本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態および変形例は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1について説明する。本実施形態は、冷凍装置によって構成された空気調和機(10)である。
図1に示すように、本実施形態の空気調和機(10)は、一台の室外ユニット(11)と、三台の室内ユニット(12a,12b,12c)とを備えている。また、空気調和機(10)は、その運転を制御するためのコントローラ(13)を備えている。なお、ここで示した室外ユニット(11)及び室内ユニット(12a,12b,12c)の台数は、単なる一例である。
熱源側ユニットである室外ユニット(11)には、室外回路(20)と室外ファンとが収容されている。一方、利用側ユニットである各室内ユニット(12a,12b,12c)には、室内回路(60a,60b,60c)と室内ファンとが一つずつ収容されている。なお、図1において、室外ファン及び室内ファンの図示は省略する。
空気調和機(10)では、室外ユニット(11)と各室内ユニット(12a,12b,12c)を連絡配管(16,17)で接続することによって、冷媒回路(15)が形成されている。この冷媒回路(15)には、二酸化炭素が冷媒として充填されている。
室外回路(20)には、圧縮機(30)と、膨張機(35)と、四方切換弁(21)と、室外熱交換器(22)と、気液分離器(23)と、中間熱交換器(24)と、液側閉鎖弁(18)と、ガス側閉鎖弁(19)とが設けられている。更に、室外回路(20)には、ブリッジ回路(40)と、一方向流通管路(45)と、ガス抜き配管(46)と、バイパス配管(48)とが設けられている。
圧縮機(30)は、その吐出側が四方切換弁(21)の第1のポートに接続され、その吸入側が四方切換弁(21)の第2のポートに接続されている。圧縮機(30)は、圧縮機構(31)と電動機(32)とが一つのケーシングに収容された全密閉型圧縮機である。圧縮機構(31)は、揺動ピストン型またはローリングピストン型のロータリ式流体機械である。電動機(32)が圧縮機構(31)を駆動すると、圧縮機構(31)が冷媒を吸入して圧縮する。
四方切換弁(21)は、その第3のポートが室外熱交換器(22)のガス側端に接続され、その第4のポートがガス側閉鎖弁(19)に接続されている。四方切換弁(21)は、第1のポートが第3のポートと連通し且つ第2のポートが第4のポートと連通する第1状態(図1に実線で示す状態)と、第1のポートが第4のポートと連通し且つ第2のポートが第3のポートと連通する第2状態(図1に破線で示す状態)とに切り換わる。
熱源側熱交換器である室外熱交換器(22)は、いわゆるクロスフィン型の熱交換器であって、冷媒を室外空気と熱交換させる。室外熱交換器(22)には、室外ファンによって室外空気が供給される。
ブリッジ回路(40)は、三つの逆止弁(41,42,43)と一つの室外膨張弁(44)とを備えている。各逆止弁(41,42,43)は、それぞれの流入側から流出側へ向かう冷媒の流れを許容し、逆向きの冷媒の流れを阻止する。熱源側膨張弁である室外膨張弁(44)は、開度可変の電動膨張弁である。
ブリッジ回路(40)では、第1逆止弁(41)の流出側と第2逆止弁(42)の流出側が接続され、第2逆止弁(42)の流入側と第3逆止弁(43)の流出側が接続され、第3逆止弁(43)の流入側と室外膨張弁(44)の一端が接続され、室外膨張弁(44)の他端と第1逆止弁(41)の流入側が接続されている。また、このブリッジ回路(40)では、室外膨張弁(44)と第1逆止弁(41)の間に室外熱交換器(22)の液側端が、第2逆止弁(42)と第3逆止弁(43)の間に液側閉鎖弁(18)が、第1逆止弁(41)と第2逆止弁(42)の間に一方向流通管路(45)の一端が、第3逆止弁(43)と室外膨張弁(44)の間に一方向流通管路(45)の他端が、それぞれ接続されている。
一方向流通管路(45)には、その一端から他端へ向かって順に、膨張機(35)と、気液分離器(23)と、中間熱交換器(24)とが配置されている。この一方向流通管路(45)では、四方切換弁(21)が第1状態と第2状態のどちらに設定されている場合でも、冷媒がその一端から他端へ向かって流れる。
膨張機(35)では、膨張機構(36)と発電機(37)とが一つのケーシングに収容されている。膨張機構(36)は、揺動ピストン型またはローリングピストン型のロータリ式流体機械である。膨張機構(36)において冷媒が膨張すると、発電機(37)が膨張機構(36)によって駆動される。発電機(37)において発生した電力は、圧縮機(30)の電動機(32)を駆動するために利用される。
気液分離器(23)は、やや細長い円筒状の容器であって、起立した状態で設置される。気液分離器(23)は、その上端部に設けられた入口が膨張機(35)の流出側に接続され、その底部に設けられた液冷媒の出口が中間熱交換器(24)に接続される。
ガス抜き配管(46)は、その一端が気液分離器(23)の頂部に接続され、その他端が圧縮機(30)の吸入側に接続されている。ガス抜き配管(46)には、その一端から他端へ向かって順に、ガス流量調節弁(47)と、中間熱交換器(24)とが配置されている。
ガス流量調節弁(47)は、開度可変の流量調節弁である。中間熱交換器(24)は、第1流路(25)と第2流路(26)とが形成された熱交換器である。中間熱交換器(24)は、第1流路(25)が一方向流通管路(45)に接続され、第2流路(26)がガス抜き配管(46)に接続されている。この中間熱交換器(24)は、第1流路(25)を流れる冷媒を、第2流路(26)を流れる冷媒と熱交換させる。
バイパス配管(48)は、一方向流通管路(45)に接続されている。具体的に、バイパス配管(48)は、その一端が一方向流通管路(45)における膨張機(35)の上流側に接続され、その他端が一方向流通管路(45)における膨張機(35)と気液分離器(23)の間に接続されている。つまり、冷媒回路(15)では、バイパス配管(48)と膨張機(35)が互いに並列に配置されている。また、バイパス配管(48)には、バイパス流量調節弁(49)が設けられている。バイパス流量調節弁(49)は、開度可変の流量調節弁である。
室外回路(20)には、複数の温度センサ及び圧力センサが設けられている。圧縮機(30)の吸入側に接続する配管には、吸入温度センサ(51)と吸入圧力センサ(52)とが設けられている。吸入温度センサ(51)は、配管の温度を計測する。吸入温度センサ(51)の計測値は、圧縮機(30)へ吸入される冷媒の温度と実質的に等しい。吸入圧力センサ(52)は、圧縮機(30)へ吸入される冷媒の圧力を計測する。圧縮機(30)の吐出側に接続する配管には、吐出温度センサ(53)と吐出圧力センサ(54)とが設けられている。吐出温度センサ(53)は、配管の温度を計測する。吐出温度センサ(53)の計測値は、圧縮機(30)から吐出された冷媒の温度と実質的に等しい。吐出圧力センサ(54)は、圧縮機(30)から吐出された冷媒の圧力を計測する。
また、室外回路(20)には、室外液側温度センサ(55)と室外ガス側温度センサ(56)とが設けられている。室外液側温度センサ(55)は、室外熱交換器(22)の液側端付近に接続する配管に取り付けられ、この配管の温度を計測する。室外液側温度センサ(55)の計測値は、室外熱交換器(22)の液側端を通過する冷媒の温度と実質的に等しい。室外ガス側温度センサ(56)は、室外熱交換器(22)のガス側端付近に接続する配管に取り付けられ、この配管の温度を計測する。室外ガス側温度センサ(56)の計測値は、室外熱交換器(22)のガス側端を通過する冷媒の温度と実質的に等しい。
一方向流通管路(45)には、上流側圧力センサ(57)と、下流側温度センサ(58)とが設けられている。上流側圧力センサ(57)は、一方向流通管路(45)における膨張機(35)の上流側に接続され、膨張機(35)へ流入する冷媒の圧力を計測する。下流側温度センサ(58)は、一方向流通管路(45)における気液分離器(23)と中間熱交換器(24)の間に設けられ、気液分離器(23)と中間熱交換器(24)を繋ぐ配管の温度を計測する。下流側温度センサ(58)の計測値は、気液分離器(23)から流出した液冷媒の温度と実質的に等しく、気液分離器(23)内の液冷媒の温度とも実質的に等しい。
各室内回路(60a,60b,60c)では、その液側端からガス側端へ向かって順に、室内膨張弁(62a,62b,62c)と室内熱交換器(61a,61b,61c)とが一つずつ配置されている。各室内回路(60a,60b,60c)の液側端は、液側連絡配管(16)を介して室外回路(20)の液側閉鎖弁(18)に接続されている。一方、各室内回路(60a,60b,60c)のガス側端は、ガス側連絡配管(17)を介して室外回路(20)のガス側閉鎖弁(19)に接続されている。
利用側熱交換器である室内熱交換器(61a,61b,61c)は、いわゆるクロスフィン型の熱交換器であって、冷媒を室内空気と熱交換させる。室内熱交換器(61a,61b,61c)には、室内ファンによって室内空気が供給される。利用側膨張弁である室内膨張弁(62a,62b,62c)は、開度可変の電動膨張弁である。
各室内回路(60a,60b,60c)には、室内液側温度センサ(63a,63b,63c)と室内ガス側温度センサ(64a,64b,64c)とが設けられている。室内液側温度センサ(63a,63b,63c)は、室内熱交換器(61a,61b,61c)の液側端と室内膨張弁(62a,62b,62c)を繋ぐ配管に取り付けられ、この配管の温度を計測する。室内液側温度センサ(63a,63b,63c)の計測値は、室内熱交換器(61a,61b,61c)の液側端を通過する冷媒の温度と実質的に等しい。室内ガス側温度センサ(64a,64b,64c)は、室内熱交換器(61a,61b,61c)のガス側端付近に接続する配管に取り付けられ、この配管の温度を計測する。室内ガス側温度センサ(64a,64b,64c)の計測値は、室内熱交換器(61a,61b,61c)のガス側端を通過する冷媒の温度と実質的に等しい。
制御器であるコントローラ(13)は、室外ユニット(11)と各室内ユニットのそれぞれに設けられた制御用基板によって構成されている。このコントローラ(13)には、上述した温度センサや圧力センサの計測値が入力されている。コントローラ(13)は、入力されたセンサの計測値に基づいて、空気調和機(10)の運転を制御する。特に、コントローラ(13)は、圧縮機(30)の回転速度と、膨張機(35)の回転速度と、ガス流量調節弁(47)の開度と、室内膨張弁(62a,62b,62c)の開度と、室外膨張弁(44)の開度とを制御する。コントローラ(13)が行う制御動作については、後述する。
−運転動作−
