JP5818142B2 - 可逆的付加開裂連鎖移動重合可能な部位を含有するビニルエーテルおよび重合体並びにそれらの製造方法 - Google Patents

可逆的付加開裂連鎖移動重合可能な部位を含有するビニルエーテルおよび重合体並びにそれらの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、リビングカチオン重合の開始種に用いることのできるビニルエーテル含有チオカーボネート誘導体およびそれを利用して得られる、可逆的付加開裂連鎖移動重合によるリビングラジカル重合が可能な重合体に関する。
ビニルエーテルは、電子供与性の置換基を有するビニルモノマーであり、その重合体は、接着剤、塗料、潤滑剤、エラストマー、グリースなどに用いられるため、有用なモノマーの一つである。更に、そのビニルエーテルの重合体と異なる種類の重合体が繋ぎ合わさったブロック共重合体は、該ビニルエーテルの性質にもう一方の高分子の異なる性質を付与できるため、高分子界面活性剤、熱可塑性エラストマー、塗料、接着剤、リソグラフィーのテンプレート剤等として利用可能である。特に、カチオン重合可能なビニル系モノマーから製造される高分子の機能と、ラジカル重合系モノマーから製造される重合体の機能を合わせることで、より多種類のブロック共重合体を提供できるようになるため、このようなブロック重合体を製造するための技術が求められている。
従来技術において、カチオン重合可能なビニルエーテルとラジカル重合可能なビニルモノマーとのブロック共重合体は、リビングカチオン重合法およびリビングラジカル重合法の組み合わせによって合成されている。例えば、非特許文献1では、リビングラジカル重合の後、四塩化スズおよび酢酸エチルを用いたリビングカチオン重合を行うことを提案している。しかし、この方法では完全なブロック共重合は得られていない。
また、非特許文献2および3では、まずリビングカチオン重合法によってリビングポリマーを得た後、次いでこれを臭化銅または遷移金属触媒を用いた原子移動ラジカル重合法に付す2つの工程を組み合わせた方法が提案されている。しかし、この多種の金属を用いた方法では、微量金属の残留が懸念され、電子材料に適するとは言えない。
そこで、特許文献1に記載の、金属を使用しない可逆的付加開裂連鎖移動剤を用いた方法が開発され、簡便にカチオン重合可能なビニルエーテルとラジカル重合可能なビニルモノマーとのブロック共重合体が得られるようになった。その方法は、カルボキシル基を有する可逆的付加開裂連鎖移動剤をリビングカチオン重合の開始種として用い、ビニルエーテルのリビングポリマーを得た後、リビングラジカル重合の一種である可逆的付加開裂連鎖移動重合すなわちRAFT重合により、ラジカル重合性モノマーを重合し、ブロック共重合体を得る方法である。
この方法は、非常に簡便な方法で優れているが、得られるブロック共重合体にヘミアセタールエステル結合を有するため、酸性条件下での加熱によって分解する可能性があり、実用化のためには問題がある。
特開2010−059231号 国際公開WO98/01478号 国際公開WO98/58974号
Macromolecules、43、7523-7531(2010) Polymer、46、8469-8482(2005) Macromolecules、31、5559-5562(1998) J. Jpn. Soc. Colour Mater.、81、523-530 (2008)
従って、本発明の課題は、ビニルエーテルのリビングポリマーにラジカル重合性モノマーを重合させるにあたってより安定なブロック共重合体を得る技術を提供すること、特にリビングカチオン重合の開始種に用いることのでき、かつ、可逆的付加開裂連鎖移動重合可能な部位を含有するビニルエーテルを提供することである。
非特許文献4によると、ラジカル重合可能なビニルモノマーは2種類に分類することが可能とされており、そのひとつは共役モノマーであり、もう一方は非共役モノマーである。更に、共役モノマーには、ジチオエステルまたはトリチオエステル基を有する可逆的付加開裂連鎖移動剤が適しており、非共役モノマーには、ザンテート基を有する可逆的付加開裂連鎖移動剤が適しているとされている。
そして、ジチオエステルまたはトリチオエステル基を有する可逆的付加開裂連鎖移動剤としては、例えば、特許文献2や特許文献3に記載のジチオエステル又はトリチオカーボナート等が知られている。また、ザンテート基を有する可逆的付加開裂連鎖移動剤としては、特許文献2および3記載のジチオカーボナート等が知られている。しかしながら、ビニルエーテル等のリビングカチオン重合において開始種として使用可能なジチオカーボナートあるいはトリチオカーボナートは知られていない。
そこで本発明者は、種々のジチオカーボナートやトリチオカーボナート等のチオカーボネート誘導体を合成し、それらの可逆的付加開裂連鎖移動剤としての作用について研究を進めていたところ、一端にビニルエーテル基、他端に芳香族基を有するチオカーボネート誘導体は、リビングカチオン重合とリビングラジカル重合の両方を達成することができ、しかも得られるブロック共重合体は、安定性に優れたものであることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、次の式(1)
Figure 0005818142
(式中、Xは、酸素原子又は硫黄原子を示す)
で表されるビニルエーテル含有チオカーボネート誘導体である。
また本発明は、次の式(2)
Figure 0005818142
