以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態に係る冷凍装置によって構成された空調機(20)は、図1に示すように、1台の室外ユニット(64)と3台の室内ユニット(63a,63b,63c)とコントローラ(7)とを備えている。なお、室内ユニット(63)の台数は、単なる例示である。空調機(20)は、冷却運転である冷房運転と、加熱運転である暖房運転とを選択することができるように構成されている。
空調機(20)は、冷媒として二酸化炭素(CO2)が充填された冷媒回路(10)を備えている。この冷媒回路(10)では、冷媒(CO2)を循環させて蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。この冷凍サイクルでは、冷凍サイクルの高圧が二酸化炭素の臨界圧力よりも高い値に設定される。
冷媒回路(10)は、利用側回路である3つの室内回路(11a,11b,11c)と、熱源側回路である1つの室外回路(14)とを備えている。これらの室内回路(11a,11b,11c)は、第1連絡管(15)及び第2連絡管(16)によって室外回路(14)に対して互いに並列に接続されている。具体的に、第1連絡管(15)は、一端が室外回路(14)の第1閉鎖弁(17)に接続され、他端が3つに分岐して各室内回路(11a,11b,11c)の液側端に接続されている。第2連絡管(16)は、一端が室外回路(14)の第2閉鎖弁(18)に接続され、他端が3つに分岐して各室内回路(11a,11b,11c)のガス側端に接続されている。
《室外回路の構成》
室外回路(14)は、室外ユニット(64)に収容されている。室外回路(14)には、圧縮・膨張ユニット(26)、室外熱交換器(44)、気液分離器(35)、内部熱交換器(45)、四路切換弁(25)、及びブリッジ回路(24)が設けられている。また、室外ユニット(64)には、室外熱交換器(44)に室外空気を送るための室外ファンが設けられている(図示省略)。
圧縮・膨張ユニット(26)は、縦長で円筒形の密閉容器であるケーシング(21)を備えている。ケーシング(21)内では、圧縮機(30)と膨張機(31)と電動機(32)とが収容されている。ケーシング(21)内では、圧縮機(30)、電動機(32)、及び膨張機(31)が1本の駆動軸によって互いに連結されている。
圧縮機(30)及び膨張機(31)は、何れも容積型の流体機械(揺動ピストン型のロータリ流体機械、ローリングピストン型のロータリ流体機械、スクロール流体機械など)によって構成されている。圧縮機(30)は、吸入した冷媒(CO2)をその臨界圧力以上にまで圧縮する。膨張機(31)は、流入した冷媒(CO2)を膨張させて動力(膨張動力)を回収する。圧縮機(30)は、膨張機(31)で回収された動力と、電動機(32)へ通電して得られる動力との両方によって駆動される。電動機(32)には、図外のインバータから交流電力が供給される。圧縮機(30)は、電動機(32)へ供給される交流の周波数(運転周波数)を変更することで、その回転速度、即ち容量が可変に構成されている。圧縮機(30)と膨張機(31)とは、常に同じ回転速度で回転する。
膨張機(31)の流入側には、膨張流入ライン(48)の出口端が接続されている。膨張流入ライン(48)の入口端は、ブリッジ回路(24)に接続されている。膨張機(31)の流出側には、膨張流出ライン(49)の入口端が接続されている。膨張流出ライン(49)の出口端は、ブリッジ回路(24)に接続されている。
また、冷媒回路(10)には、膨張流入ライン(48)と膨張流出ライン(49)とを接続するバイパスライン(28)が設けられている。詳しくは、バイパスライン(28)の入口端は膨張流入ライン(48)に接続されている一方、バイパスライン(28)の出口端は膨張流出ライン(49)における膨張機(31)と気液分離器(35)との間の部分に接続されている。こうして、バイパスライン(28)は、膨張機(31)と並列に設けられていて、冷媒を膨張流入ライン(48)から膨張流出ライン(49)へ、膨張機(31)をバイパスさせて流通させる。このバイパスライン(28)がバイパス回路を構成している。
そして、このバイパスライン(28)中には、バイパスライン(28)の冷媒流量、すなわち膨張機(31)をバイパスする冷媒流量を調節するバイパス量調節弁(29)が設けられている。このバイパス量調節弁(29)は、弁体(図示省略)がパルスモータ(図示省略)で駆動される開度可変の電子膨張弁によって構成されている。このバイパス量調節弁(29)が調節弁を構成する。バイパス量調節弁(29)の弁開度の制御については後述する。