本実施形態の空気調和機(10)は、冷却運転である冷房運転と、加熱運転である暖房運転を行う。
〈冷房運転〉
冷房運転時の空気調和機(10)の運転動作について、図2を参照しながら説明する。
冷房運転時の空気調和機(10)では、四方切換弁(21)が第1状態に設定され、圧縮機(30)と膨張機(35)の回転速度がコントローラ(13)によって制御される。また、冷房運転時の空気調和機(10)では、各室内膨張弁(62a,62b,62c)、ガス流量調節弁(47)、及びバイパス流量調節弁(49)の開度がコントローラ(13)によって制御され、室外膨張弁(44)が全閉状態に保持される。なお、バイパス流量調節弁(49)は、通常は全閉状態に保持されており、必要な場合にだけ開かれる。
冷房運転時の空気調和機(10)では、冷媒回路(15)において蒸気圧縮冷凍サイクルが行われ、室外熱交換器(22)がガスクーラとして機能し、各室内熱交換器(61a,61b,61c)が蒸発器として機能する。
冷媒回路(15)における冷媒の流れを説明する。ここでは、バイパス流量調節弁(49)が全閉状態になっている場合の冷媒の流れについて説明する。
圧縮機(30)から吐出された超臨界状態(即ち、圧力が冷媒の臨界圧力よりも高い状態)の冷媒は、四方切換弁(21)を通って室外熱交換器(22)へ流入し、室外空気へ放熱する。続いて、冷媒は、ブリッジ回路(40)の第1逆止弁(41)を通過後に一方向流通管路(45)へ流入する。次に、冷媒は、膨張機(35)へ流入し、膨張機(35)の膨張機構(36)において膨張して気液二相状態となり、その後に気液分離器(23)へ流入して液冷媒とガス冷媒に分離される。
気液分離器(23)内の液冷媒は、中間熱交換器(24)の第1流路(25)へ流入する。一方、気液分離器(23)内のガス冷媒は、ガス抜き配管(46)へ流入し、ガス流量調節弁(47)を通過する際に減圧されてから中間熱交換器(24)の第2流路(26)へ流入する。中間熱交換器(24)では、第1流路(25)を流れる冷媒が、第2流路(26)を流れる冷媒と熱交換する。中間熱交換器(24)の第1流路(25)を通過する間に冷却された冷媒は、ブリッジ回路(40)の第3逆止弁(43)を通過後に液側連絡配管(16)へ流入する。一方、中間熱交換器(24)の第2流路(26)を通過する間に吸熱した冷媒は、圧縮機(30)の吸入側へ送られる。
液側連絡配管(16)へ流入した冷媒は、各室内回路(60a,60b,60c)へ分配される。各室内回路(60a,60b,60c)の液側端へ流入した冷媒は、室内膨張弁(62a,62b,62c)を通過する際に減圧され、その後に室内熱交換器(61a,61b,61c)へ流入し、室内空気から吸熱して蒸発する。各室内熱交換器(61a,61b,61c)において冷却された室内空気は、室内空間へ吹き出される。各室内熱交換器(61a,61b,61c)から流出した冷媒は、各室内回路(60a,60b,60c)のガス側端からガス側連絡配管(17)へ流入して合流し、室外回路(20)のガス側閉鎖弁(19)を通過する。次に、冷媒は、四方切換弁(21)を通過し、ガス抜き配管(46)から流入した冷媒と共に圧縮機(30)へ吸入される。圧縮機(30)へ吸入された冷媒は、圧縮機構(31)において圧縮され、その後に圧縮機(30)から吐出される。
冷房運転時に冷媒回路(15)で行われる冷凍サイクルについて、図4のモリエル線図(圧力−エンタルピ線図)を参照しながら説明する。なお、ここでの説明に示す点A〜点Jは、いずれも図4に示すものである。
点Aの状態の冷媒は、圧縮機(30)の圧縮機構(31)へ吸入されて圧力PHにまで圧縮され、点Bの状態(超臨界状態)となって圧縮機(30)から吐出される。点Bの状態の冷媒は、室外熱交換器(22)において室外空気へ放熱して点Cの状態(超臨界状態)となる。点Cの状態の冷媒は、膨張機(35)へ流入し、その膨張機構(36)において膨張して点Dの状態(気液二相状態)となり、その後に気液分離器(23)へ流入する。気液分離器(23)へ流入した冷媒は、点Eの状態の液冷媒(圧力PMの飽和液冷媒)と、点Hの状態のガス冷媒(圧力PMの飽和ガス冷媒)とに分離される。
点Eの状態の液冷媒は、中間熱交換器(24)の第1流路(25)へ流入する。一方、点Hの状態のガス冷媒は、ガス流量調節弁(47)を通過する際に減圧されて点Iの状態となり、その後に中間熱交換器(24)の第2流路(26)へ流入する。中間熱交換器(24)では、第1流路(25)を流れる冷媒が第2流路(26)を流れる冷媒によって冷却されて点Fの状態(過冷却状態)となり、第2流路(26)を流れる冷媒が第1流路(25)を流れる冷媒から吸熱して点Jの状態(過熱状態)となる。
冷媒回路(15)では、点Fの状態の冷媒が各室内回路(60a,60b,60c)へ分配される。各室内回路(60a,60b,60c)において、点Fの状態の冷媒は、室内膨張弁(62a,62b,62c)を通過する際に圧力PLにまで減圧されて点Gの状態(気液二相状態)となり、室内空気から吸熱して蒸発する。各室内回路(60a,60b,60c)において蒸発した冷媒は、室外回路(20)へ戻り、中間熱交換器(24)の第2流路(26)から流出した点Jの状態の冷媒と合流して点Aの状態(過熱状態)となり、その後に圧縮機(30)へ吸入される。
〈暖房運転〉
暖房運転時の空気調和機(10)の運転動作について、図3を参照しながら説明する。
暖房運転時の空気調和機(10)では、四方切換弁(21)が第2状態に設定され、圧縮機(30)と膨張機(35)の回転速度がコントローラ(13)によって制御される。また、暖房運転時の空気調和機(10)では、各室内膨張弁(62a,62b,62c)、室外膨張弁(44)、ガス流量調節弁(47)、及びバイパス流量調節弁(49)の開度がコントローラ(13)によって制御される。なお、バイパス流量調節弁(49)は、通常は全閉状態に保持されており、必要な場合にだけ開かれる。
暖房運転時の空気調和機(10)では、冷媒回路(15)において蒸気圧縮冷凍サイクルが行われ、各室内熱交換器(61a,61b,61c)がガスクーラとして機能し、室外熱交換器(22)が蒸発器として機能する。
冷媒回路(15)における冷媒の流れを説明する。ここでは、バイパス流量調節弁(49)が全閉状態になっている場合の冷媒の流れについて説明する。
圧縮機(30)から吐出された超臨界状態の冷媒は、四方切換弁(21)を通ってガス側連絡配管(17)へ流入し、各室内回路(60a,60b,60c)へ分配される。各室内回路(60a,60b,60c)のガス側端へ流入した冷媒は、室内熱交換器(61a,61b,61c)へ流入し、室内空気へ放熱する。各室内熱交換器(61a,61b,61c)において加熱された室内空気は、室内空間へ吹き出される。次に、冷媒は、室内膨張弁(62a,62b,62c)を通過する際に減圧され、その後に各室内回路(60a,60b,60c)の液側端から液側連絡配管(16)へ流入して合流し、室外回路(20)の液側閉鎖弁(18)を通過する。
室外回路(20)の液側閉鎖弁(18)を通過した冷媒は、ブリッジ回路(40)の第2逆止弁(42)を通過後に一方向流通管路(45)へ流入する。次に、冷媒は、膨張機(35)へ流入し、膨張機(35)の膨張機構(36)において膨張して気液二相状態となり、その後に気液分離器(23)へ流入して液冷媒とガス冷媒に分離される。
気液分離器(23)内の液冷媒は、中間熱交換器(24)の第1流路(25)へ流入する。一方、気液分離器(23)内のガス冷媒は、ガス抜き配管(46)へ流入し、ガス流量調節弁(47)を通過する際に減圧されてから中間熱交換器(24)の第2流路(26)へ流入する。中間熱交換器(24)では、第1流路(25)を流れる冷媒が、第2流路(26)を流れる冷媒と熱交換する。中間熱交換器(24)の第1流路(25)を通過する間に冷却された冷媒は、ブリッジ回路(40)の室外膨張弁(44)を通過する際に減圧され、その後に室外熱交換器(22)へ流入する。一方、中間熱交換器(24)の第2流路(26)を通過する間に吸熱した冷媒は、圧縮機(30)の吸入側へ送られる。
室外熱交換器(22)へ流入した冷媒は、室外空気から吸熱して蒸発する。次に、冷媒は、四方切換弁(21)を通過し、ガス抜き配管(46)から流入した冷媒と共に圧縮機(30)へ吸入される。圧縮機(30)へ吸入された冷媒は、圧縮機構(31)において圧縮され、その後に圧縮機(30)から吐出される。
暖房運転時に冷媒回路(15)で行われる冷凍サイクルについて、図5のモリエル線図(圧力−エンタルピ線図)を参照しながら説明する。なお、ここでの説明に示す点A〜点Jは、いずれも図5に示すものである。
点Aの状態の冷媒は、圧縮機(30)の圧縮機構(31)へ吸入されて圧力PHにまで圧縮され、点Bの状態(超臨界状態)となって圧縮機(30)から吐出される。冷媒回路(15)では、点Bの状態の冷媒が各室内回路(60a,60b,60c)へ分配される。各室内回路(60a,60b,60c)において、点Bの状態の冷媒は、室内空気へ放熱して点Cの状態(超臨界状態)となり、その後に室内膨張弁(62a,62b,62c)を通過する際に圧力PM2にまで減圧されて点C'の状態となる。点C'の状態の冷媒は、膨張機(35)へ流入し、その膨張機構(36)において膨張して点Dの状態(気液二相状態)となり、その後に気液分離器(23)へ流入する。気液分離器(23)へ流入した冷媒は、点Eの状態の液冷媒(圧力PM1の飽和液冷媒)と、点Hの状態のガス冷媒(圧力PM1の飽和ガス冷媒)とに分離される。
点Eの状態の液冷媒は、中間熱交換器(24)の第1流路(25)へ流入する。一方、点Hの状態のガス冷媒は、ガス流量調節弁(47)を通過する際に減圧されて点Iの状態となり、その後に中間熱交換器(24)の第2流路(26)へ流入する。中間熱交換器(24)では、第1流路(25)を流れる冷媒が第2流路(26)を流れる冷媒によって冷却されて点Fの状態(過冷却状態)となり、第2流路(26)を流れる冷媒が第1流路(25)を流れる冷媒から吸熱して点Jの状態(過熱状態)となる。
点Fの状態の冷媒は、室外膨張弁(44)を通過する際に圧力PLにまで減圧されて点Gの状態となる。点Gの状態の冷媒は、室外熱交換器(22)において室外空気から吸熱して蒸発する。次に、冷媒は、中間熱交換器(24)の第2流路(26)から流出した点Jの状態の冷媒と合流して点Aの状態(過熱状態)となり、その後に圧縮機(30)へ吸入される。
−冷房運転時のコントローラの制御動作−
冷房運転時にコントローラ(13)が行う制御動作を説明する。コントローラ(13)は、以下で説明する制御動作を、所定の時間毎(例えば、20秒毎)に繰り返し行う。
冷房運転時には、コントローラ(13)が、圧縮機(30)及び膨張機(35)の回転速度と、ガス流量調節弁(47)、各室内膨張弁(62a,62b,62c)、及びバイパス流量調節弁(49)の開度とを制御する。また、コントローラ(13)は、ガス流量調節弁(47)の制御において用いる第1目標圧力差を調節する動作を行う。
