JP5820566B2 - 正極材料の製造方法 - Google Patents
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さらに、リン酸鉄リチウムを含む正極材料の高率放電特性を向上させるべく、例えば、低級アルコールやポリビニルアルコールなどを熱分解させることによって生じる炭素(カーボン)をリン酸鉄リチウム含有粒子に担持させたものが上記特許文献1及び特許文献2に開示されている。
しかも、リン酸鉄リチウムを用いた正極材料として用いた非水電解質二次電池は、非水電解質二次電池の作動電圧が比較的低い約3.4V(vs.Li/Li+)程度であることから、非水電解質二次電池のエネルギー密度が比較的低いものとなる。
前記水熱合成工程において、前記粒子状活物質の表面に前記有機化合物由来の炭素を含む膜状体が形成され、該膜状体が結合して粒子状活物質同士が連結される。
尚、ここでいう粒子状活物質同士が膜状体の結合によって連結している状態とは、隣接する粒子状活物質表面において、該粒子状活物質の表面の少なくとも一部を表面に沿って覆う膜状体が、単に接触しているだけではなく、接触している部分において連続した膜状体として一体化することで、隣接した粒子状活物質同士も連結されている状態をいう。
さらに、上記正極材料は、該正極材料が備える粒子状活物質のうちのすべての粒子状活物質が前記のように膜状体で互いに連結されている必要はなく、あるいは全粒子状活物質が塊状に一体化されていることも要しない。
上記正極材料は、少なくとも前記膜状体の結合によって連結している2個以上の粒子状活物質を含むものであればよい。
また、前記水熱合成工程では、マンガン1モルに対して、分子中の炭素原子が0.15モル以上0.60モル以下となる量の前記有機化合物を存在させることが好ましい。
従って、本発明の製造方法によれば、非水電解質二次電池のエネルギー密度がリン酸鉄リチウムを用いた正極材料よりも高いリン酸マンガンリチウムを含む正極材料を用いて、電子伝導性を高め電池の放電容量を大きくできる正極材料を得ることができる。
さらに、前記水熱合成工程を上記高温条件にするためには、加圧することが必要となるが、この水熱合成時の圧力は16〜50MPaであることが好ましい。
このような高温高圧条件で水熱合成を行った場合に、さらに上記のような膜状体によって連結された粒子状活物質を備える正極材料を容易に得ることができる。
上記のごとく製造された正極材料は、リン酸マンガンリチウムを含む粒子状活物質を備えるため、非水電解質二次電池のエネルギー密度がリン酸鉄リチウムを用いたものよりも高いものになる。
また、前記粒子状活物質に前記膜状体が備えられ、該膜状体によって各粒子状活物質同士が結合されるため、正極材料の電子伝導性が高められ、該正極材料が用いられた電池の放電容量を大きくできる。
すなわち、上記正極材料には、リン酸マンガンリチウムを含む前記粒子状活物質と前記粒子状活物質とを連結するように前記膜状体が備えられることから、前記粒子状活物質間の一体性が向上し、正極材料の電子伝導性が高められ、該正極材料が用いられた電池の放電容量を大きくできる。
本実施形態の正極材料は、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO4)を含む粒子状活物質が備えられた正極材料であって、前記粒子状活物質の表面には、炭素を含む膜状体が付着している。
隣接する粒子状活物質同士は前記膜状体よって連結されている。
すなわち、隣接する粒子状活物質表面の膜状体同士が、その接触している箇所において一体化しているため、連続する膜状体によって複数の粒子状活物質同士が一体的に覆われて連結されている。
本発明の粒子状活物質は350℃以上の高温条件下で水熱合成されることで形成されるため、膜状体の成長が促進されて、前記膜状体の成長の際に近接する粒子状活物質表面の膜状体と結合しながら成長していくものと考えられる。
具体的には、例えば、前記リン酸マンガンリチウムの原料を溶解させた水溶液を密閉可能な容器中に投入した後、密閉し、容器外部より加熱し、内部圧力を10〜50MPa程度、好ましくは15〜35MPa程度とする方法が採用できる。
前記のように350℃以上という高温条件にすることで、密閉容器中の内部圧力を従来の水熱合成に比して著しく高い内部圧力とすることができる。
