以下、本発明のコイルリングを備えた発電装置の実施形態の一例を、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の発電装置の内部構造を示すために、該発電装置のケース体の一方を取り外して内部を露出させた状態を示した斜視図であり、図2は、その発電装置の内部構造を示す断面図である。
発電装置1は、回転軸2と、該回転軸2の軸線2x周りにN極とS極の磁界形成部92が交互に複数環状配列された環状磁界形成部群920と、該回転軸の軸線周りに各コイル94が巻き回しの向きが交互に逆向きとなる形で複数環状に配列された環状コイル群940と、を備え、該回転軸2の軸線2xと同軸をなす形でそれら環状磁界形成部群920と環状コイル群とが対向配置される。そして、回転軸2の回転に伴い、それら環状磁界形成部群920と環状コイル群940との相対回転が生じ、これにより発電が生じるよう構成されている。
本実施形態の発電装置1は、図2に示すように、発電ケース体100内に、回転軸2の周りを回転可能なロータ(発電機回転子)51,91と、該ロータ51,91に対し非回転となるステータ(発電機固定子)53,93と、を回転軸2と軸線を同じくして配置される形で構成される。ロータ(発電機回転子)51,91には、その周方向に沿って所定間隔おきに、磁界形成部をなす複数の磁性部材52,92が設けられる。ステータ53,93には、それら磁性部材52,92に対しエアギャップを形成する形で対向する形で、ステータコイル54,94が設けられる。それら磁性部材52,92とステータコイル54,94との相対回転により電力を生成する。生成される電力(発電電力)は、その相対回転速度が大きいほどが大となる。ここでの磁性部材52,92は永久磁石であり、例えばネオジウム磁石等を用いることができる。また、磁性部材52,92とステータコイル54,94との数の比は、ここでは3:4であり、ステータコイル54,94からは三相の交流電力が出力される。
なお、本実施形態の発電装置1は、一般的な発電装置とは異なり、第1の発電機5及び第2の発電機9を備えて構成され、それら第1の発電機5及び第2の発電機9のそれぞれがロータ51,91と、ステータ(発電機固定子)53,93とを備えて構成され、さらにロータ51,91がフライホイール7に一体回転可能に固定されている。つまり、ロータ51,91は、フライホイール7を含んだ回転体ともいえる。
本発明のコイルリング900は、こうした発電装置1に設けられるものである。本実施形態のコイルリング900は、図4〜図9に示すように、上記発電装置1のステータ53,93として設けられており、複数のコイル54,94をそれぞれコイル包含部材960により内包させて非露出とした状態に形成され、かつそれぞれの外形形状が同一となる形で形成された複数のコイル部材96と、それらコイル54,94を内包する各コイル部材96を回転軸2の軸線周りにおいて所定間隔おきに取り付けたリング部材95と、により構成されている。ここでのコイル内包部材960は樹脂材料からなる樹脂成形体であり、各コイル部材96は、巻き回されたコイル54,94を樹脂材料で包み込んだ形で形成されている。
なお、本実施形態においては、ステータ53,93の双方ともが同様のコイルリング900として構成されている。
コイルリング900におけるリング部材95には、図10〜図13に示すように、回転軸2の軸線2x周りにおいて所定間隔おきに溝部95Aが形成されており、それら溝部95Aに嵌め込まれる形でコイル部材96が取り付けられる。
具体的に言えば、本実施形態のリング部材95は、図13に示すように、その外周面(あるいは内周面でもよい)に、回転軸2の軸線2xに対する径方向に垂直で、かつ回転軸2の軸線2xの延出方向(軸線方向)に平行となる複数の平坦面95cを有し、溝部95Aは、各平坦面95cの中央部において軸線2xの延出方向(軸線方向)に延びる形でそれぞれ形成される。リング部材95は、回転軸2の軸線2x周りにおいて平坦面95cが隣接形成されることで、その軸線方向から見たときに、それら平坦面95cを辺とし、かつ周方向において隣接する該平坦面95c同士の隣接点96dを頂点とする正多角形状が視認可能とされる形状を有する。そして、その正多角形の各辺の中央部には、上記軸線方向に貫通する溝部95Aが形成されている。本実施形態の溝部95Aは、上記軸線方向における断面が矩形状断面となる形で形成されている。
他方、コイルリング900におけるコイル部材96は、上記溝部95Aに嵌合可能な形状にて形成される。各コイル部材96は、巻き回されたコイル54,94を所定外形形状を有する中空のケース体に内包させる形で形成されていてもよいが、ここでは、巻き回されたコイル54,94を内包する形でインサート成形された樹脂射出成型体であり、全てが同形状に成形される。コイル部材96は、図14〜図16に示すように、直方体状の本体部96Bと、本体部96Bの裏面96bの長手方向第一側(図中の上側)からその長手方向に対し垂直に突出する突出部96Aと、を有したL字形状をなす。
本実施形態の突出部96Aは、本体部96Bの長手方向の第一側端部のうち、その長手方向及び突出方向に対し垂直な方向における中央部において突出形成されており、その垂直な方向の両端側は、本体部95Bの裏面96bから続く面(符号96ac:図14参照)として形成されている。
なお、ここでいう直方体状とは、直方体の角部に対し、該直方体における直線をなす各辺よりも小幅の面取りがなされ、その一部が切り取られたような形状も含む。本実施形態においては、図15に示すように、コイル部材96の本体部96Bには、その表裏両主面96c、96b(図16参照)の四辺をなす角部96xに、湾曲面を形成する形で面取り部が設けられる一方、本体部96Bの外周面の四つの角部96yに、角部96xよりも径大の湾曲面を形成する形で面取り部が設けられる。また、図15に示すように、コイル部材96の突出部96Aは、リング部材95の溝部95Aに嵌合する嵌合用突出部であり、該突出部96Aの裏側主面96a(図14参照)の四辺をなす角部96wには、湾曲面を形成する形で面取り部が設けられており、該突出部96Aの外周面の四つの角部のうち長手方向第一側とは逆の長手方向第二側(図中下側)の2つの角部96zが、角部96wよりも径大の湾曲面を形成する形で面取り部が設けられる。本実施形態の溝部95Aは、上記軸線方向に貫通する形で形成されており、該溝部95Aにコイル部材96が取り付けられた際に、コイル部材96における長手方向の第一側端面96sが、リング部材95の同じ側(上記軸線方向の第一側:図中上側)の端面95sと面一となるように形成されている(図8参照)。
また、本実施形態において、コイル部材96とリング部材95とを固定する固定部材は、図2に示すように、ボルト等の締結部材97であり、該締結部材97によってコイル部材96とリング部材95とが一体に固定され、コイルリング900となる。コイル部材96とリング部材95との双方には、締結部材97を挿通させるための孔96D,95Dが形成されている。本実施形態のコイル部材96には、本体部96Bの長手方向第一側と突出部96Aとの双方を貫通する位置に、締結部材挿通用の貫通孔96Dが、突出部96Aの突出方向に貫通する形で形成されており、他方、リング部材95にも、溝部95Aの底面95aから径方向に雌ネジ穴95Dが形成されている。なお、コイル部材96の貫通孔96Dは、図8及び図16に示すように、巻き回された状態で内包されているコイル54,94の巻き回し中心孔54Q,94Q(図17参照)内を通過する形で形成されている。
ここで、コイルリング900の製造方法について説明する。まずは、コイルリング900のコイル部材96の製造方法について、図17及び図18を用いて説明する。
コイル部材96の製造方法は、巻き回されたコイル54,94を形成する巻回コイル形成工程と、形成されたコイル54,94を樹脂材料で包み込んで、所定外形形状を有するコイル部材96を形成する樹脂モールド工程と、形成された各コイル部材96を、リング部材95に対し、その軸線周りにおいて所定間隔おきに取り付けていくコイル部材固定工程と、をこの順で行う形でなされる。
巻回コイル形成工程は、図17の左上に示されている巻き回されたコイル54,94を形成する工程である。図17の左上のコイル54,94は、予め定められた数だけ巻き回され、テープ54a,94aにより2か所で固定されて形成されたものであり、これらが多数形成される。