熱源側熱交換器である室外熱交換器(44)は、クロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器によって構成されている。室外熱交換器(44)へは、室外ファンによって室外空気が供給される。室外熱交換器(44)では、室外空気と冷媒との間で熱交換が行われる。室外熱交換器(44)のガス側は、四路切換弁(25)の第3のポートに接続されている。室外熱交換器(44)の液側には、熱源側ライン(38)の一端が接続されている。熱源側ライン(38)の他端は、ブリッジ回路(24)に接続されている。
気液分離器(35)は、縦長で円筒状の密閉容器である。気液分離器(35)は、膨張流出ライン(49)に設けられている。気液分離器(35)では、膨張機(31)から延びる冷媒配管が、気液分離器(35)の上寄りの位置に接続されている。また、気液分離器(35)の底部には、ブリッジ回路(24)に延びる冷媒配管が接続されている。気液分離器(35)の頂部には、圧縮機(30)の吸入側に接続されたガス供給管(37)が接続されている。このガス供給管(37)には、開度可変の電子膨張弁によって構成されたガス量調節弁(36)が設けられている。
気液分離器(35)では、膨張機(31)から流入した冷媒が、液冷媒とガス冷媒とに分離される。そのうち液冷媒は、気液分離器(35)の底部からブリッジ回路(24)へ流入する一方、ガス冷媒は、ガス供給管(37)から流出して圧縮機(30)に吸入される。気液分離器(35)では、膨張機(31)からブリッジ回路(24)へ向かう冷媒が一時的に貯留される。
内部熱交換器(45)は、ガス供給管(37)と膨張流出ライン(49)とに跨って設けられている。内部熱交換器(45)は、膨張流出ライン(49)における気液分離器(35)の下流に設置された第1流路(46)と、ガス供給管(37)の途中に設置された第2流路(47)とを備えている。内部熱交換器(45)では、第1流路(46)と第2流路(47)とが互いに隣接する状態で配置されている。内部熱交換器(45)では、第1流路(46)の冷媒と第2流路(47)の冷媒との間で熱交換が行われる。
ブリッジ回路(24)は、第1接続ライン(51)と第2接続ライン(52)と第3接続ライン(61)と第4接続ライン(62)とをブリッジ状に接続した回路である。第1接続ライン(51)は、熱源側ライン(38)の他端と膨張流入ライン(48)の入口端とを接続している。第2接続ライン(52)は、熱源側ライン(38)の他端と膨張流出ライン(49)の出口端とを接続している。第3接続ライン(61)は、利用側ライン(39)の他端と膨張流出ライン(49)の出口端とを接続している。第4接続ライン(62)は、利用側ライン(39)の他端と膨張流入ライン(48)の入口端とを接続している。
なお、この実施形態では、ブリッジ回路(24)における第3接続ライン(61)と第4接続ライン(62)との接続箇所から後述する室内熱交換器(41a,41b,41c)に至るまでの冷媒配管が、利用側ライン(39)を構成している。具体的に、利用側ライン(39)は、ブリッジ回路(24)と第1閉鎖弁(17)との間の冷媒配管、第1連絡管(15)、及び各室内回路(11a,11b,11c)の液側端と室内熱交換器(41a,41b,41c)との間の冷媒配管から構成されている。
第1接続ライン(51)には、膨張流入ライン(48)の入口端から熱源側ライン(38)の他端へ向かう冷媒の流れを禁止する第1逆止弁(CV-1)が設けられている。第2接続ライン(52)には、熱源側調節弁を構成する室外調節弁(43)が設けられている。第3接続ライン(61)には、利用側ライン(39)の他端から膨張流出ライン(49)の出口端へ向かう冷媒の流れを禁止する第2逆止弁(CV-2)が設けられている。第4接続ライン(62)には、膨張流入ライン(48)の入口端から利用側ライン(39)の他端へ向かう冷媒の流れを禁止する第3逆止弁(CV-3)が設けられている。
ブリッジ回路(24)は、冷房運転時には室外熱交換器(44)を通過した冷媒が熱源側ライン(38)、第1接続ライン(51)、膨張流入ライン(48)、膨張機(31)、膨張流出ライン(49)、第3接続ライン(61)、利用側ライン(39)の順に流通する冷却流通経路を形成する。また、ブリッジ回路(24)は、暖房運転時には各室内熱交換器(41)を通過した冷媒が、利用側ライン(39)、第4接続ライン(62)、膨張流入ライン(48)、膨張機(31)、膨張流出ライン(49)、第2接続ライン(52)、熱源側ライン(38)の順に流通する加熱流通経路を形成する。