また、前記水熱合成工程において前記水熱法を採用するため、リン酸マンガンリチウムを含む粒子を簡便により小さくできる。該粒子がより小さくなることにより、前記粒子状活物質を備えた正極材料の電子伝導性がより高まり得るという利点がある。
密閉容器中の温度を高くすることによって、上記のように容器内の内部圧力は著しく向上し、その内部圧力は温度が高くなるほど急激に上昇する。
このような高温高圧の状態では、水素イオン濃度が高くなり、350℃付近においては,常温常圧と比較して約30倍になる。水素イオン濃度が高くなると水は酸触媒として機能する。
また、高温高圧の状態は水の誘電率も増大する。
よって、350℃以上の高温条件下で水熱合成することで合成した粒子は、一旦粒子が生成したのちに、その粒子表面が酸触媒の作用で一部溶解すると同時に、誘電率も増大することで炭素を含む膜状体部分も溶解することによって、粒子間が膜状体によって連結されることとなる。
一方、この温度よりも低い温度で加熱した場合には、前記粒子状活物質表面の膜状体部分が溶解することがないため、膜状体が結合した状態にはならず、各粒子状活物質が分離した状態で存在するものと推察される。
このような結合した膜状体が形成されることで、粒子間の電子伝導バスが形成され,電気化学的特性が向上するものと考えられる。
マンガン(Mn)を含む原料としては、例えば、硫酸マンガン、シュウ酸マンガン、酢酸マンガンなどを用いることができる。
リチウム(Li)を含む原料としては、例えば、水酸化リチウム、炭酸リチウムなどを用いることができる。
リン酸(PO4)を含む原料としては、例えば、リン酸、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸リチウムなどを用いることができる。
前記リン酸マンガンリチウムの化学組成は、必ずしもLiMnPO4に限られるものではなく、上記組成式における各元素の係数は変動し得る。具体的には、前記リン酸マンガンリチウムの化学組成は、Li:P:Mn=0.75〜1.20:1:0.95〜1.20の範囲となり得る。
前記リン酸マンガンリチウムが含有する遷移金属中に占めるMnの原子比は、高い作動電圧を備えるものとするために、70原子%以上であることが好ましい。
前記二糖類としては、マルトース、スクロース、セロビオースなどが挙げられる。
前記有機酸としては、例えば、アスコルビン酸(光学異性体であるエリソルビン酸を含む)、酒石酸、メバロン酸、キナ酸、シキミ酸、没食子酸、コーヒー酸などが挙げられる。
マンガン1モルに対して、分子中の炭素原子が0.15モル以上となる量の前記有機化合物を存在させることにより、前記有機化合物がより前記粒子状活物質に付着しやすくなり、製造された正極材料を用いた非水電解質二次電池の放電容量がより大きくなり得るという利点がある。
また、マンガン1モルに対して、分子中の炭素原子が0.60モル以下となる量の前記有機化合物を存在させることにより、製造された正極材料に含まれるリン酸マンガンリチウム(LiMnPO4)の割合がより高くなり、該正極材料を用いた非水電解質二次電池の放電容量がより大きくなり得るという利点がある。
さらに前記水熱合成工程では、必要に応じて、形成した正極材料を脱イオン水、アセトンなどの溶媒で洗浄することができる。また、さらに減圧下でその溶媒を揮発させる乾燥をおこなうことができる。乾燥時には、室温を超える温度に加温することもできる。
前記熱処理工程では、従来公知の一般的な熱処理方法を採用できる。例えば、500〜750℃程度の温度、0.5〜2時間程度、純窒素ガス、純アルゴンガス等の、酸素を含まない不活性ガス雰囲気下でおこなうことができる。なお、熱処理後の冷却は、例えば、−1℃/分の冷却速度を超えないように徐々におこなうことが好ましい。
熱処理前に、前記正極材料と前記有機化合物を混合する方法としては、例えば、乳鉢、ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミルや篩等、公知の混合方法を採用することができるが、前記正極材料の表面に形成された膜状体が欠損しない程度に混合できる混合条件を選択することが好ましい。
混合時には水、あるいはエタノール等の有機溶剤を共存させた湿式方式を採用することができる。
非水電解質二次電池の態様としては、特に限定されるものではなく、例えば、正極、負極および単層又は複層のセパレータを有するコイン電池やボタン電池、さらに、正極、負極およびロール状のセパレータを有する円筒型電池、角型電池、扁平型電池等が挙げられる。
