JP5822120B2 - 高せん断加工機の回転速度制御装置と回転速度制御方法 - Google Patents
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そして、内部帰還型スクリューの外周面と加熱筒の内周面との間の周面クリアランス内に例えば2〜5gの溶融状態の高分子微量材料を供給して、内部帰還型スクリューを例えば500〜3000min−1の回転数で高速回転させて高せん断加工を行う。
本発明による高せん断加工機の回転速度制御装置によれば、材料供給工程において低速回転手段によって内部帰還型スクリューを低速回転させて材料を加熱筒と内部帰還型スクリューとの間のクリアランスに導入し、材料の供給完了後に内部帰還型スクリューを高速回転させる高せん断加工工程に移行する際、内部帰還型スクリューの回転数を低速回転数から高せん断のための高速回転数に切り換えることなく、回転速度移行手段によって内部帰還型スクリューの回転速度を低速回転数から高速回転数に到達するまで所定時間かけて上昇させる。これによって、材料にかかるせん断応力の急激な上昇を抑えてトルクと材料温度の上昇を抑制することができて材料の物性低下を防止できる。
材料供給工程から高せん断加工工程に移行するまで複数の分割時間単位毎に内部帰還型スクリューの回転数を段階的に上昇させて高速回転数に到達させることで、回転数の急激な上昇を抑えることができるから、せん断応力の急激な上昇を抑えて材料温度の上昇を抑制できる。
内部帰還型スクリューの回転速度の上昇速度を一定にした場合、回転速度が比例的に上昇して所定時間で材料供給工程の低速回転から高せん断加工工程の高速回転になだらかに移行する。また、内部帰還型スクリューの回転速度の上昇速度を変化させた場合、折れ線状や曲線状に回転速度が上昇して所定時間で材料供給工程の低速回転から高せん断加工工程の高速回転に移行できる。
内部帰還型スクリューの回転速度の上昇速度を一定にした場合には、低速回転数から高速回転数まで所定時間かけて比例的に回転数が上昇する。
内部帰還型スクリューの回転数の上昇速度を変化させた場合、複数の分割時間毎に回転数上昇の傾きを折れ線状に違えて低速回転数から高速回転数に到達するようにしてもよいし、回転数の上昇割合が連続して変化する場合には回転数の上昇速度が曲線的または直線と複合して変化して低速回転数から高速回転数に到達することになる。
図1に示す本発明の実施形態による高せん断加工機1は、例えば高分子材料を溶融状態にして高せん断応力を与えつつ混練することで、樹脂の内部構造をナノレベル等の微細レベルまで分散して混合するものである。
なお、本発明では高分子系材料として高分子ブレンド材料に限定されることなく、他のブレンド材料や、ブレンドしない単一の分子材料等を高せん断加工してナノ分散化することもできる。或いは高分子材料以外の適宜材料を用いてもよく、材料は溶融樹脂等の流体に限らず、粉体や粒体等、適宜の形状のものを採用できる。
図1に示す高せん断加工機1は、本実施形態による高せん断加工機の基本構成を示しており、加熱筒5内に高せん断スクリューである内部帰還型スクリュー6が回転可能に挿入されて概略構成されている。
高せん断加工機1は、略水平方向に配設された有底の略中空円筒形状の加熱筒5と、この加熱筒5内に挿通された状態で中心軸線O回りに回転可能な略円柱形状の内部帰還型スクリュー6と、この内部帰還型スクリュー6の基端部側に連結された例えばサーボモータからなる駆動モータ8とを略同軸に形成している。
注入バルブ4は予め設定された時間等に応じて射出ノズル3から注入される溶融樹脂の注入量を制御することが可能な自動開閉式とされ、本実施形態では排出バルブ7の開閉動作に連動しているものとする。なお、樹脂注入量の計測は射出バルブ3内に設けた射出スクリューの進出位置によって規定される。
内部帰還型スクリュー6は駆動モータ8により、例えば100〜3300min−1の回転数で高速回転させられて溶融樹脂を混練しつつ高せん断加工することができる。内部帰還型スクリュー6は略円柱状に形成され、その外周面には螺旋状にスクリュー羽根9が突出して形成されている。
そのため、外周クリアランス11と先端クリアランス12、即ち間隙S1と間隙S2とで高せん断領域Kのクリアランスが形成されている。そして、内部帰還型スクリュー6が高速回転することで高せん断領域Kの溶融樹脂をスクリュー羽根9で高速せん断しつつスクリュー羽根9間の溝面9aに保持して前方に移送するようになっている。
