JP5821207B2 - ハードコートフィルム及びハードコートフィルムの製造方法 - Google Patents

ハードコートフィルム及びハードコートフィルムの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ハードコートフィルム及びその製造方法に関する。
液晶表示装置等の表示装置の表示面を保護するため、当該表示面の表面には、ハードコートフィルムが設けられることがある。ハードコートフィルムは高い表面硬度を有するフィルムであり、表示面を覆うようにしてハードコートフィルムを設けることにより、表示面が傷付くことを防止することができる。このようなハードコートフィルムとしては、例えば、フィルム状の基材の表面に、硬いハードコート層を形成したフィルムが用いられる(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−288921号公報
ハードコート層は、硬化性の樹脂により形成されることがある。例えば、基材の表面に未硬化状態の樹脂を塗布し、塗布した樹脂を硬化させることにより、基材の表面にハードコート層が形成される。しかし、樹脂を硬化させると一般に当該樹脂は収縮するため、ハードコート層には収縮しようとする応力(以下、適宜「収縮力」という。)が生じ、得られたハードコートフィルムがカールすることがあった。ハードコート層の硬度を高めれば高めるほど樹脂は大きく収縮する傾向があるため、ハードコート層の硬度を高くすることと、ハードコートフィルムのカールを抑制することとを両立することは難しかった。
このような課題を解決するために、特許文献1では、ハードコート層の主成分となる樹脂の体積収縮率とハードコート層の厚みとを所定の範囲に収めるようにする技術が提案されている。しかし、特許文献1記載の技術では、ハードコート層の主成分となる樹脂の種類及びハードコート層の厚みが限定される。そこで、設計の自由度を高めるため、ハードコートフィルムの表面硬度の向上とカールの抑制とを両立できる、新たな技術の開発が望まれていた。
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、表面硬度が高く、且つ、カールを抑制できるハードコートフィルム及びそのハードコートフィルムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、基材の表面に熱により硬化しうる硬化性材料を塗布して塗布層を形成し、その塗布層を硬化させてハードコート層を形成するハードコートフィルムの製造方法であって、塗布層の表面部分を他の部分よりも高温に加熱して当該表面部分を選択的に大きく硬化させることにより、表面硬度が高いハードコートフィルムが得られることを見出した。また、このようにして製造されたハードコートフィルムでは、ハードコート層の表面部分は収縮の程度が大きいが、ハードコート層の表面部分以外の収縮の程度は小さいので、ハードコート層全体としては収縮力が小さくなり、ハードコートフィルムのカールを抑制できることを見出した。さらに、このような製造方法では、基材を高温に加熱しなくてもよいので、基材の材料として熱により劣化又は変形し易い材料を用いても製造されるハードコートフィルムの品質が低下しないことを見出した。本発明者は上記の知見に基づき、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の〔1〕〜〔19〕を要旨とする。
〔1〕 熱可塑性樹脂からなる基材の表面に、熱により硬化しうる硬化性材料を塗布して塗布層を形成する工程(A)と、前記塗布層を硬化させてハードコート層を得る工程(B)とを有し、
前記工程(B)が、前記塗布層の表面部分を、前記塗布層の前記表面部分以外の部分及び前記基材よりも高温に加熱して硬化させる工程(b1)を含み、
前記工程(b1)における前記塗布層の最大加熱温度Th1と、前記熱可塑性樹脂のビカット軟化温度Tsとの差Th1−Tsが−20℃より大きい、ハードコートフィルムの製造方法。
〔2〕 前記工程(B)において、前記ハードコート層の前記表面部分の体積収縮率が、前記ハードコート層の前記表面部分以外の部分の体積収縮率よりも大きい、〔1〕記載のハードコートフィルムの製造方法。
〔3〕 前記工程(B)における前記ハードコート層の表面の体積収縮率が10%〜50%である、〔1〕又は〔2〕記載のハードコートフィルムの製造方法。
〔4〕 前記工程(B)が、前記工程(b1)で前記塗布層の表面部分を加熱する温度よりも低い温度で前記塗布層の前記表面部分以外の部分を加熱する工程(b2)を含む、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
〔5〕 前記工程(b1)における加熱を、フラッシュランプアニーリング装置を用いて行う、〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
〔6〕 前記塗布層の表面部分が、前記塗布層の表面から前記塗布層の厚みの2/3以下までの部分である、〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
〔7〕 前記ハードコート層が単層である、〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
〔8〕 前記熱可塑性樹脂のビカット軟化温度が135℃以下である、〔1〕〜〔7〕のいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
〔9〕 前記硬化性材料が活性エネルギー線により硬化しうる、〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
〔10〕 前記工程(A)を行う前に比べた、前記工程(B)で前記ハードコート層を得た後における前記基材のヘイズの上昇度が0.5%以下である、〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
〔11〕 前記熱可塑性樹脂が、脂環式構造含有重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロースエステル樹脂及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる1種類以上の樹脂である、〔1〕〜〔10〕のいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
〔12〕 〔1〕〜〔11〕のいずれか一項に記載の製造方法で製造されたハードコートフィルム。
〔13〕 前記ハードコート層の表面の硬度がH以上である、〔12〕記載のハードコートフィルム。
〔14〕 前記ハードコートフィルムのカール高さが20mm以下である、〔12〕又は〔13〕記載のハードコートフィルム。
〔15〕 ハードコート層の厚みが30μm以下である、〔12〕〜〔14〕のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
〔16〕 基材の硬度がB以下である、〔12〕〜〔15〕のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
〔17〕 前記基材が位相差を有する、〔12〕〜〔16〕のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
〔18〕 前記基材が斜め延伸されたものである、〔17〕記載のハードコートフィルム。
〔19〕 基材と、前記基材の表面に樹脂により形成された単層のハードコート層とを備え、
前記ハードコート層の前記基板とは反対側の表面部分の硬度が、前記ハードコート層の前記基材との界面部分の硬度よりも大きい、ハードコートフィルム。
本発明のハードコートフィルムの製造方法によれば、表面硬度が高く、且つ、カールを抑制できるハードコートフィルムを製造できる。
本発明のハードコートフィルムは、表面硬度が高く、且つ、カールを抑制できる。
図1は、工程(B)において塗布層を硬化する様子を模式的に示す断面図である。 図2は、フラッシュランプアニーリング装置の構成の一例を模式的に示す断面図である。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。なお、以下の説明において、工程(A)、工程(B)、工程(b1)及び工程(b2)の符号(A)、(B)、(b1)及び(b2)は、いずれも当該符号が付された要素を他の要素と区別するための符号であり、要素の区別以外に意味を有するものではない。
〔1.概要〕
本発明のハードコートフィルムの製造方法(以下、適宜「本発明の製造方法」という。)は、熱可塑性樹脂からなる基材の表面に、熱により硬化しうる硬化性材料を塗布して塗布層を形成する工程(A)と、塗布層を硬化させてハードコート層を得る工程(B)と、を有する。
図1は、工程(B)において塗布層を硬化する様子を模式的に示す断面図である。図1に示すように、工程(B)は、基材10の表面11に形成された塗布層12の表面部分13を、塗布層12の表面部分以外の部分14及び基材10よりも高温に加熱して硬化させる工程(b1)を含む。この工程(b1)を行うことにより、塗布層12の表面部分13は硬く硬化されるので、表面15の硬度を高くすることができる。また、工程(b1)では、塗布層12の表面部分13は硬く硬化されて収縮の程度は大きくなるが、塗布層12の表面部分以外の部分14は表面部分13ほど高温にならないので、収縮の程度は小さい。したがって、塗布層12の全体としては大きな収縮力を生じないので、得られるハードコートフィルムのカールを抑制することができる。
〔2.工程(A)〕
本発明のハードコートフィルムの製造方法では、熱可塑性樹脂からなる基材の表面に、熱により硬化しうる硬化性材料を塗布して塗布層を形成する工程(A)を行う。
〔2−1.基材〕
基材は、熱可塑性樹脂により形成されたフィルムである。この際、熱可塑性樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
熱可塑性樹脂の種類は、ハードコートフィルムに求められる光学特性に応じて適切な樹脂を選択することが好ましい。中でも、非晶性樹脂が好ましく、延伸加工性及び寸法安定性に優れることから、脂環式構造含有重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロースエステル樹脂及びアクリル樹脂が好ましい。
・脂環式構造含有重合体樹脂