四路切換弁(25)の第1のポートは、圧縮機(30)の吸入側に接続されている。第2のポートは、第2閉鎖弁(18)に接続されている。第3のポートは、室外熱交換器(44)に接続されている。第4のポートは、圧縮機(30)の吐出側に接続されている。四路切換弁(25)は、第1のポートと第2のポートとが連通して第3のポートと第4のポートとが連通する状態(図1に実線で示す第1状態)と、第1のポートと第3のポートとが連通して第2のポートと第4のポートとが連通する状態(図1に破線で示す第2状態)とが切り換え自在に構成されている。
また、室外回路(14)では、圧縮機(30)の吐出側に吐出圧力センサ(19)が設けられている。圧縮機(30)の吸入側には、吸入温度センサ(23)及び吸入圧力センサ(27)が設けられている。
《室内回路の構成》
各室内回路(11a,11b,11c)は、各室内ユニット(63a,63b,63c)に1つずつ収容されている。各室内回路(11)には、そのガス側端から液側端へ向かって順に、利用側熱交換器である室内熱交換器(41a,41b,41c)と、利用側調節弁である室内調節弁(53a,53b,53c)とが設けられている。各室内ユニット(63)には、各室内熱交換器(41)に室内空気を送るための室内ファンが設けられている(図示省略)。また、各室内ユニット(63)には、室内の温度を検出する室内温度センサ(66)が設けられている。
室内熱交換器(41)は、クロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器によって構成されている。室内熱交換器(41)へは、室内ファンによって室内空気が供給される。室内熱交換器(41)では、室内空気と冷媒との間で熱交換が行われる。また、室内調節弁(53)は、開度可変の電子膨張弁によって構成されている。
各室内回路(11)では、室内熱交換器(41)の液側に室内液温度センサ(12a,12b,12c)が設けられている。室内熱交換器(41)のガス側には、室内ガス温度センサ(13a,13b,13c)が設けられている。
−運転動作−
前記空調機(20)の運転動作について説明する。前記コントローラ(7)が、四路切換弁(25)の切り換えを行うと共に、運転状態の制御を行う。このコントローラ(7)が制御手段を構成する。
《冷房運転》
冷房運転では、コントローラ(7)が、四路切換弁(25)を図1に実線で示す第1状態に設定する。この状態で、コントローラ(7)が圧縮機(30)を運転させると、冷媒回路(10)で冷媒が循環して冷凍サイクルが行われる。その際、室外熱交換器(44)が放熱器として機能し、各室内熱交換器(41)が蒸発器として機能する。
なお、冷房運転中のコントローラ(7)は、室外調節弁(43)の開度を全閉状態に保持する。また、冷房運転中には、各室内調節弁(53)の開度が、室内液温度センサ(12)の計測値と室内ガス温度センサ(13)の計測値に基づいて調節される。室内調節弁(53)の開度の調節によって、室内熱交換器(41)の出口における冷媒の過熱度が目標値になるように、室内熱交換器(41)の冷媒流量が調節される。
具体的に、圧縮機(30)からは、臨界圧力よりも高圧となった冷媒が吐出される。この高圧の冷媒は、室外熱交換器(44)で室外空気へ放熱して冷却される。室外熱交換器(44)で放熱した冷媒は、熱源側ライン(38)、第1接続ライン(51)、膨張流入ライン(48)の順に流通して、膨張機(31)に流入する。膨張機(31)では、冷媒の膨張に伴って動力が回収される。
ここで、バイパス量調節弁(29)が全閉状態ではない場合、即ち、バイパスライン(28)が連通しているときには、膨張流入ライン(48)を流通する冷媒の一部は、膨張機(31)へ流入することなく、該膨張機(31)をバイパスして膨張流出ライン(49)へ流入する。このように、冷媒に膨張機(31)をバイパスさせることによって、圧縮機(30)が吐出する冷媒流量と膨張機(31)が吸入する冷媒流量とをバランスさせている。尚、バイパス量調節弁(29)が全閉状態のときには、室外熱交換器(44)で放熱した冷媒は、全て膨張流入ライン(48)を介して膨張機(31)に流入する。