(式中、Rは水素原子、メチル基又はエチル基を示し、Rは他の元素を含んでいてもよい1価の有機基を示し、Xは、酸素原子又は硫黄原子を示し、nは構造単位の繰り返し数を示す
で表される可逆的付加開裂連鎖移動重合可能な部位を有する重合体である。
更に本発明は、上記ビニルエーテル含有チオカーボネート(1)を開始種とし、これとカチオン重合可能な次の式(3)
Figure 0005818142
(式中、R、RおよびXは、前記した意味を有する)
で表されるアルケニルビニルエーテルをリビングカチオン重合することを特徴とする可逆的付加開裂連鎖移動重合可能な部位を有する重合体(2)の製造方法である。
本発明のビニルエーテル含有チオカーボネート(1)は、リビングカチオン重合の開始種として用いることが可能であり、かつ、これを開始種としてリビングカチオン重合可能なモノマーを重合することにより、式(2)の高分子鎖末端に可逆的付加開裂連鎖移動重合可能な部位が導入された重合体(以下、「連鎖移動可能重合体」という)を得ることができる。
そして上記の本発明の連鎖移動可能重合体(2)は、高分子末端に可逆的付加開裂連鎖移動重合可能な部位を有しており、これをマクロ連鎖移動剤として用いることにより、ラジカル重合可能なビニル系モノマーとのブロック共重合体を提供することができる。この反応で得られるブロック共重合体は、高分子界面活性剤、インキ、熱可塑性エラストマー、塗料、接着剤、高分子樹脂への添加剤(改質剤)、リソグラフィーのテンプレート剤等の用途にも有用なものである。
実施例1で得られたS−ベンジル−O−(2−ビニロキシエチル)ジチオカーボナートの1H NMR分析結果を示す図である。 実施例2で7分間重合して得られた末端に可逆的付加開裂連鎖移動重合可能な部位を含有するポリイソブチルビニルエーテルの1H NMR測定結果を示す図である。 実施例4で得られたベンジル(2−ビニロキシエチル)トリチオカーボナートの1H NMR分析結果を示す図である。 実施例5で7分間重合して得られた末端に可逆的付加開裂連鎖移動重合可能な部位を含有するポリイソブチルビニルエーテルの1H NMR測定結果を示す図である。
本発明のビニルエーテル含有チオカーボネート(1)は、上記した構造を有しており、可逆的付加開裂連鎖移動重合可能な部位を有するものである。
本発明のビニルエーテル含有チオカーボネート(1)は、例えば、次のようにして合成することができる。
(A)式(1)中、Xが酸素原子であるビニルエーテル含有チオカーボネート(1a)は、例えば、下記式に従い、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル(4)と、1,1'−チオカルボニルジイミダゾール(5)とを反応させて、式(6)で表されるチオカルボニルイミダゾール誘導体とした後、これにベンジルメルカプタン誘導体(7)を反応させることにより製造できる。
Figure 0005818142
上記2−ヒドロキシエチルビニルエーテル(4)と、1,1'−チオカルボニルジイミダゾール(5)との反応は、トルエン、テトラヒドロフラン等の適当な溶媒中、60ないし50℃の温度で行うことができる。また、チオカルボニルイミダゾール誘導体(6)と、ベンジルメルカプタン誘導体(7)の反応は、水酸化カリウム、リン酸カリウム等の塩基の存在下、60ないし50℃の温度で加熱することにより行われる。
得られた反応物から、目的のビニルエーテル含有チオカーボネート(1a)を得るには、常法に従い、濾過、カラムクロマトグラフィー等の手段で分離精製すればよい。
(B)式(1)中、Xが硫黄原子であるビニルエーテル含有チオカーボネート(1b)は、例えば、下記式に従い、ベンジルメルカプタン誘導体(7)を、二硫化炭素(8)と反応させて式(9)で表されるトリチオカーボネート誘導体とし、次いでこれに2−ハロゲノエチルビニルエーテル(10)を作用させることにより製造される。
Figure 0005818142
上記ベンジルメルカプタン誘導体(7)と、二硫化炭素(8)との反応は、アセトン、テトラヒドロフラン等の溶媒中、リン酸カリウムや水酸化カリウム等の塩基の存在下で行うことができる。また、トリチオカーボネート誘導体(9)と、2−ハロゲノエチルビニルエーテル(10)との反応は、20〜30℃の室温により行うことができる。
得られた反応物から、目的のビニルエーテル含有チオカーボネート(1b)を得るには、常法に従い、濾過、カラムクロマトグラフィー等の手段を用い、単独あるいはこれらを組みあわせて分離精製すればよい。
かくして得られる本発明のビニルエーテル含有チオカーボネート(1)はカチオン重合性を有しており、ハロゲン化水素やカルボン酸等と反応させて、下記式(11)
Figure 0005818142
[式中、Xは、酸素原子又は硫黄原子を示し、Zはハロゲン原子又はRCOO−(ここで、Rはフッ素で置換されていてもよい炭化水素基を示す)で示されるカルボン酸残基を示す]
で示される酸付加物とすることができる。得られたこの酸付加物(11)は、リビングカチオン重合の開始種に用いることができる。
上記酸付加物(11)において、Zのハロゲン原子としては、塩素原子、ヨウ素原子、臭素原子、フッ素原子を挙げることができ、Rで示されるフッ素で置換されていてもよい炭化水素基としては、メチル基、フェニル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基などを挙げることができる。このような酸付加物の中でも、塩酸付加物又はトリフルオロ酢酸付加物等が好ましい。
上記のビニルエーテル含有チオカーボネート酸付加物(11)を開始種として、例えば、次の式(3)