脂環式構造含有重合体樹脂は、脂環式構造含有重合体を含む樹脂である。この際、脂環式構造含有重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
脂環式構造含有重合体は、重合体の繰り返し単位中に脂環式構造を有する重合体であり、主鎖に脂環式構造を有する重合体、及び、側鎖に脂環式構造を有する重合体のいずれを用いてもよい。中でも、機械的強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有する重合体が好ましい。
脂環式構造としては、例えば、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造などが挙げられる。中でも、機械強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が特に好ましい。
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下の範囲であるときに、機械強度、耐熱性、及び基材の成形性が高度にバランスされ、好適である。
脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有してなる繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合がこの範囲にあると、ハードコートフィルムの透明性および耐熱性の観点から好ましい。
脂環式構造含有重合体としては、例えば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体、及び、これらの水素化物等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン系重合体は、透明性と成形性が良好なため、好適に用いることができる。
ノルボルネン系重合体としては、例えば、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体、若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との開環共重合体、又はそれらの水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体、若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との付加共重合体、又はそれらの水素化物;等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環(共)重合体水素化物は、透明性、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適に用いることができる。なお、「(共)重合体」とは、重合体及び共重合体のことをいう。
ノルボルネン構造を有する単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などを挙げることができる。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基などを挙げることができる。また、これらの置換基は、同一または相異なって、複数個が環に結合していてもよい。なお、ノルボルネン構造を有する単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
極性基の種類としては、例えば、ヘテロ原子、またはヘテロ原子を有する原子団などが挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子などが挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホン酸基などが挙げられる。
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な他の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのモノ環状オレフィン類およびその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンなどの環状共役ジエンおよびその誘導体;などが挙げられる。なお、ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な他の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体、およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な他の単量体との開環共重合体は、例えば、単量体を公知の開環重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより得ることができる。
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの炭素原子数2〜20のα−オレフィンおよびこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロオレフィンおよびこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。なお、ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な他の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体、およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な他の単量体との付加共重合体は、例えば、単量体を公知の付加重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより得ることができる。
単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環を有する環状オレフィン系モノマーの付加重合体を挙げることができる。
環状共役ジエン系重合体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン系モノマーの付加重合体を環化反応して得られる重合体;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の環状共役ジエン系モノマーの1,2−または1,4−付加重合体;およびこれらの水素化物;などを挙げることができる。
ビニル脂環式炭化水素重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン等のビニル脂環式炭化水素系モノマーの重合体およびその水素化物;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族炭化水素系モノマーを重合してなる重合体に含まれる芳香環部分を水素化してなる水素化物;ビニル脂環式炭化水素系モノマー、またはビニル芳香族炭化水素系モノマーとこれらビニル芳香族炭化水素系モノマーに対して共重合可能な他のモノマーとのランダム共重合体若しくはブロック共重合体等の共重合体の、芳香環の水素化物;等を挙げることができる。なお、前記のブロック共重合体としては、例えば、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体またはそれ以上のマルチブロック共重合体、並びに傾斜ブロック共重合体等を挙げることもできる。
脂環式構造含有重合体樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない限り、脂環式構造含有重合体以外にもその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分の例を挙げると、滑剤;層状結晶化合物;無機微粒子;酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤等の安定剤;可塑剤;染料や顔料等の着色剤;帯電防止剤;などが挙げられる。中でも、滑剤及び紫外線吸収剤は、可撓性や耐候性を向上させることができるので好ましい。なお、その他の成分は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、その他の成分の量は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で適宜定めることができ、例えば、基材の1mm厚換算での全光線透過率が80%以上を維持できる範囲とすればよい。
滑剤としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム等の無機粒子;ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等の有機粒子などが挙げられる。中でも、滑剤としては有機粒子が好ましい。
紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体などが挙げられる。好適な紫外線吸収剤の具体例を挙げると、2,2’−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどが挙げられ、特に好適なものとしては、2,2’−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)が挙げられる。
・ポリカーボネート樹脂
ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネートを含む樹脂である。この際、ポリカーボネートは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ポリカーボネートとしては、カーボネート結合(−O−C(=O)−O−)による繰り返し単位(以下、適宜「カーボネート成分」という。)を有する重合体であれば任意のものを使用できる。また、ポリカーボネートは、1種類の繰り返し単位からなるものを用いてもよく、2種類以上の繰り返し単位を任意の比率で組み合わせてなるものを用いてもよい。さらに、ポリカーボネートは、カーボネート成分以外の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。ただし、ポリカーボネートがカーボネート成分以外の繰り返し単位を有する場合でも、ポリカーボネートが含むカーボネート成分の含有率が高いことが好ましく、具体的には、80重量%以上が好ましく、85重量%以上がより好ましい。