樹脂モールド工程は、図17において、その左上から左下、右下、最後に右上という順で示されている。具体的には、成形されるコイル部材96の外周を被う貫通孔(コイル部材96の外周形状と一致する貫通孔)901Bを有した中央型901と、該中央型901の上下方向における第一側(ここでは下側)に配置され、成形されるコイル部材96の主表面96c(図16参照)を被う第一側型902と、該中央型901の上下方向における第二側(ここでは上側)に配置されるとともに、成形されるコイル部材96の主裏面96b(図16参照)を被う第二側型903と、を有した金型9000を用いる。第一側型902は、成形されるコイル部材96の主表面96cと密着する面に、該コイル部材96に貫通孔96Dを形成するための貫通孔形成用突起部902dと、該コイル部材96の表面側中央凹部96Fを形成するための表面側中央凹部形成用突起部902fと、を有する。第二側型903は、図18に示すように、中央型の貫通孔901Bに対応する位置に同様の貫通孔(コイル部材96の外周形状と一致する貫通孔)903Bを有した型本体903Cを備えるとともに、該型本体903Cとは別体で、成形されるコイル部材96の主裏面96bと密着する面に、該型本体903Cの貫通孔903B内に配置されて突起部形成用凹部903aと、該コイル部材96の裏面側中央凹部96Eを形成するための表面側中央凹部形成用突起部902eと、を有する内包型903Aと、を備えて構成される。
樹脂モールド工程では、この金型9000の成形空間をなす貫通孔901の内部に、図17の左下に示すように、巻回コイル形成工程で形成されたコイル54,94を、両端部54b、94bが外部に出る形で配置する。具体的に言えば、コイル54,94は、自身の巻き回し中心孔54Q,94Q内を第一側型902の貫通孔形成用突起部902dが貫通する形で配置される。
その上で、図17の右下に示すように、第一側型902、中央型901、第二側型903をこの順で積み上げ、成形空間をなす貫通孔901の内部に、流動状態の熱硬化性樹脂を充填するとともに、これらの型901,902,903を上下の挟圧板904,905で挟み込み、押圧機構96により押し付ける形で保持する。この押圧機構96は、中央型901と第一側型902と第二側型903の型本体903Cに形成される内部空間に充填された樹脂材料を、その開口部(貫通孔)903Bから押し付ける役割を果たしており、この状態で、内部に充填された樹脂材料を硬化させる。硬化後は、型901,902,903をばらけて、図17の右上に示すように、中央型901から、成形されたコイル部材96’を取り外すとともに、ばり等を取り除いてコイル部材96として仕上げる。
なお、製造されたコイル部材96には、本体部96Bの第一側と嵌合用突出部96Aとの双方を貫通し、さらに、内包している巻き回されたコイル54,94の巻き回し中心孔内を貫通する形で貫通孔96Dを有する。また、製造されたコイル部材96には、その表裏領主表面96b,96cのそれぞれに、上記軸線方向において突出部96Aよりも第二側の位置に、表面側中央凹部96Fと裏面側中央凹部96Eが形成されており、それら表面側中央凹部96Fと裏面側中央凹部96Eは、コイル部材96を突出部96Aの突出方向から見たときに、巻き回された状態で内包されているコイル54,94の巻き回し中心孔内に位置するように形成されている。
次に、このようにして製造されたコイル部材96を、図10〜図13に示すリング部材95に固定するコイル部材固定工程が行われる。コイル部材固定工程は、図19に示すように、リング部材95の溝部95Aに、コイル部材96の突出部96Aを嵌合させる形で配置し、その状態で締結部材97により双方を締結固定する形でなされる。
具体的に言えば、コイル部材96とリング部材95とを固定する際には、まずはリング部材95における所定載置位置にコイル部材96を配置し、ボルトをなす金属製締結部材97(図2参照)をコイル部材96の貫通孔96Dに挿通させ、該締結部材97の先端の雄ネジ部をリング部材95の雌ネジ穴95Dにねじ込む。これにより、そのコイル部材96は挟圧される形でリング部材95に締結固定される。一方で、この締結部材97を逆向きに回せば、コイル部材96をリング部材95から取り外すこともできる。
なお、本実施形態においては、リング部材95所定載置位置にコイル部材96を配置する際には、コイル部材96における突出部96Aの先端面96a(図14参照)とリング部材95における溝部95Aの溝底面95a(図11参照)とが当接(面接触)し、コイル部材96における突出部96Aの両脇に位置する本体部96Bの裏面96ac(図14参照)とリング部材95における溝部95Aの両脇の外周平坦面95c(図11参照)とが当接(面接触)し、コイル部材96における突出部96Aの周方向側面96ab(図14参照)とリング部材95の溝部95Aの溝側面(周方向両側の側面:図11参照)95bとが当接(面接触)することにより周方向において位置決めし、その上で、締結部材97による固定がなされる。
ところで、本実施形態の発電装置1では、コイルリング900として形成されるステータ53,93は、フライホイール7等を内包する発電機ケース体100(発電装置筐体)の内部に固定されている。
発電ケース体100は、互いに別体形成された受風方向2wの上流側のケース体100Aと下流側のケース体100Bとが締結部材によって締結固定される形で筐体化されたものであり、ステータ93をなすコイルリング900は、上流側ケース体100Aの内面に面接触させた形で、ボルト等の締結部材98を、その上流側ケース体100Aの外側から、内部で面接触しているリング部材95のネジ穴95Cにねじ込むことにより締結固定される。ステータ53をなすコイルリング900も同様、下流側ケース体100Bの内面に面接触させた形で、その下流側ケース体100Bの外側から、内部で面接触しているリング部材95のネジ穴95Cにねじ込むことにより締結固定される。ステータ93,53は発電ケース体100(100A,100B)に固定され、回転軸2に対し非回転な固定状態となっている。
コイル54,94は、コイル部材96の本体部96Aの上記長手方向の第一側の側面から引き出されている。図17の左上の図における符号54b、94bが、コイル54,94が引き出された部分である。そして、少なくともリング部材95の上記長手方向の第一側の側面95sが面接触する形で、リング部材96が発電機ケース体100(100A,100B)にボルト等の締結部材98により締結固定されている。ここでは、コイル部材96の上記長手方向の第一側の側面96sと、リング部材95の上記長手方向の第一側の側面95sが面接触する形で、リング部材96が発電機ケース体100に固定されている。
以下、本実施形態の発電装置を採用した風力発電装置について、図面を参照してさらに詳細に説明する。
なお、本発明の発電装置は、以下で述べる構成の風力発電装置の構成に限られるものではなく、また、風力発電に限られるものでもなく、他の発電方法を採用した発電装置であってもよい。
図20は、本実施形態の風力発電装置においてブレード及びハブを正面側から見た図であり、図21はその部分拡大図である。図22は、図20の風車3を有した本実施形態の風力発電装置の部分断面図であり、図23はその部分拡大図であり、双方とも、後述する錘部材35が内方に位置している。図24は、図20の風車を有した本実施形態の風力発電装置の部分断面図であり、図25はその部分拡大図であり、双方とも、後述する錘部材35が外方に位置している。
図20に示す本実施形態の風力発電装置1の風車3は、風力を受けて所定の回転軸2の周りを一定回転方向に回転するものであり、該回転軸2の周りに2以上設けられるブレード(翼)30と、該ブレード30を、その受風面30w(図30参照)の幅方向Wと回転軸2の回転軸線2xの方向とのなす角度θが可変可能となる形で回転軸2に対し固定されるブレード固定部33と、該ブレード30の角度θを、風力が所定の微風レベルを下回る場合に最も風平行寄り(風平行方向X寄り:受風方向2w寄り)となる所定の初期回転用角度位置Aとして加速回転しやすいようにする第一段階(回転開始段階)と、風力が所定の微風レベルをこえた場合に風直交寄り(風直交面Y寄り)に可変してより高速回転となりやすいようにする第二段階(高回転段階)と、風力が所定の強風レベルをこえた場合に過回転が防止されるようにする第三段階(過剰回転防止段階)という風力に応じた各段階を有し、それら各段階する形で、風力に応じて自立的に可変するよう調整する角度調整機構300(図22及び図24参照)と、を備えて構成される。
本実施形態の風車3は、図22及び図24に示すように、受風方向2wが回転軸2の回転軸線2xの方向と一致している。風車3は、該受風方向2wから風力を受けることで一定方向に回転するように配置される複数のブレード30と、それら複数のブレード30を回転軸2と一体回転可能に連結(接続)するハブ22と、を備えて構成される。
ブレード30は、受風面30w(図30参照)が受風方向2wに対し交差するように配置されており、回転軸2の回転軸線2xの方向からの風力を受けて回転する。ブレード30は、回転軸線2xの周りに所定間隔おきに2以上設けられ(ここでは等間隔おきに3枚)、各々が回転軸2に対し径方向外向きに延出する。
ハブ22は、図23及び図25に示すように、回転軸2に対し一体回転する形で固定される軸固定部(固定部材)221と、各ブレード30を軸固定部221に固定するブレード固定部(翼固定部)33と、を有する。これにより、各ブレード30は、対応するブレード固定部33によって軸固定部221(図20及び図21参照)に固定され、回転軸2と一体に回転する。