Figure 0005818142
(式中、Rは、水素原子、メチル基又はエチル基を示し、Rは他の元素を含んでいてもよい1価の有機基を示す)
で示されるアルケニルエーテルを重合させることにより、次の式(2)
Figure 0005818142
(式中、R、R、Xおよびnは前記した意味を有する)
で表される本発明の連鎖移動可能重合体が得られる。
上記の一般式(3)において、Rで示される1価の有機基の基本骨格としては、炭素数1〜24の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基が挙げられる。また、1価の有機基に含んでいても良い他の元素としては、ケイ素原子又は15族から17族の元素が挙げられ、そのうち15族から17族の元素としては、酸素、窒素、リン、イオウ、ハロゲン等が挙げられる。この元素のうち、さらに酸素、窒素、イオウ、ハロゲンが好ましく、特に酸素、ハロゲンが好ましい。
酸素を含む1価の有機基としては、炭素数1〜12のアルコキシ基が好ましい。また、ケイ素を含む1価の有機基としては、アルキルシリル基、ジアルキルシリル基、トリアルキルシリル基が挙げられ、ハロゲンとしてはフッ素が特に好ましい。
の好ましい例としては、フッ素原子又はアルコキシ基が置換していてもよい、炭素数1〜24の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和炭化水素基が好ましい。ここで、炭化水素基としては、炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜14のアリールアルキル基が好ましい。
また、Rのより好ましい例としては、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基であってその水素原子の全部若しくは一部がフッ素に置換されたフルオロアルキル基、炭素数2〜6のアルコキシアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基又は
Figure 0005818142
(式中、Rは1またはそれ以上の炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖アルキル基、炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖アルキル基であってその水素原子の全部若しくは一部がフッ素に置換されたフルオロアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基若しくはハロゲン原子によって置換されていても良いフェニル基を示し、pは0、1、2又は3の数を意味する)
で表されるアリール基又はアリールアルキル基を挙げることができる。
上記において、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、n−アミル基、イソアミル基等が挙げられ、炭素数1〜6のフルオロアルキル基としてはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2、2,2−トリフルオロエチル基などが挙げられ、炭素数2〜6のアルコキシアルキル基としてはメトキシ基メチル基、エトキシメチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−テトラヒドロピラニル基、2−テトラヒドロフラニル基等が挙げられ、炭素数5〜10のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、アダマンチル基などが挙げられ、アリール基としてはフェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基等が挙げられ、アリールアルキル基としてはベンジル基、メチルベンジル基、エチルベンジル基、メトキシベンジル基、エトキシベンジル基、フルオロベンジル基、トリフルオロメチルベンジル基等が挙げられる。
上述した一般式(3)で示されるアルケニルエーテルの具体例として、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、sec−ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、n−アミルビニルエーテル、イソアミルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;トリフルオロメチルビニルエーテル、ペンタフルオロエチルビニルエーテル、2,2,2−トリフルオロエチルビニルエーテル等のフルオロアルキルビニルエーテル類;2−メトキシエチルビニルエーテル、2−エトキシエチルビニルエーテル、2−テトラヒドロピラニルビニルエーテル、2−テトラヒドロフラニルビニルエーテル等のアルコキシアルキルビニルエーテル類;シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘプチルビニルエーテル、シクロオクチルビニルエーテル、2−ビシクロ[2.2.1]ヘプチルビニルエーテル、2−ビシクロ[2.2.2]オクチルビニルエーテル、8−トリシクロ[5.2.1.02.6]デカニルビニルエーテル、1−アダマンチルビニルエーテル、2−アダマンチルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル類;フェニルビニルエーテル、4−メチルフェニルビニルエーテル、4−トリフルオロメチルフェニルビニルエーテル、4−フルオロフェニルビニルエーテル等のアリールビニルエーテル類;ベンジルビニルエーテル、4−フルオロベンジルビニルエーテル等のアリールアルキルビニルエーテル類等が挙げられる。この中でも特に、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、sec−ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、n−アミルビニルエーテル、イソアミルビニルエーテル等の低級アルキルビニルエーテル類を好ましく用いることができる。