膨張機(31)を通過又はバイパスした冷媒は、膨張流出ライン(49)の気液分離器(35)に流入して液冷媒とガス冷媒とに分離される。気液分離器(35)内の飽和状態の液冷媒は、底部から流出して内部熱交換器(45)の第1流路(46)に流入する。一方、気液分離器(35)内の飽和状態のガス冷媒は、ガス供給管(37)から流出し、ガス量調節弁(36)で減圧された後に内部熱交換器(45)の第2流路(47)に流入する。
内部熱交換器(45)では、第1流路(46)の冷媒と第2流路(47)の冷媒との間で熱交換が行われる。第1流路(46)の冷媒は、第2流路(47)の冷媒によって冷却されて過冷却状態になる。一方、第2流路(47)の冷媒は、第1流路(46)の冷媒によって加熱されて過熱状態になる。
第1流路(46)を通過した液冷媒は、第3接続ライン(61)、利用側ライン(39)の順に流通して、各室内回路(11)へ分配される。第1流路(46)を通過した液冷媒は、過冷却状態になっているので、各室内回路(11)へ分配されるまでに冷媒配管による圧力損失で圧力が降下するが、気液二相状態にはならない。このため、室内回路(11)間で液冷媒の量が偏る偏流を生じることはなく、全ての室内回路(11)に対して、室内調節弁(53)の開度に応じた量の液単相の状態の冷媒が供給される。
各室内回路(11)へ分配された液冷媒は、室内調節弁(53)で減圧された後に室内熱交換器(41)へ流入する。室内熱交換器(41)では、冷媒と室内空気と間で熱交換が行われる。この熱交換により、冷媒は室内空気から吸熱して蒸発する一方、室内空気は冷却されて室内へ供給される。各室内熱交換器(41)で蒸発した冷媒は、第2連絡管(16)で合流して室外回路(14)へ流入する。室外回路(14)へ流入した冷媒は、第2流路(47)で過熱状態になった冷媒と合流し、圧縮機(30)へ吸入される。圧縮機(30)に吸入された冷媒は、再び圧縮されて吐出される。
この実施形態では、室外調節弁(43)が、室外熱交換器(44)から膨張機(31)へ向かう冷媒が流通しない第2接続ライン(52)に配置されている。このため、室外熱交換器(44)で放熱した冷媒は、室外調節弁(43)を通過することなく膨張機(31)へ流入するので、室外調節弁(43)が原因で、冷房運転時に膨張機(31)で回収される動力が失われることがない。こうして、室外調節弁(43)による空調機(20)の運転効率の低下を防止している。
《暖房運転》
暖房運転では、コントローラ(7)が、四路切換弁(25)を図1に破線で示す第2状態に設定する。この状態で、コントローラ(7)が圧縮機(30)を運転させると、冷媒回路(10)で冷媒が循環して冷凍サイクルが行われる。その際、各室内熱交換器(41)が放熱器として機能し、室外熱交換器(44)が蒸発器として機能する。
なお、暖房運転中のコントローラ(7)は、吸入温度センサ(23)の計測値と吸入圧力センサ(27)の計測値に基づいて室外調節弁(43)の開度を調節している。室外調節弁(43)の開度の調節によって、室外熱交換器(44)の出口における冷媒の過熱度が目標値になるように室外熱交換器(44)の冷媒流量が調節される。また、各室内調節弁(53)の開度は、室内液温度センサ(12)の計測値と室内ガス温度センサ(13)の計測値に基づいて調節される。室内調節弁(53)の開度の調節によって、室内熱交換器(41)の出口における冷媒のガスクーラ出口温度が目標値になるように室内熱交換器(41)の冷媒流量が調節される。
具体的に、圧縮機(30)からは、臨界圧力よりも高圧となった冷媒が吐出される。この高圧の冷媒は、第2連絡管(16)を経て各室内回路(11)へ分配される。各室内回路(11)へ分配された冷媒は、室内熱交換器(41)で室内空気と熱交換を行う。この熱交換により、冷媒は室内空気へ放熱して冷却される一方、室内空気は加熱されて室内へ供給される。各室内熱交換器(41)で放熱した冷媒は、利用側ライン(39)で合流し、室外回路(14)へ流入する。
室外回路(14)へ流入した冷媒は、第4接続ライン(62)、膨張流入ライン(48)の順に流通して、膨張機(31)に流入する。膨張機(31)では、冷媒の膨張に伴って動力が回収される。
ここで、バイパス量調節弁(29)が全閉状態ではない場合、即ち、バイパスライン(28)が連通しているときには、冷房運転時と同様に、膨張流入ライン(48)を流通する冷媒の一部は、膨張機(31)へ流入することなく、該膨張機(31)をバイパスして膨張流出ライン(49)へ流入する。このように、冷媒に膨張機(31)をバイパスさせることによって、圧縮機(30)が吐出する冷媒流量と膨張機(31)が吸入する冷媒流量とをバランスさせている。尚、バイパス量調節弁(29)が全閉状態のときには、室外熱交換器(44)で放熱した冷媒は、全て膨張流入ライン(48)を介して膨張機(31)に流入する。
