JP5823658B2 - 光学ガラス、プリフォーム、及び光学素子 - Google Patents

光学ガラス、プリフォーム、及び光学素子 Download PDF

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Description

本発明は極めて大きな部分分散比[θg,F]を有する光学ガラスと、これを用いたプリフォーム及び光学素子に関する。
光学機器のレンズ系は、通常、異なる光学的性質を持つ複数のガラスレンズを組み合わせて設計されている。近年、多様化する光学機器のレンズ系の設計の自由度をさらに広げるため、従来用いられなかった光学特性を有する光学ガラスが、球面及び非球面レンズ等として用いられるようになった。特に、光学設計を行うに当たり、収差を小さくする目的に沿って、屈折率や分散傾向の異なるものが開発されている。その中で、極めて大きな部分分散比[θg,F]を有する光学ガラスは、以下に述べる異常分散性が高まるため、収差の補正に顕著な効果を奏するものであり、光学設計の自由度を広げるものである。
短波長域の部分分散性を表す部分分散比[θg,F]の式(1)に示す。
θg,F=(n−n)/(n−n)・・・・・・(1)
一般に光学ガラスには、短波長域の部分分散性を表す部分分散比[θg,F]とアッベ数(ν)との間に、およそ直線的な反比例の関係があるが、この関係から著しく外れているガラスは異常分散ガラスと呼ばれる。この反比例関係を表す直線は、部分分散比[θg,F]を縦軸に、アッベ数(ν)を横軸に採用した直交座標上で、NSL7とPBM2の部分分散比及びアッベ数をプロットした2点を結ぶ直線で表され、ノーマルラインと呼ばれている(図1参照)。ノーマルラインの基準となるノーマルガラスは光学ガラスメーカー毎に異なるが、同等の傾きと切片を持っている。(NSL7とPBM2は株式会社オハラ社製の光学ガラスであり、PBM2のアッベ数(ν)は36.3,部分分散比[θg,F]は0.5828、NSL7のアッベ数(ν)は60.5、部分分散比[θg,F]は0.5436である。)光学ガラスの異常分散性については、光学ガラスの部分分散比及びアッベ数のプロットが、ノーマルラインから縦軸方向にどれだけ離れているかが指標とされている。異常分散ガラスからなるレンズを他のレンズと組み合わせて用いた場合、紫外から赤外への幅広い波長範囲において色収差を補正することが可能となる。
異常分散ガラスは種々の文献において開示されており、例えば、特許文献1〜5には部分分散比[θg,F]が特異な値を有する光学ガラスが開示されている。具体的には、特許文献1〜3にはSiO−B−ZrO−Nb系やSiO−ZrO−Nb−Ta系のガラスであって、アッベ数(ν)が28〜55の範囲内にあり、部分分散比[θg,F]が0.54〜0.59の範囲にある光学ガラスが開示されている。また、特許文献4,5にはSiO−B−TiO−Al系やBi−B系のガラスであって、アッベ数(ν)が32〜55の範囲内にあり、部分分散比[θg,F]が0.55〜0.59の範囲にある光学ガラスが開示されている。
特開平10―130033号公報 特開平10―265238号公報 国際公開第01/072650号パンフレット 特開2003−313047号公報 特開平09−020530号公報
しかしながら、特許文献1〜5に開示されたガラスの部分分散比の値は、0.59以下の低い値にとどまっており、レンズの色収差をより高精度に補正するには高い部分分散比[θg,F]を有する必要がありながら、近年高まっている光学設計上の要求を満たすには不十分であった。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、光学ガラスにおいて、アッベ数(ν)が所望の範囲内にありながら、レンズの色収差をより高精度に補正することのできる光学ガラス、これを用いたプリフォーム及び光学素子を得ることにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意試験研究を重ねた結果、ガラスの部分分散比[θg,F]を高めるには、TiO成分の含有率を所定の範囲内にすることが重要な役割を果たしていることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
(1) 酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%でTiO成分を5.0〜55.0%含有し、0.60以上0.68以下の部分分散比[θg,F]を有し、13以上27以下のアッベ数(ν)を有する光学ガラス。
(2) 酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%でSiO成分を0%を超え且つ25.0%以下さらに含有する(1)記載の光学ガラス。
(3) 酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
成分 0〜10.0%及び/又は
Nb成分 0〜50.0%及び/又は
Bi成分 0〜40.0%
の各成分をさらに含有する(1)又は(2)記載の光学ガラス。
(4) 酸化物換算組成の質量比(Nb+TiO+Bi)/(SiO+B)が2.04以上である(3)記載の光学ガラス。
(5) 酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
MgO成分 0〜25.0%及び/又は
CaO成分 0〜25.0%及び/又は
SrO成分 0〜25.0%及び/又は
BaO成分 0〜25.0%及び/又は
ZnO成分 0〜25.0%
の各成分をさらに含有する(1)から(4)のいずれか記載の光学ガラス。
(6) 酸化物換算組成のガラス全質量に対する質量和(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)が30.0%以下である(5)記載の光学ガラス。
(7) 酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
LiO成分 0〜10.0%及び/又は
NaO成分 0〜20.0%及び/又は
O成分 0〜10.0%及び/又は
CsO成分 0〜10.0%及び/又は
RbO成分 0〜10.0%
の各成分をさらに含有する(1)から(6)のいずれか記載の光学ガラス。
(8) 酸化物換算組成のガラス全質量に対する質量和(LiO+NaO+KO+CsO+RbO)が20.0%以下である(7)記載の光学ガラス。