上記カチオン重合可能なビニル系モノマーとしては、上記アルケニルビニルエーテル(3)に限られず、リビングカチオン重合可能なモノマーであれば特に限定されず、スチレン誘導体、インデン、N−ビニルカルバゾール等を挙げられる。
上記スチレン誘導体のうち、好適なものとしては、スチレン、メトキシスチレン(o、m、p体)、メチルスチレン(o、m、p体)、クロロスチレン(o、m、p体)等が挙げられる。
なお、カチオン重合性可能なビニル系モノマーは、前記アルケニルビニルエーテル(3)を始め、上記モノマーの中から1種類を選んで使用してもよいし、2種以上を混合して用いても良い。
例えば、アルケニルビニルエーテル(3)等のカチオン重合可能なビニル系モノマーとのリビングカチオン重合にあたっての、ビニルエーテル含有チオカーボネート酸付加物(11)の使用量は、カチオン重合可能なビニル系モノマーよりも少ないことが必要であり、カチオン重合可能なビニル系モノマー1モルに対して0.001モル以上1モル未満であるのが好ましい。
また、ビニルエーテル含有チオカーボネート酸付加物(11)と、アルケニルビニルエーテル(3)等のカチオン重合可能なビニル系モノマーのリビングカチオン重合は、ルイス酸の存在下に行うのが好ましく、さらにルイス酸及びルイス塩基の存在下に行うのが好ましい。
上記反応に用いられるルイス酸としては、マグネシウム、ホウ素、アルミニウム、シリコン、リンさらには第4周期以降の元素のハロゲン化物、又はこれら元素の有機金属化合物を挙げることができる。特に好ましくは、SnCl及びZnClが挙げられる。これらの触媒はリビングカチオン重合条件において、比較的早い重合速度を有しているためである。上述のルイス酸の使用量としては、ビニルエーテル含有チオカーボネート酸付加物(11)1モルに対して0.001〜1モルであるのが好ましい。
また、上記反応に用いられるルイス塩基としては、エーテル化合物類、カルボニル基含有化合物類が代表的であり、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸フェニル、酪酸エチル、クロル酢酸エチル、ステアリン酸エチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、フタル酸ジエチル、イソフタル酸ジエチル等のエステル;無水酢酸等の酸無水物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;エチルフタルイミド等のイミド及び2,6−ジ−tert−ブチルピリジン等が挙げられる。
これらのなかでも、ジオキサン、2,6−ジ−tert−ブチルピリジン、酢酸エチルが特に好ましく使用される。ルイス塩基の使用量としては、カチオン重合可能なビニル系モノマー1モルに対して0.01〜100モルであるのが好ましい。
また、上記リビングカチオン重合は、溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒は、反応に不活性なものであれば、特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、塩化メチル、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロ化合物、へキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン等の飽和炭化水素等、又はこれらの混合溶媒が挙げられるが、中でも、ヘキサン及びトルエンが好ましく使用される。
リビングカチオン重合の温度は、通常、−120〜100℃の間、好ましくは−80〜30℃の間である。重合時間は特に限定されず、カチオン重合可能なビニル系モノマーやビニルエーテル含有チオカーボネート酸付加物(11)の種類や使量等により調製できる。
また、反応の停止は、リビングカチオン重合により目的のカチオン重合可能なビニル系モノマーのリビングポリマーが得られた後に、反応液にアルコールや水を加えることにより行うことができる。重合停止に用いるアルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブタノール等であり、中でもメタールが好んで使用される。重合停止剤の使用量はルイス酸1モルに対して、1モル〜100モル使用するのが好ましい。
このリビングカチオン重合は、ビニルエーテル含有チオカーボネート(1)から、その酸付加物(11)を経て進行し、カチオン重合可能なビニル系モノマーとして、アルケニルエーテル(3)を利用した場合には、リビングポリマーとして前記式(2)の連鎖移動可能重合体が得られる。
このようにして得られる本発明の連鎖移動可能重合体(2)は、リビングラジカル重合の一つである可逆的付加開裂連鎖移動重合のマクロ連鎖移動剤として用いることができる。可逆的付加開裂連鎖移動重合は、本発明の連鎖移動可能重合体(2)の存在下に、ラジカル重合可能なビニル系モノマー及びラジカル重合開始剤を加え、加温することで達成される。