これにより、帰還穴14は流入口14aと吐出口14bとで高せん断領域Kに連通している。
そのため、内部帰還型スクリュー6は加熱筒5との間で、混練に必要な溶融樹脂の循環がスムーズとなり、高せん断効率を高めることができる。
回転速度制御装置17において、駆動モータ8には、速度変更指令手段16と内部帰還型スクリュー6の回転数を計測する回転数センサー18とトルクを計測するトルクセンサー19とを備えたアンプ21が設けられている。また、加熱筒5には高せん断領域K、例えば周面クリアランス11内の樹脂圧を測定する樹脂圧センサー20が設けられている。
これら回転数センサー18とトルクセンサー19と樹脂圧センサー20とで測定された各測定データは、高せん断加工を制御する制御部22に設けられた制御手段23に入力される。制御手段23は、入力手段24で予め設定された入力情報に基づいて内部帰還型スクリュー6の回転数を制御する。
制御部22では、制御手段23からの出力により、樹脂供給工程と樹脂排出工程において内部帰還型スクリュー6を低速回転させるべくそれぞれ設定された低速回転数の信号を出力する低速回転手段26と、高せん断加工時に内部帰還型スクリュー6を高速回転させるべく高速回転数の信号を出力する高速回転手段27と、樹脂供給工程から高せん断加工工程へ移行するために内部帰還型スクリュー6の回転数を所定時間かけて階段状に増大させて例えば6段目で高せん断のための高速回転数に到達するよう制御する回転速度移行手段28とを備えている。
なお、分割時間とその時間毎の設定回転数は不均一であってもよい。
なお、高分子材料の樹脂として、例えば非相溶性ポリマーブレンド系、ポリマー/フィラー系、ポリマーブレンド/フィラー系の固体状樹脂材料からなる高分子ブレンド系樹脂を用いるものとするが、他の材料を用いてもよい。
そして、溶融樹脂を射出ノズル3から注入バルブ4を通して加熱筒5内に注入する(ステップ103)。例えば、射出ノズル3内の射出ストロークが規定値に達した時点で樹脂注入が完了したとして注入バルブ4を閉弁させる(ステップ105)。
即ち、内部帰還型スクリュー6の回転数Anは樹脂注入工程で例えば500min−1の低速回転の状態にあり、これを初期値として、表1に示すn=1段目に制御手段23で設定して出力し、回転数An(=A1)=900min−1で時間Bn=2秒間、回転速度移行手段28によって駆動モータ8を駆動制御する(ステップ201)。
設定した段数nにおける回転数Anで時間Bn経過すると(ステップ202)、終了した段数nが予め設定した目標段数n(この場合には、n=5)に到達したか否かを判別する(ステップ203)。段数nが目標段数nに到達していない場合には、ポインターでn=n+1にインクリメントして(ステップ204)、ステップ201に戻り、次の段数nの回転数Anを時間Bnの間、駆動させる処理を繰り返す。
そして、目標となるn段目(n=5)の回転数2600min−1を終了させた場合には(ステップ203)移行工程を終了させ、ステップ107へ戻る。
そして、高せん断加工では、加熱筒5に対して内部帰還型スクリュー6を高速で回転させながら、溶融樹脂を加熱筒5と内部帰還型スクリュー6の間の周面クリアランス11と先端クリアランス12と帰還穴14とで循環させて、内部帰還型スクリュー6のスクリュー羽根9によって高せん断加工を例えば20秒間に亘って行う(ステップ108)。
なお、本実施形態では、移行時間だけ処理時間が長くなる。
次に実施例による高せん断加工機1を用いて試験によって樹脂圧変化を測定した。
上述した第一の実施形態による高せん断加工機1を実施例とし、従来の高せん断加工機を従来例として、高せん断加工を行った。図5と図6は実施例と従来例による高せん断加工による樹脂圧を測定した試験結果を波形図で表したものである。
高せん断加工処理において、実施例と従来例は、いずれも樹脂供給工程の駆動モータ8及び内部帰還型スクリュー6の回転数を500min−1とし、可塑化ユニット2の射出スクリューのストロークにして例えば8mm移動させて樹脂を射出して供給し、高せん断加工工程を回転数3000min−1で20秒間行い、その後、回転数を500min−1に低下させて樹脂の排出を20秒間行った。
そして、周面クリアランス11内の樹脂圧の変化を樹脂圧センサー20で測定した。樹脂圧の測定位置は周面クリアランス11の先端クリアランス12との交差部であり、高せん断領域Kで最も樹脂圧の高い前部樹脂圧である。