〈圧縮機に対する制御動作〉
コントローラ(13)は、冷凍サイクルの低圧(図4における圧力PL)が所定の目標値(目標低圧)となるように、圧縮機(30)の回転速度を制御する。目標低圧は、例えば、飽和温度が7℃となる圧力に設定される。冷凍サイクルの低圧は、吸入圧力センサ(52)の計測値と実質的に等しい。そこで、コントローラ(13)は、吸入圧力センサ(52)の計測値が目標低圧となるように、圧縮機(30)の電動機(32)の回転速度を調節する。具体的に、コントローラ(13)は、吸入圧力センサ(52)の計測値が目標低圧を上回っている場合に圧縮機(30)の回転速度を引き上げ、吸入圧力センサ(52)の計測値が目標低圧を下回っている場合に圧縮機(30)の回転速度を引き下げる。
〈膨張機に対する制御動作〉
コントローラ(13)は、冷凍サイクルの高圧(図4における圧力PH)が所定の目標値(目標高圧)となるように、膨張機(35)の回転速度を制御する。冷凍サイクルの高圧は、吐出圧力センサ(54)の計測値と実質的に等しい。そこで、コントローラ(13)は、吐出圧力センサ(54)の計測値が目標高圧となるように、膨張機(35)の発電機(37)の回転速度を調節する。具体的に、コントローラ(13)は、吐出圧力センサ(54)の計測値が目標高圧を上回っている場合に膨張機(35)の回転速度を引き上げ、吐出圧力センサ(54)の計測値が目標高圧を下回っている場合に膨張機(35)の回転速度を引き下げる。
〈ガス流量調節弁に対する制御動作〉
コントローラ(13)は、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口における冷媒の圧力差ΔP1が所定の目標値(第1目標圧力差)となるように、ガス流量調節弁(47)の開度を調節する。
ここで、下流側温度センサ(58)の計測値は、気液分離器(23)内の飽和液冷媒の温度と実質的に等しい。従って、下流側温度センサ(58)の計測値が飽和温度である冷媒の圧力(即ち、飽和圧力)は、気液分離器(23)内の冷媒の圧力PMと実質的に等しい。また、気液分離器(23)内の冷媒の圧力は、膨張機(35)の出口における冷媒の圧力と実質的に等しい。一方、吸入圧力センサ(52)の計測値は、圧縮機(30)の入口における冷媒の圧力PLと実質的に等しい。
そこで、コントローラ(13)は、下流側温度センサ(58)の計測値が飽和温度である冷媒の圧力を、膨張機(35)の出口における冷媒の圧力とし、吸入圧力センサ(52)の計測値を、圧縮機(30)の入口における冷媒の圧力とする。そして、コントローラ(13)は、膨張機(35)の出口における冷媒の圧力から圧縮機(30)の出口における冷媒の圧力を減じた値を圧力差ΔP1とし(ΔP1=PM−PL)、この圧力差ΔP1が第1目標圧力差となるようにガス流量調節弁(47)の開度を調節する。
具体的に、コントローラ(13)は、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口の圧力差ΔP1が第1目標圧力差を上回っている場合に、ガス流量調節弁(47)の開度を拡大する。ガス流量調節弁(47)の開度が拡大すると、気液分離器(23)からガス抜き配管(46)へ流出するガス冷媒の流量が増加し、気液分離器(23)内の冷媒の圧力PMが低下する。その結果、膨張機(35)の出口における冷媒の圧力が低下し、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口における冷媒の圧力差ΔP1が小さくなる。
また、コントローラ(13)は、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口における冷媒の圧力差ΔP1が第1目標圧力差を下回っている場合に、ガス流量調節弁(47)の開度を縮小する。ガス流量調節弁(47)の開度が縮小すると、気液分離器(23)からガス抜き配管(46)へ流出するガス冷媒の流量が減少し、気液分離器(23)内の冷媒の圧力PMが上昇する。その結果、膨張機(35)の出口における冷媒の圧力が上昇し、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口における冷媒の圧力差ΔP1が大きくなる。
なお、コントローラ(13)は、気液分離器(23)内の冷媒の圧力が冷媒(本実施形態では二酸化炭素)の臨界圧力よりも低くなるようにガス流量調節弁(47)の開度を調節する動作も行う。
ここで、気液分離器(23)は、冷媒回路(15)を循環する冷媒の量を調節するためのレシーバを兼ねている。気液分離器(23)に貯留する液冷媒の量が増減すると、気液分離器(23)内の冷媒の質量が変化し、その結果、冷媒回路(15)を循環する冷媒の量が適正値となる。ところが、気液分離器(23)内の冷媒の圧力がその臨界圧力以上になると、気液分離器(23)内の冷媒は、液相と気相の区別がない超臨界状態になる。このため、気液分離器(23)内の冷媒の質量は、気液分離器(23)の容積と冷媒の密度だけによって定まり、変動しなくなる。
そこで、コントローラ(13)は、下流側温度センサ(58)の計測値から算出した圧力(即ち、気液分離器(23)内の冷媒の圧力PM)を監視し、この圧力PMが冷媒の臨界圧力以上になると、ガス流量調節弁(47)の開度を拡大し、気液分離器(23)内の冷媒の圧力を引き下げる。このコントローラ(13)の動作によって、気液分離器(23)内の冷媒の圧力は、その臨界圧力よりも低い圧力に保たれる。
〈室内膨張弁に対する制御動作〉
コントローラ(13)は、室内熱交換器(61a,61b,61c)の出口(ガス側端)における冷媒の過熱度が所定の目標値(目標過熱度)となるように、室内膨張弁(62a,62b,62c)の開度を調節する。コントローラ(13)は、各室内ユニット(12a,12b,12c)の室内膨張弁(62a,62b,62c)の開度を、個別に調節する。また、コントローラ(13)は、ユーザーが空気調和機(10)のリモコン等へ入力した設定温度に基づいて、目標過熱度の値を設定する。
コントローラ(13)が第1の室内ユニット(12a)の室内膨張弁(62a)の開度を調節する動作について説明する。
コントローラ(13)は、室内ガス側温度センサ(64a)の計測値TRG1から室内液側温度センサ(63a)の計測値TRL1を減じた値を、室内熱交換器(61a)から流出した冷媒の過熱度SHR1とする(SHR1=TRG1−TRL1)。そして、コントローラ(13)は、算出した冷媒の過熱度SHR1が目標過熱度となるように、室内膨張弁(62a)の開度を調節する。具体的に、コントローラ(13)は、冷媒の過熱度SHR1が目標過熱度を上回っている場合に室内膨張弁(62a)の開度を拡大し、冷媒の過熱度SHR1が目標過熱度を下回っている場合に室内膨張弁(62a)の開度を縮小する。
上述したように、コントローラ(13)は、他の室内ユニット(12b,12c)の室内膨張弁(62b,62c)に対しても、同様の制御動作を行う。つまり、コントローラ(13)は、室内ガス側温度センサ(64b)の計測値TRG2から室内液側温度センサ(63b)の計測値TRL2を減じた値を、室内熱交換器(61b)から流出した冷媒の過熱度SHR2とする(SHR2=TRG2−TRL2)。そして、コントローラ(13)は、冷媒の過熱度SHR2が目標過熱度を上回っている場合に室内膨張弁(62b)の開度を拡大し、冷媒の過熱度SHR2が目標過熱度を下回っている場合に室内膨張弁(62b)の開度を縮小する。また、コントローラ(13)は、室内ガス側温度センサ(64c)の計測値TRG3から室内液側温度センサ(63c)の計測値TRL3を減じた値を、室内熱交換器(61c)から流出した冷媒の過熱度SHR3とする(SHR3=TRG3−TRL3)。そして、コントローラ(13)は、冷媒の過熱度SHR3が目標過熱度を上回っている場合に室内膨張弁(62c)の開度を拡大し、冷媒の過熱度SHR3が目標過熱度を下回っている場合に室内膨張弁(62c)の開度を縮小する。
〈バイパス流量調節弁に対する制御動作〉
上述したように、コントローラ(13)は、通常はバイパス流量調節弁(49)を全閉状態に保持している。ところが、バイパス流量調節弁(49)が全閉状態になっていると、冷凍サイクルの高圧PHを目標高圧に保つことができない場合がある。そこで、このような場合、コントローラ(13)は、バイパス流量調節弁(49)に対する制御動作を行う。
先ず、膨張機(35)の回転速度をその時の運転条件における最高値に設定しても、冷凍サイクルの高圧PHが目標高圧を上回る場合がある。その場合、コントローラ(13)は、バイパス流量調節弁(49)の開度を、吐出圧力センサ(54)の計測値が目標高圧となるように調節する。バイパス流量調節弁(49)の開度が拡大すると、バイパス配管(48)を流れる冷媒の流量が増加し、吐出圧力センサ(54)の計測値が低下する。
次に、例えば膨張機(35)の入口の圧力PHと膨張機(35)の出口の圧力PMの差が非常に小さい運転状態では、膨張機(35)において冷媒から動力を回収できない場合がある。膨張機構(36)を回転させるには、摩擦力や潤滑油の粘性に打ち勝って膨張機構(36)の構成部品を変位させる必要があり、そのためにはある程度の動力が必要だからである。
そこで、コントローラ(13)は、膨張機(35)を作動させることができない運転状態に陥ると、膨張機(35)を停止させ、バイパス流量調節弁(49)を開く。そして、コントローラ(13)は、冷凍サイクルの高圧PHが目標高圧となるように、バイパス流量調節弁(49)の開度を調節する。具体的に、コントローラ(13)は、吐出圧力センサ(54)の計測値が目標高圧を上回っている場合にバイパス流量調節弁(49)の開度を拡大し、吐出圧力センサ(54)の計測値が目標高圧を下回っている場合にバイパス流量調節弁(49)の開度を縮小する。また、コントローラ(13)は、バイパス流量調節弁(49)が開いている間はガス流量調節弁(47)を全閉状態に保持する。
〈第1目標圧力差を調節する動作〉
コントローラ(13)は、冷房運転時のガス流量調節弁(47)の制御に用いる第1目標圧力差を、室内膨張弁(62a,62b,62c)の開度に基づいて調節する。この第1目標圧力差の初期値は、例えば0.5MPaに設定される。ただし、後述するように、第1目標圧力差の初期値は、空気調和機(10)を据え付ける際に、空気調和機(10)の設置状態に応じた値に設定される。
先ず、コントローラ(13)は、冷房運転中に第1条件と第2条件の両方が成立すると、第1目標圧力差を所定の値(例えば、0.1MPa)だけ増やす。第1条件は、“各室内ユニット(12a,12b,12c)の室内膨張弁(62a,62b,62c)のうちの少なくとも一つの開度が、所定の上限開度(例えば、全開状態の90%)を超える”という条件である。第2条件は、“第1条件の継続時間が所定の時間(例えば、1分間)以上に達する”という条件である。コントローラ(13)では、第1条件が冷房運転中に第1目標圧力差を増やすための必要条件となっている。