即ち、一般的な正極材料の製造方法において用いられる種々の形態を、本発明の効果を損ねない範囲において、採用することができる。また、一般的な非水電解質二次電池において用いられる種々の態様を、本発明の効果を損ねない範囲において、採用することができる。
すなわち、水熱合成工程において添加される分子中に2以上のヒドロキシ基を有する分子量350以下の有機化合物等の有機化合物を由来とする炭素を含む膜状体が粒子表面に付着していると同時に粒子状活物質同士も連結している。
具体的には走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いた電子線エネルギー損失分光(EELS:Electron energy-loss spectroscopy)の観察結果に基づいて、結晶性の程度を反映するsp2軌道に対応するピークを比較すると、前記熱処理工程で添加されるポリビニルアルコール由来の炭素材料は、膜状体部分に比べてピーク強度が低く、導電材料として添加される黒鉛やアセチレンブラックなどの炭素材料は膜状体部分に比べてピーク強度が高いと考えられることから区別できる。
該強度のピークについて、粒子状活物質の表面の付着物、すなわち水熱合成時に形成されたと思われる膜部分と、熱処理時に付着したと思われるポリビニルアルコール由来の炭素材料部分に対応するピーク強度を比較したところ、水熱合成時に形成された膜部分はポリビニルアルコール由来の炭素部分に対応するピーク強度に対して明らかに高いものであった。
つまり、後工程で他の炭素材料を付着させた正極材料には、粒子同士を跨いでいるように見える炭素材料が観察されるとしても、該炭素材料は枝状やうろこ状に観察されることが多く、水熱合成時に形成される膜状体とは形状が相違する。すなわち、後工程で付着する炭素材料は、水熱合成時において形成された炭素を含む膜状体のように、粒子状活物質の表面において少なくとも表面の一部で表面に沿って覆うような膜状体としては形成されていない。
従って、上記のような低い温度で水熱合成された正極材料は、後工程で炭素材料を付着させたとしても、粒子状活物質同士が膜状体の結合によって連結しておらず、本発明の正極材料のような特性は見られない。
以下に示す方法により、正極材料を製造した。
水酸化リチウム[LiOH・H2O]、リン酸水素二アンモニウム[(NH4)2HPO4]をそれぞれイオン交換水中に溶解した後に、両溶液を撹拌しながら混合した。
次に、アスコルビン酸を溶解した水溶液に、硫酸マンガン[MnSO4・5H2O]を溶解させた。なお、硫酸マンガンのマンガン1モルに対して0.1モルのアスコルビン酸を用いた。即ち、アスコルビン酸の分子中の炭素原子がマンガン1モルに対して0.15モルとなる量のアスコルビン酸を用いた。
続いて、この水溶液を水酸化リチウム[LiOH・H2O]およびリン酸水素二アンモニウム[(NH4)2HPO4]との混合溶液に添加することによって、前駆体液を得た。前駆体溶液中のLi:P:Mnの比は、モル比で2:1:1となるように調製した。この前駆体溶液をテトラフルオロエチレン容器に移した後に、これを圧力ゲージ付きの反応器に設置し、器内をN2ガスで充分に置換して密閉し、400℃、1時間の水熱法による合成をおこない、水熱合成工程を実施した。この時の器内圧力は30MPaであった。
生成した物質を脱イオン水およびアセトンで十分に洗浄した後、120℃、5時間の真空乾燥をおこなうことによってLiMnPO4を含む粒子状活物質が備えられた正極材料を得た。
前記水熱法による合成時の温度を350℃(器内圧力は16MPa)にした点以外は、実施例1と同様にして正極材料を得た。
前記水熱法による合成時の温度を300℃(器内圧力は9MPa)にした点以外は、実施例1と同様にして正極材料を得た。
前記水熱法による合成時の温度を200℃(器内圧力は1.6MPa)にした点以外は、実施例1と同様にして正極材料を得た。
上記実施例および比較例で得られたそれぞれの正極材料に対して、粒子1gあたり1.2g量のポリビニルアルコール(PVA)(和光純薬工業製 平均重合度1500)と60℃に加温した水とを加え、乳鉢で混合−混錬したのちに、N2雰囲気下で700℃、1時間の熱処理を施すことによって、熱処理工程を実施した。なお、用いたポリビニルアルコールの量は、LiMnPO4を含む粒子に対して、質量増加分から計算した炭素量が5質量%となる量とした。