その結果は図5に示すように、ピーク樹脂圧は1段目の立ち上げ開始時では13MPa程度であり、1〜5段目の各段に切り換えた最初に最も高いピーク樹脂圧となり、その後若干樹脂圧が低下するのこぎり刃状の変化を繰り返し、のこぎり刃の繰り返し形状が得られた。最も高いピーク樹脂圧は4段目の15MPaであった。そして、高せん断加工工程では移行工程よりも更に低い樹脂圧が曲線状に低下することとなった。
その結果は図6に示すように、回転数を3000min−1に切り換えた直後にピーク樹脂圧が18MPaに上昇し、その後、高せん断加工工程において時間の経過と共に曲線状に樹脂圧が低下することとなった。
これらの波形図から、本実施形態による回転速度制御装置17及び制御方法によれば、樹脂圧の上昇を抑えられることを確認できた。
これによって、溶融樹脂のピークとなる樹脂供給工程から高せん断加工工程へ向けて移行する際の回転数立ち上げ時の樹脂圧の急激な上昇を抑制できて、高せん断加工において、溶融樹脂の分解を抑えて物性の低下を防止できる。
例えば、上述の実施形態において、樹脂供給工程の終了後に高せん断加工工程に移行する間の移行工程について、階段状に駆動モータ8及び内部帰還型スクリュー6の回転数を上昇させて制御するようにしたが、本発明では、移行工程における回転数の変化は上述した階段状のものに限定されない。その変形例を図7及び図8により説明する。
例えば、図7に示す第一変形例による回転速度の移行工程では、樹脂供給工程の終了時点から高せん断加工工程に到達するまでの所定時間(例えば10〜12秒として)、同一単位時間に対して増大回転数を一定の傾きに設定して時間に対して回転数を比例的に増大するように制御してもよい。
なお、回転数の増大制御は折れ線状の変化に限定されることなく曲線状に変化させるように設定してもよい。或いは曲線と直線の組み合わせによって回転数の増大を制御してもよい。
上述した図7及び図8に示す回転数増大の切換制御データは、予め入力手段24によって制御部22における制御手段23に入力しておき、回転速度移行手段28によって駆動モータ8へ出力制御される。
5 加熱筒
6 内部帰還型スクリュー
8 駆動モータ
11 周面クリアランス
12 先端クリアランス
14 帰還穴
17 回転速度制御装置
22 制御部
23 制御手段
24 入力手段
26 低速回転手段
27 高速回転手段
28 回転速度移行手段
K 高せん断領域(クリアランス)
Claims (2)
- せん断応力を付与しつつ混練することで材料を分散及び混合するための高せん断加工機において、
内部に材料が導入される加熱筒と、
該加熱筒内に回転可能に配設されていて内部に帰還穴を連通させた内部帰還型スクリューと、
前記加熱筒及び前記内部帰還型スクリューの間の周面及び端部に形成されていて材料を流動させるクリアランスと、
材料の導入時に前記内部帰還型スクリューを低速回転させて材料を前記クリアランスに供給する低速回転手段と、
材料の導入終了後に前記内部帰還型スクリューを高速回転させて材料を前記クリアランス及び帰還穴に循環させて高せん断加工する高速回転手段と、
材料の導入完了後に前記内部帰還型スクリューの回転速度を前記低速回転から前記高速回転まで所定時間かけて段階的に上昇させて樹脂圧をのこぎり刃状に変化させる回転速度移行手段と、
を備えたことを特徴とする高せん断加工機の回転速度制御装置。 - せん断応力を付与しつつ混練することで材料を分散及び混合するための高せん断加工方法において、
内部に材料が導入される加熱筒と、
該加熱筒内に回転可能に配設されていて内部に帰還穴を連通させた内部帰還型スクリューと、
前記加熱筒及び前記内部帰還型スクリューの間の周面及び端部に形成されていて材料を流動させるクリアランスとを備え、
材料の導入時に前記内部帰還型スクリューを低速回転数で回転させて材料を前記クリアランスに供給する材料供給工程と、
前記クリアランスへの材料の導入完了後に前記内部帰還型スクリューの回転速度を前記低速回転数から所定時間かけて予め設定した高速回転数まで段階的に上昇させて樹脂圧をのこぎり刃状に変化させる移行工程と、
前記内部帰還型スクリューを前記高速回転数で高速回転させて材料を前記クリアランスと帰還穴との間で循環させて高せん断加工する高せん断加工工程と、
を備えたことを特徴とする高せん断加工機の回転速度制御方法。
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