ここで、液側連絡配管(16)から室内回路(60a,60b,60c)の液側端へ流入する冷媒と、室内回路(60a,60b,60c)のガス側端からガス側連絡配管(17)へ流入する冷媒の圧力差が小さい状態では、室内膨張弁(62a,62b,62c)の開度を大きくしても、室内熱交換器(61a,61b,61c)へ流入する冷媒の流量はそれほど増加しない。従って、冷房運転中に膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口の圧力差ΔP1が小さい状態では、室内膨張弁(62a,62b,62c)の開度が所定の上限開度を超えてしまう。
そこで、コントローラ(13)は、“室内膨張弁(62a,62b,62c)のうちの少なくとも一つの開度が所定の上限開度を超える”という第1条件を、冷房運転中に第1目標圧力差を増加させるための必要条件としている。そして、コントローラ(13)は、第1条件と第2条件の両方が成立すると、第1目標圧力差を所定の値だけ増やす。第1目標圧力差が増加すると、コントローラ(13)は、ガス流量調節弁(47)の開度を縮小することによって気液分離器(23)内の冷媒の圧力を上昇させ、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口の圧力差を拡大して変更後の第1目標圧力差に近付ける。
上述したように、コントローラ(13)は、制御動作を所定の時間毎(本実施形態では20秒毎)に繰り返し行う。ただし、コントローラ(13)は、第1目標圧力差を増やしてから所定の待機時間(例えば、5分間)が経過するまでの間は、第1目標圧力差の変更を禁止する。この待機時間は、第1目標圧力差の変更に起因する冷媒圧力の変動が納まるのに要する時間である。そして、第1目標圧力差が増えてから所定の待機時間が経過しても第1条件と第2条件の両方が依然として成立している場合、コントローラ(13)は、第1目標圧力差を更に所定の値だけ増加させる。つまり、コントローラ(13)は、第1条件と第2条件の少なくとも一方が成立しなくなるまで、第1目標圧力差を所定の値ずつ増やしてゆく。
次に、コントローラ(13)は、冷房運転中に第3条件が成立すると、第1目標圧力差を所定の値(例えば、0.1MPa)だけ減らす。第3条件は、“全ての室内ユニット(12a,12b,12c)の室内膨張弁(62a,62b,62c)の開度が、所定の下限開度(例えば、全開状態の60%)を下回る”という条件である。コントローラ(13)では、第3条件が冷房運転中に第1目標圧力差を減らすための必要十分条件となっている。
ここで、室内熱交換器(61a,61b,61c)へ流入する冷媒の流量が一定であれば、液側連絡配管(16)から室内回路(60a,60b,60c)の液側端へ流入する冷媒と、室内回路(60a,60b,60c)のガス側端からガス側連絡配管(17)へ流出する冷媒の圧力差が大きいほど、室内膨張弁(62a,62b,62c)の開度は小さくなる。このため、冷房運転中に全ての室内膨張弁(62a,62b,62c)の開度が所定の下限開度を下回っている場合には、室外回路(20)から液側連絡配管(16)へ送り出される冷媒と、ガス側連絡配管(17)から室外回路(20)へ戻ってきた冷媒の圧力差が必要以上に大きくなっていると判断できる。
そこで、コントローラ(13)は、“全ての室内ユニット(12a,12b,12c)の開度が所定の下限開度を下回る”という第3条件を、冷房運転中に第1目標圧力差を減少させるための必要十分条件としている。そして、コントローラ(13)は、第3条件が成立すると、第1目標圧力差を所定の値だけ減らす。第1目標圧力差が減少すると、コントローラ(13)は、ガス流量調節弁(47)の開度を拡大することによって気液分離器(23)内の冷媒の圧力を低下させ、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口の圧力差を縮小して変更後の第1目標圧力差に近付ける。
上述したように、コントローラ(13)は、制御動作を所定の時間毎(本実施形態では20秒毎)に繰り返し行う。ただし、コントローラ(13)は、第1目標圧力差を減らしてから所定の待機時間(例えば、5分間)が経過するまでの間は、第1目標圧力差の変更を禁止する。この待機時間は、第1目標圧力差の変更に起因する冷媒圧力の変動が納まるのに要する時間である。そして、第1目標圧力差が減ってから所定の待機時間が経過しても第3条件が依然として成立している場合、コントローラ(13)は、第1目標圧力差を更に所定の値だけ減少させる。つまり、コントローラ(13)は、第3条件が成立しなくなるまで、第1目標圧力差を所定の値ずつ減らしてゆく。
なお、第1目標圧力差の初期値は、空気調和機(10)を据え付けた直後に行われる試運転の結果に基づいて設定される。ここで、第1目標圧力差の適正値は、空気調和機(10)の設置状態(例えば、連絡配管(16,17)の長さや、室外ユニット(11)と各室内ユニット(12a,12b,12c)の高低差など)に応じて定まる。従って、第1目標圧力差の適正値は、空気調和機(10)毎に異なる。このため、第1目標圧力差の初期値は、空気調和機(10)がビル等に設置された後に設定される。その際、第1目標圧力差の初期値の設定は、作業者が手動で行ってもよいし、コントローラ(13)が自動で行ってもよい。
ところで、本実施形態のコントローラ(13)では、第1条件が冷房運転中に第1目標圧力差を増やすための必要十分条件となっていてもよい。その場合、コントローラ(13)は、冷房運転中に第1条件が成立すると、第1目標圧力差を所定の値だけ増やす。また、本実施形態のコントローラ(13)では、第3条件が冷房運転中に第1目標圧力差を減らすための必要条件となっていてもよい。その場合、コントローラ(13)は、冷房運転中に第3条件と他の条件(例えば、“第3条件の継続時間が所定の時間(例えば、1分間)以上に達する”という条件)の両方が成立すると、第1目標圧力差を所定の値だけ減らす。
−暖房運転時のコントローラの制御動作−
暖房運転時にコントローラ(13)が行う制御動作を説明する。コントローラ(13)は、以下で説明する制御動作を、所定の時間毎(例えば、20秒毎)に繰り返し行う。
暖房運転時には、コントローラ(13)が、圧縮機(30)及び膨張機(35)の回転速度と、各室内膨張弁(62a,62b,62c)、ガス流量調節弁(47)、室外膨張弁(44)、及びバイパス流量調節弁(49)の開度とを制御する。また、コントローラ(13)は、膨張機(35)の制御において用いる第2目標圧力差を調節する動作と、ガス流量調節弁(47)の開度制御において用いる第3目標圧力差を調節する動作とを行う。
〈圧縮機に対する制御動作〉
コントローラ(13)は、冷凍サイクルの高圧(図5における圧力PH)が所定の目標値(目標高圧)となるように、圧縮機(30)の回転速度を制御する。目標高圧は、例えば9MPaに設定される。冷凍サイクルの高圧は、吐出圧力センサ(54)の計測値と実質的に等しい。そこで、コントローラ(13)は、吐出圧力センサ(54)の計測値が目標高圧となるように、圧縮機(30)の電動機(32)の回転速度を調節する。具体的に、コントローラ(13)は、吐出圧力センサ(54)の計測値が目標高圧を上回っている場合に圧縮機(30)の回転速度を引き下げ、吐出圧力センサ(54)の計測値が目標高圧を下回っている場合に圧縮機(30)の回転速度を引き上げる。
〈室内膨張弁に対する制御動作〉
コントローラ(13)は、室内熱交換器(61a,61b,61c)の出口(液側端)における冷媒の温度が所定の目標値(目標温度)となるように、室内膨張弁(62a,62b,62c)の開度を調節する。コントローラ(13)は、各室内ユニット(12a,12b,12c)の室内膨張弁(62a,62b,62c)の開度を、個別に調節する。また、コントローラ(13)は、ユーザーが空気調和機(10)のリモコン等へ入力した設定温度に基づいて、目標温度の値を設定する。
コントローラ(13)が第1の室内ユニット(12a)の室内膨張弁(62a)の開度を調節する動作について説明する。
室内液側温度センサ(63a)の計測値TRL1は、室内熱交換器(61a)から流出した超臨界状態の冷媒の温度と実質的に等しい。そこで、コントローラ(13)は、室内液側温度センサ(63a)の計測値が目標温度となるように、室内膨張弁(62a)の開度を調節する。具体的に、コントローラ(13)は、室内液側温度センサ(63a)の計測値が目標温度を上回っている場合に室内膨張弁(62a)の開度を縮小し、室内液側温度センサ(63a)の計測値が目標温度を下回っている場合に室内膨張弁(62a)の開度を拡大する。なお、コントローラ(13)は、ユーザーが空気調和機(10)のリモコン等へ入力した設定温度に基づいて、目標温度の値を設定する。
上述したように、コントローラ(13)は、他の室内ユニット(12b,12c)の室内膨張弁(62b,62c)に対しても、同様の制御動作を行う。つまり、コントローラ(13)は、室内液側温度センサ(63b)の計測値が目標温度を上回っている場合に室内膨張弁(62b)の開度を縮小し、室内液側温度センサ(63b)の計測値が目標温度を下回っている場合に室内膨張弁(62b)の開度を拡大する。また、コントローラ(13)は、室内液側温度センサ(63c)の計測値が目標温度を上回っている場合に室内膨張弁(62c)の開度を縮小し、室内液側温度センサ(63c)の計測値が目標温度を下回っている場合に室内膨張弁(62c)の開度を拡大する。
〈膨張機に対する制御動作〉
コントローラ(13)は、圧縮機(30)の出口と膨張機(35)の入口における冷媒の圧力差ΔP2が所定の目標値(第2目標圧力差)となるように、膨張機(35)の回転速度を調節する。
吐出圧力センサ(54)の計測値は、圧縮機(30)の出口における冷媒の圧力PHと実質的に等しい。上流側圧力センサ(57)の計測値は、膨張機(35)の入口における冷媒の圧力PM2と実質的に等しい。そこで、コントローラ(13)は、吐出圧力センサ(54)の計測値から上流側圧力センサ(57)の計測値を減じた値を圧力差ΔP2とし(ΔP2=PH−PM2)、この圧力差ΔP2が第2目標圧力差となるように膨張機(35)の回転速度を調節する。
具体的に、コントローラ(13)は、圧縮機(30)の出口と膨張機(35)の入口における冷媒の圧力差ΔP2が第2目標圧力差を上回っている場合に、膨張機(35)の回転速度を低下させる。膨張機(35)の回転速度が低下すると、膨張機(35)を通過する冷媒の流量が減少し、膨張機(35)の入口における冷媒の圧力PM2が上昇する。その結果、圧縮機(30)の出口と膨張機(35)の入口における冷媒の圧力差ΔP2が小さくなる。