ラジカル重合可能なビニル系モノマーは、ラジカル重合可能なものであれば特に限定されないが、その好ましいものの一例としては、一般式(12)
Figure 0005818142
(式中、R、R及びRは、同一又は異なり、水素原子又はハロゲン置換もしくは非置換の低級アルキルを示し、Rは有機基を示す)
で表されるものを挙げることができる。
より具体的には、スチレン及びスチレン誘導体、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸誘導体、(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリルアミド誘導体、(メタ)アクリロニトリル、イソプレン、1,3−ブタジエン、エチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、N−ビニルインドール、N−ビニルフタルイミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルカプロラクタム等が挙げられる。
なかでも、連鎖移動可能重合体(2)として、Xが酸素原子である連鎖移動可能重合体(2a)を用いる場合には、酢酸ビニル、N−ビニルインドール、N−ビニルフタルイミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルカプロラクタム等のラジカル重合可能な非共役モノマーが好ましく、連鎖移動可能重合体(2)として、Xが硫黄原子である連鎖移動可能重合体(2b)を用いる場合には、スチレン及びスチレン誘導体、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸誘導体、(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリルアミド誘導体等のラジカル重合可能な共役モノマーが好ましい。
上記のスチレン及びその誘導体としては、具体的には、スチレン、tert−ブチルスチレン(o、m、p体)、tert−ブトキシスチレン(o、m、p体)、アセトキシスチレン(o、m、p体)、ヒドロキシスチレン(o、m、p体)、イソプロペニルフェノール(o、m、p体)、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン(o、m、p体)、スチレンスルホン酸(o、m、p体)及びその塩等が挙げられる。これらの中でも、スチレン、tert−ブチルスチレン、tert−ブトキシスチレンがより好ましく使用される。
また、(メタ)アクリル酸及びその誘導体としては、具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等がより好ましく使用される。
更に、(メタ)アクリルアミド及びその誘導体としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルキル(メタ)アクリルアミド;N,N−ジメチルアクリルアミド等のN,N−ジアルキルアクリルアミド等が挙げられ、なかでもN−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等がより好ましく使用される。
ラジカル重合可能なビニル系モノマーは、上記モノマーの中から1種類を選んで使用してもよいし、2種以上を混合して用いても良い。
前記リビングラジカル重合でのラジカル重合開始剤としては、任意の適切なラジカル重合開始剤を採用し得る。好ましくは、熱によりラジカルを発生する開始剤である。このようなラジカル重合開始剤として代表的なものとして、種々のアゾ化合物及び有機過酸化物を挙げることができる。
このうち、アゾ化合物としては、具体的には、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などの2,2’−アゾビスブチロニトリル類;2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などの2,2’−アゾビスバレロニトリル類;2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)などの2,2’−アゾビスプロピオニトリル類;1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)などの1,1’−アゾビス−1−アルカンニトリル類;2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等を挙げることができる。
また、有機過酸化物としては、具体的には、ジ−tブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(tert−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などのジアルキルパーオキサイド類;tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシアセテート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなどのパーオキシエステル類;シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類;2,2−ビス(4,4−ジ−tert−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレートなどのパーオキシケタール類;クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルシクロヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類;ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;ビス(tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート類等を挙げることができる。
