、明確な改善効果は1.0vol%以上で生ずることになる。したがって、プロパンガスでは、少なくとも0.05vol%以上、好ましくは0.1vol%以上、より好ましくは0.2vol%以上となる。一方、Cガスでは、少なくとも0.24vol%以上、好ましくは0.5vol%以上、より好ましくは1.0vol%以上であり、上限は燃焼下限濃度の75%である。なお、プロパンガスの場合、0.4vol%の添加でほぼ効果は飽和しており、この時のガス濃度は、燃焼下限濃度の25%に相当する。
次に、本発明方法に従って、焼結原料中の炭材量を考慮し、前記気体燃料の供給を行って製造した焼結鉱の冷間強度と還元粉化特性(RDI)について説明する。「鉱物工学」(今井秀喜、武内寿久禰,藤木良規編、1976、175、朝倉書店)によると、焼結反応は、図13の模式図のようにまとめられる。また、表6に、焼結過程で生成する各種鉱物の引張強度(冷間強度)と被還元性の値を示す。図13から明らかなように、焼結過程では、1200℃で融液が生成し始め、焼結鉱の構成鉱物の中で最も高強度であり、被還元性も比較的高いカルシウムフェライトが生成する。さらに昇温が進んで約1380℃を超えると、冷間強度と被還元性とが最も低い非晶質珪酸塩(カルシウムシリケート)と、還元粉化しやすい二次ヘマタイトとに分解することとなる。したがって、焼結鉱の冷間強度の向上とRDIを改善するには、カルシウムフェライトを分解させずに、これを安定的に生成させ続けられるかどうかが課題となる。
Figure 0005428196
また、上記刊行物「鉱物工学」によると、焼結鉱の還元粉化の起点となる二次ヘマタイトの析出挙動について、図14により説明している。それによると、鉱物合成試験の結果では、還元粉化の起点となる骸晶状二次ヘマタイトは、Mag.ss+Liq.域まで昇温して冷却したのちに析出するため、状態図上では、(1)の経路でなく、(2)の経路を介して焼結鉱を製造することで、還元粉化性を抑制できるとしている。したがって、低RDI焼結鉱と高強度焼結鉱とを兼備する焼結鉱を製造するには、1200℃(カルシウムフェライトの固相線温度)と約1380℃(転移温度)の範囲内に、如何にして長時間保持したヒートパターンを装入層内において実現するかが重要となる。よって、添加する炭材量を気体燃料の供給により調整し、装入層内の最高到達温度を1200℃超え1380℃未満の範囲とすることが重要であり、好ましくは1205〜1350℃の範囲とするのが望ましいことがわかる。
次に、発明者らは、燃焼帯の上下方向の厚さ(幅)と希釈燃料ガスとの関係を知るために、透明石英製窓付き竪形管状試験鍋を用い、焼結機クーラーの排ガスで希釈したプロパンガスを、この鍋の上方から焼結原料の装入層中に吹き込む実験を行った。この実験で使用した焼結原料は、出願人会社で使用している一般的なものであり、吸引圧力は1200mmAq一定とした。この実験で、吹き込むプロパンガスは、0.5vol%と2.5vol%の濃度に希釈したものを用いた。なお、投入熱量を換算すると、0.5vol%のプロパンガス吹き込みは、粉コークス1mass%配合にほぼ相当する。
図15は、この実験におけるプロパンガス吹込み時の燃焼帯の形態を観察した結果を示す写真である。この図に示すように、燃焼下限濃度(理論値、対空気)に近い2.5vol%に希釈したプロパンガスでは、吹込み直後に原料装入層上で燃焼し、気体燃料が装入層内に入っていかず気体燃料供給の効果が得られなかった。これに対し、プロパンガスの希釈濃度が空気に対して0.5vol%濃度のものを用いると、装入層上部で燃焼することなく、装入層内まで入っていき、しかも装入層内で速い速度で燃焼した。その結果、大気条件で焼結したときの燃焼帯の上下方向幅(厚さ)は約70mmであったのに対し、このような希釈プロパンガスを吹込んだ時の燃焼帯の幅は150mmと、2倍以上に拡大した。これは、高温域保持時間が延長されたことに相当する。