(9) 酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
Al成分 0〜10.0%及び/又は
成分 0〜10.0%及び/又は
La成分 0〜10.0%及び/又は
Gd成分 0〜10.0%及び/又は
Yb成分 0〜10.0%及び/又は
Lu成分 0〜10.0%及び/又は
ZrO成分 0〜15.0%及び/又は
Ta成分 0〜15.0%及び/又は
WO成分 0〜15.0%及び/又は
TeO成分 0〜10.0%及び/又は
GeO成分 0〜15.0%及び/又は
成分 0〜10.0%及び/又は
Sb成分 0〜1.0%
の各成分をさらに含有する(1)から(8)のいずれか記載の光学ガラス。
(10) (1)から(9)のいずれか記載の光学ガラスからなる研磨加工用及び/又は精密プレス成形用のプリフォーム。
(11) (10)記載のプリフォームを研磨してなる光学素子。
(12) (10)記載のプリフォームを精密プレス成形してなる光学素子。
本発明によれば、TiO成分の含有率を所定の範囲内にすることによって、アッベ数(ν)が所望の範囲内にありながら、レンズの色収差をより高精度に補正することができ、且つ、溶融状態からガラスを形成したときの耐失透性が高く、可視域での透明性が高い光学ガラス、これを用いたプリフォーム及び光学素子を得ることができる。
本発明の光学ガラスは、酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%でTiO成分を5.0〜55.0%含有し、0.60以上0.68以下の部分分散比[θg,F]を有し、13以上27以下のアッベ数(ν)を有する。TiO成分の含有率を所定の範囲内にすることによって、ガラスの分散が所望の範囲内になり、ガラスの部分分散比[θg,F]が高められ、ガラスの液相温度が低くなり、分光透過率が5%及び70%を示す波長(λ及びλ70)が短くなる。このため、アッベ数(ν)が13以上27以下の範囲内にありながら、レンズの色収差をより高精度に補正することができ、且つ、溶融状態からガラスを形成したときの耐失透性が高く、可視域での透明性が高い光学ガラスを得ることができる。
以下、本発明の光学ガラスの実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の趣旨を限定するものではない。
[ガラス成分]
本発明の光学ガラスを構成する各成分の組成範囲を以下に述べる。本明細書中において、各成分の含有率は特に断りがない場合は、全て酸化物換算組成のガラス全質量に対する質量%で表示されるものとする。ここで、「酸化物換算組成」とは、本発明のガラス構成成分の原料として使用される酸化物、複合塩、金属弗化物等が溶融時に全て分解され酸化物へ変化すると仮定した場合に、当該生成酸化物の総質量を100質量%として、ガラス中に含有される各成分を表記した組成である。
<必須成分、任意成分について>
TiO成分は、ガラスの部分分散比[θg,F]を高めるとともに、ガラスの屈折率を高め、ガラスの比重を低減する成分である。特に、TiO成分の含有率を5.0%以上にすることで、ガラスの所望の屈折率を得易くすることができる。一方で、TiO成分の含有率を55.0%以下にすることで、ガラスの分散の上昇を抑え、ガラスの可視域での透明性を高めることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するTiO成分の含有率は、好ましくは5.0%、より好ましくは7.0%、最も好ましくは10.0%を下限とし、好ましくは55.0%、より好ましくは52.0%、最も好ましくは50.0%を上限とする。TiO成分は、原料として例えばTiO等を用いてガラス内に含有することができる。
SiO成分は、ガラスの安定性を高める成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、SiО成分の含有率を25.0%以下にすることで、ガラスの部分分散比[θg,F]の低下を抑制し、ガラスの透過率を高めることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するSiO成分の含有率は、好ましくは25.0%、より好ましくは24.5%、最も好ましくは24.0%を上限とする。なお、SiO成分を含有しなくとも、所望の光学特性を有する光学ガラスを作製することはできるが、SiO成分を含有することで、所望のガラスの部分分散比[θg,F]を得易くすることができる。従って、SiO成分の含有率は、好ましくは0%を超え、より好ましくは1.0%、最も好ましくは5.0%を下限とする。SiO成分は、原料として例えばSiO、KSiF、NaSiF等を用いてガラス内に含有することができる。
成分は、ガラスの部分分散比[θg,F]を高く維持し、ガラスの溶融性を向上する成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、B成分の含有率を10.0%以下にすることで、ガラスの化学的耐久性を悪化し難くし、ガラスを加熱軟化した後における乳白及び結晶析出を低減することができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するB成分の含有率は、好ましくは10.0%、より好ましくは8.0%、最も好ましくは5.0%を上限とする。B成分は、原料として例えばHBO、Na、Na・10HO、BPO等を用いてガラス内に含有することができる。
Nb成分は、ガラスの屈折率を高め、ガラスの部分分散比[θg,F]を高くする成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、Nb成分の含有率を50.0%以下にすることで、ガラスの分散の上昇を抑えることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するNb成分の含有率は、好ましくは50.0%、より好ましくは40.0%、最も好ましくは30.0%を上限とする。Nb成分は、原料として例えばNb等を用いてガラス内に含有することができる。