また、コントローラ(13)は、圧縮機(30)の出口と膨張機(35)の入口における冷媒の圧力差ΔP2が第2目標圧力差を下回っている場合に、膨張機(35)の回転速度を上昇させる。膨張機(35)の回転速度が上昇すると、膨張機(35)を通過する冷媒の流量が増加し、膨張機(35)の入口における冷媒の圧力PM2が低下する。その結果、圧縮機(30)の出口と膨張機(35)の入口における冷媒の圧力差ΔP2が大きくなる。
〈ガス流量調節弁に対する制御動作〉
コントローラ(13)は、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口における冷媒の圧力差ΔP1が所定の目標値(第3目標圧力差)となるように、ガス流量調節弁(47)の開度を調節する。
冷房運転時と同様に、コントローラ(13)は、下流側温度センサ(58)の計測値が飽和温度である冷媒の圧力PM1を、膨張機(35)の出口における冷媒の圧力とし、吸入圧力センサ(52)の計測値を、圧縮機(30)の入口における冷媒の圧力PLとする。そして、コントローラ(13)は、下流側温度センサ(58)の計測値を用いて算出した圧力PM1から吸入圧力センサ(52)の計測値を減じた値を圧力差ΔP1とし(ΔP1=PM1−PL)、この圧力差ΔP1が第3目標圧力差となるようにガス流量調節弁(47)の開度を調節する。
具体的に、コントローラ(13)は、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口における冷媒の圧力差ΔP1が第3目標圧力差を上回っている場合に、ガス流量調節弁(47)の開度を拡大する。ガス流量調節弁(47)の開度が拡大すると、気液分離器(23)からガス抜き配管(46)へ流出するガス冷媒の流量が増加し、気液分離器(23)内の冷媒の圧力PM1が低下する。その結果、膨張機(35)の出口における冷媒の圧力が低下し、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口における冷媒の圧力差ΔP1が小さくなる。
また、コントローラ(13)は、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口における冷媒の圧力差ΔP1が第3目標圧力差を下回っている場合に、ガス流量調節弁(47)の開度を縮小する。ガス流量調節弁(47)の開度が縮小すると、気液分離器(23)からガス抜き配管(46)へ流出するガス冷媒の流量が減少し、気液分離器(23)内の冷媒の圧力PM1が上昇する。その結果、膨張機(35)の出口における冷媒の圧力PEOが上昇し、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口における冷媒の圧力差ΔP1が大きくなる。
また、コントローラ(13)は、冷房運転時と同様に、気液分離器(23)内の冷媒の圧力が冷媒(本実施形態では二酸化炭素)の臨界圧力よりも低くなるようにガス流量調節弁(47)の開度を調節する動作も行う。このコントローラ(13)の動作は、冷房運転時にコントローラ(13)が行う動作と同じである。
〈室外膨張弁に対する制御動作〉
コントローラ(13)は、室外熱交換器(22)の出口(ガス側端)における冷媒の過熱度が所定の目標値となるように、室外膨張弁(44)の開度を調節する。
コントローラ(13)は、室外ガス側温度センサ(56)の計測値TOGから室外液側温度センサ(55)の計測値TOLを減じた値を、室外熱交換器(22)から流出した冷媒の過熱度SHOとする(SHO=TOG−TOL)。
そして、コントローラ(13)は、算出した冷媒の過熱度SHOが所定の目標値(目標過熱度)となるように、室外膨張弁(44)の開度を調節する。具体的に、コントローラ(13)は、冷媒の過熱度SHOが目標過熱度を上回っている場合に室外膨張弁(44)の開度を拡大し、冷媒の過熱度SHOが目標過熱度を下回っている場合に室外膨張弁(44)の開度を縮小する。
〈バイパス流量調節弁に対する制御動作〉
上述したように、コントローラ(13)は、通常はバイパス流量調節弁(49)を全閉状態に保持している。ところが、バイパス流量調節弁(49)が全閉状態になっていると、圧縮機(30)の出口と膨張機(35)の入口における冷媒の圧力差ΔP2を第2目標圧力差に保つことができない場合がある。そこで、このような場合、コントローラ(13)は、バイパス流量調節弁(49)に対する制御動作を行う。
先ず、膨張機(35)の回転速度をその時の運転条件における最高値に設定しても、圧縮機(30)の出口と膨張機(35)の入口における冷媒の圧力差ΔP2が第2目標圧力差を下回る場合がある。その場合、コントローラ(13)は、バイパス流量調節弁(49)の開度を、圧縮機(30)の出口と膨張機(35)の入口の圧力差ΔP2が第2目標圧力差となるように調節する。バイパス流量調節弁(49)の開度が拡大すると、バイパス配管(48)を流れる冷媒の流量が増加する。その結果、膨張機(35)の入口における冷媒の圧力が低下し、圧縮機(30)の出口と膨張機(35)の入口の圧力差ΔP2が拡大する。
次に、冷房運転時と同様に、暖房運転時においても、膨張機(35)を作動させられない場合がある。例えば、膨張機(35)の入口の圧力PM2と膨張機(35)の出口の圧力PM1の差が非常に小さい運転状態では、膨張機(35)において冷媒から動力を回収できない場合がある。
そこで、コントローラ(13)は、膨張機(35)を作動させることができない運転状態に陥ると、膨張機(35)を停止させ、バイパス流量調節弁(49)を開く。その際、コントローラ(13)は、バイパス流量調節弁(49)を全開状態に保持する。更に、この場合には、コントローラ(13)がガス流量調節弁(47)を全閉状態に保持する。
上述したように、コントローラ(13)は、暖房運転中に圧縮機(30)の出口と膨張機(35)の入口における冷媒の圧力差ΔP2が第2目標圧力差となるように、膨張機(35)の回転速度を調節する。ところが、空気調和機(10)の運転条件によっては、膨張機(35)の回転速度が上限速度となっているにも拘わらず、圧縮機(30)の出口と膨張機(35)の入口の圧力差ΔP2が第2目標圧力差を下回る場合がある。その場合、コントローラ(13)は、バイパス流量調節弁(49)の開度を、圧縮機(30)の出口と膨張機(35)の入口の圧力差ΔP2が第2目標圧力差となるように調節する。その際、コントローラ(13)は、バイパス流量調節弁(49)が開いている間は膨張機(35)の回転速度を上限速度に保持し、バイパス流量調節弁(49)が全閉状態になると、上述した膨張機(35)の回転速度の制御を再開する。
具体的に、コントローラ(13)は、圧縮機(30)の出口と膨張機(35)の入口の圧力差ΔP2が第2目標圧力差を下回っている場合に、バイパス流量調節弁(49)の開度を拡大する。バイパス流量調節弁(49)の開度が拡大すると、バイパス配管(48)を流れる冷媒の流量が増加し、一方向流通管路(45)における膨張機(35)の上流側の圧力(即ち、膨張機(35)の入口における冷媒の圧力)が低下する。その結果、圧縮機(30)の出口と膨張機(35)の入口の圧力差ΔP2が大きくなる。
また、コントローラ(13)は、圧縮機(30)の出口と膨張機(35)の入口の圧力差ΔP2が第2目標圧力差を上回っている場合に、バイパス流量調節弁(49)の開度を縮小する。バイパス流量調節弁(49)の開度が縮小すると、バイパス配管(48)を流れる冷媒の流量が減少し、一方向流通管路(45)における膨張機(35)の上流側の圧力(即ち、膨張機(35)の入口における冷媒の圧力)が上昇する。その結果、圧縮機(30)の出口と膨張機(35)の入口の圧力差ΔP2が小さくなる。
〈第2目標圧力差を調節する動作〉
コントローラ(13)は、暖房運転時の膨張機(35)の制御に用いる第2目標圧力差を、室内膨張弁(62a,62b,62c)の開度に基づいて調節する。この第2目標圧力差の初期値は、例えば0.5MPaに設定される。ただし、後述するように、第2目標圧力差の初期値は、空気調和機(10)を据え付ける際に、空気調和機(10)の設置状態に応じた値に設定される。
先ず、コントローラ(13)は、暖房運転中に第1条件と第2条件の両方が成立すると、第2目標圧力差を所定の値(例えば、0.1MPa)だけ増やす。第1条件は、“各室内ユニット(12a,12b,12c)の室内膨張弁(62a,62b,62c)のうちの少なくとも一つの開度が、所定の上限開度(例えば、全開状態の90%)を超える”という条件である。第2条件は、“第1条件の継続時間が所定の時間(例えば、1分間)以上に達する”という条件である。つまり、コントローラ(13)では、第1条件が、暖房運転中に第2目標圧力差を増やすための必要条件となっている。なお、上記の第1条件および第2条件は、冷房運転中にコントローラ(13)が第1目標圧力差を増やすための第1条件および第2条件と同じである。
ガス側連絡配管(17)から室内回路(60a,60b,60c)のガス側端へ流入する冷媒と、室内回路(60a,60b,60c)の液側端から液側連絡配管(16)へ流出する冷媒の圧力差が小さい状態では、室内膨張弁(62a,62b,62c)の開度を大きくしても、室内熱交換器(61a,61b,61c)へ流入する冷媒の流量はそれほど増加しない。従って、暖房運転中に圧縮機(30)の出口と膨張機(35)の入口の圧力差ΔP2が小さい状態では、室内膨張弁(62a,62b,62c)の開度が所定の上限開度を超えることとなる。
そこで、コントローラ(13)は、“室内膨張弁(62a,62b,62c)のうちの少なくとも一つの開度が所定の上限開度を超える”という第1条件を、暖房運転中に第2目標圧力差を増加させるための必要条件としている。そして、コントローラ(13)は、第1条件と第2条件の両方が成立すると、第2目標圧力差を所定の値だけ増やす。第2目標圧力差が増加すると、コントローラ(13)は、膨張機(35)の回転速度を上昇させることによって膨張機(35)の入口における冷媒の圧力を低下させ、圧縮機(30)の出口と膨張機(35)の入口の圧力差を拡大して変更後の第2目標圧力差に近付ける。
上述したように、コントローラ(13)は、制御動作を所定の時間毎(本実施形態では20秒毎)に繰り返し行う。ただし、コントローラ(13)は、第2目標圧力差を増やしてから所定の待機時間(例えば、5分間)が経過するまでの間は、第2目標圧力差の変更を禁止する。この待機時間は、第2目標圧力差の変更に起因する冷媒圧力の変動が納まるのに要する時間である。そして、第2目標圧力差が増えてから所定の待機時間が経過しても第1条件と第2条件の両方が依然として成立している場合、コントローラ(13)は、第2目標圧力差を更に所定の値だけ増加させる。つまり、コントローラ(13)は、第1条件と第2条件の少なくとも一方が成立しなくなるまで、第2目標圧力差を所定の値ずつ増やしてゆく。
