JP5825215B2 - 鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、単一の鋳型を用いて鋳型内の溶鋼に電磁攪拌と電磁ブレーキを適宜切り替えて作用させることで鋼を連続鋳造する方法に関するものである。
鋼を連続鋳造する際、鋳型内の溶鋼流動を適切に制御することは、品質および鋳造安定の観点から有効である。
そこで、鋳型内の溶鋼を強制的に攪拌して凝固シェルへの介在物やピンホールの付着を抑制する電磁攪拌や、浸漬ノズルから吐出される溶鋼流に制動を加えて凝固シェルの再溶解を抑制する電磁ブレーキといった電磁力による鋳型内流動制御技術の採用が進んでいる。以下、浸漬ノズルから吐出される溶鋼流を吐出流という。
近年では、単一の鋳型と電磁コイルを用い、電磁コイルに印加する電流を、直流と多相交流を選択的に切り替えることで、電磁攪拌と電磁ブレーキを鋳造条件によって使い分けることが可能になった。
例えば特許文献1には、鋳型に給湯する溶鋼の成分組成と給湯量に対応させて、電磁ブレーキまたは電磁攪拌を選択的に切り替える連続鋳造方法が開示されている。この技術は、適切な鋳型内の流動状態を常に維持することができる優れた技術である。
ところで、電磁ブレーキと電磁攪拌を切り替える際に、鋳型内の磁束密度を急激に変化させると、鋳型内溶鋼の流動変化に起因する湯面変動が生じ、モールドパウダーの巻き込みや凝固シェルの二重肌といった表面欠陥の原因になるという問題があった。
また、電磁ブレーキから電磁攪拌に切り替える際には、浸漬ノズルからの吐出流が急激に加速され、当該吐出流が衝突した部分の凝固シェルが再溶解し、軽微な場合はいわゆるカブレ疵(凝固シェルから漏れた溶鋼が鋳型内で凝固した二重肌)になる。このカブレ疵がきわめて重篤な場合には、ブレークアウトに至る。
しかしながら、特許文献1には、電磁ブレーキと電磁攪拌を切り替える際の具体的な切り替え方法については記載されていない。
また、特許文献2には、鋳造初期時に作用させはじめた電磁攪拌を、鋳型内への溶鋼供給速度が3.0ton/min以上になった時点で停止して電磁ブレーキに切り替える際に、鋳型内厚み方向中心部の最大磁場強度が0.1テスラ以上の磁束密度になるように直流電流を印加する技術が開示されている。
この技術は、鋳型内に供給する溶鋼の流速が小さく、品質に劣る鋳造初期部の品質を向上しながら、スループット(鋳型内鋳片の断面積と鋳造速度で算出される鋳型内溶鋼の供給量)の高い領域での凝固シェル再溶解を抑制できる点で優れた技術である。
しかしながら、特許文献1と同様に、特許文献2には電磁攪拌から電磁ブレーキへ切り替える際の具体的な切り替え方法については記載されていない。従って、電磁攪拌から電磁ブレーキへの切り替えに伴って発生する溶鋼流動の変化による湯面変動に起因する課題は解決されていない。
また、特許文献3には、電磁ブレーキの電流値増減時において、磁束密度の変化を少なくとも0.1テスラ/分の傾きを与えて制御する技術が開示されている。
しかしながら、増減時の磁束密度の差が小さい場合には、電磁ブレーキの磁束密度変化に起因する鋳型内溶鋼の流動変化は大きくないので、逆に電磁ブレーキによって生起する浸漬ノズルからの吐出流の減速効果の発揮が遅くなるという問題を有している。
また、特許文献3には、電磁攪拌と電磁ブレーキを切り替える際の磁束密度の制御方法に関しての記載がない。
特開2009−6370号公報 特開2009‐131855号公報 特開平8‐267197号公報
本発明が解決しようとする問題点は、従来の電磁ブレーキまたは電磁攪拌を選択的に切り替える連続鋳造方法では、電磁ブレーキと電磁攪拌を切り替える際の具体的な切り替え方法についての記載がないという点である。
本発明は、発明者らが、電磁ブレーキと電磁攪拌を切り替える際の具体的な磁束密度の制御方法について、種々検討・実験を重ねた結果に基づいてなされたものである。