軸固定部221は、図23及び図25に示すように、円盤形状をなす環状の前端部221Aと、その前端部221Aの中心部が回転軸2の受風方向下流側に延出した筒状の後端部221Bとを有した形状をなす。軸固定部221は、受風方向上流側から回転軸2が挿通されており、それらが締結部材によって互いが一体に回転するよう固定されている。
ブレード固定部33は、図23及び図25に示すように、複数あるブレード30毎に設けられ、対応するブレード30が風力を受けた場合にその受風面30wの幅方向Wが風平行寄りとなるよう押圧力FW(図30参照)を受ける形で、なおかつ該幅方向Wと回転軸線2xの方向とのなす角度θが可変可能な形で、共通の軸固定部(固定部材)221に固定される。これにより、各ブレード固定部33は、回転軸2と一体回転可能に固定された共通の軸固定部(固定部材)221を介して回転軸2に対し一体に固定される。
本実施形態のブレード固定部33は、ブレード30の延出方向に延びる回転支軸33Zと、該回転支軸33Zの軸線33z(図21参照)周りにおいて互いのなす角度を可変可能とされた対をなす2つの固定部33A,33Bとを有した蝶番部材である。一方の固定部33Aは、ブレード取付部材330を介した形で、ブレード30(ブレード30の内周側端部をなす固定部30U)に対し締結部材によって一体に固定される。他方の固定部33Bは回転軸2側の軸固定部221に対し同じく締結部材によって一体に固定され、これによりブレード固定部33全体が軸固定部221と一体回転可能となる。
本実施形態のブレード取付部材330は、図21に示すように、ブレード30を挟持するための対をなす平行板部330A,330Aと、これらを直交する形で結合する直交結合部330Bとを有して構成され、平行板部330A,330Aに挟まれたブレード30(固定部30U)が締結部材によって一体に固定される。図21の(a)は、図20における1つのプレート固定部を拡大した部分断面図であり、図21の(b)及び(d)は図21(a)のA−A断面、図21(c)及び(e)は図21(a)のB−B断面を簡略的に示した模式図である。ただし、図21の(b)及び(d)と、図21の(c)及び(e)とではブレード30の幅方向Wと回転軸線2xの方向とのなす角度θが異なっており、図21の(b)及び(d)はブレード30が風直交寄りの状態、図21の(c)及び(e)はブレード30が風平行寄りの状態を示している。図21においては、ブレード固定部33の固定部33Aが直交結合部330Bに対し締結固定され、ブレード30が平行板部330A,330Aと共に回転支軸33Zの軸線33z周りに回転可能とされている。他方、ブレード固定部33の固定部33Bは、軸固定部221に対し締結部材によって直接固定されている。
回転支軸33Zは、図27及び図29に示すように、ブレード30が幅方向Wにおける第一側の端部30A側を中心にして、他方の第二側の端部30B側が回転するよう、第一側の端部30A側に偏った位置に設けられている。本実施形態においては、第一側の端部30Aが軸線33zに対し内周側となり、第二側の端部30Bが外周側となっており、ここでの回転支軸33Zは、第一側の端部30A側の端縁位置よりも外側に軸線33zが位置している。
角度調整機構300は、図30に示すように、風力が所定の微風レベルを下回る場合に、その風力を受けるブレード30を幅方向Wが最も風平行寄り(風平行方向X寄り)となる所定の初期回転用角度位置Aに保持させる初期位置保持手段(ここでは後述する延出部380と当接部390)と、翼30をその初期回転用角度位置Aに付勢保持する付勢手段34(図23及び図25参照)と、風力がその微風レベルを上回った場合に、遠心力FAが、ブレード30に加わるその風力による受風面30wへの押圧力FWと付勢手段34の付勢力FBとに打ち勝つことにより自らを外方に変位させつつブレード30が風直交寄り(風直交面Y寄り)に可変するようリンク機構37(図23及び図25参照)を介してブレード30に連結する錘部材35(図23及び図25参照)と、を備え、風力が所定の強風レベルに達した場合には、ブレード30を幅方向Wが最も風直交寄りとなる所定の高速回転用角度位置Bに到達させるとともに、風力がその強風レベルをさらに上回った場合には、その風力による押圧力FWと付勢手段34の付勢力FBとが遠心力FAに打ち勝って錘部材35を内方に押し戻すことにより、ブレード30をその幅方向Wが風平行寄りとなるよう復帰させる。
なお、本発明において、ブレード30の受風面30wの幅方向Wが風平行寄りであるとは、ブレード30の受風面30wの幅方向Wと、受風方向2w(即ち回転軸2の回転軸線2xの方向、即ち風平行方向X)とのなす角が小さい側に寄るという意味であり、ブレード30の受風面30wの幅方向Wが風直交寄りであるとは、ブレード30の受風面30wの幅方向Wと、受風方向2wに直交する面Y(即ち回転軸2の回転軸線2xの方向に対する直交面Y)とのなす角が小さい側に寄るという意味である。
以下、本実施形態の角度調整機構300の構成を、図26〜図29を用いて説明する。なお、本発明の角度調整機構300は、以下で述べる本実施形態の構成に限られるものではない。
錘部材35は、複数あるブレード30毎に設けられ、図26及び図28に示すように、それぞれが回転軸2に対し一体回転可能となるよう取り付けられる。これら錘部材35は、回転軸2の回転に伴い自らも回転し、自らが受ける遠心力に応じて回転軸線2xに対する径方向内外に変位可能となるよう、リンク機構37(図23及び図25参照)を介して回転軸2と一体にあるいは連動して回転可能に設けられている。ここでは軸固定部221に対し、その径方向(対応する錘部材35が変位する径方向)と回転軸線2xとの双方に対し直交する回転軸線371y周りに回転可能な形で連結固定される。一方で、リンク機構37を介して共通の連結部材36に対し連結し、これにより、連結部材36は、錘部材35の径方向における内外への変位に応じて、回転軸2上をスライド移動するように設けられる。
リンク機構37は、回転軸2の回転速度が大きいほど大きく作用する遠心力FAによって可動するものであり、遠心力FAが大きくなるほど錘部材35が外方に位置し、遠心力が小さくなるほど錘部材35が内方に位置するよう、予め定められた径方向範囲の中で錘部材35を変位させる。本実施形態においては、図26及び図28に示すように、互いがリンク結合する第一リンク部材371と第二リンク部材372とを有して構成される。L字形状に形成された第一リンク部材371には、一方の端部371Aに錘部材35が締結部材により一体に固定され、他方の端部371Bに第二リンク部材372の一方の端部372Aが、回転軸線2xとその径方向(対応する錘部材35が変位する径方向)との双方に直交する回転軸線372yを有する形で互いに回転可能に取り付けられる。第二リンク部材372の他方の端部372Bは、円盤形状をなした環状の連結部材36の外周部に対し、回転軸線372yと平行な回転軸線373yを有する形で互いに回転可能に取り付けられる。また、L字形状に形成された第一リンク部材371の中間に位置する屈曲部371Cには、軸固定部221に対し同じく回転軸線372yと平行な回転軸線371yを有する形で回転可能に取り付けられる。軸固定部221は、回転軸2と一体に固定されており、錘部材35の径方向の移動に伴い変位を生じることはなく、この軸固定部221を固定リンクとする形で、第一リンク部材371と第二リンク部材372とが可動する。
付勢手段34は、ばね部材(引っ張りばね)であり、ブレード30毎に設けられ、それら付勢手段34は、図26及び図28に示すように、一方の端部が軸固定部221におけるブレード固定部33とは逆の面側にて固定されるとともに、他方の端部が、回転軸線2xの方向にて対向する連結部材36の対向面側にて固定される。本実施形態においては、軸固定部221の受風方向上流側の面に、ばね部材34の一端を固定するばね固定部221c(図21(a)参照)が設けられ、連結部材36の受風方向下流側の面に、ばね部材34の他端を固定するばね固定部36c(図23及び図25参照)が設けられている。このばね固定部221c,36cの対が予め複数個所(ここでは三箇所)に設けられていることで、ばね部材34の数を増やす形での付勢力の調整が可能となっている。
連結部材36は、リンク機構37及び軸固定部221を介して回転軸2に対し一体回転可能とされるとともに、錘部材35の径方向内方への変位により回転軸線2xの第一側にスライド移動し(図26及び図27参照)、錘部材35の径方向外方への変位により回転軸線2xの第二側にスライド移動する(図28及び図29参照)ように、中央部にて軸受装置を介して回転軸2に対し連結している。ここでは第一側が受風方向下流側(軸固定部221側)、第二側が受風方向上流側である。