膨張機(31)を通過又はバイパスした冷媒は、膨張流出ライン(49)の気液分離器(35)に流入して液冷媒とガス冷媒とに分離される。気液分離器(35)内の液冷媒は、底部から流出して、第2接続ライン(52)、熱源側ライン(38)の順に流通して、室外熱交換器(44)へ流入する。その際、第2接続ライン(52)では、冷媒が室外調節弁(43)を通過する際に減圧される。
室外熱交換器(44)に流入した冷媒は、室外空気と熱交換を行う。この熱交換により、冷媒が室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器(44)で蒸発した冷媒は、圧縮機(30)へ吸入され、再び圧縮されて吐出される。
このように、冷房運転時にバイパス量調節弁(29)を開状態に設定することで、膨張流入ライン(48)を流通する冷媒の一部が、膨張機(31)をバイパスして膨張流出ライン(49)へ流入する一方、暖房運転時においても、バイパス量調節弁(29)を開状態に設定することで、膨張流入ライン(48)を流通する冷媒の一部が膨張機(31)をバイパスして膨張流出ライン(49)へ流入する。つまり、冷房運転と暖房運転との両方において、バイパスライン(28)とバイパス量調節弁(29)とによって膨張機(31)をバイパスする冷媒流量が調節される。したがって、冷房運転においても暖房運転においても、圧縮機(30)が吐出する冷媒流量と膨張機(31)が吸入する冷媒流量とをバランスさせることが可能になり、外気温度などの運転条件に応じた運転制御が可能になる。
−バイパス量調節弁の制御−
以下に、バイパス量調節弁(29)の制御について説明する。バイパス量調節弁(29)はコントローラ(7)によって制御される。
コントローラ(7)は、通常時は、吐出圧力センサ(19)によって検出される冷凍サイクルの高圧に基づいて、該高圧が所定の目標値となるようにバイパス量調節弁(29)の弁開度をフィードバック制御している。
詳しくは、コントローラ(7)は、図2に示すように、冷凍サイクルの高圧の目標値である目標高圧Phsを算出する目標高圧算出部(71)とPID制御部(72)とを有している。
目標高圧算出部(71)は、室内ユニット(63a,63b,63c)それぞれにおける設定温度Tsと室内温度センサ(66)によって検出される室内温度Taとの温度偏差e1が入力され(図2では、1つの温度偏差e1のみ図示している)、室内ユニット(63a,63b,63c)それぞれにおける3つの温度偏差e1に基づいて目標高圧Phsを算出する。
PID制御部(72)は、目標高圧算出部(71)で算出した目標高圧Phsと吐出圧力センサ(19)によって検出される吐出圧力、即ち、高圧Phとの高圧偏差e2を入力としてPID制御により弁開度PID制御信号Δevpを生成して出力する。
つまり、通常時においては、目標高圧算出部(71)が温度偏差e1に基づいて目標高圧Phsを算出し、この目標高圧Phsと吐出圧力センサ(19)の出力である高圧Phとの高圧偏差e2に基づいてPID制御部(72)が弁開度PID制御信号Δevpを算出する。そして、コントローラ(7)は、この弁開度PID制御信号Δevpを弁開度制御信号ΔEVとしてバイパス量調節弁(29)に出力する。
この弁開度制御信号ΔEVを受けたバイパス量調節弁(29)は、弁開度制御信号ΔEVに応じたパルス数のパルス信号がそのパルスモータへ供給される。その結果、バイパス量調節弁(29)のパルスモータが該パルス数に応じた角度だけ回転し、バイパス量調節弁(29)の弁開度が高圧偏差e2に応じて調節される。
こうして、コントローラ(7)は、通常時は、バイパス量調節弁(29)の弁開度を冷凍サイクルの高圧に基づいてフィードバック制御している。
ところが、本実施形態のように、圧縮機(30)と膨張機(31)とが1つの駆動軸で連結された圧縮・膨張ユニット(26)を備えた空調機(20)においては、膨張機(31)は圧縮機(30)の回転速度と同じ回転速度で作動し、圧縮機(30)の容量、即ち、回転速度が変化するときには、膨張機(31)の回転速度も同時に変化する。そして、膨張機(31)の回転速度が変化すると、実際の冷凍サイクルでは吸入圧損等があるため、膨張機(31)における減圧特性が図3に示すように変化し、冷凍サイクルの圧力、例えば、高圧が変動してしまう。