本発明は、電磁攪拌と電磁ブレーキを選択的に切り替え可能な鋳型において、電磁攪拌と電磁ブレーキの切り替え時に生ずる鋳型内溶鋼の流動変化や、流動変化に起因した鋳片の表面疵やモールドパウダーの巻き込みを抑制することを目的としている。
本発明の鋼の連続鋳造方法は、
鋳型長辺の外周に配置した電磁コイルに、鋳型内溶鋼を電磁攪拌するときは2相以上の多相交流電流を通電する一方、鋳型内溶鋼に電磁ブレーキを付与するときには直流電流を通電することで、鋳型に供給する溶鋼の成分組成と溶鋼のスループットに応じて、電磁攪拌と電磁ブレーキと無通電を選択的に切り替えて鋳型内流動制御を行う連続鋳造方法において、
例えば、電磁ブレーキから電磁攪拌に切り替える場合は、
前記鋳型内溶鋼の供給量の閾値を、
炭素濃度が、0.06質量%未満の低炭素鋼では3.7ton/min未満、0.06質量%以上、0.07質量%未満の低炭素鋼では、3.4ton/min未満、0.07質量%以上、0.16未満%以下の低炭素鋼・中炭素鋼(包晶変態域)では、3.0ton/min未満、0.16質量%以上、0.30質量%未満の中炭素鋼では3.4ton/min未満とし、
鋳型を挟んで対向する電磁コイルを構成する鉄心の鋳型長辺面側の縦断面方向の平面の中心部を結んだ線上の鋳型厚み中心部に生起された単位時間当たりの磁束密度減少率が0.0100テスラ/sec以下となるように直流電流の電流値を減少させ、
直流電流から多相交流電流に切り替えた後に、
電磁攪拌によって鋳型長辺面に生起されたメニスカス部の磁束密度の鋳型幅方向平均値の単位時間当たりの増加率が0.04テスラ/sec以下になるように多相交流電流の電流値を増加させることを主要な特徴とするものである。
本発明では、電磁ブレーキと電磁攪拌を切り替える際に、電磁攪拌や電磁ブレーキの印加開始時や印加停止時における磁束密度の変化率を増減することで、急激な鋳型内流動変化、特に湯面変動やノズル吐出流の急激な増速を防止することができる。
本発明によれば、電磁攪拌と電磁ブレーキの切り替え部で疵を発生させることなく、単一の鋳型で選択的に電磁攪拌と電磁ブレーキを印加することができ、ピンホールや介在物欠陥のない高品質の鋼を鋳造することができる。
鋳型内溶鋼の流動制御を行わない場合の鋳型内溶鋼の流動パターンを示した図である。 鋳型内溶鋼の流動制御を行わない場合と、鋳型内溶鋼に電磁攪拌を行った場合と、鋳型内溶鋼に電磁ブレーキを作用させた場合における、鋳型内溶鋼の表層部の湯面レベルを示した図である。 鋳型内溶鋼に電磁攪拌を行った場合の鋳型内溶鋼の鉛直断面方向の流動パターンを示した図である。 鋳型内溶鋼に電磁攪拌を行った場合の鋳型内溶鋼の流動パターンを三次元的に示した図である。 鋳型内溶鋼に電磁ブレーキを作用させた場合の鋳型内溶鋼の鉛直断面方向の流動パターンを示した図である。
本発明は、電磁ブレーキと電磁攪拌を切り替える際に生ずる鋳型内溶鋼の流動変化や、流動変化に起因した鋳片の表面疵やモールドパウダーの巻き込みを抑制するという目的を、前記切り替え時に、電磁攪拌や電磁ブレーキの印加開始時や印加停止時における磁束密度の変化率を増減することで実現した。
以下、本発明の連続鋳造方法について説明する。
連続鋳造に際し、浸漬ノズル1の吐出孔1aから鋳型2内に吐出される吐出流3は、通常、図1に示すように直進して鋳型短辺2a側に形成された凝固シェル4aと衝突し、鋳型短辺2aに沿った上昇流3aと下降流3bに分かれる。なお、図1中の5はモールドパウダーを示す。
また、吐出流3は、鋳型2内の溶鋼4よりも高温であることや、浸漬ノズル1の閉塞防止を目的として溶鋼内にアルゴンなどの不活性ガスが吹き込まれる場合があるので、前記吐出孔1aから直上に向かう流れもある。このため、一般的には、鋳型長辺面表層部の湯面レベルは、図2に実線で示すような形状を有することになる。