連結部材36には、対応するブレード30を、錘部材35の径方向内方への変位による回転軸線2xの第一側へのスライド移動によって角度θが風平行寄りとなるよう直接的又は間接的に押し付け、錘部材35の径方向外方への変位による回転軸線2xの第二側へのスライド移動によって角度θが風直交寄りとなるよう直接的又は間接的に引き戻す押付部材362が、ブレード30毎に設けられている。これにより、各ブレード30の角度θは、それら錘部材35の径方向における内外への移動に伴いスライド移動する連結部材36の回転軸上の位置に応じて決定されるよう構成されており、これにより各ブレード30の角度θが互いに同期して同角度となる形で変化する。
なお、図26〜図29における各押付部材362は、対応するブレード30を直接的に押し付ける、あるいは引き戻す構成として図示されているが、実際のところは図21に示すように、軸固定部221の円盤状の前端部221Aに形成された貫通孔221hを貫通する形で延出し、その延出先端部が、対応するブレード30に一体に固定される固定部33A(ここでは受風方向上流側の平行板部330Aに設けられた回転固定部330a)に対し、回転支軸33Zの軸線33zと平行な軸線周りに回動可能な形で固定されている。なお、ここでの押付部材362は、固定部33Aの回転支軸33Zから遠い側の第二側に対し回動可能に固定されている。
また、錘部材35は、径方向における可動範囲があらかじめ規定されている。図28の状態は、錘部材35が径方向の最外位置にある状態であり、リンク機構37の構成上、これ以上径方向外側には変位できない。錘部材35が、この最外位置に到達したときに、ブレード30は、その受風面30wの幅方向Wが最も風直交寄りとなる所定の高速回転用角度位置Bに到達する(図30参照)。一方で、図26の状態は、錘部材35が径方向の最内位置にある状態であり、これ以上径方向内側には変位できない。ただし、これはリンク機構37の構成により規定される最内位置ではない。即ち、その最内位置は、ブレード30を含むブレード30の風平行寄りへの角度変更動作に連動して動作する可動構造体に対し、その動作方向に対向する位置に設けられた当接部材38との当接位置として規定されている。図26及び図27、さらには図30(a)の状態において、ブレード30は、風力による押圧力FWと付勢手段34による付勢力FBにより風平行寄りに付勢されるが、それらの力FW及びFBによるブレード30の風平行寄りへの角度変更動作は、ブレード30を含むブレード30の角度変更動作に連動して動作する可動構造体に対し当接部材38が当接する形で止まる。そして、その停止位置が、錘部材35の径方向における最内位置であって、同時のそのときのブレード30の位置が、初期回転用角度位置Aとなっている。
本実施形態においては、各ブレード固定部33が、回転軸2と一体回転可能に固定された共通の固定部材を介して回転軸2に対し固定され、その固定部材が当接部材38として機能する。ここでは、軸固定部221が当接部材38である。一方、連結部材36は、ブレード30の幅方向Wが風平行寄りとなるに従い上記固定部材に接近するようリンク機構37と接続しており、上記の可動構造体39として機能する。そして、当接部材38である軸固定部221及び可動構造体39である連結部材36のいずれか又は双方には他方の部材に向けて延出する延出部380が形成されており、その延出部380における他方の部材側の先端がその他方の部材の当接部390に対し当接することにより、ブレード30が初期回転用角度位置Aに位置保持される。ここでは、連結部材36に、その中央部から軸固定部221側に向けて延出形成された筒状部又は突起部が延出部380として形成されており、その先端と軸固定部221の当接部390とが当接することにより、ブレード30は、初期回転用角度位置Aに位置保持される。なお、当接部材38の当接部及び可動構造体39の当接部のうち少なくとも一方は、ゴム等の弾性部材として設けられている。ここでは、軸固定部221の当接部390が弾性部材として設けられている。
このような構成を有することにより、ブレード30は、図30に示すような形で動作することになる。
即ち、風力が所定の微風レベルを下回る場合には、図30(a)に示すように、その風力によるブレード30の受風面30wへの押圧力FWと付勢手段34の付勢力FBとが遠心力FAに打ち勝って錘部材35を内方に押し付けて、ブレード30は初期回転用角度位置Aに付勢保持される。具体的にいえば、風力が所定の微風レベルを下回る場合、上述の可動構造体39が当接部材38に当接するよう上記の押圧力FWと付勢力FBとにより押し付けられ、その当接位置である初期回転用角度位置Aにブレード30が位置保持され、このときブレード30は、その受風面の幅方向が最も風平行寄りとなる。この状態は、わずかな風力でも風車3が高いトルクを得やすい状態で、風車3が回転し易い状態である。ただし、高い回転数を得難い状態である。
風力が上記の微風レベルを上回った場合には、図30(b)に示すように、遠心力FAが増大し始めて、受風面30wへの押圧力FWと付勢手段34の付勢力FBとに打ち勝ち、FAと、FW及びFBとが釣り合う位置まで錘部材35が外方へ変位するとともに、ブレード30の角度θも初期回転用角度位置Aを離れ、風直交寄りへと位置を変える。この状態は、風直交寄りとなるほど高いトルクは得にくくなるものの、より高速回転に適した状態へ遷移している途中の状態である。
ただし、錘部材35は最外位置が規定されている。風力が上記の微風レベルを上回った所定の強風レベルに達すると、錘部材35はその最外位置に到達し、それよりも外方へは変位できなくなる。このとき、ブレード30は、その幅方向Wが最も風直交寄りとなる所定の高速回転用角度位置Bに到達した状態となる。この状態は、風車3が最も高速で回転可能な状態である。
風力がその強風レベルをさらに上回った場合には、図30(c)に示すように、その風力による受風面30wへの押圧力FWと付勢手段34の付勢力FBとが遠心力FAに打ち勝って、今度は錘部材35を内方に押し戻すことにより、ブレード30を幅方向Wが風平行寄りとなるように復帰させる。この状態は、風車3が徐々に高い回転数を得難い状態へと遷移している途中の状態である。ここでのブレード30は、上述の可動構造体39が当接部材38に当接する初期回転用角度位置Aまで位置復帰可能とされている。
このように、本実施形態によれば、付勢手段34と錘部材35とリンク機構37とを有することで、微風時に回転し易いようにブレード30の角度θを風平行寄りとする第一段階と、風速が増した時に高回転となり易いようにブレード30の角度θを風直交寄りとする第二段階と、強風時に過回転が防止されるように風直交寄りから風平行寄りにブレード30が押し戻される第三段階という三段階にて、ブレード30の角度θを可変させることが可能となり、この三段階のブレード30の角度変更による自律的な回転速度制御によって、風車3は、始動性に優れ、高回転時の効率も高く、なおかつ強風時の過剰回転の抑制も可能となっている。
以下、上記した風車3を備える風力発電装置1の構成について説明する。
本実施形態の風力発電装置1は、上記のような構成を有することにより所定の受風方向2wからの風力を受けて所定の回転軸線2xの周りを一定回転方向に回転する風車3(図20,図31及び図32参照)と、上記一定回転方向において、回転軸2が増速している場合には該回転軸2と一体回転状態となって自身も増速回転し、回転軸2が減速している場合には該回転軸2から切り離されて慣性回転するように1方向クラッチ6(ワンウェイクラッチ:図2参照)を介して配置されるフライホイール7(図2参照)を備えて構成され、さらにここでは、フライホイール7と同軸をなして一体回転するよう配置されたロータ91(図2参照)を有してフライホイール7の回転に伴う該ロータ91の回転により電力を生成する発電機(発電手段)9(図32参照)を備えて構成される。
さらにいえば、発電機9を第二の発電機とし、フライホイール7と同軸をなして一体回転するよう配置されたロータ51を有してフライホイール7の回転に伴う該ロータ51の回転により電力を生成する、第2の発電機9とは異なる第1の発電機5を備えて構成されている。ここでは、図2に示すように、フライホイール7に対する受風方向下流側に第一の発電機5が設けられ、受風方向上流側に第二の発電機9が設けられる。
そして、本実施形態の風力発電装置1は、図33A及び図33Bに示すように、第1の発電機5と第2の発電機9により生成された双方の電力入力を受け、それらを合わせて外部出力する出力部(出力手段)10を備えて構成される。つまり、第1の発電機5及び第2の発電機9の発電電力の出力ラインを、外部出力に至るまでの間で接続し、1系統で外部出力する形で構成される。
出力部10は、例えば図33Aに示すように、第1の発電機5と第2の発電機9により生成された双方の三相の交流電力を、それぞれ整流器12に入力した上で、昇圧コントローラ11に入力して所定の電圧で出力し、さらにそれをパワーコンディショナ15にて入力して、入力された直流の電力を系統電力に変換し、出力するように構成できる。これにより、第1の発電機5と第2の発電機9により生成された双方の電力を合わせて外部の電源系統19Aに供給することができ、例えば売電等が可能となる。また、パワーコンディショナ15にて、家庭内で使える交流電力に変換して出力してもよい。また、出力部10は、図33Bに示すように、第1の発電機5と第2の発電機9により生成された双方の電力をそれぞれ、整流器12に入力した上で、昇圧コントローラ13に入力し、所定電圧とされた直流の電力をバッテリー(蓄電手段)19Bに供給して蓄電させてもよい。また、バッテリー(蓄電手段)19Bに蓄電された電力を、パワーコンディショナ15を介して外部の電源系統19Aに供給するようにしてもよい。