これらの中でも、ラジカル重合開始剤として入手と取り扱いが容易なのとして、AIBNが挙げられる。
上記した、連鎖移動可能重合体(2)の存在下に行われるリビングラジカル重合(可逆的付加開裂連鎖移動重合)の実施では、溶媒を使用しても、また使用しなくても良い。使用できる溶媒としては、重合反応を阻害しないものであれば何れでも使用することができるが、例えば、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン及びデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン及びデカヒドロナフタレンのような脂環族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素及びテトラクロルエチレン等の塩素化炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール及びtert−ブタノールなどのアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチル及びジメチルフタレート等のエステル系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ−n−アミルエーテル、テトラヒドロフラン及びジオキシアニソールのようなエーテル系溶媒等をあげることができる。また、水を溶媒とすることもできる。これらの溶媒は、単独もしくは2種以上を混合して使用してもよい。
上記リビングラジカル重合(可逆的付加開裂連鎖移動重合)での反応温度は、好ましくは20〜120℃であり、より好ましくは40〜100℃である。上記反応の反応時間は、試薬量、反応温度によって異なるが、好ましくは2〜50時間であり、より好ましくは2〜24時間である。
リビングラジカル重合の反応混合物からのブロック共重合体の回収は、重合の反応温度を下げること等で重合を停止させた後、反応混合物から揮発分を留去する方法、又は大量の貧溶媒を添加し、ポリマーを沈殿させ分離する方法、又は水溶性ポリマーの場合は、水中での透析等にて行われる。
上記製造法により製造されるブロック共重合体の数平均分子量は、連鎖移動可能重合体(2)と加えたモノマーの比率にもよるが、1,000〜5,000,000であるのが好ましく、さらには2,000〜3,000,000であるのが好ましい。
上記リビングラジカル重合反応(可逆的付加開裂連鎖移動重合反応)により得られるブロック共重合体は、高分子界面活性剤、インキ、熱可塑性エラストマー、塗料、接着剤、高分子樹脂への添加剤(改質剤)、リソグラフィーのテンプレート等の用途にも有用である。また、本発明の製造法を用いることで、様々なカチオン重合性モノマーとラジカル重合性モノマーのブロック共重合体を提供できる。
次に実施例により本発明を一層詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制約されるものではない。
なお、以下の実施例において各測定法は次の方法に従った。
(1)重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn及び重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)は、ポリスチレンゲル換算のゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)で測定した[RI検出器、カラム(東ソー(株)製TSKgelカラムGHR−M×3)、溶離液はテトラヒドロフラン]。
(2)1H NMRは、JEOL社製JMN AL−300を用い、サンプルを重クロロホルムに溶解して測定した。
実 施 例 1
S−ベンジル−O−(2−ビニロキシエチル)ジチオカーボナートの合成
以下の反応式に従い、下記の手順で合成した。
Figure 0005818142
1Lの丸底フラスコに、1,1’−チオカルボニルジイミダゾール3.6g(20.2mmol)、 2−ヒドロキシエチルビニルエーテル(純度95%)1.9mL(20.2mmol)およびトルエン60mLを加え、60℃にて6時間還流した。その後室温まで放冷し、水酸化カリウム0.05g(0.89mmol)およびベンジルメルカプタン2.4mL(20.5mmol)を加え、再度60℃にて6時間還流した。
得られた溶液をろ過し、ろ液をエバポレートし、シリカゲルカラム(酢酸エチル:ヘキサン=1:10(体積比))にて分離精製し、S−ベンジル−O−(2−ビニロキシエチル)ジチオカーボナートを得た(収量2.57g、原料2−ヒドロキシエチルビニルエーテルに対し収率50%)。
得られたS−ベンジル−O−(2−ビニロキシエチル)ジチオカーボナートの構造は、1H NMR測定により同定した。図1に、得られたS−ベンジル−O−(2−ビニロキシエチル)ジチオカーボナートの1H NMR測定結果を示す。