これに対して、鋳型内の溶鋼に、電磁攪拌や電磁ブレーキといった電磁力による流動制御を付与した場合は、以下に説明するような特徴的な鋳型内流動パターンが生成される。
1)鋳型内の溶鋼に電磁攪拌を付与した場合
図3および図4に示すように、浸漬ノズル1からの吐出流3が電磁攪拌によって生起された水平方向のローレンツ力6によって曲げられ、鋳型2のコーナ部に沿って上昇する。なお、図3中の7は鋳型長辺の外周に配置した電磁コイルを示す。
このため、鋳型内の溶鋼4の表層部における湯面レベルは、図2に一点鎖線で示すように、鋳型の長辺幅方向で10〜15mm程度の高低差を生ずることになる。また、鋳型のコーナ部に沿って高温の吐出流が上昇するため、鋳型のコーナ部に形成された凝固シェルの再溶解、あるいは鋳型のコーナ部に形成された凝固シェルの凝固遅れが生ずる。加えて、電磁攪拌によって生ずる凝固シェル前面の溶鋼流動によって、全体的に凝固シェルの成長が遅れる。
2)鋳型内の溶鋼に電磁ブレーキを付与した場合
図5に示すように、浸漬ノズル1からの吐出流3と逆方向に加わるローレンツ力6によって、浸漬ノズル1の吐出孔1aから鋳型2内に吐出される吐出流3が減速・分散される。
このため、図2に破線で示すように、浸漬ノズルに沿って浮上する流れによって浸漬ノズル近傍の溶鋼湯面が上昇するとともに、その他の部分の鋳型内溶鋼の表層部の湯面レベルは平坦な形状となる。また、浸漬ノズルからの吐出流は、前記ローレンツ力によって、鋳型短辺のコーナ部と衝突する前に減速されるので、凝固シェルの再溶解は抑制される。
発明者らは、以上の流動変化を踏まえて、電磁攪拌から電磁ブレーキ、あるいは電磁ブレーキから電磁攪拌に切り替える際の磁束密度制御方法について種々検討をし、実験を行った結果、以下の知見を得た。
3)電磁攪拌から電磁ブレーキに切り替えるとき
電磁攪拌時に作用させる印加電流の強度を低下させると、鋳型内溶鋼の表層部の湯面レベルの高低差を解消することができる。但し、鋳型内溶鋼の湯面レベルの高低差を急速に解消すると、鋳型内溶鋼の湯面レベルが変動し、鋳片表層の二重肌やモールドパウダーの巻き込みを生ずる。これらの二重肌やモールドパウダーの巻き込みは、製造後に鋳片を手入れすることによって除去する必要があるので、歩留りの低下や手入コストの悪化を招く。従って、電磁攪拌時に作用させる印加電流を急速に減少させるのは望ましくない。
次に、電磁ブレーキを付与し始めるときは、浸漬ノズルの吐出孔から吐出する吐出流の流速を速やかに低下させ、鋳型短辺部に形成された凝固シェルの再溶解を防止する必要がある。これは、電磁攪拌の流動によって凝固シェルの成長が全体的に遅れているため、同等の吐出流速・再溶解速度であっても、鋳型内での漏れが生じやすいためである。従って、電磁ブレーキを付与し始めるときは、鋳型厚み中心部の磁束密度を速やかに上昇させることが必要である。
4)電磁ブレーキから電磁攪拌に切り替えるとき
電磁ブレーキ時に作用させる印加電流の強度を低下させると、浸漬ノズルの吐出孔から吐出する吐出流の流速が増加する。このため、鋳型短辺部に形成された凝固シェルの再溶解が進む。この凝固シェルの再溶解は、カブレ疵等の表面疵の原因や重大な操業トラブルであるブレークアウトの原因となる。特に、介在物が付着して浸漬ノズルの吐出孔の断面積が縮小する鋳造末期には、電磁ブレーキの印加電流の強度低下時に吐出流の流速が急速に上昇する。従って、電磁ブレーキ時に作用させる印加電流を急激に低下するのは望ましくない。
次に、電磁攪拌を行うための印加を始めるときには、電磁攪拌の印加電流の上昇に伴い、浸漬ノズルから吐出される吐出流は鋳型に対して水平方向に発生するローレンツ力によって曲げられ、鋳型のコーナ部に沿って凝固シェルを再溶解させながら上昇する。この上昇流によって鋳型内溶鋼の表層部のコーナの湯面レベルは上昇し、溶鋼湯面レベルの高低差が生じる。