したがって、燃焼帯の厚みの拡大効果は、プロパンの燃焼下限濃度の1/5の濃度である0.5vol%でも発現することがわかった。逆に、本発明にかかる気体燃料吹込み技術では、希釈された気体燃料でないと、装入層内における燃焼制御が困難であることもわかる。
さらに、この実験においては、燃焼帯の降下速度(この逆数が高温域保持時間)についても検討した。その結果、単にコークスを増量した場合や高温の空気を吹き込んだ場合には、降下速度が大きく低下して、生産性が低下するが、希釈した気体燃料を用いた場合には、固体燃料を増量した例と比較して燃焼速度を速くすることができるため、燃焼帯の降下速度は大気焼結の場合とほとんど差異が認められなかった。
次に、発明者らは、希釈気体燃料の装入層中への供給位置の影響について調査するため、気体燃料としてコークス炉ガス(Cガス)を2%に希釈して用い、希釈気体燃料の吹込み位置を、装入層表面から100〜200mmの位置、200〜300mmの位置、300〜400mmの位置と変化させて焼結鍋実験を行い、その結果を図16に示した。
ここで、図16の横軸における吹込み位置100〜200mmとは、図中、明るく(白く)示されている燃焼・溶融帯が装入層表面から100mm位置に移動した時から、試験鍋上方より希釈気体燃料の供給を開始し、その燃焼・溶融帯が200mmの位置に到達するまでの間、希釈気体燃料を吹き込んで燃焼させた例であり、その場合の燃焼・溶融帯(図中、燃焼・溶融帯は、明るく(白く)示されている)の進行状況を観察した結果を縦軸に示している。同様に、吹込み位置200〜300mmとは、燃焼・溶融帯が200mm位置に達した段階から300mmに到達するまでの間、希釈気体燃料を供給して燃焼させた例、そして吹込み位置300〜400mmとは、燃焼・溶融帯が300mm位置に達した段階から400mmに到達するまでの間、希釈気体燃料を供給して燃焼させた例を示したものである。また、比較として、希釈気体燃料の吹込みを行わない従来法の場合についても、燃焼・溶融帯の進行状況を調査した。なお、試験鍋の燃焼用空気の供給は、通常の焼結操業と同様に上方から下方に流れるので、気体燃料添加時は、この燃焼用空気に気体燃料が所定濃度になるように添加され、供給される。
図16からわかるように、燃焼・溶融帯が装入層表面から100〜200mm領域で希釈気体燃料を供給した場合には、従来法に比べ燃焼・溶融帯の厚さがわずかに大きくなる程度にとどまっている。これに対して、燃焼・溶融帯が200〜300mm領域で希釈気体燃料を供給した場合には、従来法に比べ明確に燃焼・溶融帯の厚みが増しており、300〜400mm領域も従来法に比べ明確な差を有していることがわかる。
以上のことから、希釈気体燃料の吹込みは、燃焼・溶融帯の位置が装入層表面から200mm以下の領域となる部分に対して行われることが好ましい。そして、装入層表面から200mm未満の領域については、無理に気体燃料を供給しなくても、200mm以下の領域において気体燃料を供給することにより、この領域の焼結鉱のシャッター強度を大幅に向上できることから、成品焼結鉱の歩留りを全体として向上させることができる。したがって、気体燃料コストの低減を図ることもできる。
図17は、装入層表面から200mmまでの上層部と、200mm以下の中、下層部の燃焼状況を模式的に説明する図である。この図に示した矢印Aは、焼結の進行方向(燃料方向)を示し、図17(a)は上層部(<200mmまで)における粉コークスと気体燃料の燃焼位置を示している。この場合、粉コークスの燃焼により形成される燃焼帯が装入層の上部では元々狭く、この粉コークスの燃焼域と、気体燃料の燃焼域とが互いに接近しているため、同図の右側に記載したような温度パターンとなる。なお、この温度分布では、粉コークス(固体燃料)の燃焼域をハッチング部分として示してあり、その上方で燃焼する気体燃料の温度域を非ハッチング部分として示してある。この図からわかるように、装入層上部では、コークスと気体燃料の燃焼が同時期に起るため(両者が互いに接近して燃焼する)、図中のT、Tで示す間の高温域保持時間(約1200℃以上相当)は図示のように狭いものになる。すなわち、ハッチング部分で示すコークス燃焼域がわずかに拡大する程度の温度分布となる。このことは、装入層中への前記希釈気体燃料の供給は、燃焼・溶融帯の厚みが15mm以上になってから行うことが好ましいとしたことや、元々の高温域保持時間が狭い時、気体燃料の吹込み効果が小さいとしたことと一致する。