ポリカーボネートの例を挙げると、ビスフェノールAポリカーボネート、分岐ビスフェノールAポリカーボネート、o,o,o’,o’−テトラメチルビスフェノールAポリカーボネートなどが挙げられる。
また、ポリカーボネート樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない限り、ポリカーボネート以外にもその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分の例及び量は、脂環式構造含有重合体樹脂が含んでいてもよいその他の成分と同様である。なお、その他の成分は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
・セルロースエステル樹脂
セルロースエステル樹脂は、セルロースエステルを含む樹脂である。この際、セルロースエステルは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
セルロースエステルとしては、セルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。セルロースの低級脂肪酸エステルの例を挙げると、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等が挙げられる。また、セルロースの低級脂肪酸エステルの例としては、特開平10−45804号公報、特開平8−231761号公報、米国特許第2,319,052号明細書等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートが特に好ましい。
また、セルロースエステル樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない限り、セルロースエステル以外にもその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分の例及び量は、脂環式構造含有重合体樹脂が含んでいてもよいその他の成分と同様である。なお、その他の成分は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
・アクリル樹脂
アクリル樹脂は、アクリル重合体を含む樹脂である。この際、アクリル重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
アクリル重合体とは、アクリル酸又はアクリル酸誘導体の重合体を意味し、例えばアクリル酸、アクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸およびメタクリル酸エステルなどの重合体及び共重合体が挙げられる。アクリル重合体は強度が高く硬いため、強度の高いハードコートフィルムを実現できる。
アクリル重合体としては、(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位を含む重合体が好ましい。ここで「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸のことを意味する。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜15のアルカノール又はシクロアルカノールから誘導される構造のものが好ましく、炭素数1〜8のアルカノールから誘導される構造のものがより好ましい。炭素数を前記のように小さくすることにより、基材の破断時の伸びを小さくすることができる。
アクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸n−ドデシルなどが挙げられる。
また、メタクリル酸エステルの具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−デシル、メタクリル酸n−ドデシルなどが挙げられる。
さらに、前記の(メタ)アクリル酸エステルは、本発明の効果を著しく損なわない範囲であれば、例えば水酸基、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよい。そのような置換基を有する(メタ)アクリル酸エステルの例としては、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸グリシジルなどが挙げられる。
なお、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
また、アクリル重合体は、アクリル酸又はアクリル酸誘導体のみの重合体であってもよいが、アクリル酸又はアクリル酸誘導体とこれに共重合可能な単量体との共重合体でもよい。共重合可能な単量体としては、例えば、上述した(メタ)アクリル酸エステル以外のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体、並びに、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体、アルケニル芳香族単量体、共役ジエン単量体、非共役ジエン単量体、カルボン酸不飽和アルコールエステル、およびオレフィン単量体などが挙げられる。なお、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル以外のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体の具体例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジメチルなどが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体は、モノカルボン酸、多価カルボン酸、多価カルボン酸の部分エステル及び多価カルボン酸無水物のいずれでもよい。その具体例としては、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノエチル、フマル酸モノn−ブチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。
アルケニル芳香族単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルα−メチルスチレン、ビニルトルエンおよびジビニルベンゼンなどが挙げられる。
共役ジエン単量体の具体例としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、シクロペンタジエンなどが挙げられる。
非共役ジエン単量体の具体例としては、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンなどが挙げられる。
カルボン酸不飽和アルコールエステル単量体の具体例としては、酢酸ビニルなどが挙げられる。
オレフィン単量体の具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテンなどが挙げられる。
アクリル重合体が共重合可能な単量体を含む場合、当該アクリル重合体におけるアクリル酸又はアクリル酸誘導体と共重合可能な単量体に由来する繰り返し単位の含有量は、好ましくは50重量%以下、より好ましくは15重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。
これらのアクリル重合体のうち、ポリメタクリレートが好ましく、中でもポリメチルメタクリレートがより好ましい。
また、アクリル樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない限り、アクリル重合体以外にもその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分の例及び量は、脂環式構造含有重合体樹脂が含んでいてもよいその他の成分と同様である。なお、その他の成分は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
・熱可塑性樹脂の物性等
熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgは、通常90℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上である。ガラス転移温度Tgをこのように高くすることにより、高温環境における基材の配向緩和を防止して耐久性を向上させることができる。ただし、熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgが過度に高いと延伸処理が困難になる可能性があるので、熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgは通常300℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。
熱可塑性樹脂のビカット軟化温度は、通常300℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは135℃以下である。ビカット軟化温度がこのように低いと、従来のハードコートフィルムのように基材及び塗布層を含むフィルム全体を加熱して塗布層を硬化させた場合には、基材が変形することがあった。しかし、本発明の製造方法では、塗布層を硬化させて表面硬度を高める際に塗布層の表面部を選択的に加熱するようにしたので、基材には大きな熱は加えられない。このため、前記のようにビカット軟化温度が低い熱可塑性樹脂からなる基材であっても、変形しないようにできる。したがって、本発明の製造方法では、従来使用困難であったビカット軟化温度が低い熱可塑性樹脂を使用することができるので、樹脂の選択の自由度を高めることができるという本発明の利点を有効に活用する観点から、好ましい。なお、熱可塑性樹脂のビカット軟化温度の下限に制限は無いが、本発明のハードコートフィルムの耐熱性の観点からは、通常80℃以上、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上である。
・基材の層構成
基材は、1層だけを有する単層のフィルムであってもよく、2層以上の層を有する複層のフィルムであってもよい。
・基材の物性等