これらの流動変化が急激に生ずると、電磁ブレーキ停止による吐出流速上昇と、電磁攪拌開始による鋳型コーナ部の再溶解が複合することによって、鋳型コーナ部に形成される凝固シェルの再溶解が促進される。これによって鋳型コーナ部の凝固シェルにカブレ疵が生じ、特に重篤な場合にはブレークアウトが発生する。加えて、鋳型内溶鋼の湯面レベルの高低差が生成する際の溶鋼湯面レベルの変動による二重肌やパウダー巻き込みも発生する。従って、電磁攪拌の印加を始めるときには、急激な印加電流の上昇は望ましくない。
本発明は、発明者らの上記の検討・実験の結果により得られた知見に基づいてなされたものであり、
鋳型長辺の外周に配置した電磁コイルに、鋳型内溶鋼を電磁攪拌するときは2相以上の多相交流電流を通電する一方、鋳型内溶鋼に電磁ブレーキを付与するときには直流電流を通電することで、鋳型に供給する溶鋼の成分組成と溶鋼のスループットに応じて、電磁攪拌と電磁ブレーキと無通電を選択的に切り替えて鋳型内流動制御を行う連続鋳造方法において、以下の構成を採用することを特徴とするものである。
電磁攪拌と電磁ブレーキの切り替え時における前記スループットの閾値を、
炭素濃度が、0.06質量%未満の低炭素鋼では3.7ton/min、0.06質量%以上、0.07質量%未満の低炭素鋼では、3.4ton/min、0.07質量%以上、0.16質量%未満の低炭素鋼・中炭素鋼(包晶変態域)では、3.0ton/min、0.16質量%以上、0.30質量%未満の中炭素鋼では3.4ton/minとし、
電磁攪拌と電磁ブレーキの切り替え時、電磁攪拌及び電磁ブレーキの印加開始時或いは印加停止時における磁束密度の単位時間当りの変化率を増減する。
具体的には、以下のように電磁攪拌及び電磁ブレーキの印加開始時或いは印加停止時における磁束密度の単位時間当りの変化率を増減する。
(電磁ブレーキから電磁攪拌に切り替える場合)
鋳型を挟んで対向する電磁コイルを構成する鉄心の鋳型長辺面側の縦断面方向の平面の中心部を結んだ線上の鋳型厚み中心部に生起された単位時間当たりの磁束密度減少率が0.0100テスラ/sec以下となるように直流電流の電流値を減少させ、
直流電流から多相交流電流に切り替えた後に、
電磁攪拌によって鋳型長辺面に生起されたメニスカス部の磁束密度の鋳型幅方向平均値の単位時間当たりの増加率が0.04テスラ/sec以下になるように多相交流電流の電流値を増加させる。
(電磁攪拌から電磁ブレーキに切り替える場合)
電磁攪拌によって鋳型長辺面に生起されたメニスカス部の磁束密度の鋳型幅方向平均値の単位時間当たりの減少率を0.04テスラ/sec以下に制御して多相交流電流の電流値を減少させ、
多相交流電流から直流電流に切り替えた後に、
鋳型を挟んで対向する電磁コイルを構成する鉄心の鋳型長辺面側の縦断面方向の平面の中心部を結んだ線上の鋳型厚み中心部に生起された単位時間当たりの磁束密度増加率が0.04テスラ/sec以上となるように直流電流の電流値を増加させる。
上記本発明における限定理由を以下に説明する。
(スループットの閾値)
電磁攪拌と電磁ブレーキの切り替え時におけるスループットの閾値を、炭素濃度が0.06質量%未満の低炭素鋼では3.7ton/min、炭素濃度が0.06質量%以上、0.07質量%未満の低炭素鋼では3.4ton/min、炭素濃度が0.07質量%以上、0.16質量%未満の低炭素鋼・中炭素鋼(包晶変態域)では3.0ton/min、炭素濃度が0.16質量%以上、0.30質量%未満の中炭素鋼では3.4ton/minとしたのは、鋳型内における凝固シェル強度、および包晶反応による不均一凝固の生成の有無から定めたものである。
すなわち、前記閾値より大きなスループットで電磁ブレーキを印加した場合、短辺衝突流によって凝固シェルが再溶解し、カブレ疵を生じ、重篤な場合にはブレークアウトを生ずるからである。