一方、図17(b)は、中層、下層部分に希釈気体燃料を供給した場合であり、中層、下層域では燃焼帯が上層から下方へ移行するに従って装入層の温度が上昇することもあって、燃焼帯幅(厚さ)が拡大し、図17(a)の場合よりも離れた位置で燃焼するようになる。その結果、図17(b)の右側に示すような温度分布となる。即ち、気体燃料の燃焼域は、ハッチングして示す固体燃料(コークス)燃焼域より離れているため、合成された温度分布曲線はすそ野の大きい温度分布になる。従って、T、Tで示される固体燃料と気体燃料の燃焼に基づく高温域保持時間が延長されて、得られる焼結鉱のシャッター強度が向上するのである。
なお、図17(b)のケースにおいて、高温域保持時間を制御する(延長する)ための気体燃料の着火温度は、400℃〜800℃が好ましく、より好ましくは500〜700℃である。この理由は、着火温度を400℃未満にすると、高温域の拡大につながらず、単に低温域分布を拡大するに止まるだけであり、一方、800℃を超えると固体燃料の燃焼による高温域保持時間と接近しすぎて、最高到達温度の上昇を招くだけで、高温域保持時間の延長の効果が小さいためである。
次に、希釈気体燃料を供給して装入層中の最高到達温度(層内温度)を制御する方法の一例を説明する。図18は、焼結時における装入層内の温度分布を模式的に示すものであり、従来焼結法に相当する固体燃料(粉コークス)5mass%添加における温度分布例を基準として、Cガスを希釈して吹き込み、その分、コークス量を減らした本発明に係る焼結法を説明するものである。ここで、コークスを5mass%添加して焼結した従来焼結法の層内温度と時間との関係を示したのが曲線aである。一般に、高温域保持時間を延長するには、粉コークスの使用量を増加させることが行われているが、例えば、粉コークスを10mass%添加した場合の曲線を破線bで示したように、コークスの増量により高温域保持時間は(0−A)から(0´−B)に拡大するものの、最高到達温度も約1300℃から約1370℃〜1380℃にまで上昇することになり、低RDI焼結鉱でかつ高強度焼結鉱を得ることはできなくなる。
この点、本発明法に従う焼結操業方法(曲線c)では、粉コークスの使用量を4.2mass%に抑える一方で、希釈Cガスを吹込むため、最高到達温度は1270℃に抑えることができると同時に、高温域保持時間は(0−C)に拡大するため、従来法では実現できなかった低RDI、高強度焼結鉱の製造という当初の目的を十分に果すことができる。
要するに、従来焼結法は、高温域保持時間か最高温度制御のいずれか一方に着目した操業方法であった。これに対して、本発明法は、粉コークス使用量の調整(例えば、4.2mass%に抑制)の下で、最高到達温度を(1205〜1350℃)に調整する一方、希釈気体燃料の吹込みにより、高温域保持時間をも調整する操業方法である。なお、図18の曲線dは、固体燃料使用量を単に4.2mass%に下げた例を示すものであり、最高到達温度も低く、高温域保持時間も短い。
図19は、従来焼結法として、粉コークス5mass%を用いた例、および本発明の適合例として、粉コークス使用量を4.2mass%として濃度を2.0vol%にした希釈Cガス吹込みを併用した例における燃焼状況を示したものである。この図のサーモビアからわかるように、従来法では、1400℃を超える燃焼状況が生じている。一方、粉コークスの使用量を4.2mass%にとどめ、濃度2vol%のCガス吹込みを行った本発明の場合、1400℃領域はなくなり、最高到達温度は1350℃以下に抑えることができると同時に、高温域保持時間の延長が実現できていることがわかる。