実 施 例 2
末端に可逆的付加開裂連鎖移動重合可能な部位を含有するイソブチルビニル
エーテルのリビングカチオン重合
実施例1で得られたS−ベンジル−O−(2−ビニロキシエチル)ジチオカーボナートを用い、イソブチルビニルエーテルのリビングカチオン重合を実施した。まず、S−ベンジル−O−(2−ビニロキシエチル)ジチオカーボナートをヘキサンに溶解し、40mmol/L溶液に調整した。その溶液に乾燥HClガスを吹き込み、S−ベンジル−O−(2−ビニロキシエチル)ジチオカーボナートの塩酸付加体ヘキサン溶液(40mmol/L)を調整した。
トルエン7.8mL、酢酸エチル3.0mL、イソブチルビニルエーテル1.2mL、およびS−ベンジル−O−(2−ビニロキシエチル)ジチオカーボナート塩酸付加体ヘキサン溶液(40mmol/L)4.0mLをトルエン12.0mLで薄めた溶液(つまり10mmol/L)2.5mLをこの順で三方活栓付フラスコに窒素下で加え、そこから三方活栓付試験管6本に其々4.5mLずつ小分けし、0℃に冷却した(これをAとする)。
三方活栓付試験管に、1.0mol/Lの四塩化スズ0.1mLをトルエン9.9mLで希釈した溶液(10mmol/L)を入れ、0℃に冷却した(これをBとする)。
AにBを各々0.5mLずつ加え、激しく攪拌し、0℃のまま、それぞれ1分、2分、3分、7分後にアンモニア水を0.1質量%含むメタノールを加えて重合を停止した。得られた反応混合物をジクロロメタンに溶解し、0.6N塩酸水で洗浄し、触媒残査を除去した。全ての溶媒をエバポレートした後、減圧下で乾燥し、重合体を得た。
各重合時間におけるイソブチルビニルエーテルの重合率(即ち、モノマーの転化率)及びGPCより測定したるMn、Mw/Mnは表1に示す通りであった。なお、重合率は重量法により求めた。
Figure 0005818142
また、得られた重合体の構造は、1H NMRより、下記式(13)のように推定され、末端に可逆的付加開裂連鎖移動重合可能な部位を含有するポリイソブチルビニルエーテルが得られたことが確認された。図2に、得られたポリイソブチルビニルエーテル(重合時間7分)の1H NMR測定結果を示す。
Figure 0005818142
(式中、nは各構造単位の繰り返し数を表わす)
実 施 例 3
ポリイソブチルビニルエーテルとポリ酢酸ビニルのブロック共重合体の合成
実施例2で7分間重合して得られた、末端に可逆的付加開裂連鎖移動重合可能な部位を含有するポリイソブチルビニルエーテル0.397g、酢酸ビニル1.087g、アゾビスイソブチロニトリル2.0mgおよびトルエン1.612gを三方活栓付き試験管に加え、その試験管を脱気した後、窒素下、70℃に加温して重合した。
50時間後に試験管を空気下にし、氷水で冷却することで重合を停止した。重合は約50時間で30%進行し、Mnが10000まで上昇した。このときMw/Mnは1.15であった。1H NMRの分析結果から、下記式(14)で示されるポリイソブチルビニルエーテルとポリ酢酸ビニルのブロック共重合体が得られたことが確認された。
Figure 0005818142
(式中、n及びmは各構造単位の繰り返し数を表わす)
実 施 例 4
ベンジル(2−ビニロキシエチル)トリチオカーボナートの合成
以下の反応式に従い、下記の手順で合成した。
Figure 0005818142
ジムロートを取り付けた1L丸底フラスコに、リン酸カリウム46g(0.22mol)およびアセトン760mLを加え、室温で1.5時間攪拌した。そこへベンジルメルカプタン25.4mL(0.22mol)および二硫化炭素39.2mL(0.65mol)を加え、2時間攪拌した。その後、2−クロロエチルビニルエーテルを44mL(0.43mol)加え、43時間攪拌した。
得られた溶液をろ過し、ろ液中のアセトンを含む低沸点物をエバポレートし、残液をヘキサンに溶解させ、水で洗浄した。洗浄したヘキサン溶液に水酸化カリウムを加え一晩予備乾燥した。ヘキサンをエバポレートした後、シリカゲルカラム(酢酸エチル:ヘキサン=1:15(体積比))にて分離精製し、ベンジル(2−ビニロキシエチル)トリチオカーボナートを得た。(収量17.6g、原料ベンジルメルカプトンに対し収率30%)。
得られたベンジル(2−ビニロキシエチル)トリチオカーボナートの構造は、1H NMR測定により同定した。図3に得られたベンジル(2−ビニロキシエチル)トリチオカーボナートの1H NMR測定結果を示す。
実 施 例 5
末端に可逆的付加開裂連鎖移動重合可能な部位を含有するイソブチルビニル
エーテルのリビングカチオン重合
実施例4で得られたベンジル(2−ビニロキシエチル)トリチオカーボナートを用い、イソブチルビニルエーテルのリビングカチオン重合を実施した。まず、ベンジル(2−ビニロキシエチル)トリチオカーボナートをヘキサンに溶解し、20mmol/L溶液に調整した。その溶液に乾燥HClガスを吹き込み、ベンジル(2−ビニロキシエチル)トリチオカーボナートの塩酸付加体ヘキサン溶液(20mmol/L)を調整した。
トルエン5.8mL、イソブチルビニルエーテル0.6mLおよびベンジル(2−ビニロキシエチル)トリチオカーボナート塩酸付加体ヘキサン溶液(20mmol/L)をトルエンで薄めて10mmol/Lとしたもの8.0mLをこの順で三方活栓付フラスコに窒素下で加え、そこから三方活栓付試験管7本に其々1.8 mLずつ小分けし、0℃に冷却した(これをAとする)。