図34は、本実施形態の風力発電装置1を簡略的に示した拡大断面図である。風車3は、回転軸2の回転軸線2xの方向に同軸をなす形で筒状に延出する筒状風洞部(ダクト)31の内側に配置される。筒状風洞部31は、風車3の受風方向2wの上流側から下流側に向けて開口面積が減少していく形で形成される。具体的にいえば、筒状風洞部31は、受風方向2wの上流側の環状端部31Aから下流側の環状端部31Bまでの間の区間において、径方向内向きに膨出した湾曲形状をなす。この筒状風洞部31において取り込まれた風は、圧縮された形で下流に供給され、下流側のブレードがこれを受けることになるので、風車3が得る回転力を増すことができる。
筒状風洞部31は、その内周面に、ナセル21の外周面21Aから外向きに放射状に延出する複数の支持部材(FRP)32が固定されており、ナセル21と共に回転軸2に対し非回転に設けられている。ナセル21は、第1の発電機5とフライホイール7と第2の発電機9、さらに回転軸2を内部に収容し、ここではさらに角度調整機構300を収容している。ハブ22及びブレード30は、受風方向2wにおいてナセル21よりも下流側に設けられており、下流側のブレード30で得た回転力が、回転軸2を介して受風方向2wの上流側に位置する発電機5,9側へと伝達される。
ナセル21は、図34に示すように、地表の基礎部190(図31参照)から延びる支柱(タワー)110の上端部110Tと共に、支柱本体110Sに対し風向きに合わせて水平面内において向きを変えることが可能(支柱本体110Sの鉛直方向の軸線110xの周りに回転可能)に取り付けられている。本実施形態においては、各ブレード30を外周側から被う筒状風洞部31が、ナセル21の受風方向2wの下流側に設けられているため、その筒状風洞部31が、風車3の受風方向2wを可変する尾翼のような手段として機能する。即ち、筒状風洞部31の筒状外周面31C(特にその水平方向側の面:図31参照)が風を受けると、支柱110の上端部110Tに対し回転し、風が来る向きに回転軸2の回転軸線2xを受風方向上流側に向ける。
図35は、図34のナセルを軸線2x,110xを通過する平面で切断した断面図である。ナセル21の内部には、フライホイール7と第1の発電機5と第2の発電機9とを、風車3の受風方向2wの上流側からこの順で収容した発電ケース体100が配置され、ナセル21に対し締結部材によって締結固定される。
図35に示すように、支柱110の上端部110Tの上端軸部111Tには、スリップリング110SA,110SBが設けられており、各スリップリング110SA,110SB上を摺動するブラシ102CA(図示有り),102CB(図示なし)を介し、ステータコイル54,94から発電出力を取り出すよう構成されている。取り出された発電出力は、筒状の支柱(タワー)110の内部空間を通る配線を介して、出力部10に接続される。
なお、支柱110の上端部110Tの上端面には、回転軸2に回転可能に固定するために、図35に示すように、軸受装置を内包した固定部120が締結部材により締結固定されている。発電ケース体100は、それら固定部120よりも受風方向上流側に設けられている。なお、回転軸2の受風方向上流側では、回転軸2と、これを延長する回転軸延長部2’とが軸連結部130により一体回転可能に連結されている。発電ケース体100内を挿通する回転軸2はその回転軸延長部2’である。
図2に示すように、発電ケース体100は、その内部に、受風方向2wの上流側から順に、第2の発電機9を収容する上流側収容空間9Sと、フライホイール7を収容する中間収容空間7Sと、第1の発電機5を収容する下流側収容空間5Sとを有し、これらをひとつながりの空間とする形状をなす。このひとつながりの空間は、フライホイール7が中間収容空間7S内に配置されることで、上流側収容空間9Sと下流側収容空間5Sとに分断される。これら円筒状の上流側収容空間9S及び下流側収容空間5Sよりも、同じく円筒状の中間収容空間7Sの方が径大で、かつ収容されるフライホイール7自体も、径方向において中間収容空間7Sの円筒状外周壁に対し近接して位置するため、フライホイール7が配置されたときには、上流側収容空間9Sと下流側収容空間5Sとは、フライホイール7の外周側においてのみ連通するので、より確実な分離状態となっている。これにより、上流側収容空間9S及び下流側収容空間5Sのうち、一方の空間内での回転体(ロータ91,51)の回転に伴う気流の乱れの影響を、他方の空間が受けることがない。
回転軸2は、発電ケース体100に対し自身の軸線方向に貫通し、なおかつ発電ケース体100に対し円滑に相対回転するよう軸受装置60を介して取り付けられる(図2参照)。本実施形態の軸受装置60は、例えばシール装置(Oリング等)やグリース等のような密閉機能付きの密閉型軸受装置であり、その密閉機能によって密閉状態としている。密閉された発電ケース体100内部は、空気が大気圧で充填されている場合に、内部の回転体51,91,7等が受ける充填気体による抵抗(空気抵抗)が軽減されるよう、減圧状態等のような内部状態とされている。
本実施形態の第1の発電機5及び第2の発電機9は、ロータ51,91として、回転軸2と同軸をなしフライホイール7と共に互いに一体回転する第1ロータ部51A,91Aと第2ロータ部51B,91Bとを有する。それら双方のロータ部51A,91Aと51B,91Bは、エアギャップを介して互いに対向(対面)する対向面を有し、それら双方の対向面上には、周方向において複数の磁性部材92が所定間隔おきに同数配置され、締結部材により固定されている。ただし、一方のロータ部51A,91Aの磁性部材52A(52),92A(92)と他方のロータ部51B,91Bの磁性部材52B(52),92B(92)とは、互いに異なる極性(磁極)の着磁面同士にて対面している。さらに、それら第1ロータ部51A,91Aと第2ロータ部52A,92Aとの間の空隙にステータ53,93のステータコイル54,94が位置する。ステータコイル54,94は、回転するそれら双方のロータ51A,51Bと91A,91Bの磁性部材間52,52と92,92に挟まれるステータ53,93上の環状の対向領域に、その周方向に沿って所定間隔おきに複数配置される。
また、第1の発電機5及び第2の発電機9において、第1ロータ部51A,91A及び第2ロータ部51B,91Bは、回転軸2の回転軸線2xに対する径方向に対向して配置される。第1ロータ部51A,91Aは、フライホイール7の固定部70Aの外周側に形成される固定部50A,90Aに対し、フライホイール7に対し同軸をなして一体回転するよう固定されている。第2ロータ部をなす円筒状部51B,91Bは、フライホイール7の固定部70Aの内周側に形成される固定部50B,90Bに対し、フライホイール7に対し同軸をなして一体回転するよう固定されている。
なお、本実施形態のフライホイール7は、回転軸2に対し1方向クラッチ(ワンウェイクラッチ)6を介して固定される軸固定部70Cと、軸固定部70Cから径方向外側に延出する円盤状の中間部70Bと、中間部70Bの径方向外側にて第1ロータ部51A,91A及び第2ロータ部51B,91Bが一体に固定される固定部70Aとを有する。さらに本実施形態では、固定部70Aから径方向外側に延出する外端部70Dを有する。
以上、本発明の一実施形態を説明したが、これはあくまでも例示にすぎず、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
例えば上記実施形態を、以下のように変更することができる。
図3に示す実施形態の風力発電装置1は、所定の受風方向2wからの風力を受けて所定の回転軸線2xの周りを一定回転方向に回転する風車3と、風車3の回転軸2と同軸をなして一体回転するよう配置されたロータ51を有して回転軸2の回転に伴う該ロータ51の回転により電力を生成する第1の発電機(発電手段)5と、回転軸2と同軸をなし、かつ上記一定回転方向において、回転軸2が増速している場合には該回転軸2と一体回転状態となって自身も増速回転し、回転軸2が減速している場合には該回転軸2から切り離されて慣性回転するように1方向クラッチ(ワンウェイクラッチ)6を介して配置されるフライホイール7と、フライホイール7と同軸をなして一体回転するよう配置されたロータ91を有してフライホイール7の回転に伴う該ロータ91の回転により電力を生成する、第1の発電機5とは異なる第2の発電機(発電手段)9と、を備えて構成される。