図20は、投入熱量一定条件下において、希釈されたプロパンガスの吹込みによる、装入層内温度(a)、排ガス温度(b)、通過風量(c)、排ガス組成(d)の経時変化を示すものである。なお、装入層内温度は、上記試験鍋において、装入層表面下400mm(装入層厚:600mm)の位置に装入した熱電対で測定した値であり、また、試験鍋の円周方向では、中心部と壁から5mmの2箇所で測定した。これらの図から、希釈したプロパンガスを吹き込むことで、焼結原料が1205℃以上に加熱され、溶融している時間(高温域保持時間)は2倍以上に増加しているが、最高到達温度は上昇していないことが確認された。また、希釈気体燃料として、プロパンガスを吹き込むことで、排ガス中の酸素濃度が低下しており、酸素が効率的に燃焼反応に使われていることを推測させる。
また、図21は、希釈されたプロパンガス吹込み(0.5vol%)の時とコークス増量(10mass%)のみの時の、装入層内温度(a)、(a’)と、排ガス濃度(b)、(b’)の経時変化を対比して示したものである。これらの図より、粉コークスの使用割合を倍増させた場合、1200℃以上の高温域保持時間は、濃度0.5vol%に希釈されたプロパンガス吹込み時とほぼ同等であるが、最高到達温度が1350℃を超えている。また、粉コークスの量を増加させることで、排ガス中のCO濃度が20vol%から25vol%に大きく上昇し、CO濃度も増加しており、粉コークスが燃焼に寄与する割合が低下していることが確認された。
次に、表7に示す条件で焼結実験を行い、操業状況や焼結鉱の品質に及ぼす影響を調査した。実験No.1は、焼結原料中のコークスを5mass%配合した現状ベース条件、実験No.2は、粉コークスを1mass%低下させて4mass%とし、その代わりに0.5vol%のプロパンガスを吹き込んだ投入熱量一定条件、実験No.3は、粉コークスを10mass%配合した条件、実験No.4は、保熱炉(特開昭60−155626号公報)との差異を検証する目的で450℃の高温ガスを吹き込む条件である。
Figure 0005428196
図22は、これらの試験における各種の特性試験結果をまとめたものである。この図から明らかなように、希釈されたプロパンガス吹込みにより焼結時間が若干延長するものの、歩留やシャッター強度(SI)、生産率がともに改善されるとともに、還元粉化性(RDI)も被還元性(RI)も大きく改善されており、希釈気体燃料の吹込みを適正化することにより、生産率や歩留の改善の他、焼結鉱の高品質化が可能になることが確認された。
これに対し、粉コークスを10mass%まで増加させただけの場合は、焼結時間が延長するだけでなく、最高到達温度が必要以上に上昇するため、却って低強度の非晶質珪酸塩が多く生成して、シャッター強度と歩留がいずれも大きく低下した。また、450℃の高温ガスを吹き込むケースでは、シャッター強度と歩留の改善効果が小さく、これまでの商業設備における結果とほぼ一致した。
以上説明したことからわかるように、希釈された気体燃料を用いる場合、このガスが装入層内で燃焼して、該層内の燃焼帯の拡大をもたらすとともに、焼結原料中のコークスによる燃焼熱と、希釈されたプロパンガスの燃焼熱との相乗的な作用により、広い燃焼帯が形成される。その結果、最高燃到達温度が過剰に上ることなく、高温域保持時間を延長することができる。
次に、発明者らは、希釈された気体燃料の吹き込みによる、成品焼結鉱の被還元性、冷間強度等への影響について、従来法(5mass%、10mass%コークス、熱風吹込み)と対比して調査した。測定した項目は、成品焼結鉱中の鉱物組成割合(冷間強度と被還元性に影響)、見掛け比重(冷間強度に影響)、0.5mm以下の気孔径分布(被還元性に影響)である。
図23は、粉末X線回折法によって定量化した、成品焼結鉱中の鉱物相の組成割合を調査した結果を示したものである。この図から、投入熱量一定(コークス4mass%+プロパン0.5vol%)として固体燃料と希釈プロパンガスを併用した場合には、カルシウムフェライトが安定して生成していることがわかる。そして、このことが、被還元性の向上と冷間強度の増加をもたらすものと考えられる。