このようにして得られた材料とアセチレンブラック(AB)とを80:8の質量比で秤量し、乳鉢で粉砕しながら混合した。次に、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)(型番:#1120)のN−メチルピロリドン(NMP)溶液を滴下して混練した。さらにNMPを加えて希釈し、正極材料:AB:PVdF=80:8:12の質量比で含有し、固形分濃度30質量%である正極用ペーストを作製した。この正極用ペーストをA1メッシュ板に塗布後、80℃で30分間乾燥した後に加圧プレスをおこない、減圧乾燥することによって正極板とした。また、Li金属を負極とし、ガラスセルを用いて、非水電解質二次電池を製造した。
それら非水電解質二次電池を用いて、次の条件で充放電試験をおこなった。充電条件は、充電電流0.1CmA、充電設定電圧4.5V、充電時間15時間の定電流定電圧充電とし、放電条件は、放電電流0.1CmA、放電終止電圧2.0Vの定電流放電とした。
図1から認識できるように、実施例1および実施例2の正極材料においては、比較例13及び比較例2の正極材料よりも、非水電解質二次電池の放電容量が大きい。
特に、400℃で水熱合成した実施例1は、200℃で水熱合成した比較例2に比べると約1.8倍も放熱容量が大きいことがわかる。
上記実施例1および比較例2で得られたLiMnPO4を含む粒子(熱処理工程に供する前のもの)の形状を調べるために、分散法によって調製したサンプルを透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission electron microscope、日立社製、形式「HF−2000」を用いて観察した。
図2に実施例1の水熱工程で得られたLiMnPO4を含む粒子を、図3に比較例2の水熱工程で得られたLiMnPO4を含む粒子を示す。なお、図2および図のいずれにおいても拡大倍率は30000倍である。
尚、図4に図2の写真のトレースを、図5に図3のトレースを参考までに示す。
図4および図5の1は粒子状活物質を示し、2は膜状体を示す。
一方、200℃で水熱合を行った比較例2における図3では、各粒子状活物質表面の膜状体を介して結合されている様子は確認できなかった。
次に、上記実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2で得られたLiMnPO4を含む粒子(熱処理工程に供する前のもの)について、ラマン分光装置(日本分光株式会社製、レーザーラマン分光光度計、形式NRS-2100 )による成分分析を行った。
図6にその結果を示す。比較例1と比較例2では、バックグラウンドのピークが極めて大きいのに対し、実施例1及び実施例2ではほとんどバックグラウンドのピークは見られなかった。
このバックグラウンドのピークはLiMnPO4を含む粒子の表面に未炭化の有機物が存在する場合に生じるため、高温条件での水熱合成を行った実施例1及び2では、前駆体液材料のアスコルビン酸の炭化が、比較例1および2に比べ進行していることがわかる。
さらに、上記測定結果のグラフのスケールを拡大して、1380cm-1と1600cm-1付近のピークを確認したところ、図7に示すように、実施例1および実施例2のLiMnPO4を含む粒子では、1380cm-1と1600cm-1付近に炭素に由来するピークが認められた。尚、比較例1および比較例2ではこのようなピークは認められなかった。
この結果からも、高温条件下で水熱合成を行った各実施例では、比較例に比して表面に炭素が多く存在することがわかる。
すなわち、各実施例では、粒子状活物質の表面に付着した有機化合物の炭化が促進されて膜状体の成長が進んでいることを示している。
Claims (3)
- リン酸マンガンリチウムを含む粒子状活物質が備えられた正極材料の製造方法であって、リン酸、マンガン、リチウム及び有機化合物を含む水溶液が350℃以上の温度になるように加熱する水熱合成工程を備え、
前記水熱合成工程において、前記粒子状活物質の表面に前記有機化合物由来の炭素を含む膜状体が形成され、該膜状体が結合して粒子状活物質同士が連結される、正極材料の製造方法。 - 前記水熱合成工程が16〜50MPaの圧力で行われる請求項1に記載の正極材料の製造方法。
- 前記水熱合成工程では、マンガン1モルに対して、分子中の炭素原子が0.15モル以上0.60モル以下となる量の前記有機化合物を存在させる請求項1又は2に記載の正極材料の製造方法。
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