さらに、図3の風力発電装置1の場合は、第1の発電機5と第2の発電機9により生成された双方の電力入力を受け、それらを合わせて外部出力する出力部(出力手段)10を備えて構成される。つまり、第1の発電機5及び第2の発電機9で発電された互いに位相の異なる発電電力を、1系統で外部出力する形で構成される。なお、この場合の出力部10の構成は図33A及び図33Bと同様とすることができる。
図3の第1の発電機5は、ロータ51として、回転軸2と同軸をなし互いに一体回転する第1ロータ部51Aと第2ロータ部51Bとを有する。それら双方のロータ部51A,51Bは、エアギャップを介して互いに対向(対面)する対向面を有し、それら双方の対向面上には、周方向において複数の磁性部材52が所定間隔おきに同数配置され、締結部材により固定されている。ただし、それら双方のロータ部51A,51Bのうち、一方のロータ部51Aの磁性部材52A(52)と他方のロータ部51Bの磁性部材52B(52)とは、互いに異なる極性(磁極)の着磁面同士にて対面している。さらに、それら第1ロータ部51Aと第2ロータ部51Bとの間の空隙にステータ53のステータコイル54が位置し、ステータコイル54は、回転するそれら双方のロータ部51A,51Bの磁性部材52,52間に挟まれるステータ53上の環状の対向領域に、その周方向に沿って所定間隔おきに複数配置される。
また、第1の発電機5において、第1ロータ部51A及び第2ロータ部51Bは、回転軸2の軸線2xに対する径方向(ラジアル方向)に対向して配置される。本実施形態においては、ロータ51の本体部として、回転軸2と一体回転するよう固定される軸固定部50Cと、軸固定部50Cから径方向外側に延出する円盤状の中間部50Bと、中間部50Bの径方向外側の外端部50Aと、を有したロータ本体部50を備える。ただし、ロータ本体部50は、外周側に大重量を有するフライホイール7よりも軽く、小径である。第1ロータ部をなす円筒状部51Aと、第2ロータ部をなす、円筒状部51Aよりも径大の円筒状部51Bとは、ロータ本体部50に対し同軸をなす形で一体回転するよう双方とも、ロータ本体部50の外端部50Aに固定されている。
図3の第2の発電機9は、ロータ91として、回転軸2と同軸をなしフライホイール7と共に互いに一体回転する第1ロータ部91Aと第2ロータ部91Bとを有する。それら双方のロータ部91A,91Bは、エアギャップを介して互いに対向(対面)する対向面を有し、それら双方の対向面上には、周方向において複数の磁性部材92が所定間隔おきに同数配置され、締結部材により固定されている。ただし、それら双方のロータ91A,91Bのうち、一方のロータ部91Aの磁性部材92A(92)と他方のロータ部91Bの磁性部材92B(92)とは、互いに異なる極性(磁極)の着磁面同士にて対面している。さらに、それら第1ロータ部91Aと第2ロータ部91Bとの間の空隙にステータ93のステータコイル94が位置する。ステータコイル94は、回転するそれら双方のロータ91A,91Bの磁性部材間92,92に挟まれるステータ93上の環状の対向領域に、その周方向に沿って所定間隔おきに複数配置される。
また、第2の発電機9において、第1ロータ部91A及び第2ロータ部91Bは、回転軸2の軸線2xに対する径方向に対向して配置される。第1ロータ部91Aは、フライホイール7に対し、第1ロータ部をなす円筒状部91Aと、第2ロータ部をなす、円筒状部91Aよりも径大の円筒状部91Bとが、フライホイール7に対し同軸をなして共に一体回転するよう固定されている。
なお、本実施形態のフライホイール7は、回転軸2に対し1方向クラッチ(ワンウェイクラッチ)6を介して固定される軸固定部70Cと、軸固定部70Cから径方向外側に延出する円盤状の中間部70Bと、中間部70Bの径方向外側にて第1ロータ部をなす円筒状部91Aと第2ロータ部をなす円筒状部91Bを固定する固定部70Aとを有し、本実施形態ではさらに、固定部70Aから径方向外側に延出する外端部70Dを有する。
また、図3の実施形態におけるステータ53,93の構造は、互いの径・大きさは異なるものの、既に述べた実施形態と同様、コイル部材96とリンク部材95を有して構成されている。
ここで、上記実施形態とは異なる風導ケース(ナセル)200について説明する。
図36〜図40に示すように、風車3(ブレード30)の風上側に、発電部ケース(ハウジング)を兼ねる風導ケース(ナセル)200を設け、このケース200の内部に発電部を格納するとともに、その風導ケース200(ケース本体201でもある)の外部に風向フィン(風向板部)202を一体的に形成することができる。この例では、風車3の外側に図31、図34に示したような筒状風洞部(ダクト)31は存在せず、風車3がむき出し(露出状態)で風を受ける。風導ケース200のケース本体201は風車3の軸方向に直角な断面が、縦長楕円状又は円形状等をなす滑らかな外周面を有し、そのケース本体201の風上側の端部は先端側ほど滑らかに細くなり、先端が曲率の小さい円弧状の縦断面を有している。
ケース本体201の外周面には、上述の風向フィン202が、風車3の軸方向に沿う方向において、そのケース本体201(風導ケース200)の外周面から外方に(例えば上向きに)突出するように形成され、風向フィン202は風車3の回転面と直角な位置関係を占める。風向フィン202はケース本体201の軸方向長さと同等か少し短い長さを有し、かつケース本体201の風上側先端近傍から漸次高さが円弧状(又は直線状)に増加する斜辺203を備えて、ケース本体201の風下側の端部近傍で最大高さとなり、その頂部から風上側へ円弧状(湾曲状)に食い込む(えぐれる)ように降下する後端部204を備え(風下側に円弧状に膨出する後端部、あるいは直線状に垂下する後端部でもよいが)、その下端がケース本体201の上部面に連続する。また風向フィン202は、その斜辺203がナイフエッジ状に先鋭に形成され、また中間部から後端部204に向かっても後端ほど先鋭となる曲面を有して、風向フィン202の風向き方向の中間部が最も厚く形成され、風上からみて、図37に示すように先鋭な三角形状をなしている。
このような風向フィン202とはケース本体201の軸線をはさんで反対側(下側)には、風車3を所定の高さに維持する支柱(ポール)206と接続する支柱接続部208が形成され、ここに支柱206が接続される。この支柱接続部208はケース本体201の下面から下方に突出するとともに、滑らかに先細りとなり、下端部が円筒状になるように形成されて、その円筒状部に支柱206の円形断面の上端部が嵌合され、かつ、図36に示すように軸受(ベアリング)210を介して、風導ケース200及び風車3が、支柱206の軸線(垂直軸)の周りに回転自在に支持されている。その結果、風導ケース200に形成された風向フィン202が風向きに沿うように、言い換えれば風車3の回転面が常に風向きと正対するように、風車3及び風導ケース200がフリーな状態に保持されることとなる。
図41は風車3と風導ケース200を含む部分の側面断面図(透視図)であり、風導ケース200の内部に、風車3の回転軸2が風導ケース200の中心線と同心的に配置され、また図2又は図3に示した発電ケース体100がその回転軸2に同心的に組み付けられる。さらに、図21〜図30で説明した風車3の角度調整機構300もこの風導ケース200内に収容される。
なお、図36、図39及び図41に示すように、風車3の中心部(ブレード30の基端部)は、円形断面の筒状部212が占めるようにされ、この筒状部212の中心部から前記風導ケース200とは反対側(風下側)へコーン状に突出するコーン状中心部214が形成され、このコーン状中心部214と筒状部212(風下側へややテーパ状に縮径されたほぼ円筒部)との間には、円環状でかつ底部側ほど幅が狭くなるコーン付き環状凹部216が形成され、それらの内部にハブ22やブレード固定部33が配置されている。仮に、風向きが大きく変わって、風導ケース200の後方から風が吹くようになっても、そのコーン付き環状凹部216が後方からの風を受けて回転モーメントを生じ、その結果、フリー状態の風導ケース200及び風車3が姿勢(向き)を例えば180度近く変え、風導ケース200の先端が風上を向く(風に正対する)ように姿勢変更することができる。
ここで、上記実施形態におけるブレード30の変形例について、以下で説明する。
図43は、上記実施形態とはブレード30の形状が異なる風車を備えた風力発電装置1の実施形態を示す斜視図である。図43に示す風力発電装置1の風車3には、回転軸2の軸線方向2x(図20参照)からの風力を受けて該回転軸2の周りを一定回転方向に回転するよう形成されたブレード30が、回転軸2の周りに2以上設けられている。ブレード30は、回転軸線2x周りに所定間隔おきに配置され、互いに同形状をなして形成される。
ブレード30は、既に述べた実施形態と同様であるが、回転軸2側と先端30s側で流れの速度に差が生ずるように、受風面30wにねじりを設けた形で形成されている。具体的にいえば、ブレード30は、先端30s側ほどピッチが浅くなる形で形成されている。