一方、前記閾値より小さなスループットで電磁ブレーキを印加すると、溶鋼の流動を阻害し、凝固シェルにトラップされたArガスや非金属介在物を溶鋼流の洗浄効果によって除去することができず、スラブ表層部にピンホールや介在物として残存し、下工程での欠陥を引き起こすためである。
上記理由は、電磁攪拌時の印加の場合も同様である。
(電磁ブレーキから電磁攪拌に切り替える場合)
電磁ブレーキを停止する際の、前記磁束密度減少率を0.0100テスラ/sec以下とするのは、0.0100テスラ/secを超えると、浸漬ノズルからの吐出流流速が大きくなって鋳型短辺部に形成された凝固シェルの再溶解が進み、カブレ疵の発生やブレークアウトを招くためである。より確実にカブレ疵を抑制するためには、0.005テスラ/sec以下が望ましい。
その半面、磁束密度減少率を過剰に低下すると、電磁攪拌への切り替えに時間を要し、逆にスラブの品質を低下させることがあるため、0.0005テスラ/sec以上とするのが望ましい。
また、電磁攪拌を開始する際の、前記磁束密度増加率を0.04テスラ/sec以下とするのは、0.04テスラ/secを超えると、鋳型内溶鋼の湯面レベル変動が大きくなって鋳片表層の二重肌やモールドパウダーの巻き込みを生じ、製造後の手入れが必要になって歩留の低下や手入れコストの悪化を招くためである。また、鋳型のコーナ部に形成される凝固シェルの再溶解を抑制できずカブレ疵やブレークアウトの発生も招くためである。但し、電磁攪拌の効果を速やかに得る観点からは、前記磁束密度増加率は0.005テスラ/sec以上とすることが望ましい。
(電磁攪拌から電磁ブレーキに切り替える場合)
電磁攪拌を停止する際の、前記磁束密度減少率を0.04テスラ/sec以下とするのは、0.04テスラ/secを超えると、鋳型内溶鋼の湯面レベル変動が大きくなって鋳片表層の二重肌やモールドパウダーの巻き込みを生じ、製造後の手入れが必要になって歩留りの低下や手入コストの悪化を招くからである。
また、電磁ブレーキを開始する際の、前記磁束密度増加率を0.04テスラ/sec以上とするのは、0.04テスラ/sec未満の場合は、浸漬ノズルからの吐出流の流速を効果的に減速できないので、鋳型短辺部に形成された凝固シェルの再溶解を防止できず、鋳型内での漏れによるカブレ疵やブレークアウトが生じやすくなるためである。
電磁ブレーキを作用させている場合の前記磁束密度は0.05テスラ以上であることが望ましい。0.05テスラ未満の印加では、瞬間的な吐出流速の変動を抑制することができず、電磁ブレーキとしての用をなさないためである。より望ましい前記磁束密度は0.1テスラ以上である。0.1テスラ未満の印加ではカブレ疵を抑制するのに十分な制動力を得られないためである。
次に、本発明の実施例について説明する。
転炉で粗脱炭し、二次精錬設備で成分と温度調整を行った炭素濃度が0.02質量%〜0.30質量%の低炭素鋼あるいは中炭素鋼を、幅が950〜1280mm、厚さが250mmの鋳型を2つ並べたツイン鋳造用の鋳型を持つ垂直曲げ型連続鋳造機で鋳造した。
前記ツイン鋳造用の鋳型の長辺の外周に配置した電磁攪拌、電磁ブレーキ兼用電磁コイルの仕様は、電磁攪拌時の周波数は4.0Hz、 交流電流の位相は120°位相の三相交流、コイルへの印加電流は48000ATである。また、電磁ブレーキ時の前記鋳型中心部の電磁力は0.25テスラである。なお、本技術はツイン鋳造に限られるものではなく、シングル鋳造でも活用できる。
鋳造した溶鋼成分を下記表1に示す。
Figure 0005825215
A.電磁攪拌から電磁ブレーキへの切り替え
鋳造する溶鋼のスループットの変化に応じて電磁攪拌から電磁ブレーキへの切り替えを行った。電磁攪拌から電磁ブレーキへの切り替え時における、鋳造する溶鋼のスループット(ton/min)の閾値は、以下のようにした。