そこで、コントローラ(7)は、空調機(20)の運転状態に応じて圧縮機(30)の容量を変化させるときには、バイパス量調節弁(29)の弁開度を膨張機(31)の減圧特性に基づいてフィードフォワード制御することによって、冷凍サイクルの高圧を運転状態に応じた所定の目標値に制御している。
このコントローラ(7)は、前記目標高圧算出部(71)とPID制御部(72)との他に、目標回転速度算出部(73)とフィードフォワード制御部(74)とを有している。
目標回転速度算出部(73)は、前記温度偏差e1に基づいて、圧縮機(30)の目標回転速度Nsを算出する。
フィードフォワード制御部(74)は、前記目標回転速度算出部(73)によって算出された目標回転速度Nsに基づいて弁開度フィードフォワード制御信号Δevfを算出する。詳しくは、フィードフォワード制御部(74)は、目標回転速度Nsに応じた、冷凍サイクルの高圧が所定の目標値に保たれるであろう(例えば、高圧を一定に保ちたい場合には、一定に保たれるであろう)弁開度が記録されたマップを有しており、目標回転速度Nsに基づいて該マップから弁開度フィードフォワード制御信号Δevfを算出する。
つまり、圧縮機(30)の容量を変更するときには、コントローラ(7)では、目標高圧算出部(71)が温度偏差e1に基づいて目標高圧Phsを算出し、この目標高圧Phsと高圧センサ(33)の出力である実高圧Phとの高圧偏差e2に基づいてPID制御部(72)が弁開度PID制御信号Δevpを算出する。一方、目標回転速度算出部(73)が温度偏差e1に基づいて目標回転速度Nsを算出し、この目標回転速度Nsに基づいてフィードフォワード制御部(74)が弁開度フィードフォワード制御信号Δevfを算出する。コントローラ(7)は、これら弁開度PID制御信号Δevpと弁開度フィードフォワード制御信号Δevfとを加算して、弁開度制御信号ΔEVとしてバイパス量調節弁(29)に出力する。
この弁開度制御信号ΔEVを受けたバイパス量調節弁(29)は、前述の如く、弁開度制御信号ΔEVに応じたパルス数のパルス信号がそのパルスモータへ供給される。その結果、バイパス量調節弁(29)のパルスモータが該パルス数に応じた角度だけ回転し、バイパス量調節弁(29)の弁開度が高圧偏差e2及び目標回転速度Nsに対応する減圧特性に応じて調節される。
このように、圧縮機(30)の容量変更時には、バイパス量調節弁(29)の開度を膨張機(31)の減圧特性に基づいてフィードフォワード制御することによって、冷凍サイクルの高圧の変化を待つことなく、圧縮機(30)の容量を変更するのと略同時にバイパス量調節弁(29)の弁開度を調節することができ、冷凍サイクルの高圧の変動を抑制することができる。
つまり、圧縮機(30)の容量変更時には、弁開度PID制御信号Δevpと弁開度フィードフォワード制御信号Δevfとを加算した弁開度制御信号ΔEVをバイパス量調節弁(29)に出力しているが、冷凍サイクルの高圧はほとんど変動しないため、弁開度PID制御信号Δevpは略零であって、実質的に弁開度フィードフォワード制御信号Δevfが弁開度制御信号ΔEVとして出力されている。
そして、コントローラ(7)は、圧縮機(30)の容量を変化させてから所定時間経過後に、バイパス量調節弁(29)の制御をフィードフォワード制御から前記フィードバック制御に切り替える。
この所定時間は、バイパス量調節弁(29)の弁開度をフィードフォワード制御によって調節したときに、冷凍サイクルの高圧が過渡状態から定常状態になるまでの時間に設定することが好ましい。
あるいは、この所定時間を制御周期に設定してもよい。この場合、コントローラ(7)は、圧縮機(30)の容量を変化させるときに、最初の制御周期到来時にバイパス量調節弁(29)の弁開度をフィードフォワード制御により目標回転速度Nsに応じた弁開度に調節し、次の制御周期以降はフィードバック制御を行うようにしてもよい。このように、始めにフィードフォワード制御によって目標回転速度Nsに応じた弁開度に制御し、その後はフィードバック制御を行う構成であっても、バイパス量調節弁(29)の弁開度が、フィードフォワード制御により、冷凍サイクルの高圧が変わらないと推定される弁開度に即座に調節されるため、その後すぐにフィードバック制御に切り替わっても冷凍サイクルの高圧の変動を抑制することができる。
このように、コントローラ(7)がフィードフォワード制御とフィードバック制御とを組み合わせてバイパス量調節弁(29)の弁開度を制御することによって、冷凍サイクルの高圧は、図5に示すようになる。