さらに、本発明のブレード30は、回転軸2に対し径方向外向きに延出するブレード本体部30Tと、ブレード本体部30Tの外側から一定回転方向とは逆側に延出するブレード先端部30Sと、を備える。つまり、ブレード30は、その外側の先端部が一定回転方向とは逆側に曲がった形状をなしており、ブレード30の回転に対し尾を引くような形状を有している。
ブレード先端部30Sは、正面視(図46)及び背面視(図45)において、直線状に延出するブレード本体部30Tから湾曲して続くように見える形状をなす。ここでのブレード先端部30Sは、ブレード本体部30Tの外周側から滑らかに連続して続く形で形成されており、正面視(図46)及び背面視(図45)において、直線状に延びて見えるブレード本体部30Tの外周側から、弧状を描く形で湾曲したフック状に見えるように形成されている。
また、ブレード先端部30Sは、正面視(図46)及び背面視(図45)において、ブレード本体部30Tとは逆に位置する先端30sが直線状に見える形状をなす。つまり、ブレード30において湾曲する先端が直線状にカットされたような形状をなす。そのカット面は、上記一定回転方向とは逆向きを臨むよう形成されている。ここでは、ブレード先端部30Sの先端30sが、正面視(図46)及び背面視(図45)において、回転軸2に対する径方向に直線状に延出するブレード本体部30Tの、上記一定回転方向側の端面(端縁部)30aと略平行に見える形で形成されている。
ブレード30の背面30v(受風面30wとは逆側の面)には、ブレード本体部30Tからブレード先端部30Sにかけてブレード延出方向に沿った稜線30pを有するよう幅方向中央部に山型の凸部30Pが形成されている。また、この凸部30Pは、背面30vの幅方向Wにおいて、上記稜線30pが後述するブレード固定部33の回転支軸33Z(図21参照)側に偏った位置に設けられている。即ち、ここでの凸部30Pは、図45に示すように、上記稜線30pが背面30vの幅方向Wにおいて一定回転方向側(図45の上側)に偏った位置となるよう形成され、一定回転方向側(図45の上側)の面30p1の面幅のほうが、その逆側(図45の下側)の面30p2の面幅よりも短い。
ブレード先端部30Sは、上記したブレード30の一定回転方向側を上側とした場合、その上面視(図49)及び下面視(図50)において、ブレード本体部30Tの延出方向に対し、ブレード本体部30の受風面側(受風方向とは逆向き)に曲がった形状とされている。この屈曲形状により、ブレード30は、その屈曲部分において風を受け止めやすくなっている。このため、受け止めた風によって効率的に回転できる。また、ブレード30の先端側(外周側)に加わる応力に対しては、ブレード先端側が受風方向にしなる形で抗することができ、高い強度を有した構造となっている。また、既に述べたように、ブレード30の先端側(外周側)が回転方向逆側に屈曲していることにより、上記応力に対し、ブレード先端側が弾性的にねじれる形でも風力に対し抗することができるから、より高い強度を有した構造となっている。
また、図49及び図50に示すように、ブレード本体部30Tの受風面30wは、外周側(ブレード先端部側)に向かうに従い受風方向にわずかに反った形状となっており、その外周側に、受風方向逆向き(受風面側)に屈曲するブレード先端部30Sが設けられている。さらに、図47及び図48に示すように、翼先端部30Sの先端30sの外周側端縁位置は、翼本体部30Tの受風面30wよりも、受風方向逆向き(受風面側)に突出して位置している。
ブレード30は、内周側(根元側)の端部30tに向かうに従い厚みが増し、なおかつ外周側(先端)に向かうに従い受風面30wの面幅が減少する先細りの全体形状を有する。端部30tのさらに内周側には、ブレード固定部33により固定される固定部30Uを有する。
図51〜図55は、図36〜図40に示す実施形態の風車3のブレード30を、上記した図44〜図50のブレードに置き換えた図である。
また、上記実施形態における角度調整機構300の変形例について、以下で説明する。
上記実施形態における角度調整機構300では、付勢手段34として、ブレード30の受風面30wの幅方向Wが初期回転用角度位置Aと高速回転用角度位置Bとの間に位置する間、その幅方向Wが風平行寄り側となるようブレード30を初期回転用角度位置A側へと一定の付勢力で付勢するばね部材34を使用しているが、ブレード30に対し、その受風面30wの幅方向Wを初期回転用角度位置A側へと付勢する付勢力が、初期回転用角度位置Aから離間するほど増大するものに変更してもよい。以下、図56〜図63を用いて、上記実施形態とは異なる角度調整機構300’及び風車3’について説明する。
図56は、上記実施形態の風車3とは異なる角度調整機構300’を備える風車3’を示すものである。また、図57の(a)は、図56における1つのプレート固定部を拡大した部分断面図であり、図57の(b)及び(d)は図57(a)のA−A断面、図57(c)及び(e)は図57(a)のB−B断面を簡略的に示した模式図である。ただし、図57の(b)及び(d)と、図57の(c)及び(e)とではブレード30の幅方向Wと回転軸線2xの方向とのなす角度θが異なっており、図57の(b)及び(d)はブレード30が風直交寄りの状態、図57の(c)及び(e)はブレード30が風平行寄りの状態を示している。
図56に示す風車3’の角度調整機構300’は、図57〜図61に示すように、図20の実施形態において付勢手段として使用したばね部材34に代わって、ネオジム磁石等のマグネット(磁性部材)340a,340bを使用している点が異なる。マグネット340bは、受風面30w(図62及び図63参照)の幅方向Wと回転軸2の回転軸線2xの方向とのなす角度θが可変可能なブレード(可動構造体)30の、受風方向上流側に取り付けられる。具体的に言えば、ブレード30を取り付けるためのブレード取付部材(可動構造体)330をなす平行板部330A,330Aのうち受風方向上流側の平行板部330Aに締結部材によって直接固定される。他方、マグネット340aは、マグネット340bが取り付けられた平行板部330A(ブレード30)が風直交寄りとなるほど接近してくる軸固定部(固定構造部)221に、マグネット340bと対向する形で取り付けられる。具体的に言えば、軸固定部(固定構造部)221の受風方向下流側に締結部材によって直接固定される。対向するマグネット(磁性部材)340a,340bは互いの極性が同じであり、接近時には互いの接近を妨げる反発力FM(図62及び図63参照)を生ずる。この反発力FMは、対向するマグネット(磁性部材)340a,340bの対向間距離が小さくなるほど増大する。
このような構成を有することにより、ブレード30は、図62及び図63に示すような形で動作することになる。
即ち、風力が所定の微風レベルを下回る場合には、図62(a)に示すように、その風力によるブレード30の受風面30wへの押圧力FWと付勢手段340a,340bの付勢力FMとが遠心力FAに打ち勝って錘部材35を内方に押し付けて、ブレード30は初期回転用角度位置Aに付勢保持される。具体的にいえば、風力が所定の微風レベルを下回る場合、上述の可動構造体39が当接部材38に当接するよう上記の押圧力FWと付勢力FBとにより押し付けられ、その当接位置である初期回転用角度位置Aにブレード30が位置保持され、このときブレード30は、その受風面の幅方向が最も風平行寄りとなる。この状態は、図30(a)と同様の状態であるが、ここでは付勢力FMがマグネット340a,340bの反発力であり、ここではマグネット340a,340bの対向間距離が長いことから、付勢力FMは図30(a)のときの付勢力FBよりもはるかに小さく、極めて小さい力として作用している。
風力が上記の微風レベルを上回った場合には、図62(b)に示すように、遠心力FAが増大し始めて、受風面30wへの押圧力FWと付勢手段340a,340bの付勢力FMとに打ち勝ち、錘部材35が、FAと、FW及びFMとが釣り合う位置まで外方へと変位するとともに、ブレード30の角度θも初期回転用角度位置Aを離れ、風直交寄りへと位置を変える。この状態は、図30(b)と同様の状態であるが、ここでの付勢力FMは依然として付勢力FBよりもはるかに小さい。
風力が上記の微風レベルを上回った所定の強風レベルに達した場合には、図62(c)に示すように、ブレード30は、その幅方向Wが、初期回転用角度位置Aよりも風直交寄りとなる所定の高速回転用角度位置Bに到達した状態となる。この状態は、風車3が最も高速で回転可能な状態である。
この段階となると、対向するマグネット(磁性部材)340a,340bの対向間距離が小さくなってくるため、付勢力FMは、徐々に付勢力としての機能を有する程度に大きくなってくる。