Bi成分は、ガラスの部分分散比[θg,F]を高め、ガラスの溶融性を向上し、融液を冷却する際の失透を低減し、ガラスの屈折率を高める成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、Bi成分の含有率を40.0%以下にすることで、ガラスの分散の上昇を抑え、ガラスの可視域での透明性を高めることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するBi成分の含有率は、好ましくは40.0%、より好ましくは35.0%、最も好ましくは30.0%を上限とする。Bi成分は、原料として例えばBi等を用いてガラス内に含有することができる。
本発明の光学ガラスでは、質量和(SiO+B)に対する質量和(Nb+TiO+Bi)の質量比が2.04以上であることが好ましい。この質量比を2.04以上にすることで、ガラスの部分分散比[θg,F]を高めるとともに、ガラス作製時の耐失透性を高めることができる。従って、酸化物換算組成におけるこの質量比は、好ましくは2.04、より好ましくは2.07、最も好ましくは2.08を下限とする。
MgO成分は、ガラスの光学恒数を維持し、ガラスの比重を低下する成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、MgO成分の含有率を25.0%以下にすることで、ガラスを安定化して冷却中の結晶発生を低減することができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するMgO成分の含有率は、好ましくは25.0%、より好ましくは20.0%、最も好ましくは15.0%を上限とする。MgO成分は、原料として例えばMgCO、MgF等を用いてガラス内に含有することができる。
CaO成分は、ガラスの低分散化を図り、ガラスの比重を低減する成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、CaO成分の含有率を25.0%以下にすることで、ガラスの屈折率を高め易くすることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するCaO成分の含有率は、好ましくは25.0%、より好ましくは20.0%、最も好ましくは15.0%を上限とする。CaO成分は、原料として例えばCaCO、CaF等を用いてガラス内に含有することができる。
SrO成分は、ガラスの屈折率を高める成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、SrO成分の含有率を25.0%以下にすることで、ガラスの比重を大きくし、所望の部分分散比[θg,F]を得易くすることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するSrO成分の含有率は、好ましくは25.0%、より好ましくは20.0%、最も好ましくは15.0%を上限とする。SrO成分は、原料として例えばSr(NO、SrF等を用いてガラス内に含有することができる。
BaO成分は、ガラスの屈折率を高める成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、BaO成分の含有率を25.0%以下にすることで、ガラスの比重を大きくし、所望の部分分散比[θg,F]を得易くすることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するBaO成分の含有率は、好ましくは25.0%、より好ましくは22.0%、最も好ましくは20.0%を上限とする。BaO成分は、原料として例えばBaCO、Ba(NO等を用いてガラス内に含有することができる。
ZnO成分は、ガラスの溶融性を高め、ガラスの屈折率を高める成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、ZnO成分の含有率を25.0%以下にすることで、ガラスを加熱軟化した後における乳白及び結晶析出を低減し、所望の部分分散比[θg,F]を得易くすることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するZnO成分の含有率は、好ましくは25.0%、より好ましくは20.0%、最も好ましくは15.0%を上限とする。ZnO成分は、原料として例えばZnO、ZnF等を用いてガラス内に含有することができる。
本発明の光学ガラスでは、RO成分(式中、RnはMg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群より選択される1種以上)の含有率の質量和が30.0%以下であることが好ましい。RO成分を含有することで、ガラスの屈折率及び分散を所望の値に調整することができる。また、この質量和を30.0%以下にすることで、所望の部分分散比[θg,F]及びアッベ数(ν)を得易くすることができる。従って、RO成分の含有率の質量和は、好ましくは30.0%、より好ましくは25.0%、最も好ましくは20.0%を上限とする。なお、RO成分は含有しなくとも本発明において所望の光学特性を実現することは可能であるが、RO成分を含有することで、ガラスの化学的耐久性を高め、ガラスの比重を増加し難くすることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するRO成分の含有率の質量和は、好ましくは0%を超え、より好ましくは1.0%、最も好ましくは5.0%を下限とする。
LiO成分は、ガラスの溶融性を高める成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、LiO成分の含有率を10.0%以下にすることで、ガラスの屈折率を低下し難くし、ガラスを加熱軟化した後におけるガラスの乳白及び結晶析出を低減することができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するLiO成分の含有率は、好ましくは10.0%、より好ましくは7.0%、最も好ましくは5.0%を上限とする。LiO成分は、原料として例えばLiCO、LiNO、LiF等を用いてガラス内に含有することができる。