図24は、プロパンガスの吹き込み有無による、成品焼結鉱の見掛け比重の変化を、また、図25は、プロパンガスの吹き込み有無による、水銀圧入式ポロシメーターによる0.5mm以下の気孔径分布の変化を測定した結果を示すものである。図24より、希釈されたプロパンガスの吹込みにより、見掛け比重が大きくなっていることがわかる。これは、プロパンガス吹込みにより、造粒粒子外側からも加熱が行われる結果、融液流動が促進され、0.5mm以上の気孔率が低下したためと考えられ、この結果は、冷間強度の向上に寄与することとなる。また、図25より、投入熱量一定として希釈プロパンガスを吹き込むことにより、0.5mm以下の気孔径分布が増加していることがわかる。これは、焼結原料粒子中の熱源が減少することで、被還元性に影響を及ぼす鉱石由来の500μm以下の微細気孔が残留しやすくなったためであり、その結果、高被還元性焼結鉱の製造が可能となるものと考えられる。
図26は、コークスのみを使用した場合(a)とコークスと希釈気体燃料を併用した場合(b)の焼結挙動を模式図に示したものである。この図に示すように、従来のコークスのみを利用する焼結では、粉コークス燃焼によって擬似粒子内部から加熱していたのに対し、本発明のように、コークス+気体燃料の併用方法では、気体燃料の燃焼により擬似粒子外部からも加熱されるようになるため、鉱石内の微細気孔が残留しやすくなり、RDIが低い割に、還元率(RI)を比較的高くできるものと推察される。
図27は、希釈した気体燃料を吹き込んだ場合における焼結鉱の気孔分布の変化を模式的に示したものである。この図に示すとおり、焼結鉱の生産性の向上には、歩留と冷間強度に影響を及ぼす0.5〜5mm径の気孔の合体を促進してその数を減少させること、および、通気性に影響を及ぼす5mm径以上の気孔の割合を増加させることが有効である。また、焼結鉱の被還元性の向上には、主に鉄鉱石中に存在する0.5mm以下の微細気孔を多く残留させた気孔構造とすることが望ましい。この点、本発明によれば、希釈した気体燃料吹込みにより、理想的な焼結鉱の気孔構造に近づけることが可能であると考えられる。
図28は、所望の冷間強度を維持できる限界コークス比を把握する試験の結果を示すものである。ここで、上記限界コークス比とは、シャッター強度(SI)が、希釈されたプロパンガス不使用の場合に得られる最大値(73%)と同等となるコークス添加量と定義する。この図に示すように、希釈された0.5vol%のプロパンガス吹込みにより、現状と同じ冷間強度(シャッター強度73%)を得ることができるコークス比は、図28(a)に示すように、5mass%から3mass%に低減(約20kg/t)している。また、図28(b)、(c)に示すように、74%の歩留りおよび1.86t/hr・mの生産率を得るためのコークス比は、それぞれ5mass%から3.5mass%に低下していることがわかる。
以上説明したところから明らかなように、本発明は、パレットの進行に伴って、燃焼・溶融帯が装入層の表層から下層へ移る間に、含有する炭材量に応じて適切に希釈された気体燃料を、適所を選んで供給することにより、装入層内の燃焼・溶融帯の機能を拡大するような作用を生じさせることができ、焼結鉱の品質改善、生産性の向上を図ることができる。
図6に示す試験鍋を用いて、気体燃料として、1〜2.5vol%に希釈したコークス炉ガス(Cガス)を用い、その他の条件は前述した実験条件(0046段落)と同一として、炭材(コークス)を5mass%含む焼結原料の焼結鍋試験を行った。その結果を図29に示す。この図に示すとおり、本発明法に従い希釈したCガスを使用するときは、Cガスの濃度を上げると、燃焼帯の幅(厚さ)の拡大が顕著で、しかも歩留りや生産率が向上すると共に、冷間強度(SI)も改善できることがわかった。