基材の硬度は、H以下が好ましく、B以下が好ましく、2B以下がより好ましい。基材の硬度がこのように低くても、ハードコート層の表面部分の硬度が高いので、本発明のハードコートフィルムの表面硬度を高くすることができる。また、基材の硬度が低いと従来のハードコートフィルムではカールが生じ易かったが、本発明のハードコートフィルムはこのように硬度が低い基材を用いた場合でもカールを抑制できる。したがって、硬度が低い基材を使用することは、本発明の利点を有効に活用する観点から、好ましい。
なお、前記の硬度は、JIS−5600−5−4に準じて500g荷重で測定した鉛筆硬度である。
基材は、位相差を有していてもよい。通常、本発明の製造方法では工程(B)において基材の位相差は変化しないので、製造されるハードコートフィルムが有する基材も、工程(A)以前の基材と同様の位相差を有する。また、ハードコート層は位相差を有さないか、有するとしても当該位相差の絶対値は小さいことが多いため、通常は、基材の位相差がハードコートフィルム全体の位相差となる。具体的な位相差の範囲はハードコートフィルムの用途に応じて設定するが、基材の面内位相差Reは通常10nm〜500nm、基材の厚み方向の位相差Rthは−500nm〜500nmである。
なお、面内位相差Reは、基材の遅相軸方向の屈折率nx、遅相軸に面内で直交する方向の屈折率ny、及び厚み方向の屈折率nz、基材の平均厚みDとしたときに、(nx−ny)×Dで定義される値である。また、厚み方向の位相差は、((nx+ny)/2−nz)×Dで定義される値である。
さらに、本発明の製造方法では、工程(B)において基材の透明性及び光散乱性等の光学特性も変化し難い。したがって、基材の透明性及び光散乱性等の光学特性は、製造しようとするハードコートフィルムと同じになるように設定することが好ましい。
基材の厚みは、通常10μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上であり、通常250μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは40μm以下である。基材がこのように薄いハードコートフィルムは一般にカールを生じ易いが、本発明の製造方法によれば、前記のように厚みが薄い基材を備えるハードコートフィルムにおいても、カールを抑制することができる。
・基材の製造方法
基材の製造方法としては、単層の基材の製造方法の例を挙げると、キャスト成形法、押出成形法、インフレーション成形法などが挙げられる。中でも、溶剤を使用しない溶融押出法は、残留揮発成分量を効率よく低減させることができ、地球環境や作業環境の観点、及び製造効率に優れる観点から好ましい。溶融押出法としては、ダイスを用いるインフレーション法などが挙げられるが、生産性や厚さ精度に優れる点でTダイを用いる方法が好ましい。
また、複層の基材の製造方法の例を挙げると、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等の共押出成形法;ドライラミネーション等のフィルムラミネーション成形法;共流延法;及び樹脂フィルム表面に樹脂溶液をコーティングする等のコーティング成形法;などの方法が挙げられる。中でも、共押出成形法は、製造効率や、フィルム中に溶剤などの揮発性成分を残留させないという観点から、好ましい。共押出成形法には、例えば、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等が挙げられるが、なかでも共押出Tダイ法が好ましい。また、共押出Tダイ法にはフィードブロック方式およびマルチマニホールド方式があるが、厚さのばらつきを少なくできる点でマルチマニホールド方式が特に好ましい。
基材が位相差を有する場合、例えば上述した製造方法で得た基材を延伸する。延伸することにより、基材に含まれる分子が配向するので、基材に位相差を発現させることができる。このように延伸処理を施して得られるフィルムを、適宜「延伸フィルム」という。発現する位相差の大きさ及び遅相軸の方向は、熱可塑性樹脂の種類の影響を受けるので、基材に位相差を有させる場合には、熱可塑性樹脂として所望の位相差の発現に適した種類の樹脂を用いることが好ましく、例えば、脂環式構造含有重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂及びセルロースエステル樹脂からなる群より選ばれる1種類以上の樹脂を用いることが好ましい。
延伸方法は特に制限されず、例えば、一軸延伸法、二軸延伸法のいずれを採用してもよい。延伸方法の例を挙げると、一軸延伸法の例としては、フィルム搬送用のロールの周速の差を利用して長尺方向に一軸延伸する方法;テンター延伸機を用いて幅方向に一軸延伸する方法等が挙げられる。また、二軸延伸法の例としては、固定するクリップの間隔を開いての長尺方向の延伸と同時に、ガイドレールの広がり角度により幅方向に延伸する同時二軸延伸法;フィルム搬送用のロール間の周速の差を利用して長尺方向に延伸した後、その両端部をクリップ把持してテンター延伸機を用いて幅方向に延伸する逐次二軸延伸法などの二軸延伸法等が挙げられる。さらに、例えば、幅方向又は長尺方向に左右異なる速度の送り力若しくは引張り力又は引取り力を付加できるようにしたテンター延伸機を用いて、フィルムの幅方向に対して任意の角度θ(0°<θ<90°)をなす方向に連続的に斜め延伸する斜め延伸法を用いてもよい。これらの延伸法のなかでも、斜め延伸法が好ましく、特にフィルムの幅方向に対して45°±5°の角度をなす方向に延伸する斜め延伸法が特に好ましい。
延伸に用いる装置として、例えば、縦一軸延伸機、テンター延伸機、バブル延伸機、ローラー延伸機等が挙げられる。
延伸時の温度は、熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgを基準として、好ましくは(Tg−30℃)以上、より好ましくは(Tg−10℃)以上であり、好ましくは(Tg+60℃)以下、より好ましくは(Tg+50℃)以下である。なお、基材が複層フィルムである場合、層によって熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgが異なることがありえる。その場合には、好ましくはガラス転移温度Tgが最も低い層を形成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgを基準として、延伸時の温度を設定する。
延伸倍率は、基材及びハードコートフィルムに発現させようとする位相差等の光学特性に応じて適宜選択すればよく、通常1.05倍以上、好ましくは1.1倍以上であり、通常10.0倍以下、好ましくは2.0倍以下である。
さらに、基材には、ハードコート層との接着性を高めるため、表面処理を施してもよい。表面処理としては、例えば、プラズマ処理、コロナ処理、アルカリ処理等が挙げられる。中でもコロナ処理は、接着性を特に高めることができるため、好ましい。
〔2−2.硬化性材料〕
硬化性材料としては、熱により硬化しうる材料を用いる。また、硬化性材料には、硬化後に所望の硬度となりうること、ハードコートフィルムの用途に応じた透明性を有すること、などが求められる。さらに、基材の表面への塗布を容易に行う観点から、通常、硬化性材料は塗布以前においては液状の材料として用意される。硬化性材料としては、例えば、熱硬化性樹脂を用いる。
熱硬化性樹脂の例を挙げると、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、ウレタンアクリル樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂などが挙げられる。なお、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
また、硬化性材料の中でも、活性エネルギー線により硬化しうるものが好ましい。工程(B)において熱および活性エネルギー線を併用することで塗布層を確実に硬化させるようにするためである。ここで、活性エネルギー線とは、例えば可視光線、紫外線、電子線等のことをいう。
活性エネルギー線により硬化しうる硬化性材料の例を挙げると、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、光硬化性アクリル樹脂、ウレタンアクリル樹脂などが挙げられる。なお、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
さらに、硬化性材料は、必要に応じて微粒子を含んでいてもよい。微粒子を含むことにより、ハードコート層の導電性及び屈折率を調整することができる。
微粒子は、有機微粒子でもよく、無機微粒子でもよく、有機微粒子と無機微粒子とを組み合わせて用いてもよい。微粒子の材料の例を挙げると、シリカ、チタニア(酸化チタン)、ジルコニア(酸化ジルコニウム)、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化セリウム、五酸化アンチモン、二酸化チタン、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)、リンをドープした酸化スズ(PTO)、亜鉛をドープした酸化インジウム(IZO)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)等が挙げられる。これらの中でも、シリカは基材との密着性及び透明性のバランスに優れるので、屈折率を調整するための成分として適している。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
微粒子の数平均粒子径は、通常1nm以上であり、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは250nm以下である。通常は、粒子径が小さいほど、ハードコート層のヘイズが低くなり、基材とハードコート層との密着性が向上する。
微粒子の量は、硬化性材料100重量部に対して、通常10重量部以上、好ましくは20重量部以上であり、通常80重量部以下、好ましくは50重量部以下、より好ましくは40重量部以下である。微粒子の量を前記の範囲とすることにより、ヘイズ及び全光線透過率等の光学特性に優れるハードコートフィルムを製造できる。
硬化性材料は、必要に応じて、溶剤を含んでいてもよい。溶剤を含むことにより、硬化性材料の粘度を調整して、塗布性を向上させることができる。また、溶剤は通常、硬化性材料を基材の表面に塗布した後で速やかに気化する。このため、基材の表面に形成される塗布層は、通常は溶剤を含まない。