NaO成分は、ガラスの溶融性を高める成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、NaO成分の含有率を20.0%以下にすることで、所望の屈折率及び分散を得易くするとともに、ガラスの化学的耐久性を高めることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するNaO成分の含有率は、好ましくは20.0%、より好ましくは17.0%、最も好ましくは15.0%を上限とする。なお、本発明では、NaO成分を含有しなくとも所望の光学特性を有するガラスを製造することは可能であるが、NaO成分を含有することで部分分散比[θg,F]及びアッベ数(ν)の調整を容易にすることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するNaO成分の含有率は、好ましくは0%を超え、より好ましくは1.0%、最も好ましくは5.0%を下限とする。NaO成分は、原料として例えばNaCO、NaNO、NaF、NaSiF等を用いてガラス内に含有することができる。
O成分は、ガラスの溶融性を高め、部分分散比[θg,F]やアッベ数(ν)を調整する成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、KO成分の含有率を10.0%以下にすることで、所望の屈折率及びアッベ数を実現し易くすることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するKO成分の含有率は、好ましくは10.0%、より好ましくは7.0%、最も好ましくは5.0%を上限とする。KO成分は、原料として例えばKCO、KNO、KF、KHF、KSiF等を用いてガラス内に含有することができる。
CsO成分は、ガラスの溶融性を高め、部分分散比[θg,F]やアッベ数(ν)を調整する成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、CsO成分の含有率を10.0%以下にすることで、所望の屈折率及びアッベ数を実現し易くすることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するCsO成分の含有率は、好ましくは10.0%、より好ましくは7.0%、最も好ましくは5.0%を上限とする。CsO成分は、原料として例えばCsCO、CsNO等を用いてガラス内に含有することができる。
RbO成分は、ガラスの溶融性を高め、部分分散比[θg,F]やアッベ数(ν)を調整する成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、RbO成分の含有率を10.0%以下にすることで、所望の屈折率及びアッベ数を実現し易くすることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するRbO成分の含有率は、好ましくは10.0%、より好ましくは7.0%、最も好ましくは5.0%を上限とする。RbO成分は、原料として例えばRbCO、RbNO等を用いてガラス内に含有することができる。
本発明の光学ガラスでは、RnO成分(式中、RはLi、Na、K、Cs、Rbからなる群より選択される1種以上)の含有率の質量和が、20.0%以下であることが好ましい。この質量和を20.0%以下にすることで、所望の部分分散比[θg,F]、アッベ数[νd]を実現し易くし、ガラスの化学的耐久性を高めることができる。従って、酸化物換算組成における、RnO成分の含有率の質量和は、好ましくは20.0%、より好ましくは17.0%、最も好ましくは15.0%を上限とする。なお、本発明では、RnO成分を含有しなくとも所望の光学特性を有するガラスを製造することは可能であるが、RnO成分を含有することで、ガラスの溶融性を高め、ガラス転移点(Tg)を下げることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するRnO成分の含有率の質量和は、好ましくは0%を超え、より好ましくは1.0%、最も好ましくは5.0%を下限とする。
Al成分は、ガラスの化学的耐久性を高める成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、Al成分の含有率を10.0%以下にすることで、ガラスの耐失透性を高めることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するAl成分の含有率は、好ましくは10.0%、より好ましくは7.0%、最も好ましくは5.0%を上限とする。Al成分は、原料として例えばAl、Al(OH)、AlF等を用いてガラス内に含有することができる。
成分は、ガラスの屈折率を高め、ガラスの分散を小さくする成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、Y成分の含有率を10.0%以下にすることで、ガラスの安定性を低下し難くすることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するY成分の含有率は、好ましくは10.0%、より好ましくは7.0%、最も好ましくは5.0%を上限とする。Y成分は、原料として例えばY、YF等を用いてガラス内に含有することができる。
La成分は、ガラスの屈折率を高め、ガラスの分散を小さくする成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、La成分の含有率を10.0%以下にすることで、ガラスの安定性を低下し難くすることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するLa成分の含有率は、好ましくは10.0%、より好ましくは7.0%、最も好ましくは5.0%を上限とする。La成分は、原料として例えばLa、La(NO・XHO(Xは任意の整数)等を用いてガラス内に含有することができる。
Gd成分は、ガラスの屈折率を高め、ガラスの分散を小さくする成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、Gd成分の含有率を10.0%以下にすることで、ガラスの安定性を低下し難くすることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するGd成分の含有率は、好ましくは10.0%、より好ましくは7.0%、最も好ましくは5.0%を上限とする。Gd成分は、原料として例えばGd、GdF等を用いてガラス内に含有することができる。