希釈気体燃料として、0.02〜0.5vol%に希釈したプロパンガスを用い、その他の条件は、実施例1と同一条件として、炭材(コークス)を5mass%含む焼結原料の焼結鍋試験を行った。その結果を図30に示す。この図から、本発明法に従い希釈したプロパンガスを使用するときには、そのプロパンガスの濃度を上げると、燃焼帯の幅(厚さ)の拡大が顕著で、しかも歩留りや生産率が向上すると共に、冷間強度(SI)も改善できることがわかった。
図6に示す試験鍋を用いて、表8に示したように、粉コークスの含有量(外数)を4.9mass%と4.8mass%の2水準に変化させた焼結原料からなる装入層中に、鍋の上方から、クーラー排ガスで濃度を1.0vol%と2.0vol%(対空気)の2水準に希釈したコークス炉ガス(Cガス)を吹き込み、焼結鍋試験(No.2〜7)を行った。また、比較例として、粉コークスの含有量(外数)を5.0mass%とし、希釈ガスを吹き込まない例(No.1)についても同様に焼結鍋試験を行った。なお、この実施例においては、試験鍋に装入した焼結原料は、全厚を600mmとし、その上層部の400mmには、上記粉コークスを含む焼結原料を積層し、その下層の200mmには返鉱を積層した。
また、上記希釈したCガスの吹き込みは、燃焼・溶融帯の位置が装入層表面から100〜200mm、200〜300mm、300〜400mmのそれぞれの位置にあるときに、吸引圧力1200mmAq(差圧1000mmAq)で装入層中に導入した。なお、上記希釈Cガスの吹込み位置は、DL焼結機の全長を80mとしたとき、吹込み位置100〜200mmの場合は、80(m)×100〜200/600(mm)=13.3〜26.6(m)の位置、つまり、パレット移動方向に向かって、パレットの移動起点から13.3〜26.6mの間に、長さ13.3mの気体燃料供給装置を設置して希釈気体燃料を吹き込み、焼結操業を行った例に相当する。同様に、吹込み位置200〜300mmの場合は、パレットの移動起点から26.6〜39.9mの位置に、長さが13.3mの気体燃料供給装置を設置して焼結操業を行った例に、吹込み位置300〜400mmの場合は、パレットの移動起点から39.9〜53.2mの位置に、長さが13.3mの気体燃料供給装置を設置して焼結操業を行った例に相当する。
Figure 0005428196
表9は、上記焼結鍋試験の結果を示すものである。この結果から、気体燃料を吹き込まない比較例のNo.1に比べ、気体燃料を吹き込む本発明例のNo.2〜No.7は、いずれも焼結鉱の冷間強度(SI強度)や歩留りが向上しており、とくに、気体燃料の吹込み位置が装入層の中段以降であるNo.3、4、6、7の例において改善が著しいことがわかる。また、コークス量を4.9mass%とし、Cガス濃度を1vol%とした条件において、生産率が最も高くなることがわかった。また、焼結鉱の品質に及ぼす希釈気体燃料の吹き込み(供給)位置の影響については、還元率(RI)、還元粉化率(RDI)ともに、燃焼・溶融帯の位置が装入層表面から200〜300mmの中段位置にある時に希釈気体燃料の供給を行うことが最も効果的であることがわかった。
Figure 0005428196
本発明に係る焼結鉱の製造方法を、日産2万トン規模のDL型焼結機に適用した。使用したDL焼結機の機長は、点火炉から排鉱部までが90mであり、この焼結機の点火炉の後方約30mの位置には、装入層上方500mmの高さに、長さ(パレット移動方向)15mの気体燃料供給パイプをパレット移動方向に沿って平行に13本配設し、そのパイプのそれぞれには、下方に向けて気体燃料を噴出するノズルを100mm間隔で150個取り付けた(合計1950個)構造の気体燃料供給装置を設置し、そのノズルから気体燃料として都市ガスを高速で大気中に吐出させて、都市ガス(LNG)濃度が0.8vol%の希釈気体燃料として装入層上に供給した。なお、装入層厚は600mmであり、上記気体燃料の供給位置は、燃焼・溶融帯が200〜300mmの位置に存在するときに相当する。上記のようにして供給した希釈気体燃料は、焼結機パレット下方のウインドボックスからの吸引負圧により、装入層中に導入し、焼結層を通して上記位置に存在する燃焼・溶融帯で燃焼させた。なお、このときのCガス使用量は3000m(標準状態)/hrであった。