炭素濃度が、
0.06質量%未満の低炭素鋼は3.7ton/min以上、
0.06質量%以上、0.07質量%未満の低炭素鋼は3.4ton/min以上、
0.07質量%以上、0.16質量%未満の低炭素鋼・中炭素鋼(包晶変態域)は3.0ton/min以上、
0.16質量%以上、0.30質量%未満の中炭素鋼は3.4ton/min以上、
である。
炭素濃度によって鋳造する溶鋼のスループットの閾値を変更した理由は、鋳型内における凝固シェル強度、および包晶反応による不均一凝固の生成の有無である。なお、全ての場合で溶鋼加熱度は25℃以下である。
電磁攪拌から電磁ブレーキへ切り替える際の電磁攪拌および電磁ブレーキの磁束密度の変化率とカブレ疵および二重肌の発生率を下記表2に示す。
Figure 0005825215
また、材質および電磁ブレーキに切り替えたスループット閾値と、切り替え前のカブレ疵発生率および切り替え後のスリバー疵発生率の関係を下記表3に示す。
Figure 0005825215
測定位置は、電磁攪拌から電磁ブレーキへの切り替え、若しくは電磁ブレーキから電磁攪拌への切り替えを行った区間の鋳片を対象として、二重肌・カブレ疵共に目視で疵の有無を判別し、それら発生率は鋳片数の比率で求めた。一方、スリバー疵については、下工程でのコイルの合否で判別し、それらの発生率は発生鋳片長さの重量の比率で求めた。
表2,3における評価中、カブレ疵については、手入れ除去ができる欠陥発生率が0.5%以下を○、前記欠陥発生率が0.5%を超えるものについては×とした。また、二重肌については、手入れ除去ができる欠陥発生率が0.2%以下を○、前記欠陥発生率が0.2%を超えるものについては×とした。また、スリバー疵については、コイル不合格率が0.3%以下を○、コイル不合格率が0.3%を超えるものについては×とした。
表3より本発明の請求項で規定する要件を満足する実施例1〜4は、カブレ疵は手入れ除去ができる欠陥発生率が0.5%以下、スリバー疵はコイル不合格率が0.3%以下であったが、本発明の請求項で規定する要件を満足しない比較例1〜6の場合は、カブレ疵は前記欠陥発生率が0.5%を、比較例7〜11の場合は、スリバー疵はコイル不合格率が0.3%を超えていた。
また、表2より本発明の請求項で規定する要件を満足する実施例1〜は、カブレ疵、二重肌の手入れ除去ができる欠陥発生率が0.5%以下又は0.2%以下であったが、本発明の請求項で規定する要件を満足しない比較例1〜12は、カブレ疵、二重肌の何れかの前記欠陥発生率が0.5%又は0.2%を超えていた。
B.電磁ブレーキから電磁攪拌への切り替え
鋳造する溶鋼のスループットの変化に応じて電磁ブレーキから電磁攪拌への切り替えを行った。 電磁ブレーキから電磁攪拌の切り替え時における、鋳造する溶鋼のスループット(ton/min)の閾値は、以下のようにした。
炭素濃度が、
0.06質量%未満の低炭素鋼は3.7ton/min未満、
0.06質量%以上、0.07質量%未満の低炭素鋼は3.4ton/min未満、
0.07質量%以上、0.16質量%未満の低炭素鋼・中炭素鋼(包晶変態域)は3.0ton/min未満、
0.16質量%以上、0.30質量%未満の中炭素鋼は3.4ton/min未満、
である。
炭素濃度によって鋳造する溶鋼のスループットの閾値を変更した理由は、電磁攪拌から電磁ブレーキへの切り替えのときの理由と同様である。
電磁ブレーキから電磁攪拌へ切り替える際の電磁ブレーキおよび電磁攪拌の磁束密度の変化率と二重肌およびカブレ疵の発生率を下記表4に示す。なお、下記表4の評価の基準は、上記表2の評価の基準と同じである。
Figure 0005825215