Yb成分は、ガラスの屈折率を高める成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、Yb成分の含有率を10.0%以下にすることで、ガラスの材料コストを低減することができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するYb成分の含有率は、好ましくは10.0%、より好ましくは7.0%、最も好ましくは6.0%を上限とする。Yb成分は、原料として例えばYb等を用いてガラス内に含有することができる。
Lu成分は、ガラスの屈折率を高める成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、Lu成分の含有率を10.0%以下にすることで、ガラスの材料コストを低減することができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するLu成分の含有率は、好ましくは10.0%、より好ましくは7.0%、最も好ましくは5.0%を上限とする。Lu成分は、原料として例えばLu等を用いてガラス内に含有することができる。
ZrO成分は、ガラスの安定性を高め、溶融ガラスを冷却する際の失透発生を低減する成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、ZrO成分の含有率を15.0%以下にすることで、ガラスの溶融性を高めることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するZrO成分の含有率は、好ましくは15.0%、より好ましくは12.0%、最も好ましくは10.0%を上限とする。ZrO成分は、原料として例えばZrO、ZrF等を用いてガラス内に含有することができる。
Ta成分は、ガラスの屈折率を高め、溶融ガラスを冷却する際の失透発生を低減する成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、Ta成分の含有率を15.0%以下にすることで、ガラスの分散を所望の範囲内にすることができるばかりでなく、希少鉱物資源であるTa成分の使用量が減り、ガラスがより低温で溶解し易くなるため、ガラスの生産コストを低減することができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するTa成分の含有率は、好ましくは15.0%、より好ましくは12.0%、最も好ましくは10.0%を上限とする。Ta成分は、原料として例えばTa等を用いてガラス内に含有することができる。
WO成分は、ガラスの溶融性を高め、ガラスの屈折率を高め、溶融ガラスを冷却する際の失透発生を抑制する成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、WO成分の含有率を15.0%以下にすることで、ガラスの所望の分散を得易くし、ガラスの可視域の波長における光線透過率を高めることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するWO成分の含有率は、好ましくは15.0%、より好ましくは12.0%、最も好ましくは10.0%を上限とする。WO成分は、原料として例えばWO等を用いてガラス内に含有することができる。
TeO成分は、ガラスの屈折率を高める成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、TeO成分の含有率を10.0%以下にすることで、ガラスの可視域での透明性を高め、ガラス融液の清澄を促すことができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するTeO成分の含有率は、好ましくは10.0%、より好ましくは7.0%、最も好ましくは5.0%を上限とする。TeO成分は、原料として例えばTeO等を用いてガラス内に含有することができる。
GeO成分は、ガラスの機械的強度を高め、ガラス転移点(Tg)を下げ、ガラスの耐失透性を向上する成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、GeO成分の含有率を15.0%以下にすることで、ガラスの溶融性を高めることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するGeO成分の含有率は、好ましくは15.0%、より好ましくは12.0%、最も好ましくは10.0%を上限とする。GeO成分は、原料として例えばGeO等を用いてガラス内に含有することができる。
成分は、ガラスの安定性を高める成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、P成分の含有率を10.0%以下にすることで、失透傾向を低減してガラスの安定性を高めることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全物質量に対するP成分の含有率は、好ましくは10.0%、より好ましくは7.0%、最も好ましくは5.0%を上限とする。P成分は、原料として例えばAl(PO、Ca(PO、Ba(PO、BPO、HPO等を用いてガラス内に含有することができる。
Sb成分は、ガラスの脱泡を促進して清澄なガラスを得易くする成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、Sb成分の含有率を1.0%以下にすることで、ガラス溶融時における過度の発泡を生じ難くすることができ、Sb成分が溶解設備(特にPt等の貴金属)と合金化し難くすることができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するSb成分の含有率は、好ましくは1.0%、より好ましくは0.8%、最も好ましくは0.5%を上限とする。Sb成分は、原料として例えばSb、Sb、NaSb・5HO等を用いてガラス内に含有することができる。
なお、ガラスを清澄し脱泡する成分は、上記のSb成分に限定されるものではなく、ガラス製造の分野における公知の清澄剤、脱泡剤或いはそれらの組み合わせを用いることができる。
F成分は、ガラスの溶融性を高める効果とアッベ数を大きくする効果がある成分であり、本発明の光学ガラス中の任意成分である。特に、上述した各元素の一種又は二種以上の酸化物の一部又は全部と置換した弗化物のFとして、合計量で5.0質量%を上限として含有することにより、所望の光学恒数を実現し易くし、ガラスの内部品質を高め、加熱軟化した後におけるガラス内部の失透を低減することができる。従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するF成分の含有率は、好ましくは5.0%、より好ましくは4.5%、最も好ましくは4.0%を上限とする。F成分は上述した各種酸化物の導入において、原料形態を弗化物にて導入した際に、ガラス中に導入される。