溶剤の例を挙げると、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジアセトングリコール等のグリコール類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;メチルエチルケトオキシム等のオキシム類;などが挙げられる。なお、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
硬化性材料は、必要に応じて、重合開始剤を含ませてもよい。通常は重合開始剤として熱重合開始剤を用いるが、硬化性材料が活性エネルギー線により硬化しうる場合には、光重合開始剤を含んでいてもよい。また、熱重合開始剤及び光重合開始剤を組み合わせて用いてもよい。なお、重合開始剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
さらに、硬化性材料は、例えば、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、光安定剤、消泡剤、レベリング剤等の任意の添加剤を含んでいてもよい。なお、添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
〔2−3.塗布方法〕
工程(A)では、基材の表面に、硬化性材料を塗布して塗布層を形成する。塗布方法は特に限定されず、公知の塗布法を採用することができる。具体的な塗布法としては、例えば、ワイヤーバーコート法、ディップ法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、グラビアコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、スライドコート法、エクストルージョンコート法などが挙げられる。
〔3.工程(B)〕
工程(A)で基材の表面に硬化性材料の塗布層を形成した後で、前記塗布層を硬化させてハードコート層を得る工程(B)を行う。工程(B)は、塗布層の表面部分を、塗布層の表面部分以外の部分及び基材よりも高温に加熱して硬化させる工程(b1)を含む。また、工程(B)は、工程(b1)で塗布層の表面部分を加熱する温度よりも低い温度で、塗布層の表面部分以外の部分を加熱する工程(b2)を含んでいてもよい。
〔3−1.工程(b1)〕
工程(b1)では、塗布層の表面部分を、塗布層の表面部分以外の部分及び基材よりも高温に加熱する。これにより、塗布層が硬化してハードコート層が得られる。
工程(b1)のおける加熱では、塗布層の表面部分は高温に加熱されるので、大きく硬化が進む。このため、塗布層の表面部分に相当するハードコート層の表面部分は硬度が高くなる。
また、塗布層の表面部分は硬化した分だけ収縮するので、ハードコート層の表面部分には大きな収縮力が生じる。しかし、工程(b1)では塗布層の表面部分以外の部分は、塗布層の表面部分ほど高温にならないので、大きな収縮力は生じない。
このようにして、ハードコート層の表面の硬度を高くしながらも、ハードコート層全体としてはハードコートフィルムをカールさせるほど大きな収縮力が生じないようにできるので、ハードコートフィルムのカールの抑制と、高い表面硬度とを両立することが可能となっている。
また、工程(b1)では、基材は、塗布層の表面部分ほど高温にならないので、通常は、熱による変形、配向緩和、組成変化、劣化等を生じない。このように、塗布層の表面部分だけを選択的に高温にすることにより、基材に対して大きな熱を与えないでハードコート層の表面を硬く硬化させることができるので、本発明の製造方法では、基材を形成する熱可塑性樹脂として、熱による変形、配向緩和、組成変化、劣化などを受け易いものを使用できる。このため、基材の材料の選択の幅が広がるので、ハードコートフィルムの設計の自由度を高めることができる。
また、前記のように工程(b1)では基材が変形し難いので、製造ラインにおいて長尺の基材が熱によりたわんで搬送できなくなったり、基材が部分的に変形して斑点が生じたりすることを防止できる。
さらに、前記のように工程(b1)では配向緩和、組成変化及び劣化が生じないようになっているので、加熱前の基材の位相差は維持され、加熱後の基材においても加熱前の基材と同様の位相差を発現させることができる。したがって、工程(B)以前の基材の位相差を維持することができるので、ハードコートフィルムの位相差を容易に制御できる。
工程(b1)における塗布層の表面部分及び前記表面部分以外の部分、並びに、基材を加熱する温度は、通常、基材及びハードコート層の組成及び目標とする硬度に応じて設定する。基材に変形等を生じさせないで塗布層を硬化させることができる利点を有効に活用する観点からは、工程(b1)における塗布層の最大加熱温度Th1と、基材を形成する熱可塑性樹脂のビカット軟化温度Tsとの差Th1−Tsが、好ましくは−20℃より大きく、より好ましくは−10℃より大きく、特に好ましくは10℃より大きくなるように、温度を設定する。なお、塗布層の最大加熱温度Th1は、通常は、塗布層の表面の最高到達温度のことを意味する。
また、工程(b1)において、基材の塗布層が形成された表面とは反対側の表面の温度は、好ましくはTs−20℃以下、より好ましくはTs−30℃以下、特に好ましくはTs−40℃以下である。工程(b1)においては基材には大きな熱を与えられないので、基材の塗布層が形成された表面とは反対側の表面の温度は低くなる。この際、塗布層が形成された表面とは反対側の表面の温度が前記のように十分に低い温度となるようにすれば、基材の変形、配向緩和、組成変化及び劣化を安定して防止できる。
ハードコートフィルムのカールを効果的に抑制する観点からは、工程(b1)において塗布層の厚み方向の小さい部分を加熱することが好ましい。具体的には、塗布層12において選択的に高温に加熱される表面部分13とは、塗布層12の表面15から、塗布層12の厚みTの2/3以下までの部分が好ましく、塗布層12の厚みTの1/2以下までの部分がより好ましく、塗布層12の厚みTの1/3以下までの部分が特に好ましい(図1参照)。
〔3−2.工程(b2)〕
工程(B)は、工程(b1)で塗布層の表面部分を加熱する温度よりも低い温度で、塗布層の表面部分以外の部分を加熱する工程(b2)を含むことが好ましい。これにより、塗布層の表面部分以外の部分を硬化させることができる。
工程(b2)において、塗布層の表面部分以外の部分を加熱する温度は、塗布層の表面部分を加熱する温度よりも低いので、ハードコート層の表面部分以外の部分の硬度は、ハードコート層の表面部分の硬度よりも低くなる。しかし、ハードコート層の表面部分は工程(b1)における加熱によって十分に硬くなるので、ハードコートフィルムの表面硬度も十分に高くできる。また、ハードコート層の表面部分以外の部分には大きな収縮力が生じないので、ハードコート層全体にも大きな収縮力が生じないようにできる。
工程(b2)は、工程(b1)の前に行ってもよく、工程(b1)の後に行ってもよく、工程(b1)と同時に行ってもよい。工程(b2)を工程(b1)の前又は後に行う場合、通常は、塗布層の表面部分は、塗布層の表面部分以外の部分と同じ温度に加熱される。また、工程(b2)を工程(b1)と同時に行う場合、塗布層の表面部分は、塗布層の表面部分以外の部分よりも高温に加熱される。さらに、いずれの場合も、基板は、通常は塗布層の表面部分以外の部分と同じ温度に加熱される。したがって、工程(b2)において塗布層の表面部分以外の部分を加熱する温度は、基材に熱による変形、配向緩和、組成変化、劣化等を生じさせない温度にすることが好ましい。具体的には、基材を形成する熱可塑性樹脂のビカット軟化温度Tsを基準とすると、塗布層を硬化しうる温度であって、好ましくはTs−20℃以下、より好ましくはTs−30℃以下、特に好ましくはTs−40℃以下である温度に加熱する。
〔3−3.加熱装置〕
工程(b1)のように塗布層の表面部分を選択的に高温に加熱する加熱装置としては、例えば、フラッシュランプアニーリング装置やエキシマレーザーアニーリング装置が挙げられ、なかでもフラッシュランプアニーリング装置を用いることが好ましい。フラッシュランプアニーリング装置はフィルムに光を照射して当該光によってフィルムを加熱する装置である。フラッシュランプアニーリング装置では光の照射時間をミリ秒ないしマイクロ秒のような短時間にすることができるので、フィルムの表面の近傍の薄い部分を選択的に加熱することが可能である。特に、光の照射時間及び照射強度などを調整することで、加熱する部分の厚みを容易に制御できるので、工程(b1)に使用する加熱装置として適している。なお、光の照射回数は、1回でもよく、2回以上でもよい。
以下、図面を用いて、フラッシュランプアニーリング装置の一例について説明する。図2は、フラッシュランプアニーリング装置の構成の一例を模式的に示す断面図である。
図2に示すように、フラッシュランプアニーリング装置20は、光源であるフラッシュランプ110及び反射材120を備えたフラッシュランプユニット100を備える。また、フラッシュランプ110は、反射材120及びカバー130を備える筐体140内に収納されていて、フラッシュランプ110が発した光Lは、直接又は反射材120に反射されてからカバー130を透過して基材200の表面210に形成された塗布層220に当たり、塗布層220の表面部分のみが加熱されるようになっている。
また、フラッシュランプアニーリング装置20は、必要に応じてプレヒーティングユニット300を備えていてもよい。プレヒーティングユニット300はヒーター310を備えるので、フラッシュランプユニット100による光加熱とは別に基材200及び塗布層220を加熱できるようになっている。変形及び配向緩和を生じない程度であれば基材200及び塗布層220の全体を加熱することに問題は無い。例えば工程(b2)における加熱を、ヒーター310により行ってもよい。
図2に示すフラッシュランプアニーリング装置20では、プレヒーティングユニット300は基部320及びカバー330を備える筐体340内にヒーター310を備えていて、ヒーター310の上部には塗布層220を形成した基材200を通す通路350を有している。そして、当該通路350を通るように搬送される基材200の表面に形成された塗布層220にカバー330を透過した光Lが照射されることにより、連続的又は断続的に塗布層220の表面部分の加熱が行われるようになっている。また、光Lによる加熱は必ずしも基材200を搬送しながら行わなくてもよく、例えば基材200を通路350に載置して加熱するようにしてもよい。
工程(b1)において、塗布層220の表面部分を選択的に高温に加熱するためには、光Lの波長を硬化性材料が吸収しやすい波長に設定したり、光Lの照射時間を短くしたり、光Lの強度を適切に設定したり、通路350内の雰囲気を適切に設定したりすることが好ましい。具体的な設定は、通常、硬化性材料の種類、塗布層220の厚みなどに応じて設定する。