この実機焼結機による操業の結果、得られた焼結鉱のタンブラー強度(TI)は、全体として通常操業のときよりも約3%向上し、還元粉化性(RDI)は通常操業のときよりも約3%改善し、還元率(RI)も通常操業のときより約4%改善された。しかも、生産率は0.03t/hr・m増加し、本発明の効果を確認することができた。
本発明の技術は、製鉄用、とくに高炉用原料として使われる焼結鉱の製造技術として有用であるが、その他の鉱石塊成化技術としても利用することができる。
焼結プロセスの説明する図である。 焼結層内における圧損と温度分布を説明する図である。 高生産時と低生産時の温度分布を比較した説明図である。 焼結機内における温度分布と歩留分布のグラフである。 本発明に係る気体燃料供給プロセスを説明する図である。 Mガス吹き込みによる試験鍋内の燃焼溶融帯の変化を示す図(写真)である。 Mガス吹き込みを行った時の焼結操業条件、焼結鉱の特性に及ぼす影響を説明するグラフである。 高炉ガスの燃焼限界を求める方法を説明する図である。 メタンガスの燃焼下限濃度の温度依存性を示すグラフである。 大気中常温下における気体燃料の燃焼成分(燃焼ガス)濃度と温度との関係を説明する図である。 希釈気体燃料を吹き込み効果とガス種の関係を示す図である。 プロパンガスを吹き込んだ時のガス濃度とシャッター強度、歩留、焼結時間、生産との関係を示すグラフである。 焼結反応について説明する図である。 骸晶状二次ヘマタイトが生成する過程を説明する状態図である。 希釈プロパンガス吹込み時の燃焼帯の形態を観察した図(写真)である。 吹込み位置が燃焼状況に及ぼす影響を示す図(写真)である。 吹込み位置が燃焼状況に及ぼす影響を説明する図である。 焼結時における装入層内の温度分布を説明する模式図である。 粉コークスのみの場合と、粉コークスと希釈Cガス吹込みを併用した場合における燃焼状況を比較した説明図である。 投入熱量一定条件下において、希釈されたプロパンガスの吹込みによる、装入層内温度、排ガス温度、通過風量、排ガス組成の経時変化を示すグラフである。 希釈されたプロパンガス吹込み(0.5vol%)の時とコークス増量(10mass%)のみの時の、装入層内温度と、排ガス濃度の経時変化を示すグラフである。 各種吹込み条件下における焼結特性試験験結果を示すグラフである。 各種吹込み条件下における成品焼結鉱中の鉱物相の組成割合の変化を示すグラフである。 プロパンガスの吹き込み有無による、成品焼結鉱の見掛け比重の変化を示すグラフである。 プロパンガスの吹き込み有無による、水銀圧入式ポロシメーターによる0.5mm以下の気孔径分布の変化を示すグラフである。 コークスのみを使用した場合とコークスと希釈気体燃料を併用した場合の焼結挙動を示した模式図である。 希釈した気体燃料を吹き込んだ場合における焼結鉱の気孔分布の変化を示す模式図である。 冷間強度を維持できる限界コークス比を把握する実験結果を示すグラフである。 実施例1の結果を示す図(写真)である。 実施例2の結果を示す図(写真)である。
符号の説明
1 原料ホッパー
2 ドラムミキサー
3 ロータリーキルン
4、5 サージホッパー
6 ドラムフィーダー
7 切り出しシュート
8 パレット
9 装入層
10 点火炉
11 ウインドボックス
12 気体燃料供給装置
12a 気体燃料供給パイプ
12b ノズル

Claims (13)

  1. 循環移動するパレット下にウインドボックスを配設してなる下方吸引式焼結機により、そのパレット上に堆積させた焼結原料装入層の上から気体燃料を供給して焼結鉱を製造する方法において、
    前記気体燃料を複数の気体燃料供給パイプから装入層上方の空気中に高速で吐出して燃焼下限濃度の25%以下にした希釈気体燃料を装入層中に導入し、400〜800℃の温度で燃焼させることにより焼結原料を焼成する