なお本明細書において、F成分の含有率を表す表記「各元素の一種又は二種以上の酸化物の一部又は全部と置換した弗化物のFとしての合計量」とは、本発明のガラス構成成分の原料として使用される酸化物、複合塩、金属弗化物等が熔融時に全て分解され酸化物へ変化すると仮定した場合に、当該生成酸化物の総質量に対する実際に含有されるF原子の質量を質量百分率で表したものである。
<含有すべきでない成分について>
次に、本発明の光学ガラスに含有すべきでない成分、及び含有することが好ましくない成分について説明する。
本発明の光学ガラスには、他の成分を本願発明のガラスの特性を損なわない範囲で必要に応じ、添加することができる。
ただし、Tiを除く、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag及びMo等の各遷移金属成分は、それぞれを単独又は複合して少量含有した場合でもガラスが着色し、可視域の特定の波長に吸収を生じる性質がある。従って、特に可視領域の波長を使用する光学ガラスにおいては、実質的に含まないことが好ましい。ここで「実質的に含まない」とは、不純物として混入される場合を除き、人為的に含有させないことを意味する。
Th成分は高屈折率化又はガラスとしての安定性向上を目的として、Cd及びTl成分は低Tg化を目的として、それぞれ含有することができる。しかし、Th、Cd、Tl、Os、Be、Seの各成分は、近年有害な化学物資として使用を控える傾向にあり、ガラスの製造工程のみならず、加工工程、及び製品化後の処分に至るまで環境対策上の措置が必要とされる。従って、環境上の影響を重視する場合には、不可避な混入を除き、これらを実質的に含有しないことが好ましい。
また、PbO等の鉛化合物は、ガラスを製造、加工、及び廃棄をする際に環境対策上の措置を講ずる必要があり、製造コストも高くなるため、本発明のガラスに鉛化合物を含有させるべきでない。
さらに、As等のヒ素化合物は、ガラスを溶融する際、泡切れ(脱泡性)を良くするために用いられる成分であるが、ガラスを製造、加工、及び廃棄をする際に環境対策上の措置を講ずる必要があるため、本発明のガラスにヒ素化合物を含有することは好ましくない。
本発明のガラス組成物は、その組成が酸化物換算組成のガラス全質量に対する質量%で表されているため直接的にモル%の記載に表せるものではないが、本発明において要求される諸特性を満たすガラス組成物中に存在する各成分のモル%表示による組成は、酸化物換算組成で概ね以下の値をとる。
TiO成分 5.0〜60.0%
並びに
SiO成分 0%を超え且つ40.0%以下及び/又は
成分 0〜12.0%及び/又は
Nb成分 0〜15.0%及び/又は
Bi成分 0〜8.0%及び/又は
MgO成分 0〜45.0%及び/又は
CaO成分 0〜35.0%及び/又は
SrO成分 0〜25.0%及び/又は
BaO成分 0〜15.0%及び/又は
ZnO成分 0〜25.0%及び/又は
LiO成分 0〜30.0%及び/又は
NaO成分 0〜30.0%及び/又は
O成分 0〜15.0%及び/又は
CsO成分 0〜3.0%及び/又は
RbO成分 0〜5.0%及び/又は
Al成分 0〜15.0%及び/又は
成分 0〜5.0%及び/又は
La成分 0〜3.0%及び/又は
Gd成分 0〜3.0%及び/又は
Yb成分 0〜3.0%及び/又は
Lu成分 0〜3.0%及び/又は
ZrO成分 0〜10.0%及び/又は
Ta成分 0〜3.0%及び/又は
WO成分 0〜5.0%及び/又は
TeO成分 0〜5.0%及び/又は
GeO成分 0〜15.0%及び/又は
Sb成分 0〜0.3%
[製造方法]
本発明の光学ガラスは、例えば以下のように作製される。すなわち、上記原料を各成分が所定の含有率の範囲内になるように均一に混合し、作製した混合物を白金坩堝、石英坩堝又はアルミナ坩堝に投入して粗溶融した後、金坩堝、白金坩堝、白金合金坩堝又はイリジウム坩堝に入れて1200〜1400℃の温度範囲で3〜4時間溶融し、攪拌均質化して泡切れ等を行った後、1200℃以下の温度に下げてから仕上げ攪拌を行って脈理を除去し、金型に鋳込んで徐冷することにより作製される。
[物性]
本発明の光学ガラスは、所望の分散(アッベ数)を有する必要がある。特に、本発明の光学ガラスのアッベ数(ν)は、好ましくは13、より好ましくは15、最も好ましくは17を下限とし、好ましくは27、より好ましくは25、最も好ましくは23を上限とする。これにより、本発明の光学ガラスを光学素子に用いたときの光学設計の自由度を大幅に広げることができる。
また、本発明の光学ガラスは、高い部分分散比[θg,F]を有し、レンズの色収差をより高精度に補正できる必要がある。より具体的には、本発明の光学ガラスの部分分散比[θg,F]は、好ましくは0.60、より好ましくは0.61、最も好ましくは0.62を下限とし、好ましくは0.68、より好ましくは0.66、最も好ましくは0.64を上限とする。これにより、光学機器におけるレンズの色収差をより高精度に補正することができる。
また、本発明の光学ガラスは、溶融状態からガラスを形成したときの耐失透性が高いことが好ましい。より具体的には、本発明の光学ガラスの液相温度は、好ましくは1280℃、より好ましくは1250℃、最も好ましくは1200℃を上限とする。これにより、より低い温度で溶融ガラスを流出しても、作製されたガラスの結晶化が低減されるため、ガラスを用いた光学素子の光学特性への影響を低減することができる。なお、本明細書中における「液相温度」とは、粉砕したガラス試料を白金板上にのせ、温度傾斜のついた炉内に30分間保持した後取り出し、冷却後、ガラス中の結晶の有無を顕微鏡にて観察し、結晶が認められず失透が生じない一番低い温度である。
また、本発明の光学ガラスは、可視域での透明性が高い必要がある。特に、本発明の光学ガラスは、ガラスの透過率で表すと、厚み10mmのサンプルで分光透過率5%を示す波長(λ)が450nm以下であり、より好ましくは420nm以下であり、最も好ましくは400nm以下である。また、本発明の光学ガラスは、厚み10mmのサンプルで分光透過率70%を示す波長(λ70)が500nm以下であり、より好ましくは490nm以下であり、最も好ましくは480nm以下である。これにより、ガラスの吸収端が紫外領域の近傍に位置するようになり、可視域におけるガラスの透明性が高められるため、この光学ガラスをレンズ等の光学素子の材料として用いることができる。