図2に示したフラッシュランプアニーリング装置の例を製品名で挙げると、例えば、DTF社製のフラッシュランプアニーリング装置(DTF社パンフレット、[online]、[平成23年1月6日検索]、インターネット〈URL:http://www.thin−film.de/fileadmin/medien/Website/Dokumente/Download_Center/Technische_Informationen/No2_FLA.pdf〉を参照)が挙げられる。
〔3−4.活性エネルギー線の照射工程〕
硬化性材料として活性エネルギー線により硬化しうるものを用いる場合、必要に応じて、塗布層に活性エネルギー線を照射して塗布層を硬化させてもよい。これにより、塗布層の硬化を速やかに進めることができるので、ハードコートフィルムの製造効率を向上させることができる。
活性エネルギー線の照射時間、照射強度などは、通常、目的とするハードコートフィルムの表面硬度に応じて設定する。また、活性エネルギー線の照射は、工程(b1)及び工程(b2)の前に行ってもよく、工程(b1)及び工程(b2)の後に行ってもよく、工程(b1)及び工程(b2)と同時に行ってもよい。ただし、活性エネルギー線は、基材の塗布層とは反対側から基材を通して照射するよりも、基材の塗布層側から照射することが好ましい。これにより、塗布層の表面部分により多くの活性エネルギー線を照射できるので、塗布層の表面部分を、表面部分以外の部分よりも大きく硬化させることができる。
〔3−5.工程(B)における塗布層及び基材の変化〕
上述したように、工程(B)において塗布層を硬化させることにより、基材の表面にハードコート層が形成される。この際、工程(b1)における加熱によって塗布層の表面部分は大きく収縮するが、塗布層の表面部分以外の部分は塗布層の表面部分ほどは収縮しない。したがって、工程(B)におけるハードコート層の表面部分の体積収縮率は、ハードコート層の表面部分以外の部分の体積収縮率よりも大きくなる。
具体的な体積収縮率の範囲は目的とするハードコートフィルムの表面硬度に応じて設定すればよい。例えば工程(B)におけるハードコート層の表面の体積収縮率は、通常10%以上、好ましくは12%以上、より好ましくは14%以上であり、通常50%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下である。ハードコート層の表面の体積収縮率が前記の範囲であれば、通常は、ハードコートフィルムのカールの抑制と、高い表面硬度とを両立することができる。
なお、前記の体積収縮率は、工程(B)において硬化前の塗布層のある部分が硬化してハードコート層の一部分となった場合に、前記の塗布層の部分の体積を基準として、硬化後のハードコート層の部分の体積がどの程度小さくなったかを表す比率である。体積収縮率は、下記の式によって求められる。
体積収縮率(%)=100×(硬化後の密度−硬化前の密度)/硬化後の密度
収縮が進むほど密度は大きくなるので、通常は、ハードコート層の表面部分の密度を測定することにより、収縮の程度を評価できる。ただし、塗布層及びハードコート層の厚みが薄いので、前記の体積収縮率を直接に測定することは困難である。そこで、通常は、ハードコートフィルムとは別に、ハードコートフィルムの製造に使用した塗布層と同じ材料で形成されたサンプルを用意し、そのサンプルを、ハードコートフィルムの製造方法と同様の温度に加熱して硬化させて、評価を行う。
また、上述したように、工程(B)において基材は変形、配向緩和、組成変化、劣化等の変化を生じ難い。したがって、基材は、通常、工程(A)を行う前と同様の光学特性を維持できる。例えば、工程(A)を行う前に比べた、工程(B)でハードコート層を得た後における基材のヘイズの上昇度は、通常0.5%以下、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.2%以下である。
なお、前記のヘイズは、例えば、市販されているヘイズメーターを用いて、JIS K−7136に準拠して測定する。また、前記のヘイズの上昇度とは、ハードコート層を得た後での基材のヘイズと、工程(A)を行う前の基材のヘイズとの差である。
〔4.その他の工程〕
本発明の製造方法では、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述した工程(A)及び工程(B)以外にも、任意の工程を行ってもよい。
例えば、ハードコートフィルムに、基材及びハードコート層以外の層を設ける工程を行ってもよい。具体例を挙げると、ハードコートフィルムの表面に低屈折率層を設ける工程を行い、ハードコートフィルムに反射防止機能を備えさせてもよい。
また、例えば、基材のハードコート層が形成された表面とは反対側の表面に、工程(A)及び工程(B)と同様にしてハードコート層を形成する工程を行ってもよい。ただし、通常は、本発明のハードコートフィルムでは基材の一方の面だけにハードコート層を形成する。基材の一方の面だけにハードコート層を備える従来のハードコートフィルムがカールし易かったことを考えれば、本発明のハードコートフィルムには一方の面だけにハードコート層を形成する方が、カールの抑制という本発明の利点を顕著に発揮できるためである。
〔5.ハードコートフィルム〕
以上のように、本発明の製造方法によれば、基材と、基材の表面に形成されたハードコート層とを備えるハードコートフィルムが得られる。
本発明のハードコートフィルムは、カールを抑制されているので、カール高さが低い。本発明のハードコートフィルムの具体的なカール高さは、通常20mm以下、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下である。なお、前記のカール高さとは、ハードコートフィルムを10cm×10cmの大きさに切り出し、切り出したフィルムを温度20℃、湿度50%の条件でハードコート層が上向きになるように平坦な面に置いた場合に、60分後にそのフィルムがカールして四隅が平坦な面から浮き上がる高さのことをいう。
本発明のハードコートフィルムは、ハードコート層の表面の硬度が高い。具体的な硬度はハードコートフィルムの用途に応じて設定すればよいが、ハードコート層の表面の硬度は、通常H以上、好ましくは2H以上、より好ましくは3H以上である。なお、前記の硬度は、JIS−5600−5−4に準じて500g荷重で測定した鉛筆硬度である。
ハードコート層の表面の硬度が高いので、ハードコート層の表面は耐擦傷性に優れる。具体的には、スチールウール♯0000に荷重0.025MPaをかけた状態でハードコート層の表面を10往復させて観察した場合、目視で傷が確認されないことが好ましい。
ハードコートフィルムは、光学部材としての機能を安定して発揮させる観点から、1mm厚換算での全光線透過率が、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。光線透過率は、JIS K0115に準拠して、分光光度計(日本分光社製、紫外可視近赤外分光光度計「V−570」)を用いて測定できる。
ハードコートフィルムは、1mm厚換算でのヘイズが、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。ヘイズを低い値とすることにより、本発明のハードコートフィルムを組み込んだ表示装置の表示画像の鮮明性を高めることができる。ここで、ヘイズは、JIS K7361−1997に準拠して、日本電色工業社製「濁度計 NDH−300A」を用いて、5箇所測定し、それから求めた平均値である。
ハードコートフィルムの残留揮発性成分の含有量は特に制約されないが、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下である。残留揮発性成分の含有量が0.1重量%を超えると、ハードコートフィルムの面内位相差Re及び厚み方向の位相差Rth等の光学特性が経時的に変化するおそれがある。揮発性成分の含有量を上記範囲にすることにより、寸法安定性が向上し、ハードコートフィルムの光学特性の経時変化を小さくすることができる。揮発性成分は、ハードコートフィルムに含まれる分子量200以下の物質であり、例えば、残留単量体及び溶剤などが挙げられる。揮発性成分の含有量は、分子量200以下の物質の合計として、ハードコートフィルムをガスクロマトグラフィーにより分析することにより定量することができる。
また、ハードコート層は、1層のみからなる単層であってもよく、2層以上の層からなる複層としてもよい。ただし、ハードコートフィルムの厚みを薄くする観点からは、ハードコート層は単層であることが好ましい。
ハードコート層は、その表面部分の方が、表面部分以外の部分よりも大きく収縮しているので、通常は、表面部分の密度の方が、表面部分以外の部分の密度よりも大きい。なかでも、ハードコート層の基板とは反対側の表面部分の密度は、通常、ハードコート層の基材との界面部分の密度よりも、特に大きい。このため、ハードコート層が同じ組成の材料からなる単層である場合には、表面部分の密度と、表面部分以外の部分(特に、ハードコート層の基材との界面部分)の密度とを比較することにより、表面部分と、表面部分以外の部分の収縮の程度の差を評価することができる。また、ハードコート層の表面部分及び当該表面部分以外の部分の密度を調整すれば、ハードコート層で生じる収縮力を制御することができる。
さらに、ハードコート層は、その表面部分の方が、表面部分以外の部分よりも硬く硬化しているので、通常は、表面部分の硬度の方が、表面部分以外の部分の硬度よりも大きい。なかでも、ハードコート層の基板とは反対側の表面部分の硬度は、通常、ハードコート層の基材との界面部分の硬度よりも、特に大きい。このため、ハードコート層が同じ組成の樹脂により形成された単層である場合には、表面部分の硬度と、表面部分以外の部分(特に、ハードコート層の基材との界面部分)の硬度とを比較することにより、表面部分と、表面部分以外の部分の収縮の程度の差を評価することができる。また、前記の表面部分及び表面部分以外の部分の硬度は、例えば耐擦傷性によって評価してもよい。
基材とハードコート層との界面の屈折率差は、0.05以下であることが好ましい。前記の屈折率差が前記範囲内にあると、ハードコートフィルムを光が透過する際の光の損失を抑えることができる。