    焼結原料中の炭材量、前記希釈気体燃料の濃度および装入層中への導入位置のいずれか1以上を変えることによって、
    焼結層内の最高到達温度を1200℃超え1380℃未満に制御する、および/または、高温域保持時間の延長を図ることを特徴とする焼結鉱の製造方法。
  2. 前記希釈気体燃料の導入位置は、該装入層中の炭材への点火後であることを特徴とする請求項に記載の焼結鉱の製造方法。
  3. 前記希釈気体燃料の導入位置は、パレット移動方向における点火炉出側で、装入層表層に焼結ケーキが生成しかつ燃焼前線が装入層表層下に進行した段階から焼結が完了するまでの間の1ヶ所以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の焼結鉱の製造方法。
  4. 前記希釈気体燃料の装入層中への導入は、燃焼・溶融帯の厚さが15mm以上となる領域において行うことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の焼結鉱の製造方法。
  5. 前記希釈気体燃料の装入層中への導入は、燃焼前線が装入層表層下100mmに達した位置以降で行うことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の焼結鉱の製造方法。
  6. 前記希釈気体燃料の装入層中への導入は、該装入層の両サイドウォール近傍における低歩留まり部で多く行うことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の焼結鉱の製造方法。
  7. 装入層中に導入する前記希釈気体燃料は、少なくともその一部が未燃焼のまま、前記装入層中の燃焼・溶融帯まで到達するようにすることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の焼結鉱の製造方法。
  8. 装入層中の燃焼・溶融帯への気体燃料の導入は、該燃焼・溶融帯の高さ方向の厚みおよび/またはパレット移動方向の幅を拡大し、および/または、高温域保持時間を延長することによって、装入層内の所定の領域の成品焼結鉱の冷間強度を向上するために行ことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の焼結鉱の製造方法。
  9. 前記気体燃料は、高炉ガス、コークス炉ガス、高炉・コークス炉混合ガス、都市ガス、天然ガス、メタン、エタン、プロパンあるいはブタンガス、またはこれらの混合ガスのいずれかであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の焼結鉱の製造方法。
  10. 焼結原料の装入層を載せて循環移動するパレット下に吸引用ウインドボックスを配設し、そのパレット上には原料供給装置とこの装置のパレット進行方向下流側には点火炉を備えてなる下方吸引式DL焼結機において、
    前記点火炉の下流側に、複数の気体燃料供給パイプから気体燃料を装入層上方の空気中に高速で吐出して燃焼下限濃度の25%以下に希釈した希釈気体燃料を該装入層中に導入し、400〜800℃の温度で燃焼させるための気体燃料供給装置を配設してなることを特徴とする焼結機。
  11. 前記気体燃料供給装置は、点火炉の下流側かつ燃焼・溶融帯が装入層中を進行する過程におけるパレット進行方向のいずれかの位置に1以上配設してなることを特徴とする請求項10に記載の焼結機。
  12. 前記気体燃料供給装置は、パレット移動方向における点火炉出側での燃焼前線が装入層表層下に進行した段階から焼結が完了するまでの間の1以上の位置に配設してなることを特徴とする請求項10または11に記載の焼結機。
  13. 前記気体燃料供給装置は、両サイドウォール近傍における低歩留り部に重点的に配設してなることを特徴とする請求項1012のいずれかに記載の焼結機。
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