また、本発明の光学ガラスは、光学ガラスに必要とされる光学的物性以外にも、機械的物性、化学的耐久性、熱的性質、量産性、溶解成形品の残存泡、及び再加熱時の失透性について、良好な物性値を有している。
光学ガラスの機械的物性である磨耗度は、光学ガラスの加工性の指標とされる物性であり、大きすぎるとガラス加工時に不具合が生じる。磨耗度の値は、「日本光学硝子工業会規格JOGIS10−1994光学ガラスの磨耗度の測定方法」に準じた測定方法によって測定される。本発明の光学ガラスにおける磨耗度の値は、好ましくは600以下であり、より好ましくは500以下、最も好ましくは400以下である。
光学ガラスの化学的耐久性は、光学ガラスの加工性及び耐環境性の指標とされる物性であり、化学的耐久性のクラスが大きすぎると、光学ガラスの加工性及び耐環境性に不具合が生じる。本発明のガラスは「日本光学硝子工業会規格JOGIS06−1999光学ガラスの化学的耐久性の測定方法(粉末法)」に準じた測定方法によって測定される。本発明の光学ガラスの耐酸性・耐水性は、好ましくはクラス5以下であり、最も好ましくはクラス4以下である。
光学ガラスの熱的特性は、光学ガラスの耐熱衝撃性、及びモールドプレス成形時の成形性の指標とされる物性である。このうちガラス転移点(Tg)が低いと、モールドプレス成形を低温で行うことができ、低エネルギー化を図り且つ高価な金型の長寿命化を図ることができる。また、熱膨張係数(α)が小さいと、ガラスの加熱時にガラスを割れ難くすることができる。本発明の光学ガラスは、「日本光学硝子工業会規格JOGIS08−2003光学ガラスの熱膨張の測定方法」に準じた測定方法にてガラス転移点(Tg)と熱膨張係数(α)が測定される。これらガラス転移点(Tg)と熱膨張係数(α)の値は、好ましくはガラス転移点(Tg)が700℃以下、熱膨張係数(α)が160以下であり、より好ましくはガラス転移点(Tg)が680℃以下、熱膨張係数(α)が140以下であり、最も好ましくはガラス転移点(Tg)が650℃以下、熱膨張係数(α)が130以下である。
また、上述の光学ガラスの液相温度と、この液相温度における粘性は、量産時のガラス溶解成形の指標とされる物性である。このうち、光学ガラスの液相温度における粘性が高いと、光学ガラスの成形に適した粘性域で成形する事ができるが、この粘性が低いと、光学ガラスの成形が困難となり、ガラス表面や内部に異物が生じてしまう。本発明の光学ガラスの液相温度における粘性は、好ましくは0.20Pa・s以上、好ましくは0.25Pa・s以上、最も好ましくは0.30Pa・s以上である。この粘性の値は、球引き上げ式粘度計(有限会社オプト企業社製 型番BVM−13LH)により粘度η(Pa・s)から求められる。
光学ガラスの溶解成形品の残存泡は、光学ガラスの清澄性を評価する為の指標とされる物性である。残存泡が少なく、泡の級が小さいことは、光学ガラスの清澄性が良いことであるため、光学ガラスを量産し易くすることができる。本発明の光学ガラスの泡は、「JOGIS12−1994光学ガラスの泡の測定方法」に準じた測定方法において、4〜1級であることが好ましく、3〜1級であることがよりも好ましい。
光学ガラスの再加熱時の失透性は、製造過程における再加熱工程、例えば精密プレス成形又はリヒートプレス成形の工程において重要な指標となる。再加熱時の失透性が低い場合には、製造過程の再加熱工程においても光学ガラスの内部に失透が生じ難くなる。本発明のガラスでは、再加熱試験を行ったときに、ガラスの内部に失透が析出しないことが好ましい(再加熱試験:試験片15mm×15mm×30mmを再加熱し、前記光学ガラスのガラス転移点(Tg)よりも80℃高い温度で30分間保温し、その後常温まで冷却し、試験片の対向する2面を厚み10mmに研磨した後に目視観察する)。
[プリフォーム及び光学素子]
本発明の光学ガラスは、様々な光学素子、典型的にはレンズ、プリズム、ミラー用途の用途に有用であるが、その中でも特に、本発明の光学ガラスからプリフォームを形成し、このプリフォームに対して精密プレス成形又は研磨加工の手段を用いて、光学素子を作製することが好ましい。これにより、本発明の光学ガラスから所望の光学特性を有する光学素子を効率良く製造することができる。ここで、プリフォーム材を製造する方法は特に限定されるものではなく、例えば特開平8−319124に記載のガラスゴブの成形方法や特開平8−73229に記載の光学ガラスの製造方法及び製造装置のように溶融ガラスから直接プリフォーム材を製造する方法を用いることもでき、また、光学ガラスから形成したストリップ材に対して研削研磨等の冷間加工を行って製造する方法を用いることもできる。
本発明の実施例(No.1〜No.8)及び参考例(No.1)の組成、及び、これらのガラスの屈折率(n)、アッベ数(ν)、部分分散比[θg,F]、及び分光透過率が5%及び70%を示す波長(λ及びλ70)の結果を表1に示す。なお、以下の実施例はあくまで例示の目的であり、これらの実施例のみ限定されるものではない。
本発明の実施例(No.1〜No.8)の光学ガラス及び参考例(No.1)のガラスは、いずれも各成分の原料として各々相当する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、弗化物、水酸化物、メタ燐酸化合物等の通常の光学ガラスに使用される高純度原料を選定し、表1及び表2に示した各実施例及び参考例の組成の割合になるように原料を秤量して均一に混合した後、石英坩堝又は金坩堝に投入し、ガラス組成の熔融難易度に応じて電気炉で1200〜1400℃の温度範囲で3〜4時間溶解し、攪拌均質化して泡切れ等を行った後、1200℃以下に温度を下げ、1時間程度保温して攪拌均質化してから金型に鋳込み、徐冷してガラスを作製した。
ここで、実施例(No.1〜No.8)の光学ガラス及び参考例(No.1)のガラスの屈折率(n)、アッベ数(ν)、及び部分分散比[θg,F]については、日本光学硝子工業会規格JOGIS01―2003に基づいて測定した。なお、本測定に用いたガラスとして、アニール条件は徐冷降下速度を−25℃/hrとして、徐冷炉にて処理を行ったものを用いた。