次に、コントローラ(13)は、冷房運転中に第3条件が成立すると、第2目標圧力差を所定の値(例えば、0.1MPa)ずつ減らす。第3条件は、“全ての室内ユニット(12a,12b,12c)の室内膨張弁(62a,62b,62c)の開度が、所定の下限開度(例えば、全開状態の60%)を下回る”という条件である。つまり、コントローラ(13)では、第3条件が、暖房運転中に第2目標圧力差を減らすための必要十分条件となっている。なお、上記の第3条件は、冷房運転中にコントローラ(13)が第1目標圧力差を減らすための第3条件と同じである。
ここで、室内熱交換器(61a,61b,61c)へ流入する冷媒の流量が一定であれば、ガス側連絡配管(17)から室内回路(60a,60b,60c)のガス側端へ流入する冷媒と、室内回路(60a,60b,60c)の液側端から液側連絡配管(16)へ流出する冷媒の圧力差が大きいほど、室内膨張弁(62a,62b,62c)の開度は小さくなる。このため、暖房運転中に全ての室内膨張弁(62a,62b,62c)の開度が所定の下限開度を下回っている場合には、室外回路(20)からガス側連絡配管(17)へ送り出される冷媒と、液側連絡配管(16)から室外回路(20)へ戻ってきた冷媒の圧力差が必要以上に大きくなっていると判断できる。
そこで、コントローラ(13)は、“全ての室内ユニット(12a,12b,12c)の開度が所定の下限開度を下回る”という第3条件を、暖房運転中に第2目標圧力差を減少させるための必要十分条件としている。そして、コントローラ(13)は、第3条件が成立すると、第2目標圧力差を所定の値だけ減らす。第2目標圧力差が減少すると、コントローラ(13)は、膨張機(35)の回転速度を低下させることによって膨張機(35)の入口における冷媒の圧力を上昇させ、圧縮機(30)の出口と膨張機(35)の入口の圧力差を縮小して変更後の第2目標圧力差に近付ける。
上述したように、コントローラ(13)は、制御動作を所定の時間毎(本実施形態では20秒毎)に繰り返し行う。ただし、コントローラ(13)は、第2目標圧力差を減らしてから所定の待機時間(例えば、5分間)が経過するまでの間は、第2目標圧力差の変更を禁止する。この待機時間は、第2目標圧力差の変更に起因する冷媒圧力の変動が納まるのに要する時間である。そして、第2目標圧力差が減ってから所定の待機時間が経過しても第3条件が依然として成立している場合、コントローラ(13)は、第2目標圧力差を更に所定の値だけ減少させる。つまり、コントローラ(13)は、第3条件が成立しなくなるまで、第2目標圧力差を所定の値ずつ減らしてゆく。
なお、第2目標圧力差の初期値は、冷房運転中にコントローラ(13)が用いる目標圧力差(即ち、圧力差ΔP1の目標値)と同様に、空気調和機(10)を据え付けた直後に行われる試運転の結果に基づいて設定される。その際、第2目標圧力差の初期値の設定は、作業者が手動で行ってもよいし、コントローラ(13)が自動で行ってもよい。
ところで、本実施形態のコントローラ(13)では、第1条件が暖房運転中に第2目標圧力差を増やすための必要十分条件となっていてもよい。その場合、コントローラ(13)は、暖房運転中に第1条件が成立すると、第2目標圧力差を所定の値だけ増やす。また、本実施形態のコントローラ(13)では、第3条件が暖房運転中に第2目標圧力差を減らすための必要条件となっていてもよい。その場合、コントローラ(13)は、暖房運転中に第3条件と他の条件(例えば、“第3条件の継続時間が所定の時間(例えば、1分間)以上に達する”という条件)の両方が成立すると、第2目標圧力差を所定の値だけ減らす。
〈第3目標圧力差を調節する動作〉
コントローラ(13)は、暖房運転時のガス流量調節弁(47)の制御に用いる第3目標圧力差を、室外膨張弁(44)の開度に基づいて調節する。この第3目標圧力差の初期値は、例えば0.3MPaに設定される。
先ず、コントローラ(13)は、暖房運転中に第4条件と第5条件の両方が成立すると、第3目標圧力差を所定の値(例えば、0.1MPa)だけ増やす。第4条件は、“室外膨張弁(44)の開度が、所定の上限開度(例えば、全開状態の90%)を超える”という条件である。第5条件は、“第4条件の継続時間が所定の時間(例えば、1分間)以上に達する”という条件である。つまり、コントローラ(13)では、第4条件が、暖房運転中に第3目標圧力差を増やすための必要条件となっている。
ここで、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口の圧力差ΔP1が小さすぎる状態では、室外膨張弁(44)がほぼ全開状態となる。室外膨張弁(44)の開度が全開に近い状態では、室外膨張弁(44)の開度調節によって室外熱交換器(22)を流れる冷媒の状態を適切に制御するのが困難となる。具体的には、室外熱交換器(22)における冷媒の蒸発温度を適正値に保つのが困難となり、その結果、室外熱交換器(22)の出口における冷媒の過熱度を目標過熱度に保持することが困難となる。また、室外膨張弁(44)の開度が全開に近い状態では、気液分離器(23)内に充分な量の液冷媒を保持するのが困難となる。
そこで、コントローラ(13)は、“室外膨張弁(44)の開度が所定の上限開度を超える”という第4条件を、暖房運転中に第3目標圧力差を増加させるための必要条件としている。そして、コントローラ(13)は、上記の第4条件と第5条件の両方が成立すると、第3目標圧力差を所定の値だけ増やす。第3目標圧力差が増加すると、コントローラ(13)は、ガス流量調節弁(47)の開度を縮小することによって気液分離器(23)内の冷媒の圧力を上昇させ、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口の圧力差を拡大して変更後の第3目標圧力差に近付ける。
上述したように、コントローラ(13)は、制御動作を所定の時間毎(本実施形態では20秒毎)に繰り返し行う。ただし、コントローラ(13)は、第3目標圧力差を増やしてから所定の待機時間(例えば、5分間)が経過するまでの間は、第3目標圧力差の変更を禁止する。この待機時間は、第3目標圧力差の変更に起因する冷媒圧力の変動が納まるのに要する時間である。そして、第3目標圧力差が増えてから所定の待機時間が経過しても第4条件と第5条件の両方が依然として成立している場合、コントローラ(13)は、第3目標圧力差を更に所定の値だけ増加させる。つまり、コントローラ(13)は、第4条件と第5条件の少なくとも一方が成立しなくなるまで、第3目標圧力差を所定の値ずつ増やしてゆく。
次に、コントローラ(13)は、暖房運転中に第6条件と第7条件の両方が成立すると、第3目標圧力差を所定の値(例えば、0.1MPa)だけ減らす。第6条件は、“室外膨張弁(44)の開度が、所定の下限開度(例えば、全開状態の60%)を下回る”という条件である。第7条件は、“第6条件の継続時間が所定の時間(例えば、1分間)以上に達する”という条件である。つまり、コントローラ(13)では、第6条件が、暖房運転中に第3目標圧力差を減らすための必要条件となっている。
ここで、気液分離器(23)から室外膨張弁(44)へ送られる冷媒と、室外膨張弁(44)から室外熱交換器(22)へ送られる冷媒の圧力差が大きいほど、室外膨張弁(44)の開度は小さくなる。このため、室外膨張弁(44)の開度が所定の下限開度を下回っている場合には、室外膨張弁(44)から室外熱交換器(22)へ送られる冷媒の圧力差(即ち、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口の圧力差ΔP1)が必要以上に大きくなっていると判断できる。
そこで、コントローラ(13)は、“室外膨張弁(44)の開度が所定の上限開度を超える”という第6条件を、暖房運転中に第3目標圧力差を減少させるための必要条件としている。そして、コントローラ(13)は、第6条件と第7条件の両方が成立すると、第3目標圧力差を所定の値だけ減らす。第3目標圧力差が減少すると、コントローラ(13)は、ガス流量調節弁(47)の開度を拡大することによって気液分離器(23)内の冷媒の圧力を低下させ、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口の圧力差を縮小して変更後の第3目標圧力差に近付ける。
上述したように、コントローラ(13)は、制御動作を所定の時間毎(本実施形態では20秒毎)に繰り返し行う。ただし、コントローラ(13)は、第3目標圧力差を減らしてから所定の待機時間(例えば、5分間)が経過するまでの間は、第3目標圧力差の変更を禁止する。この待機時間は、第3目標圧力差の変更に起因する冷媒圧力の変動が納まるのに要する時間である。そして、第3目標圧力差が減ってから所定の待機時間が経過しても第6条件と第7条件の両方が依然として成立している場合、コントローラ(13)は、第3目標圧力差を更に所定の値だけ減少させる。つまり、コントローラ(13)は、第6条件と第7条件の少なくとも一方が成立しなくなるまで、第3目標圧力差を所定の値ずつ減らしてゆく。
なお、第3目標圧力差の初期値は、空気調和機(10)を製造する際に設定される。本実施形態の空気調和装置では、気液分離器(23)と室外熱交換器(22)の両方が室外ユニット(11)に収容されており、両者を繋ぐ配管の長さや両者の位置関係は不変だからである。
ところで、本実施形態のコントローラ(13)では、第4条件が暖房運転中に第3目標圧力差を増やすための必要十分条件となっていてもよい。その場合、コントローラ(13)は、暖房運転中に第4条件が成立すると、第3目標圧力差を所定の値だけ増やす。また、本実施形態のコントローラ(13)では、第6条件が暖房運転中に第3目標圧力差を減らすための必要十分条件となっていてもよい。その場合、コントローラ(13)は、暖房運転中に第6条件が成立すると、第3目標圧力差を所定の値だけ減らす。
−実施形態1の効果−
本実施形態の空気調和機(10)では、冷房運転中にコントローラ(13)がガス流量調節弁(47)の開度を調節する。上述したように、ガス流量調節弁(47)の開度を変更すると、気液分離器(23)内の冷媒の圧力が変化し、その結果、膨張機(35)の出口における冷媒の圧力が変化する。そこで、コントローラ(13)は、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口の圧力差が第1目標圧力差となるように、ガス流量調節弁(47)の開度を調節する。