すなわち、冷凍サイクルの高圧に基づくフィードバック制御のみによってバイパス量調節弁(29)を調節する場合には、図中の一点鎖線で示すように、圧縮機(30)の回転速度が変更される、詳しくは、回転速度が速くなる側に変更されると(図中の白抜矢印参照)、冷凍サイクルの高圧が急激に上昇し、その冷凍サイクルの高圧の上昇を受けてバイパス量調節弁(29)が制御される。そのため、冷凍サイクルの高圧が一旦大きく上昇した後にフィードバック制御が効き始め、該高圧はやがて収束していく。このようにフィードバック制御の場合、高圧の変動を受けてバイパス量調節弁(29)を調節するため、高圧の変動とバイパス量調節弁(29)の調節とに時間遅れが生じ、冷凍サイクルの高圧は、最終的には収束するにしても、幾分、変動してしまう。
それに対して、本実施形態によれば、図中の実線で示すように、圧縮機(30)の回転速度が速くなる側に変更されると、それと略同時に前記フィードフォワード制御によってバイパス量調節弁(29)の弁開度が強制的に拡大されるため、冷凍サイクルの高圧の上昇が抑えられる。
つまり、圧縮機(30)の回転速度が速くなると、図3の減圧特性からもわかるように、冷凍サイクルの高圧が上昇することが推測される。そこで、冷凍サイクルの高圧が実際に上昇する前に、バイパス量調節弁(29)の弁開度を、圧縮機(30)の回転速度に応じた、冷凍サイクルの高圧が一定に保たれるであろう弁開度に予め拡大することによって、高圧の変動を抑制している。
そして、所定時間経過後に、コントローラ(7)は、フィードフォワード制御からフィードバック制御に切り替え、冷凍サイクルの高圧に基づいてバイパス量調節弁(29)の弁開度を調節するようになる。その結果、冷凍サイクルの高圧に基づくフィードバック制御のみによってバイパス量調節弁(29)を調節する場合と比較して、高圧の変動が抑制され、高圧を所定の目標値に安定させることができる。また、圧縮機(30)の容量を変化させてから所定時間が経過した後は、冷凍サイクルの高圧が大きく変動する虞が少ないため、バイパス量調節弁(29)の弁開度を冷凍サイクルの高圧に基づいてフィードバック制御によって、バイパス量調節弁(29)の弁開度を冷凍サイクルの高圧に応じて精度良く制御することができ、ひいては、冷凍サイクルの高圧制御の精度を向上させることができる。
逆に、圧縮機(30)の回転速度が遅くなる側に変更されるときには、前記フィードフォワード制御によってバイパス量調節弁(29)の弁開度を強制的に縮小させればよい。
つまり、圧縮機(30)の回転速度が遅くなると、図3の減圧特性からもわかるように、冷凍サイクルの高圧が下降することが推測される。そこで、冷凍サイクルの高圧が実際に下降する前に、バイパス量調節弁(29)の弁開度を、圧縮機(30)の回転速度に応じた、冷凍サイクルの高圧が一定に保たれるであろう弁開度に予め縮小することによって、高圧の変動を抑制している。
そして、圧縮機(30)の回転速度を変化させてから所定時間経過後にフィードバック制御に切り替えて、冷凍サイクルの高圧に基づいてバイパス量調節弁(29)を制御すればよい。このように制御することで、圧縮機(30)の回転速度を変化させたときに、冷凍サイクルの高圧の急激な下降が抑制され、高圧を所定の目標値に安定させることができる。
したがって、本実施形態によれば、圧縮機(30)の回転速度を変化させるときに、バイパス量調節弁(29)の弁開度を冷凍サイクルの高圧が一定となるように目標回転速度Ns及び膨張機(31)の減圧特性に応じてフィードフォワード制御することによって、高圧の変動を抑制することができる。その結果、圧縮機(30)の容量変更時に空調機(20)の運転状態が不安定になることを防止することができ、空調機(20)の能力制御を安定して行うことができる。
特に、本実施形態のように、超臨界サイクルを行う空調機(20)では、高圧の変化に対するガスクーラ出口の冷媒のエンタルピの変化量が大きく、冷凍サイクルの各部制御(ガスクーラ能力制御、蒸発機出口過熱度制御など)に及ぼす影響が非常に大きいため、高圧の変動による冷凍装置の能力への影響が大きく、全体が不安定になり易い。それに対して、本実施形態では、圧縮機(30)の容量変更時の冷凍サイクルの高圧の変動を抑制することができるため、空調機(20)の能力制御をより効果的に安定させることができる。
また、二酸化炭素を冷媒として用いることで、他の冷媒と比較して冷凍サイクルの高低差圧を大きくすることができ、膨張機(31)の回収動力を増大させ、空調機(20)の運転効率を向上させることができる。