風力が所定の強風レベルをさらに上回った場合には、図63(d)に示すように、遠心力FAがさらに増大し、ブレード30の角度θは、高速回転用角度位置Bを超えた状態、風直交面Y側の位置となる。高速回転用角度位置Bを超えたブレード30の角度θの範囲(以下、回転減速用角度範囲という)Qでは、これまでプラスピッチであったブレード30がマイナスピッチとなり、ブレード30には、これまでとは逆の回転力が生じる。即ち、ブレード30は、受風方向2wからの風力を受けて回転する予め定められた一定回転方向に回転するよう構成されているが、ブレード30の角度θの変化によって高速回転用角度位置Bを超えると、その一定回転方向とは逆方向に回転しようとする逆方向回転力が生じる。この逆方向回転力は、回転減速用角度範囲Q内において高速回転用角度位置Bから離れるほど強まる。このため、回転減速用角度範囲Q内に位置するブレード30は、上記一定回転方向への回転にブレーキがかかった状態となり、回転速度が減じられ、これに伴い錘部材35の遠心力FAも低下する。一方で、付勢手段340a,340bの付勢力FMは、回転減速用角度範囲Q内に位置するブレード30が、高速回転用角度位置Bから離れていくほど増大する。このため、回転減速用角度範囲Q内に位置するブレード30は、再び高速回転用角度位置Bへと押し戻され、その時点におけるFAと、FW及びFMとが釣り合った位置となる。
このように、角度調整機構300’は、付勢手段340a,340bと錘部材35とリンク機構37とを有することで、微風時に回転し易いようにブレード30の角度θを風平行寄りとする第一段階と、風速が増した時に高回転となり易いようにブレード30の角度θを風直交寄りとする第二段階と、強風時に過回転が防止されるようにブレード30の角度θが回転減速用角度範囲に到達する第三段階という三段階にて、ブレード30の角度θを可変させることが可能となり、この三段階のブレード30の角度変更による自律的な回転速度制御によって、風車3’は、始動性に優れ、高回転時の効率も高く、なおかつ強風時の過剰回転の抑制も可能となっている。
なお、既に述べた図30におけるブレード30の高速回転用角度位置Bは、風直交面Yに達する手前に位置しているが、これは遠心力FAの最大値や一定の付勢力FBの大きさによって規定される可動限界角度位置であり、風車が最も高速で回転可能な状態となる真の高速回転用角度位置は、その可動限界位置よりもさらに風直交面Y側にあってもよい。ただし、図30に示すように、遠心力FAの最大値や一定の付勢力FBの大きさによって規定されるブレード30の可動限界角度位置を、風直交面Yと一致する位置Dとし、この位置Dを高速回転用角度位置とすることが、回転性能上、最も望ましい。一方で、図62及び図63で述べた実施形態においては、図63(d)のようにブレード30の角度位置が位置Bを越えていても、FAが最大とならないよう構成されている。ここでは、マグネット340a,340bの磁力(磁気的反発力)の大きさにより規定される形で、風直交面Yよりも奥側となる位置に、ブレード30の可動限界角度位置が存在している。
なお、この実施形態(マグネット仕様)において採用されるブレード30は、上記実施形態(ばね仕様)における図44〜図50の形状のものを採用してもよいが、ここでは図44〜図50の形状のものとは異なる形状をなす。具体的に言えば、図49及び図50に示したブレード30の上面視(平面図)及び下面視(底面図)が、図64及び図65のように視認されるように変更される。なお、図64及び図65のように変更した場合、図44〜図48と同様の視点から翼を見たときにその見た目に違いが現れるが、その違いは微妙な違いにすぎず、図44〜図48とほぼ同様に視認されるため、図示を省略する。
本発明における風力発電装置の風車に採用されるブレード30は、受風方向2wからの風力を受けて一定回転方向に回転するように、回転軸2側と先端側で流れの速度に差が生ずるよう、回転軸2側から先端側にかけてねじりを付ける形で受風面30wが形成される。既に述べた実施形態においては、図44〜図50に示したように、受風面30wは、ブレード30の幅方向Wが風直交面Y上に位置した状態でブレード30を回転方向逆側から見たときに(図50参照)、回転軸2側から先端側にかけて面幅が減少していきながらも視認することができ、逆に、ブレード30の幅方向Wが風直交面Y上に位置した状態でブレード30を回転方向側から見たときには(図49参照)視認できないようなねじり形状となっていた。この場合、ブレード30は、その角度位置が位置Aから位置Bの間で変化したとしても、ブレード30を回転方向の逆側から見たときには常に受風面30wを視認でき、回転方向側から見たときには常に受風面30wを視認できない(プラスピッチ)。したがって、ブレード30は、受風方向2wから風力を受けると、その風力が、回転方向逆側から視認される受風面30wを押し付ける形で作用して、常に一定回転方向への回転力を得て回転する。
これに対し、この実施形態において採用されるブレード30は、その幅方向Wが風直交面Y上に位置した状態で回転方向逆側から見たときに(図65参照)、受風面30wが回転軸2側から先端側にむかう途中の中間位置までしか視認できない形状となっており、その中間位置から外側では、今度は、同じ状態でブレード30を回転方向側から見たときに(図64参照)受風面30wがブレード30の先端側で視認できるようなねじり形状となっている。この場合、ブレード30は、その幅方向Wが位置Aから風直交面Y上に位置する少し手前の位置Bに位置した状態において、ブレード30を、回転方向逆側から見たときに受風面30wが視認され、回転方向側から見たときには受風面30wが視認されないが(プラスピッチ)、位置Bを越えると、回転方向側から見たときにも受風面30wが先端側に視認されるようになる(マイナスピッチ)。このため、ブレード30は、その位置Bに位置した状態において、風車3’が最も高速で回転可能な状態となるが、その位置Bを越えた角度範囲(回転減速用角度範囲)Q内に達すると、受風方向2wから風力を受けたときに、その風力が、ブレード30を回転方向逆側から見たときに視認される受風面30wを押し付ける形で作用して、上記一定回転方向への回転力を得て回転するだけでなく、その風力は、ブレード30を回転方向側から見たときに視認される受風面30wも押し付ける形で作用するので、上記一定回転方向とは逆向きの回転力も得る。これにより、ブレード30は、ブレーキが作用しているような減速回転状態となる。ブレード30は、位置Bを越えると、回転方向側から見たときに、その先端側から受風面30wが視認できるようになり、位置Bを越えて離れていくほど、より内周側にも受風面30wが視認できるようになる形でその面積が増大し、上記の逆向きの回転力が増大していく。
また、上記実施形態における角度調整機構300,300’は、図66及び図67に示すような形に変形することができる。
図66は、図20〜図30にて説明した角度調整機構300の変形例である。図20〜図30において、ばね部材をなす付勢手段34は、一方の端部が、ブレード30の角度変化に連動して動作する可動構造体(ここでは連結部材)36に固定され、他方の端部が、ブレード30の角度変化に連動して動作せず、回転軸2に一体固定された固定構造体(ここでは軸固定部)221に固定された引っ張りばねであり、ブレード30が初期回転用角度位置Aから風直交よりに変位するに伴い固定構造体221から離間していく可動構造体36を引っ張る形で作用している。これに対し、図66の角度調整機構300では、ばね部材をなす付勢手段34’は、一方の端部が、上記と同様の可動構造体(ここではブレード取付部材)330に固定され、他方の端部が、同じく上記と同様の固定構造体(ここでは軸固定部)221に固定された圧縮ばねであり、ブレード30が初期回転用角度位置Aから風直交よりに変位するに伴い固定構造体221に接近していく可動構造体36を押し返す形で作用している。
図67は、図56〜図63にて説明した角度調整機構300の変形例である。図56〜図63において、マグネットをなす付勢手段340a,340bのうち、一方のマグネット340bが、ブレード30の角度変化に連動して動作する可動構造体(ここではブレード取付部材)330に固定され、他方のマグネット340aが、ブレード30の角度変化に連動して動作せず、回転軸2に一体固定された固定構造体(ここでは軸固定部)221に固定されるとともに、それらマグネット340a,340bは、同極のもの同士が対向する形で配置されており、ブレード30が初期回転用角度位置Aから風直交よりに変位するに伴い固定構造体221に接近していく可動構造体330に対し反発力を生じ、その接近を妨げる形で作用している。これに対し、図67の角度調整機構300では、マグネットをなす付勢手段340a’,340b’のうち、一方のマグネット340b’が、上記と同様の可動構造体(ここでは連結部材)36に固定され、他方のマグネット340bが、同じく上記と同様の固定構造体(ここでは軸固定部)221に固定されるとともに、それらマグネット340a,340bは、異なる極のもの同士が対向する形で配置されており、ブレード30が初期回転用角度位置Aから風直交よりに変位するに伴い固定構造体221から離間していく可動構造体330に対し吸引力を生じ、その離間を妨げる形で作用している。