ハードコート層の表面の水に対する接触角は、ハードコート層に表面処理を施さない状態であっても、20°以上が好ましく、また、60°以下が好ましく、40°以下がより好ましい。この接触角を前記範囲の下限値以上とすることによってハードコートフィルムを容易にロール状に巻くことができ、また、上限値以下とすることによってITO等の導電層を形成する場合にITOとハードコート層との密着性を高めることができる。
ハードコート層の十点平均高さRzは、1.0μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましい。これにより、ハードコート層とITOとの密着性を高めることができる。
ハードコートフィルムの厚みに制限は無いが、ハードコート層の厚みは薄いことが好ましい。本発明の製造方法では、厚みが薄い塗布層であっても表面部分を選択的に高温に加熱できることを利点の一つとしていることから、この利点を有効に活用するためである。具体的なハードコート層の厚みの範囲は、通常30μm以下、好ましくは12μm以下、より好ましくは5μm以下である。また、ハードコート層の厚みの下限は、通常0.5μm以上である。
ハードコートフィルムは、そのTD方向(traverse direction)の寸法を、例えば1000mm〜2000mmとしてもよい。また、ハードコートフィルムは、そのMD方向(machine direction)の寸法に制限は無いが、長尺のフィルムであることが好ましい。ここで「長尺」のフィルムとは、フィルムの幅に対して、少なくとも5倍以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。なお、MD方向とは、製造ラインにおけるフィルムの流れ方向であり、通常はフィルムの長尺方向及び縦方向と一致する。また、TD方向は、フィルム面に平行な方向であってMD方向に直交する方向であり、通常はフィルムの幅方向及び横方向と一致する。
また、本発明のハードコートフィルムは、可視光領域の光の透過度を向上させるため、低屈折率層を備えていてもよい。低屈折率層はハードコート層よりも低い屈折率を有する層である。通常、低屈折率層はハードコート層の表面に直接又は他の層を介して間接的に形成される。このような低屈折率層は、例えば、マトリックスに粒子を含ませた多孔質材料が挙げられる。この多孔質材料の例を挙げると、例えば、特開2001−233611号公報、特開2003−149642号公報に記載の多孔質材料などが挙げられる。
マトリックスとして用いられる材料は、粒子の分散性、並びに、低屈折率層の透明性及び強度などの条件に適合する材料を用いる。例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂、フェノール樹脂、酢酸ビニル樹脂、アルコキシラン等の加水分解性有機ケイ素化合物及びその加水分解物などが挙げられる。この中でも、粒子の分散性及び多孔質材料の強度の観点からアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、並びに加水分解性有機ケイ素化合物及びその加水分解物が好ましい。なお、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
また、多孔質材料に含まれる粒子としては、例えば中空微粒子が好ましい。中空微粒子としては無機中空微粒子が好ましい。無機中空微粒子を形成する無機化合物としては、例えば、SiO、Al、B、TiO、ZrO、SnO、Ce、P、Sb、MoO、ZnO、WO、TiO−Al、TiO−ZrO、In−SnO、Sb−SnOなどが挙げられる。なお、ハイフン「−」で化合物名を結んだ例示物は、複合酸化物であることを表す。これらの中でも、特にシリカ系の中空微粒子が好ましい。なお、中空微粒子の内部には、気体が存在していてもよく、液体が存在していてもよい。また、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
中空微粒子の数平均粒子径は、5nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、また、2000nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましい。これにより、低屈折率層の透明性を維持することができる。なお、中空微粒子の数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡による観察で測定できる。
中空微粒子は、例えば、特開2001−233611号公報に記載の方法で製造できる。また、市販の中空微粒子を用いてもよい。また、中空微粒子は、分散安定化を図るため、またはマトリックスとなる材料との親和性及び結着性を高めるために、プラズマ放電処理、コロナ処理等の物理的表面処理;界面活性剤、カップリング剤等による化学的表面処理を施されていてもよい。さらに、化学的表面処理により、中空微粒子の表面に水酸基等の親水基又はアクリロイル基が導入されていてもよい。
また、本発明のハードコートフィルムは、導電層を備えていてもよい。通常、導電層はハードコート層の表面に直接又は他の層を介して間接的に形成される。導電層は透明で且つ導電性を有する層であり、例えば液晶基板又はタッチパネルに用いられている導電層を用いてもよい。
導電層は、通常、導電性材料により形成する。導電性材料としては、例えば、導電性ポリマー;銀ペースト、ポリマーペースト等の導電性ペースト;金、銅等の金属コロイド;ITO等の金属酸化物;などが挙げられる。これらのうちの具体例をいくつが挙げると、スズをドープしたインジウム酸化物(ITO)、アンチモン又はフッ素をドープしたスズ酸化物(ATO又はFTO)、アルミニウムをドープした亜鉛酸化物(AZO)、カドミウム酸化物、カドミウムとスズの酸化物、酸化チタン、酸化亜鉛、ヨウ化銅等の金属酸化物;金、銀、白金、パラジウム等の金属;などが挙げられる。これらの中でも、液晶表示装置用のタッチパネルとして使用する場合には、光線透過性、耐久性の点で、ITOが特に好ましい。なお、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
導電層をハードコート層の表面に他の層を介して間接的に形成する場合、ハードコート層と導電層との間には、ケイ素化合物からなる中間層を形成することが好ましい。珪素化合物からなる中間層を形成することで、ITO等からなる導電層とハードコート層との密着性を改善できる。
導電層の表面抵抗率は、好ましくは100Ω/□以上1000Ω/□以下である。
導電層の厚みは、例えばITOで導電層を形成する場合、通常10nm以上、好ましくは15nm以上であり、通常150nm以下、より好ましくは70nm以下である。
導電層は、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、イオンプレーティング法、ゾルゲル法、コーティング法などにより製造してもよい。
〔6.用途〕
本発明のハードコートフィルムは、例えば、液晶表示装置の構成部材として使用でき、特にタッチパネル機能を有する液晶表示装置に用いて好適である。また、導光層を備えるハードコートフィルムは、例えば抵抗膜方式のタッチパネルの上部電極又は下部電極として用いてもよい。
さらに、本発明のハードコートフィルムは、例えば、偏光板の保護フィルムとして用いてもよい。この場合、本発明のハードコートフィルムを偏光子である偏光フィルムと貼り合わせることにより、偏光板を製造することができる。貼り合わせには、必要に応じて接着剤を用いてもよい。また、偏光フィルムの一方の面だけにハードコートフィルムを貼り合せてもよく、両方の面に貼り合せてもよい。偏光フィルムの一方の面だけにハードコートフィルムを貼り合わせる場合、偏光フィルムの他方の面には、透明性の高い別のフィルムを貼り合せてもよい。
偏光フィルムは、例えば、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素若しくは二色性染料を吸着させた後、ホウ酸浴中で一軸延伸することによって製造してもよい。また、例えば、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素もしくは二色性染料を吸着させ延伸し、さらに分子鎖中のポリビニルアルコール単位の一部をポリビニレン単位に変性することによって製造してもよい。さらに、偏光フィルムとして、例えば、グリッド偏光フィルム、多層偏光フィルム、コレステリック液晶偏光フィルムなどの、偏光を反射光と透過光とに分離する機能を有する偏光フィルムを用いてもよい。これらの中でも、ポリビニルアルコールを含んでなる偏光フィルムが好ましい。偏光フィルムの偏光度は、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。偏光フィルムの厚さ(平均厚さ)は、好ましくは5μm〜80μmである。
偏光フィルムとハードコートフィルムとを接着するための接着剤としては、光学的に透明であれば特に限定されず、例えば、水性接着剤、溶剤型接着剤、二液硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤、感圧性接着剤などが挙げられる。この中でも、水性接着剤が好ましく、特にポリビニルアルコール系の水性接着剤が好ましい。なお、接着剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
接着剤により形成される層(接着層)の平均厚みは、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下である。
ハードコートフィルムと偏光フィルムとを貼り合わせる方法に制限は無いが、例えば、偏光フィルムの一方の面に必要に応じて接着剤を塗布した後、ロールラミネーターを用いて偏光フィルムとハードコートフィルムとを貼り合せ、必要に応じて乾燥を行う方法が好ましい。乾燥時間及び乾燥温度は、接着剤の種類に応じて適宜選択される。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。なお、以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別に断らない限り重量基準である。さらに、以下の説明において温度及び圧力について特に断らない限り、操作は常温常圧の環境において行った。
[評価方法]
1.ビカット軟化温度の評価
JIS K7206に準じてヒートディストーションテスター(東洋精機社製)を用いて測定した。
2.鉛筆硬度の評価
JIS−5600−5−4に準じて500g荷重で測定した。具体的には、ハードコート層上に45°の角度で鉛筆を置き、鉛筆の上から500gの荷重を掛けて5mm程度引っかき、傷の付き具合を確認した。