また、表4より本発明の請求項で規定する要件を満足する実施例1〜は、カブレ疵、二重肌の手入れ除去ができる欠陥発生率が0.5%以下又は0.2%以下であったが、本発明の請求項で規定する要件を満足しない比較例1〜12は、カブレ疵、二重肌の何れかの前記欠陥発生率が0.5%又は0.2%を超えていた。
本発明は上記した例に限らないことは勿論であり、請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
1 浸漬ノズル
2 鋳型
3 吐出流
4 溶鋼
7 電磁コイル

Claims (2)

  1. 鋳型長辺の外周に配置した電磁コイルに、鋳型内溶鋼を電磁攪拌するときは2相以上の多相交流電流を通電する一方、鋳型内溶鋼に電磁ブレーキを付与するときには直流電流を通電することで、鋳型に供給する溶鋼の成分組成と鋳型内鋳片の断面積と鋳造速度で算出される鋳型内溶鋼の供給量に応じて、電磁攪拌と電磁ブレーキと無通電を選択的に切り替えて鋳型内流動制御を行う連続鋳造方法において、
    電磁ブレーキから電磁攪拌に切り替える場合は、
    前記鋳型内溶鋼の供給量の閾値を、
    炭素濃度が、0.06質量%未満の低炭素鋼では3.7ton/min未満、0.06質量%以上、0.07質量%未満の低炭素鋼では、3.4ton/min未満、0.07質量%以上、0.16質量%未満の低炭素鋼・中炭素鋼(包晶変態域)では、3.0ton/min未満、0.16質量%以上、0.30質量%未満の中炭素鋼では3.4ton/min未満とし、
    鋳型を挟んで対向する電磁コイルを構成する鉄心の鋳型長辺面側の縦断面方向の平面の中心部を結んだ線上の鋳型厚み中心部に生起された単位時間当たりの磁束密度減少率が0.0100テスラ/sec以下となるように直流電流の電流値を減少させ、
    直流電流から多相交流電流に切り替えた後に、
    電磁攪拌によって鋳型長辺面に生起されたメニスカス部の磁束密度の鋳型幅方向平均値の単位時間当たりの増加率が0.04テスラ/sec以下になるように多相交流電流の電流値を増加させることを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
  2. 鋳型長辺の外周に配置した電磁コイルに、鋳型内溶鋼を電磁攪拌するときは2相以上の多相交流電流を通電する一方、鋳型内溶鋼に電磁ブレーキを付与するときには直流電流を通電することで、鋳型に供給する溶鋼の成分組成と鋳型内鋳片の断面積と鋳造速度で算出される鋳型内溶鋼の供給量に応じて、電磁攪拌と電磁ブレーキと無通電を選択的に切り替えて鋳型内流動制御を行う連続鋳造方法において、
    電磁攪拌から電磁ブレーキに切り替える場合は、
    前記鋳型内溶鋼の供給量の閾値を、
    炭素濃度が、0.06質量%未満の低炭素鋼では3.7ton/min以上、0.06質量%以上、0.07質量%未満の低炭素鋼では、3.4ton/min以上、0.07質量%以上、0.16質量%未満の低炭素鋼・中炭素鋼(包晶変態域)では、3.0ton/min以上、0.16質量%以上、0.30質量%未満の中炭素鋼では3.4ton/min以上とし、
    電磁攪拌によって鋳型長辺面に生起されたメニスカス部の磁束密度の鋳型幅方向平均値の単位時間当たりの減少率を0.04テスラ/sec以下に制御して多相交流電流の電流値を減少させ、
    多相交流電流から直流電流に切り替えた後に、
    鋳型を挟んで対向する電磁コイルを構成する鉄心の鋳型長辺面側の縦断面方向の平面の中心部を結んだ線上の鋳型厚み中心部に生起された単位時間当たりの磁束密度増加率が0.04テスラ/sec以上となるように直流電流の電流値を増加させることを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
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