三方活栓付試験管に0.1mmol/Lの塩化亜鉛トルエン溶液を入れ、0℃に冷却した(これをBとする)。
AにBを0.2mLずつ加え、激しく攪拌し、0℃のまま、それぞれ0.5分、1分、5分、7分、10分、13分、15分後にアンモニア水を0.1質量%含むメタノールを加え重合を停止した。得られた反応混合物をジクロロメタンに溶解し、0.6N塩酸水で洗浄し、触媒残査を除去した。全ての溶媒をエバポレートした後、減圧下で乾燥し、重合体を得た。
各重合時間におけるイソブチルビニルエーテルの重合率(即ち、モノマーの転化率)及びGPCより測定したMn、Mw/Mnは表2に示す通りであった。なお、重合率は重量法により求めた。
Figure 0005818142
また、得られた重合体の構造は、1H NMRより下記式(15)のように推定され、末端に可逆的付加開裂連鎖移動重合可能な部位を含有するポリイソブチルビニルエーテルが得られたことを確認した。図4に、得られたポリイソブチルビニルエーテル(重合時間7分)の1H NMR測定結果を示す。
Figure 0005818142
(式中、nは各構造単位の繰り返し数を表わす)
実 施 例 6
ポリイソブチルビニルエーテルとポリアクリル酸エチルのブロック共重合体
の合成
実施例5で7分間重合して得られた末端に可逆的付加開裂連鎖移動重合可能な部位を含有するポリイソブチルビニルエーテル0.094g、アクリル酸エチル0.33mL、アゾビスイソブチロニトリル0.5mgおよびトルエン1.845mLを三方活栓付き試験管に加え、その試験管を脱気した後、窒素下70℃に加温して重合した。
50時間後試験管を空気下にし、氷水で冷却することで重合を停止した。重合は約24時間でほぼ100%進行し、Mnが8300まで上昇した。このときMw/Mnは1.42であった。1H NMRの分析結果から、下記式(16)で示されるポリイソブチルビニルエーテルとポリアクリル酸エチルのブロック共重合体が得られたことが確認された。
Figure 0005818142
(式中、nおよびmは各構造単位の繰り返し数を表わす)
本発明で得られるビニルエーテル含有チオカーボネート(1)は、一端にビニルエーテル基、他端に芳香族基を有するものであり、可逆的付加開裂連鎖移動剤としてリビングカチオン重合とリビングラジカル重合の両方に使用できるものである。
そして、上記ビニルエーテル含有チオカーボネート(1)をリビングカチオン重合させて得られる重合物(3)に、更にリビングラジカル重合反応(可逆的付加開裂連鎖移動重合反応)により、様々なカチオン重合性モノマーとラジカル重合性モノマーのブロック共重合体を提供できる。そして、このブロック共重合体は、安定性に優れたものであるため、高分子界面活性剤、インキ、熱可塑性エラストマー、塗料、接着剤、高分子樹脂への添加剤(改質剤)、リソグラフィーのテンプレート等の用途にも有用である。

Claims (5)

  1. 次の式(1)
    Figure 0005818142
    (式中、Xは、酸素原子又は硫黄原子を示す)
    で表されるビニルエーテル含有チオカーボネート誘導体。
  2. 2−ヒドロキシエチルビニルエーテルと、1,1'−チオカルボニルジイミダゾールとを反応させて、式(6)
    Figure 0005818142
    で表されるチオカルボニルイミダゾール誘導体とした後、これに一般式(7)
    Figure 0005818142
    で表されるベンジルメルカプタン誘導体を反応させることを特徴とする一般式(1a)
    Figure 0005818142
    で表されるビニルエーテル含有チオカーボネートの製造方法。
  3. 一般式(7)
    Figure 0005818142
    で表されるベンジルメルカプタン誘導体(7)を、リン酸カリウム又は水酸化カリウムの存在下に二硫化炭素と反応させて一般式(9)
    Figure 0005818142
    で表されるトリチオカーボネート誘導体とし、次いでこれに一般式(10)
    Figure 0005818142
    (式中、Xはハロゲン原子を示す)
    で表される2−ハロゲノエチルビニルエーテルを作用させることを特徴とする一般式(1b)
    Figure 0005818142
    で表されるビニルエーテル含有チオカーボネートの製造方法。
  4. 次の式(2)
    Figure 0005818142
    (式中、 は水素原子、メチル基又はエチル基を示し、R は他の元素を含んでいてもよい1価の有機基を示し、Xは、酸素原子又は硫黄原子を示し、nは構造単位の繰り返し数を示す)
    で表されるものである可逆的付加開裂連鎖移動重合可能な部位を有する重合体。
  5. 次の式(1)
    Figure 0005818142
    (式中、Xは、酸素原子又は硫黄原子を示す)
    で表されるビニルエーテル含有チオカーボネート誘導体を開始種とし、次の式(3)
    Figure 0005818142
    (式中、Rは水素原子、メチル基又はエチル基を示し、Rは他の元素を含んでいてもよい1価の有機基を示す)
    で表されるアルケニルエーテルをリビングカチオン重合することにより得られる次の式(2)
    Figure 0005818142
    (式中、R、R およびnは前記した意味を有する)
    で表される可逆的付加開裂連鎖移動重合可能な部位を有する重合体の製造方法。
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