ここで、冷房運転中に各室内ユニット(12a,12b,12c)の冷房能力を適切に制御するためには、室外ユニット(11)から送出される冷媒と室外ユニット(11)へ戻ってきた冷媒の圧力差をできるだけ大きくするのが望ましい。従って、室内ユニット(12a,12b,12c)の冷房能力の制御だけを考慮するなら、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口の圧力差をできるだけ大きくするのが望ましいこととなる。しかし、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口の圧力差を大きくするには、膨張機(35)の出口における冷媒の圧力を高くする必要があり、そうすると、膨張機(35)の入口と出口における冷媒の圧力差が小さくなり、膨張機(35)で得られる動力が少なくなってしまう。
これに対し、本実施形態のコントローラ(13)は、冷房運転中に膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口の圧力差が第1目標圧力差となるように、ガス流量調節弁(47)の開度を調節する。つまり、コントローラ(13)は、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口の圧力差が所定値以上となるようにガス流量調節弁(47)の開度を調節するのではなく、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口の圧力差が第1目標圧力差に保たれるようにガス流量調節弁(47)の開度を調節する。このため、冷房運転中に膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口の圧力差が大きくなり過ぎることはなく、膨張機(35)の入口と出口における冷媒の圧力差が確保され、膨張機(35)で得られる動力も確保される。
更に、本実施形態のコントローラ(13)は、冷房運転時のガス流量調節弁(47)の制御に用いる第1目標圧力差を、室内膨張弁(62a,62b,62c)の開度に基づいて調節する。従って、本実施形態によれば、第1目標圧力差を適切な値に設定することができ、冷房運転中に各室内ユニット(12a,12b,12c)の冷房能力を適切に制御しつつ、膨張機(35)において発生する動力をできるだけ大きくして空気調和機(10)の運転効率を改善することができる。
また、本実施形態の空気調和機(10)では、暖房運転中にコントローラ(13)が膨張機(35)の回転速度を調節する。上述したように、膨張機(35)の回転速度を変更すると、膨張機(35)の入口における冷媒の圧力が変化する。そこで、コントローラ(13)は、圧縮機(30)の出口と膨張機(35)の入口の圧力差が第2目標圧力差となるように、膨張機(35)の回転速度を調節する。
ここで、暖房運転中に各室内ユニット(12a,12b,12c)の暖房能力を適切に制御するためには、室外ユニット(11)から送出される冷媒と室外ユニット(11)へ戻ってきた冷媒の圧力差をできるだけ大きくするのが望ましい。従って、室内ユニット(12a,12b,12c)の能力制御だけを考慮するなら、圧縮機(30)の出口と膨張機(35)の入口の圧力差をできるだけ大きくするのが望ましいこととなる。しかし、圧縮機(30)の出口と膨張機(35)の入口の圧力差を大きくするには、膨張機(35)の入口における冷媒の圧力を低くする必要があり、そうすると、膨張機(35)の入口と出口における冷媒の圧力差が小さくなり、膨張機(35)で得られる動力が少なくなってしまう。
これに対し、本実施形態のコントローラ(13)は、暖房運転中に圧縮機(30)の出口と膨張機(35)の入口の圧力差が第2目標圧力差となるように、膨張機(35)の回転速度を調節する。つまり、コントローラ(13)は、圧縮機(30)の出口と膨張機(35)の入口の圧力差が所定値以上となるように膨張機(35)の回転速度を調節するのではなく、圧縮機(30)の出口と膨張機(35)の入口の圧力差が第2目標圧力差に保たれるように膨張機(35)の回転速度を調節する。このため、暖房運転中に圧縮機(30)の出口と膨張機(35)の入口の圧力差が大きくなり過ぎることはなく、膨張機(35)の入口と出口における冷媒の圧力差が確保され、膨張機(35)で得られる動力も確保される。
更に、本実施形態のコントローラ(13)は、暖房運転時の膨張機(35)の制御に用いる第2目標圧力差を、室内膨張弁(62a,62b,62c)の開度に基づいて調節する。従って、本実施形態によれば、この第2目標圧力差を適切な値に設定することができ、暖房運転中に各室内ユニット(12a,12b,12c)の暖房能力を適切に制御しつつ、膨張機(35)において発生する動力をできるだけ大きくして空気調和機(10)の運転効率を改善することができる。
ここで、暖房運転中に室外熱交換器(22)を流れる冷媒の状態を適切に制御するためには、室外膨張弁(44)の開度をある程度以下に抑える必要がある。また、暖房運転中に気液分離器(23)が保持する液冷媒の量を確保するためにも、室外膨張弁(44)の開度をある程度以下に抑える必要がある。そして、室外膨張弁(44)の開度を抑えるには、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口の圧力差を大きくする必要がある。しかし、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口の圧力差を大きくするには、膨張機(35)の出口における冷媒の圧力を高くする必要があり、そうすると、膨張機(35)の入口と出口における冷媒の圧力差が小さくなり、膨張機(35)で得られる動力が少なくなってしまう。
これに対し、本実施形態の空気調和機(10)では、コントローラ(13)が、暖房運転中に膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口の圧力差が第3目標圧力差となるように、ガス流量調節弁(47)の開度を調節する。つまり、コントローラ(13)は、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口の圧力差が所定値以上となるようにガス流量調節弁(47)の開度を調節するのではなく、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口の圧力差が第3目標圧力差に保たれるようにガス流量調節弁(47)の開度を調節する。このため、暖房運転中に膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口の圧力差が大きくなり過ぎることはなく、膨張機(35)の入口と出口における冷媒の圧力差が確保され、膨張機(35)で得られる動力も確保される。
更に、本実施形態のコントローラ(13)は、暖房運転時のガス流量調節弁(47)の制御に用いる第3目標圧力差を、室外膨張弁(44)の開度に基づいて調節する。従って、本実施形態によれば、この第3目標圧力差を適切な値に設定することができ、暖房運転中に室外熱交換器(22)を流れる冷媒の状態を適切に制御しつつ、膨張機(35)において発生する動力をできるだけ大きくして空気調和機(10)の運転効率を改善することができる。
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2について説明する。本実施形態の空気調和機(10)は、上記実施形態1の空気調和機(10)において、冷媒回路(15)の室外回路(20)の構成と、コントローラ(13)が行う制御動作とを変更したものである。ここでは、本実施形態の空気調和機(10)について、実施形態1の空気調和機(10)と異なる点を説明する。
−室外回路の構成−
図6に示すように、本実施形態の室外回路(20)には、圧縮機(30)及び膨張機(35)に代えて流体機械ユニット(27)が設けられている。この流体機械ユニット(27)は、圧縮機構(31)、膨張機構(36)、及び電動機(32)を一つのケーシングに収容したものである。圧縮機構(31)及び膨張機構(36)の構成は、実施形態1のものと同様である。流体機械ユニット(27)において、圧縮機構(31)と膨張機構(36)と電動機(32)とは、互いに一本のシャフトを介して連結されている。このため、圧縮機構(31)と膨張機構(36)と電動機(32)とは、常に同じ回転速度で回転する。
冷媒回路(15)において、圧縮機構(31)は、その吐出側が四方切換弁(21)の第1のポートに接続され、その吸入側が四方切換弁(21)の第2のポートに接続されている。一方、膨張機構(36)は、一方向流通管路(45)における気液分離器(23)の上流側に配置されている。
本実施形態の冷媒回路(15)では、バイパス配管(48)と膨張機構(36)が並列に配置されている。つまり、バイパス配管(48)は、その一端が一方向流通管路(45)における膨張機構(36)の上流側に接続され、その他端が一方向流通管路(45)における膨張機構(36)の下流側に接続されている。また、本実施形態の一方向流通管路(45)には、補助膨張弁(28)が設けられている。この補助膨張弁(28)は、開度可変の電動膨張弁である。一方向流通管路(45)において、補助膨張弁(28)は、バイパス配管(48)の一端の下流側で且つ膨張機構(36)の上流側に配置されている。
−コントローラの制御動作−
上述したように、本実施形態の流体機械ユニット(27)では、圧縮機構(31)の回転速度と膨張機構(36)の回転速度とが常に同じとなる。つまり、この流体機械ユニット(27)では、圧縮機構(31)の回転速度と膨張機構(36)の回転速度を個別に調節することができない。
そこで、本実施形態のコントローラ(13)は、実施形態1のコントローラ(13)が圧縮機(30)に対して行う制御動作を、流体機械ユニット(27)に対して行う。また、このコントローラ(13)は、実施形態1のコントローラ(13)が膨張機(35)に対して行う制御動作は行わない。
先ず、冷房運転時において、本実施形態のコントローラ(13)は、冷凍サイクルの低圧が所定の目標値(目標低圧)となるように、電動機(32)の回転速度(即ち、圧縮機構(31)の回転速度)を制御する。具体的に、コントローラ(13)は、吸入圧力センサ(52)の計測値が目標低圧を上回っている場合に圧縮機構(31)の回転速度を引き上げ、吸入圧力センサ(52)の計測値が目標低圧を下回っている場合に圧縮機構(31)の回転速度を引き下げる。
また、冷房運転時において、本実施形態のコントローラ(13)は、冷凍サイクルの高圧が所定の目標値(目標高圧)となるように、バイパス流量調節弁(49)及び補助膨張弁(28)の開度を調節する。
例えば、補助膨張弁(28)が開いていてバイパス流量調節弁(49)が閉じている状態で冷凍サイクルの高圧が目標高圧を上回る場合、コントローラ(13)は、補助膨張弁(28)の開度を拡大する。補助膨張弁(28)の開度を拡大すると、膨張機構(36)へ流入する冷媒の圧力と密度が上昇し、膨張機構(36)を通過する冷媒の質量流量が増加し、その結果、冷凍サイクルの高圧が低下する。補助膨張弁(28)が全開状態になっても依然として冷凍サイクルの高圧が目標高圧を上回る場合、コントローラ(13)は、バイパス流量調節弁(49)を開いてその開度を拡大する。バイパス流量調節弁(49)の開度を拡大すると、膨張機構(36)とバイパス配管(48)の両方を冷媒が流れるため、冷凍サイクルの高圧が低下する。