さらに、冷凍サイクルの高圧が変動する虞が少ない、圧縮機(30)の容量を変更してから所定時間経過後には、バイパス量調節弁(29)の弁開度をフィードフォワード制御から冷凍サイクルの高圧に基づいたフィードバック制御に切り替えることによって、実際の冷凍サイクルの高圧に基づいてバイパス量調節弁(29)の弁開度を精度良く制御することができ、空調機(20)の高圧制御の精度を向上させることができる。
《その他の実施形態》
本発明は、前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
すなわち、前記実施形態では3つの室内ユニット(63a,63b,36c)が設けられているが、これに限られるものではない。例えば、図6に示す空調機(220)のように、室内ユニット(63)が1台設けられている構成であってもよい。
また、室内回路(11)に利用側調節弁を設けずに、図6に示すように、ブリッジ回路(24)の第3接続ライン(61)に、第2逆止弁(CV-2)の代わりに利用側調節弁(53)を設けてもよい。この構成では、冷房運転時に、室外熱交換器(44)で放熱した冷媒が、膨張機(31)を通過後に第3接続ライン(61)の利用側調節弁(53)を通って、蒸発器となる室内熱交換器(41)へ流入する。室内熱交換器(41)の冷媒流量は、室内熱交換器(41)の出口の冷媒の過熱度が目標値になるように利用側調節弁(53)によって調節される。一方、暖房運転時には、室内熱交換器(41)で放熱した冷媒が、利用側ライン(39)、第4接続ライン(62)、膨張流入ライン(48)の順に流通して、膨張機(31)に流入する。室内熱交換器(41)で放熱した冷媒は、利用側調節弁(53)を通過することなく膨張機(31)へ流入する。すなわち、利用側調節弁(53)が、暖房運転時に室内熱交換器(41)から膨張機(31)へ向かう冷媒が流通しない第3接続ライン(61)に配置されている。従って、冷房運転時に室内熱交換器(41)の冷媒流量を調節する利用側調節弁(53)が原因で、暖房運転時に膨張機(31)で回収される動力が失われることがないので、利用側調節弁(53)による空調機(20)の運転効率の低下を防止することができる。
さらには、前記実施形態においては、バイパスライン(28)が膨張流入ライン(48)と膨張流出ライン(49)とを接続するように設けると共に、該バイパスライン(28)にバイパス量調節弁(29)が設け、該バイパス量調節弁(29)の弁開度を調節することによって、冷媒に膨張機をバイパスさせているが、これに限られるものではない。例えば、ブリッジ回路(24)に設けた室外調節弁(43)及び利用側調節弁(53)を、膨張機(31)をバイパスさせる冷媒の流量を調節する調節弁として機能させてもよい。詳しくは、コントローラ(7)が、冷房運転時に、室外調節弁(43)を開状態に調節すると、熱源側ライン(38)を通過した冷媒の一部が、第2接続ライン(52)に流れ込み、膨張流出ライン(49)を通過した冷媒と合流して室内熱交換器(41)へ向かう。すなわち、熱源側ライン(38)を通過した冷媒の一部が、膨張機(31)をバイパスして室内熱交換器(41)へ向かうことになる。一方、コントローラ(7)が、暖房運転時に、室外調節弁(43)を開状態に調節すると、利用側ライン(39)を通過した冷媒の一部が、第3接続ライン(61)に流れ込み、膨張流出ライン(49)を通過した冷媒と合流して室外熱交換器(44)へ向かう。すなわち、利用側ライン(39)を通過した冷媒の一部が、膨張機(31)をバイパスして室外熱交換器(44)へ向かうことになる。したがって、コントローラ(7)は、室外調節弁(43)及び利用側調節弁(53)を前述の如く、フィードフォワード制御及びフィードバック制御を組み合わせて調節することによって、圧縮機(30)の容量変更時の冷凍サイクルの高圧の変動を抑制することができる。この構成では、冷房運転時に膨張機(31)をバイパスさせる流路として第2接続ライン(52)及び第3接続ライン(61)を用いているため、冷媒回路(10)の構成を複雑化させることなく、圧縮機(30)が吐出する冷媒流量と膨張機(31)が吸入する冷媒流量とをバランスさせることができる。また、この構成では、第2及び第3接続ライン(52,61)がバイパス回路を構成し、室外調節弁(43)及び利用側調節弁(53)が調節弁を構成する。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。