3.体積収縮率の評価
ハードコートフィルムとは別に、ハードコートフィルムの製造に使用した塗布層と同じ材料で形成されたサンプルを用意した。そのサンプルを、ハードコートフィルムの製造方法と同様の温度に加熱して硬化させ、比重計(マイクロメトリックス社製)を用いて密度を測定し、以下の式から体積収縮率を算出した。
体積収縮率(%)=100×(硬化後の密度−硬化前の密度)/硬化後の密度
4.カール性の評価
ハードコートフィルムを10cm×10cmの大きさに切り出した。切り出したフィルムを温度20℃、湿度50%の条件でハードコート層が上向きになるように平坦な面に置き、60分後のそのフィルムのカール性を、以下の基準で評価した。ここで、以下の基準において「カール高さ」とは、フィルムがカールした場合にカールの四隅が平坦な面から浮き上がる高さのことをいう。
A:全くカールが認められず良好。
B:わずかにカールが認められるが、カール高さ20mm以下。
C:明らかにカールが認められ、カール高さが30mmを超える。
5.耐擦傷性の評価
スチールウール#0000に荷重0.025MPaをかけた状態で、ハードコートフィルムのハードコート層の表面を10往復させ、往復させた後の表面状態を目視で観測し、下記の基準で評価した。
また各実施例および比較例において、ハードコート液の塗布前にコロナ処理を施さない以外は同様にしてハードコート層を設けたサンプルを用意した。そのサンプルのハードコート層の表面を、粘着剤を塗布したガラス板上に貼り付け、次いで基材を剥離または研磨して除去し、ハードコート層の基材との界面部分を露出させた。この表面について上記と同様にして耐擦傷性試験を行い、下記の基準で評価した。
A:傷が認められない。
B:スジ傷が3本以上7本以下ある。
C:スジ傷が8本以上ある。
[製造例1.ハードコート液Aの調製]
ウレタンアクリレートオリゴマー(日本合成化学工業社製「UV−1700B」)100部に、シリカ粒子(CIKナノテック社製、数平均粒径30nm)18部と、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製「IRGACURE184」)5部とを加え、攪拌機を用いて攪拌することにより、硬化性材料としてハードコート液Aを得た。
[実施例1]
100℃で5時間乾燥したノルボルネン系樹脂(日本ゼオン社製「ZEONOR1060」、ガラス転移温度100℃、ビカット軟化温度101℃)のペレットを用いて、押出成形により、基材として厚さ40μmの未延伸フィルムAを得た。
得られた未延伸フィルムAの片面にコロナ処理を施し、次いでハードコート液Aを塗布して、厚み11μmの塗布層を形成した。こうして得られた、未延伸フィルムA及び塗布層を有するフィルムを、光学フィルムAと呼ぶ。
得られた光学フィルムAの全体を80℃で加熱しつつ、同時に光学フィルムAの塗布層の表面から厚み5μmまでの表面部分を、加熱装置(DTF社製、フラッシュランプアニーリング装置)により120℃で加熱し、更に紫外線照射して塗布層を硬化させてハードコート層を形成した。これにより、基材とハードコート層とを備えるハードコートフィルムAを得た。評価結果を表1に示す。
また、別途、光学フィルムAの全体の加熱温度である80℃における塗布層の体積収縮率、及び、塗布層の表面部分の加熱温度である120℃における塗布層の体積収縮率を、上述した要領で測定した。その結果、80℃における体積収縮率は11%、120℃における体積収縮率は14%であった。
[実施例2]
実施例1の未延伸フィルムAと同様の未延伸フィルムBを製造し、この未延伸フィルムBを配向角が45°になるように斜め延伸機により斜め延伸して、厚み30μmの位相差フィルムBを得た。なお、「配向角」とは、未延伸フィルムBの幅方向に対して遅相軸がなす角度を意味する。
得られた位相差フィルムBの片面にコロナ処理を施し、次いでハードコート液Aを塗布して、厚み5μmの塗布層を形成した。こうして得られた、位相差フィルムB及び塗布層を有するフィルムを、光学フィルムBと呼ぶ。
得られた光学フィルムBの全体を80℃で加熱しつつ、同時に光学フィルムBの塗布層の表面から厚み2μmまでの表面部分を、加熱装置(DTF社製、フラッシュランプアニーリング装置)により120℃で加熱し、更に紫外線照射して塗布層を硬化させてハードコート層を形成した。これにより、基材とハードコート層とを備えるハードコートフィルムBを得た。評価結果を表1に示す。
[実施例3]
ノルボルネン系樹脂の代わりにアクリル樹脂(住友化学社製「スミペックスHT55Z」、ガラス転移温度95℃、ビカット軟化温度104℃)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムCを得た。評価結果を表1に示す。
[実施例4]
ノルボルネン系樹脂の代わりにポリカーボネート樹脂(旭化成社製「ワンダーライトPC110」、ガラス転移温度148℃、ビカット軟化温度130℃)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、ハードコートフィルムCを得た。評価結果を表1に示す。
[比較例1]
加熱装置(DTF社製、フラッシュランプアニーリング装置)による加熱を行わなかったこと以外は実施例2と同様にして、ハードコートフィルムaを得た。評価結果を表1に示す。
[比較例2]
加熱装置(DTF社製、フラッシュランプアニーリング装置)による加熱を行わなかったこと、及び、光学フィルム全体の加熱温度を80℃から120℃に変更したこと以外は実施例2と同様にして、ハードコートフィルムbを得た。評価結果を表1に示す。
Figure 0005821207
[検討]
表1から分かるように、実施例1〜4では表面硬度が高く、且つ、カール性が小さいハードコートフィルムを製造できた。これにより、本発明によってハードコート層の硬度を高くすることと、ハードコートフィルムのカールを抑制することとの両立が可能となることが確認された。また、実施例1及び2においては、ハードコート層の表面の耐擦傷性の方が、ハードコート層の基材との界面の耐擦傷性よりも高いことから、ハードコート層の表面の硬度がハードコート層の基材との界面の硬度よりも大きいことが確認された。
これに対し、比較例1のハードコートフィルムaはカール性は小さいが、表面硬度が低い。これは、ハードコート層の硬化が十分ではないため、ハードコート層の表面硬度が低くなっているためと考えられる。
また、比較例2のハードコートフィルムbは表面硬度は高いが、カール性が大きい。これは、ハードコート層全体が硬化したことによりハードコート層に大きな収縮力が生じ、この収縮力によってハードコートフィルムbがカールしたためと考えられる。
10 基材
11 基材の表面
12 塗布層
13 塗布層の表面部分
14 塗布層の表面部分以外の部分
15 塗布層の表面
20 フラッシュランプアニーリング装置
100 フラッシュランプユニット
110 フラッシュランプ
120 反射材
130 カバー
140 筐体
200 基材
210 基材の表面
220 塗布層
300 プレヒーティングユニット
310 ヒーター
320 基部
330 カバー
340 筐体
350 通路

Claims (10)

  1. 熱可塑性樹脂のフィルムからなる厚み10μm以上250μm以下の基材の表面に、熱により硬化しうる硬化性材料を塗布して塗布層を形成する工程(A)と、前記塗布層を硬化させてハードコート層を得る工程(B)とを有し、
    前記工程(B)が、前記塗布層の表面部分を、前記塗布層の前記表面部分以外の部分及び前記基材よりも高温に加熱して硬化させる工程(b1)を含み、
    前記工程(b1)において、前記塗布層の前記表面部分を、前記塗布層の表面部分以外の部分よりも、前記ハードコート層の前記基板とは反対側の表面部分の硬度が前記ハードコート層の前記基材との界面部分の硬度よりも大きくなる程度に高温に加熱し、
    前記塗布層の表面部分が、前記塗布層の表面から前記塗布層の厚みの2/3以下までの部分であり、
    前記工程(b1)における前記塗布層の最大加熱温度Th1と、前記熱可塑性樹脂のビカット軟化温度Tsとの差Th1−Tsが−20℃より大きい、ハードコートフィルムの製造方法。
  2. 前記工程(B)において、前記ハードコート層の前記表面部分の体積収縮率が、前記ハードコート層の前記表面部分以外の部分の体積収縮率よりも大きい、請求項1記載のハードコートフィルムの製造方法。
  3. 前記工程(B)における前記ハードコート層の表面の体積収縮率が10%〜50%である、請求項1又は2記載のハードコートフィルムの製造方法。
  4. 前記工程(B)が、前記工程(b1)で前記塗布層の表面部分を加熱する温度よりも低い温度で前記塗布層の前記表面部分以外の部分を加熱する工程(b2)を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
  5. 前記工程(b1)における加熱を、フラッシュランプアニーリング装置を用いて行う、請求項1〜4のいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
  6. 前記ハードコート層が単層である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
  7. 前記熱可塑性樹脂のビカット軟化温度が135℃以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
  8. 前記硬化性材料が活性エネルギー線により硬化しうる、請求項1〜7のいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
  9. 前記工程(A)を行う前に比べた、前記工程(B)で前記ハードコート層を得た後における前記基材のヘイズの上昇度が0.5%以下である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
  10. 前記熱可塑性樹脂が、脂環式構造含有重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロースエステル樹脂及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる1種類以上の樹脂である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
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