また、実施例(No.1〜No.8)の光学ガラス及び参考例(No.1)のガラスの可視域の波長に対する透明性については、日本光学硝子工業会規格JOGIS02に準じて測定した。具体的には、厚さ10±0.1mmの対面平行研磨品をJISZ8722に準じ、200〜800nmの分光透過率を測定し、λ70(透過率70%時の波長)とλ(透過率5%時の波長)を求めた。
Figure 0005823658
表1に表されるように、本発明の実施例の光学ガラスは、いずれも部分分散比[θg,F]が0.60以上、より詳細には0.62以上であるとともに、この部分分散比[θg,F]は0.68以下、より詳細には0.64以下であり、所望の範囲内であった。このため、本発明の実施例の光学ガラスは高い部分分散比[θg,F]を有することが明らかになった。
また、本発明の実施例の光学ガラスは、いずれも溶融状態からガラスを形成したときに、失透及び/又は乳白化が生じなかった。このため、本発明の実施例の光学ガラスは、溶融状態からガラスを形成したときの耐失透性が高いことが明らかになった。
また、一般に光学ガラスは、部分分散比[θg,F]と高めると可視域の波長の光線透過率が低下する傾向にあり、これらを両立させた光学ガラスを作製することが困難である。しかし、表1に表されるように、本発明の実施例の光学ガラスは、いずれも部分分散比[θg,F]が0.60以上でありながら、λ70(透過率70%時の波長)が500nm以下、より詳細には480nm以下であった。また、本発明の実施例の光学ガラスは、λ(透過率5%時の波長)が450nm以下、より詳細には400nm以下であった。このため、本発明の実施例の光学ガラスは、高い部分分散比[θg,F]と可視域の波長における光線透過率の高さとを両立するものであることが明らかになった。
また、本発明の実施例の光学ガラスは、いずれもアッベ数(ν)が13以上、より詳細には17以上であるとともに、このアッベ数(ν)は27以下、より詳細には23以下であり、所望の範囲内であった。
また、本発明の実施例の光学ガラスは、いずれも屈折率(n)が1.80以上、より詳細には1.86以上であるとともに、この屈折率(n)は2.00以下、より詳細には1.91以下であった。
従って、本発明の実施例の光学ガラスは、アッベ数(ν)が所望の範囲内にありながら、レンズの色収差をより高精度に補正でき、且つ、溶融状態からガラスを形成したときの耐失透性が高く、可視域での透明性が高いことが明らかになった。
さらに、本発明の実施例の光学ガラスを用いて、研磨加工用プリフォームを形成した後で研削及び研磨を行い、レンズ及びプリズムの形状に加工した。また、本発明の実施例の光学ガラスを用いて、精密プレス成形用プリフォームを形成し、精密プレス成形用プリフォームを精密プレス成形加工してレンズ及びプリズムの形状に加工した。いずれの場合も、様々なレンズ及びプリズムの形状に加工することができた。
以上、本発明を例示の目的で詳細に説明したが、本実施例はあくまで例示の目的のみであって、本発明の思想及び範囲を逸脱することなく多くの改変を当業者により成し得ることが理解されよう。
部分分散比[θg,F]が縦軸でアッベ数(ν)が横軸の直交座標に表されるノーマルラインを示す図である。

Claims (9)

  1. 酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%でTiO成分を10.0〜39.05%、SiO成分を17.78%〜25.0%、Nb成分を14.38〜40.0%、NaO成分を9.84〜17.0%、BaO成分を14.28〜20.0%、ZrO成分を0.78〜10.0%含有し、鉛化合物を含有せず、質量比(Nb+TiO+Bi)/(SiO+B)が2.07以上であり、0.61以上0.64以下の部分分散比[θg,F]を有し、21.2以上25以下のアッベ数(ν)を有する光学ガラス(但し、Nb成分の含有量が16%未満のものを除く)。
  2. 酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
    成分 0〜10.0%及び/又は
    Bi成分 0〜30.0
    の各成分をさらに含有する請求項1記載の光学ガラス。
  3. 酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
    MgO成分 0〜20.0%及び/又は
    CaO成分 0〜20.0%及び/又は
    SrO成分 0〜20.0%及び/又は
    ZnO成分 0〜20.0
    の各成分をさらに含有する請求項1又は2記載の光学ガラス。」
  4. 酸化物換算組成のガラス全質量に対する質量和(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)が20.0%以下である請求項3記載の光学ガラス。」
  5. 酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
    LiO成分 0〜10.0%及び/又は
    O成分 0〜10.0%及び/又は
    CsO成分 0〜10.0%及び/又は
    RbO成分 0〜10.0%
    の各成分をさらに含有する請求項1から4のいずれか記載の光学ガラス。
  6. 酸化物換算組成のガラス全質量に対する質量和(LiO+NaO+KO+CsO+RbO)が20.0%以下である請求項5記載の光学ガラス。
  7. 酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
    Al成分 0〜10.0%及び/又は
    成分 0〜10.0%及び/又は
    La成分 0〜10.0%及び/又は
    Gd成分 0〜10.0%及び/又は
    Yb成分 0〜10.0%及び/又は
    Lu成分 0〜10.0%及び/又は
    Ta成分 0〜15.0%及び/又は
    WO成分 0〜15.0%及び/又は
    TeO成分 0〜10.0%及び/又は
    GeO成分 0〜15.0%及び/又は
    成分 0〜10.0%及び/又は
    Sb成分 0〜1.0%
    の各成分をさらに含有する請求項1から6のいずれか記載の光学ガラス。
  8. 請求項1から7のいずれか記載の光学ガラスからなる研磨加工用及び/又は精密プレス成形用のプリフォーム。
  9. 請求項1から7のいずれか記載の光学ガラスからなる光学素子。
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