一方、バイパス流量調節弁(49)が開いていて補助膨張弁(28)が全開状態に保持された状態で冷凍サイクルの高圧が目標高圧を下回る場合、コントローラ(13)は、バイパス流量調節弁(49)の開度を縮小する。バイパス流量調節弁(49)の開度を縮小すると、バイパス配管(48)を流れる冷媒の流量が減少し、冷凍サイクルの高圧が上昇する。バイパス流量調節弁(49)が全閉状態になっても依然として冷凍サイクルの高圧が目標高圧を下回る場合、コントローラ(13)は、補助膨張弁(28)の開度を縮小する。補助膨張弁(28)の開度を縮小すると、膨張機構(36)へ流入する冷媒の圧力と密度が低下し、膨張機構(36)を通過する冷媒の質量流量が減少し、その結果、冷凍サイクルの高圧が上昇する。
次に、暖房運転時において、コントローラ(13)は、冷凍サイクルの高圧が所定の目標値(目標高圧)となるように、電動機(32)の回転速度(即ち、圧縮機構(31)の回転速度)を制御する。具体的に、コントローラ(13)は、吐出圧力センサ(54)の計測値が目標高圧を上回っている場合に圧縮機構(31)の回転速度を引き下げ、吐出圧力センサ(54)の計測値が目標高圧を下回っている場合に圧縮機構(31)の回転速度を引き上げる。
《発明のその他の実施形態》
上記の各実施形態の空気調和機(10)において、コントローラ(13)は、以下に示す制御動作を行ってもよい。
−第1変形例−
上記各実施形態のコントローラ(13)は、冷房運転中に、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口における冷媒の圧力差ΔP1が第1目標圧力差となるように、ガス流量調節弁(47)の開度を調節している。この制御動作に代えて、コントローラ(13)は、次のような制御動作を行ってもよい。つまり、コントローラ(13)は、冷房運転中に、膨張機(35)の出口における冷媒の圧力が所定の目標値(第1目標圧力)となるように、ガス流量調節弁(47)の開度を調節してもよい。
冷房運転中において、本変形例のコントローラ(13)は、上記各実施形態のコントローラ(13)と同様に、下流側温度センサ(58)の計測値が飽和温度である冷媒の圧力PMを、膨張機(35)の出口における冷媒の圧力とし、吸入圧力センサ(52)の計測値を、圧縮機(30)の入口における冷媒の圧力PLとする。一方、本変形例のコントローラ(13)は、吸入圧力センサ(52)の計測値PLに第1目標差圧ΔPT1を加えた値を、第1目標圧力PT1とする(PT1=PL+ΔPT1)。そして、本変形例のコントローラ(13)は、冷房運転中に膨張機(35)の出口における冷媒の圧力PMが第1目標圧力PT1となるように、ガス流量調節弁(47)の開度を調節する。
具体的に、このコントローラ(13)は、膨張機(35)の出口の圧力PMが第1目標圧力PT1を上回っている場合に、ガス流量調節弁(47)の開度を拡大する。ガス流量調節弁(47)の開度が拡大すると、気液分離器(23)からガス抜き配管(46)へ流出するガス冷媒の流量が増加し、気液分離器(23)内の冷媒の圧力PMが低下し、膨張機(35)の出口における冷媒の圧力が低下して第1目標圧力PT1に近付く。その結果、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口における冷媒の圧力差ΔP1が、第1目標差圧ΔPT1に近付く。
また、このコントローラ(13)は、膨張機(35)の出口の圧力PMが第1目標圧力PT1を下回っている場合に、ガス流量調節弁(47)の開度を縮小する。ガス流量調節弁(47)の開度が縮小すると、気液分離器(23)からガス抜き配管(46)へ流出するガス冷媒の流量が減少し、気液分離器(23)内の冷媒の圧力PMが上昇し、膨張機(35)の出口における冷媒の圧力が上昇して第1目標圧力PT1に近付く。その結果、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口における冷媒の圧力差ΔP1が、第1目標差圧ΔPT1に近付く。
このように、膨張機(35)の出口の圧力PMが第1目標圧力PT1となるようにコントローラ(13)がガス流量調節弁(47)の開度を調節すると、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口における冷媒の圧力差ΔP1が第1目標差圧ΔPT1に近付く。従って、本変形例のコントローラ(13)は、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口における冷媒の圧力差ΔP1が第1目標差圧ΔPT1となるように、ガス流量調節弁(47)の開度を調節している。
−第2変形例−
上記実施形態1のコントローラ(13)は、暖房運転中に、圧縮機(30)の出口と膨張機(35)の入口における冷媒の圧力差ΔP2が第2目標圧力差となるように、膨張機(35)の回転速度を調節している。この制御動作に代えて、コントローラ(13)は、次のような制御動作を行ってもよい。つまり、コントローラ(13)は、暖房運転中に、膨張機(35)の入口における冷媒の圧力が所定の目標値(第2目標圧力)となるように、膨張機(35)の回転速度を調節してもよい。
上述したように、吐出圧力センサ(54)の計測値は、圧縮機(30)の出口における冷媒の圧力PHと実質的に等しい。また、上流側圧力センサ(57)の計測値は、膨張機(35)の入口における冷媒の圧力PM2と実質的に等しい。そこで、本変形例のコントローラ(13)は、吐出圧力センサ(54)の計測値PHから第2目標差圧ΔPT2を減じた値を、第2目標圧力PT2とする(PT2=PH−ΔPT2)。そして、本変形例のコントローラ(13)は、暖房運転中に膨張機(35)の入口における冷媒の圧力PM2が第2目標圧力PT2となるように、膨張機(35)の回転速度を調節する。
具体的に、このコントローラ(13)は、膨張機(35)の入口の圧力PM2が第2目標圧力PT2を下回っている場合に、膨張機(35)の回転速度を低下させる。膨張機(35)の回転速度が低下すると、膨張機(35)を通過する冷媒の流量が減少し、膨張機(35)の入口における冷媒の圧力PM2が上昇して第2目標圧力PT2に近付く。その結果、圧縮機(30)の出口と膨張機(35)の入口における冷媒の圧力差ΔP2が、第2目標差圧ΔPT2に近付く。
また、このコントローラ(13)は、膨張機(35)の入口の圧力PM2が第2目標圧力PT2を上回っている場合に、膨張機(35)の回転速度を上昇させる。膨張機(35)の回転速度が上昇すると、膨張機(35)を通過する冷媒の流量が増加し、膨張機(35)の入口における冷媒の圧力PM2が低下して第2目標圧力PT2に近付く。その結果、圧縮機(30)の出口と膨張機(35)の入口における冷媒の圧力差ΔP2が、第2目標差圧ΔPT2に近付く。
このように、膨張機(35)の入口の圧力PM2が第2目標圧力PT2となるようにコントローラ(13)が膨張機(35)の回転速度を調節すると、圧縮機(30)の出口と膨張機(35)の入口における冷媒の圧力差ΔP2が第2目標差圧ΔPT2に近付く。従って、本変形例のコントローラ(13)は、圧縮機(30)の出口と膨張機(35)の入口における冷媒の圧力差ΔP2が第2目標差圧ΔPT2となるように、膨張機(35)の回転速度を調節している。
−第3変形例−
上記各実施形態のコントローラ(13)は、暖房運転中に、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口における冷媒の圧力差ΔP1が第3目標圧力差となるように、ガス流量調節弁(47)の開度を調節している。この制御動作に代えて、コントローラ(13)は、次のような制御動作を行ってもよい。つまり、コントローラ(13)は、暖房運転中に、膨張機(35)の出口における冷媒の圧力が所定の目標値(第3目標圧力)となるように、ガス流量調節弁(47)の開度を調節してもよい。
暖房運転中において、本変形例のコントローラ(13)は、上記各実施形態のコントローラ(13)と同様に、下流側温度センサ(58)の計測値が飽和温度である冷媒の圧力PM1を、膨張機(35)の出口における冷媒の圧力とし、吸入圧力センサ(52)の計測値を、圧縮機(30)の入口における冷媒の圧力PLとする。一方、本変形例のコントローラ(13)は、吸入圧力センサ(52)の計測値PLに第3目標差圧ΔPT3を加えた値を、第3目標圧力PT3とする(PT3=PL+ΔPT3)。そして、本変形例のコントローラ(13)は、暖房運転中に膨張機(35)の出口における冷媒の圧力PM1が第3目標圧力PT3となるように、ガス流量調節弁(47)の開度を調節する。
具体的に、このコントローラ(13)は、膨張機(35)の出口の圧力PM1が第3目標圧力PT3を上回っている場合に、ガス流量調節弁(47)の開度を拡大する。ガス流量調節弁(47)の開度が拡大すると、気液分離器(23)からガス抜き配管(46)へ流出するガス冷媒の流量が増加し、気液分離器(23)内の冷媒の圧力PM1が低下し、膨張機(35)の出口における冷媒の圧力が低下して第3目標圧力PT3に近付く。その結果、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口における冷媒の圧力差ΔP1が、第3目標差圧ΔPT3に近付く。
また、このコントローラ(13)は、膨張機(35)の出口の圧力PM1が第3目標圧力PT3を下回っている場合に、ガス流量調節弁(47)の開度を縮小する。ガス流量調節弁(47)の開度が縮小すると、気液分離器(23)からガス抜き配管(46)へ流出するガス冷媒の流量が減少し、気液分離器(23)内の冷媒の圧力PM1が上昇し、膨張機(35)の出口における冷媒の圧力が上昇して第3目標圧力PT3に近付く。その結果、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口における冷媒の圧力差ΔP1が、第3目標差圧ΔPT3に近付く。
このように、膨張機(35)の出口の圧力PM1が第3目標圧力PT3となるようにコントローラ(13)がガス流量調節弁(47)の開度を調節すると、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口における冷媒の圧力差ΔP1が第3目標差圧ΔPT3に近付く。従って、本変形例のコントローラ(13)は、膨張機(35)の出口と圧縮機(30)の入口における冷媒の圧力差ΔP1が第3目標差圧ΔPT3となるように、ガス流量調節弁(47)の開度を調節している。